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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133591
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
B62D6/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032351
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】佃 駿甫
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA24
3D232DA28
3D232DA76
3D232DA84
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD02
3D232DE02
3D232EA01
3D232EB04
3D232EC22
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】個々の自動車の車両特性により対応した操舵制御を実行する車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置1は、自動車100の速度Vを測定する速度測定部4と、自動車100の操舵制御を実行する操舵制御部11とを備える。車両制御装置1において、操舵制御部11により、速度測定部4で測定された自動車100の速度V、自動車100のホイールベースl及び自動車100の横加速度aに対する自動車100の操舵角δの関係に基づいて、横加速度aが閾値を超えない操舵角δで自動車100の操舵制御が実行される。このため、個々の自動車100の車両特性であるホイールベースlにより対応した操舵制御を実行できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の速度を測定する速度測定部と、
前記自動車の操舵制御を実行する操舵制御部と、
を備え、
前記操舵制御部は、前記速度測定部により測定された前記自動車の前記速度、前記自動車のホイールベース及び前記自動車の横加速度に対する前記自動車の操舵角の関係に基づいて、前記横加速度が閾値を超えない前記操舵角で前記自動車の前記操舵制御を実行する、車両制御装置。
【請求項2】
前記操舵制御部は、前記自動車が走行する車線を逸脱しないように前記自動車の前記操舵制御を実行する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記操舵制御部は、前記速度測定部により測定された前記自動車の前記速度をVとし、前記自動車の前記ホイールベースをlとし、前記自動車の前記横加速度をaとし、前記自動車の前記操舵角をδとし、任意の定数Kとしたときに、式(A)を満たす前記関係に基づいて、前記横加速度が閾値を超えない前記操舵角で前記自動車の前記操舵制御を実行する、請求項1又は2に記載の車両制御装置。
δ=l(1+K)・(1/V)・a (A)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の操舵制御を実行する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、前輪の操舵に伴い、後輪を操舵するようにした自動車において、前輪操舵量に応じ、前輪と同相となる後輪の基準同相操舵量を算出するとともに、走行路面の状態に応じた補正同相操舵量を算出し、これら基準同相操舵量と補正同相操舵量とを加算して後輪同相操舵量を求める技術が開示されている。特許文献1の技術では、走行路面の路面摩擦係数、走行路面の勾配及び自動車に働く横加速度からファジィ推論に従って得られる補正係数と操舵速度とに応じて補正逆相操舵量を求める。特許文献1の技術では、後輪同相操舵量と補正逆相操舵量とを加算した後輪操舵量に基づき、後輪が操舵される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2643702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような自動車の操舵制御を実行する技術では、個々の自動車の車両特性ごとに同じ操舵角であっても、自動車に発生する横加速度等の挙動は異なる。したがって、個々の自動車の車両特性により対応した操舵制御を実行する技術が望まれている。
【0005】
そこで本発明は、個々の自動車の車両特性により対応した操舵制御を実行する車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自動車の速度を測定する速度測定部と、自動車の操舵制御を実行する操舵制御部とを備え、操舵制御部は、速度測定部により測定された自動車の速度、自動車のホイールベース及び自動車の横加速度に対する自動車の操舵角の関係に基づいて、横加速度が閾値を超えない操舵角で自動車の操舵制御を実行する車両制御装置である。
【0007】
この構成によれば、車両制御装置において、操舵制御部により、速度測定部で測定された自動車の速度、自動車のホイールベース及び自動車の横加速度に対する自動車の操舵角の関係に基づいて、横加速度が閾値を超えない操舵角で自動車の操舵制御が実行される。このため、個々の自動車の車両特性であるホイールベースにより対応した操舵制御を実行できる。
【0008】
この場合、操舵制御部は、自動車が走行する車線を逸脱しないように自動車の操舵制御を実行してもよい。
【0009】
この構成によれば、操舵制御部により自動車が走行する車線を逸脱しないように自動車の操舵制御が実行される車線逸脱防止支援制御の際に、個々の自動車のホイールベースに対応して横加速度が閾値を超えない操舵角で自動車の操舵制御が実行される。このため、車線逸脱防止支援制御において、個々の自動車の車両特性であるホイールベースにより対応した操舵制御を実行できる。
【0010】
また、操舵制御部は、速度測定部により測定された自動車の速度をVとし、自動車のホイールベースをlとし、自動車の横加速度をaとし、自動車の操舵角をδとし、任意の定数Kとしたときに、式(A)を満たす関係に基づいて、横加速度が閾値を超えない操舵角で自動車の操舵制御を実行してもよい。
δ=l(1+K)・(1/V)・a (A)
【0011】
この構成によれば、操舵制御部により、速度測定部で測定された自動車の速度をVと、自動車のホイールベースをlとし、自動車の横加速度をaとし、自動車の操舵角δとし、任意の定数Kとしたときに式(A)を満たす関係に基づいて、横加速度が閾値を超えない操舵角で自動車の操舵制御が実行される。このため、より確実に個々の自動車の車両特性であるホイールベースにより対応した操舵制御を実行できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両制御装置によれば、個々の自動車の車両特性により対応した操舵制御を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る車両制御装置を示すブロック図である。
図2】自動車が旋回する状況を示す平面図である。
図3】実施形態に係る車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る車両制御装置について、図面を用いて詳細に説明する。図1に示される車両制御装置1は、自動車100に搭載され、各種のシステムにより自動車100のドライバーの運転操作を支援する。以下、本実施形態の車両制御装置1において、自動車100が走行する車線を逸脱しないように自動車100の操舵制御を実行するLKA(LaneKeeping Assist:車線逸脱防止支援)制御に関する構成について中心に説明する。
【0015】
図1に示されるように、本実施形態の車両制御装置1は、LKA制御に固有の構成として、LKAスイッチ2、カメラ3、操舵角センサ6、トルクセンサ7、操舵アクチュエータ8、ECU‐A9及びECU‐B10を備える。ECU‐A9及びECU‐B10は、操舵制御部11を構成する。また、車両制御装置1は、速度測定部4、SAS5及びECU‐Cを備える。
【0016】
図1において、各構成間における二重線による接続は、CAN(Controller Area Network)による接続を意味する。また、各構成間における単線による接続は、機器同士を一対一で直接に繋ぐ電線による接続を意味する。また、各構成間における太い二重線及び単線による接続は、LKA制御に固有の接続を意味する。
【0017】
LKAスイッチ2は、自動車100のドライバーによるLKA制御をオン及びオフにする操作を受け付けるスイッチである。カメラ3は、路面上で車線を区画する白色又は黄色の線を含む自動車100の前方を撮影する。カメラ3は、撮影した自動車100の前方の画像の情報をECU‐A9に送信する。ECU(Electronic Control Unit)‐A9は、後述するように、LKA制御を含む各種のシステムにより自動車100のドライバーの運転操作を支援する。
【0018】
SAS(SteeringAngle Sensor)5は、自動車100のドライバーから入力された操舵角を検出し、ECU‐A9へ検出した操舵角を出力する。操舵角センサ6は、自動車100のドライバーから入力された操舵角を検出し、ECU‐B10とECU‐A9とへ検出した操舵角を出力する。ECU(Electronic Control Unit)‐B10は、自動車100の操舵制御を実行する。
【0019】
トルクセンサ7は、自動車100の車輪の操舵によるトルクを検出する。トルクセンサ7は、検出されたトルクをECU‐B10に送信する。操舵アクチュエータ8は、ECU‐B10からの指令により自動車100の操舵角を制御する。操舵角センサ6及び操舵アクチュエータ8は、本発明を実施するための構成要素である。SAS5は、従来より自動車が通常有する構成である。なお、本実施形態において、SAS5及び操舵角センサ6の2つの操舵角検出デバイスを使用している理由は、操舵支援制御に関する自己完結性と応答性向上のためである。
【0020】
速度測定部4は、自動車100の速度を測定する。速度測定部4は、例えば、自動車100の車輪又は車輪と一体に回転する車軸等に対して設けられ、車輪の回転速度を信号として検出する車輪速センサである。速度測定部4は、車輪の回転速度に応じた信号をECU‐C12を介してECU‐A9に送信する。ECU(Electronic Control Unit)‐C12は、不図示のブレーキペダルセンサにより電気信号に変換された自動車100のブレーキペダルのストロークに基づいて指示値を不図示のモジュレータに伝達する。モジュレータは、ECU‐C12からの指示値により、所定のエア圧をチャンバに送り自動車100のブレーキを作動させる。
【0021】
ECU‐A9、ECU‐B10及びECU‐C12の各ECUは、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read OnlyMemory]、RAM[Random Access Memory]及びHDD(Hard disk drive)等を有する電子制御ユニットである。各ECUでは、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで各部の制御を実行する。
【0022】
以下、本実施形態の車両制御装置1の動作の詳細について説明する。ECU‐A9及びECU‐B10から構成される操舵制御部11は、自動車100の操舵制御を実行する。操舵制御部11は、以下に説明するように、速度測定部4により測定された自動車100の速度、自動車100のホイールベース及び自動車100の横加速度に対する自動車100の操舵角の関係に基づいて、横加速度が閾値を超えない操舵角で自動車100の操舵制御を実行する。また、操舵制御部11は、カメラ3により撮影された画像に基づく自動車100の車線に対する位置に基づいて、自動車100が走行する車線を逸脱しないように自動車100の操舵制御(LKA制御)を実行する。
【0023】
以下に説明するロジックは、ECU‐A9で計算される。ECU‐A9は、ECU‐B10に操舵角及び操舵速度を指示する。ECU‐B10は、操舵アクチュエータ8に指令信号を送信し、自動車100の操舵を実行する。
【0024】
なお、自動車100のホイールベースとは、例えば、自動車100において互いに最も近接する自動車100の操舵に関する前輪の前輪軸と自動車100の駆動に関する後輪の後輪軸との距離を意味する。自動車100の操舵角とは、例えば、自動車100の操舵に関する前輪の自動車100の前方向に対する角度を意味する。自動車100の操舵速度とは、例えば、自動車100の操舵角の時間当たりの変化量を意味する。上述したように、自動車100の横加速度とは、例えば、自動車100の横方向への加速度を意味する。
【0025】
図2に示されるように、ホイールベースlの自動車100が、半径Rのカーブを旋回する場面を考える。自動車100は、t秒間に地点Aから地点Bまで走行する。自動車100の速度Vに対して、自動車100の走行距離L=Vtである。自動車100の横方向の移動距離である横移動距離はa、半径Rのカーブの旋回角度はθで表される。したがって、θ=L/Rである。
【0026】
横移動距離aについて、以下の式(1)が成り立つ。
a=R(1-cosθ)
=R(1-cosθ)・{(1+cosθ)/(1+cosθ)}
=R(1-cosθ)/(1+cosθ)
=Rsinθ/(1+cosθ) (1)
【0027】
このとき、θは十分に小さいので、sinθ=θ、cosθ=1とみなせ、以下の式(2)が成り立つ。
a=Rθ/(1+1)=Rθ/2=L/2R (2)
【0028】
L=Vtであるため、曲率Kで表すと、以下の式(3)が成り立つ。
a=(Vt)/2R=(1/2)・KV (3)
【0029】
上記の式(3)において、横移動距離a=y、横加速度a=KVとすると、以下の式(4)のように、地点Aから地点Bまでの横移動距離aと、自動車100がt秒間で走行するカーブの曲率Kとの関係が導かれる。
y=(1/2)・a (4)
【0030】
上記の式(4)は、等加速度直線運動の式の形と同様であるため、横加速度aは曲率Kと速度Vとの関係式である以下の式(5)で表せる。
=KV (5)
【0031】
一方、操舵角δと曲率Kとの関係は、以下の式(6)で表される。式(6)において、Kはスタビリティファクタである。
δ=l(1+K)K (6)
【0032】
式(5)及び式(6)により、以下の式(A)が成り立つ。したがって、操舵制御部11のADAS‐ECU9は、任意に設定された横加速度aの閾値について、閾値を超えない横加速度aとなる操舵角δを以下の式(A)により算出することができる。操舵制御部11の操舵制御ECU10は、式(A)を満たす関係に基づいて、横加速度aが閾値を超えない操舵角δで自動車100の操舵制御を実行する。
δ=l(1+K)・(1/V)・a (A)
【0033】
なお、横加速度aの閾値は、例えば、予め設定された閾値が自動車100の内部の記憶装置に記憶されていてもよい。また、横加速度aの閾値は、例えば、自動車100のドライバーにより任意に設定され、ドライバーにより設定された閾値が自動車100の内部の記憶装置に記憶されていてもよい。また、ホイールベースlは、例えば、予め設計諸元に基づく値が自動車100の内部の記憶装置に記憶されていてもよい。
【0034】
以下、自動車100の走行中における本実施形態の車両制御装置1の動作について説明する。図3に示されるように、自動車100のドライバーによりLKAスイッチ2がオンにされる(S1)。LKAスイッチ2がオンのときは、操舵制御部11により、操舵制御部11は、カメラ3により撮影された画像に基づく自動車100の車線に対する位置に基づいて、自動車100が走行する車線を逸脱しないように自動車100の操舵制御が実行される(S2)。なお、LKAスイッチ2がオフのときは、以下の動作は実行されない。
【0035】
速度測定部4により、自動車100の速度Vが測定される(S3)。操舵制御部11のECU‐A9により、上記の式(A)に基づいて、横加速度aが閾値を超えない操舵角δの閾値が算出される(S4)。操舵制御部11のECU‐A9は、LKA制御の操舵角δがS4で算出された操舵角の閾値を超えるか否かを判定する(S5)。LKA制御の操舵角がS4で算出された操舵角δの閾値を超えるときは、操舵制御部11のECU‐A9及びECU‐B10は、横加速度aが閾値を超えない操舵角δの閾値以下の操舵角δでLKA制御を実行する(S6)。一方、LKA制御の操舵角δがS4で算出された操舵角δの閾値を超えないときは、LKA制御が続行される。
【0036】
本実施形態によれば、車両制御装置1において、操舵制御部11により、速度測定部4で測定された自動車100の速度V、自動車100のホイールベースl及び自動車100の横加速度aに対する自動車100の操舵角δの関係に基づいて、横加速度aが閾値を超えない操舵角δで自動車100の操舵制御が実行される。このため、個々の自動車100の車両特性であるホイールベースlにより対応した操舵制御を実行できる。本実施形態の車両制御装置1は、同車種であってもバリエーションによりホイールベースlが異なる商用車に有用である。
【0037】
また、本実施形態によれば、操舵制御部11により自動車100が走行する車線を逸脱しないように自動車100の操舵制御が実行される車線逸脱防止支援制御の際に、個々の自動車100のホイールベースlに対応して横加速度aが閾値を超えない操舵角δで自動車100の操舵制御が実行される。このため、車線逸脱防止支援制御において、個々の自動車100の車両特性であるホイールベースlにより対応した操舵制御を実行できる。
【0038】
また、本実施形態によれば、操舵制御部11により、速度測定部4で測定された自動車100の速度をVとし、自動車100のホイールベースをlとし、自動車100の横加速度をaとし、自動車100の操舵角をδとし、任意の定数であるスタビリティファクタをKとしたときに上記の式(A)を満たす関係に基づいて、横加速度aが閾値を超えない操舵角δで自動車100の操舵制御が実行される。このため、より確実に個々の自動車100の車両特性であるホイールベースlにより対応した操舵制御を実行できる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【符号の説明】
【0040】
1…車両制御装置、2…LKAスイッチ、3…カメラ、4…速度測定部、5…SAS、6…操舵角センサ、7…トルクセンサ、8…操舵アクチュエータ、9…ECU‐A、10…ECU‐B、11…操舵制御部、12…ECU‐C、100…自動車、l…ホイールベース。
図1
図2
図3