(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133702
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ソナードームの引っ張り試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/08 20060101AFI20220907BHJP
G01S 7/521 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G01N3/08
G01S7/521 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032546
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】松本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】田中 友輔
【テーマコード(参考)】
2G061
5J083
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB03
2G061BA04
2G061BA15
2G061CA10
2G061CA14
2G061CB01
2G061CC01
2G061EA01
2G061EB05
2G061EB07
5J083AA02
5J083AC40
5J083AF16
5J083CA01
5J083CA21
5J083CA34
5J083CA37
5J083CA38
(57)【要約】
【課題】ソナードームの引っ張り試験を正確に確実に行なうことができるソナードームの引っ張り試験方法を提供すること。
【解決手段】ビードクランプ30のボルト挿通孔H1に挿通したボルトB1をねじ孔N2に螺合して締結し、試験片24の被挟持部24Aを挟持部材26で挟持する。そして、当接板42をビードシート28とビードクランプ30に締結し、挟持部材26で挟持された被挟持部24Aの幅W1方向の両端の被挟持部端面2402にそれぞれ当接板42を当接する。これにより被挟持部24Aの幅方向の両端において、当接板42はビードシート端面2802とビードクランプ端面3002と被挟持部端面2402に当接された状態となる。この状態でクロスメンバ28を上昇させていくことで試験片24の引っ張り試験を行なう。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソナーの周囲を覆うドーム本体と、前記ドーム本体の縁の全周に設けられ船体側に取り付けられるビード部とを備え、前記ビード部は、ワイヤを有する芯材と、前記芯材の外周を覆う外周ゴム層と、前記ドーム本体を構成するドーム本体部材が前記外周ゴム層に掛装されて折り返された部分を含んで構成されたソナードームの引っ張り試験方法であって、
前記ソナードームを前記ビード部の延在方向に沿った所定幅で前記延在方向と直交する方向に切断し、所定幅で延在するドーム本体部分とその延在方向の両端に位置する所定幅のビード部部分とを有する試験片を設け、
前記ドーム本体部分の延在方向の両端に位置する前記ビード部部分と前記ビード部寄りの前記ドーム本体部分を含む前記試験片の両端の被挟持部をそれぞれ挟持部材で挟持し、
前記各挟持部材において、前記ビード部部分の延在方向の両端に位置する前記被挟持部の被挟持部端面にそれぞれ当接板を当て付けた状態でそれら当接板を前記挟持部材に固定させ、
前記両端の挟持部材のうちの少なくとも一方を他方から離れる方向に移動させ、前記試験片の破断時の引っ張り力を測定する、
ことを特徴とするソナードームの引っ張り試験方法。
【請求項2】
前記挟持部材は、前記所定幅と同一寸法の幅を有し、
前記挟持部材の前記幅方向において両端に位置する前記挟持部材の箇所は前記当接板が当接される挟持部材端面として形成され、
前記試験片が、前記所定幅よりも小さい寸法で形成された場合に、前記被挟持部端面に対応した形状のシムが前記当接板と前記被挟持部端面との間に介設され、前記当接板が前記シムを介して前記被挟持部端面に当接される、
ことを特徴とする請求項1記載のソナードームの引っ張り試験方法。
【請求項3】
前記当接板は透明である、
ことを特徴とする請求項1または2記載のソナードームの引っ張り試験方法。
【請求項4】
前記シムは透明である、
ことを特徴とする請求項2または請求項2を引用する請求項3記載のソナードームの引っ張り試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソナードームの引っ張り試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソナードームは、船底に設置された送受波器を覆い、自船等から発生する雑音から送受波器を保護するものである。
ソナードームは、ソナーの周囲を覆うドーム本体と、ドーム本体の縁の全周に設けられ船体側に取り付けられるビード部とを備えている。
そして、ソナードームは船底に設置されて使用されることから、船舶の航行時にソナードームのドーム本体やビード部に応力が掛かる。
そのため、ソナードームでは引っ張り試験を含む種々の試験がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引っ張り試験では、ソナードームをビード部の延在方向に沿った所定幅でビード部の延在方向と直交する方向に切断し、所定幅で延在するドーム本体部分とその延在方向の両端に位置する所定幅のビード部部分とを有する試験片を設けることが考えられる。
そして、船底に取り付けられる取り付け構造と同一の構造で、ビード部部分と、ビード部寄りのドーム本体部分を含む試験片の被挟持部をそれぞれ挟持部材で挟持し、何れか一方の挟持部材を他方から離れる方向に移動させることが考えられる。
一方、ビード部は、可撓性を有するワイヤからなる芯材と、芯材の外周を覆う外周ゴム層と、ドーム本体を構成するドーム本体部材が外周ゴム層に掛装されて折り返された部分を含んで構成されている。
多くの場合、芯材は、可撓性を有するゴム材料で被覆された複数のワイヤで構成され、外周ゴム層はシール性を確保するため比較的硬度の低いゴム材料で構成され、特に、外周ゴム層を構成するゴム材料は、芯材に掛装されて折り返されるドーム本体部材を構成するゴム材料よりも硬度が低い。
そのため、引っ張り試験時、試験片の被挟持部をそれぞれ挟持部材で挟持し、何れか一方の挟持部材を他方の挟持部材から離れる方向に移動させた場合、挟持部材と芯材の周囲との間に大きな力が作用することから、外周ゴム層を構成するゴム材料やワイヤを被覆するゴム材料が、芯材と、芯材に掛装されたドーム本体部分との間から試験片の外部に押し出され、その結果、ビード部部分が変形し、変形したビード部部分から破断されるなど、引っ張り試験を正確に行なえないことが考えられる。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、ソナードームをビード部の延在方向に沿った所定幅でビード部の延在方向と直交する方向に切断し、所定幅で延在するドーム本体部分とその延在方向の両端に位置する所定幅のビード部部分とを有する試験片を用いて引っ張り試験を正確に確実に行なうことができるソナードームの引っ張り試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明の一実施の形態は、ソナーの周囲を覆うドーム本体と、前記ドーム本体の縁の全周に設けられ船体側に取り付けられるビード部とを備え、前記ビード部は、ワイヤを有する芯材と、前記芯材の外周を覆う外周ゴム層と、前記ドーム本体を構成するドーム本体部材が前記外周ゴム層に掛装されて折り返された部分を含んで構成されたソナードームの引っ張り試験方法であって、前記ソナードームを前記ビード部の延在方向に沿った所定幅で前記延在方向と直交する方向に切断し、所定幅で延在するドーム本体部分とその延在方向の両端に位置する所定幅のビード部部分とを有する試験片を設け、前記ドーム本体部分の延在方向の両端に位置する前記ビード部部分と前記ビード部寄りの前記ドーム本体部分を含む前記試験片の両端の被挟持部をそれぞれ挟持部材で挟持し、前記各挟持部材において、前記ビード部部分の延在方向の両端に位置する前記被挟持部の被挟持部端面にそれぞれ当接板を当て付けた状態でそれら当接板を前記挟持部材に固定させ、前記両端の挟持部材のうちの少なくとも一方を他方から離れる方向に移動させ、前記試験片の破断時の引っ張り力を測定することを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記挟持部材は、前記所定幅と同一寸法の幅を有し、前記挟持部材の前記幅方向において両端に位置する前記挟持部材の箇所は前記当接板が当接される挟持部材端面として形成され、前記試験片が、前記所定幅よりも小さい寸法で形成された場合に、前記被挟持部端面に対応した形状のシムが前記当接板と前記被挟持部端面との間に介設され、前記当接板が前記シムを介して前記被挟持部端面に当接されることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記当接板は透明であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記シムは透明であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、引っ張り試験時、被挟持部の幅方向の両端において当接板が被挟持部端面に当接されている。すなわち、外周ゴム層を構成するゴム材料は、両側の当接板により被挟持部の幅方向における変位が拘束されている。
したがって、被挟持部からそれらゴム材料がはみ出ることがなく、ソナードームの引っ張り試験を正確に確実に行なう上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、被挟持部の幅が挟持部材の幅よりも小さく製作されている場合であっても、被挟持部の幅方向の一端では、被挟持部端面が当接板に当接し、被挟持部の幅方向の他端では、被挟持部端面がシムを介して当接板に当接する。すなわち、外周ゴム層を構成するゴム材料は、両側の当接板とシムにより被挟持部の幅方向における変位が拘束されている。
したがって、被挟持部からそれらゴム材料がはみ出ることがなく、ソナードームの引っ張り試験を正確に確実に行なう上で有利となる。
また、透明な当接板や透明なシムを用いると、引っ張り試験時、被挟持部内における複数のワイヤや外周ゴム層の変形を観察でき、ワイヤやゴム材料の選定を行なう上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)は試験片の平面図、(B)は同正面図である。
【
図2】(A)はビードシートの平面図、(B)は同正面図である。
【
図3】(A)はビードクランプの平面図、(B)は同正面図である。
【
図4】(A)は当接板の平面図、(B)は同正面図である。
【
図5】(A)は挟持部材で被挟持部を挟持した状態でその上方のドーム本体部分を切断した断面平面図、(B)は同正面図である。
【
図6】(A)は挟持部材で被挟持部を挟持し、両側の挟持部材端面に当接板を取り付けた状態でその上方のドーム本体部分を切断した断面平面図、(B)は同正面図である。
【
図7】挟持部材を用いて試験片の引っ張り試験を行なう引っ張り試験装置の正面図である。
【
図8】(A)はシムの平面図、(B)は同正面図である。
【
図9】(A)は挟持部材で被挟持部を挟持し、シムを介在させて両側の挟持部材端面に当接板を取り付けた状態でその上方のドーム本体部分を切断した断面平面図、(B)は同正面図である。
【
図10】(A)はソナードームの平面図、(B)は同正面図、(C)は同斜視図である。
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
まず、ソナードームの試験片から説明する。
図10に示すように、ソナードーム10は、不図示のソナーの周囲を覆うドーム本体12と、ドーム本体12の縁の全周に設けられ船体側に取り付けられるビード部14とを備えている。
図5(B)に示すように、ビード部14は、ゴム材料16で被覆された可撓性を有する複数のワイヤ18からなる芯材20と、芯材20の外周を覆う外周ゴム層22と、ドーム本体12を構成するドーム本体部材12Aが外周ゴム層22に掛装されて折り返された部分を含んで構成されている。
外周ゴム層22はシール性を確保するため比較的硬度の低いゴム材料で構成されている。
ドーム本体12は、外周ゴム層22に掛装され折り返されたドーム本体部材1202が重ね合わされて構成されている。
図1に示すように、このようなソナードーム10をビード部14の延在方向に沿った所定幅W1でビード部14の延在方向と直交する方向に切断し、所定幅W1で延在するドーム本体部分12Aとその延在方向の両端に位置する所定幅のビード部部分14Aとを有する試験片24を設ける。
【0009】
次に、
図7に示すように、ドーム本体部分12Aの延在方向の両端に位置する各ビード部部分14Aと、各ビード部部分14A寄りのドーム本体部分12Bを含む試験片24の被挟持部24Aをそれぞれ挟持する挟持部材26を一対設ける。
なお、
図1に示すように、ビード部部分14Aの延在方向の両端に位置する被挟持部24Aの箇所は、それぞれ被挟持部端面2402として形成されている。
図7に示すように、挟持部材26は金属製であり、船体側に設けられるソナードーム取り付け用の取り付け部材と同一の断面形状で形成されている。
すなわち、挟持部材26はビードシート28とビードクランプ30とで構成されている。
ビードシート28はビードクランプ30に比べて大型で、ビードシート28とビードクランプ30には、試験装置32側の連結ロッド34が連結される。
なお、試験装置32には従来公知の様々な引っ張り試験装置32が使用可能であり、本実施の形態の試験装置32は、一対の脚体36の間で、モータ、送りねじ機構などからなる昇降装置を介して昇降するクロスメンバ38を有し、クロスメンバ38は底板40の上方に対向して設けられ、連結ロッド34はクロスメンバ38と底板40にそれぞれ設けられている。
また、図中、符号35は、上側の連結ロッド34とクロスメンバ38との間に設けられたロードセルであり、ロードセル35によって後述する試験片24に加わる荷重が検出される。
なお、
図7に示すように、上側に配置されるビードシート28およびビードクランプ30と、下側に配置されるビードシート28およびビードクランプ30はそれぞれ同一の形状で形成され、ビードシート28およびビードクランプ30は上下で向きを変えて使用されている。
【0010】
図2に示すように、ビードシート28は、試験片24の幅W1と同一寸法の幅W2で形成されている。
幅W2方向の両端に位置するビードシート28の箇所は、それぞれ平坦面からなるビードシート端面2802として形成され、両ビードシート端面2802にはそれぞれ複数のねじ孔N1が形成されている。
それらビードシート端面2802で挟まれたビードシート28の箇所に、ビードシート側合わせ面2804と、ビードシート側挟持面2806とが設けられている。
ビードシート側合わせ面2804は平坦面で形成され、ビードシート側合わせ面2804にはねじ孔N2が形成されている。
ビードシート側挟持面2806は、被挟持部24Aのほぼ半部に対応した形状で形成され、詳細には、ビード部部分14Aのほぼ半部に対応した円筒面2806Aと、ビード部部分14A寄りのドーム本体部分12Aに対応した平面2806Bとを含んで形成されている。
なお、
図2において符号N3は、連結ロッド34結合用のねじ孔を示している。
【0011】
図3に示すように、ビードクランプ30もビードシート28と同様に、試験片24の幅W1と同一寸法の幅W2で形成されている。
幅W2方向の両端に位置するビードクランプ30の箇所は、それぞれ平坦面からなるビードクランプ端面3002として形成され、両ビードクランプ端面3002にはそれぞれ複数のねじ孔N4が形成されている。
なお、ビードシート端面2802およびビードクランプ端面3002は挟持部材端面2602を形成している。
それらビードクランプ端面3002で挟まれたビードクランプ30の箇所に、ビードクランプ側合わせ面3004と、ビードクランプ側挟持面3006とが設けられている。
ビードクランプ側合わせ面3004は平坦面で形成され、ビードクランプ側合わせ面3004にはボルト挿通孔H1が形成されている。
ビードクランプ側挟持面3006は、被挟持部24Aのほぼ半部に対応した形状で形成され、詳細には、ビード部部分14Aのほぼ半部に対応した円筒面3006Aと、ビード部部分14A寄りのドーム本体部分12Aに対応した平面3006Bとを含んで形成されている。
【0012】
次に、
図6に示すように、挟持部材26で挟持された被挟持部24Aの両被挟持部端面2402にそれぞれ当接させる当接板42を設ける。
当接板42は、金属製またはアクリルなどの硬質な合成樹脂製であり、本実施の形態では、透明な合成樹脂板を用いている。
図4に示すように、当接板42は均一の厚さで形成され、被挟持部端面2402の輪郭よりも大きな輪郭で形成され、本実施の形態では、
図6に示すように、挟持部材26で被挟持部24Aを挟持した状態において被挟持部端面2402の周囲に、挟持部材26の挟持部材端面2602に対向する複数のボルト挿通孔を形成できる大きさで形成されている。
当接板42が少なくとも被挟持部端面2402に当接される箇所は平坦面で形成されている。
当接板42には、ビードシート28のねじ孔N1とビードクランプ30のねじ孔N4に対応する箇所にボルト挿通孔H2が形成されている。
当接板42は、挟持部材26で挟持された被挟持部24Aの幅方向の両端の被挟持部端面2402に当接させることから合計4枚設けられ、それら4枚は同一の形状で形成されている。
【0013】
このように試験片24、挟持部材26、当接板42を用意したならば、まず、
図7に示すように、2つのビードシート28を、それらのねじ孔N3を介して上下の連結ロッド34に連結する。
次に、両側のビード部部分14Aのうちの一方のビード部部分14Aを、上側に位置するビードシート28のビードシート側挟持面2806に合わせ、次に、ビードクランプ30のビードクランプ側挟持面3006を残りのビードシート28の箇所に合わせるとともに、ビードクランプ側合わせ面3004を、ビードシート側合わせ面2804に合わせる。
そして、それらの幅W1,W2を合わせ、ビードクランプ30のボルト挿通孔H1に挿通したボルトB1をねじ孔N2に螺合して締結し、試験片24の被挟持部24Aを挟持部材26で挟持する。
このように試験片24の被挟持部24Aを挟持部材26で挟持する作業を、下側に位置するビードシート28においても行ない、ドーム本体部分12Aの延在方向の両端に位置する試験片24の被挟持部24Aを挟持部材26で挟持する。
次に、上下の挟持部材26で挟持された被挟持部24Aの幅W1方向の両端の被挟持部端面2402にそれぞれ当接板42を当接する。
この作業は、被挟持部24Aの幅W1方向の両端において、当接板42の各ボルト挿通孔H2に挿通したボルトB2を、ビードシート28のねじ孔N1とビードクランプ30のねじ孔N4に螺合し、当接板42をビードシート28とビードクランプ30に締結することで行なう。
このように当接板42がビードシート28とビードクランプ30に締結されることで、被挟持部24Aの幅方向の両端において、当接板42はビードシート端面2802とビードクランプ端面3002と被挟持部端面2402に当接された状態となる。
そして、クロスメンバ28を上昇させていくことで試験片24の引っ張り試験を行なう。
具体的には、試験装置32によりクロスメンバ28を上昇させて試験片24に引張力を加えつつロードセル35によって試験片24に加わる荷重を検出し、試験片24が破断したときの荷重を引張強さとして測定する。
【0014】
本実施の形態では、クロスメンバ38の上昇に伴い上下の被挟持部24Aに作用する引張力が大きくなっても、被挟持部24Aの幅方向の両端において当接板42が被挟持部端面2402に当接されている。
すなわち、外周ゴム層22を構成するゴム材料やワイヤ18を被覆するゴム材料16は、両側の当接板42により被挟持部24Aの幅方向における変位が拘束されていることから、実際に船体の底部にソナードーム10が取り付けられている状態と同じ状態となり、被挟持部24Aからそれらゴム材料がはみ出ることがない。
したがって、ソナードーム10の引っ張り試験を正確に確実に行なう上で有利となる。
また、透明な当接板42を用いたので、被挟持部24A内における複数のワイヤ18や外周ゴム層22の変位や変形を観察でき、ワイヤ18やゴム材料の選定を行なう上で有利となる。
【0015】
次に、
図8、
図9を参照して第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、試験片24の幅W1すなわち被挟持部24Aの幅W1と、ビードシート28およびビードクランプ30の幅W2とが同一の寸法で形成され、当接板42がビードシート28とビードクランプ30に締結されることで、被挟持部24Aの幅方向の両端において、当接板42がビードシート端面2802とビードクランプ端面3002と被挟持部端面2402に当接された状態となる。
しかしながら試験片24を製作する際に、加工公差の範囲内で被挟持部24Aの幅W1が、ビードシート28とビードクランプ30の幅W2よりも小さくなる場合、すなわち挟持部材26の幅W2よりも小さくなる場合、当接板42をビードシート28とビードクランプ30に締結しても、被挟持部24Aの幅方向の端部において、当接板42がビードシート端面2802とビードクランプ端面3002に当接するものの、当接板42と被挟持部端面2402との間に隙間が生じる。
このように隙間が生じた場合には、引っ張り試験時、被挟持部24Aに作用する引張力が大きくなった場合、当接板42との間に隙間があるため被挟持部24Aからゴム材料がはみ出てしまう。その結果、変形したビード部部分14Aから切断されるなど、引っ張り試験を正確に行なえなくなる。
【0016】
そこで、第2の実施の形態は、このように被挟持部24Aの幅W1が挟持部材26の幅W2よりも小さくなった場合を想定してなされたものであり、
図8に示すように、被挟持部24Aに対応した形状で厚さの異なる複数枚のシム44を予め用意しておく。
この場合のシム44の形状は、被挟持部24Aに対応した円状の部分44Aと直線状の部分44Bとで構成され、また、例えば、0.2mm、0.1mm、0.05mm、0.02mmなどの厚さを複数枚用意しておく。
シム44は、金属製またはアクリルなどの硬質な合成樹脂製であり、本実施の形態では、透明な合成樹脂板を用いている。
第2の実施の形態では、試験片24が製作されたならば、ビードシート28とビードクランプ30の幅を測定すると共に被挟持部24Aの幅を測定する。
そして、それらの幅の差異に相当する厚さになるように、一枚または複数枚のシム44を予め2組用意する。
あるいは、ビードシート28の両ビードシート端面2802のうちの一方のビードシート端面2802とビードクランプ30の両ビードクランプ端面3002のうちの一方のビードクランプ端面3002を平面上におき、また、被挟持部24Aの両被挟持部端面2402のうちの一方の被挟持部端面2402をこの平面上に置いた状態で、ビードシート28のビードシート側挟持面2806とビードクランプ30のビードクランプ側挟持面3006で被挟持部24Aを挟む。
そして、被挟持部24Aの上方に向いた端面2402にシム44を載せていき、このように載せられたシム44の上面と、ビードシート28とビードクランプ30の上方に向いたビードシート端面2802、ビードクランプ端面3002とを同一面にする。このようにして同一面となる一枚または複数枚のシム44を予め2組用意する。
【0017】
第2の実施の形態では、被挟持部24Aを挟持部材26で挟持する際に、被挟持部24Aの幅W1方向の一方の被挟持部端面2402を挟持部材26の幅W2方向の一方の挟持部材端面2602に合わせて被挟持部24Aを挟持部材26で挟持する。
すなわち、被挟持部24Aの幅W1方向の一方の被挟持部端面2402と挟持部材26の幅W2方向の一方の挟持部材端面2602とを同一面上に位置させた状態で被挟持部24Aを挟持部材26で挟持する。
次に、被挟持部24Aの幅W1方向の他方の被挟持部端面2402において、挟持部材端面2602と同一面になるまで、シム44を重ね合わせていく。
そして、最も外側に配置されたシム44の外面と、挟持部材端面2602とが同一面になったならば、挟持部材26の幅方向の両端の挟持部材端面2602に当接板42を当接した状態で当接板42を挟持部材26に締結し、引っ張り試験を行なう。
この場合、被挟持部24Aの幅方向の一端では、被挟持部端面2402が当接板42に当接し、被挟持部24Aの幅方向の他端では、被挟持部端面2402がシム44を介して当接板42に当接している。
したがって、引っ張り試験時、外周ゴム層22を構成するゴム材料やワイヤ18を被覆するゴム材料16はシム44を介して両側の当接板42により被挟持部24Aの幅方向における変位が拘束されていることから、第1の実施の形態と同様に、被挟持部24Aからゴム材料がはみ出ることがなく、したがって、ソナードーム10の引っ張り試験を正確に確実に行なう上で有利となる。
したがって、第2の実施の形態によれば、試験片24の幅W1が、ビードシート28とビードクランプ30の幅W2よりも小さく製作された場合であっても、外周ゴム層22を構成するゴム材料やワイヤ18を被覆するゴム材料16をシム44を介して両側の当接板42により拘束することができ、ソナードーム10の引っ張り試験を正確に確実に行なう上で有利となる。
また、透明な当接板42およびシム44を用いたので、第1の実施の形態と同様に被挟持部24A内における複数のワイヤ18や外周ゴム層22の変形を観察でき、ワイヤ18やゴム材料の選定を行なう上で有利となる。
【符号の説明】
【0018】
10 ソナードーム
12 ドーム本体
1202 ドーム本体部材
12A ドーム本体部分
12B 各ビード部部分14A寄りのドーム本体部分
14 ビード部
14A ビード部部分
16 ゴム材料
18 ワイヤ
20 芯材
22 外装ゴム層
24 試験片
24A 被挟持部
2402 被挟持部端面
26 挟持部材
2602 挟持部材端面
28 ビードシート
2802 ビードシート端面
2804 ビードシート側合わせ面
2806 ビードシート側挟持面
2806A 円筒面
2806B 平面
30 ビードクランプ
3002 ビードクランプ端面
3004 ビードクランプ側合わせ面
3006 ビードクランプ側挟持面
3006A 円筒面
3006B 平面
32 試験装置
34 連結ロッド
35 ロードセル
36 脚体
38 クロスメンバ
40 底板
42 当接板
44 シム