(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133653
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】光学関連部品保護材料
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20220907BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220907BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220907BHJP
G02B 1/16 20150101ALI20220907BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/32 Z
B32B27/18 D
G02B1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032453
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】591200575
【氏名又は名称】四国化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】金山 和史
(72)【発明者】
【氏名】松浦 亮
(72)【発明者】
【氏名】井本 奨太
(72)【発明者】
【氏名】久保 信幸
【テーマコード(参考)】
2K009
4F100
【Fターム(参考)】
2K009BB11
2K009BB12
2K009CC22
2K009EE03
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK06
4F100AK06A
4F100AK06B
4F100AK06C
4F100BA03
4F100BA06
4F100CA01
4F100CA22
4F100CA22A
4F100CA22C
4F100DJ01
4F100DJ01B
4F100EJ02
4F100GB41
4F100JA07A
4F100JA07C
4F100JG04
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】
部品への傷付防止のために緩衝性を有し、しかも、部品に汚れが転写することなく且つクリーンルームに持ち込んだ際にダスト汚染が惹起されず、しかも、帯電防止機能を付与した光学関連部品保護材料を提供する。
【解決手段】
発泡樹脂層(B)及びその両面に積層され且つ以下の一般式で表される重量平均分子量20000~60,000の帯電防止剤を含有するオレフィン系未発泡樹脂層(A)の未延伸積層体から成る光学関連部品保護材料。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂層(B)及びその両面に積層され且つ以下の一般式で表される重量平均分子量20000~60,000の帯電防止剤を含有するオレフィン系未発泡樹脂層(A)の未延伸積層体から成ることを特徴とする光学関連部品保護材料。
【化1】
【請求項2】
積層体の構成樹脂として低密度ポリエチレン樹脂を使用した請求項1に記載の光学関連部品保護材料。
【請求項3】
未発泡樹脂層(A)の厚さが20~200μm発泡樹脂層(B)の厚さが30~300μm、発泡樹脂層(B)の発泡倍率が1.0~3.0である請求項1又は2に記載の光学関連部品保護材料。
【請求項4】
液晶関連分野の光学関連部品に使用される請求項1~3の何れかに記載の光学関連部品保護材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学関連部品保護材料に関するものであり、詳しくは、例えば、液晶関連分野の光学関連部品の製造や搬送の際に好適に使用される保護材料に関する。なお、以下、光学関連部品保護材料を単に保護材料と略記することがある。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばバックライトの部材である導光板はアクリル樹脂のインジェクション成形で製造される。そして、成形された導光板はその場で適当枚数積層されて次工程に搬送される。
【0003】
ところで、上記の積層においては、傷付防止などの観点から、積層される各導光板の間に保護材料が介在させられる。斯かる保護材料としては緩衝性がある材料が好ましい。そこで、従来より、発泡剤によって発泡させ且つ未発泡時の厚さに対する厚さ比率(発泡倍率)が約4~5倍程度の着色剤含有高発泡樹脂シートが使用されている。
【0004】
しかしながら、上記の高発泡樹脂シートから成る従来の保護材料の場合、導光板に保護材料からの汚れが転写する、クリーンルームに持ち込んだ際にダスト汚染が惹起される等の問題がある。
【0005】
本出願人は先に前記の問題を解決した発明として、「発泡樹脂層(B)及びその両面に積層され且つ添加剤を含有しない未発泡樹脂層(A)の未延伸積層体から成ることを特徴とする光学関連部品保護材料」を提供した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の発明を更に改良したものであり、部品への傷付防止のために緩衝性を有し、しかも、部品に汚れが転写することなく且つクリーンルームに持ち込んだ際にダスト汚染が惹起されず、しかも、帯電防止機能を付与した光学関連部品保護材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、発泡樹脂層(B)及びその両面に積層され且つ以下の一般式で表される重量平均分子量20000~60,000の帯電防止剤を含有するオレフィン系未発泡樹脂層(A)の未延伸積層体から成ることを特徴とする光学関連部品保護材料に存する。
【0009】
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学関連部品保護材料であって、部品への傷付防止のために緩衝性を有し、しかも、部品に汚れが転写することなく且つクリーンルームに持ち込んだ際にダスト汚染が惹起されず、しかも、帯電防止機能を有することにより、保護する電子・光学部品との摩擦、剥離帯電による性能低下が生じることがない、光学関連部品保護材料が提供され、本発明の工業的価値は顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の光学関連部品保護材料は、未発泡樹脂層(A)/発泡樹脂層(B)/未発泡樹脂層(A)の3層の樹脂層から構成される未延伸積層体から成る。
【0012】
各層の構成樹脂は、特に制限されないが、剛性が小さく柔軟性であるために部品への傷付防止の観点で有利であるとの理由により、密度の比較的小さい樹脂、具体的には、密度0.910~0.940g/cm3、特には0.920~0.930g/cm3の樹脂が好適に使用される。
【0013】
また、発泡樹脂層(B)の樹脂の種類は、熱可塑性樹脂である限り特に制限されないが、オレフィン系樹脂が汎用されて安価であるために好ましい。その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体などが挙げられる。一方、オレフィン系未発泡樹脂層(A)の樹脂の種類は、上記のオレフィン系樹脂が汎用されて安価であるために好ましい。発泡樹脂層(B)の樹脂およびオレフィン系未発泡樹脂層(A)の樹脂としては、ポリエチレン樹脂、特には低密度ポリエチレン樹脂(0.920~0.930g/cm3)が好適に使用される。
【0014】
未発泡樹脂層(A)は、前記の一般式で表される重量平均分子量20000~60,000の帯電防止剤を含有する。前記の一般式において、「ポリオレフィンセグメント」を構成するポリオレフィンとしては、上記のオレフィン系樹脂が挙げられる。斯かる帯電防止剤としては、三洋化成工業株式会社製の商品「ペレスタット」(ポリオレフィンセグメント:ポリプロピレン)を好適に使用することが出来る。高分子型帯電防止剤の添加量は、通常5~20重量%、好ましくは10~15重量%である。
【0015】
オレフィン系未発泡樹脂層(A)に含有される前記の特定の高分子型帯電防止剤は、ブリードアウトすることがないため、転写による汚れ・汚染が惹起されない。なお、オレフィン系未発泡樹脂層(A)は、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤などを含有していない。これに対し、発泡樹脂層(B)は、各種の添加剤を制限なく含有することが出来、光学関連部品保護材料として従来公知の着色剤含有高発泡樹脂シートと同様に着色剤を含有していてもよい。
【0016】
発泡樹脂層(B)に使用される発泡剤としては、従来公知の有機発泡剤および無機発泡剤を任意に選択して使用することが出来る。特に、発生ガスが二酸化炭素であるために取り扱いが容易である等の理由により無機発泡剤が好適に使用される。特に、分解温度が160~220℃の無機発泡剤が好適に使用される。
【0017】
未発泡樹脂層(A)の厚さは、通常10~200μm、好ましくは20~80μm、発泡樹脂層(B)の厚さは、通常30~300μm、好ましくは50~100μmとされる。発泡樹脂層(B)の発泡倍率は、通常1.0~3.0倍、好ましくは1.4~1.6倍とされる。斯かる厚さ比率および発泡倍率の採用により、発泡樹脂層(B)の凹凸状態が未発泡樹脂層(A)に裏写りして反映される結果、未発泡樹脂層(A)自体も適当な粗面となり、部品に対する過度な密着性が軽減されて作業性が良好となる。
【0018】
未発泡樹脂層(A)/発泡樹脂層(B)/未発泡樹脂層(A)の3層の樹脂層から構成される前記の未延伸積層体は、例えば、共押出環状ダイを使用した上向空冷成形法によって積層円筒体を製造し、その製造過程で端部をスリットしながらダブルフィルム(若しくはシート)又はシングルフィルム(若しくはシート)にして巻き取る。上記の積層体は下向空冷成形法及びTダイ法によって製造してもよい。発泡樹脂層(B)の構成樹脂に配合される発泡剤の割合は通常2~10重量%とされる。共押出温度は発泡剤の分解温度と同程度の温度とされる。
【0019】
上記の共押出成形法は、通常、環状ダイの上方に安定板と巻き取りロールとを順次に配してなる設備を使用し、そして、環状ダイから複数種類の原料樹脂を実質的に延伸が起こらない様に共押出しし、円筒体内に空気を送り込みながら、所定の幅に合わせる様に調節する。その際、下方から空気を当て冷却した後、積層体の円筒体を安定板に通して巻き取り且つロールに供給し折り畳み、その後、スリットしながらダブルフィルム(若しくはシート)又はシングルフィルム(若しくはシート)として巻き取る。円筒体内に空気を送り込む際は、5~0.01μmのフィルターを通した空気で所定の幅に合わせるのが好ましい。
【0020】
上記の様にして得られた未延伸積層体は、所定の長さにカットされ、本発明の光学関連部品保護材料として使用される。
【0021】
本発明の光学関連部品保護材料が好適に使用される部品としては、液晶関連部品である導光板(バックライトの部材)や液晶パネルの他、レンズ、プリズム等の一般の光学部品が挙げられる。これらの光学関連部品は、その製造工程や搬送工程において、本発明の光学関連部品保護材料を介在させて積層され又は本発明の光学関連部品保護材料によって梱包される。
【0022】
そして、本発明の光学関連部品保護材料によれば、発泡樹脂層(B)の存在により緩衝性を備え且つ未延伸積層体であることにより剛性が小さく柔軟性に富み、発泡樹脂層(B)の両面に積層され且つ特定の帯電防止剤以外の添加剤を含有しない未発泡樹脂層(A)の存在により部品に対する汚れの転写が防止されると共にクリーンルームに持ち込んだ際にダスト汚染を惹起することがない。
【0023】
要するに、本発明は、従来の発泡樹脂シート(本発明における発泡樹脂層(B)に相当)の有する欠点、すなわち、発泡剤やその他の添加剤の表面への移行(着色剤のブリード、安定剤や滑剤のブルーム、可塑剤の滲出)及び表面の凹部に入り込んで付着した空気中の塵や微粒子の飛散による環境汚染の問題を解決するため、サンドイッチ構造として両側表面に添加剤を含有しない未発泡樹脂層を積層した発明である。そして、未発泡樹脂層(A)と発泡樹脂層(B)との厚さ比率および発泡樹脂層(B)の発泡倍率を前記の様な適当な範囲とした場合は、前述の通り、未発泡樹脂層(A)自体も適当な粗面となり作業性に優れる。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、高分子型帯電防止剤として、三洋化成工業株式会社製の商品「ペレスタット」を使用し、その添加量は13重量%とした。
【0025】
実施例1:
樹脂として低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)を使用した。そして、3層共押出環状ダイを使用した上向空冷成形法により、商品「ペレスタット」添加未発泡LDPE層(A)(28μm)/発泡LDPE層(B)(64μm)/商品「ペレスタット」添加未発泡LDPE層(A)(28μm)の層構成を有する未延伸積層フィルムの円筒体を得、その端部をスリットし且つ所定の長さにカットし、光学関連部品保護材料とした(厚さ0.12mm)。上記の成形法においては、層(B)の構成LDPEに4重量%の発泡剤(クエン酸ナトリウムと重炭酸ソーダとの混合物)を配合して使用した。発泡LDPE層(B)の発泡倍率は1.5倍であった。
【0026】
比較例1:
実施例1において商品「ペレスタット」の添加を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして光学関連部品保護材料を得た(特開2001-270020号公報の実施例1に記載の光学関連部品保護材料に相当)。
【0027】
実施例1と比較例1の光学関連部品保護材料に対し、表面抵抗値を測定し、その結果を表1に示す。
【0028】
【0029】
なお、念のため、実施例1の光学関連部品保護材料について特開2001-270020号公報の実施例に記載の輸送試験と環境試験を行なったが、斯かる試験の結果は良好であった。