(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133669
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】接触履歴取得システム、携帯端末プログラム及びサーバプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20220907BHJP
G16Y 20/10 20200101ALI20220907BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20220907BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20220907BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20220907BHJP
【FI】
G06Q50/10
G16Y20/10
G16Y20/40
G16Y40/10
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032476
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】517176098
【氏名又は名称】株式会社MYCITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 遼
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC11
(57)【要約】
【課題】人と人とが接触した日時と場所とを把握することができる、接触履歴取得システムを提供することである。
【解決手段】複数の場所に設置されたビーコン発信装置200と、ビーコン発信装置のビーコンを受信可能な携帯端末400と、携帯端末からビーコンの受信情報を取得するサーバ500と、を含み、サーバ500は、受信情報から携帯端末の所有者の接触履歴を算出する接触履歴算出部510を有し、接触履歴は、所有者が他の所有者と接触した日時および場所を含むものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の場所に設置されたビーコン発信装置と、
前記ビーコン発信装置のビーコンと通信可能な携帯端末と、
前記携帯端末から前記ビーコンの受信情報を取得するサーバと、を含み、
前記サーバは、前記受信情報から前記携帯端末の所有者の接触履歴を算出する接触履歴算出部を有し、
前記接触履歴は、前記所有者が他の所有者と接触した日時および場所を含む、接触履歴取得システム。
【請求項2】
前記接触履歴は、指定期間における前記所有者と前記他の所有者とが接触した接触時間および接触回数をさらに含む、請求項1に記載の接触履歴取得システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記場所の混雑状況を記録する混雑場所算出部を有し、
前記混雑場所算出部は、前記場所の混雑状況の時間推移を算出する、請求項1または2に記載の接触履歴取得システム。
【請求項4】
前記接触履歴算出部は、前記受信情報から前記所有者の移動経路を算出し、前記所有者と前記他の所有者の移動経路および移動時間が同じ場合に、前記所有者と前記他の所有者とが前記移動の間に接触したとする、請求項1から3のいずれか1項に記載の接触履歴取得システム。
【請求項5】
前記携帯端末は、前記所有者が前記他の所有者と接触した時間が所定の閾値を超えた場合に、前記所有者に通知を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の接触履歴取得システム。
【請求項6】
前記ビーコン発信装置は、オフィスの天井、壁面、机上または床に設置された、請求項1から5のいずれか1項に記載の接触履歴取得システム。
【請求項7】
前記ビーコン発信装置は、温度計、湿度計および/または二酸化炭素濃度計をさらに備え、前記場所の温度、湿度および/または二酸化炭素濃度を前記サーバに通知する、請求項1から6のいずれか1項に記載の接触履歴取得システム。
【請求項8】
前記指定期間は、前記所有者が伝染性の病気を発症した日の2日前から発症日後14日までである、請求項3に記載の接触履歴取得システム。
【請求項9】
前記サーバは、前記場所の混雑状況を記録する混雑場所算出部を有し、
前記サーバの表示部または前記携帯端末の表示部に混雑場所を表示する、請求項1または2に記載の接触履歴取得システム。
【請求項10】
請求項1に記載の接触履歴取得システムにおいて、
前記ビーコン発信装置から前記ビーコンを受信するビーコン受信処理と、
前記サーバに前記受信情報を送信する受信情報送信処理と、を含む、携帯端末プログラム。
【請求項11】
請求項1に記載の接触履歴取得システムにおいて、
前記携帯端末から前記ビーコンの受信情報を取得する受信情報取得処理と、
前記受信情報から前記携帯端末の所有者の接触履歴を算出する接触履歴算出処理と、を含む、サーバプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触履歴取得システム並びにその携帯端末プログラム及びサーバプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS等を用いて人材の移動をチェックすることについて種々研究開発が行われている。例えば、特許文献1(特開2015-61082号公報)には、施設内の立体的な位置およびその位置に応じたフロアマップを携帯端末に表示させる地図情報提供システムについて開示されている。
【0003】
また、特許文献2(特開2020-076596号公報)には、円滑に表示を行うことができる従業員位置移動表示システムが開示されている。特許文献2の従業員位置移動表示システムは、従業員の携帯端末と、携帯端末と通信可能で、かつ複数設けられたUSBビーコン通信部と、複数のUSBビーコン通信部および携帯端末との関係を判定する制御部と、従業員の現在位置を表示させる表示部と、を含み、制御部は、携帯端末の移動を表示部に表示する場合、移動の表示を円滑に処理する処理部を含むものであることが、開示されている。
【0004】
また、特許文献3(特開2015-184248号公報)には、低設置コストで、広範囲をカバーし、効率的に利用者の屋内での位置を測位可能な屋内測位装置が開示されている。特許文献3の屋内測位装置は、可動式カメラが回転及びズーム可能であり、PDR機能付き携帯端末を携行する移動体(歩行者)が可動式カメラの近辺に近付くと、サーバはネットワークを介して可動式カメラを移動体の方向に向くよう制御信号を送信し、撮影させ、撮影画像を受信する。PDR機能付き携帯端末は、搭載されているPDR用センサの測定データを、ネットワークを介してサーバに送る。サーバは、撮影画像に含まれる移動体の移動ベクトルとセンサの測定データから求めた移動ベクトルを照合し、近似している場合には、当該歩行者であるとして、撮影画像から求められる位置情報をPDR機能付き携帯端末に送り、携帯端末の位置情報を正確に更新する。そして、ビーコンにより可動式カメラへの歩行者の接近を検知してもよいことが、開示されている。
【0005】
また、特許文献4(特開2016-217931号公報)には、ビーコン信号を発信する装置と受信する装置とを用いて移動体の位置を効率的・効果的に探索する移動体探索サーバが開示されている。特許文献4の移動体探索サーバは、一定の範囲に所在するユーザ、および移動体の探索者がそれぞれ保持する、ビーコン信号の受信機である携帯端末と無線ネットワークを介して通信可能であり、携帯端末から、位置情報と、ビーコン装置を特定する情報および電波強度に係る情報を受信して記録するユーザ位置登録部と、探索者が保持する携帯端末から探索対象のビーコン装置の探索の指示を受け付けて、各携帯端末の位置情報とビーコン装置との間の距離に基づいて探索対象のビーコン装置の位置情報を算出するビーコン位置算出部とを有することが開示されている。
【0006】
また、非特許文献1(新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA))には、「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」の説明が記載されており、スマートフォンの近接通信機能(ブルートゥース(登録商標))を利用して、互いに分からないようプライバシーを確保して、新型コロナウイルス感染症の陽性者と接触した可能性について通知を受けることができるソフトウェアが開示されている。非特許文献1は、利用者は、陽性者と接触した可能性が分かることで、検査の受診など保健所のサポートを早く受けることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-61082号公報
【特許文献2】特開2020-076596号公報
【特許文献3】特開2015-184248号公報
【特許文献4】特開2016-217931号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】“新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)”、インターネット<URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/cocoa_00138.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術を用いることで、従業員の移動をみることができる。しかしながら、建物内において人と人とがどの程度接触していたかという情報を得ることはできないという問題点があった。
また、特許文献2の技術を用いることで、建物内における従業員の移動情報を得ることはできる。しかしながら、人と人とがどの程度接触していたかという情報を得ることはできないという問題点があった。
また、特許文献3の技術を用いることで、建物内における人の位置情報を得ることはできる。しかしながら、人と人とがどの程度接触していたかという情報を得ることはできないという問題点があった。また、各場所にカメラを設置するコストの問題および死角が発生するという問題もあった。
また、特許文献の技術を用いることで、移動体(人)の居場所を探索することはできる。しかしながら、感染症対策の観点で人と人とがどの程度接触していたかという情報を得ることはできないという問題点があった。
【0010】
また、非特許文献1の技術を用いることで、感染者との接触を事後的に知ることができる。しかしながら、感染者と接触した場所を知ることができず、また、どういった場所に感染リスクがあるのかを分析することができないという問題があった。
【0011】
本発明の主な目的は、人と人とが接触した日時と場所とを把握することができる、接触履歴取得システムを提供することである。
本発明の他の目的は、感染症対策における濃厚接触者の追跡を行うことができる、接触履歴取得システムを提供することである。
本発明の他の目的は、感染症対策における感染リスクの高い場所および時間を特定することができる、接触履歴取得システムを提供することである。
本発明の他の目的は、濃厚接触になることを事前に防止することができる、接触履歴取得システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)
一局面に従う接触履歴取得システムは、複数の場所に設置されたビーコン発信装置と、ビーコン発信装置のビーコンと通信可能な携帯端末と、携帯端末からビーコンの受信情報を取得するサーバと、を含み、サーバは、受信情報から携帯端末の第1の所有者と携帯端末の第2の所有者との接触履歴を算出する接触履歴算出部を有し、接触履歴は、所有者が他の所有者と接触した日時および場所を含むものである。
【0013】
これにより、サーバは、どの携帯端末がどの場所のビーコンをいつ受信したかを記録することができる。このようにして、各携帯端末の所有者がいつどこで誰と同じ場所にいたかを特定することができる。そして、例えば、2以上の人が3メートル以内の距離に15分以上一緒にいた場合に接触があったと定義することにより、人と人とが接触した日時と場所を正確に把握することができる。
また、接触場所が特定できることにより、濃厚接触者の追跡においては、食堂、更衣室や喫煙所など感染リスクが高い場所で接触したのか、換気の良い環境で接触したのかなどを調べることができる。
【0014】
(2)
第2の発明にかかる接触履歴取得システムは、一局面に従う接触履歴取得システムであって、接触履歴は、第1の所有者が第2の所有者と接触した接触時間および接触回数をさらに含むものであってよい。
【0015】
これにより、感染リスクが高い長時間の接触および頻度の高い接触を抽出することができるため、濃厚接触者を正確に調べることができる。また、感染リスクの高い場所に特定時間以上いた人を抽出することができる。
また、感染症は、ウイルス等に暴露してから感染し潜伏期間を経て発症するものであるため、接触時から相当時間が経過した後に感染が判明する場合がある。特定の期間における接触の履歴を確認できるので、事後的に感染している者が判明した場合も、感染者が感染後に接触した濃厚接触者を追跡することができる。
【0016】
(3)
第3の発明にかかる接触履歴取得システムは、一局面または第2の発明にかかる接触履歴取得システムであって、サーバは、場所の混雑状況を記録する混雑場所算出部を有し、混雑場所算出部は、場所の混雑状況の時間推移を記録してもよい。
【0017】
これにより、感染リスクの高い場所および時間を特定することができる。また、どういった場所がどの時間に人が密集しやすいかを確認することができるため、感染リスクが高まる三密(密接・密集・密閉)回避の対策に活用することができる。
また、各場所の混雑状況をリアルタイムで把握することができるため、混雑状況をスマートフォンの画面(アプリ)、各場所の出入り口付近にディスプレイ等で表示することによって、混雑を回避する行動を促すことができる。
【0018】
(4)
第4の発明にかかる接触履歴取得システムは、一局面から第3の発明にかかる接触履歴取得システムであって、接触履歴算出部は、受信情報から所有者の移動経路を算出し、第1の所有者の移動経路と第2の所有者の移動経路および移動時間が同じ場合に、第1の所有者と第2の所有者とが接触したとしてもよい。
【0019】
これにより、移動を伴っている場合に一時的にビーコンの電波を受信できない状況があったとしても、人と人との接触を正確に算出することができる。例えば、フロアの移動中にエレベータに乗るなどした場合であっても、人と人との接触を正確に算出することができる。
【0020】
(5)
第5の発明にかかる接触履歴取得システムは、一局面から第4の発明にかかる接触履歴取得システムであって、携帯端末は、第1の所有者が第2の所有者と接触した時間が所定の閾値を超えた場合に、第1の所有者および第2の所有者に通知を行うものであってよい。
【0021】
複数の人が特定の距離以内に特定の時間以上一緒にいた場合に携帯端末から警告音が鳴る。これにより、他の人と濃厚接触になることを事前に防止することができる。
この場合、閾値は、接触の定義の値と同じ値としてもよいし、例えば4メートル以内に14分以上など、接触の定義の値よりも広い距離および/または短い時間に設定してもよい。
【0022】
(6)
第6の発明にかかる接触履歴取得システムは、一局面から第5の発明にかかる接触履歴取得システムであって、ビーコン発信装置は、オフィスの天井、壁面、机上または床に設置されてもよい。
【0023】
これにより、オフィスに勤務する従業員の動きおよび接触情報、さらにオフィスの各部屋の混雑の状況を把握することができる。また、ビーコン発信装置が天井または床に埋め込むように設置されるため、デザイン性に優れ、また従業員はビーコンの存在を意識することなく勤務することができる。
【0024】
(7)
第7の発明にかかる接触履歴取得システムは、一局面から第6の発明にかかる接触履歴取得システムであって、ビーコン発信装置は、温度計、湿度計および/または二酸化炭素濃度計をさらに備え、場所の温度、湿度および/または二酸化炭素濃度をサーバに通知してもよい。
【0025】
これにより、同じ場所であっても、温度が低い、湿度計が低いおよび/または二酸化炭素濃度が高いなどの環境の情報を得ることができる。したがって、感染症リスクの高い場所をリアルタイムで通知することにより感染を回避することができる。また、クラスタ(感染者集団)が発生したときに、その場の環境を分析することができる。
温度計、湿度計、二酸化炭素濃度計などの環境測定機は、ビーコン発信装置にオプションとして追加することができる。環境測定のデータは、ビーコン発信装置からサーバに直接通知してもよいし、携帯端末との通信を介してサーバに通知してもよい。
【0026】
(8)
第8の発明にかかる接触履歴取得システムは、第3の発明にかかる接触履歴取得システムであって、指定期間は、第1の所有者が伝染性の病気を発症した日の2日前から発症日後14日までであってもよい。
【0027】
新型コロナウイルス感染症(CVID-19)は、発症日の2日前から発症日後14日までウイルスの排出量が高いと言われる。したがって、ウイルスの排出量が高い期間の接触者を抽出することにより、濃厚接触者を的確に追跡することができる。
また、この指定期間は、ウイルス活性が極めて弱まるとされる、発症日後6日まで、または発症日後10日までとしてもよい。
【0028】
(9)
他の局面に従う携帯端末プログラムは、一局面または第2の発明にかかる接触履歴取得システムであって、サーバは、場所の混雑状況を記録する混雑場所算出部を有し、サーバの表示部または携帯端末の表示部に混雑場所を表示してもよい。
【0029】
これにより、サーバの管理者または携帯端末の所有者は、どの場所が混雑しているかを他の場所に居ながら知ることができる。各場所の混雑状況をリアルタイムで把握することができるため、混雑を回避する行動を促すことができる。
【0030】
(10)
他の局面に従う携帯端末プログラムは、一局面に従う接触履歴取得システムであって、ビーコン発信装置からビーコンを受信するビーコン受信処理と、サーバに受信情報を送信する受信情報送信処理と、を含んでもよい。
【0031】
これにより、人と人とが接触した日時と場所とを把握することができる。また、感染症対策における濃厚接触者の追跡を行うことができる。
【0032】
(11)
さらに他の局面に従うサーバプログラムは、一局面に従う接触履歴取得システムであって、携帯端末からビーコンの受信情報を取得する受信情報取得処理と、受信情報から携帯端末の所有者の接触履歴を算出する接触履歴算出処理と、を含んでもよい。
【0033】
これにより、人と人とが接触した日時と場所とを把握することができる。また、感染症対策における濃厚接触者の追跡を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本実施の形態にかかる接触履歴取得システムの一例を示す模式図である。
【
図2】ビーコン発信装置と携帯端末との通信を説明するための模式図である。
【
図3】
図1の接触履歴取得システムの表示の一例を説明するための模式図である。
【
図4】
図1の接触履歴取得システムの表示の一例を説明するための模式図である。
【
図5】携帯端末の表示の一例を説明するための模式図である。
【
図6】接触履歴取得システムの一例を示す模式図である。
【
図7】接触履歴取得システムの他の例を示すフローチャートである。
【
図8】移動する複数の携帯端末の通信を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0036】
<実施の形態>
図1は、本実施の形態にかかる接触履歴取得システム100の一例を示す模式図であり、
図2は
図1の接触履歴取得システム100の表示部600の一例を説明するための模式図である。
【0037】
図1に示すように、接触履歴取得システム100は、複数の場所に設置されたビーコン発信装置200、オフィス等での従業員が所有する携帯端末400、携帯端末400からビーコンの受信情報を受け取るサーバ500を含む。サーバ500には、サーバ500の出力を表示する表示部550が設けられていてもよく、また、管理者端末300と接続されてサーバ500の出力が表示されてもよい。
サーバ500は、ビーコンの受信情報から従業員の接触履歴等を演算する接触履歴算出部510、および、従業員の接触履歴の情報から各場所の混雑状況を算出する混雑場所算出部520を含む。接触履歴算出部510は、従業員の接触履歴の情報から従業員同士の累積接触時間等を算出してもよい。
【0038】
ここで、本実施の形態においては、オフィスにおける従業員の接触情報を取得する場合について説明を行うが、本発明は、オフィスまたは建物内での使用に限定されず、遊園地などの屋外施設、またはより広域な市町村単位など屋外においても適用することができる。例えば遊園地の場合では、従業員のかわりに利用客とし、会議室のかわりに遊具などとすることで、利用者同士の接触情報および遊具の混雑状況などを把握することができる。
【0039】
図1に示すように、本実施の形態においては、サーバ500は、インターネット等を介して携帯端末400と通信可能である。携帯端末400には、特定のアプリケーションがインストールされていてもよく、これによりサーバ500との通信を円滑にしてサーバ500からの情報を表示させることができる。
携帯端末400は、複数のビーコン発信装置200と通信可能である。携帯端末400は、様々な場所に設置されたビーコン発信装置200からのビーコン信号を受信して、携帯端末400の位置情報を取得することができる。携帯端末400の位置情報の取得にあたっては、ビーコン発信装置200からのビーコン信号のほかに無線LAN(Wi-Fi)の信号および/またはGPS(Global Positioning System)の信号を受信して位置情報を取得し、または高精度化してもよい。
また、サーバ500が複数のビーコン発信装置200と通信可能であってもよい。この場合、携帯端末400の固有情報を複数のビーコン発信装置200が読み取り、ビーコン発信装置200がサーバ500に固有情報を伝えることで、サーバ500は携帯端末400の位置を認識する。
【0040】
(位置情報の取得)
図2は、ビーコン発信装置200と携帯端末400との通信の一例を説明するための模式図である。
図2に示すように、複数のビーコン発信装置200は、天井裏、壁面、机上または床下に配設することができる。
設置されたビーコン発信装置200には固有ID(番号等)が振られており、ビーコン発信装置200から送信されるビーコンには固有IDの情報が含まれる。したがって、ビーコンを受信した携帯端末400は、どのビーコン発信装置200のビーコンを受信したか、およびそのビーコンの電波強度がわかる。そして、サーバ500には各場所に設置されたビーコン発信装置200の固有IDが記録されているため、それぞれの携帯端末400が、いずれのビーコン発信装置200と通信を行っているかを認識することができる。
サーバ500と携帯端末400との通信は、リアルタイムに行うことが好ましいが、ビーコンの受信情報を携帯端末400内に蓄積することで、一定時間の間隔を設けて送受信するようにしてもよい。これにより携帯端末400の消費電力を減らすことができる。
【0041】
ビーコン発信装置200は、具体的には、BLEビーコンなどを使用することができ、DC電源またはUSBバス電源などにより給電されており、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth(登録商標))のビーコン信号を発信する。BLEビーコンを用いることによって、低消費電力で発信できるとともに、設置場所に応じて電波強度および発信間隔を適宜調整可能となる。
携帯端末400は、サーバ500へ、ビーコン信号の受信情報(固有IDおよび電波強度情報)を送信する。その結果、複数のビーコン発信装置200のうち、いずれのビーコン発信装置200の近くに携帯端末400が存在するかを認識することができる。
【0042】
図2に示す例では、ビーコン発信装置200として、ビーコン発信装置200a、ビーコン発信装置200b、ビーコン発信装置200cが配置されている。
この場合、携帯端末400は、ビーコン発信装置200aおよび200bのビーコン信号を受信している。したがって、ビーコン発信装置200aの電波強度Iaとビーコン発信装置200bの電波強度Ibとを比較することによって、ビーコン発信装置200aおよび200bに対する携帯端末400の位置を把握することができる。
【0043】
従業員の位置情報は、携帯端末400が受信するビーコン信号が一つの場合は、当該ビーコン発信装置200のビーコンの範囲程度となる。一方で、携帯端末400が受信するビーコン信号が二つの以上の場合は、上述の仕組みによって従業員の位置情報をより詳細に取得することができる。
なお、ビーコン信号の強度は障害物等の影響も受けるため、ビーコン発信装置200は多く設置した方がより詳細な位置情報を取得することができる。
【0044】
なお、隣の会議室のビーコン信号を受信したくないなどの場合は、会議室内に設置されたビーコン発信装置200の電波強度を弱く設定することも可能である。この場合は、各ビーコン発信装置200の電波強度を補正したうえで携帯端末400の位置情報を算出するとよい。
【0045】
(位置情報の平準化処理)
図6に示すように、現実的にビーコン発信装置200により検出される携帯端末400sは、常に位置情報が安定して得られるとは限らない。特に
図6に示すように、同じ携帯端末400sであるのに、通信環境、障害物または他の従業員が電波を遮るなど様々な影響を受けて、位置情報にばらつきが生じる場合がある。例えば、多数の従業員が近接している場合、机やパソコンなどを挟んで近接している場合などに、位置情報にばらつきが生じることがある。
したがってサーバ500は、ビーコン発信装置200と携帯端末400との関係により検出された位置情報については、複数回を平準化させることが好ましい。
【0046】
平準化処理を行う場合、
図7に示すように、サーバ500は、ビーコン発信装置200と携帯端末400との関係から位置を検知する(ステップS1)。
次に、サーバ500は、ビーコン発信装置200と携帯端末400との関係から次の位置を検知する(ステップS2)。ここでいう次の位置とは、所定時間後において携帯端末400が移動していない場合も含む。
【0047】
次いで、サーバ500は、携帯端末400の位置情報の取得が所定回数(例えば5回)を超えたか否かを判定する(ステップS3)。所定回数を超えた場合、サーバ500は、携帯端末400の位置の平均をとって平準化する(ステップS4)。なお、本実施の形態においては、所定回数の平均の位置をとって平準化したが、これに限定されず、リゾルバ処理で平滑化してもよい。
【0048】
(接触履歴の算出)
上述のようにして、サーバ500は各従業員の位置情報を取得することができる。そして、サーバ500は、2以上の従業員が同じ時間に同じ場所にいた場合、それぞれの従業員が接触したと判定する。この場合、本システムの管理者は、接触と判定する時間および距離をサーバ500にあらかじめ設定することができる。
例えば、2以上の従業員が3メートル以内に15分以上一緒にいた場合に、接触したと判定することができる。これにより、後日、ある従業員が感染症に感染していることが判明した場合に、当該従業員の濃厚接触者(3メートル以内に15分以上一緒にいた者)を特定することができる。
【0049】
なお、接触の定義は、事後的に変更可能となるようにしてもよい。すなわち、各従業員の位置情報を一定期間記録しておき、1メートル以内に5分以上一緒にいた者など、条件の異なる接触者情報を事後的に抽出できるようにしてもよい。これにより、より詳細な濃厚接触者の追跡が可能になる。
このようにして、サーバ500は、各従業員が、いつ、どこで、だれと、どの程度接触したかを算出することができる。
また、接触者情報をもとに、例えば会議をオフラインにするなどの、接触を減らす対策をすることもできる。
【0050】
(混雑状況の算出)
サーバ500は、各従業員の位置情報を取得することにより、オフィス内の人口密度をリアルタイムで把握することができる。これにより、オフィス内の各場所において、時間別の混雑状況を算出する。
さらに、サーバ500は、各場所において接触がどの程度の頻度で発生しているかを算出することができる。したがって、濃厚接触が発生しやすい場所および時間帯を特定することができる。これにより、集団感染(クラスタ)が発生するリスクの高い場所および時間帯を把握することができるため、事前に対策をとり感染拡大を未然に防止することができる。
また、例えば、食堂が混雑する時間帯に大人数で昼食をとる従業員の集団を抽出するといったことが可能になる。すなわち、これにより集団感染が発生しやすい場にいる従業員を把握することができるため、従業員のどういった行動がクラスタ形成に影響するのかを分析したり、リスクの高い従業員の行動に対して具体的な予防措置をとることができる。
あるいは、混雑する場所を検知して、配置を変更する、または、間にパーティションを置くなどの対策をすることもできる。
【0051】
(接触履歴取得システム100の出力)
接触履歴取得システム100の算出結果は、表示部550および/または管理者端末300の画面に表示する。
また、接触履歴取得システム100の管理者の設定によって、算出結果の一部または全てを従業員の携帯端末400に表示できるようにしてもよい。
【0052】
図3(a)および(b)は、本実施形態の接触履歴取得システム100が出力した管理者向けの表示画面の一例を説明するための模式図である。本実施の形態では、
図3(a)および(b)は、表示部550および管理者端末300に表示される。
図3(a)は、ビルの各階における混雑状況を曜日別に表示し、
図3(b)は、オフィスフロアにおける混雑状況を表示している。これにより、例えば、休憩室が混雑する曜日および時間帯を把握することで、混雑を回避し濃厚接触の頻度を下げることができる。
また、
図3(b)により、フロア内の混雑場所の時間推移および各従業員の行動履歴をみることができるため、特定の場所にどういった部署の従業員が集まりやすいかを分析することができる。これにより、例えば更衣室の混雑の原因となっている部署は出勤時間をずらすなど、オフィス内の混雑の対策をとることができる。また、企業の部署ごとに混雑の程度または時間帯等が異なる場合に、混雑状況を回避するようにオフィスのレイアウトを変更してもよい。
【0053】
図4は、本実施形態の接触履歴取得システム100が出力した管理者向けの表示画面の一例を説明するための模式図であり、従業員ごとの接触者を出力したものである。本実施の形態では、
図4は、表示部550および管理者端末300に表示される。
図4の画面において、管理者が、抽出したい期間と、対象の従業員の氏名とを選択すると、対象の従業員と接触した日数と各接触日と累計接触時間とが一覧で表示される。
各従業員との累計の接触時間が表示されるため、短時間であっても頻回接触しているケースを見逃すことがない。そして、接触頻度または接触時間の多い従業員同士は、テレワーク等を活用したり座席位置を変更するなどの接触対策をすることができる。また、
図4において接触者一覧の行数が多い従業員、すなわち短期間のうちに多数の者と接触する従業員については、将来クラスタを形成する可能性があることから、リスクの高い従業員から重点的に接触対策を行うことができる。
また、感染者が判明した場合に、濃厚接触者の追跡を行うことができる。
【0054】
図5は、従業員の携帯端末400の表示の一例を説明するための模式図である。これにより、従業員はフロア別の混雑状況またはエリア別の混雑状況をリアルタイムで把握することができる。したがって、従業員が混雑を回避する行動をあらかじめとることによって、自らの感染リスクを低減することができる。
【0055】
携帯端末400は、従業員がいる場所の混雑状況が閾値を超えた場合に、警告音を鳴らしてまたはバイブレーションによって、従業員に混雑していることを通知してもよい。具体的には、携帯端末400にインストールされたアプリが、サーバ500と通信して混雑状況が閾値を超えた旨の通知を受け取り、警告音またはバイブレーションによって従業員に通知する。これにより、従業員が今いる場所が混雑してきたことを把握することができる。
また、携帯端末400は、他の従業員と接触している時間が閾値を超えた場合に、警告音を鳴らしてまたはバイブレーションによって、従業員に接触時間が長いことを通知してもよい。これにより、従業員と他の従業員とが濃厚接触となることを未然に防止することができる。
【0056】
(移動を伴う接触)
携帯端末400aと携帯端末400bとが接触して移動し、移動経路の途中にビーコン発信装置200のビーコンの電波が届かない場所Bがあった場合、場所Bの前後で従業員同士が接触しているときは、その従業員同士は場所Bに滞在している間も同様に接触している可能性が高い。
図8の具体例を用いて説明する。
【0057】
図8は、移動する複数の携帯端末400a、400bの通信を説明するための模式図である。携帯端末400aの所有者と携帯端末400bの所有者は、ビーコン発信装置201aのビーコンエリア内で合流し、その後一緒に移動して、ビーコン発信装置201cのビーコンエリア内で別れる動きをしている。
この場合、両者の経路のうち太線の部分で接触の距離の定義(例えば3メートル以内)を満たしていたとする。ここで、両者の経路の途中で、ビーコン発信装置201bおよびビーコン発信装置201cのビーコンの電波が届かない場所Bがあったとしても、場所Bの前後で接触の距離の定義を満たしていた場合は、両者の接触の時間に加算する。これによって、接触の時間の定義(例えば15分以上)を満たすことになれば、両者は接触の定義(例えば3メートル以内に15分以上)を満たしたものとする。
【0058】
このようにして、本実施の形態における接触履歴取得システム100では、複数の携帯端末400a、400bの移動経路を算出することにより、所有者の移動経路と他の所有者の移動経路および移動時間が同じ場合に、所有者と他の所有者とが接触したと算出する。これにより、移動を伴っている場合であっても、人と人との接触を確実に検知することができる。
【0059】
これにより、例えば、3階のオフィスで接触していた従業員同士が4階の会議室に移動した場合において、途中のエレベータでビーコンが受信できない時間帯があったとしても、その従業員同士はエレベータ内でも接触が継続していた可能性が高い。よって、このような場合はエレベータに乗っていた時間を従業員同士の接触時間として計上する。したがって、より正確な接触の情報を得ることができる。
【0060】
本発明においては、接触履歴取得システム100が「接触履歴取得システム」に相当し、ビーコン発信装置200が「ビーコン発信装置」に相当し、携帯端末400が「携帯端末」に相当し、サーバ500が「サーバ」に相当し、接触履歴算出部510が「接触履歴算出部」に相当し、混雑場所算出部520が「混雑場所算出部」に相当する。
【0061】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0062】
100 接触履歴取得システム
200 ビーコン発信装置
300 管理者端末
400 携帯端末
500 サーバ
510 接触履歴算出部
520 混雑場所算出部
550 表示部
B ビーコンの電波が届かない場所