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特開2022-133580無機繊維断熱吸音材用水性バインダー及び無機繊維断熱吸音材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133580
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】無機繊維断熱吸音材用水性バインダー及び無機繊維断熱吸音材
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/325 20060101AFI20220907BHJP
   D06M 13/513 20060101ALI20220907BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20220907BHJP
   E04B 1/88 20060101ALN20220907BHJP
   D06M 101/00 20060101ALN20220907BHJP
【FI】
D06M13/325
D06M13/513
D06M15/263
E04B1/88 Z
D06M101:00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032338
(22)【出願日】2021-03-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】舟越 菜巳
【テーマコード(参考)】
2E001
4L033
【Fターム(参考)】
2E001DD01
2E001DF04
2E001HA32
2E001HA33
4L033AA09
4L033AB01
4L033BA45
4L033BA46
4L033BA96
4L033CA18
(57)【要約】
【課題】pHが低いにもかかわらず金属腐食性が低い無機繊維断熱吸音材用水性バインダー、及びそれを用いた無機繊維断熱吸音材を提供すること。
【解決手段】カルボキシ基を有するポリマーと、該ポリマーの架橋剤と、を含む無機繊維断熱吸音材用水性バインダーであって、架橋剤は、アルカノールモノアミンと、イミノ基を有するポリアミンを含み、pHが3.5以上6.0未満である、無機繊維断熱吸音材用水性バインダー。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基を有するポリマーと、該ポリマーの架橋剤と、を含む無機繊維断熱吸音材用水性バインダーであって、
前記架橋剤は、アルカノールモノアミンと、イミノ基を有するポリアミンとを含み、
pHが3.5以上6.0未満である、無機繊維断熱吸音材用水性バインダー。
【請求項2】
前記ポリマーは、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体をモノマー単位として有する、請求項1に記載の水性バインダー。
【請求項3】
前記ポリマー中のカルボキシ基の総モル数に対する、前記架橋剤中の水酸基、アミノ基及びイミノ基の総モル数の比が、0.3以上である、請求項1又は2に記載の水性バインダー。
【請求項4】
前記架橋剤中の水酸基、アミノ基及びイミノ基の総モル数に対する、前記架橋剤中のアミノ基及びイミノ基の総モル数の比が0.6以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性バインダー。
【請求項5】
前記ポリアミンは、分子量が100~500であり、アミン価が1150~1650mgKOH/gである、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性バインダー。
【請求項6】
前記ポリマーは、重量平均分子量が1000~20000であり、酸価が500~900mgKOH/gである、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性バインダー。
【請求項7】
硬化促進剤、シランカップリング剤、防塵剤、防錆剤、中和剤及び着色剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性バインダー。
【請求項8】
無機繊維と、該無機繊維を固着する請求項1~7のいずれか一項に記載の水性バインダーの硬化物と、を備える無機繊維断熱吸音材。
【請求項9】
カルボキシ基を有するポリマーと該ポリマーの架橋剤とを含む無機繊維断熱吸音材用水性バインダーの金属腐食性を抑制する方法であって、
前記架橋剤として、アルカノールモノアミンと、イミノ基を有するポリアミンとを含有させ、
pHを3.5以上6.0未満にする方法。
【請求項10】
金属腐食性が抑制された、カルボキシ基を有するポリマーと該ポリマーの架橋剤を含む無機繊維断熱吸音材用水性バインダーの製造方法であって、
前記架橋剤として、アルカノールモノアミンと、イミノ基を有するポリアミンとを含有させると共に、pHを3.5以上6.0未満にする工程を含む、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機繊維断熱吸音材用水性バインダー及び無機繊維断熱吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
グラスウール及びロックウール等の無機繊維断熱吸音体は、無機繊維にバインダーを付着させた後、バインダーを硬化させて製造されることが一般的である。バインダーとしては、カルボキシ基等を有する重合体と、アミノ基等を有する架橋剤と、水とを含有する水性バインダーが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-117083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような水性バインダーは、カルボキシ基等を有する重合体を含有しているためにpHが低下する傾向にある。一般に、pHが低下すると、金属腐食性が上昇するため、製造設備の劣化が進んでしまうおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、pHが低いにもかかわらず金属腐食性が低い無機繊維断熱吸音材用水性バインダー、及びそれを用いた無機繊維断熱吸音材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、カルボキシ基を有するポリマーと、このポリマーの架橋剤と、を含む無機繊維断熱吸音材用水性バインダーであって、上記架橋剤は、アルカノールモノアミンと、イミノ基を有するポリアミンとを含み、pHが3.5以上6.0未満である、無機繊維断熱吸音材用水性バインダーを提供する。なお、pHはバインダー全体としてのpHを意味する。
【0007】
本発明の水性バインダーは、カルボキシ基を有するポリマーに対して、上述の架橋剤を組み合わせたことで、酸性領域のpHであるにもかかわらず、金属腐食性を低くすることができるが、酸性領域のpHのなかでも、3.5以上6.0未満という限られたpH領域において、特異的に金属腐食性が抑制されることが見出された。
【0008】
上記ポリマーは、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体をモノマー単位として有するものであることが好ましい。カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を重合して得られるポリマーを用いることで、一分子あたりのカルボキシ基の量を増やすことができ、また好適な連鎖移動剤との組み合わせにより、重量平均分子量の制御も容易である。したがって、このようなポリマーを用いることで水性バインダーとしての機能を向上させることができるとともに、無機繊維断熱吸音体の諸物性におけるばらつきも低減される。
【0009】
カルボキシ基を有するポリマー中のカルボキシ基の総モル数に対する、架橋剤中の水酸基、アミノ基及びイミノ基の総モル数の比(以下「モル比1」ともいう。)は、0.3以上であることが好ましい。本発明の水性バインダーにおいてモル比1を0.3以上とすることで、カルボキシ基を有するポリマーに由来する低いpH(pH2程度)を、pH調整剤等を添加しないか、添加してもわずかな量で、3.5以上のpHに調整できる。結果として、より効率よく又はより低コストで水性バインダーの金属腐食性を抑制できる。カルボキシ基を有するポリマーと架橋剤成分との反応を十分に速くすることができ、また十分な量の架橋構造が形成されるため、得られる無機繊維断熱吸音材の諸物性を最適なものにできる。
【0010】
架橋剤中の水酸基、アミノ基及びイミノ基の総モル数に対する、架橋剤中のアミノ基及びイミノ基の総モル数の比(以下「モル比2」ともいう。)は0.6以下であることが好ましい。本発明の水性バインダーにおいてモル比2を0.6以下とすることで、水性バインダーのpHが大きくなりすぎない傾向にあり、追加のpH調整剤等を添加しなくてよくなるため、より効率的に又はより低コストでバインダーpHを6.0未満に調整できる。結果として、より効率的に又はより低コストで水性バインダーの金属腐食性を抑制できる。架橋剤が、水酸基とアミノ基(又はイミノ基)の双方を有する場合、硬化速度の高速化のためには、水酸基の量を減らしアミノ基(又はイミノ基)の量を増やすことが通常想定される。しかし、このような認識に反して、本発明の水性バインダーに関しては、アミノ基及びイミノ基の総モル数の比を0.6以下という低レンジ側に設定することで、硬化速度をはじめ、水希釈能及び保存安定性が更に向上すると考えられる。
【0011】
イミノ基を有するポリアミンとしては、分子量が100~500であり、アミン価が1150~1650mgKOH/gであるものが好ましい。分子量を上記範囲にすることで、また、架橋点間の分子長を、水性バインダーの用途(無機繊維断熱吸音材の製造等)に求められる特性が発揮されやすいものとすることができる。また、アミン価を上記範囲にすることで、水性バインダーのpHを調整しやすくなり、結果として金属腐食性を抑制しやすくなる。加えて、アミン価を上記範囲にすることで、反応性を高めることができ、バインダーの硬化時間の短縮がより容易となる。
【0012】
カルボキシ基を有するポリマーとしては、重量平均分子量が1000~20000であり、酸価が500~900mgKOH/gであるものが好ましい。重量平均分子量を上記範囲にすることで、架橋反応後の硬化物の弾性率等の物性を好適にできる。また、酸価を上記範囲にすることで、水性バインダーのpHを調整しやすくなり、結果として金属腐食性を抑制しやすくなる。加えて、酸価を上記範囲にすることで、架橋剤との反応性を高めることができ、バインダーの硬化時間の短縮に資する。
【0013】
水性バインダーは、硬化促進剤、シランカップリング剤、防塵剤、防錆剤、中和剤及び着色剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含有していてもよい。このような材料を添加することで、水性バインダーの性能を、硬化工程や使用原料(無機繊維等)に合わせて最適化できるようになるため、最終用途に適した配合とすることができる。
【0014】
本発明はまた、無機繊維と、無機繊維を固着する上記水性バインダーの硬化物と、を備える無機繊維断熱吸音材を提供する。
【0015】
本発明は更に、カルボキシ基を有するポリマーとこのポリマーの架橋剤を含む無機繊維断熱吸音材用水性バインダーの金属腐食性を抑制する方法であって、上記架橋剤として、アルカノールモノアミンと、イミノ基を有するポリアミンとを含有させ、pHを3.5以上6.0未満にする方法を提供する。本方法を他の側面から表現すると、金属腐食性が抑制された、カルボキシ基を有するポリマーとこのポリマーの架橋剤を含む無機繊維断熱吸音材用水性バインダーの製造方法であって、上記架橋剤として、アルカノールモノアミンと、イミノ基を有するポリアミンとを含有させると共に、pHを3.5以上6.0未満にする製造方法ということもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、pHが低いにもかかわらず金属腐食性が低い無機繊維断熱吸音材用水性バインダー、及びそれを用いた無機繊維断熱吸音材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
カルボキシ基を有するポリマーは、分子に少なくとも1つのカルボキシ基を備えた高分子を意味する。なお、「架橋剤」に対比させる概念として、このポリマーを「主剤」と呼ぶ場合がある。
【0019】
カルボキシ基を有するポリマーとしては、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体をモノマー単位として有するもの、すなわち、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体を重合して得られるものであることが好ましい。なお、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては1種又は2種以上を用いることができる。カルボキシ基を有するポリマーを構成するモノマー単位は、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体のみからなる場合と、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体と、カルボキシ基を有しない共重合モノマーとからなる場合がある。後者の場合、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体の含有量はモノマーの全量を基準として90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0020】
カルボキシ基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2‐メチルマレイン酸、イタコン酸、2‐メチルイタコン酸、α‐β‐メチレングルタル酸、マレイン酸モノアルキル、フマル酸モノアルキル、無水マレイン酸、無水アクリル酸、β‐(メタ)アクリロイルオキシエチレンハイドロジエンフタレート、β‐(メタ)アクリロイルオキシエチレンハイドロジエンマレエート、β‐(メタ)アクリロイルオキシエチレンハイドロジエンサクシネートが挙げられる。これらの中でも、カルボキシ基を有するポリマーの分子量が制御しやすいことから、(メタ)アクリル酸を使用することが好ましく、アクリル酸が特に好ましい。また、カルボキシ基を有するポリマーの酸価を高い値(例えば、900mgKOH/g付近)に調整する場合は、マレイン酸又はフマル酸を使用することが好ましい。なお、(メタ)アクリルとはアクリル又はメタクリルを意味し、類似の化合物においても同様である。
【0021】
カルボキシ基を有しない共重合モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n‐ステアリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエトキシ(メタ)アクリレート、メチル‐3‐メトキシ(メタ)アクリレート、エチル‐3‐メトキシ(メタ)アクリレート、ブチル‐3‐メトキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、4‐ヒドロキシブチルアクリレート、3価以上のポリオールのモノ(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリレート、N‐アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N‐ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアクリル系単量体;ビニルアルキルエーテル、N‐アルキルビニルアミン、N,N‐ジアルキルビニルアミン、N‐ビニルピリジン、N‐ビニルイミダゾール、N‐(アルキル)アミノアルキルビニルアミン等のビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N‐アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N‐ビニルホルムアミド、N‐ビニルアセトアミド、N‐ビニルピロリドン等のアミド系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソプレン、ブタジエン等の脂肪族不飽和炭化水素;スチレン、α‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、ビニルトルエン、p‐ヒドロキシスチレン、p‐アセトキシスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系単量体;アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用することができる。
【0022】
カルボキシ基を有するポリマーの重量平均分子量は、1000~20000であることが好ましく、2000~15000がより好ましく、2000~10000が更に好ましい。カルボキシ基を有するポリマーの重量平均分子量がこの数値範囲内であることにより、水性バインダーの流動性が無機繊維に付与するのに適したものにしやすく、水性バインダーの付着量のばらつきを抑制できる。また、無機繊維断熱吸音材の製造において、水性バインダーの繊維への付与は、遠心法等で繊維化された直後の約200~350℃の高温雰囲気下で行われることが多く、その際、水性バインダー中の水分の揮散を良好にできる。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値である。
【0023】
カルボキシ基を有するポリマーの重量平均分子量は、水性バインダーの流動性だけでなく、硬化速度や、硬化後の架橋密度とも関係があり、同じ酸価のカルボキシ基を有するポリマーであっても分子量が異なると、水性バインダーの硬化速度や水性バインダー硬化物の強度が変動し、得られる無機繊維断熱吸音材の物性も変化する。例えば、カルボキシ基を有するポリマーの重量平均分子量が小さくなるにつれて、水性バインダーの硬化速度は速くなるが、硬化物は脆くなる傾向にあり、製造ラインの生産条件によっては、所望する物性が得られない場合がある。カルボキシ基を有するポリマーの重量平均分子量が上記範囲内であれば、水性バインダーの流動性と、得られる無機繊維断熱吸音材の諸物性との最適化を図ることができる。
【0024】
カルボキシ基を有するポリマーの酸価は、500~900mgKOH/gであることが好ましく、550~750mgKOH/gであることがより好ましい。カルボキシ基を有するポリマーの酸価がこの数値範囲内であることにより、水性バインダーのpHを3.5以上6.0未満に調整しやすくなり、水性バインダーの金属腐食性を抑制しやすくなる。また、カルボキシ基を有するポリマーの酸価がこの数値範囲内であることにより、水性バインダー硬化物の強度や剛性が向上し、得られる無機繊維断熱吸音材の圧縮梱包開封後の厚み復元性やボード状に加工された無機繊維断熱吸音材の剛性が向上する。また、断熱性、吸音性又は自立性等、施工時の作業性に優れる。なお、酸価は、カルボキシ基を有するポリマー1gを中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数(mgKOH)を意味する。
【0025】
水性バインダー中のカルボキシ基を有するポリマーの配合量(固形分換算)は、水性バインダーの固形分換算の全質量基準で、60~90質量%が好ましく、65~88質量%がより好ましい。
【0026】
アルカノールモノアミンとしては、アルカノール基の炭素数が1~6であるものが好ましく、1~3であるものがより好ましい。
【0027】
このようなアルカノールモノアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0028】
イミノ基を有するポリアミンとしては、例えば、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン及び芳香族ポリアミンが挙げられる。中でも、水溶性の観点から、脂肪族ポリアミンが好ましく、ポリアルキレンポリアミン骨格を有する脂肪族ポリアミン(好ましくは直鎖状)がよい。
【0029】
イミノ基を有するポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘプタエチレンオクタミン、N-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、N,N-ジ(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、ポリエチレンイミンが挙げられる。
【0030】
イミノ基を有するポリアミンの分子量は100~500であることが好ましく、130~400であることがより好ましく、130~250であることが更に好ましい。ポリアミンも、カルボキシ基を有するポリマーと同様に、分子量が水性バインダーの流動性及び水性バインダーの硬化挙動に影響する。ポリアミンの重量平均分子量が上記範囲内であれば、水性バインダーの流動性と、得られる無機繊維断熱吸音材の諸物性との最適化を図ることができる。
【0031】
イミノ基を有するポリアミンのアミン価は1150~1650mgKOH/gであることが好ましく、1200~1600mgKOH/gであることがより好ましく、更には1200~1550mgKOH/g、特には1400~1550mgKOH/gが好ましい。アミン価を上記数値範囲内にすることで、水性バインダーのpHを3.5以上6.0未満に調整しやすくなり、水性バインダーの金属腐食性を抑制しやすくなる。加えて、アミン価を上記数値範囲内にすることで、ポリアミンがカルボキシ基を有するポリマーと速く反応し、水性バインダー硬化物の分子量の増加速度が向上し、水性バインダー硬化物の強度が向上する。
【0032】
水性バインダー中のイミノ基を有するポリアミンの配合量(固形分換算)は、水性バインダーの固形分換算の全質量基準で、0.01~5.0質量%が好ましく、0.03~4.0質量%がより好ましい。
【0033】
架橋剤としては、必須成分である、アルカノールモノアミン及びイミノ基を有するポリアミン以外のものを含有することを排除するものではないが、架橋剤全量に占める、アルカノールモノアミン及びイミノ基を有するポリアミンの合計含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であってもよい。なお、イミノ基を有するポリアミン以外のポリアミンとしては、1,2,3-プロパントリアミン及び1,1,4,4-ブタンテトラアミンが挙げられる。
【0034】
カルボキシ基を有するポリマー中のカルボキシ基のモル数に対する、架橋剤中の水酸基、アミノ基及びイミノ基の総モル数の比は、0.3以上であることが好ましい。この比は、0.4~1.2がより好ましく、0.45~0.95が更に好ましい。モル比をこの数値範囲内にすることにより、水性バインダーのpHを3.5以上に調整しやすくなり、より効率的に又はより低コストで水性バインダーの金属腐食性を抑制することができると考えられる。加えて、モル比をこの数値範囲内にすることによりカルボキシ基を有するポリマーと架橋剤成分とが、過不足なく架橋構造を形成しやすく、水性バインダー硬化物の強度が強固になり、得られる無機繊維断熱吸音材の諸物性を最適なものにできる。なお、比が1.2を超えると、水性バインダーの硬化物の強度が低くなる場合がある。
【0035】
架橋剤中の水酸基、アミノ基及びイミノ基の総モル数に対する、架橋剤中のアミノ基及びイミノ基の総モル数の比は、0.6以下であることが好ましい。この比は、0.01~0.6がより好ましく、0.01~0.5、又は0.01~0.4であってもよい。モル比をこの数値範囲内にすることにより、水性バインダーのpHを6.0未満に調整しやすくなり、より効率的に又はより低コストで水性バインダーの金属腐食性を抑制することができると考えられる。加えて、モル比をこの数値範囲内にすることによりカルボキシ基を有するポリマー及び架橋剤成分であるアルカノールモノアミンとイミノ基を有するポリアミンとは、速やかに架橋構造を形成し、得られる無機繊維断熱吸音材の機械的強度が優れ、断熱材としての寸法の確保がより容易となる。
【0036】
水性バインダーのpHは、3.5以上6.0未満である。水性バインダーのpHは、3.6~5.5であることが好ましく、3.7~5.2であることがより好ましい。本実施形態の水性バインダーのpHがこの数値範囲内にあれば、金属腐食性が低下する。また、それだけでなく、安定性が向上し、廃水処理も容易となるので、メンテナンス費用の低減を図ることができる。水性バインダーのpHは、例えば、架橋剤中のアルカノールアミンとイミノ基を有するポリアミンとの比率、水性バインダー中の架橋剤の含有量を変えることで調整したり、pH調整剤(例えばアンモニア)を添加して調整したりすることができる。ただし、水性バインダーのpHは、pH調整剤の添加がなくとも上記範囲に収まることがあり、また、そもそも、水性バインダーは低いpH領域で使用することができるため、pH調整剤を添加しなくてもよい場合がある。すなわち、本発明の水性バインダーは、例えばアンモニア非含有でも使用可能である。このようなアンモニア非含有の水性バインダーにおいては、重合体中のカルボキシ基と、架橋剤のアミノ基等との反応が妨げられることがなく、バインダーの硬化時間がより短縮されると考えられる。さらに、アンモニア非含有の水性バインダーからは、揮発性成分としてアンモニアガスが発生することがないため環境安全性に優れる。また、アンモニアが水性バインダーに含まれない場合、アンモニアの揮発に伴う水性バインダーのpH変化という問題も生じない。但し、使用に際して、アンモニア等のpH調整剤の添加が一切禁じられるわけではない。
【0037】
水性バインダーは、還元性の無機塩等の硬化促進剤を含有していてもよい。硬化促進剤としては、例えば、次亜リン酸塩、亜硫酸塩が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。次亜リン酸塩としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸リチウム、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸カルシウム、次亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸ストロンチウムが挙げられる。亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素リチウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素マグネシウム、亜硫酸水素カルシウム、亜硫酸水素アンモニウムが挙げられ、なかでも、硬化促進作用のある亜硫酸イオンの含有量が高い亜硫酸水素リチウム、亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸水素アンモニウムが好ましい。
【0038】
硬化促進剤の配合量は、カルボキシ基を有するポリマー及び架橋剤の合計100質量部に対して、固形分換算で0.1~10質量部が好ましく、0.5~5質量部がより好ましい。
【0039】
水性バインダーは、シランカップリング剤を含有していてもよい。シランカップリング剤は、無機繊維と水性バインダー硬化物との界面で作用し、水性バインダー硬化物の無機繊維への接着を向上させることができる。シランカップリング剤としては、例えば、γ‐アミノプロピルトリエトキシシラン、γ‐(2‐アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ‐(2‐アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシランカップリング剤、γ‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ‐グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシシランカップリング剤が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
シランカップリング剤の配合量は、カルボキシ基を有するポリマー及び架橋剤の合計100質量部に対して、固形分換算で0.1~2.0質量部が好ましい。
【0041】
水性バインダーは、防錆剤を含有していてもよい。防錆剤は、生産設備の腐食を抑制することができる。防錆剤としては、例えば、チオ尿素、チオセミカルバジド、N‐フェニルチオ尿素、o‐トリルチオ尿素、N‐メチルチオ尿素、1,3‐ジメチルチオ尿素、N,N’‐ジエチルチオ尿素、1,3‐ジブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,3‐ジフェニル‐2‐チオ尿素、1,3‐ジイソプロピルチオ尿素、エチレンチオ尿素、2‐メルカプトベンゾチアゾール、トリメチルチオ尿素等のチオ尿素系化合物が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、アルカノールモノアミンは防錆剤としても機能する場合があるが、水性バインダーがアルカノールモノアミンを含む場合は、アルカノールモノアミンは防錆剤に含めず、架橋剤として取り扱う。
【0042】
防錆剤の配合量は、カルボキシ基を有するポリマー及び架橋剤の合計100質量部に対して、固形分換算で0.0001~1.0質量部が好ましい。
【0043】
水性バインダーには、必要に応じて、防塵剤である重質オイル水分散体、着色剤、ガラス等の無機繊維から溶出されるアルカリ成分を中和するための無機硫酸塩(中和剤)、その他添加剤等を更に配合することができる。無機硫酸塩としては、例えば、硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0044】
水性バインダーは、例えば、カルボキシ基を有するポリマー及び架橋剤に加え、必要に応じて、硬化促進剤、シランカップリング剤、防錆剤、防塵剤、着色剤、中和剤、その他添加剤を、ディゾルバー等の攪拌機のついたタンクに導入して混合すれば製造することができる。
【0045】
水性バインダーの形態としては、エマルション、コロイダルディスパージョン、水溶性組成物が挙げられ、このどの形態をとっていてもよい。ここで、エマルションとは、水性バインダー中の樹脂成分(カルボキシ基を有するポリマー等)とは別の乳化剤、例えば、界面活性剤等で乳化したものを意味し、コロイダルディスパージョンとは、樹脂成分中の官能基によって、樹脂成分が水中に分散したものを意味し、一般的に両者とも外観は乳白色を呈する。一方、水溶性組成物とは、樹脂成分が水に溶解しているものをいい、外観も透明又は透明に近いものである。
【0046】
水性バインダーの形態としては、以下に説明するとおり、工程管理が容易であることから、エマルション又はコロイダルディスパージョンよりも水溶性組成物の方が有利である。すなわち、エマルションやコロイダルディスパージョンでは、分散されている樹脂成分(カルボキシ基を有するポリマー等)は、水との溶解性、膨潤性が低い性質を有しており、媒体である水が揮散すると、フィルムを形成しやすい。水性バインダー中の樹脂成分が、硬化前にフィルムを形成すると、無機繊維表面での水性バインダーの流動性が損なわれやすく、水性バインダーの付着量が均質な無機繊維断熱吸音材が得られないだけでなく、無機繊維同士の水性バインダーによる結合が欠ける部分が多くなり、製品としての形状を保つのが困難となる場合がある。また、コロイダルディスパージョンやエマルションでは、一旦、媒体である水が揮散してフィルムを形成すると、再度水性材料に戻り難いため、製造設備等に水性バインダーが付着すると、洗浄が煩雑となり、生産性の低下が生じがちである。
【0047】
一方、水性バインダーが水溶性組成物である場合、水性バインダーから水が徐々に揮散してもフィルム形成が直ちに生じるわけではないので、上記のような問題が生じることがない。よって、水性バインダーは水溶性組成物として調製することが好ましい。
【0048】
上記のような事情があるものの、エマルション又はコロイダルディスパージョンについては、加湿条件下で使用したり、水分含有量を調整したりすることで、実用上問題なく使用することも可能であることから、エマルション、コロイダルディスパージョン、水溶性組成物のいずれの形態をとるべきかは、水性バインダーの使用環境に従って適宜決定すればよい。
【0049】
また、水性バインダーの固形分量は、1~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。固形分量を1質量%以上にすると、水分量が適量であるため硬化工程に時間がかかりすぎず、良好な生産性を保つことができる。固形分量を50量%以内にすると、水性バインダーの流動性の低下を防ぐことができる。ここで、固形分とは、水性バインダーを、1気圧且つ室温(23℃程度)以上100℃以下の温度で加熱して、揮発しない成分をいう。なお、固形分以外の成分(揮発成分)は水であることが好ましい。
【0050】
実施形態に係る無機繊維断熱吸音材は、無機繊維と、無機繊維を固着(保持)する上記水性バインダーの硬化物と、を備えるものである。すなわち、無機繊維断熱吸音材は、上記水性バインダーを無機繊維に付与し、水性バインダーを加熱硬化させて成形して得ることができるものである。
【0051】
無機繊維断熱吸音材の密度は、通常の断熱材や吸音材に使用されている密度でよく、好ましくは5~300kg/mである。
【0052】
無機繊維断熱吸音材は、例えば、以下のように製造することができる。すなわち、まず、溶融した無機質原料を繊維化装置で繊維化し、その直後に上記水性バインダーを無機繊維に付与する。次いで水性バインダーが付与された無機繊維を有孔コンベア上に堆積して嵩高い無機繊維断熱吸音材用中間体を形成し、所望の厚さになるように間隔を設けた上下一対の有孔コンベア等に送り込んで狭圧しつつ加熱し、水性バインダーを硬化させて無機繊維断熱吸音材を形成する。必要に応じて表皮材等を被覆させて、無機繊維断熱吸音材を所望とする幅、長さに切断する。
【0053】
無機繊維としては、通常の断熱吸音材に使用されているグラスウール、ロックウール等を用いることができる。無機繊維の繊維化方法としては、例えば、火焔法、吹き飛ばし法、遠心法(ロータリー法ともいう)の各種方法を用いることができる。無機繊維がグラスウールの場合は、遠心法を用いることが好ましい。
【0054】
無機繊維に水性バインダーを付与する時期としては、繊維化後であればよく、水性バインダーを効率的に付与する観点から、繊維化直後に付与することが好ましい。
【0055】
無機繊維に水性バインダーを付与する方法としては、スプレー装置等を用いて塗布又は噴霧する方法が挙げられる。水性バインダーの付与量の調整は、従来の撥水剤を含まないバインダーと同様の方法で行うことができる。水性バインダーの付与量は、無機繊維断熱吸音材の密度や用途によって異なるが、水性バインダーを付与した無機繊維断熱吸音材の質量を基準として、固形分換算で0.5~30質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましい。
【0056】
上記工程によって水性バインダーが付与された無機繊維は、有孔コンベア上に堆積され、嵩高い無機繊維中間体となる。ここで有孔コンベア上に堆積する時に、無機繊維が堆積される有孔コンベアの反対側から吸引装置により吸引することが好ましい。
【0057】
水性バインダーの加熱方法としては、例えば、熱風オーブンによる加熱が挙げられる。熱風オーブン内の加熱温度は、例えば、180~350℃とすることができる。加熱硬化時間は、無機繊維断熱吸音材の密度及び厚さにより、20秒~10分の間で適宜調整することができる。
【0058】
無機繊維断熱吸音材は、そのままの形態で用いてもよく、また、表皮材で被覆して用いてもよい。表皮材としては、例えば、紙、合成樹脂フィルム、金属箔フィルム、不織布、織布又はこれらを組み合わせたものを用いることができる。
【実施例0059】
以下、実施例に基づき発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下、アルカノールモノアミンを「架橋剤1」、イミノ基を有するポリアミンを「架橋剤2」ともいう。
【0060】
後述する実施例1~5及び比較例1~5で得られた水性バインダーについて、鉄腐食性(鉄腐食度)及びpHを調べた。以下に評価方法を述べる。また、評価結果を表1及び表2に示す。なお、実施例1,5の水性バインダーについては、使用時にアンモニアの揮発が生じることがなく環境安全性に優れる。
【0061】
[鉄腐食性]
500mlのポリプロピレン(PP)製ビーカーに実施例1~5及び比較例1~5の水性バインダーを入れ、固形分濃度が2.0質量%となるように水で希釈して500gのバインダー調合液を得る。紐通し穴の開いた試験片(SS400酸洗鋼板(鉄を主成分とする板材)、寸法1mm×40mm×40mm,紐通し穴直径3mm)にテグス(30号)を結び付けて各バインダー調合液に浸漬させ、マグネチックスターラーREXIM RS-6DN(アズワン)及び撹拌子(φ8×40mm)を用いて、各バインダー調合液を20℃、500rpmの条件で70時間撹拌した。攪拌の前後で試験片の重量を測定し、攪拌前に対する攪拌後の重量減少量を求め、下記式(1)に基づいて鉄腐食度を算出した。さらに、比較例1の鉄腐食性を1.00として、実施例1~5及び比較例2~5の鉄腐食性を相対評価した。
鉄腐食度=重量減少量(g)/試験片表面積(m)/試験時間(hr)…(1)
【0062】
[バインダーpH]
pHメーターにて各バインダー調合液のpHを測定した。
【0063】
(実施例1)
主剤である、次亜リン酸ナトリウムを連鎖移動剤としてラジカル重合させたポリアクリル酸(重量平均分子量10000、酸価716mgKOH/g)を水で溶解させ、樹脂溶液(固形分46%)を得た。樹脂溶液を固形分換算で74.3質量部と、トリエチレンテトラミン(分子量146、アミン価1535mgKOH/g、架橋剤2)を固形分換算で0.3質量部と、ジエタノールアミン(架橋剤1)を固形分換算で25.4質量部と、硬化促進剤である次亜リン酸ナトリウムを2.0質量部と、を混合し、水溶性組成物を得た。さらに、硫酸アンモニウム8.0質量部、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量部を添加して攪拌した後、固形分が35質量%となるように水で希釈して、水性バインダーを得た。カルボキシ基を有するポリマー中のカルボキシ基の総モル数に対する、架橋剤中の水酸基、アミノ基及びイミノ基の総モル数の比(モル比1)は0.8であり、架橋剤中の水酸基、アミノ基及びイミノ基の総モル数に対する、架橋剤中のアミノ基及びイミノ基の総モル数の比(モル比2)は0.34であった。また、バインダーpHは4.6であり、鉄腐食性は0.33であった。
【0064】
(実施例2)
主剤として、樹脂溶液を固形分換算で69.8質量部、架橋剤2として、ペンタエチレンヘキサミン(分子量232、アミン価1449mgKOH/g)を固形分換算で0.3質量部、及び、架橋剤1として、ジエタノールアミンを固形分換算で29.9質量部、用いた以外は、実施例1と同様にして水性バインダーを得た。モル比1は1.0であり、モル比2は0.34であった。また、アンモニア水でバインダーpHを5.3に調整した。鉄腐食性は0.36であった。
【0065】
(実施例3)
主剤として、樹脂溶液を固形分換算で64.5質量部、及び、架橋剤1として、トリエタノールアミンを固形分換算で35.2質量部、用いた以外は、実施例1と同様にして水性バインダーを得た。モル比1は0.9であり、モル比2は0.01であった。また、アンモニア水でバインダーpHを5.0に調整した。鉄腐食性は0.34であった。
【0066】
(実施例4)
主剤として、樹脂溶液を固形分換算で62.1質量部、架橋剤2として、ペンタエチレンヘキサミン(分子量232、アミン価1449mgKOH/g)を固形分換算で0.9質量部、及び、架橋剤1として、トリエタノールアミンを固形分換算で37.0質量部、用いた以外は、実施例1と同様にして水性バインダーを得た。モル比1は1.0であり、モル比2は0.03であった。また、アンモニア水でバインダーpHを5.3に調整した。鉄腐食性は0.36であった。
【0067】
(実施例5)
主剤として、樹脂溶液を固形分換算で81.3質量部、架橋剤2として、トリエチレンテトラミン(分子量146、アミン価1535mgKOH/g、架橋剤2)を固形分換算で0.2質量部、及び、架橋剤1として、ジエタノールアミンを固形分換算で18.5質量部、用いた以外は、実施例1と同様にして水性バインダーを得た。モル比1は0.5であり、モル比2は0.34であった。また、バインダーpHは3.7であり、鉄腐食性は0.33であった。
【0068】
(比較例1)
主剤として、樹脂溶液を固形分換算で67.8質量部、及び、架橋剤1として、ジエタノールアミンを固形分換算で32.2質量部、用い、架橋剤2を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして水性バインダーを得た。モル比1は1.1であり、モル比2は0.33であった。また、アンモニア水でバインダーpHを6.4に調整した。比較例1の鉄腐食性を1.00とした。
【0069】
(比較例2)
主剤として、樹脂溶液を固形分換算で79.3質量部、架橋剤2として、ポリエチレンイミン(重量平均分子量600、アミン価1120mgKOH/g)を固形分換算で0.3質量部、及び、架橋剤1として、ジエタノールアミンを固形分換算で20.4質量部、用いた以外は、実施例1と同様にして水性バインダーを得た。モル比1は0.6であり、モル比2は0.34であった。また、アンモニア水でバインダーpHを6.0に調整した。鉄腐食性は0.59であった。
【0070】
(比較例3)
主剤として、樹脂溶液を固形分換算で89.1質量部、及び、架橋剤2として、トリエチレンテトラミン(分子量146、アミン価1535mgKOH/g)を固形分換算で0.1質量部、及び、架橋剤1として、ジエタノールアミンを固形分換算で10.7質量部、用いたこと以外は、実施例1と同様にして水性バインダーを得た。モル比1は0.3であり、モル比2は0.34であった。また、アンモニア水でバインダーpHを6.4に調整した。鉄腐食性は0.65であった。
【0071】
(比較例4)
主剤として、樹脂溶液を固形分換算で76.7質量部、及び、グリセロールを固形分換算で23.0質量部、用い、架橋剤1を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして水性バインダーを得た。モル比1は0.8であり、モル比2は0.01であった。また、アンモニア水でバインダーpHを6.6に調整した。鉄腐食性は0.54であった。
【0072】
(比較例5)
主剤として、樹脂溶液を固形分換算で73.6質量部、及び、架橋剤1として、ジエタノールアミンを固形分換算で26.4質量部、用い、架橋剤2を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして水性バインダーを得た。モル比1は0.8であり、モル比2は0.33であった。また、アンモニア水でバインダーpHを5.8に調整した。鉄腐食性は0.46であった。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】