(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133729
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】色素沈着抑制剤、皮膚用化粧料および皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220907BHJP
A61K 36/736 20060101ALI20220907BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220907BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220907BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/736
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 112
A61P17/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032589
(22)【出願日】2021-03-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 電子通信回線を通じての公開/掲載アドレス:http://ifscc2020.com/(第31回国際化粧品技術者会連盟横浜大会2020(IFSCC2020)ウェブサイト)公開日:令和2年10月14日 電子通信回線を通じての公開/掲載アドレス:http://ifscc2020.com/(第31回国際化粧品技術者会連盟横浜大会2020(IFSCC2020)ウェブサイト)公開日:令和2年10月21日~10月30日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】501255239
【氏名又は名称】東亜化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】大橋 慶丈
(72)【発明者】
【氏名】清水 直弘
(72)【発明者】
【氏名】岩間 直子
【テーマコード(参考)】
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083CC03
4C083EE07
4C083EE16
4C088AB52
4C088AC04
4C088BA10
4C088CA06
4C088CA11
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB21
4C088ZC12
4C088ZC20
4C088ZC37
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】この発明は、線維芽細胞を介した表皮での色素沈着を抑制できる色素沈着抑制剤、色素沈着抑制剤を含む皮膚用化粧料および皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【解決手段】オオヤマザクラの果実から抽出された抽出物を有効成分とし、線維芽細胞を介した表皮での色素沈着を抑制する色素沈着抑制剤であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オオヤマザクラの果実から抽出された抽出物を有効成分とし、線維芽細胞を介した表皮での色素沈着を抑制する
色素沈着抑制剤。
【請求項2】
前記抽出物が、前記オオヤマザクラの果実から色素を絞った後に残る残渣から抽出された
請求項1に記載の色素沈着抑制剤。
【請求項3】
前記有効成分は、表皮におけるメラノソームの取り込みを阻害する
請求項1又は請求項2に記載の色素沈着抑制剤。
【請求項4】
前記有効成分が、色素細胞におけるチロシナーゼの生合成を抑制する
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載の色素沈着抑制剤。
【請求項5】
前記有効成分は、線維芽細胞におけるPGE2の産生を抑制する
請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載の色素沈着抑制剤。
【請求項6】
前記有効成分は、線維芽細胞における活性酸素を減少させる
請求項1乃至請求項5のうちのいずれかに記載の色素沈着抑制剤。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載の色素沈着抑制剤を含有する
皮膚用化粧料。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載の色素沈着抑制剤を含有する
皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オオヤマザクラ(Cerasus sargentii (Rehder) H.Ohba)の果実から抽出した抽出物を含有する色素沈着抑制剤、前記色素沈着抑制剤を含む皮膚用化粧料、および前記色素沈着抑制剤を含む皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢や日焼けによるシミ(老人性色素斑)などの色素沈着の原因の一つとして、表皮角化細胞にメラニンが蓄積することがある。具体的には、肌に照射された紫外線の刺激により、色素細胞(メラノサイト)において生合成されたメラニンを含有するメラノソームが表皮に供与され、メラニンが表皮角化細胞に蓄積されることが原因である。
【0003】
このように蓄積されたメラニンは、表皮のターンオーバーによって角質とともに垢として排出されるが、紫外線対策をせずに慢性的に紫外線を浴び続けたり、加齢により皮膚のターンオーバーのサイクルが長くなったりすると、メラニンの排出が遅くなる。これにより、表皮角化細胞中にメラニンが残ることとなり、褐色のシミなどとなる。このことから、シミなどの生成を防止するものとして、メラニンの産生を抑制するメラニン産生抑制剤が多数提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、色素細胞内でのチロシナーゼの反応を抑制する、アスコルビン酸およびその誘導体、プラセンタエキス、ハイドロキノンβ-D-グルコース、コウジ酸、トラネキサム酸およびエラグ酸のうちの少なくとも1種を含有する美白化粧料について開示されている。この美白化粧料により、メラニン生成の律速段階であるチロシナーゼの反応を抑制できるとされている。
【0005】
ところで、近年の研究から、メラニン生成には表皮のみならず表皮よりも体内側にある真皮の細胞も影響しているとの報告がある。そのため、単に表皮におけるメラニンの産生を抑制するだけでは、十分にシミなどの色素沈着を抑制できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述した問題を鑑み、真皮に存在する線維芽細胞を介した表皮での色素沈着を抑制できる色素沈着抑制剤、前記色素沈着抑制剤を含む皮膚用化粧料および皮膚外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意努力し、オオヤマザクラ(Cerasus sargentii (Rehder) H.Ohba)の果実から抽出された抽出物の有効成分が、真皮に存在する線維芽細胞を介した表皮における色素沈着を抑制することを見出した。すなわち、本発明は、オオヤマザクラの果実から抽出された抽出物を有効成分とし、線維芽細胞を介した表皮での色素沈着を抑制する色素沈着抑制剤であることを特徴とする。
またこの発明として、上述の色素沈着抑制剤を含有する皮膚用化粧料および皮膚外用剤であることを特徴とする。
【0009】
なお、本発明が皮膚用化粧料や皮膚外用剤である場合には、オオヤマザクラの果実から抽出物を得るのに用いる溶媒は、人体に害の無い生成物が得られるような溶媒が好ましく、例えば水やエタノールなどを適当な割合で混合することがより好ましい。
【0010】
皮膚用化粧料又は皮膚外用剤の性状は液状、ゲル状、クリーム状、半固形状、固形状、スティック状、パウダー状等のいずれであってもよく、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗顔料、メーキャップ化粧料等の皮膚用化粧料等とすることができる。
【0011】
皮膚用化粧料又は皮膚外用剤には、上述の抽出物が本発明の効果である色素沈着を抑制する限りにおいて、通常の皮膚外用剤や皮膚用化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、キレート剤、清涼剤、乳化剤、増泡剤、増粘剤、消臭・脱臭剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、美白剤、酵素、ホルモン類、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料、精製水などを配合することができる
【0012】
前記皮膚外用剤は、上述の抽出物が本発明の効果である色素沈着を抑制する限りにおいて、皮膚外用剤に通常用いられる種々の成分、例えば、保湿剤、油性物質、界面活性剤、増粘剤、中和剤、防腐剤、抗酸化剤、色素、香料、紫外線吸収剤、細胞賦活剤、他の薬効成分などが含まれてもよい。
【0013】
なお、上述のオオヤマザクラの果実由来の抽出物とは、オオヤマザクラの果肉のみに限らず、種子を含んだオオヤマザクラの果実から抽出した抽出物を含む。また、前記抽出物は、オオヤマザクラの果実から成分(色素)を抽出した後に残る搾りカス(残渣)から再度抽出した抽出物も含む。
【0014】
またこの発明の態様として、前記有効成分は、表皮におけるメラノソームの取り込みを阻害してもよい。
この発明により、線維芽細胞を介した表皮におけるメラノソームの取り込みを阻害することで、表皮での色素沈着を抑制することができるため、表皮におけるシミなどの生成を抑止することができる。具体的には、線維芽細胞を介した表皮におけるメラノソームの取り込み量を減少させることで、内部でメラニンが生合成されるメラノソームが表皮に蓄積することを抑制できる。したがって、表皮における色素沈着を抑制することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記有効成分が、色素細胞におけるチロシナーゼの生合成を抑制してもよい。
この発明により、色素細胞(メラノサイト)においてチロシナーゼ活性を低減させることができるため、メラニンの生合成を抑制することができる。したがって、表皮におけるメラニンの定着を抑制し、表皮における色素沈着を抑制することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記有効成分は、線維芽細胞におけるPGE2の産生を抑制してもよい。
この発明により、メラノサイトでのチロシナーゼ活性を向上させるPGE2の産生量を低減させることできるため、メラノサイトでのチロシナーゼの活性を抑制してメラニンの産生を抑制することができ、表皮における色素沈着を抑制することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記有効成分は、線維芽細胞における活性酸素を減少させてもよい。
この発明により、線維芽細胞の老化を抑制することができ、メラノサイトを活性化するPGE2を抑制できるため、メラノサイトのメラニンの生合成を抑制することができる。したがって、メラノサイトでのチロシナーゼの活性を抑制し、メラニンの産生を抑制することができ、表皮における色素沈着を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明により、線維芽細胞を介した表皮での色素沈着を抑制できる色素沈着抑制剤、前記色素沈着抑制剤を含む皮膚用化粧料および皮膚外用剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】IL-1αに対する擬メラノソームの取り込みを示す棒グラフ。
【
図2】オオヤマザクラエキスに対する擬メラノソームの取り込みを示す棒グラフ。
【
図3】オオヤマザクラのエキスに対する活性酸素量を示す棒グラフ。
【
図4】オオヤマザクラのエキスに対するPEG2の産生量を示す棒グラフ。
【
図5】オオヤマザクラエキスに対する擬メラノソームの取り込みを示す棒グラフ。
【
図6】オオヤマザクラのエキスに対するチロシナーゼ活性を示す棒グラフ。
【
図7】紫外線による細胞の老化を示す蛍光顕微鏡画像。
【
図8】オオヤマザクラのエキスに対する活性酸素量を示す棒グラフ。
【
図9】オオヤマザクラのエキスに対するPEG2の産生量を示す棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施例にかかる色素沈着抑制剤は、オオヤマザクラ(Cerasus sargentii (Rehder) H.Ohba)の果実から抽出した抽出物を有効成分として含有している。より具体的には、オオヤマザクラの果実から色素を絞った後に残ったオオヤマザクラの果実の搾りカス(残渣)から抽出した抽出物を有効成分として含有している。
【0021】
なお、本実施例では、オオヤマザクラの果実の残渣から抽出した有効成分を用いているが、必ずしもオオヤマザクラの果実の残渣から抽出した有効成分である必要なく、オオヤマザクラの果実そのものや、オオヤマザクラの果実を粉砕したもの、あるいは、練り込んでペースト状にされたオオヤマザクラの果実などから抽出した有効成分であってもよい。
【0022】
このように本発明における有効成分を含有するオオヤマザクラの果実の抽出物は、植物由来であり、皮膚に対する刺激性等、安全性および使用性の点でも有利である。
【0023】
オオヤマザクラの果実の抽出物は、オオヤマザクラの果実を水洗し、そのまま又は細断等を行って細粒状や粉末状とし、メタノールやエタノールなどの抽出溶媒に浸漬してオオヤマザクラの色素を抽出させた後に、ろ過や遠心分離などを用いて抽出液と残渣とを分離する。
【0024】
次に、このように溶媒と分離されたオオヤマザクラの果実の残渣は、室温下でエタノール水溶液などの抽出溶媒に浸漬させて数日放置した後、真空固液分離機(エバポレーター)を用いて、残渣を含むエタノール水溶液から抽出溶媒などを再度分離させ、分離された残渣を固形物として回収する。そして、この固形物を乾燥させて粉末(乾燥残渣)とし、この乾燥残渣をエタノール水溶液などの調整用溶媒に浸漬し、抽出及び濾過をして調製する。
【0025】
なお、抽出溶媒は、オオヤマザクラの有効成分を抽出できるものであれば特定の溶媒に限定する必要なく、果実等の成分抽出に用いられる一般的な溶媒を用いることができる。例えば、抽出溶媒として、水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール等のアルコール類、クロロホルム、ジクロルエタン、四塩化炭素、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の有機溶媒類等であり、それらは単独あるいは組み合わせて用いることができる。
【0026】
このようにして得られたオオヤマザクラの果実由来の抽出物は、線維芽細胞を介した色素沈着を抑制することが判明した。
具体的には、線維芽細胞を介した表皮におけるメラノソームの取り込み量を減少させることができるため、内部でメラニンが生合成されるメラノソームが表皮に蓄積されることを抑制でき、表皮における色素沈着を抑制することができる。
【0027】
また、オオヤマザクラの果実由来の抽出物は、色素細胞においてチロシナーゼ活性を低減させることが判明した。このため、メラノソーム内でのメラニンの生合成を抑制することができ、表皮における色素沈着を抑制することができる。
【0028】
さらには、線維芽細胞での活性酸素量を低減させることが判明した。これにより、線維芽細胞の老化を抑制することができる。また、さらにメラノサイトを活性化するPGE2の産生を抑制できるため、メラノサイトのメラニンの生合成を抑制することができる。したがって、表皮における色素沈着を抑制することができる。
【0029】
このようにオオヤマザクラの果実由来の抽出物は、線維芽細胞を介した色素沈着を抑制できるため、表皮でメラニンが蓄積されてシミなどが生成されることを抑制することができる。また、このような美白効果に加え、肌の老化を予防する効果を発揮できるため、例えば、皮膚用化粧料や皮膚外用剤として用いることができる。
【0030】
なお、皮膚用化粧料又は皮膚外用剤の性状は、液状、ゲル状、クリーム状、半固形状、固形状、スティック状、パウダー状等のいずれであってもよく、乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗顔料、メーキャップ化粧料等の皮膚用化粧料等とすることができる。
【0031】
本実施例にかかる皮膚用化粧料又は皮膚外用剤には、オオヤマザクラの果実由来の抽出物が有する色素沈着を抑制する効果を妨げない限りにおいて、通常の皮膚外用剤や皮膚用化粧料の製造に用いられる主剤、助剤又はその他の成分、例えば、収斂剤、殺菌・抗菌剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、キレート剤、清涼剤、乳化剤、増泡剤、増粘剤、消臭・脱臭剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、消炎・抗アレルギー剤、美白剤、酵素、ホルモン類、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料、精製水などを配合することができる。
【0032】
さらにまた前記皮膚外用剤としては、オオヤマザクラの果実由来の抽出物が有する色素沈着を抑制する効果を妨げない限りにおいて、どのようなものでもよく、皮膚外用剤に通常用いられる種々の成分、例えば、保湿剤、油性物質、界面活性剤、増粘剤、中和剤、防腐剤、抗酸化剤、色素、香料、紫外線吸収剤、細胞賦活剤、他の薬効成分などが挙げられる。
【実施例0033】
以下実施例をもって、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0034】
<オオヤマザクラのエキスの抽出方法>
このオオヤマザクラの果実の抽出物の抽出方法について簡単に説明する。はじめに、オオヤマザクラの果実を水洗し、粉末状に細断し、50%エタノールに浸漬して成分(色素)を抽出させ、成分の抽出後にろ過および遠心分離を用いて抽出液と残渣とを分離した。その後、分離されたオオヤマザクラの果実の残渣を、室温下で50%エタノール水溶液に浸漬させて数日放置した後、真空固液分離機(エバポレーター)を用いて、エタノール水溶液などを分離し、残った残渣を固形物として回収した。この固形物を乾燥させて粉末(乾燥残渣)とし、50%のエタノール水溶液で所定の濃度となるように調製し、濾過して使用した。
【0035】
<1:メラノソーム取り込み抑制効果について>
オオヤマザクラの果実由来の抽出物による、表皮角化細胞(ケラチノサイト)でのメラノソーム取り込み抑制作用について確認した。
【0036】
<1.1:線維芽細胞の関与について>
はじめに、紫外線B波(UVB)を照射した表皮角化細胞(ケラチノサイト)におけるメラノソームの取り込みについて、線維芽細胞の関与を確認した。より詳しくは、ケラチノサイトにUVBを照射することにより分泌されるIL-1αが、線維芽細胞を介したケラチノサイトにおけるメラノソームの取り込みに関与するかについて確認した。
【0037】
(実験方法)
正常ヒト表皮角化細胞(NHEK:Kurabo)を、HuMedia-KG2(Kurabo)中の2.0×104細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、擬メラノソームである赤色蛍光ビーズ(FluoSpheres カルボキシレート修飾0.2μm,1:500希釈)の混合物を、所定の濃度のIL-1αとともに添加して6時間培養した。
【0038】
なお、HuMedia‐KG2に添加したIL-1αの濃度は、それぞれ0ng/ml(添加なし),0.001ng/ml,0.01ng/ml,0.1ng/ml,1.0ng/ml,10ng/mlである。
【0039】
次に、PBS(-)で2回洗浄した後、NHEKを4μMのHoechst 33342(Invitrogen)で15分間処理し、蛍光強度(FI)(Ex;580nm、Em;605nm)を測定することによって赤色蛍光ビーズの取り込みを定量した。また、Hoechst 33342を、マイクロプレートリーダーを用いて0.1%のTriton X-100で調製した細胞溶解物のFI(Ex;350nm、Em;461nm)を測定することによって定量した。赤色蛍光ビーズの取り込みは、FI(赤色ビーズ/Hoechst)として計算した。このように測定されたIL-1αの各濃度(横軸)に対するFI(縦軸)は、IL-1αを添加しない場合のFIを100%として、IL-1αの各濃度に対する相対値として
図1(a)に示す。
なお、データは平均値±標準偏差で表す。統計学的有意性はスチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満であれば、統計的に有意であるとみなす。
【0040】
同様に、正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)を5%CO2雰囲気中37℃で所定濃度のIL-1αを含むHuMedia KB2(Kurabo)中で24時間培養し、上清を採取した。なお、IL-1αの濃度は、それぞれ0ng/ml(添加なし),0.001ng/ml,0.01ng/ml,0.1ng/ml,1.0ng/ml,10ng/mlである。
【0041】
次に、NHEKを、HuMedia-KG2(Kurabo)中の2.0×10
4細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、NHDFを培養した培地の上清を各ウェルに80μl添加するとともに、擬メラノソームである赤色蛍光ビーズ(カルボキシレート修飾
0.2μm,1:500希釈)の混合物を添加して6時間培養し、上述と同様の方法で蛍光強度(FI)を測定した。このように測定されたIL-1αの各濃度(横軸)に対するFI(縦軸)を、IL-1αを添加しない場合のFIを100%として、IL-1αの各濃度に対する相対値として
図1(b)に示す。
なお、データは平均値±標準偏差で表す。統計学的有意性はスチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満であれば、統計的に有意であるとみなす。
【0042】
(結果)
ケラチノサイトにUVBを照射することで活性酸素(ROS)が発生し、さらにはIL-1αの分泌が促進されることが知られている。しかしながら、
図1(a)に示すように、NHEKを培養する培地にIL-1αを添加し、IL-1αの量が増加した状態で培養しても、NHEKでのメラノソームの取り込みを促進されなかった。
【0043】
一方で、真皮にある線維芽細胞(NHDF)にIL-1αを添加して培養した後に、NHDFを培養した培地の上清をNHEKの培地に添加し、NHEKにおけるメラノソームの取り込みを確認したところ、
図1(b)に示すように、IL-1αの添加量に比例して、メラノソームの取り込み量が増加した。このことから、NHEKにおけるメラノソームの取り込みにはNHDFが関与していることが示唆された。
【0044】
<1.2:メラノソームの取り込み抑制について>
上述の結果を受け、UVBを照射したNHEKにおけるメラノソームの取り込みに関するオオヤマザクラのエキスの抑制効果について確認した。
【0045】
(実験方法)
NHEKを、HuMedia-KG2中の4.0×104細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種した。播種したNHEKの一部にはTL20W/12RSUVBブロードバンドランプ(Philips、Eindhoven)を用いて30mJ/cm2のUVBを照射した。その後、5%CO2雰囲気中37℃で5%FBSを含むDMEM中で培養したNHDFをNHEKを播種したカルチャーウェルと共培養し、所定の濃度のオオヤマザクラのエキスを添加するとともに、5%CO2雰囲気中37℃で24時間共培養した。なお、オオヤマザクラのエキスの濃度は、それぞれ0mg/ml(添加なし),0.5mg/ml,1.0mg/ml、2.0mg/mlである。
【0046】
次に、オオヤマザクラのエキスを添加し、NHEKとNHDFが共培養された培地から上清(K+F-CM)を採取し、HuMedia-KG2に2.0×10
4細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種したNHEKに、擬メラノソームである赤色蛍光ビーズ(カルボキシレート修飾0.2μm,1:500希釈)の混合物を、上清(K+F-CM)とともに添加して6時間培養した。その後、上述の方法(<1.1:線維芽細胞の関与について>)と同じ方法で蛍光強度(FI)を測定した。それぞれの測定結果は、UVBを照射していないNHEKのFIを100%とした場合における、オオヤマザクラのエキスの各濃度(横軸)に対するFI(縦軸)として、
図2に示す。
なお、データは平均値±標準偏差で表す。統計学的有意性はスチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満であれば、統計的に有意であるとみなす。
【0047】
(結果)
図2に示すように、NHEKにUVBを照射した場合、
図1の結果と同様に、メラノソームの取り込み量が増加する。したがって、UVBを照射することにより、分泌されたIL-1αなどが起因して、線維芽細胞を介してケラチノサイトでのメラノソームの取り込みが増加していると考えられる。
【0048】
一方で、オオヤマザクラのエキスを添加した場合、UVBの照射の有無に関わらず、オオヤマザクラのエキスの添加量に比例してメラノソームの取り込み量が減少した。このことから、オオヤマザクラのエキスは、線維芽細胞を介したケラチノサイトでのメラノソームの取り込みを抑制することができるため、表皮での美白効果を有する。
【0049】
<2:UVAを照射した線維芽細胞に対するオオヤマザクラのエキスの効果について>
次に、肌の奥の真皮まで届く紫外線A波(UVA)が照射された線維芽細胞に対するオオヤマザクラのエキスの効果について確認した。
【0050】
<2.1:線維芽細胞における活性酸素の減少効果について>
線維芽細胞にUVAを照射した場合において、線維芽細胞に生じる活性酸素に対するオオヤマザクラのエキスの効果について確認した。
【0051】
(実験方法)
NHDF(2.0×104細胞/ウェル)を、5%FBSを含むDMEMの96ウェルプレートに播種した。一晩培養後、培地をHBSS(+)に交換し、BLB光源(東芝)を用いて、2J/cm2又は4J/cm2のUVAに曝露した。なお、照射エネルギーはUVX放射計(UVP、Upland)を用いて測定した。UVA曝露した後、NHDFを培養している培地に所定の濃度のオオヤマザクラのエキスを添加して24時間培養した。
【0052】
NHDFを培養している培地に添加したオオヤマザクラのエキスの濃度は、0mg/ml(添加なし),0.125mg/ml,0.250mg/ml,0.500mg/ml,1.000mg/ml,2.000mg/mlである。
【0053】
その後、培養したNHDFにH2DCFDAを30分間取り込ませた後、HBSS(+)で洗浄し、0.5%TritonX100を含むPBSで調製した細胞溶解物の蛍光強度(FI)をマイクロプレートリーダー(Spark 10M、TECAN)(Ex;485nm、Em;530nm)を用いて測定した。なお、各溶解物中のタンパク質含量は、BCAタンパク質アッセイキットを用いて測定した。細胞内活性酸素種(ROS)のレベルはFI/μg proteinとして表される。
【0054】
それぞれの測定結果は、UVAを照射していない、かつ、IL-1αを添加しない場合のNHDFのFI/μg proteinを100%とし、オオヤマザクラのエキスの各濃度(横軸)に対するFI/μg proteinの値(縦軸)として、
図3に示す。
なお、データは平均値±標準偏差で表す。統計学的有意性はスチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満であれば、統計的に有意であるとみなす。
【0055】
(結果)
図3に示すように、UVAを照射することにより、NHDFにおける活性酸素の量は大幅に増加した。具体的には、UVAを照射したNHDF内の活性酸素は、UVAを照射していない場合のおよそ1.5倍以上となった。
【0056】
一方で、オオヤマザクラのエキスを添加した場合、UVAの照射の有無に関わらず、NHDF内での活性酸素量が減少した。より具体的には、オオヤマザクラエキスの濃度が0.500mg/mlまでは、濃度にほぼ比例して活性酸素量が減少した。このことから、オオヤマザクラのエキスはNHDF内での活性酸素量を減少させることができる。したがって、活性酸素の増加は細胞の老化を促進することは従前より知られていることから、オオヤマザクラのエキスは線維芽細胞の老化を抑制する効果を有する。
【0057】
<2.2:PGE2の産生抑制効果について>
次に、線維芽細胞にUVAが照射した場合に、色素細胞に作用してケラチノサイトへメラノソームの輸送を促進するPGE2が産出することが知られている。このPGE2の産出量に対するオオヤマザクラのエキスの効果について確認した。
【0058】
(実験方法)
NHDF(2.0×104細胞/ウェル)を、5%FBSを含むDMEMの96ウェルプレートに播種した。一晩培養後、培地をHBSS(+)に交換し、BLB光源を用いて、1J/cm2でUVAに曝露した。なお、照射エネルギーはUVX放射計を用いて測定した。UVA曝露した後、NHDFを培養している培地に所定の濃度のオオヤマザクラのエキスを添加して24時間培養した。NHDFを培養している培地に添加したオオヤマザクラのエキスの濃度は、0mg/ml(添加なし),0.5mg/ml,1.0mg/ml,2.0mg/mlである。
【0059】
次に、このようにNHDFを培養した培地から上清を採取し、酵素免疫測定法(ELISA)キット(PGE2;ケイマン・ケイマン・ケイミングデール)を用いてPGE2を、基準となるタンパク質の質量(μg)当たりの質量(ng)として定量した。なお、各溶解物中のタンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキットを用いて測定した。それぞれの測定結果は、各濃度のオオヤマザクラのエキス(横軸)に対するPGE2(ng/μg protein)(縦軸)として
図4に示す。
なお、データは平均値±標準偏差で表す。統計学的有意性はスチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満であれば、統計的に有意であるとみなす。
【0060】
(結果)
図4に示すように、UVAを照射することにより、NHDFが産生するPGE2の量が大幅に増加した。これに対して、オオヤマザクラのエキスを添加した場合、UVAの照射の有無に関わらず、NHDF内でのPGE2の産生量が減少した。特に、UVAを照射した場合のPGE2の産生量は、オオヤマザクラエキスを添加することにより、大幅に減少させることができた。このことから、オオヤマザクラのエキスは、線維芽細胞におけるPGE2の産生を抑制でき、線維芽細胞を介したケラチノサイトにおけるメラノソームの輸送を抑制できる。また、オオヤマザクラエキスにより、UVAを照射された場合であっても、PGE2の産生量をUVAが照射されていない状態と同程度まで減少させることができる。
【0061】
<2.3:メラノソームの取り込み抑制効果について>
線維芽細胞にUVAが照射した場合に、ケラチノサイトにおけるメラノソームの取り込みに対するオオヤマザクラのエキスの効果について確認した。
【0062】
(実験方法)
NHDF(2.0×104細胞/ウェル)を、5%FBSを含むDMEMの96ウェルプレートに播種した。一晩培養後、培地をHBSS(+)に交換し、BLB光源を用いて、1J/cm2でUVAに曝露した。なお、照射エネルギーはUVX放射計を用いて測定した。UVA曝露した後、NHDFを培養している培地にオオヤマザクラのエキスを所定の濃度添加し、24時間培養した。NHDFを培養している培地に添加したオオヤマザクラのエキスの濃度は、0mg/ml(添加なし),0.5mg/ml,1.0mg/ml,2.0mg/mlである。
【0063】
このようにNHDFを培養した培地から上清(F-CM)を採取し、HuMedia-KG2中の2.0×10
4細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種したNHEKに、擬メラノソームである赤色蛍光ビーズ(1:500希釈)の混合物を、NHDFを培養した培地(F-CM)ともに添加して6時間培養し、上述の方法と同じ方法で蛍光強度(FI)を測定した。それぞれの測定結果は、UVBを照射していないNHEKのFIを100%とした場合における、オオヤマザクラのエキスの各濃度(横軸)に対するFI値(縦軸)として、
図5に示す。
なお、データは平均値±標準偏差で表す。統計学的有意性はスチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満であれば、統計的に有意であるとみなす。
【0064】
(結果)
図5に示すように、NHDFにUVAを照射することにより、NHEKにおけるメラノソームの取り込みが促進された。これに対して、オオヤマザクラのエキスを添加した場合、UVAの照射の有無に関わらず、NHEKにおけるメラノソームの取り込み量が減少した。また、オオヤマザクラのエキスを添加することにより、NHEKにおけるメラノソームの取り込み量は、UVAを照射していない状態とほぼ変わりがない程度まで、メラノソームの取り込みを抑制できた。このことから、オオヤマザクラのエキスは、UVAが照射された線維芽細胞を介したケラチノサイトにおけるメラノソームの取り込みを抑制できることが分かった。したがって、オオヤマザクラのエキスにより、メラノソームによる色素沈着を抑制することができる。
【0065】
<2.4:メラノサイトにおけるチロシナーゼの産生抑制効について>
線維芽細胞にUVAが照射した場合に、メラノサイトにおけるチロシナーゼの産出に対するオオヤマザクラのエキスの効果について確認した。
【0066】
(実験方法)
NHDF(2.0×104細胞/ウェル)を、5%FBSを含むDMEMの96ウェルプレートに播種した。一晩培養後、培地をHBSS(+)に交換し、BLB光源を用いて、2J/cm2でUVAに曝露した。なお、照射エネルギーはUVX放射計を用いて測定した。UVA曝露した後、NHDFを培養している培地にオオヤマザクラのエキスを所定の濃度添加し、24時間培養した。NHDFを培養している培地に添加したオオヤマザクラのエキスの濃度は、0mg/ml(添加なし),0.125mg/ml,0.250mg/ml,0.500mg/ml,1.000mg/ml,2.000mg/mlである。
【0067】
このようにNHDFを培養した培地から上清を採取し、HMGS成長補助剤を添加したMedium254に播種したNHEKに、NHDFを培養した培地から採取した上清を添加し、48時間培養した。そして、NHEK溶解物を、0.1%Triton X-100(pH6.8)を有するリン酸緩衝液で調製し、各溶解物50μLを96ウェルプレートに入れ、リン酸緩衝液(pH6.8)中の0.025%DOPAと混合し、37℃で120分間インキュベートした後にマイクロプレートリーダー(Ab.405nm)を用いて吸光度を測定した。
【0068】
各溶解物のタンパク質含量は、BCAタンパク質アッセイキットを用いて測定した。チロシナーゼ活性はDOPA-メラニン/μg protein/hで表される。それぞれの測定結果は、UVAを照射していないNHDFに対するDOPA-メラニン/μg protein/hを100%とした場合における、オオヤマザクラのエキスの各濃度(横軸)に対するDOPA-メラニン/μg protein/h(縦軸)として
図6に示す。
なお、データは平均値±標準偏差で表す。統計学的有意性はスチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満であれば、統計的に有意であるとみなす。
【0069】
(結果)
図6に示すように、NHDFにUVA照射することにより、色素細胞におけるチロシナーゼの生合成が著しく促進されることが分かった。これに対して、NHDFを培養している培地にオオヤマザクラのエキスを添加した場合、UVAの照射の有無に関わらず、色素細胞におけるチロシナーゼの産生量が減少した。このことから、オオヤマザクラのエキスは、線維芽細胞を介したチロシナーゼの産生を抑制できるため、表皮においてメラニンの産生を抑制することができる。
【0070】
<3:老化させた線維芽細胞におけるオオヤマザクラのエキスの効果について>
次に、老化させた線維芽細胞に対するオオヤマザクラのエキスの効果について確認した。
<3.1:試料の作成方法>
NHDF(2.0×10
4細胞/ウェル)を、5%FBSを含むDMEMの96ウェルプレートに播種し、BLB光源を用いて、1J/cm
2のUVAを1日に4回、4日間照射した。その後、48時間培養した。NHDFの老化の確認は、細胞をPBSで洗浄し,fixing bufferで固定した後,X-Gal staining solutionにより18時間染色し、光学写真で確認した。
図7(a)は、UVAを照射せずに培養したNHDFの明視野の光学写真を示し、
図7(b)は、UVAを照射して培養したNHDFの明視野の光学写真を示す。
【0071】
図7に示すように、UVAを照射することにより、NHDFにおける染色されている箇所が、UVAを照射していないNHDFに比べて明確に増加しており、NHDFが老化していることが確認された。
【0072】
<3.2:活性酸素の減少効果について>
(実験方法)
上述の方法で老化させたNHDF、および、UVAを照射していないNHDFを、所定の濃度のオオヤマザクラのエキスを添加した、5%FBSを含むDMEMの96ウェルプレートに再度播種し、24時間培養した。なお、NHDFを培養している培地に添加したオオヤマザクラのエキスの濃度は、0mg/ml(添加なし),0.125mg/ml,0.250mg/ml,0.500mg/ml,1.000mg/ml,2.000mg/mlである。
【0073】
このように培養したNHDFをH
2DCFDAで30分間インキュベートした後、0.5%TritonX100を含むPBSで調製した細胞溶解物の蛍光強度(FI)を、マイクロプレートリーダー(Ex;485nm、Em;530nm)を用いて測定した。なお、各溶解物中のタンパク質含量は、BCAタンパク質アッセイキットを用いて測定した。細胞内活性酸素種(ROS)のレベルはFI/μg proteinとして表される。それぞれの測定結果は、UVAを照射していないNHDFのFI/μg proteinを100%とした場合における、オオヤマザクラのエキスの各濃度(横軸)に対するFI/μg proteinの値(縦軸)として、
図8に示す。
なお、データは平均値±標準偏差で表す。統計学的有意性はスチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満であれば、統計的に有意であるとみなす。
【0074】
(結果)
図8に示すように、UVAを照射することにより、NHDFにおける活性酸素の量は増加したが、オオヤマザクラのエキスを添加したNHDFでは、UVAの照射の有無に関わらず、NHDF内での活性酸素量が減少した。このため、オオヤマザクラのエキスにより老化したNHDFであっても活性酸素量を減少させることができ、NHDFのさらなる老化を抑制できる。
【0075】
<3.3:PGE2の産生量の減少効果について>
(実験方法)
上述のようにUVAを照射したNHDFおよびUVAを照射していないNHDFを培養した培地から上清を採取し、酵素免疫測定法(ELISA)キットを用いてPGE2を定量した。なお、各溶解物中のタンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキットを用いて測定した。それぞれの測定結果は、オオヤマザクラのエキスの各濃度(横軸)に対するPGE2値(縦軸)として、
図9に示す。
なお、データは平均値±標準偏差で表す。統計学的有意性はスチューデントのt検定を用いて解析した。P値が0.05未満であれば、統計的に有意であるとみなす。
【0076】
(結果)
図9に示すように、老化したNHDFではPGE2が大幅に産出されていた。これに対して、オオヤマザクラのエキスを添加した場合、UVAの照射の有無に関わらず、老化したNHDF内でのPGE2の産生量が減少した。このことから、オオヤマザクラのエキスは、老化した線維芽細胞におけるPGE2の産生を抑制することができ、老化した線維芽細胞を介したケラチノサイトにおけるメラノソームの輸送を抑制できる。