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特開2022-133633オーバープリントニス、印刷物、紙基材又はプラスチック基材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133633
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】オーバープリントニス、印刷物、紙基材又はプラスチック基材
(51)【国際特許分類】
   C09D 193/04 20060101AFI20220907BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220907BHJP
【FI】
C09D193/04
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032418
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】山田 智和
(72)【発明者】
【氏名】清野 嘉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅和
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 英樹
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA212
4J038BA231
4J038HA166
4J038HA406
4J038HA436
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038MA09
4J038NA01
4J038NA02
4J038NA12
4J038PA18
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗菌・抗ウイルス効果が大きく、印刷物が経時で黄変しにくいオーバープリントニスを提供する。
【解決手段】ロジン変性フェノール樹脂を含むワニスと、ドライヤーと、ワックスとを含有するオーバープリントニスであって、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物及び無機酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つの無機固体酸を0.5~15質量%含有するオーバープリントニス、これを使用した紙基材又はプラスチック基材。前記無機固体酸は無機リン酸化合物であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン変性フェノール樹脂を含むワニスと、ドライヤーと、ワックスとを含有するオーバープリントニスであって、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物及び無機酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つの無機固体酸を0.5~15質量%含有することを特徴とするオーバープリントニス。
【請求項2】
前記無機固体酸が無機リン酸化合物であり、0.5~15質量%含有する請求項1に記載のオーバープリントニス。
【請求項3】
前記ワニスが、ロジン変性フェノール樹脂及びロジンエステル樹脂を含むワニスであって、ロジン変性フェノール樹脂:ロジンエステル樹脂の質量比率が7:3~3:7である請求項1又は2に記載のオーバープリントニス。
【請求項4】
基材と、前記基材上に配置された請求項1~3のいずれかに記載のオーバープリントニスの印刷塗膜とを有することを特徴とする印刷物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載のオーバープリントニスを紙基材及びフィルムに塗工した紙基材又はプラスチック基材。
【請求項6】
前記紙基材又はプラスチック基材が、印刷インキ層を更に有する請求項5に記載の紙基材又はプラスチック基材。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の紙基材又はプラスチック基材を使用した容器、包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥させてニス皮膜を形成するオーバープリントニスに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷物の光沢向上や印刷物の皮膜保護の目的から、印刷の後にオーバープリントニス(オーバーコートニスともいう。以後OPニスと称する場合がある)が使用されている。具体的には、印刷インキ各色を印刷後に無色透明なOPニスを印刷する。OPニスとしては、有機溶剤を含有し乾燥させてニス皮膜を形成する溶剤型のOPニスが知られている。(例えば特許文献1参照)
【0003】
一方近年、様々な基材表面への機能性付与が求められており、印刷物はもとより、プラスチック材料、成形品、紙基材、フィルム基材、包装材等の表面特性の改良が必要とされている。
特に近年では、光沢向上や皮膜保護といった物理的機能性の他、衛生的機能、例えば抗菌性、抗ウイルス性といった機能も所望され、特に新型インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)、ノロウイルスなど、ウイルス感染対策として抗ウイルス性(ウイルス不活化性)対策は急務となっている。
【0004】
抗ウイルス性能を有するOPニス組成物 としては、例えばOPニスにポリテトラフルオロエチレン粒子と抗菌剤を含有してなることを特徴とするOPニス組成物が知られている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2で使用されているゼオライト系無機抗菌剤は、抗菌効果は大きいが抗ウイルス効果は小さく、印刷物が経時で黄変しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-94443号公報
【特許文献2】特開平11-80643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、抗菌・抗ウイルス効果が大きく、印刷物が経時で黄変しにくいオーバープリントニスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物及び無機酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つの無機固体酸を特定量含有するオーバープリントニスを提供することで課題を解決した。
【0008】
即ち本発明は、ロジン変性フェノール樹脂を含むワニスと、ドライヤーと、ワックスとを含有するオーバープリントニスであって、無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物及び無機酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つの無機固体酸を0.5~15質量%含有するオーバープリントニスを提供する。
【0009】
また本発明は、前記無機固体酸が無機リン酸化合物であり、0.5~15質量%含有するオーバープリントニスを提供する。
【0010】
また本発明は、前記ワニスが、ロジン変性フェノール樹脂及びロジンエステル樹脂を含むワニスであって、ロジン変性フェノール樹脂:ロジンエステル樹脂の質量比率が7:3~3:7である請求項1又は2に記載のオーバープリントニスを提供する。
【0011】
また本発明は、基材と、前記基材上に配置された前記記載のオーバープリントニスの塗膜とを有する印刷物を提供する。
【0012】
また本発明は、前記記載のオーバープリントニスを紙基材及びフィルムに塗工した紙基材又はプラスチック基材を提供する。
【0013】
また本発明は、前記記載の紙基材又はプラスチック基材を使用した容器、包装材を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、抗菌・抗ウイルス効果が大きく、印刷物が経時で黄変しにくいオーバープリントニスを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(オーバープリントニス)
本発明のオーバープリントニスは、後述の無機固体酸を含有する以外は特に限定なく、通常印刷インキ分野で汎用のオーバープリントワニスの組成物であればよい。一般的には、ワニスと、ドライヤー、ワックスを含有し、ワニスとしてはロジン変性フェノール樹脂を含むワニスが使用される。また粘度を調整する目的で、有機溶剤または植物油類を使用する。
【0016】
ロジン変性フェノール樹脂は、例えば、ホルムアルデヒドおよび/またはパラホルムアルデヒドとフェノール類との加熱反応により得られる平均核体数が1.5~3.0のレゾールを、ロジン類と多価アルコールとの反応により得られるロジンエステル樹脂と反応させて得られる樹脂や、あるいは、平均核体数が1.5~3.0のレゾールとロジン類とを反応させた後、多価アルコールでエステル化して得られる樹脂を用いることができる。
【0017】
レゾールの調整に用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、アミルフェノール、p-ターシャリーブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノール、ビスフェノールAなどが挙げられ、中でもp-ターシャリーブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノール等の、パラ位に炭素原子数が4~12の置換基を持つアルキルフェノールを用いることが好ましい。
【0018】
ロジン類としては、従来公知のものを用いることができ特に制限はない。ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、およびこれらのロジン類を蒸留等により精製したものなどが挙げられる。
【0019】
酸変性ロジンを用いる場合、ロジンの変性に用いる化合物としては、二塩基酸またはその無水物を用いることが好ましい。フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられ、中でもフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく用いられる。
【0020】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられ、中でもグリセリン、ペンタエリスリトールが好ましく用いられる。
【0021】
前記ロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量は特に限定はないが、一般的には15,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましい。また、150,000以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0022】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0023】
前記ロジン変性フェノール樹脂は、さらに、軟化点が150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。また、軟化点は200℃以下であることが好ましい。なお、本明細書における軟化点は、JIS K5601-2-2に準拠し環球法により測定したもので、具体的には試料を充填した黄銅製環をグリセリン浴中に水平に保持し、試料の中心に一定重量の鋼球をのせ、一定速度で浴温を上昇させ、試料が次第に軟化し、鋼球が下降し、ついに厚さ25mmの位置の底板に達したときの温度計の示度をもって軟化点とする。
【0024】
前記ロジン変性フェノール樹脂と併用可能な他の樹脂としては、従来公知のものを使用することができ特に制限はない。ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、石油樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、アルキド樹脂、石油樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、石油樹脂変性ロジンエステル、石油樹脂変性アルキド樹脂、アルキド樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、アルキド樹脂変性ロジンエステル、アクリル変性ロジン・フェノール樹脂、アクリル変性ロジンエステル、ウレタン変性ロジン・フェノール樹脂、ウレタン変性ロジンエステル、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ロジン・フェノール樹脂、エポキシ変性ロジンエステル、エポキシ変性アルキド樹脂等が例示される。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ロジン変性フェノール樹脂とロジンエステル樹脂の併用はより効果的に印刷適性を付与することができるため好ましい。ロジン変性フェノール樹脂とロジンエステル樹脂を合わせた樹脂量はオーバープリントニス中に25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上となるよう用いることがより好ましい。
また、ロジン変性フェノール樹脂:ロジンエステル樹脂の質量比率が7:3~3:7である事が好ましく、より好ましくは65:35~35:65の範囲であり、55:45~45:55の範囲であれば更に好ましい。
【0025】
植物油類としては、ヒマシ油、落花生油、オリーブオイルなどの不乾性油、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油などの半乾性油、アマニ油、エノ油、桐油などの乾性油、再生植物油、植物エステル等の植物由来成分などが挙げられる。
【0026】
植物油類として、再生植物油を使用することもできる。再生植物油とは、調理等に使用された油を回収し、再生処理された植物油のことである。再生植物油としては、含水率を0.3質量%以下、ヨウ素価を90以上、酸価を3以下として再生処理した油が好ましく、より好ましくはヨウ素価100以上である。含水率を0.3質量%以下にすることにより水分に含まれる塩分等のインキの乳化挙動に影響を与える不純物を除去することが可能となり、ヨウ素価を90以上として再生することにより、乾燥性、すなわち酸化重合性の良いものとすることが可能となり、さらに酸価が3以下の植物油を選別して再生することにより、インキの過乳化を抑制することが可能となる。回収植物油の再生処理方法としては、濾過、静置による沈殿物の除去、および活性白土等による脱色といった方法が例示される。
【0027】
脂肪酸エステル類としては、例えば、大豆油脂肪酸メチルエステル、大豆油脂肪酸ブチルエステル、大豆油脂肪酸イソブチルエステル、大豆油脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、亜麻仁油脂肪酸ブチルエステル、アマニ油脂肪酸イソブチルエステル、トール油脂肪酸ブチルエステル、トール油脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、トール油脂オクチルエステル、トール油脂肪酸ペンタエリスリトールエステル、パーム油脂肪酸メチルエステル、パーム油脂肪酸ブチルエステル、パーム油脂肪酸イソブチルエステル、パーム油脂肪酸2-エチルヘキシルエステル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマシ油脂肪酸ブチルエステル、ヒマシ油脂肪酸イソブチルエステル、ヒマシ油脂肪酸2-エチルヘキシルエステル等が挙げられる。
【0028】
有機溶剤としては通常石油系溶剤が使用される。石油系溶剤としては、炭素原子数6~20の炭化水素系溶剤が好ましく用いられる。具体的には、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、n-ヘプタン、n-オクタン、トリメチルペンタンなどのパラフィン系溶剤、シクロヘキサン、シクロヘキシルメタン、オクタデシルシクロヘキサン、メチルイソプロピルシクロヘキサンなどのナフテン系溶剤、ENEOS株式会社製の「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」、「AFソルベント6号」、「AFソルベント7号」等が挙げられる。
【0029】
キレート化剤としては、例えば、アルミニウムn-ブトキシド、アルミニウム-iso-ブトキシド、アルミニウム-sec-ブトキシドの誘導体で、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基の各々の基の一つが、エチルアセテート、又は、メチルアセトアセテートで置換された化合物等などが挙げられる。
【0030】
ドライヤーとしては、従来公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛、カルシウム、セリウム、レアアース等の金属と、オクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸、桐油酸、アマニ油酸、大豆油酸、樹脂酸等のカルボン酸との塩、すなわち金属石鹸、あるいは、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛、カルシウム、セリウム、レアアース等の金属とのホウ酸塩等が挙げられる。これらのドライヤーを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ワックスとしてはカルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、シリコーン化合物等の合成ワックス等が挙げられる。これらのワックスを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、これらの複合体を用いることが好ましい。これら複合体を用いることで耐摩擦性を良好なものにすることができる。ワックスは、オーバープリントニス中に1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上となるよう用いることがより好ましい。
【0032】
本発明のオーバープリントワニスはオーバープリントニス中に、艶消し剤を含んでいてもよい。このようなオーバープリントワニス組成物を塗工することにより、印刷物に艶消し効果を付与することができる。艶消し剤としては、塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂等の樹脂粒子等が挙げられ、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂が効果的に艶消し効果を付与することができるため好ましい。艶消し剤は、オーバープリンニス中に15質量%以上であることが好ましく、30質量%以下であることが好ましい。
【0033】
またデンプンも好ましく使用することができる。ワックスに加えてデンプンを併用することで、耐裏移り性を良好なものとすることができる。平均粒子径D50が10μm以上20μm以下のものを用いることが好ましい。オーバープリントニスにおける、平均粒子径D50が2μm以上7μm以下の粒子と平均粒子径D50が10μm以上20μm以下のデンプンの含有量の合計は、1質量%以上であることが好ましく、10質量%以下であることが好ましい。
【0034】
また体質顔料も好ましく使用することができる。例えばろう石クレー等のクレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、シリカ、ベントナイト、酸化チタン等、公知のものを1種類または2種類以上用いることができる。体質顔料を含むことにより、オーバープリントニスのセットを早めることができ、より効果的に裏移りを抑制することができる。一方で、体質顔料を含むことによりオーバープリントニスの光沢は低下する。したがって、オーバープリントニスにより印刷物に付与したい効果(光沢/艶消し)とその程度により体質顔料の含有量を調整すればよい。体質顔料は、印刷物の光沢を低下させる効果があるため、所望される意匠に応じて添加量は適宜調整することが望ましい。
【0035】
塗工中に地汚れが発生するおそれがある場合には、本発明のオーバープリントニスが、リン酸、リン酸のアンモニウム塩、リン酸のアルカリ金属塩、リン酸のアルカリ土類金属二水素塩、クエン酸、クエン酸のアンモニウム塩、クエン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のマグネシウム塩から成る群から選ばれる一つ以上の汚れ防止剤粒子を用いることが好ましい。汚れ防止剤粒子の含有量は、オーバープリントニスの0.01質量%以上0.5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましい。塗工中の湿し水の使用量を抑制でき、セット遅延が防止され、耐裏移り性を良好なものとすることができる。
【0036】
本発明のオーバープリントニスは、その他皮張り防止剤、粘度調整剤、分散剤、上述した以外の汚れ防止剤、乳化調整剤、酸化防止剤等の助剤を含んでいてもよい。これらの助剤としては、従来公知のものを好適に用いることができる。
【0037】
(無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物及び無機酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つの無機固体酸)
本発明で使用する無機リン酸化合物、無機ケイ酸化合物及び無機酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1つの無機固体酸(以後「本発明で使用する無機固体酸」と称する場合がある)は、抗菌抗ウイルス剤として機能する。本発明で使用する無機固体酸は、前記オーバープリントニスに0.5~15質量%含有する。0.5質量%を満たない量では所望する顕著な抗菌・抗ウイルス性は得られず、一方15質量%を超える量では印刷物が黄変し、印刷物の光沢が低下する。また、中でも3~10質量%含有することが好ましい。
【0038】
(無機固体酸)
本発明で使用する無機固体酸は、抗菌性及び抗ウイルス性能を有する無機固体酸であり、無機固体表面に塩基にプロトンを与える性質、又は、塩基から電子対を受け取る性質を示す箇所である酸点を有していることが好ましい。この酸点濃度は、特にウイルスを不活性化する効果(以下、「抗ウイルス効果」という)を好適に発現させるべく、0.005mmol/gを超えるものであることが好ましい。
【0039】
上記無機固体酸は、ウイルスが接触する表面にプロトン供与性あるいはプロトン受容性を有する置換基が配された構造の無機化合物であることが好ましい。上記無機固体酸の具体例としては、リン酸ジルコニウム、リン酸ハフニウム、リン酸チタニウム等のチタン族元素のリン酸化合物、リン酸アルミニウム、ヒドロキシアパタイト(リン酸塩鉱物)等の無機リン酸化合物;ケイ酸マグネシウム、シリカゲル、アルミノケイ酸塩、セピオライト(含水ケイ酸マグネシウム)、モンモリロナイト(ケイ酸塩鉱物)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)等の無機ケイ酸化合物;アルミナ、チタニア、含水酸化チタン等であって、酸点濃度が0.005mmol/g以上の無機酸化物等が挙げられる。これらの中でも、α型又はγ型リン酸ジルコニウム、α型又はγ型リン酸チタニウム、非晶質ケイ酸マグネシウム、活性酸化チタン等は、酸点濃度が0.005mmol/gを超え、本発明の抗ウイルス剤に含まれる無機固体酸として好ましい。中でも無機リン酸化合物が好ましい。無機リン酸化合物は、オーバープリントニスに0.5~15質量%含有することが好ましい。
【0040】
本発明で使用する無機固体酸は、銀又は銅、あるいはそれらの両方を含有することができる。本発明で使用する無機固体酸は、銀イオン(銀原子)又は銅イオン(銅原子)を構造中に有する無機固体酸を含有するものであってもよく、銀又は銅、あるいはそれらの化合物と、銀及び銅を含まない無機固体酸との混合物であってもよい。銀又は銅を含有する抗ウイルス剤は、抗ウイルス効果が優れる。このような抗ウイルス剤中の銀又は銅、あるいはそれらの化合物の含有率は、合計で好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは1質量%以上である。尚、銀イオン(銀原子)又は銅イオン(銅原子)を構造中に有する無機固体酸としては、例えば、銀リン酸ジルコニウム、銅リン酸ジルコニウム等が例示される。
【0041】
本発明で使用する無機固体酸は、様々な材質や形態への加工に適用させるために、粉末状であることが好ましい。粉末状の無機固体酸の平均粒径は、好ましくは0.01~50μmであり、より好ましくは0.1~20μmである。平均粒径が0.01μm以上の粉末は凝集し難いため取り扱い易いという長所がある。
上記平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定器等で測定することができ、体積基準で解析したメジアン径である。
【0042】
本発明で使用する無機固体酸の色調に制限はないが、様々な材質や形態への加工に適用させるために白色又は明度の高い淡色が好ましい。明度は、色彩色差計で測定した際のL値で好ましくは80以上であり、より好ましくは85以上、更に好ましくは95以上である。
【0043】
本発明で使用する無機固体酸は、一定の水分量を持つことで抗ウイルス効果が発現しやすくなる。含水率は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上である。また、吸湿性を有する上記無機固体酸は、他の材料と混合しても、あるいは大気の湿度が変化しても、水分を無機固体酸中に保つことができるから、ウイルスの不活性化に必要な水分を無機固体酸自体が有している点で優れている。
【0044】
このような無機固体酸は市販もされている。例えば、東亞合成株式会社製のノバロンシリーズ等が好ましい無機固体酸として使用できる。
【0045】
(オーバープリントニスの製造方法)
本発明のオーバープリントニスは、上記の原料を用い、従来公知の方法で製造することができる。艶消し効果のあるオーバープリントニスの場合、一例として、前記ロジン変性フェノール樹脂を含む樹脂類、植物油類または脂肪酸エステル類またはそれらの混合物、さらに必要に応じて石油系溶剤、キレート化剤、その他助剤等を加熱溶解させて調整したワニスに、添加剤等を添加し、攪拌機で充分にプレミキシングを行なった後、ショットミル、ロールミル等で練肉を行う。練肉後、ワニス、石油系溶剤、植物油、その他ワックス、酸化防止剤、乳化調整剤等の助剤を添加し、充分に攪拌混合する。前記無機固体酸、ワックスは、プレミキシングの際に添加してもよいし、練肉後に添加してもよい。
【0046】
これらの原料はオーバープリントニスに必要とされる粘度や流動性に合わせて使用量を調整する。また、これらの原料の添加時期は固定されたものではなく、混合状態に基づいて適切に調整される。
【0047】
(印刷物)
本発明の印刷物は、基材上に直接、あるいは酸化重合型のオフセット印刷インキ組成物を用いて平版オフセット印刷機により印刷した印刷物上に、上述したオーバープリントワニス組成物を塗工して得られる。オーバープリントワニス組成物は、印刷物の全面に塗工されていてもよいし、一部のみに塗工されていてもよい。塗工量はオーバープリントワニス組成物を塗工する目的により適宜調整すればよいが、一例として乾燥後のオーバープリントワニス組成物の塗膜の膜厚が0.5μm~1.5μm程度となるよう調整する。
【0048】
塗工方法としては、平版オフセット印刷機にコーティング装置を組み込むなどし、印刷インキ組成物を用いた印刷に引き続いてオーバープリントニスを塗工する、いわゆるインライン方式であってもよいし、平版オフセット印刷機による印刷後に、グラビア方式やフレキソ方式のコーティング装置を備えたコーター機によって塗工する、いわゆるオフライン方式であってもよい。
【0049】
(紙基材)
基材としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、特にコート紙、マットコート紙、上質紙等の紙基材への印刷に適している。また裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
【0050】
(プラスチック基材)
また、プラスチック基材に塗工してもよい。プラスチック基材は、プラスチック材料、成形品、フィルム基材、包装材等の基材に使用される基材であればよい。具体的には例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。また基材フィルムにはコロナ放電処理がされていることが好ましく、アルミ、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。 また基材は、前記紙基材やフィルム基材をドライラミネート法や無溶剤ラミネート法、あるいは押出ラミネート法により積層させた積層構造を有する積層体(積層フィルムと称される場合もある)であっても構わない。
【0051】
前記紙基材又はプラスチック基材は、印刷インキ層を更に有していてもよい。 印刷インキ層に使用される印刷インキには特に限定はなく、オフセット平版インキ、グラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ、インクジェット印刷インキ等の印刷層上に塗工が可能である。特に前述の通り、酸化重合型のオフセット印刷インキ組成物を用いて平版オフセット印刷機により印刷した印刷物上に塗工する方法が、工業的に好ましい。
【0052】
(容器、包装材)
前記単層の紙基材あるいはフィルム基材、積層構造を有する積層体は、業界や使用方法等により、機能性フィルム、軟包装フィルム、シュリンクフィルム、生活用品包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、食品包装用フィルム、カートン、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等様々な表現がなされているが、本発明のオーバープリントニスは特に限定なく使用することができる。また本発明のオーバープリントニスを塗工後のこれら基材は、成形し容器や包装材となるが、この際本発明のオーバープリントニスは、これらを使用した容器や包装材とした際に最表層となる面に塗工されることが好ましい。
【実施例0053】
以下に、本発明の内容及び効果を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0054】
<ロジン変性フェノール樹脂の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、パラターシャルブチルフェノール1000部、92%パラホルムアルデヒド360部、キシレン1000部、50%水酸化ナトリウム10部を仕込み、95℃に昇温、同温度を維持しながら6時間反応させた後、水300部と塩酸13部を混合後加え中和後、さらに水1000部を加え、上澄みを上記と同様の装置に取り出し、120℃に昇温して30分攪拌し、上澄みを取り出して、固形分57%のレゾール型フェノール樹脂を得た。
【0055】
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、酸価165mgKOH/gのガムロジン970部、無水マレイン酸14部を仕込み、180℃に昇温し、ペンタエリスリトール107部、酸化亜鉛2部を加え、250℃に昇温し同温度を維持しながら酸価が20mgKOH/g以下になるまで反応させた。その後180℃に降温し、同温度を維持しながらレゾール型フェノール樹脂を滴下ロートを用いて滴下速度2.5部/分で滴下し、50%トルエン溶液の25℃ガードナー粘度がF~Gになった時点で滴下を停止、30分後樹脂を取り出し、ロジン変性フェノール樹脂を得た。
【0056】
<ロジン変性フェノール樹脂ワニスの製造>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、ロジン変性フェノール樹脂を440部、大豆サラダ油140部を仕込み、180℃で1時間過熱攪拌した。その後AFソルベント6号410部を加え、160℃に降温し、エチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレート10部を加え、同温度を1時間保持しロジン変性フェノール樹脂ワニス(樹脂量44質量%)を得た。
【0057】
<ロジンエステル樹脂の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、ガムロジン(酸価165KOHmg/g)1000部とフマル酸106部 を投入し、窒素気流下で220℃にて1 時間加熱攪拌して酸変性ガムロジンと未反応ガムロジンを含有する酸価242KOHmg/gの反応混合物を得た後、亜麻仁油317部とペンタエリスリトール162部を添加・混合し、更に触媒として酸化マグネシウム1.5部を添加して撹拌・混合したところ、反応容器内の温度は161℃となった。次いで、この反応容器を加熱し、昇温速度30℃/hrで270℃まで昇温しながら反応させた後、さらに270℃で酸価が20KOHmg/g以下になるまで反応させて、変性ロジンエステル樹脂と未反応の亜麻仁油とペンタエリスリトールを含有したロジンエステル樹脂を得た。
【0058】
<ロジンエステル樹脂ワニスの製造>
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入装置の付いた4つ口フラスコに、ロジンエステル樹脂520部と、亜麻仁油170部と、AFソルベント6号300部を投入し、200℃で攪拌しながら30分間保温して粘度を1,000~2,000dPa・sの範囲内に調整した。その後160℃ に冷却し、エチルアセトアセテートアルミニウムジノルマルブチレート10部を添加した後、200℃ に昇温し、60分間保温しロジンエステル樹脂ワニス(樹脂量52質量%)を得た。
【0059】
<ポリエチレンワックスコンパウンド>
ポリエチレンワックス35部と、大豆サラダ油65部を加熱撹拌した後、室温まで冷却
してコンパウンドとしたものを用いた。
【0060】
<オクチル酸マンガン溶液>
オクチル酸マンガン50部を大豆サラダ油50部で溶解した溶液を用いた。
【0061】
<無機固体酸>
無機リン酸化合物である「ノバロンIV1000(東亞合成株式会社製)」を使用した。
【0062】
<有機溶剤>
AF6号ソルベントを使用した。
【0063】
<オーバープリントニスの製造方法>
表1及び表2の組成に従って、実施例1~8及び比較例1~5のオーバープリントニスを攪拌機を用いて混合することによって、各種のオーバープリントニスを得た。なお表中の空欄は未配合である。
【0064】
(評価項目)
(1)テーブル評価
オーバープリントニスを下記条件にて印刷を行い、乾燥後の印刷物を用いて抗菌性、抗ウイルス性、黄変性、光沢、耐摩擦性について評価を行った。
【0065】
<条件>
・印刷機 : RIテスター
・印刷用紙 : OKトップコートプラス
・盛り量 : 0.125cc
【0066】
(抗菌性)
オーバープリントニスの印刷面に菌液を滴下して35℃湿度90%で24時間後の生菌数を測定する。接種菌数に対して1000分の1以下の場合は◎、100分の1以下の場合は〇、それ以外は×とした。菌種は黄色ぶどう球菌と大腸菌の2種類について評価を行った。
【0067】
(抗ウイルス性)
オーバープリントニスの印刷面にウイルス液を滴下して25℃で24時間後のウイルス数を測定する。接種ウイルス数に対して1000分の1以下の場合は◎、100分の1以下の場合は〇、それ以外は×とした。ウイルス種はA型インフルエンザウイルスとネコカリシウイルスの2種類について評価を行った
【0068】
(印刷物の黄変性)
オーバープリントニスの印刷物を紫外線照射装置に通した後、印刷面の黄変性について目視評価を行った。抗菌剤、抗ウイルス剤を添加しないオーバープリントニスに比べて黄変性が同程度の場合は◎、黄変性が僅かに見られる場合は〇、黄変性が見られる場合は×とした。
【0069】
(光沢)
オーバープリントニスの印刷面の光沢について目視評価を行った。抗菌剤、抗ウイルス剤を添加しないオーバープリントニスに比べて光沢が同程度の場合は◎、光沢が僅かに低い場合は〇、光沢が低い場合は×とした。
【0070】
(耐摩擦性試験)
学振形摩擦試験機を用いてオーバープリントニスの印刷物を荷重500gで10回擦り、抗菌剤、抗ウイルス剤を添加しないオーバープリントニスに比べて摩耗が同程度の場合は◎、摩耗が僅かに多い場合は〇、摩耗が多い場合は×とした。
【0071】

(印刷適性試験)
<印刷条件>
・印刷機 :LITHRONE G40((株)小森コーポレーション社製)
・用紙 :OKトップコート+(王子製紙(株)社製)
・湿し水 :Presarto-SD100 2.5%水道水希釈液(DICグラフィックス(株)社製)
・印刷速度:10,000枚/時
・版 :SONORA(コダック合同会社製)
【0072】
上記印刷機においてオーバープリントニスをそれぞれ5,000部印刷して印刷適性を確認した。抗菌剤、抗ウイルス剤を添加しないオーバープリントニスに比べて印刷適性が同程度の場合は◎、印刷適性が僅かに悪い場合は〇、印刷適性が悪い場合は×とした。
【0073】
結果を表1、表2に示す。なお空欄は未配合である。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】