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特開2022-133663プロテオグリカンを含有する経口組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133663
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】プロテオグリカンを含有する経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/39 20060101AFI20220907BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220907BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/737 20060101ALI20220907BHJP
   A61K 31/726 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61K38/39
A61P37/08
A61P27/14
A61P11/02
A61P11/00
A61K31/737
A61K31/726
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032467
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(71)【出願人】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】599142349
【氏名又は名称】株式会社角弘
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(72)【発明者】
【氏名】中根 明夫
(72)【発明者】
【氏名】浅野 クリスナ
(72)【発明者】
【氏名】濱田 朋志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】米塚 正人
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA40
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA331
4C084ZA341
4C084ZA591
4C084ZB131
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA24
4C086EA26
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZB13
(57)【要約】
【課題】ヒト等に用いられるための花粉症及び/又はハウスダウトによる症状の予防及び/又は治療するための経口組成物などを提供する。
【解決手段】プロテオグリカンを含有する、アレルギー症状の予防及び/又は治療するための経口組成物で、当該アレルギー症状が花粉症及び/又はハウスダウトによる症状である、当該組成、である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテオグリカンを含有する、アレルギー症状の予防及び/又は治療するための経口組成物で、当該アレルギー症状が花粉症及び/又はハウスダウトによる症状である、当該組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテオグリカンを含有する、アレルギー症状の予防及び/又は治療するための経口組成物などに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の日本において、アレルギーを原因とする症状に苦しんでいる人は多い。特許文献1には、プロテオグリカンのナトリウム塩などを含有する組成物においてアレルギー抑制効果が確認されたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6661115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ヒト等に用いられるための花粉症及び/又はハウスダウトによる症状の予防及び/又は治療するための経口組成物などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、本発明者は、プロテオグリカンの機能を探索した結果、本発明を発明した。
【0006】
本発明は、以下の実施形態を含む。
(1)プロテオグリカンを含有する、アレルギー症状の予防及び/又は治療するための経口組成物で、当該アレルギー症状が花粉症及び/又はハウスダウトによる症状である、当該組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物は、花粉症及び/又はハウスダウトによる症状を予防及び/又は治療するために用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(プロテオグリカン)
プロテオグリカンはコアタンパク質にコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸等のグリコサミノグリカン(以下GAGと表す。)と呼ばれる糖鎖が共有結合した糖タンパク質である。プロテオグリカンは、細胞外マトリックスの主要構成成分の一つとして皮膚や軟骨など体内に広く分布している。GAG鎖は分岐を持たない長い直鎖構造を持つ。多数の硫酸基とカルボキシル基を持つため負に荷電しており、GAG鎖はその電気的反発力のために延びた形状をとる。また、プロテオグリカンは、糖の持つ水親和性により、多量の水を保持することができる。プロテオグリカンに含まれる多数のGAG鎖群はスポンジのように水を柔軟に保持しながら、弾性や衝撃への耐性といった軟骨特有の機能を担っている。
【0009】
プロテオグリカンのコアタンパク質はマトリックス中の様々な分子と結合する性質をもつ。軟骨プロテオグリカンの場合、N末端側にヒアルロン酸やリンクタンパク質との結合領域を持ち、これらの物質と結合すること、同一分子間で会合することもある。C末端にはレクチン様領域、EGF様領域などを持ち様々な他の分子と結合する。この性質により、プロテオグリカンはそれぞれの組織にあった構造を築く。
プロテオグリカンのうち、コンドロイチン硫酸型プロテオグリカンは、コンドロイチン硫酸がコアタンパク質に共有結合されているプロテオグリカンである。
サケ鼻軟骨由来のプロテオグリカンは、サケの鼻軟骨から抽出して得られたプロテオグリカンである。ここで、サケは、例えばサケ属(Oncorhynchus)に属する魚であるが、好ましくは細胞増殖性(例えば、培養したい細胞をより効率的に培養すること)の観点で学名が「Oncorhynchus keta」のサケが選択される。
本発明に係る経口組成物に含まれるプロテオグリカンは、例えば公報(日本特許第6317053号公報)に記載の方法で作製される。
【0010】
本発明で用いるプロテオグリカンの1日あたりの摂取量(経口組成物での摂取の場合)は、摂取形態、使用目的、年齢、体重などによって適宜調整することができるが、花粉症及び/又はハウスダウトによる症状の予防等の効果が発揮されるために、ヒト成人1日当り、プロテオグリカンを、好ましくは0.01mg/kg/日以上、より好ましくは0.05mg/kg/日以上、更に好ましくは0.10mg/kg/日以上である。
【0011】
(ハウスダスト)
ハウスダストは、ホコリの中でも特に1mm以下の肉眼では見えにくいものである。ハウスダストには、衣類などの繊維クズ、ダニの死がい・フン、ペットの毛、花粉、タバコの煙、カビ、細菌などがある。ハウスダストは空気中に舞い上がりやすく、体内に入るとアレルギー症状やぜんそく等を引き起こす原因になることがある。
【0012】
(花粉症)
花粉症は、植物の花粉が、鼻や目などの粘膜に接触することによって引き起こされ、発作性反復性のくしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの一連の症状が特徴的である症候群である。花粉症は、例えば、スギ花粉症、ヒノキ花粉症、ブタクサ花粉症、イネ花粉症、ケヤキ花粉症、カモガヤ花粉症、シラカバ花粉症、コナラ花粉症、ハンノキ花粉症、マツ属花粉症など、またはこれらが数種合併した花粉症が挙げられる。
【0013】
(経口組成物)
本発明に係る経口組成物は、例えば飲食品(機能性表示食品、特定保健用食品、サプリメントなども含む)、医薬品などである。
【0014】
例えば、当該経口組成物が飲食品の場合、当該飲食品の形態は、サプリメント、パン類、ケーキ類、麺類、菓子類、ゼリー類、冷凍食品、アイスクリーム類、乳製品、飲料などの各種飲食品の他、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、シロップ等)などが挙げられる。種々の形態の食品は、本発明の有効成分を単独で、または他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤等を適宜組み合わせて調製することができる。
【0015】
例えば、当該経口組成物が医薬品の場合は、当該医薬品は一般的に苦痛の程度に従って調整することができる好都合の1日投薬レジメンを組み立てやすいが、当該医薬品の形態は、例えば固体の形態、液体の形態である。当該固体の形態は、例えば、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤、坐剤および分散性顆粒剤などが挙げられる。例えば、粉末剤では、担体は一般に、微粉化した活性成分との混合物である微粉化した固体である。例えば、錠剤では、活性成分は一般に、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状および大きさに成形される。適切な担体は、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、カカオバター等を非限定的に含むこともある。当該医薬品は、所望の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて賦形剤、安定剤、保存剤、結合剤、崩壊剤、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、pH調整剤、防腐剤等の成分を含有することもできる。
【0016】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、本発明の組成物などに含有される成分等の含有量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【実施例0017】
以下、本発明の実施例について、説明する。
【0018】
[実験1:アレルギー評価]
平均年齢 41.7歳(23歳から51歳)、平均BMI値25.29(23~28)の健常日本人女性15名に、プロテオグリカンを10mg(一丸ファルコス株式会社のプロテオグリカンFを基に調製)とデキストリン990mg(松谷化学工業株式会社、マルトデキストリン(パインデックス#2))を含む顆粒を1日1回夕食時に4週間経口摂取、という介入試験を行った。摂取開始(0日)と摂取終了後(当該4週間経過後)に、アレルギー検査(血中IgE濃度)、を行った。
【0019】
当該アレルギー検査を次のように行った。まず、このモニター試験参加者(当該15名)一人ずつに対して、当該摂取開始時に静脈血約3mL及び当該摂取終了後に静脈血約3mLを採取した。当該静脈血を用いて株式会社LSIメディエンスにてアレルギー検査(ImmunoCAP法:スギ花粉特異的IgE、ヒノキ花粉特異的IgE、ヤケヒョウダニ特異的IgE、ハウスダスト特異的IgE、0.70UA/ml以上陽性と判定)を行った。
【0020】
当該検査の結果を表1から表4に示す。表1から表4に示す当該検査(分析)では、アレルギーの軽減効果をより明確に確認するために、摂取開始時のIgEが0.70UA/ml以上の被験者(各アレルギーにて陽性と判定される方)を抽出して分析を行った。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
【表4】
【0025】
表1から表4で示すように、プロテオグリカンの経口摂取により、花粉症の症状などの低減傾向であることが確認された。
【0026】
[実験2:ヒトモニター試験によるアレルギー評価]
ヒトモニター試験(実験)を更に行った。
【0027】
アレルギー症状の自覚がある健常な男女6名(男性3名及び女性3名の合計6名、平均年齢39.33歳、23~59歳)に、プロテオグリカンを10mg(一丸ファルコス株式会社のプロテオグリカンFを基に調製)とデキストリン190mg(松谷化学工業株式会社、マルトデキストリン(パインデックス#1))を含むカプセルを1日1回夕食時、8週間経口摂取という介入試験を行った。摂取前(0日と、摂取4週後、摂取8週後及び当該8週後から摂取せずに4週間後(摂取開始0日から12週間経過のとき、表5と表6では「12週目」と標記)にアンケート調査((旧版)鼻アレルギー診療ガイドライン(通年性鼻炎と花粉症)、鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会(2005年刊改訂第5版、第4章検査・診断法のアレルギー性鼻炎の分類の5.QOLによる評価))を行った。結果を以下表5と表6に示す。
【0028】
表5では、当該6名に対して「最近1~2週間でもっともひどかった鼻・眼の症状の程度について」をアンケートした結果を示す。「0:症状なし、1:軽い、2;やや重い、3:重い、4:非常に重い」としてスコア化し、各群において(摂取前、摂取4週後、摂取8週後、当該8週間目から摂取せずに4週間後(12週目))、当該6名のスコア値の平均値を算出した。当該平均値を表5に示す。
【0029】
【表5】
【0030】
表6では、当該6名に対して「表5で示す症状で、最近1~2週間でもっともひどかった生活で苦労した項目の程度」をアンケートした結果を示す。「0:症状なし、1:軽い、2;やや重い、3:重い、4:非常に重い」としてスコア化し、各群において(摂取前、摂取4週後、摂取8週後、当該8週間目から摂取せずに4週間後(12週目))、当該6名のスコア値の平均値を算出した。当該平均値を表6に示す。
【0031】
【表6】
【0032】
表5及び表6で示すように、プロテオグリカンの経口摂取により少なくとも当該摂取しているとき(0日から8週間後)は経時的に症状の低減傾向であることが確認された。
【0033】
以上、本発明の実施の形態(実施例も含め)について、図面を参照して説明してきたが、本発明の具体的構成は、これに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、設計変更等があっても、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明により、花粉症及び/又はハウスダウトによる症状を予防及び/又は治療するための組成物などを提供できる。