(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133537
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】絶縁回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20220907BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20220907BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H05K1/02 G
H01L23/12 D
H05K3/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032267
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】青木 慎介
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓也
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA02
5E338AA18
5E338BB47
5E338CC08
5E338CD23
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】「ダミー部」にろう材が流れだして金属板表面に這い上がったとしても、製品への影響を抑制し、製品の外観不良及びエッチング不良を防止する。
【解決手段】スクライブラインが形成された矩形状のセラミックス板と金属板とをろう材を介して積層する積層工程と、積層体を加熱して冷却することにより接合する接合工程と、接合工程後に金属板をエッチングするエッチング工程と、エッチング工程後にセラミックス板を分割することにより複数の絶縁回路基板を形成する分割工程と、を有し、セラミックス板に製品部とダミー部とを区画形成するとともに、一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、対向する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成しておき、積層工程では、セラミックス板の一つの角部に金属板の一つの角部を揃えた状態に位置決めすることにより、対向する角部を構成する二辺に、ダミー部の一部をはみ出した状態に配置する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割用スクライブラインが形成された矩形状のセラミックス板と金属板とをろう材を介して積層する積層工程と、積層体を加熱してろう材を溶融させた後、冷却することにより前記セラミックス板と前記金属板とを接合する接合工程と、接合工程後に前記金属板をエッチングして不要部分を除去するエッチング工程と、エッチング工程後に前記セラミックス板を前記スクライブラインに沿って分割することにより複数の絶縁回路基板を形成する分割工程と、を有する絶縁回路基板の製造方法であって、
前記セラミックス板に前記絶縁回路基板となる製品部とその周りのダミー部とを前記分割用スクライブラインにより区画形成するとともに、一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対向する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成しておき、
前記積層工程では、前記セラミックス板の前記一つの角部に前記金属板の一つの角部を揃えた状態に位置決めすることにより、前記一つの角部に対向する角部を構成する二辺に、前記セラミックス板のダミー部の一部を前記金属板からはみ出した状態に配置することを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記金属板を板素材から切断して形成する金属板形成工程を有し、前記積層工程では、前記金属板の切断端部において、バリが出ている側の面を前記セラミックス板の前記ダミー部の表面に重ねることを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記板素材は前記金属板の幅に設定された長尺材であり、前記金属板形成工程では、前記板素材を長さ方向に間欠的に搬送しながらシャーにより前記金属板の長さに切断して前記金属板を形成し、前記積層工程では、前記金属板の前記金属板形成工程における搬送方向の後方側の切断端部を前記ダミー部に配置し、かつ該切断端部のバリが出ている側の面を前記ダミー部の表面に重ねることを特徴とする請求項2に記載の絶縁回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流、高電圧を制御するパワーモジュール等に用いられる絶縁回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパワーモジュール等に用いられる絶縁回路基板として、例えば、特許文献1に記載の金属接合セラミックス基板(絶縁回路基板)では、AlN(窒化アルミ)、Al2O3(アルミナ)、Si3N4(窒化ケイ素)などからなるセラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に第一の金属板が接合されて構成された回路層と、セラミックス基板の他方の面に第二の金属板が接合されて構成された金属層とを備えている。また、その製造工程として、切断ライン(スクライブライン)を形成して複数のセラミックス基板に分割可能なセラミックス板に、金属板を接触配置した後、活性金属法等によってこれらを接合し、金属板の不要な部分をエッチングによって除去することで回路パターンを形成し、セラミックス板をスクライブラインから分割して個々の絶縁回路基板を得ることが記載されている。
なお、セラミックス板と金属板とをろう付けする場合は、金属板が銅又は銅合金板である場合、ろう材には活性金属を含むAg-Ti系やAg-Cu-Ti系のろう材ものが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エッチング法で接合体を製造する際、回路形成用に必要なレジスト印刷の位置決めをするためにセラミックス板の少なくとも対角2角以上が露出している必要があり、そのために少なくとも連続する金属板の2辺が接合後にセラミックス基板外周より内側に存在する必要がある。
一般的にセラミックス板の外周部には製造過程で製品部分となるセラミックス板を保護するために「ダミー部」が存在する。通常、このセラミックス板の露出している二つの角部をその後のレジスト印刷時の基準としている。
【0005】
一方、接合性確保のため、接合必要箇所には最低限ろう材が存在する必要がある。必要なろう材面積を確保しながら、金属板とろう材の位置関係が不適切な場合、接合時にセラミックス板が露出する部分(「ダミー部」)に、セラミックス板と金属板との間から余剰なろう材が流れ出し、金属板の側面を経て金属板表面に這い上がり外観不良および回路形成時のエッチング不良の原因となる問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、「ダミー部」にろう材が流れだして金属板表面に這い上がったとしても、製品への影響を抑制し、製品の外観不良及びエッチング不良を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の絶縁回路基板の製造方法は、分割用スクライブラインが形成された矩形状のセラミックス板と金属板とをろう材を介して積層する積層工程と、積層体を加熱してろう材を溶融させた後、冷却することにより前記セラミックス板と前記金属板とを接合する接合工程と、接合工程後に前記金属板をエッチングして不要部分を除去するエッチング工程と、エッチング工程後に前記セラミックス板を前記スクライブラインに沿って分割することにより複数の絶縁回路基板を形成する分割工程と、を有する絶縁回路基板の製造方法であって、
前記セラミックス板に前記絶縁回路基板となる製品部とその周りのダミー部とを前記分割用スクライブラインにより区画形成するとともに、一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対向する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成しておき、
前記積層工程では、前記セラミックス板の前記一つの角部に前記金属板の一つの角部を揃えた状態に位置決めすることにより、前記一つの角部に対向する角部を構成する二辺に、前記セラミックス板のダミー部の一部を前記金属板からはみ出した状態に配置する。
【0008】
セラミックス板と金属板とは接合時に一つの角部を基準として二辺が位置決めされ、残りの二辺のダミー部において露出しているセラミックス板の対向する二つの角部が、エッチングの際のレジスト印刷の基準となる。
そして、セラミックス基板の外周部に形成されるダミー部(製品部以外の部分)について、金属板との位置決めに用いられる一つの角部を構成する二辺については、他の二辺のダミー部より細幅に形成したことにより、他方の幅広のダミー部において金属板の重なり幅を大きくすることが可能になる。このため、接合工程で、この幅広のダミー部において、溶融したろう材が万一金属板の表面に這い上がったとしても、分割用スクライブラインから離間した位置となり、製品部への影響を抑制することができる。
【0009】
この製造方法において、前記金属板を板素材から切断して形成する金属板形成工程を有し、前記積層工程では、前記金属板の切断端部において、バリが出ている側の面を前記セラミックス板の前記ダミー部の表面に重ねるとよい。
【0010】
金属板のバリをダミー部の表面に重ねることにより、接合工程時に溶融したろう材をバリによりせき止めることができ、金属板の外に流れ出ることが防止される。
【0011】
この製造方法において、前記板素材は前記金属板の幅に設定された長尺材であり、前記金属板形成工程では、前記板素材を長さ方向に間欠的に搬送しながらシャーにより前記金属板の長さに切断して前記金属板を形成し、前記積層工程では、前記金属板の前記金属板形成工程における搬送方向の後方側の切断端部を前記ダミー部に配置し、かつ該切断端部のバリが出ている側の面を前記ダミー部の表面に重ねるとよい。
【0012】
板素材を間欠的に搬送しながらシャーにより切断すると、切断刃より搬送方向前方側で金属板が切り落とされる。このとき、切り落とされた金属板の搬送方向後方側の切断端面は切断による破断面が生じて粗い表面になる。また、切断により金属板の表面側に突出するバリが生じ、裏面側はだれ面になる。一方、この金属板が切り落とされた後の板素材の切断端部は、金属板を切断した後に引き上げられる切断刃の表面でこすられるために比較的平滑な切断端面になる。また、切断により板素材の表面側がだれ面で、裏面側に突出するバリになる。ただし、切断後に切断刃によってこすり上げられるので、金属板よりバリの高さは小さい。
そこで、切り落とされた金属板の搬送方向後方側の切断端部をセラミックス板のダミー部に配置して、そのバリをダミー部の表面に重ねることにより、接合工程時に溶融したろう材をバリによりせき止める効果が大きく、金属板の外に流れ出ることを有効に防止できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、「ダミー部」にろう材が流れだして金属板表面に這い上がったとしても、製品への影響を抑制し、製品の外観不良及びエッチング不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の絶縁回路基板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図2】一実施形態の製造方法で製造される絶縁回路基板の例を示す縦断面図である。
【
図3】
図2の絶縁回路基板の製造途中のセラミックス板を示す平面図である。
【
図4】
図3に示すセラミックス板にろう材を形成した状態を示す平面図である。
【
図5】
図4に示す状態のものに金属板を積層する前の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す状態から金属板を積層した状態を示す平面図である。
【
図7】ダミー部をすべて同じ幅で設定した場合の
図6同様の平面図である。
【
図8】板素材をシャーで切断している状態を示す模式図である。
【
図9】シャーで切断された金属板の両切断端部を示す断面図である。
【
図10】接合した後の金属板の切断端部付近を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の絶縁回路基板の製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態の製造方法で製造される絶縁回路基板1は、例えば電源回路に用いられるパワーモジュール用基板である。この絶縁回路基板1は、
図2に示すように、矩形状のセラミックス基板2と、そのセラミックス基板2の一方の面に形成された回路層3と、セラミックス基板2の他方の面に形成された放熱層4と、を有している。これら回路層3及び放熱層4は、セラミックス基板2より平面形状が小さく、周囲にセラミックス基板2が露出している。
図2等には、便宜上、回路層3、放熱層4とも矩形状のものとして示しているが、その平面形状は特に限定されるものではない。
【0016】
セラミックス基板2は、回路層3と放熱層4との間の電気的接続を防止するものであって、窒化アルミニウム(AlN),窒化ケイ素(Si3N4),酸化アルミニウム(Al2O3)等を用いることができるが、そのうち、窒化ケイ素が高強度であるため、好適である。このセラミックス基板2の厚さは0.2mm以上1.5mm以下の範囲内に設定される。
【0017】
回路層3は、アルミニウム又はアルミニウム合金、銅又は銅合金が適用できるが、電気特性に優れる銅又は銅合金が好適である。また、放熱層4も回路層3と同じ材質の金属が用いられ、例えば銅又は銅合金から構成される。これら回路層3及び放熱層4としては、例えば、純度99.96質量%以上の無酸素銅の銅板がセラミックス基板2に例えば活性金属ろう材(例えばAg-Ti又はAg-Cu-Tiからなるろう材)にてろう付け接合されることにより形成される。この回路層3及び放熱層4の厚さは0.1mm以上5mm以下の範囲内に設定される。
【0018】
このように構成される絶縁回路基板1の製造方法について説明する。
この絶縁回路基板1は、
図1に示すように、セラミックス板形成工程S1、金属板形成工程S2、積層工程S3、接合工程S4、エッチング工程S5、分割工程S6を経て製造される。セラミックス板形成工程S1と金属板形成工程S2とは、その順序は問われず、いずれを先に実施してもよく、同時進行してもよい。
以下、工程順に説明する。回路層3と放熱層4とは、エッチング工程でのエッチングの形状が異なる以外、金属板形成工程S2、積層工程S3、接合工程S4、エッチング工程S5を経て形成され、最後の分割工程S6により、回路層3及び放熱層4を有する絶縁回路基板1が形成される。以下では、回路層3と放熱層4とに対して同じ処理内容である場合には、特に回路層3と放熱層4とを区別することなく説明する。
【0019】
(セラミックス板形成工程:S1)
図3等に示すように、複数個のセラミックス基板2を形成し得る十分な大きさの1枚のセラミックス板11を用意し、その片面又は両面に、レーザ加工で溝状の分割用スクライブライン(以下、単にスクライブラインと称す)12を形成する(
図5等には片面にスクライブライン12を形成した例を示す)。このスクライブライン12で分割することにより、複数個のセラミックス基板2を得ることができる。スクライブライン12は、セラミックス板11に縦横に複数本ずつ形成されることにより、複数個(図示例では3×4=12個)のセラミックス基板2を区画するとともに、セラミックス板11の周縁部に、3mm以上20mm以下の幅で製品としないダミー部13A,13Bを形成している。3mm未満では、後の分割工程でセラミックス板11を分割するのが難しくなる。20mmを超えると材料に無駄が生じ、コスト高を招く。このダミー部13A,13Bを除く、内側部分が製品となる製品部17である。
この場合、セラミックス板11の一つの角部を構成する二辺におけるダミー部13Aと、他の二辺におけるダミー部13Bとで幅寸法を異ならせておく。図示例では、ダミー部13Aがダミー部13Bより細幅に形成されている。
また、
図3等において、セラミックス板11の右上の切り欠き16は、セラミックス板11の方向識別のために設けられる。
【0020】
(金属板形成工程S1)
回路層12及び放熱層4を形成するための金属板21は、スクライブライン12で区画されたセラミックス板11の製品部17(セラミックス基板2となる部分)を一体に覆うことができる大きさで、かつ、製品部17よりも若干大きい寸法に形成されている。
図6に示すように、セラミックス板11の一つの角部14を構成する二辺15a,15bに自身の二辺22a,22bを揃えた状態で、他の二辺22a,22bがダミー部13B上にはみだす大きさに形成される。
また、この金属板12は、長尺な板素材(長尺材)31を長さ方向に間欠的に搬送しながらシャー32により切断して形成される。この板素材31の幅は予め金属板21の幅に形成されており、金属板21の長さに合わせて切断することにより、金属板21として使用することができる。
【0021】
この板素材31を切断するシャー32は、
図7に示すように、板素材31を矢印Mで示す長さ方向に搬送する搬送台33と、搬送台33上の板素材31を押さえる板押さえ34と、上刃35と、下刃36と、を有している。下刃36は搬送台33の先端に固定状態に設けられており、上刃35が上下移動する。一般に上刃35は、水平方向(
図7の紙面に直交する方向)に対して若干の傾斜角(シャー角)を有して形成されている。
【0022】
そして、板素材31を上刃35と下刃36との切断位置から金属板21の長さ分、前方に突出させ、板素材31を板押さえ34で押さえた状態で上刃35を下降させることにより、上刃35と下刃36との間で板素材31を切断して金属板21を形成する。板素材31は、1個の金属板21が切断された後、金属板21の長さに相当する長さ分、搬送され、次の金属板21が切断される。以降、順次間欠的に搬送されながら1枚ずつ金属板21が切断される。
【0023】
このシャー32での切断において、切断された金属板21には、搬送方向両端の切断端部23,24にそれぞれバリ25が生じる。この場合、
図8に示すように、板素材31(金属板21)の搬送方向後方側の切断端部23では、上刃35によって切り落とされる際に金属板21の表面21a方向(上刃35が配置されている方向)にバリ25が突出する。また、その切断端面は、裏面21b側にだれ面26が形成され、バリ25が出ている側(表面21a側)に破断面27が形成され、だれ面26と破断面27との間が比較的平滑なせん断面28となる。
【0024】
金属板21を切り落とした後の板素材31の切断端部(板素材31(金属板21)の搬送方向前方側の切断端部)24にも、バリ25が生じ、だれ面26、せん断面28、破断面27が形成されるが、金属板21の搬送方向後方の切断端部23との間で切断されたものであるので、バリ25は、切断端部23とは反対側の金属板21の裏面21bに形成され、だれ面26が表面21aに形成される。また、シャー32の上刃35が金属板21を切断した後に初期位置に戻る際に板素材31の切断端面に接触してこれをこすり上げながら移動するので、バリ25や破断面27が金属板21の搬送方向後方側の切断端部23よりも小さくなる。言い換えると、金属板21において、搬送方向後方側の切断端部23はバリ25や破断面27が大きく形成され、搬送方向前方側の切断端部24は、後方側の切断端部23に比べてバリ25や破断面27が小さく形成される。
【0025】
(積層工程)
まず、
図4及び
図5に示すように、セラミックス板11にろう材41を配置する。ろう材41はペースト状のもの、矩形状に形成した箔状のもののいずれを用いてもよい。いずれの場合も、ろう材41は、セラミックス板11のダミー部13A,13Bを除き、スクライブライン12で区画された製品部17の全領域を覆うように設けられる。
【0026】
そして、
図5及び
図6に示すように、ろう材41の上に金属板21を重ねる。金属板21は、セラミックス板11の一つの角部14を構成する二辺15a,15bに金属板21の二辺22a,22bを位置決めして揃えた状態とされ、この状態で、金属板21の他の二辺22c、22dは、セラミックス板11のダミー部13B上に配置される。
この金属板21は、セラミックス板11の製品部17よりも大きい平面積に形成されており、一方、セラミックス板11はダミー部13Aよりダミー部13Bの幅が大きく形成されているため、セラミックス板11の一つの角部14を構成する二辺15a,15bに二辺22a,22bを位置決めすると、金属板21はセラミックス板11のダミー部13B上にはみ出し幅L1で大きくはみ出した状態に配置される。
なお、
図6の積層状態において、セラミックス板11に形成しておいた切り欠き16は露出した状態である。
【0027】
また、先の金属板形成工程において、金属板21にバリ25が生じていることを説明したが、この積層工程においては、金属板形成工程において搬送方向前方側に配置されていた切断端部24はセラミックス板11の二辺15a,15bに位置決めされる二辺22a,22bのうちの一方に配置され、搬送方向後方側に配置されていた切断端部23は、そのバリ25をダミー部13Bの表面に重ねるように配置される。これにより、この切断端部23におけるバリ25がセラミックス板11の表面に向けて配置される(
図9参照)。
一方、金属板形成工程において搬送方向前方側に配置されていた切断端部24は、搬送方向後方側の切断端部23のバリ25の突出方向とは逆方向にバリ25が生じ、その反対側はだれ面26に形成されているので、セラミックス板11にはだれ面26側が重ね合わせられることになる(
図9参照)。
【0028】
(接合工程)
このようにしてろう材41を介して積層したセラミックス板11と金属板21との積層体を加圧状態で加熱炉内に設置し、真空雰囲気下で接合温度に加熱した後冷却することにより、セラミックス板11に金属板21を接合する。この場合の接合条件としては、例えば0.03MPa以上0.25MPa以下の荷重で積層体を加圧し、10-6Pa以上10-3Pa以下の真空雰囲気下で、例えば790℃以上850℃以下の接合温度で、1分~60分の加熱とする。
【0029】
この接合工程において、セラミックス板11と金属板21との間のろう材41は溶融する。また、積層方向に加圧されているため、セラミックス板11と金属板21との間で押し広げられるが、ダミー部13Bの表面にバリ25を向けて配置されている金属板21の切断端部23においては、溶融ろう材41の流出をバリ25がせき止めることができ、ダミー部13Bの露出部分にろう材41が付着することが抑制される。このダミー部13Bの露出部分へのろう材41の流出が抑制できれば、金属板21表面へのろう材41の這い上がりも抑制でき、ろう染み等の発生を防止できる。
【0030】
また、万一、溶融ろう材41が金属板21の切断端部23を超えてダミー部13Bの露出部分に流れ出た場合、金属板21の端面を伝って金属板21の表面まで這い上がるおそれがあるが、セラミックス板11のダミー部13Bは十分に広い幅で形成され、かつ、金属板21の重なり幅L1も大きいので、金属板21の表面にろう材が這い上がったとしても、金属板21の表面でスクライブライン12の位置を超えて製品部17にまで広がることは抑制される。
【0031】
図7は、セラミックス板11の四辺のダミー部13がすべて同じ幅寸法である場合を示している。この
図7において、
図6と共通部分には同一符号を付している。セラミックス板11及び金属板21の全体の大きさは
図6に示すものと同じとする。
この
図7に示すように、四辺のダミー部13がすべて同じ幅であるとすると、
図6に用いた金属板21と同じ大きさの金属板21を重ねると、ダミー部13において金属板21のはみ出し幅L2が
図7に示す場合と比べて小さくなる。このダミー部13に溶融ろう材41がはみ出して金属板21の表面に這い上がったときに、ろう材が製品部まで広がるおそれがあり、ろう染みの発生を防止できない。
【0032】
図6の実施形態では、セラミックス板11及び金属板21ともに
図7の例と同じ大きさのものを用いながら、ダミー部13A,13Bの幅を異ならせたことにより、ダミー部13Bにおける金属板21の重なり幅L2が大きくなって、製品部17へのろう染みの影響が防止されるものである。
【0033】
一方、金属板21の他方の切断端部24においては、積層工程において、セラミックス板11と金属板21との辺15a,15b,22a,22bが揃えられていたが、
図9に示すように、接合時には、セラミックス板11と金属板21との熱膨張差により、セラミックス板11よりも金属板21がわずかにはみ出した状態となる。また、切断端部24においてはセラミックス板11の表面には金属板21のだれ面26が対峙している。
このため、金属板21とセラミックス板11との間、及びセラミックス板11からはみ出している金属板21どうしの間に、余剰の溶融ろう材41が貯留される。なお、このセラミックス板11と金属板21とが揃えられた部分では、これらの側面に溶融ろう材41が流れ出たとしてもこぶ状に固化するため、金属板21の表面への這い上がりは防止される。
【0034】
(エッチング工程S4)
セラミックス板11において露出している二つの対向角部P.Q(
図6参照)を基準として金属板21の上にレジスト膜を印刷して、エッチングすることにより、金属板21の不要部分を除去する。具体的には、セラミックス板11のスクライブライン12上の部分を所定幅でスクライブライン12に沿って除去するとともに、回路層3となる金属板21においては、回路層3として要求されるパターン形状に形成する。
前述したように、ダミー部13Bの部分で金属板21表面にろう材14がはい這い上がったとしても、金属板21がスクライブライン12から大きくはみ出しているため、スクライブライン12を超えてろう材14が製品部17に入り込むことが抑制されているので、金属板21の切断端部23の付近においてもレジスト膜を確実に形成することができ、エッチング不良の発生が防止される。
【0035】
(分割工程)
エッチング工程で露出したセラミックス板11のスクライブライン12でセラミックス板11を分割することにより、セラミックス基板2の表面に回路層3、反対側の表面に放熱層4を形成した絶縁回路基板1が複数形成される。ダミー部13A,13Bの部分は廃棄される。
【0036】
このような製造方法で製造された絶縁回路基板1は、接合工程時に金属板21の表面にろう材41が這い上がったとしても、分割用スクライブライン12から離れた部位であり、したがって、スクライブライン12上の金属板21にろう材が付着することが抑制され、その後のエッチング工程で金属板21の除去すべき部分を正確にエッチングすることができ、エッチング不良が防止される。また、金属板21の製品部17の表面へのろう材41の付着が抑制されることから、製品としては、いわゆるろう染みが防止され、良好な外観の絶縁回路基板1とすることができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
セラミックス板として複数個のセラミックス基板を形成できる大きさとしたが、その数は限定されない。1個のセラミックス基板を形成できるセラミックス板であっても、本発明を適用することができる。
また、所定幅の板素材をシャーによって切断することにより金属板を形成したが、プレスによる打ち抜きによって形成してもよい。
さらに、実施形態ではパワーモジュール用基板として説明したが、パワーモジュール用基板以外の絶縁回路基板に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 絶縁回路基板
2 セラミックス基板
3 回路層
4 放熱層
11 セラミックス板
12 スクライブライン
13 ダミー部
14 角部
15a,15b 辺
16 切り欠き
17 製品部
21 金属板
21a 表面
21b 裏面
22a~22d 辺
23,24 切断端部
25 バリ
26 だれ面
27 破断面
28 せん断面
31 板素材
32 シャー
33 搬送台
35 上刃
36 下刃