(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133538
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】下半身用衣類
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20220907BHJP
A41B 11/14 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A41B11/00 Z
A41B11/14 Z
A41B11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032268
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】特許業務法人安田岡本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日和 崇
(72)【発明者】
【氏名】大久保 魁馬
(72)【発明者】
【氏名】藤原 良成
【テーマコード(参考)】
3B018
【Fターム(参考)】
3B018AA01
3B018AC08
3B018AD01
(57)【要約】
【課題】タイツを着用してアウターとしてのパンツをさらに履いた場合にタイツがパンツにまとわりつくことを十分に防止する。
【解決手段】タイツ1は、腹部および臀部を被覆するパンティ部3と、脚(少なくとも股下部から膝下または足首までの脚)を被覆するレッグ部2とを備え、タイツ1を着用してアウターとしてのパンツをさらに履いた場合にパンツにまとわりつくことを防止する。タイツ1は、表糸と裏糸とで200N以上のハイゲージ(の編み機)でプレーティング編みにより編成され、裏糸には、ポリウレタンを芯糸としてナイロンを巻糸としたカバリング糸が採用され、表糸には、キュプラが採用されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも股下部から膝下または足首までの脚を覆うレッグ部を備えた下半身用衣類であって、前記下半身用衣類を着用してパンツを履いた場合に前記パンツにまとわりつくことを防止する下半身用衣類であって、
前記下半身用衣類は表糸と裏糸とで編成され、
前記裏糸には、ポリウレタンを芯糸としてナイロンを巻糸としたカバリング糸が採用され、
前記表糸には、キュプラが採用されていることを特徴とする下半身用衣類。
【請求項2】
前記下半身用衣類は、針本数が200N以上のハイゲージで編成された編地で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の下半身用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地で構成されたレギンスやタイツに代表される下半身用衣類に関し、特に、このような下半身用衣類を着用してさらにパンツ(衣類のボトムスのうち下着(インナー)ではなくアウターとしての2本に分かれた筒に片脚ずつを入れて穿く(履くと記載する場合がある)比較的丈の長い形のものであってズボン、スラックス等と呼ばれる衣類であって、以下においてはパンツと記載する)を履いた場合に、下半身用衣類がパンツにまとわりつくことを十分に防止することのできる下半身用衣類に関する。なお、本発明に係る下半身用衣類には、パンティーストッキング型のみならず、パンティーストッキング型の一部(足首より先の部分やパンティ部等)を欠落させた、スパッツ、レギンスおよびトレンカ等の呼び名を有する形状のものも含む。また、なお、以下において、「脚」は股下部から膝下または足首までの部分として、「足」は足首から足先(足爪先)までの部分として説明している場合がある。
【背景技術】
【0002】
下半身用衣類の一例であるタイツは専ら冬季に着用され、保温性(暖かいと着用者に感じさせる性能を含む)を重視したものとなっており、タイツにはアクリルのバルキー糸100%のもの、カバリング糸とナイロンフィラメント加工糸との交編タイプのもの、またはカバリング糸100%のいわゆるゾッキタイプのものがあり、形状としてはパンティーストッキング型のものやレッグ部のみのものがある。
【0003】
このようなタイツを着用した後に、比較的丈の長いパンツを履いて外出する場合がある。比較的長い丈のパンツを履いた場合、柄タイツを着用していると、柄タイツは股下より足首まで柄編みを施しているので、特に滑りの良い裏地がついていないパンツを履くと、太腿部におけるタイツとパンツとの滑りが悪く、パンツの履き心地が悪くなる欠点がある。このような事情に鑑みて、実用新案登録第3044071号公報(特許文献1)は、足元に柄模様の外観を与えることができるとともに、パンツを履いた場合にもパンツとの滑りを良くして、良好な履き心地が得られる、パンティストッキング、ストッキングを含むタイツ類を開示する。この特許文献1に開示されたタイツ類は、脚部の膝上から爪先までの範囲で、少なくともふくらはぎ下部から足首にわたる部分に部分的に柄編み部を設け、該柄編み部以外は無地編み部としていることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、太腿部におけるタイツとパンツの滑りが悪いためにパンツの履き心地が悪くなる欠点に対して、柄編み部以外の部分(脚部の柄編み部より上側部分)、すなわち、太腿部などを囲む部分を無地編みにして、通常のパンティストッキングと同様の滑りの良い編地にして、この無地編みの部分でのパンツの滑りが良好になりパンツの履き心地が良好にしているに過ぎない。これでは、上述した欠点を十分に解決できず、タイツ類を着用してパンツを履いた場合に、下半身用衣類がパンツにまとわりつくことを十分に防止することができない。
【0006】
本発明は、上述した問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、下半身用衣類を着用してさらにパンツを履いた場合に下半身用衣類がパンツにまとわりつくことを十分に防止することのできる下半身用衣類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る下半身用衣類は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明に係る下半身用衣類は、少なくとも股下部から膝下または足首までの脚を覆うレッグ部を備えた下半身用衣類であって、前記下半身用衣類を着用してパンツを
履いた場合に前記パンツにまとわりつくことを防止する下半身用衣類であって、前記下半身用衣類は表糸と裏糸とで編成され、前記裏糸には、ポリウレタンを芯糸としてナイロンを巻糸としたカバリング糸が採用され、前記表糸には、キュプラが採用されていることを特徴とする。
このましくは、前記下半身用衣類は、針本数が200N以上のハイゲージで編成された編地で構成されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る下半身用衣類によれば、下半身用衣類を着用してさらにパンツを履いた場合に下半身用衣類がパンツにまとわりつくことを十分に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るタイツの概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るタイツ1を、図面に基づき詳しく説明する。なお、本発明に係る下半身用衣類(以下においてタイツ類と記載する場合がある)には、
図1に示すタイツ1のようにパンティーストッキング型のみならず、パンティーストッキング型の一部(足首より先の部分やパンティ部等)を欠落させた、スパッツ、レギンスおよびトレンカ等の呼び名を有する形状のものも含む。また、このようなタイツ類の構造および製造方法には様々なものがあり、本発明は特定の構造および製造方法に限定されるものではない。すなわち、後述する特徴(特定の表糸および裏糸を採用してハイゲージでプレーティング編み(添え糸編み)して編成)を備えたものであれば、どのようなタイツ類であってもよい。たとえば、タイツ類を構成する編地の編み糸および編み組織(後述する特徴以外)およびタイツ類を編成する編機の種類(後述する特徴以外)は、どのようなものであっても構わない。そのため、以下に示すタイツ類の一例であるタイツ1は、後述する特徴を除いて単なる例示でしかない。
【0011】
図1に、本実施の形態に係るタイツ1の概略正面図を示す。このタイツ1は、通常のパンティストッキング等の下半身用衣類と同じく、腹部および臀部を被覆するパンティ部3と、脚(より正確には、股下部から足首までの脚に加えて足首から足先(足爪先)までの足)を被覆するレッグ部2とを備えるものである。このタイツ1は、筒状に編成された1対の編地を用い、パンティ部3に相当する部分に切れ目を入れて裁断縁どうしをつき合わせて股部4を縫着して一体化することにより製造される。また、足の爪先部は周知の手段により、袋状に縫着することにより製造される。なお、本実施の形態において、対象をタイツとして説明しているが、部分的にその機能を備えたレギンス(足首までで足首から足爪先までの足を被覆しない)等を含むことは上述した通りである。
【0012】
そして、特徴的であるのは、このタイツ1は、腹部および臀部を被覆するパンティ部3と、脚(少なくとも股下部から膝下または足首までの脚)を被覆するレッグ部2とを備え、タイツ1を着用してパンツを履いた場合にタイツ1がパンツにまとわりつくことを防止する。さらに、このタイツ1(の全体)は表糸と裏糸とで編成された編地で構成されて、裏糸には、ポリウレタンを芯糸としてナイロンを巻糸としたカバリング糸が採用され、表糸には、キュプラが採用されている。
【0013】
さらに、このタイツ1は、針本数が200N以上(好ましくは300N以上さらに好ましくは320N以上)のハイゲージ(の編み機)で編成された編地で構成されている。ここで、単位の略称表記Nは、靴下編み機等の編み機における針本数(ゲージ数:N=Needle=編機の針本数)である。なお、ゲージ(単位の略称表記G)は、編み組織(編地)における編み目の粗さ・細かさを表す単位であって、具体的には1インチ(2.54cm)四方の編地の中に何本の編み針(ニードル)があるかで計算される。下半身用衣類(ここでは靴下)に最も多く使用される通常の針本数は、ミドルゲージと呼ばれ132N~172Nであって、このミドルゲージよりも太い糸でよりざっくり編まれ1インチ四方の編み目がより少ないローゲージ(48N~120N)、このミドルゲージよりも細い糸でよりきっちり編まれ1インチ四方の編み目がより多いハイゲージ(200N以上)に大きく分けられる。このように、本実施の形態に係るタイツ1を含む本発明に係る下半身用
衣類は、通常のミドルゲージよりもゲージ数(単位の略称表記N)が大きいハイゲージ(の編み機)で編成されている。なお、本発明においては、「ハイゲージで編成」と「ハイゲージの編み機で編成」とは同義であるとして説明している。
【0014】
ここで、このタイツ1のプレーティング編みにおける表糸(タイツ1を着用した時に肌と反対面(表面)に表出する糸)としてキュプラを採用した理由について説明する。キュプラは、銅アンモニア法レーヨンとも呼ばれるセルロース繊維(再生繊維)であって、吸放湿性に優れ、一般的なレーヨン(ビスコースレーヨン)に比べ、耐久力や耐摩耗性などに優れている。さらに、詳しくは、キュプラは、
(1)絹のようななめらかさ、すべりがよく、薄手の織物に最適であって、主に衣類の裏地として使用されることが多い。
(2)吸湿性および放湿性が非常によく、静電気の発生が極めて少なく(繊維中に水分を多く含むことによる)帯電防止効果を発現する。
(3)セルロース繊維であるために熱に強く、熱で軟化、溶融せず、磨耗性および耐久性が一般的なレーヨン(ビスコースレーヨン)より高い。
(4)他の繊維とも相性が良いために、混紡、混繊、交繊、交編により複合化が可能である。
【0015】
このような特徴を備えたキュプラを、タイツ1の表糸として採用したために、
(A)タイツ1の編地(表糸がキュプラ)を構成する繊維(キュプラ)が帯電防止効果を備えるために、タイツ1の編地(表糸がキュプラ)に対向するアウターとしてのパンツの生地(たとえばウールまたはウール混)を引き寄せないこと、
および/または、
(B)タイツ1の編地(表糸がキュプラ)を構成する繊維(キュプラ)がなめらかですべりがよく毛羽立ちがないために、アウターとしてのパンツの生地を構成する繊維(たとえばウールまたはウール混)の毛羽との絡み等が発生しないことにより、
タイツ1がパンツにまとわりつくことを十分に防止することができる。すなわち、タイツ1を着用してアウターとしてのパンツをさらに履いた場合において、タイツ1の肌と反対面(表面)には表糸であるこのキュプラが表出して、タイツ1の表面が帯電しにくく、タイツ1の表面のすべりが良いために、タイツ1がパンツにまとわりつかない。
【0016】
次に、このタイツ1のプレーティング編みにおける裏糸(タイツ1を着用した時に肌に当接する面(裏面)に表出する糸)としてポリウレタンを芯糸としてナイロンを巻糸としたカバリング糸(代表的にはSCY:Single Coverd Yean)を採用した理由について説明する。
肌に当接する面(裏面)にキュプラを表出させないでSCYを表出させることにより、肌にキュプラが当接しないので、キュプラ生地(編地、織地)が備える接触冷感(触るとヒンヤリと感じるキュプラ生地の特性)を肌が感じることがなく、タイツ自体が備えなければならない暖かさを実現することができる。特に、後述するように、SCYとして太い糸をハイゲージ(の編み機)で編成することにより、基本的には肌に当接する面は暖かさをより感じやすくなる。
【0017】
次に、ハイゲージ(の編み機)で編成した理由について説明する。
プレーティング編みとハイゲージとを組み合わせて、かつ、表糸にキュプラ、裏糸にSCY(特に太め)を採用することにより、キュプラ層にSCY層が積層された(イメージの)きっちりとした編み目の詰まったマット状の編地を実現することができる。このため、裏面は(接触冷感を感じることなく)マット状で太いSCYによる暖かさをより感じることができて、表面はマット状でキュプラによる帯電防止効果をより高めることができる。
【0018】
なお、タイツ1を編成した後に(SCYを)染色する場合には、片面にしか表出しないキュプラ(多くの場合にはキュプラは糸の状態で先染めされる)が染色性を落とすこともない。
このタイツ1のさらに詳細な編地の編成は、以下の通りである。
表糸:キュプラ(100デニール)
裏糸:SCY(芯糸:ポリウレタン20デニール、巻糸:ナイロン70デニール)
針本数:ミドルゲージ(132N~176N)に比べてハイゲージの320本(320N)
【0019】
以上のようにして、本実施の形態に係るタイツ1によると、表糸と裏糸とで200N以上のハイゲージ(の編み機)でプレーティング編みにより編成され、裏糸には、ポリウレタンを芯糸としてナイロンを巻糸としたカバリング糸(SCY)を採用して、表糸には、キュプラを採用した。このため、このタイツ1を着用した時に、タイツ1の肌と反対面(表面)には表糸であるキュプラが表出して、タイツ1の表面が帯電しにくく、タイツ1の表面のすべりが良いために、タイツ1がアウターとしてのパンツにまとわりつくことを十分に防止することができ、かつ、タイツ1の肌に当接する面(裏面)には裏糸であるSCYが表出して、(キュプラは表面にしか表出せず肌当接面に表出しないためにキュプラ生地の接触冷感を発現させることなく)タイツ本来の暖かさを(特に太いSCYであればさらに)感じさせる機能を実現することができる。なお、これらのキュプラによる帯電防止機能およびSCYによる暖かさ発現機能については、ハイゲージ(の編み機)で編成することによりきっちりとした編み目の詰まったマット状の編地であることにより、これらの機能をより高めることができる。
【0020】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、編地で構成されたレギンスやタイツに代表される下半身用衣類に好適であって、下半身用衣類を着用してさらにパンツを履いた場合に下半身用衣類がパンツにまとわりつくことを十分に防止することができる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0022】
1 タイツ
2 レッグ部
3 パンティ部
4 股部