(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133627
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】電力制御装置、電力制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20220907BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20220907BHJP
G05F 1/67 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H02J3/38 120
H02J3/38 150
H02M7/48 R
G05F1/67 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032408
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌央
(72)【発明者】
【氏名】本郷 真一
【テーマコード(参考)】
5G066
5H420
5H770
【Fターム(参考)】
5G066HA10
5G066HA13
5G066HB06
5H420BB14
5H420CC03
5H420DD02
5H420DD03
5H420FF03
5H420FF04
5H420FF05
5H420GG04
5H770AA19
5H770AA29
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA05
5H770DA10
5H770GA17
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA03Y
5H770HA03Z
5H770JA17Y
5H770LB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電力制御装置が自家消費モードでの動作中に、誤って報知指令が出力されることを抑制できる電力制御装置及び電力制御システムを提供する。
【解決手段】分散型電源(太陽光発電パネル)を備え、電力系統と連系するグリッドの電力制御装置(パワーコンディショナ)の制御装置において、第2制御ブロック51Bは、分散型電源から供給される電力を、直流から交流に変換して出力するインバータ回路の出力を制御する第1電力制御部63と、第1選択回路61から出力される出力目標値が、第1選択回路61に対して入力された出力制限値と一致している場合、報知指令を出力する報知回路70と、自家消費モードが選択されている場合、電気事業者から指示される出力制限値に所定値を加算することにより、自家消費モードの選択中に報知指令が出力されることを抑制する抑制回路80と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型電源を備え電力系統と連系するグリッドの電力制御装置であって、
前記分散型電源から供給される電力を、直流から交流に変換して、出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路の出力を制御する制御装置と、を含み、
前記制御装置は、
前記インバータ回路の定格出力、自家消費モードの出力目標値、及び自家消費モードの出力目標値以上であり電気事業者から指示される出力制限値の3つの入力値のうち、最小の値を選択して、前記インバータ回路の出力目標値として出力する第1選択回路と、
前記第1選択回路から出力される出力目標値に従って、前記インバータ回路の出力を制御する第1電力制御部と、
前記第1選択回路から出力される出力目標値が、前記第1選択回路に対して入力された出力制限値と一致している場合、報知指令を出力する報知回路と、
自家消費モードが選択されている場合、電気事業者から指示される出力制限値に所定値を加算することにより、自家消費モードの選択中に、前記報知指令が出力されることを抑制する抑制回路と、を備える、電力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力制御装置であって、
前記抑制回路は、
電気事業者から指示される出力制限値に対して所定値を加算して前記第1選択回路に出力する加算器と、
前記加算器に対する所定値の入力ラインにあって、自家消費モードが選択されている場合にオンし、自家消費モードが選択されていない場合にオフするスイッチと、を含む、電力制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電力制御装置であって、
前記分散型電源である太陽光発電パネルの出力電圧を変換して前記インバータ回路に出力する電圧変換部を備え、
前記制御装置は、
前記太陽光発電パネルをMPPT制御する第2電力制御部と、
前記第1電力制御部と前記第2電力制御部のうち、前記電圧変換部に対する操作量の小さい方を選択して、前記電圧変換部に対して出力する第2選択回路と、を備え、
前記報知回路は、
前記第1選択回路から出力される出力目標値が、前記第1選択回路に対して入力された出力制限値と一致しているか否かを判定する第1判定部と、
前記第2選択回路の出力値が前記第1電力制御部の出力する操作量と一致しているか否かを判定する第2判定部と、
前記第1選択回路から出力される出力目標値が前記第1選択回路に対して入力された出力制限値と一致し、かつ前記第2判定回路の出力値が前記第1電力制御部の出力する操作量と一致する場合に、報知指令を出力する出力部を含む、電力制御装置。
【請求項4】
分散型電源を備え電力系統と連系するグリッドの電力制御システムであって、
前記分散型電源から供給される電力を直流から交流に変換して出力するインバータ回路を備えた電力変換装置と、
制御装置と、を含み、
前記制御装置は、
前記インバータ回路の定格出力、自家消費モードの出力目標値、及び自家消費モードの出力目標値以上であり電気事業者から指示される出力制限値の3つの入力値のうち、最小の値を選択して、前記インバータ回路の出力目標値として出力する第1選択回路と、
前記第1選択回路から出力される出力目標値に従って、前記インバータ回路の出力を制御する第1電力制御部と、
前記第1選択回路から出力される出力目標値が、前記第1選択回路に対して入力された出力制限値と一致している場合、報知指令を出力する報知回路と、
自家消費モードが選択されている場合、電気事業者から指示される出力制限値に所定値を加算することにより、自家消費モードの選択中に、前記報知指令が出力されることを抑制する抑制回路と、を備える、電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路の出力[W]を、電気事業者から指示される出力制限値に制限していることを、ユーザに報知して知らせる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料に対する依存の低減や環境問題の観点から、太陽光発電(PV:Photovoltaic)に代表される分散型電源の導入が進められている。太陽光発電パネルで発電された電力は、インバータ回路を用いて直流から交流に変換され、負荷に対して供給される。分散型電源を有するグリッドは電力系統と連系しており、分散型電源の余剰電力を、電力系統に送電して売電することが出来る。
【0003】
近年では、分散型電源の大量導入により電力系統において、電気の供給過多になることを懸念して、電気事業者の要請により、インバータ回路の出力制限を行う場合がある。電気事業者は、運用サーバを介して時間単位でインバータ回路の出力上限を定めた出力制限スケジュールを提供する。分散型電源の利用者は、出力制限スケジュールに従ってインバータ回路の出力を制限する。
【0004】
下記特許文献1には、太陽電池、蓄電池、逆流防止ダイオード、パワーコンディショナ、負荷等を備えた電力貯蔵型太陽光発電システムが開示されている。
【0005】
下記特許文献2には、複数台のPCSを、それらからの出力が必要以上に制限されない形で制御できる出力制御装置を提供する点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4765162号公報
【特許文献2】特開2018-153003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気事業者からの要請に応じてインバータ回路を出力制限している場合、報知情報を出力して利用者に知らせることが考えられる。これは、分散型電源の出力が期待される出力に比べて低いことについて、利用者が疑念を抱くことを避けるためである。
【0008】
電力制御装置の機能の1つに、自家消費モードがある。自家消費モードは、分散型電源の発電電力を、グリッド内の負荷でのみ消費し、電力系統に対して送電しないモードである。
【0009】
自家消費モードにおけるインバータ回路の出力目標値と電気事業者から提供される出力制限値が一致している場合、インバータ回路の出力目標値として、2つの値のうち、どちらが選択されているのか、判断することができない可能性がある。そのため、インバータ回路が「自家消費モード」で動作している時に、電力制御装置が「電気事業者からの要請による出力制限中であることを通知する報知指令」を誤って出力する可能性があった。
【0010】
本技術は、インバータ回路が自家消費モードで動作している時に、電力制御装置が誤って報知指令を出力することを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
分散型電源を備え電力系統と連系するグリッドの電力制御装置は、前記分散型電源から供給される電力を、直流から交流に変換して、出力するインバータ回路と、前記インバータ回路の出力を制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、前記インバータ回路の定格出力、自家消費モードの出力目標値、及び自家消費モードの出力目標値以上であり電気事業者から指示される出力制限値の3つの入力値のうち、最小の値を選択して、前記インバータ回路の出力目標値として出力する第1選択回路と、前記第1選択回路から出力される出力目標値に従って、前記インバータ回路の出力を制御する第1電力制御部と、前記第1選択回路から出力される出力目標値が、前記第1選択回路に対して入力された出力制限値と一致している場合、報知指令を出力する報知回路と、自家消費モードが選択されている場合、電気事業者から指示される出力制限値に所定値を加算することにより、自家消費モードの選択中に、前記報知指令が出力されることを抑制する抑制回路と、を備える。
【0012】
本技術は、電力制御システム、電力制御方法に適用することが出来る。
【発明の効果】
【0013】
自家消費モードでの動作中に、誤って報知指令を出力することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】双方向インバータ回路の出力制限スケジュール
【発明を実施するための形態】
【0015】
分散型電源を備え電力系統と連系するグリッドの電力制御装置は、前記分散型電源から供給される電力を、直流から交流に変換して、出力するインバータ回路と、前記インバータ回路の出力を制御する制御装置と、を含み、前記制御装置は、前記インバータ回路の定格出力、自家消費モードの出力目標値、及び自家消費モードの出力目標値以上であり電気事業者から指示される出力制限値の3つの入力値のうち、最小の値を選択して、前記インバータ回路の出力目標値として出力する第1選択回路と、前記第1選択回路から出力される出力目標値に従って、前記インバータ回路の出力を制御する第1電力制御部と、前記第1選択回路から出力される出力目標値が、前記第1選択回路に対して入力された出力制限値と一致している場合、報知指令を出力する報知回路と、自家消費モードが選択されている場合、電気事業者から指示される出力制限値に所定値を加算することにより、自家消費モードの選択中に、前記報知指令が出力されることを抑制する抑制回路と、を備える。
【0016】
第1選択回路は、インバータ回路の定格値、自家消費モードの出力目標値、電気事業者から指示される出力制限値の3つの入力値のうち、最小の値を選択して出力する。電気事業者から指示される出力制限値は自家消費モードの出力目標値以上であることから、自家消費モードが選択されている場合、インバータ回路の定格値、自家消費モードの出力目標値、電気事業者から指示される出力制限値のうち、自家消費モードの出力目標値が最小となり、第1選択回路は、自家消費モードの出力目標値をインバータ回路の出力目標値として出力する。そのため、インバータ回路の出力は、自家消費モードの出力目標値、つまり、負荷の消費電力に制御される。
抑制回路は、自家消費モードが選択されている場合、電気事業者から指示される出力制限値に所定値を加算することから、加算後の出力制限値は、自家消費モードの出力目標値よりも大きい。そのため、自家消費モードの選択中、第1選択回路から出力される出力目標値は、自家消費モードの出力目標値だけと一致し、所定値を加算した出力制限値とは一致しないので、自家消費モードの選択中に、報知指令が出力されることを抑制することが出来る。
【0017】
前記抑制回路は、電気事業者から指示される出力制限値に対して所定値を加算して前記第1選択回路に出力する加算器と、前記加算器に対する所定値の入力ラインにあって、自家消費モードが選択されている場合にオンし、自家消費モードが選択されていない場合にオフするスイッチと、を含む回路でもよい。
【0018】
この構成では、自家消費モードが選択されている場合のみ、出力制限値に対して所定値が加算され、自家消費モードが未選択の場合、所定値は加算されない。そのため、自家消費モードが未選択である場合のインバータ回路の出力制御に影響を及ぼすことなく、自家消費モード中に報知指令が出力されることを抑制することが出来る。
【0019】
前記分散型電源である太陽光発電パネルの出力電圧を変換して前記インバータ回路に出力する電圧変換部を備え、前記制御装置は、前記太陽光発電パネルをMPPT制御する第2電力制御部と、前記第1電力制御部と前記第2電力制御部のうち、前記電圧変換部に対する操作量の小さい方を選択して、前記電圧変換部に対して出力する第2選択回路と、を備え、前記報知回路は、前記第1選択回路から出力される出力目標値が、前記第1選択回路に対して入力された出力制限値と一致しているか否かを判定する第1判定部と、前記第2選択回路の出力値が前記第1電力制御部の出力する操作量と一致しているか否かを判定する第2判定部と、前記第1選択回路から出力される出力目標値が、前記第1選択回路に対して入力された出力制限値と一致し、かつ前記第2判定回路の出力値が前記第1電力制御部の出力する操作量と一致する場合に、報知指令を出力する出力部を含む構成でもよい。
【0020】
報知回路は、前記第1選択回路から出力される出力目標値が、前記第1選択回路に対して入力された出力制限値と一致し、かつ第2判定回路の出力値が前記第1電力制御部の出力する操作量と一致する場合にのみ、報知指令を出力する。つまり、MPPT制御により太陽光発電パネルが最大出力に制御されていても、インバータ回路の出力が電気事業者から指示される出力制限値よりも小さく出力を制限していない場合(第2判定回路の出力値が前記第2電力制御部の出力する操作量と一致する場合)、報知指令が出力されることを抑制することが出来る。
【0021】
<実施形態1>
1.マイクログリッドSの説明
マイクログリッドSは、電気事業者である電力会社の運営する電力系統1に連系する小規模電力系統であり、分散型電源、電力制御装置、負荷を少なくとも備える。
【0022】
図1は、マイクログリッドSのブロック図である。マイクログリッドSは、分散型電源である太陽光発電パネル10と、電力制御装置であるパワーコンディショナ20と、負荷Lから構成されている。
【0023】
パワーコンディショナ20は、第1電流検出部21と、第1電圧検出部22と、第1コンバータ回路23と、DCリンク部25と、直流電圧検出部27と、双方向インバータ回路31と、第2電流検出部33と、第2電圧検出部35と、リレー37と、制御装置50と、操作部91と、報知部95と、を備えている。
【0024】
第1コンバータ回路23には、太陽光発電パネル10が接続されている。第1コンバータ回路23は、DC/DCコンバータであり、太陽光発電パネル10の出力電圧(直流)を昇圧して出力する。第1コンバータ回路23はスイッチングにより昇圧する昇圧チョッパでもよい。第1コンバータ回路23は本発明の「電圧変換部」に相当する。
【0025】
第1電流検出部21と第1電圧検出部22は、太陽光発電パネル10の出力側に位置している。第1電流検出部21は太陽光発電パネル10の出力電流Ipvを検出する。第1電圧検出部22は、太陽光発電パネル10の出力電圧Vpvを検出する。
【0026】
第1電流検出部21により検出される太陽光発電パネル10の出力電流Ipvと、第1電圧検出部22により検出される太陽光発電パネル10の出力電圧Vpvは、制御装置50に入力される。
【0027】
制御装置50は、太陽光発電パネル10の出力電流Ipvと出力電圧Vpvとに基づいて、太陽光発電パネル10の出力電力Ppv[W]を算出することが出来る。
【0028】
第1コンバータ回路23は、DCリンク部25を介して、双方向インバータ回路31に接続されている。DCリンク部25には、電解コンデンサC1が設けられている。電解コンデンサC1は、DCリンク部25の電圧Vdcを安定させるために設けられている。
【0029】
直流電圧検出部27は、DCリンク部25の電圧Vdcを検出する。直流電圧検出部27により検出されたDCリンク部25の電圧Vdcは、制御装置50に入力される。
【0030】
双方向インバータ回路31は、DCをACに変換する逆変換(インバータ)と、ACをDCに変換する順変換(コンバータ)を選択的に行う、双方向の変換回路である。双方向インバータ回路31は、逆変換動作時には、DCリンク部25より入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。詳細には、双方向インバータ回路31には、太陽光発電パネル10の発電によりDCリンク部25において基準値より増加した電圧分に相当する電力が入力される。従って、基準値より増加した電圧分に相当する電力が、直流から交流に変換され、双方向インバータ回路31から出力される。
【0031】
双方向インバータ回路31は、リレー37を介して、系統電源2を交流電源とする電力系統1に接続されている。
【0032】
リレー37は、電力系統1との連系用として設置されている。リレー37を閉じることで、マイクログリッドSを電力系統1に連系させることが出来る。
【0033】
第2電流検出部33と第2電圧検出部35は、双方向インバータ回路31の出力側に位置している。第2電流検出部33は、双方向インバータ回路31の出力電流Iinvを検出する。第2電圧検出部35は、双方向インバータ回路31の出力電圧Vinvを検出する。
【0034】
第2電流検出部33により検出された双方向インバータ回路31の出力電流Iinvと、第2電圧検出部35により検出された双方向インバータ回路31の出力電圧Vinvは、制御装置50に対して入力される。
【0035】
制御装置50は、双方向インバータ回路31の出力電流Iinvと出力電圧Vinvとに基づいて、双方向インバータ回路31の出力電力(有効電力)Pinvを算出する。出力電力Pinvは、逆変換時を「正」とし、順変換時を「負」とする。
【0036】
双方向インバータ回路31と電力系統1とを接続する電力線(幹線)5には、分岐線4を介して、需要設備である負荷Lが接続されている。負荷Lに対して、パワーコンディショナ20と電力系統1の双方から電力を供給することが出来る。
【0037】
受電点3は、電力系統1からマイクログリッドSへの電力の供給地点であり、
図1に示すように、電力系統1とマイクログリッドSとの境界部分である。
【0038】
電力系統1には、受電点3の電力検出用の計器として、外部トランスデューサ等の外部計測器40が設けられている。
【0039】
外部計測器40は、受電電流検出部41と系統電圧検出部43とを有している。外部計測器40は受電点3に対応して設置されており、受電電流検出部41は、受電点3の受電電流を検出する。系統電圧検出部43は電力系統1の系統電圧を検出する。
【0040】
外部計測器40は、受電電流と系統電圧とに基づいて、マイクログリッドSの受電電力(有効電力)Prを算出する。外部計測器40により、検出された受電電力Prは、制御装置50に対して入力される。受電電力Prは、電力潮流(以下、単に潮流とする)の状態判定に使用することが出来る。外部計測器40は、受電点3の受電電力Prを計測する計測器である。
【0041】
受電電力Prは、順潮流(
図1:電力系統1からマイクログリッドSに向かう電気の潮流)を「正」とし、逆潮流(
図2:マイクログリッドSから電力系統1に向かう電気の潮流)を「負」とする。
【0042】
負荷Lの消費電力PLは、受電点3の受電電力Prと、双方向インバータ回路31の出力電力Pinvとから求めることが出来る。順潮流(Pr>0)の場合、負荷Lの消費電力PLは出力電力Pinvと受電電力Prの合計である。逆潮流(Pr<0)の場合、負荷Lの消費電力PLは出力電力Pinvと受電電力Prの差である。
【0043】
PL=Pinv+Pr (1)
【0044】
制御装置50は、双方向インバータ回路31に指令を与えることで、順変換動作、逆変換動作の切り換えを制御できる。
【0045】
2.太陽光発電パネルの出力制御
太陽光発電パネル10の出力は、日射強度により異なり、日射強度が高い程、高出力である。
【0046】
図3は、ある日射強度に対する、太陽光発電パネル10の出力特性を示すグラフである。縦軸は電力Ppv[W]、電流Ipv[A]、横軸は電圧Vpv[V]である。LaはI-V特性、LbはP-V特性である。「Voc」は太陽光発電パネル10の開放電圧、「Isc」は太陽光発電パネル10の短絡電流である。
【0047】
太陽光発電パネル10は、動作点Mにより、電力Ppvが変化する。動作点がM1の場合、太陽光発電パネル10の電力は「Ppv1」である。動作点がM2の場合、太陽光発電パネル10の電力は、「Ppv1」より低い電力「Ppv2」である。つまり、動作点をM1からM2に変化させることで、太陽光発電パネル10の出力をΔP(ΔP=Ppv1-Ppv2)下げることが出来る。動作点をM2からM1に変化させることで、太陽光発電パネル10の出力をΔP(ΔP=Ppv1-Ppv2)上げることが出来る。
【0048】
制御装置50は、第1コンバータ回路23を介して、動作点Mをコントロールすることで、太陽光発電パネル10の電力Ppv[W]を制御することが出来る。第1コンバータ回路23が、昇圧チョッパの場合、スイッチング素子のデューティ比制御により、第1コンバータ回路23の出力電圧Vcoを調整することで、動作点Mをコントロールすることが出来る。つまり、出力電圧Vcoの調整に伴って、スイッチング素子のデューティ比を小さくすると、太陽光発電パネル10の電流Ipvは減少し、デューティ比を大きくすると電流Ipvは増加する。電流Ipvが減少すると、動作点Mは、
図3のI-V特性La上において、元の位置から右に移動し、電流Ipvが増加すると、元の位置から左に移動する。
【0049】
3.双方向インバータ回路の出力制限と自家消費モード
(1)出力制限は、例えば、電気事業者からの要請で行われ、電気事業者の運用サーバ100からネットワークNWを介して提供される出力制限スケジュールに従って、双方向インバータ回路31の出力を制限するものである。出力制限スケジュールは、
図4に示すように、双方向インバータ回路31の出力制限値[%]を、時間単位で定めたものである。出力制限値は、双方向インバータ回路31の出力の上限を定めるものであり、この例では、双方向インバータ回路31の定格出力[W]に対する割合である。つまり、定格出力=100%として、各時間帯の出力制限値を定めている。
【0050】
図4の例では、6時~8時までの出力制限値は100[%]、8時~9時までの出力制限値は50%、9時~10時までの出力制限値は40[%]、10時~11時までの出力制限値は20[%]である。11時~15時までの出力制限値は0[%]である。
【0051】
15時~16時までの出力制限値は20[%]、16時~17時までの出力制限値は40%、17時~18時までの出力制限値は50[%]、18時~20時までの出力制限値は100[%]である。
【0052】
太陽光発電パネル10の発電量が多い時間帯の出力制限値が低い理由(11時~15時の時間帯が0[%]である理由)は、マイクログリッドSから電力系統1へ逆潮流する電力が増えることで、電力系統1の電圧上昇、周波数上昇を抑制する必要があるためである。
【0053】
出力制限は、マイクログリッドSから電力系統1への逆潮流を制限するものであり、マイクログリッドSの構内に位置する負荷Lに対する出力は対象とされない。つまり、双方向インバータ回路31は、出力制限値X2が0[%]でも、負荷Lの消費電力はPL[W]は出力することが可能である。例えば、消費電力PLが10[W]、出力制限値X2が0[%]の場合、双方向インバータ回路31は10[W]までは出力することが出来る。
【0054】
制御装置50は、双方向インバータ回路31の出力目標値Xが出力制限値X2と一致している場合、報知情報を出力する。例えば、双方向インバータ回路31の出力制限値X2が50[%]で、インバータ回路31の出力目標値Xが定格出力の50[%]である場合、報知指令を報知部95に出力する。報知部95は、例えば、LED等のランプ等であり、報知指令に応答して点灯する。
【0055】
報知指令を出力する意図は、太陽光発電パネル10の出力が期待される出力に比べて低いことについて、利用者(マイクログリッドSの運用者)が疑念を抱くことを避けるためである。
【0056】
(2)パワーコンディショナ20は、機能の1つとして、自家消費モードを有している。自家消費モードは、太陽光発電パネル10の発電した電力を、マイクログリッドS内の負荷Lでのみ消費し、電力系統1に対して送電しないモードである。自家消費モードは、グリッドSから電力系統1への逆潮流を許容しないことから、双方向インバータ回路31の出力目標値X3はゼロである。ただし、負荷Lの消費電力PLの出力は許容する。
【0057】
図5は、パワーコンディショナ20の機能設定画面の一例である。操作部91は、表示画面を備えた操作パネル91Aであり、機能設定画面は、操作パネル91Aの画面上に表示することが出来る。ユーザは、画面操作により「電力事業者による出力制限」、「自家消費モード」の有効/無効を選択することが出来る。
【0058】
この例では、「電気事業者による出力制限」の表示92と「自家消費モード」の表示93の下方に2つのボタン92A、93Aが表示される。ボタン92Aの操作により、「電力事業者による出力制限」を有効化することが出来る。ボタン93Aの操作により、「自家消費モード」を有効化することが出来る。
【0059】
「電気事業者による出力制限」と「自家消費モード」は併存する機能であり、2つのボタン92A、93Aをオンすることで、「電気事業者による出力制限」と「自家消費モード」の双方を有効にすることが可能である。2つのボタン92A、93Aをオフすることで、「電気事業者による出力制限」と「自家消費モード」の双方を無効にすることが可能である。いずれかのみ有効にして、もう一方を無効にしてもよい。
【0060】
4.制御ブロックと報知指令の誤作動
図6は、制御装置50のうち、太陽光発電パネル10及び双方向インバータ回路31の電力制御に関する制御ブロック51の一例を示している。
【0061】
図6に示す第1制御ブロック51Aは、第1コンパレータ61と、第1電力制御部63と、第2電力制御部65と、第2コンパレータ67と、報知回路70とを含む。第1コンパレータ61は、本発明の「第1選択回路」に相当し、第2コンパレータ67は、本発明の「第2選択回路」に相当する。
【0062】
第1コンパレータ61は、双方向インバータ回路31の出力目標値Xを決定する。第1コンパレータ61は3入力であり、3つの入力ラインを有する。第1入力ラインL1は、双方向インバータ回路31の定格出力[W]の入力用、第2入力ラインL2は、双方向インバータ回路31の出力制限値の入力用、第3入力ラインL3は、双方向インバータ回路31の自家消費モード中の出力目標値の入力用である。
【0063】
出力制限値は電気事業者の運用サーバ100から提供される(
図4参照)。出力制限値は定格出力を100[%]とした割合で表される。
【0064】
自家消費モードの出力目標値は定格出力を100[%]とした割合で表される。自家消費モードは、グリッドSから電力系統1への逆潮流を許容しないモードであり、出力目標値X3は、定格出力の0[%]である。ただし、上記したように、自家消費にあたる負荷Lの消費電力PLの出力は許容する。
【0065】
電気事業者から提供される双方向インバータ回路31の出力制限値X2と、自家消費モードの出力目標値X3と、双方向インバータ回路31の定格出力X1の大小関係は、定格出力X1=100[%]として、以下の通りである。
【0066】
X3≦X2≦X1・・・・・・・(2)
X3=0・・・・・・・・・・・(3)
【0067】
図4に示す11時~3時までの時間帯は、出力制限値X2=0であることから、X2=X3である。それ以外の時間帯、出力制限値X2>0であることから、X2>X3である。
【0068】
自家消費モードの出力目標値X3の入力ラインL3にはスイッチSWが設けられている。スイッチSWは、利用者が自家消費モードを選択している時にのみオンし、それ以外はオフする。
【0069】
第1コンパレータ61は、3つの入力値、つまり、定格出力X1[%]、出力制限値X2[%]、自家消費モードの出力目標値X3[%]の大きさを比較し、最も小さい入力値Xを出力する。X3が未入力の場合、定格出力X1と出力制限値X2のうち、小さい入力値Xを出力する。
【0070】
第1コンパレータ61の出力Xは、双方向インバータ回路31の出力目標値であり、第1電力制御部63に対して出力される。
【0071】
第1電力制御部63は双方向インバータ回路31の出力制御用である。第1電力制御部63には、現在の操作量Yと、第1コンパレータ61から出力される出力目標値Xと、双方向インバータ回路31の出力Pinvと、が入力される。第1電力制御部63は、出力目標値Xと出力Pinvの偏差に基づいて、第1操作量Y1を求めて出力する。第1操作量Y1は、偏差を小さくするため、現在の操作量Yに対して更に調整が必要な操作量増減値(ΔY)である。
【0072】
第1操作量Y1は第1コンバータ回路23の出力電圧Vocの調整量である。第1電力制御部63は、第1コンバータ回路23の出力電圧Vocの調整により太陽光発電パネル10の出力を制御することにより、双方向インバータ回路31の出力を、出力目標値Xに制御する。
【0073】
第1操作量Y1は、第1コンパレータ61から出力される出力目標値Xに拘わらず、負荷Lの消費電力PLについては、双方向インバータ回路31の出力で確保することが可能な操作量に決定される。消費電力PLは、上記の(1)式より求めることが出来る。
【0074】
第2電力制御部65は、MPPT用である。MPPT(最大電力追従制御)は、
図3に示すI-V特性La上の動作点Mを最適動作点に追従させる制御である。最適動作点は、太陽光発電パネル10の出力Ppvが最大出力となる動作点であり、例えば「M1」である。
【0075】
第2電力制御部65には、現在の操作量Yと、太陽光発電パネル10の出力Ppvが入力される。第2電力制御部65は、太陽光発電パネル10の出力Ppvに基づいて、I-V特性La上の動作点Mを最適動作点M1に追従させる第2操作量Y2を算出して出力する。第2操作量Y2は、動作点Mを最適動作点M1に追従させるため、現在の操作量Yに対して更に調整が必要な操作量増減値(ΔY)である。
【0076】
MPPTは、第1コンバータ回路23の出力電圧調整により行われるから、第2操作量Y2は、第1操作量Y1と同様に、第1コンバータ回路23の出力電圧Vocの調整量である。
【0077】
第2コンパレータ67は2入力であり、第1電力制御部63により決定される第1操作量Y1と、第2電力制御部65により決定される第2操作量Y2と、が入力される。
【0078】
第2コンパレータ67は2つの入力値、つまり第1操作量Y1と第2操作量Y2の大きさを比較し、小さい方の操作量Yを、第1コンバータ回路23に対して出力する。
【0079】
Y2<Y1の場合、第1コンバータ回路23の出力電圧Vocは、MPPT用の第2操作量Y2により制御されることから、太陽光発電パネル10は、MPPT制御により最大出力を維持する。
【0080】
Y1<Y2の場合、第1コンバータ回路23の出力電圧Vocは、電力制御用の第1操作量Y1により制御されることから、双方向インバータ回路31の出力が出力目標値Xを維持するように調整され、太陽光発電パネル10の出力Ppvは、最大出力に対して余裕があっても、出力を制限された状態になる。
【0081】
報知回路70は、Y1<Y2の場合(第1コンバータ回路23の操作量Yとして第1操作量Y1が選択されている場合)において、双方向インバータ回路31の出力目標値Xが電気事業者から指示される出力制限値X2と一致している場合、報知部95に対して報知指令を出力する回路である。つまり、太陽光発電パネル10の動作点Mを変更すれば、双方向インバータ回路31はもっと高い出力をだせるのに、電気事業者から指示される出力制限値X2に出力目標値Xを制限している場合に、報知指令を出力する回路である。
【0082】
報知回路70は、第1判定部71と、第2判定部73と、AND回路75とを含む。AND回路75は、本発明の「出力部」の一例である。
【0083】
第1判定部71には、第1コンパレータ61から出力される双方向インバータ回路31の出力目標値Xが入力される。第1判定部71は、双方向インバータ回路31の出力目標値Xと、入力ラインL2を通じて第1コンパレータ61に入力される入力値を比較して、出力目標値Xが入力値と一致しているか判定する。入力ラインL2は、電気事業者から提供される出力制限値X2用の入力ラインである。
【0084】
第1判定部71は、第1コンパレータ61から出力される双方向インバータ回路31の出力目標値Xが、入力ラインL2を通じて第1コンパレータ61に入力される入力値「X2」と一致している場合(X=X2の場合)、AND回路75に「1」を出力し、不一致の場合「0」を出力する。
【0085】
第2判定部73には、第2コンパレータ67から出力される操作量Yが入力される。第2判定部73は、第2コンパレータ67から出力される操作量Yと、第1電力制御部63より出力される第1操作量Y1を比較して、操作量Yが第1操作量Y1と一致しているか判定する。
【0086】
第2判定部73は、第2コンパレータ67から出力される操作量Yが第1操作量Y1と一致している場合(Y=Y1の場合)、AND回路75に「1」を出力し、不一致の場合「0」を出力する。
【0087】
AND回路75は、第1判定部71の出力が「1」であり、かつ、第2判定部73の出力も「1」の場合、報知部95に対して報知指令を出力する。
【0088】
第1判定部71の出力が「1」である場合、第1コンパレータ61から出力される出力目標値Xは、電気事業者から提供される出力制限値X2である(X=X2)。
【0089】
第2判定部73の出力が「1」である場合、双方向コンバータ回路31は、第1コンパレータ61の出力目標値Xにより制御される。
【0090】
従って、第1判定部71の出力が「1」であり、かつ第2判定部73の出力も「1」である場合、双方向インバータ回路31の出力目標値Xは電気事業者から提供される出力制限値X2と一致しており、パワーコンディショナ20は、電気事業者の要請による出力制限中であると、判断できる(Y=Y1、X=X2)。
【0091】
例えば、電気事業者から提供される出力制限値X2が定格出力の10[%]である場合、太陽光発電パネル10の動作点Mを変更すれば、もっと高い出力をだせるのに、パワーコンディショナ20の出力目標値Xは、電気事業者の要請による出力制限により、定格出力の10[%]に制限された状態である。
【0092】
双方向インバータ回路31の出力目標値Xが出力制限値X2と一致している場合、つまり、パワーコンディショナ20が電気事業者の要請により出力制限を行っている場合、報知指令を出して報知ランプ等を点灯することで、利用者に「パワーコンディショナ20は出力制限中」であることを知らせることが出来る。
【0093】
自家消費モードは、利用者が自ら選択して、出力を制限するモードであることから、「報知指令を出して報知ランプ等を点灯」する必要はない。
【0094】
しかし、「自家消費モード」と「電気事業者による出力制限」の双方が有効となっている場合において、自家消費モード中の出力目標値X3が、電気事業者から提供される出力制限値X2と一致している場合、第1コンパレータ61から出力される出力目標値Xが、「X2」と「X3」のどちらであるか判断できず、AND回路75が「報知指令」を誤って出力する可能性があった。
【0095】
例えば、電気事業者から要請されている出力制限値X2が、自家消費モードの出力目標値X3と同様に0[%]である場合、X2=X3である。
【0096】
この場合、自家消費モードの選択中、正しくはX=X3と判定するべきところ、第1判定部71にて、X=X2と判断を誤って、第1判定部71の出力が「1」になる可能性がある。その結果、AND回路75が「報知指令」を誤って出力する可能性があった。
【0097】
図7は、制御装置50のうち、太陽光発電パネル10及び双方向インバータ回路31の電力制御に関する制御ブロック51の一例を示している。
【0098】
図7に示す第2制御ブロック51Bは、第1コンパレータ61と、第1電力制御部63と、第2電力制御部65と、第2コンパレータ67と、第1判定部71と、第2判定部73と、AND回路75と、抑制回路80とを含む。
【0099】
第2制御ブロック51Bは、第1制御ブロック51Aに対して、抑制回路80を追加したものであり、それ以外の構成は同じである。
図8は抑制回路80のブロック図である。
【0100】
抑制回路80は、加算器81と、信号発生器83と、連動スイッチSWbと、を含む。加算器81は、第1コンパレータ61の第2入力ラインL2に設けられている。第2入力ラインL2は、出力制限値X2用の入力ラインである。
【0101】
加算器81には、信号発生器83が接続されている。信号発生器83は、所定値Kを出力する。所定値Kは正の定数であり、一例として、1[%]である。
【0102】
連動スイッチSWbは、所定値Kの入力ラインL4に位置しており、第3入力ラインL3のスイッチSWaと連動してオン、オフする連動スイッチである。
【0103】
自家消費モードが選択されてスイッチSWaがオンすると、それと連動してスイッチSWbがオンする。スイッチSWbのオンにより、加算器81は、出力制限値X2に対して信号発生器83の出力する所定値Kを加算した出力制限値X2aを出力する。
【0104】
X2a=X2+K・・・・・・(4)
Kは一例として「1」である。
【0105】
出力制限値X2に対して所定値Kを加算した出力制限値X2aを、第1コンパレータ61に対して入力することで、電気事業者から提供される出力制限値X2が自家消費モードの出力目標値X3と一致していても、自己消費モードの選択中、AND回路75が「報知指令」を誤って出力することを抑制できる。
【0106】
具体的は、自家消費モードの選択中、電気事業者の要請による出力制限値X2は、所定値「1」を加算して、第1コンパレータ61に入力される。
【0107】
従って、
図8に示すように、電気事業者から要請されている出力制限値X2が、出力目標値X3と同様に0[%]である場合、第2入力ラインL2を通じて第1コンパレータ61に入力される出力制限値X2aは「1」である。
【0108】
この場合、第1コンパレータ61への3つの入力は、X1=100、X2a=1、X3=0であり、第1コンパレータ61の出力Xは「0」であることから、X≠X2aとなり、第1判定部71はAND回路75に「0」を出力する。そのため、AND回路75から報知指令が出力されることを抑制することが出来る。
【0109】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0110】
(1)分散型電源は、需要地に隣接して分散配置される小規模な発電設備全般の総称である。分散型電源は、太陽光発電パネル10に限らず、風力発電やバイオマス発電装置などでもよい。分散型電源が交流である場合、整流器を介して、第1コンバータ回路23に接続するとよい。分散型電源は、再生可能エネルギーを利用した電源でもよいし、化石燃料を利用した電源でもよい。
【0111】
(2)実施形態では、マイクログリッドSの一例として、ライン状の電力線(幹線)5を持つグリッドを示したが、サークル状の電力線(幹線)をもつグリッドでもよい。
【0112】
(3)本実施形態では、自家消費モードが選択されている場合、電気事業者から提供される出力制限値X2に対して「1」を加えることで、自家消費モードの選択中に、報知指令が誤って出力されることを抑制した。出力制限値X2に加える数値は、正の数であれば、「1」以外でもよい。電気事業者から提供される出力制限スケジュールとして規定される全対象時間の出力制限値X2について、「1」を加算してもよいし、出力制限値X2が「0」である場合(
図4に示す11時~15時までの時間帯)に限定して、「1」を加算してもよい。
【0113】
(4)本実施形態では、第1制御ブロック51Aを、第1コンパレータ61と、第1電力制御部63と、第2電力制御部65と、第2コンパレータ67と、報知回路70とを含む構成とした。第1制御ブロック51Aは、少なくとも、第1コンパレータ61と、第1電力制御部63と、報知回路70とを含む構成であれば、第2電力制御部65と第2コンパレータ67は無くてもよい。例えば、分散型電源が太陽光電池パネル以外である場合、第2電力制御部65、第2コンパレータ67は無くてもよい。報知回路70は、第1判定部71だけでもよく、X=X2を条件として、報知指令を出力するようにしてもよい。第2制御ブロック51Bについても、同様である。
【0114】
(5)本実施形態では、報知回路70から出力される報知指令に応答してランプを点灯する構成とした。報知指令に応答して、ブザーを鳴らしてもよいし、出力制限中などのメッセージを表示してもよい。報知方法は、どのような方法でもよい。
【0115】
(6)本実施形態では、インバータ回路31を双方向としたが、少なくともDCからACの逆変換が可能であればよい。
【0116】
(7)本実施形態では、自家消費モード中の出力目標値X3を「0」としたが、出力目標値X3は「0」以外でもよい。定格出力X1、出力制限値X2との関係で、(2)式を満たしていればよい。この実施形態では、負荷Lの消費電力PLを出力目標値X3に対して数値の上では含めないようにしたが、含めてもよい。例えば、負荷Lの消費電力PLが定格出力の10%である場合、自己消費モードの出力目標値X3を「0」ではなく、「10%」にしてもよい。負荷Lの消費電力PLを出力目標値X3に対して含める場合、電気事業者から提供される出力制限値X2に対しても消費電力PLを同様に含めるとよい。
【0117】
(8)
図9は、電力制御システム200のブロック図である。電力制御システム200は、パワーコンディショナ210と、制御装置250と、操作部91と、報知部95とを含む。パワーコンディショナ210は、電力変換装置であり、第1電流検出部21と、第1電圧検出部22と、第1コンバータ回路23と、DCリンク部25と、直流電圧検出部27と、双方向インバータ回路31と、第2電流検出部33と、第2電圧検出部35と、リレー37と、を備えている。
【0118】
図9のパワーコンディショナ210は、「制御装置250」、「操作部91」、「報知部95」が別装置である点で、
図1のパワーコンディショナ20と相違する。制御装置250は、ネットワークや通信線を介して、パワーコンディショナ210と接続されており、パワーコンディナ210を遠隔制御する。制御装置250は、制御ブロック51を備える。
【0119】
制御ブロック51は、
図6に示す第1制御ブロック51Aでもよいし、
図7に示す第2制御ブロック51Bでもよい。第2制御ブロック51Bは、第1コンパレータ61、第1電力制御部63、第2電力制御部65、第2コンパレータ67、第1判定部71、第2判定部73、AND回路75に加えて、抑制回路80を備える。抑制回路80を備えることで、自家消費モード中の出力目標値X3が、電気事業者から提供される出力制限値X2と一致している場合、AND回路75が「報知指令」を誤って出力することを抑制出来る。
【0120】
(9)本技術は、マイクログリッド(小規模電力系統)に限らず、電気事業者の運営する電力系統1と連系するグリッド(電力系統)であれば、適用することが出来る。
【符号の説明】
【0121】
1 電力系統
2 系統電源
3 受電点
10 太陽光発電パネル(本発明の「分散型電源」の一例)
20 パワーコンディショナ(本発明の「電力制御装置」の一例)
31 双方向インバータ回路
50 制御装置
51A 第1制御ブロック
51B 第2制御ブロック
61 第1コンパレータ(本発明の「第1選択回路」の一例)
63 第1電力制御部
65 第2電力制御部
67 第2コンパレータ(本発明の「第2選択回路」の一例)
70 報知回路
71 第1判定部
73 第2判定部
75 AND回路(本発明の「出力部」の一例)
S マイクログリッド