(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133535
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】分岐装置、搬送装置および搬送方法
(51)【国際特許分類】
A01K 61/80 20170101AFI20220907BHJP
B65G 53/30 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A01K61/80
B65G53/30 E
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032261
(22)【出願日】2021-03-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-04
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、平成30年度、平成31年度(令和元年度)、令和2年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター、「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業、「大規模沖合養殖システム実用化」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 知広
(72)【発明者】
【氏名】三木 亮二
(72)【発明者】
【氏名】前田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】角 眞
(72)【発明者】
【氏名】田熊 靖史
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CC02
2B104CC06
2B104CC17
2B104CF12
2B104CF21
2B104CF28
(57)【要約】
【課題】必要な供給管の物量を抑えることができ、かつ、安定した設置が容易である分岐装置を提供する。
【解決手段】分岐装置30は、粉粒体を搬送する搬送管22と、複数の搬送先のそれぞれに粉粒体を供給する複数の供給管24との間に設置される装置であって、搬送管22と各供給管24とを連通させる複数の分岐流路管32A~32Dと、分岐流路管32A~32Dの各流路を開閉する複数の制御弁33A~33Dと、水中に配置され、複数の制御弁33A~33Dを収容する筐体34と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を搬送する搬送管と、複数の搬送先のそれぞれに前記粉粒体を供給する複数の供給管との間に設置される分岐装置であって、
前記搬送管と前記供給管の各々とを連通させる複数の分岐流路管と、
前記分岐流路管の各々の流路を開閉する複数の制御弁と、
複数の前記制御弁を収容しかつ水中に配置される水密筐体と、を備える、分岐装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分岐装置において、
前記搬送管と複数の前記分岐流路管との間に設けられる分岐部をさらに備え、
前記分岐部は、前記搬送管に接続される上流側管部と、前記上流側管部から分岐して前記分岐流路管の各々に接続される複数の下流側管部と、を有し、
前記下流側管部の各内面は、前記上流側管部の内面に対して連続した面である、分岐装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の分岐装置において、
前記制御弁は、電動弁である、分岐装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の分岐装置において、
前記搬送先は、生簀であり、
前記粉粒体は、前記生簀に給餌される飼料である、分岐装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の分岐装置と、
前記粉粒体が貯留される貯留槽と、
前記貯留槽内の前記粉粒体を搬送する前記搬送管と、
前記搬送管の内部に前記粉粒体を搬送するための気流を形成する気流発生装置と、
前記搬送管から前記分岐装置を介して搬送される前記粉粒体を複数の前記搬送先のそれぞれに供給する複数の前記供給管と、を備える、搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の分岐装置と、前記粉粒体が貯留される貯留槽と、前記貯留槽内の前記粉粒体を搬送する前記搬送管と、前記搬送管の内部に前記粉粒体を搬送するための気流を形成する気流発生装置と、前記搬送管から前記分岐装置を介して搬送される前記粉粒体を複数の前記搬送先のそれぞれに供給する複数の前記供給管と、を備える搬送装置を用いて実施される搬送方法であって、
任意の前記搬送先である対象搬送先を設定し、前記対象搬送先に対応する前記制御弁を開状態にすると共に、前記対象搬送先以外の前記搬送先に対応する前記制御弁を閉状態にし、前記貯留槽から前記搬送管に前記粉粒体を供給すると共に前記搬送管に前記気流を形成することで、前記対象搬送先に対して前記粉粒体を気流搬送する供給ステップと、
前記供給ステップの後、前記貯留槽から前記搬送管への前記粉粒体の供給を停止する供給停止ステップと、
前記供給停止ステップの後、前記搬送管に前記気流を形成したまま、複数の前記制御弁を順にまたは同時に開状態にする清掃ステップと、を含む、搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐装置、搬送装置および搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海洋養殖では、海洋上の生簀群への給餌方法として、手まき給餌が一般的に用いられているが、養殖の大規模化に適した新たな給餌方法が求められている。
例えば、手まき給餌以外の給餌方法として、特許文献1の飼料搬送装置を用いた給餌方法が提案されている。この飼料搬送装置は、陸上の給餌基地から複数の生簀のそれぞれに至る複数の供給管を有するとともに、給餌基地に設置された飼料供給源と、飼料が混入した流体(飼料混入流体)を飼料供給源から送出するポンプと、ポンプから送出された飼料混入流体を各供給管に分配する分岐装置と、を有している。この飼料搬送装置では、分岐装置によって1つの供給管が選択され、この供給管に対応する生簀に対して飼料を搬送できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の飼料搬送装置は、以下に記載するような問題点があるため、普及には至っておらず、養殖の大規模化に適した給餌方法は依然として確立されていない。
すなわち、特許文献1の飼料搬送装置において、給餌基地に設置された分岐装置から生簀に至るまで延設される供給管の物量は、給餌基地から生簀までの距離および生簀数のそれぞれに比例して増加する。このため、規模の大きい沖合の生簀群に従来の飼料搬送装置を用いる場合、飼料搬送装置の設置にかかるコストや手間が大きくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明者らは、分岐装置を給餌基地から分離して生簀の近傍に設置するとともに、搬送管を介して分岐装置を給餌基地のポンプに接続することで、分岐装置から生簀に至る複数の供給管の物量を抑えることを検討している。しかし、生簀の近傍は海洋上となるため、台風などの海象による影響を受け易く、分岐装置を安定的に設置することが困難である。
また、前述した問題は、養殖分野に限られず、水中または水上における複数の搬送先へ粉粒体を搬送するような場合に生じることになる。
【0006】
本発明の目的は、必要な供給管の物量を抑えることができ、かつ、安定した設置が容易である分岐装置、ならびに、当該分岐装置を用いた搬送装置および搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の分岐装置は、粉粒体を搬送する搬送管と、複数の搬送先のそれぞれに前記粉粒体を供給する複数の供給管との間に設置される分岐装置であって、前記搬送管と前記供給管の各々とを連通させる複数の分岐流路管と、前記分岐流路管の各々の流路を開閉する複数の制御弁と、複数の前記制御弁を収容しかつ水中に配置される水密筐体と、を備える。
【0008】
本発明では、各制御弁の開閉動作を制御することで、任意の搬送先を対象として粉粒体を搬送することができる。また、制御弁は、水中に配置される水密筐体によって収容される。ここで、水密筐体とは、内部を密封したうえで水中に配置された際にも水圧で浸水が生じない筐体である。このため、本発明の分岐装置は、制御弁を水から保護した状態で搬送先の近傍である水中に設置可能であり、この分岐装置を用いた搬送装置では、分岐装置から搬送先に至るまで延設される供給管の物量を抑えることができる。また、本発明の分岐装置は、水中に設置されることで台風などの海象による影響を受け難くなり、安定した設置が容易である。
【0009】
本発明の分岐装置は、前記搬送管と複数の前記分岐流路管との間に設けられる分岐部をさらに備え、前記分岐部は、前記搬送管に接続される上流側管部と、前記上流側管部から分岐して前記分岐流路管の各々に接続される複数の下流側管部と、を有し、前記下流側管部の各内面は、前記上流側管部の内面に対して連続した面である。
本発明では、粉粒体が混入された気流を、分岐部の上流側管部から複数の下流側管部のそれぞれに円滑に流すことができ、粉粒体が管内壁に衝突して粉粒体の粒形状に割れ欠けが生じることを抑制できる。特に、粉粒体が生簀に給餌される飼料である場合、給餌対象の摂食性を向上することができる。
【0010】
本発明の分岐装置において、前記制御弁は、電動弁である。
本発明では、空気式制御弁でなく電動弁を採用することで、水密筐体が密閉容器であっても、この水密筐体内の空気を排出させる必要がなく、構成を簡素化できる。
【0011】
本発明の分岐装置において、前記搬送先は、生簀であり、前記粉粒体は、前記生簀に給餌される飼料である。すなわち、本発明の分岐装置は、生簀に飼料を搬送するために用いられることで、養殖の大規模化に対応できる新たな給餌方法を確立させることができる。
【0012】
本発明の搬送装置は、前述の分岐装置と、前記粉粒体が貯留される貯留槽と、前記貯留槽内の前記粉粒体を搬送する前記搬送管と、前記搬送管の内部に前記粉粒体を搬送するための気流を形成する気流発生装置と、前記搬送管から前記分岐装置を介して搬送される前記粉粒体を複数の前記搬送先のそれぞれに供給する複数の前記供給管と、を備える。
本発明の搬送装置では、貯留槽および気流発生装置が粉粒体の供給基地に設置され、この供給基地から搬送先の近傍に配置された分岐装置まで搬送管が延設され、分岐装置から搬送先まで供給管が延設される。すなわち、本発明では、分岐装置を粉粒体の供給基地から分離して搬送先の近傍に設置することができる。よって、本発明の搬送装置では、前述した分岐装置の効果と同様、分岐装置から搬送先に至る複数の供給管の物量を抑えることができる。
【0013】
本発明の搬送方法は、前述の分岐装置と、前記粉粒体が貯留される貯留槽と、前記貯留槽内の前記粉粒体を搬送する前記搬送管と、前記搬送管の内部に前記粉粒体を搬送するための気流を形成する気流発生装置と、前記搬送管から前記分岐装置を介して搬送される前記粉粒体を複数の前記搬送先のそれぞれに供給する複数の前記供給管と、を備える飼料搬送装置を用いて実施される搬送方法であって、任意の前記搬送先である対象搬送先を設定し、前記対象搬送先に対応する前記制御弁を開状態にすると共に、前記対象搬送先以外の前記搬送先に対応する前記制御弁を閉状態にし、前記貯留槽から前記搬送管に前記粉粒体を供給すると共に前記搬送管に前記気流を形成することで、前記対象搬送先に対して前記粉粒体を気流搬送する供給ステップと、前記供給ステップの後、前記貯留槽から前記搬送管への前記粉粒体の供給を停止する供給停止ステップと、前記供給停止ステップの後、前記搬送管に前記気流を形成したまま、複数の前記制御弁を順にまたは同時に開状態にする清掃ステップと、を含む。
本発明の搬送方法では、目的の搬送先に粉粒体を搬送した後の分岐装置の清掃を行うことができる。特に、目的の搬送先に対応する分岐流路管だけでなく、目的以外の搬送先に対応する分岐流路管において、粉粒体が残留しないような清掃を行うことができる。これにより、各分岐流路管における粉粒体の固着を防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、必要な供給管の物量を抑えることができ、かつ、安定した設置が容易である分岐装置、ならびに、当該分岐装置を用いた搬送装置および搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る飼料搬送装置を含んだ養殖システムを示す模式図。
【
図4】前記実施形態に係る分岐装置の分岐部を示す斜視図。
【
図5】前記実施形態に係る飼料搬送方法を説明するためのフローチャート。
【
図6】前記実施形態に係る分岐装置における飼料混入気流の流れを説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
[養殖システム1]
図1において、養殖システム1は、海面から海中に沈潜配置された複数の生簀10と、各生簀10に飼料を搬送する飼料搬送装置20(搬送装置)とを有する。複数の生簀10は、任意の海域にまとまって配置されることで生簀群10Aを構成する。なお、
図1では、2つの生簀10が図示されているが、本実施形態では、説明の便宜上、生簀群10Aが4つの生簀10を含むものとする。
【0017】
生簀10は、飼育する魚介類を囲い込むための網11と、網11の形状を任意の箱状に保つための枠体12とを備える。
また、生簀10は、海面上に浮上するブイ13を有し、枠体12はロープなどの吊下手段を介してブイ13に吊下支持されている。ブイ13は、係留索14で海底に接続されており、これにより、生簀10は、海洋上の所定位置に定置される。
なお、生簀10の具体的なタイプは特に限られない。例えば、生簀10は、枠体12に空気を出し入れさせることで、海面上に浮上させたり、海中に沈潜させたりする浮沈式の生簀であってもよい。
【0018】
飼料搬送装置20は、生簀群10Aのうちの任意の生簀10を給餌対象として、この生簀10に飼料を搬送する。また、飼料搬送装置20は、給餌対象を切り替えることで、生簀群10Aの各生簀10に対して飼料を順に搬送することができる。飼料搬送装置20の構成については後述する。
【0019】
[飼料搬送装置20]
飼料搬送装置20は、
図1に示すように、粒状の飼料が貯留される貯留槽21と、貯留槽21から生簀群10Aの付近の海中に至る搬送管22と、搬送管22の内部に搬送気流を形成する気流発生装置23と、搬送管22の先端部に設けられた分岐装置30と、分岐装置30から各生簀10に至る複数の供給管24と、制御装置25と、を備えている。
【0020】
貯留槽21、気流発生装置23および制御装置25は、鉄骨製の櫓などで構成された構造体15に設置されており、給餌基地を構成している。構造体15は、生簀10が定置された海域の近辺に設置されており、構造体15の下部が海底に固定され、構造体15の上面が海面上に配置されている。
なお、貯留槽21、気流発生装置23および制御装置25を含んだ給餌基地は、海上の構造体15に設定されることに限定されず、陸上に設定されてもよい。
【0021】
貯留槽21は、いわゆるサイロなどで構成され、内部に粒状の飼料を貯留するとともに、下部の供給部210から所定量ずつの飼料を供給可能である。供給部210は、例えば、制御装置25により動作を制御されるロータリーフィーダ等の給餌量調整部を含んで構成される。
なお、貯留槽21に対する飼料の補給は、飼料を積載した船舶Sなどにより行われる。
【0022】
搬送管22は、貯留槽21の供給部210に接続される基端部221と、分岐装置30に接続される先端部222とを有する。すなわち、搬送管22は、貯留槽21から分岐装置30まで連通する搬送流路を形成している。
なお、本実施形態において、搬送管22は、構造体15や海底に対して留め具などにより固定されている。
【0023】
気流発生装置23は、電動モータもしくはエンジン駆動のコンプレッサなどで構成され、搬送管22の基端部221に圧縮空気を供給する。これにより、搬送管22内には、貯留槽21から供給された飼料が混入された気流(飼料混入気流)が形成され、飼料混入気流は、搬送管22内を分岐装置30に向かって進む。この気流発生装置23は、制御装置25により駆動制御される。
【0024】
分岐装置30は、生簀群10Aの近傍の水中(海中)に配置される。分岐装置30は、搬送管22から送られる飼料混入気流を、目的の生簀10に対応する供給管24に対して送るように構成される。なお、分岐装置30と搬送管22との間、および、分岐装置30と供給管24との間には、それぞれ、非常時などに閉状態にできる弁体26,27が設けられてもよい。分岐装置30の構成については後述する。
【0025】
供給管24は、生簀10ごとに対応して設けられ、分岐装置30に接続された基端部と、供給部24Aに接続された先端部とを有する。ここで、供給管24は、分岐装置30から供給部24Aに向かって海中から海上に延びており、供給管24の一部分が海上に配置されている。供給部24Aは、生簀10内に配置された下向きの放出口を有しており、供給管24から供給された飼料混入気流に含まれる飼料を、当該放出口から生簀10内に放出する。
【0026】
制御装置25は、貯留槽21の供給部210、気流発生装置23、および、分岐装置30のそれぞれに電気的に接続され、これらの動作を制御する。例えば、分岐装置30は、搬送管22に沿ってケーブルを設置して制御装置25に電気的に接続することができる。
なお、図示を省略するが、給餌基地には、飼料搬送装置20の各部位に電力を供給するための電源が設けられている。
【0027】
[分岐装置30]
本実施形態の分岐装置30の構成について、
図2および
図3を参照して説明する。
分岐装置30は、
図2および
図3に示すように、搬送管22に接続される分岐部31と、分岐部31に接続される複数の分岐流路管32A~32Dと、分岐流路管32A~32Dにそれぞれ設けられる制御弁33A~33Dと、制御弁33A~33Dを収容する筐体34と、を備える。
以下では、分岐流路管32A~32Dがそれぞれ略水平な同一方向に沿って配置されるとして、分岐流路管32A~32Dの延伸方向かつ飼料混入気流の進行方向となる方向をX方向とする。また、X方向に直交かつ鉛直方向に沿った方向をZ方向とし、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とする。
【0028】
図2は、分岐装置30をY方向に沿った方向から見た側面図であり、
図3は、分岐装置30をZ方向に沿った方向から見た平面図である。
本実施形態において、分岐装置30は、生簀群10Aに含まれる4つの生簀10に対応する構成を有するものとする。すなわち、本実施形態において、分岐装置30は、4つの生簀10にそれぞれ対応するように、4つの分岐流路管32A~32Dと、4つの制御弁33A~33Dと、を有する。
なお、
図2および
図3には、分岐流路管32Dおよび制御弁33Dが、配置上、図示されていない。
図2において、分岐流路管32Dおよび制御弁33Dの各配置は、分岐流路管32Cおよび制御弁33Cの各配置の後側であり、
図3において、分岐流路管32Dおよび制御弁33Dの各配置は、分岐流路管32Bおよび制御弁33Bの各配置の後側である。
【0029】
分岐部31は、搬送管22と分岐流路管32A~32Dとの間を連結する部分である。この分岐部31は、上流側管部311と、上流側管部311から分岐しながら延びる複数の下流側管部312A~312Dとを有する(
図4参照)。
【0030】
上流側管部311は、弁体26を介して、搬送管22に接続されている。下流側管部312A~312Dは、分岐流路管32A~32Dに対して一対一で対応し、対応する分岐流路管32A~32Dにそれぞれ接続される。
また、下流側管部312A~312Dは、
図4に示すように、上流側管部311からX方向に向かうに従って搬送管22の中心軸Cから離れるように湾曲している。また、下流側管部312A~312Dの各内面は、上流側管部311の内面に対して連続した面であり、上流側管部311から下流側管部312A~312Dにかけて滑らかな流路が形成されている。さらに、下流側管部312A~312Dが形成する湾曲形状は、搬送管22の中心軸Cに対して軸対称である。
なお、下流側管部312A~312Dは、互いに共通の構成を有するため、以下では、下流側管部312A~312Dを単に下流側管部312と記載する場合がある。
【0031】
本実施形態において、分岐流路管32A~32Dは、Y方向に2個ずつ、Z方向に2個ずつ並べられている。これら分岐流路管32A~32Dは、互いに共通の構成を有するため、以下では、分岐流路管32A~32Dを単に分岐流路管32と記載する場合がある。同様に、分岐流路管32A~32Dに設けられる制御弁33A~33Dは、互いに共通の構成を有するため、以下では、制御弁33A~33Dを単に制御弁33と記載する場合がある。
【0032】
分岐流路管32は、例えば
図2に示すように、飼料混入気流の分岐流路をX方向に沿って形成している。具体的には、分岐流路管32は、上流側から順に、上流側分岐流路管部321、制御弁33の管路331、および下流側分岐流路管部322を有している。
分岐流路管32の基端部、すなわち上流側分岐流路管部321の一端部は、分岐部31のうちの対応する下流側管部312に接続される。また、上流側分岐流路管部321の他端部は、制御弁33の管路331の入口ポートに接続される。
分岐流路管32の先端部、すなわち下流側分岐流路管部322の一端部は、弁体27を介して、対応する供給管24に接続される。また、下流側分岐流路管部322の他端部は、制御弁33の管路331の出口ポートに接続される。
【0033】
制御弁33は、分岐流路管32による分岐流路の開閉を行う。本実施形態の制御弁33は、電動弁であり、制御装置25によって制御される。電動弁の具体的な種類は、特に限定されないが、例えばバタフライ式電動弁が挙げられる。また、電動弁の具体的構成は、従来技術と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略するが、例えば、分岐流路管32の一部を構成する管路331(弁箱)と、管路331内で開閉動作を行う弁体と、弁体を駆動するモータなどの駆動部とを有する。
【0034】
筐体34は、海中に配置されるため、筐体34の内部に海水が侵入しないように、制御弁33A~33Dを液密に収容する水密筐体であればよい。ここで、水密筐体とは、内部を密封したうえで水中に配置された際にも水圧で浸水が生じない筐体である。
例えば、分岐流路管32A~33Dは筐体34をX方向に貫通しているが、分岐流路管32A~32Dの各外周面と筐体34との間は、例えば溶接などによって封止されている。
【0035】
以上に説明した分岐装置30は、海底面に設置された架台36によって支持される。この架台36は、分岐装置30のうちの分岐部31、分岐流路管32および筐体34をそれぞれ支持するように構成される。なお、架台36は、分岐装置30のX方向およびY方向が水平面に略平行になるように設置される。ただし、海底面の状況によっては、分岐装置30の姿勢が若干傾いた状態に設置されてもよい。
【0036】
なお、本実施形態で参照する図面では、管部材同士の接続、弁部材同士の接続、および、管部材と弁部材との接続には、それぞれフランジ継手が用いられているが、本発明はこれに限られず、他の形式の管継手が用いられてもよい。
【0037】
[飼料搬送装置20の動作例]
給餌対象である生簀10に飼料を搬送する場合における飼料搬送装置20の動作例について、
図5のフローチャートおよび
図6を参照して説明する。本実施形態の飼料搬送装置20による飼料搬送方法は、給餌対象である生簀10に対して飼料を供給する供給動作と、飼料搬送装置20内に残留した飼料を除去するための清掃動作との2種類の動作が行われる。
なお、説明の便宜上、給餌対象である生簀10(対象搬送先)は、分岐装置30の分岐流路管32Aおよび制御弁33Aが対応しているものとする。
【0038】
まず、給餌対象である生簀10に対して飼料を供給する供給動作を行う。
具体的には、制御装置25の制御により、給餌対象である生簀10に対応する制御弁33Aが開状態になり、その他の生簀10に対応する制御弁33B~33Dが閉状態になる(ステップS1)。次いで、制御装置25の制御により、気流発生装置23が搬送管22の基端部221に圧縮空気を供給開始し、かつ、貯留槽21の供給部210が搬送管22の基端部221に飼料を供給開始する(ステップS2;供給ステップ)。これにより、搬送管22内に分岐装置30へ向かう飼料混入気流が形成される。
【0039】
ここで、飼料混入気流は、分岐装置30の分岐部31で分岐し、複数の分岐流路管32A~32Dのそれぞれに進む。
給餌対象である生簀10に対応する制御弁33Aは開状態である。このため、分岐流路管32Aに分岐した飼料混入気流は、制御弁33Aを通過し、対応する供給管24を介して給餌対象である生簀10にまで搬送される。飼料混入気流中の飼料は、供給管24の先端部に設けられた供給部24Aにより空気を分離されつつ海水に投下され、生簀10内に放出される。
一方、目的外の各生簀10に対応する制御弁33B~33Dは閉状態である。このため、分岐流路管32B~32Dに分岐した飼料混入気流は、制御弁33B~32Dで流れを止められる。これにより、
図6の上側に示すように、制御弁33B~32Dの上流側に飼料Fが蓄積し、分岐部31のうちの分岐流路管32Aに向かう流路のみが開通した状態になる。
なお、
図6には、分岐流路管32A~32Dのうち、分岐流路管32A,32Cが代表して例示されている。また、
図6には、分岐流路管32A,32C内に配置される制御弁33A,33Cの各弁体332が例示されている。
【0040】
その後、所定時間が経過するまで飼料の供給を継続する。制御装置25により所定時間が経過したと判断された場合(ステップS3;Yesの場合)、貯留槽21の供給部210は、飼料の供給を停止する(ステップS4;供給停止ステップ)。
以上により、給餌対象である生簀10に対して飼料を搬送する搬送動作が行われる。なお、ステップS4において、気流発生装置23による気流の供給は継続している。
【0041】
次いで、飼料搬送装置20内に残留した飼料を除去するための清掃動作を行う。
具体的には、制御装置25の制御により、分岐装置30における全ての制御弁33A~33Dが開状態になる(ステップS5;清掃ステップ)。これにより、
図6の下側に示すように、気流発生装置23から供給される圧縮空気は、4つの分岐流路管32A~32Dの全てを通過し、分岐流路管32A~32Dに残留していた飼料Fを押し流す。
【0042】
その後、所定時間が経過するまで気流の供給を継続する。制御装置25により所定時間が経過したと判断された場合(ステップS6;Yesの場合)、気流発生装置23は、圧縮空気の供給を停止する(ステップS7)。
以上により、
図5のフローが終了する。その後、給餌対象である生簀10を切り替え、
図5のフローを再び繰り返すことにより、生簀群10Aの各生簀10に対して飼料を順に供給することができる。
【0043】
[飼料搬送装置20の他の動作例]
飼料搬送装置20の他の動作例について説明する。
前記の供給動作(ステップS1~S4)では、1つの生簀10に対して飼料を供給することを順に行う場合について説明しているが、複数の生簀10に対して同時に飼料を供給してもよい。例えば、4つの生簀10のうちの2つの生簀10を給餌対象とする場合、当該2つの生簀10に対応する制御弁33を開状態にし、残りの2つの生簀10に対応する制御弁33を閉状態にして、飼料混入気流を形成することにより、給餌対象である2つの生簀10に飼料を供給することができる。
【0044】
また、前述の清掃動作(ステップS5~S7)では、全ての制御弁33A~33Dを開状態にすることで、全ての分岐流路管32A~32Dを同時に清掃する場合について説明しているが、分岐流路管32A~32Dを個別に清掃してもよい。例えば、ステップS5以前に開状態であった制御弁33Aを閉状態にし、ステップS5以前に閉状態であった制御弁33B~33Dを1つずつ順に開状態にすることにより、分岐流路管32B~32Dを個別に清掃することができる。この場合、各分岐流路管32B~32Dに流れる気流の圧を強められるため、各分岐流路管32B~32D内の飼料Fをより好適に押し流すことができる。
【0045】
[本実施形態の効果]
本実施形態の分岐装置30は、前述したように、各制御弁33の開閉動作を制御することで、任意の生簀10を対象として飼料を搬送することができる。また、複数の制御弁33は、筐体34によって収容される。ここで、筐体34は、内部を密封したうえで水中に配置された際にも水圧で浸水が生じない水密筐体である。このため、本実施形態の分岐装置30は、制御弁33を水から保護した状態で複数の生簀10の近傍となる水中に設置可能であり、この分岐装置30を用いた飼料搬送装置20では、必要な供給管24の物量を抑えることができる。また、本実施形態の分岐装置30は、水中に設置されることで台風などの海象による影響を受け難くなり、安定した設置が容易である。
また、本実施形態の分岐装置30は、生簀10に飼料を搬送する飼料搬送装置20に用いられることで、養殖の大規模化に対応できる新たな給餌方法を確立させることができる。
【0046】
本実施形態の分岐装置30において、分岐部31の下流側管部312A~312Dの各内面は、上流側管部311の内面に対する連続面とされている。
ここで、仮に、下流側管部312A~312Dの各内面と上流側管部311の内面との間に面の連続性を絶つ凹凸等の断続部が存在する場合、この断続部に飼料が引っ掛かり、つまりの原因になってしまう。
本実施形態では、下流側管部312A~312Dの各内面と上流側管部311の内面とが滑らかに連続しているため、飼料混入気流を上流側管部311から下流側管部312A~312Dのそれぞれに円滑に流すことができ、飼料が管内壁に衝突して飼料の粒形状に欠けが生じることを抑制できる。その結果、給餌対象の摂食性を向上することができる。
【0047】
本実施形態の分岐装置30では、制御弁33として空気式制御弁でなく電動弁を採用しているため、筐体34内の空気を排出させる必要がなく、構成を簡素化できる。
【0048】
本実施形態の飼料搬送装置20は、前述した本実施形態の分岐装置30と同様の効果を奏する。すなわち、本実施形態の飼料搬送装置20では、貯留槽21および気流発生装置23が給餌基地を構成し、この給餌基地から分岐装置30まで搬送管22が延設され、分岐装置30から生簀10まで供給管24が延設される。すなわち、本実施形態では、分岐装置30を給餌基地から分離し、生簀10の近傍に設置するとともに、搬送管22を介して給餌基地の気流発生装置23に接続することで、分岐装置30から生簀10に至る複数の供給管24の物量を抑えることができる。
【0049】
本実施形態の飼料搬送装置20を用いた搬送方法は、前述した供給ステップ、供給停止ステップおよび清掃ステップを行うことで、目的の生簀10に飼料を搬送した後の分岐装置30の清掃を行うことができる。特に、目的の生簀10に対応する分岐流路管32だけでなく、目的以外の生簀10に対応する分岐流路管32において、飼料が残留しないような清掃を行うことができる。これにより、各分岐流路管32における飼料の固着を防止できる。
【0050】
[変形例]
本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
【0051】
前記実施形態では、制御弁33が電動弁であるが、他の駆動方式の制御弁であってもよい。例えば、制御弁33として空気式制御弁を設ける場合、制御弁33を駆動するための空気配管を設ければよい。ただし、空気配管としては、制御弁33に空気を供給するための供給用配管と、制御弁33から空気を排出するための排出用配管とを設けることを必要とする。
【0052】
前記実施形態では、搬送管22と複数の分岐流路管32A~32Dとの間に分岐部31が設けられるが、搬送管22を分岐部として兼用し、各分岐流路管32A~32Dが直接、搬送管22に接続されてもよい。
【0053】
前記実施形態では、説明の便宜上、4つの生簀10に対して飼料を搬送するための分岐装置30および飼料搬送装置20を説明しているが、生簀10の数はこれに限られない。例えば、分岐装置30は、飼料の搬送対象となる生簀10の数と同じ数だけの分岐流路管32と、各分岐流路管32に対応する構成とを備えればよい。同様に、飼料搬送装置20は、飼料の搬送対象となる生簀10の数と同じ数だけの供給管24と、各供給管24に対応する構成とを備えればよい。
【0054】
前記実施形態では、気流を利用して飼料を搬送する飼料搬送装置20について説明しているが、本発明はこれに限られない。例えば、本実施形態の分岐装置30は、水流を利用して飼料を搬送する飼料搬送装置に用いられてもよい。
【0055】
前記実施形態では、搬送対象となる粉粒体が飼料であり、海洋上に設定された生簀に対して飼料を搬送する場合について説明しているが、本発明はこれに限られない。すなわち、本発明の搬送対象は任意の粉粒体であればよく、本発明は、粉粒体を任意の搬送先に搬送するための搬送装置や分岐装置として利用可能である。
例えば、本発明は、水質改善剤を粉粒体とし、海中の任意の領域を搬送先として、水質改善剤を海中の各領域に適宜散布するための搬送装置や分岐装置として利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、分岐装置、搬送装置および搬送方法に関し、飼料などの粉粒体を生簀などの水中または水上の搬送先へ搬送することに利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1…養殖システム、10…生簀、10A…生簀群、11…網、12…枠体、13…ブイ、14…係留索、15…構造体、20…飼料搬送装置、21…貯留槽、210…供給部、22…搬送管、221…基端部、222…先端部、23…気流発生装置、24…供給管、24A…供給部、25…制御装置、26…弁体、27…弁体、30…分岐装置、31…分岐部、311…上流側管部、312,312A~312D…下流側管部、32,32A~32D…分岐流路管、321…上流側分岐流路管部、322…下流側分岐流路管部、33,33A~33D…制御弁、331…管路、34…筐体(水密筐体)、36…架台。