(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133734
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】液体塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 1/02 20060101AFI20220907BHJP
B27K 5/02 20060101ALI20220907BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20220907BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B05C1/02 102
B27K5/02 A
B05C9/12
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032597
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】松永 克彦
【テーマコード(参考)】
2B230
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
2B230AA07
2B230AA22
2B230BA01
2B230EB03
2B230EC10
4F040AA02
4F040AA20
4F040AB20
4F040AC01
4F040BA13
4F040CA17
4F040CB13
4F040DB22
4F040DB23
4F042AA02
4F042CC02
4F042CC07
4F042DA05
4F042DD02
4F042DD09
4F042DD18
4F042DD19
4F042DD22
(57)【要約】
【課題】不燃木材のような濡れ性が低い塗布媒体であっても、均一に液体を塗布することができるとともに、過剰な液体の塗布を抑制することができる液体塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布媒体Mの表面に対して液体を塗布する塗布ローラ10と、塗布ローラ10によって液体が塗布された塗布媒体Mの表面に所定の圧力で接触しながら、塗布媒体Mに対して相対的に移動して塗布媒体Mの表面を摺動し、かつ塗布ローラ10によって塗布媒体Mに塗布された液体の一部を吸収するスポンジローラ11とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布媒体の表面に対して液体を塗布する塗布部と、
前記塗布部によって液体が塗布された前記塗布媒体の表面に所定の圧力で接触しながら、前記塗布媒体に対して相対的に移動して前記塗布媒体の表面を摺動し、かつ前記塗布部によって前記塗布媒体に塗布された液体の一部を吸収する摺動部とを備えた液体塗布装置。
【請求項2】
前記塗布部が、前記塗布媒体に接触して前記塗布媒体に表面に対して前記液体を塗布するものであり、
前記摺動部が前記塗布媒体の表面を押圧する圧力が、前記塗布部が前記塗布媒体の表面を押圧する圧力よりも高い請求項1記載の液体塗布装置。
【請求項3】
前記摺動部を清掃する清掃部を備えた請求項1または2記載の液体塗布装置。
【請求項4】
前記清掃部が、前記摺動部に吸収された液体を回収しながら、前記摺動部を清掃する請求項3記載の液体塗布装置。
【請求項5】
前記摺動部が、前記塗布媒体に塗布された液体の一部を吸収するローラを有し、
前記清掃部が、前記ローラの回転によって、該ローラに吸収された液体を回収する請求項4記載の液体塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布媒体に液体を塗布する液体塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホウ素系(ホウ砂およびホウ酸など)やリン酸系(リン酸アンモニウムなど)等の不燃薬剤を木材に浸透注入して製造される不燃木材が提案されている。このような不燃木材は、たとえば建築部材として用いることによって火災を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-042671号公報
【特許文献2】特開2009-73117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したように不燃木材をたとえば建築部材として用いる場合、不燃木材に対してインクなどを用いて加飾できればその用途が広がり好ましい。
【0005】
しかしながら、不燃木材の原材料の木材には、水を通す役割を持つ管(導管)が存在する。不燃木材にもこの管は存在し、たとえば水性インクを用いて直接インクジェット印刷した場合、板状に加工された木材表面では、導管の内部が剥き出しになっているため、導管に沿って滲みが生じ、細線再現性が低下する。
【0006】
そこで、上述したような滲みを抑制するため、木材の表面に対して表面処理液を塗布して表面処理層を形成し、その表面処理層上にインクジェット印刷を行う方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、不燃木材は、木材の特徴である濡れ性が低下しており、たとえば特許文献1に記載の方法のようなスプレー噴射を用いて、表面処理液を不燃木材に塗布した場合、表面処理液が浸透せずに表面で弾かれてしまう。また、不燃木材は、接触角が高くなる傾向にあるため、不燃木材の表面に表面処理液を均一に塗布することも困難である。
【0008】
また、特許文献2では、木材の表面を摩擦ローラで圧接し、これにより木材の表面を瞬間的に高温および高圧にした後に、液体を散布することが提案されているが、このような散布による塗布でもスプレー噴射と同様の問題がある。
【0009】
一方、不燃木材の表面に表面処理液を均一に塗布するために、表面処理液の量を増やす方法も考えられるが、不燃木材の場合、過剰な表面処理液の塗布によって白華現象が生じることが分かっている。なお、白華現象については、後で詳述する。
【0010】
本発明は、不燃木材のような濡れ性が低い塗布媒体であっても、均一に液体を塗布することができるとともに、過剰な液体の塗布を抑制することができる液体塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液体塗布装置は、塗布媒体の表面に対して液体を塗布する塗布部と、塗布部によって液体が塗布された塗布媒体の表面に所定の圧力で接触しながら、塗布媒体に対して相対的に移動して塗布媒体の表面を摺動し、かつ塗布部によって塗布媒体に塗布された液体の一部を吸収する摺動部とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体塗布装置によれば、塗布媒体の表面に対して液体を塗布する塗布部と、塗布部によって液体が塗布された塗布媒体の表面に所定の圧力で接触しながら、塗布媒体に対して相対的に移動して塗布媒体の表面を摺動し、かつ塗布部によって塗布媒体に塗布された液体の一部を吸収する摺動部とを備えるようにしたので、不燃木材のような濡れ性が低い塗布媒体であっても、均一に液体を塗布することができるとともに、過剰な液体の塗布を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の液体塗布装置の一実施形態の概略構成を示す図
【
図2】
図1に示す液体塗布装置を矢印A方向から見た図
【
図5】
図1に示す液体塗布装置を用いたインクジェット印刷装置の概略構成を示す外観図
【
図7】インクジェット印刷装置の制御系の構成を示すブロック図
【
図8】
図5に示すインクジェット印刷装置の動作を説明するための説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の液体塗布装置の一実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態の液体塗布装置1の概略構成を示す図である。また、
図2は、
図1に示す液体塗布装置1を矢印A方向から見た側面図である。
【0015】
本実施形態の液体塗布装置1は、
図1および
図2に示すように、塗布ローラ10と、スポンジローラ11と、清掃部12とを備えている。なお、本実施形態においては、塗布ローラ10が、本発明の塗布部に相当し、スポンジローラ11が、本発明の摺動部に相当する。
【0016】
塗布ローラ10は、塗布媒体Mの表面に対して液体を塗布する。本実施形態においては、塗布媒体Mとして不燃木材を用い、塗布する液体として、不燃木材に対する印刷前に塗布される表面処理液を用いる。不燃木材と表面処理液については、後で詳述する。なお、本発明においては、塗布媒体Mと塗布媒体に塗布される液体としては、不燃木材および表面処理液に限定されない。
【0017】
塗布ローラ10は、
図1に示すように、塗布媒体Mの幅方向に延設されるローラであり、塗布媒体Mの幅方向に直交する方向に移動するものである。塗布媒体Mの表面に直接または塗布ローラ10に対して、図示省略した液体供給部から塗布する液体が供給される。そして、塗布ローラ10は、塗布媒体Mに接触し、塗布媒体Mとの摩擦力によって回転しながら
図2に示す矢印Y方向に移動する。塗布ローラ10の回転によって塗布媒体M上に液体が塗布される。なお、この際、塗布媒体M上に塗布される液体の量は、塗布媒体Mの表面に一様に塗布可能な十分な量である。
【0018】
スポンジローラ11は、液体が塗布された塗布媒体Mの表面に所定の圧力で接触しながら、塗布媒体Mに対して相対的に移動してその表面を摺動する。具体的には、スポンジローラは、塗布ローラ10と同様に、塗布媒体Mの幅方向に延設されるローラであり、塗布媒体Mの幅方向に直交する方向に移動するものである。ただし、スポンジローラ11は、塗布媒体Mの表面に接触するものであるが、塗布ローラ10とは異なり、塗布媒体Mとの摩擦力によって回転しないように構成されている。スポンジローラ11は、上述したように回転しない状態で
図2に示す矢印Y方向に移動することによって、塗布媒体Mの表面を摺動するものである。すなわち、スポンジローラ11は、スポンジローラ11の表面の同じ範囲を塗布媒体Mの表面に擦り付けながら矢印Y方向に移動する。なお、スポンジローラ11は、後述する清掃部12による清掃動作の際には回転するが、清掃動作については、後で詳述する。
【0019】
そして、スポンジローラ11は、スポンジをローラ状に形成したスポンジローラ本体11aと、スポンジローラ本体11aを上方から支持する支持部材11bと、支持部材11bを上方から押圧するバネ部11cとを備えている。
【0020】
支持部材11bは、スポンジローラ本体11aの回転軸の両端に接続されるものである。支持部材11bは、上述したようにスポンジローラ本体11aを塗布媒体Mの表面に摺動させる場合には、スポンジローラ本体11aが回転しないように支持し、清掃部12による清掃動作を行う際には回転可能に支持する。
【0021】
バネ部11cは、支持部材11bを下方に付勢するバネを複数有し、このバネによる支持部材11bへの付勢によって、スポンジローラ本体11aの回転軸に対して上方から圧力がかかる。そして、これによりスポンジローラ本体11aのスポンジ表面が、塗布媒体Mに対して所定の圧力で押し付けられる。
【0022】
スポンジローラ11が、所定の圧力で押し付けられた状態で塗布媒体Mの表面上を摺動することによって、塗布ローラ10によって塗布された液体を塗布媒体Mの表面に押し付けることができ、これにより、不燃木材のような撥水性が高い塗布媒体Mに対しても、液体を均一に塗布することができる。
【0023】
スポンジローラ本体11aのスポンジ表面が、塗布媒体Mの表面を押圧する圧力は、塗布ローラ10が塗布媒体Mの表面を押圧する圧力よりも高くすることが好ましい。これにより、スポンジローラ11を十分な圧力で塗布媒体Mに押し付けることができ、塗布媒体Mに塗布された液体を塗布媒体Mに押し込むことができる。
【0024】
また、スポンジローラ11は、塗布ローラ10によって塗布媒体Mに塗布された液体のうちの一部を吸収することができるので、過剰に塗布された液体を吸収することができる。たとえば塗布媒体Mが不燃木材である場合には、過剰に塗布された液体(表面処理液)を吸収することによって、白華現象を抑制することができる。
【0025】
ここで、白華現象について説明する。不燃木材は、ホウ素系(たとえばホウ砂およびホウ酸など)やリン酸系(たとえばリン酸アンモニウムなど)などの不燃薬剤を木材に浸透注入して製造される部材である。
【0026】
そして、上述したようにホウ素系またはリン酸系の不燃薬剤で不燃処理して不燃木材を製造する際、助剤が加えられるが、その助剤として加えた薬剤が高い吸湿性を有するため、表面処理液を塗布した結果、析出した結晶で表面が白くなる白華現象を起こすことが、出願人の実験により分かっている。助剤は、ホウ素またはリン酸系の水への溶解度を高め、不燃木材への不燃薬剤の浸透を促進させるために用いられる薬剤であり、たとえばリン酸2アンモニウムなどのアンモニウム塩が用いられる。このような助剤は水分子との親和性が高く、表面処理液に含まれる水と反応するため、上述した白華現象が発生する。
【0027】
そして、白華現象が生じたままの不燃木材に対して印刷を施したのでは、析出した結晶によって印刷画像の品質が低下してしまう。また、白華現象によって析出した結晶は、不燃木材から容易に取り除くことができず、無理に取り除いた場合、表面に跡が残り加飾物品の品質を低下させてしまう。
【0028】
一方、白華現象の発生の有無は、不燃木材に塗布される表面処理液の量に依存することが、出願人の実験によって分かっている。したがって、不燃木材に塗布される表面処理液の量は、白華現象を生じない量に調整することが好ましい。
【0029】
本実施形態のスポンジローラ11によれば、上述したように過剰に塗布された表面処理液を吸収することができるので、白華現象を抑制することができる。
【0030】
なお、スポンジローラ11が、不燃木材に対して押圧される際の圧力条件、並びに後述する清掃部12の回収ローラ12aがスポンジローラ11に押圧される際の圧力条件およびスポンジローラ11から表面処理液を回収する量(スポンジローラ11の乾燥状態)などの条件については、不燃木材が白華現象を起こすような水分量が、不燃木材に吸収されないような条件に設定される。
【0031】
たとえばスポンジローラ11が不燃木材に対して押圧される際の圧力は5kPa以上であることが好ましい。そして、不燃木材への表面処理液の量は50g/m2以下であることが好ましい。表面処理液の量とは、不燃木材に対して表面処理液を塗布した直後に計測した量である。また、スポンジローラ11の吸収性は、0.44g/cm3以上であることが好ましい。スポンジローラ11の吸水性とは、スポンジローラが吸収して内部に留めることができる表面処理液の単位体積当たりの量を示す指標である。
【0032】
次に、清掃部12は、スポンジローラ11に吸収された液体を回収しながら、スポンジローラ本体11aの表面を清掃する。本実施形態では、上述したようにスポンジローラ11が塗布媒体Mの表面を摺動するが、この際、塗布媒体Mの表面の汚れや析出物がスポンジローラ本体11aの表面を汚染し、スポンジローラ本体11aの吸収性を低下させたり、二次汚染を発生したりする。そこで、本実施形態では、上述したように清掃部12によってスポンジローラ本体11aの表面を清掃する。これにより、スポンジローラ本体11aの吸収性の低下や二次汚染を防止することができる。
【0033】
さらに、清掃部12は、上述したようにスポンジローラ本体11aに吸収された液体を回収する。これにより、清掃部12は、スポンジローラ本体11aの表面の汚れを取り除きながら、スポンジローラ本体11aの吸収性を復活させることができる。
【0034】
なお、清掃部12がスポンジローラ11に当接する部分は、スポンジローラ11の中心軸線を通る鉛直平面に対して、塗布ローラ10(塗布部)とは反対側にあることが好ましく、更に、スポンジローラ11の中心軸線を通る水平面に対して上側にあることが好ましい。清掃部12がスポンジローラ11に当接する部分を上記のような位置にすることで、スポンジローラ本体11aに吸収された液体が液だれすることなく容易に回収することができる。
【0035】
図3は、清掃部12の構成の一例を示す図である。
図3に示す清掃部12は、スポンジローラ本体11aに接触する回収ローラ12aと、液体受け部12bとを備えている。
【0036】
回収ローラ12aは、スポンジローラ本体11aに沿って延設されたローラである。回収ローラ12aは、スポンジローラ本体11aに接触することによって、スポンジローラ本体11aの表面に付着した汚れおよびスポンジローラ本体11aに吸収された液体の一部を回収ローラ12aの表面に付着させる。これにより、回収ローラ12aは、スポンジローラ本体11aの表面に付着した汚れおよびスポンジローラ本体11aの吸収された液体の一部を回収する。
【0037】
回収ローラ12aは、スポンジローラ本体11aの回転方向(
図3に示す矢印B方向)とは逆方向(
図3に示す矢印C方向)に回転し、これにより、回収ローラ12aの表面に付着した汚れおよび液体Lは、自重または絞り、もしくはそれらの複合によって下方に落下する。
【0038】
液体受け部12bは、上述したように回収ローラ12aから落下した汚れおよび液体Lを受けて貯留する。
図3において斜線で示す部分が、液体受け部12bに貯留された液体Lである。
【0039】
なお、清掃部12の構成は、
図3に示す構成に限らない。
図4は、清掃部12のその他の構成を示す図である。
図4に示す清掃部12は、
図3に示す回収ローラ12aの代わりに、ヘラ部12cを備えている。
【0040】
ヘラ部12cは、スポンジローラ本体11aに沿って延設された矩形状の板部材を備えている。ヘラ部12cは、矩形状の板部材の長辺を有する一端部が、スポンジローラ本体11aの表面に接触するように構成される。
【0041】
ヘラ部12cとスポンジローラ本体11aとの距離は、ヘラ部12cの板部材の一端部がスポンジローラ本体11aの表面を摺動することによって、スポンジローラ本体11aに吸収された液体Lの一部が板部材によって掻き出される距離に設定されている。すなわち、清掃部12によるスポンジローラ11の清掃動作の際には、スポンジローラ本体11aが、
図4に示す矢印B方向に回転し、この回転によってヘラ部12cによってスポンジローラ本体11aの表面に付着した汚れおよび表面近傍に吸収された液体Lが掻き出される。スポンジローラ本体11aから掻き出された汚れおよび液体Lは、自重によって下方に落下し、液体受け部12bによって受け付けられて貯留される。
図4において斜線で示す部分が、液体受け部12bに貯留された液体Lである
【0042】
次に、本実施形態の液体塗布装置1の動作の一例について説明する。
【0043】
まず、液体塗布装置1が塗布媒体Mの端部に設置される。そして、液体塗布装置1が、
図2に示す矢印Y方向への移動を開始するとともに、塗布ローラ10に対して液体が供給される。
【0044】
そして、塗布ローラ10とスポンジローラ11との両方が一定の距離を維持しながら、矢印Y方向に移動する。これにより、まず塗布ローラ10によって塗布媒体Mの表面に液体が塗布され、その後、液体が塗布された塗布媒体Mの表面をスポンジローラ11が摺動することによって、塗布ローラ10によって塗布された液体が、スポンジローラ11によって塗布媒体Mの表面に押し付けられる。これにより、上述したように塗布媒体Mの表面に液体を均一に塗布することができる。また、スポンジローラ11によって過剰な液体を吸収することができる。
【0045】
そして、液体塗布装置1が塗布媒体Mのもう一方の端部まで移動した際には、その塗布媒体Mへの液体の塗布動作を終了する。そして、液体塗布装置1は、塗布媒体Mから離間する位置まで上方に移動した後、再び最初の位置まで戻る。
【0046】
次いで、液体塗布装置1は、最初の位置まで戻った際には、スポンジローラ本体11aを
図3に示す矢印B方向に回転させるとともに、清掃部12の回収ローラ12aを
図3に示す矢印C方向に回転させることによって、清掃部12による清掃動作を行う。
【0047】
この清掃動作によって、上述したように回収ローラ12aによって、スポンジローラ本体11aの表面に付着した汚れおよび吸収された液体の一部が回収される。なお、清掃動作におけるスポンジローラ本体11aの回転量については、少なくとも清掃部12によって汚れおよび液体が回収されたスポンジローラ本体11aの範囲が、次の塗布媒体Mとの接触位置まで移動する回転量に設定される。
図2では、清掃動作において、スポンジローラ本体11aが回転した後の状態を示しており、スポンジローラ本体11aの白い部分が、清掃動作によって液体の一部が回収された範囲を示し、斜線部分が、回収ローラ12aによって液体が回収されずに残った範囲を示している。このように、スポンジローラ本体11aの回転によって、スポンジローラ本体11aに吸収された液体の一部を回収することにより、簡易な構成および制御によって、スポンジローラ本体11aの吸収性を復活させることができる。また、スポンジローラ本体11aの回転だけによって、スポンジローラ本体11aを繰り返し使用することが可能である。
【0048】
なお、上記実施形態の液体塗布装置1においては、塗布ローラ10によって塗布媒体Mの表面に対して液体を塗布するようにしたが、接触式の塗布ローラ10に限らず、非接触式のスプレー機構などによって塗布媒体Mの表面に対して液体を吹き付けることによって塗布するように構成してもよい。
【0049】
次に、上記実施形態の液体塗布装置1を備えたインクジェット印刷装置20について説明する。
図5は、上記実施形態の液体塗布装置1を備えたインクジェット印刷装置20の構成図である。以下に示す実施形態の説明では、
図5に矢印で示す上下左右前後を、インクジェット印刷装置20の上下左右前後方向とする。
【0050】
インクジェット印刷装置20は、
図5に示すように、シャトルベースユニット2と、フラットベッドユニット3と、シャトルユニット4と、前処理ユニット6とを備えている。そして、前処理ユニット6内に、上記実施形態の液体塗布装置1が収容されている。
【0051】
シャトルベースユニット2は、シャトルユニット4および前処理ユニット6を支持するとともに、前後方向(副走査方向)にシャトルユニット4および前処理ユニット6を移動させるものである。シャトルベースユニット2は、具体的には、架台部31と、副走査駆動ガイド33A,33Bと、副走査駆動モータ32(
図7参照)とを備えている。
【0052】
架台部31は、矩形枠状に形成されたものであり、シャトルユニット4および前処理ユニット6を支持するものである。架台部31の左右の枠上には、前後方向に延びる副走査駆動ガイド33A,33Bがそれぞれ形成されている。副走査駆動ガイド33A,33Bは、シャトルユニット4および前処理ユニット6を前後方向に移動するようにガイドするものである。副走査駆動モータ32は、シャトルユニット4および前処理ユニット6を前後方向に移動させるものである。
【0053】
フラットベッドユニット3は、上述した塗布媒体Mを支持するものである。フラットベッドユニット3は、シャトルベースユニット2の架台部31の内側に形成された直方体形状の凹部内に配置されている。フラットベッドユニット3は、塗布媒体Mが載置される水平面である媒体載置面3aを有している。フラットベッドユニット3は、図示省略した油圧駆動機構などを有し、これにより媒体載置面3aの高さを調整できるように構成されている。
【0054】
シャトルユニット4は、塗布媒体Mに対して印刷処理を施すものである。
図6は、シャトルユニット4の概略構成を示す図である。
【0055】
シャトルユニット4は、
図6に示すように、筐体41と、主走査駆動ガイド42と、主走査駆動モータ43(
図7参照)と、ヘッド昇降ガイド44と、ヘッド昇降モータ45(
図7参照)と、ヘッドユニット46とを備えている。
【0056】
筐体41は、ヘッドユニット46などの各部を収納するものである。筐体41は、フラットベッドユニット3を左右方向に跨ぐような門型に形成されている。筐体41は、シャトルベースユニット2の架台部31に支持され、副走査駆動ガイド33A,33Bに沿って移動可能に構成されている。
【0057】
主走査駆動ガイド42は、ヘッドユニット46を左右方向(主走査方向)に移動するようにガイドするものである。主走査駆動ガイド42は、左右方向に延びる長尺状の部材によって形成されている。ヘッドユニット46は、主走査駆動モータ43によって左右方向に移動する。
【0058】
ヘッド昇降ガイド44は、ヘッドユニット46を上下方向に移動するようガイドするものである。ヘッド昇降ガイド44は、上下方向に細長い形状の部材から形成されている。ヘッド昇降ガイド44は、ヘッドユニット46とともに主走査駆動ガイド42に沿って左右方向に移動可能に構成されている。ヘッドユニット46は、ヘッド昇降モータ45によって上下方向に昇降する。
【0059】
ヘッドユニット46は、上述したように主走査駆動ガイド42に沿って左右方向に移動しながら、基材にインクを吐出することによって印刷処理を施すものである。ヘッドユニット46は、
図6に示すように、4つのインクジェットヘッド51を有している。
【0060】
4つのインクジェットヘッド51は、左右方向に並列して配置されている。4つのインクジェットヘッド51は、それぞれ異なる色(たとえばシアン、ブラック、マゼンダおよびイエロー)のインクを吐出するものである。4つのインクジェットヘッド51には、それぞれインクを供給するインク供給管53が接続されている。
【0061】
図5に戻り、前処理ユニット6は、塗布媒体Mに対して表面処理液を塗布して前処理を行うものである。上述したように、前処理ユニット6内に、上記実施形態の液体塗布装置1が収容されており、インクジェット印刷装置20における左右方向が、塗布ローラ10およびスポンジローラ11などが延設される方向となるように、液体塗布装置1の各部が配置されている。また、塗布ローラ10がインクジェット印刷装置20の前側に、スポンジローラ11がインクジェット印刷装置20の後ろ側に配置される。
【0062】
そして、前処理ユニット6は、シャトルベースユニット2の架台部31に支持され、副走査駆動ガイド33A,33Bに沿って移動可能に構成されている。前処理ユニット6は、副走査方向(Y方向)への移動によって、その下方の塗布媒体M上の所定範囲に表面処理液を順次塗布するものである。
【0063】
図7は、本実施形態のインクジェット印刷装置20の制御系の構成を示すブロック図である。インクジェット印刷装置20は、印刷制御装置15からの制御信号に応じて、
図7に示す制御対象の各部を動作させる。
【0064】
印刷制御装置15とインクジェット印刷装置20とは、LAN(Local Area Network)またはインターネット回線などの通信回線によって接続されており、互いに通信可能に構成されている。
【0065】
印刷制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリおよびハードディスクなどを備えたコンピュータから構成される。印刷制御装置15は、入力された印刷ジョブなどに基づいて、半導体メモリまたはハードディスクなどの記憶媒体に予め記憶された印刷制御プログラムを実行し、かつ電気回路を動作させることによって
図7に示す各部を制御する。
【0066】
次に、本実施形態のインクジェット印刷装置20の動作について、
図8A~
図8Dを参照しながら説明する。なお、
図8A~
図8Dは、
図5に示すインクジェット印刷装置20を左側から見た図である。
【0067】
まず、
図8Aに示すように、フラットベッドユニット3上に塗布媒体Mが載置される。この際、シャトルユニット4および前処理ユニット6は、
図8Aに示すように、最も前側の初期位置に配置されている。そして、印刷制御装置15は、副走査駆動モータ32を駆動し、これによりシャトルユニット4および前処理ユニット6が、
図8Aに示す初期位置から後方向(
図8Aに示す矢印方向)に移動を開始し、
図8Bに示す印刷開始位置まで移動する。
【0068】
次に、印刷制御装置15は、
図8Cに示すように、前処理ユニット6を前方向(
図8Cに示す矢印方向)に移動させるとともに、前処理ユニット6内の液体塗布装置1を動作させ、塗布媒体Mに表面処理液を塗布して前処理を行う。
【0069】
そして、前処理ユニット6によって塗布媒体Mに表面処理液が塗布された後、塗布媒体Mは一旦、図示省略した乾燥装置に搬送され、乾燥処理が行われる。乾燥装置における乾燥処理が終了した後、塗布媒体Mは、インクジェット印刷装置20に再び設置され、印刷制御装置15は、副走査駆動モータ32を制御して、
図8Dに示すようにシャトルユニット4を前方向(
図8Dに示す矢印方向)に移動させながら印刷処理を行う。
【0070】
具体的には、印刷制御装置15は、まず、シャトルユニット4が印刷開始位置に配置された状態において、主走査駆動モータ43を制御してヘッドユニット46を主走査方向に移動させる。そして、ヘッドユニット46のインクジェットヘッド51が、印刷画像に基づく制御信号に応じてインクを吐出させることによって、1パス分の印刷が行われる。
【0071】
1パス分の印刷が終了した後、印刷制御装置15は、副走査駆動モータ32を制御してシャトルユニット4を次のパスの印刷位置まで前方向に移動させる。印刷制御装置15は、この1パス分の印刷とシャトルユニット4の移動とを交互に繰り返すことにより、塗布媒体Mに印刷画像を形成する。
【0072】
そして、1枚分の印刷処理が終了した時点において、シャトルユニット4および前処理ユニット6は、
図8Dに示すように、再び初期位置に配置された状態となる。
【0073】
次いで、前処理ユニット6が、初期位置に配置された状態において、前処理ユニット6内の清掃部12によって上述した清掃動作が行われる。
【0074】
なお、上記実施形態のインクジェット印刷装置20においては、乾燥装置を別の構成としたが、前処理ユニット6のように、インクジェット印刷装置20に乾燥ユニットを設け、乾燥ユニットで基材を走査することによって乾燥処理を行うようにしてもよい。
【0075】
次に、上記実施形態の液体塗布装置1において用いられた表面処理液について詳細に説明する。
【0076】
表面処理液は、少なくとも水、色材定着成分および表面張力調整剤を含むことが好ましい。また、上記色材定着成分は、カチオン性の水分散性樹脂であることが好ましく、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm以上10μm以下の大粒子を含むことが好ましい。さらに、動的光散乱法により測定されるメジアン径が1μm未満の小粒子を含むことがより好ましい。
【0077】
本実施形態の表面処理液は、特には、UV硬化型ではないインク(たとえば水性インク)を用いて印刷する前の表面処理液として用いることが好ましい。印刷前に本実施形態の表面処理液を予め用い、その後にインクジェットインクによる印刷画像を形成することにより、インクの濡れ広がりを制御し、これにより滲みにくく細線再現性が良好で、かつ発色性の良い印刷画像を形成することができる。
【0078】
カチオン性の水分散性樹脂粒子は、樹脂粒子の表面がプラスに帯電した、正電荷を帯びた樹脂粒子であり、水に溶解することなく粒子状に分散して、水中油(O/W)型のエマルションを形成できるものである。自己乳化型樹脂のように、樹脂が有するカチオン性の官能基が粒子表面に存在するものでもよいし、樹脂粒子表面にカチオン性の分散剤を付着させる等の表面処理されたものでもよい。
【0079】
カチオン性の官能基は、代表的には第1級、第2級又は第3級アミノ基、ピリジン基、イミダゾール基、ベンズイミダゾール基、トリアゾール基、ベンゾトリアゾール基、ピラゾール基、及びベンゾピラゾール基等であり、カチオン性の分散剤は、1級、2級、3級又は4級アミノ基含有アクリルポリマー、ポリエチレンイミン、カチオン性ポリビニルアルコール樹脂、及びカチオン性水溶性多分岐ポリエステルアミド樹脂等である。
【0080】
樹脂粒子の表面電荷量は、粒子電荷計で評価することができる。試料を中和するのに必要なアニオン量またはカチオン量を測定することで、表面電荷量を算出することができる。具体的には、表面電荷量が+300μeq/g以上であることが好ましい。粒子電荷計としては、日本ルフト株式会社製コロイド粒子電荷量計Model CAS等を用いることができる。
【0081】
水分散性樹脂としては、透明の塗膜を形成する樹脂を用いることが好ましい。また、処理液の製造に際しては、水中油型の樹脂エマルションとして配合することができる。
【0082】
代表的には、エチレン-塩化ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン-無水マレイン酸共重合体樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル-(メタ)アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合体樹脂、及びそれらの樹脂エマルション等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂とメタクリル樹脂の双方を示す。これらの樹脂は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いても良い。後述するが
、これらの樹脂が複合された樹脂エマルションでも良い。上記のとおり、これらの樹脂にカチオン性の官能基を導入するか、又は、カチオン性分散剤等で表面処理して、プラスの表面電荷を与えることができる。
【0083】
樹脂粒子の粒径は、特に限定されず、複数種の異なる粒径の粒子を任意に組み合わせて用いることができる。ただし、不燃木材の表面に留まりやすいという観点から、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm以上のサイズを持つ粒子を含むことが好ましい。また、樹脂粒子の平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、これにより不燃木材の木材としての特性を生かしつつ、不燃木材表面の凹部及び空隙にも浸透することができる。
【0084】
すなわち、不燃木材では、樹脂粒子のメジアン径(平均粒径)を1μm以上10μm以下とすることによって、不燃木材の上述した管の大きさに追随して、効率よく表面処理層を形成することができる。特に、木材では、針葉樹と広葉樹の分類によって管の大きさ(平均直径)が異なる。たとえば広葉樹の環孔材であるタモ材の平均直径は約260μm、散孔材であるメープル材は約60μmである。一方、針葉樹であるヒノキ材は平均直径が約10μmである。このように、木材は樹種によってその空隙の大きさが異なり、さらには天然物であるため基材の空隙の分布が全く同じ状態のものは存在しないのであるが、大粒子の平均粒径を上記とすることにより、木材のような空隙が不揃いな基材に対しても、基材の本来の機能(木材では吸湿性)を低下させることなく、表面処理層を形成することができる。
【0085】
さらに、表面処理液は、動的光散乱法により測定されるメジアン径(平均粒径)が1μm未満の小粒子も併せて含むことが好ましい。これにより、上記の画像品位に加えて、インク層の耐水性もさらに向上させることができる。
【0086】
大粒子と小粒子を用いる場合の両者の比率は、小粒子が大粒子に対して少なすぎると定着性が不十分であり、多すぎると処理層が皮膜化し木材の吸湿性を妨げる恐れがあるため、重量比で大粒子1に対し小粒子が0.1~1.5程度であることが好ましい。なお、本明細書において「重量」と「質量」は同じ意味で用いられる。
【0087】
樹脂粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定した粒度分布における体積基準の粒径値(メジアン径)である。動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、ナノ粒子解析装置nano Partica SZ-100(株式会社堀場製作所)等を用い、水分散性樹脂の濃度が0.5質量%となるように水で希釈し、25℃で測定することができる。
【0088】
表面処理液中又は後述するインク中において、樹脂粒子は、独立した微粒子の状態で存在する場合と、独立した微粒子が集合した凝集体の状態で存在する場合とが考えられるが、動的光散乱法で測定されるメジアン径を「平均粒径」とする。
【0089】
なお、上記樹脂粒子の平均粒径は、表面処理液又はインクを調製する前の原料エマルション状態で測定することが、インクの場合であれば色材(顔料粒子)の影響を排除できることから好ましく、その測定値を本実施形態の平均粒径とすることができる。
【0090】
大粒子の平均粒径は、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。小粒子の平均粒径は、500nm以下であることがさらに好ましい。平均粒径の下限値は、特に限定はされないが、表面処理液の保存安定性の観点からは、5nm以上程度であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましい。
【0091】
さらに、大粒子と小粒子は、両者を混合して平均粒径を測定した場合に、その粒度分布において二つのピークが存在する、すなわち各々が異なるピーク値を有するものであることが好ましい。
【0092】
また、大粒子と小粒子は、平均粒径値の相違に加え、その他の相違点を有していてもよい。例えば、大粒子は、最低造膜温度(MFT)が70℃以上であることが好ましく、一方、小粒子は、MFTが70℃未満以下であることが好ましい。このMFTとは、エマルションがフィルム化(成膜)するために必要な温度であり、JIS K6828-2に従って測定することができる。ここで、70℃においても成膜しない水分散性樹脂は、MFTが70℃以上の水分散性樹脂に含まれるものとする。
【0093】
より好ましくは、大粒子のMFTは100℃以上であり、小粒子のMFTは50℃以下であり、特に、小粒子は室温で成膜することが好ましいため、40℃以下であることが一層好ましい。
【0094】
また、大粒子のMFTと小粒子のMFTの差は、30℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。
【0095】
大粒子と小粒子の樹脂の分子構造は、同一であってもよいが、互いに異なるものを用いてもよい。
【0096】
大粒子として、例えば、カルボキシ基、スルホ基等に代表されるアニオン性の官能基を有するポリマーと、アミノ基又はアミド基等に代表されるカチオン性の官能基を有するポリマーとが複合して得られるポリマーコンプレックスであって、コア部がアニオン性ポリマー、シェル部がカチオン性ポリマーである、コアシェル構造の複合有機粒子を用いることも好ましい。
【0097】
複合有機粒子のアニオン性ポリマーとしては、例えば繰り返し単位として(メタ)アクリル酸を含むポリマー、より具体的にはスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。スチレン、(メタ)アクリル酸以外の、これらと共重合可能なビニル化合物を含んでいてもよい。
【0098】
複合有機粒子のカチオン性ポリマー(塩基性ポリマー)としては、例えば、含窒素モノマーを含むポリマーであり、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルオキサゾリドン、N-ビニルイミダゾール等の窒素複素環化合物を繰り返し単位として含むホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。コポリマーを形成するコモノマーとしては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、アクリルアミド等の一般的なビニル化合物を、1種または2種以上選択して使用できる。
【0099】
この場合のアニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの使用割合は、粒子表面の電荷をカチオン性とするために、重量比で、アニオン性ポリマー1に対し、カチオン性ポリマーが3~10であることが好ましい。
【0100】
このような複合有機粒子の市販品として、「PP-15」、「PP-17」(共に明成化学工業株式会社)を好ましく用いることができる。
【0101】
また、表面処理液中における水分散性樹脂の量(大粒子と小粒子を用いる場合には両者の合計固形分量)は、処理した際の基材表面におけるインク定着性の観点から2重量%以上であることが好ましく、3重量%以上であることがより好ましく、5重量%以上であることがさらに好ましい。一方、処理液の粘度が高すぎる場合、均一な処理が困難になるため、樹脂量は50重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。
【0102】
表面処理液に含まれる水は、表面処理液の溶媒、すなわちビヒクルとして機能するものであり、水道水、イオン交換水、脱イオン水等が使用できる。水は揮発性の高い溶媒であり、基材に吐出された後、容易に蒸発するので、表面処理後の基材の空隙が塞がれるのを防止し、木材の吸湿性等の表面処理後の基材本来の特性の低下を防止する作用を奏する。また、水は、無害で安全性が高く、VOCのような問題が無いので、表面処理された基材を環境にやさしいものとすることができる。
【0103】
表面処理液中の水の含有量が多いほど、表面処理液の粘度が低く、取り扱いが容易になることから、水は、処理液全量の60重量%以上であることが好ましく、65重量%以上であることがより好ましい。
【0104】
水の含有量の上限値は、特に限定はされないが、処理液中に水分散性樹脂の大粒子と小粒子を含む一実施形態において、水の含有量は95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。別の一実施形態においては、水の含有量は85重量%~95重量%であることが好ましい。
【0105】
表面処理液の溶媒は、ほとんどが水で構成されることが好ましいが、必要に応じて、水以外に、水溶性有機溶剤を含んでもよい。水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
【0106】
例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-2-プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、β-チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
【0107】
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。水溶性有機溶剤の含有量は、粘度調整と保湿効果の観点から、処理液中に30重量%以下(あるいは、溶媒中に50重量%以下)であることが好ましい。
【0108】
また、表面処理液は、その表面張力を低下させて不燃木材の表面に均一に塗布できるようにするために、また、粒径の小さい水分散性樹脂粒子(小粒子)を含む場合にはその凝集を抑制して液の保存安定性を高めるために、表面張力調整剤(界面活性剤)をさらに含むことが好ましい。
【0109】
界面活性剤は、親水性部分がイオン性(カチオン性・アニオン性・双性)のものと非イオン性(ノニオン性)のものに大別されるが、本実施形態では、表面処理液の泡立ちの観点から、起泡しにくい非イオン系の界面活性剤を用いることが好ましい。また、低分子系・高分子系(一般には分子量が約2000以上のものを指す。)のどちらでも良いが、高分子系界面活性剤を用いることが好ましい。HLB値については、5~20程度の界面活性剤であることが好ましい。
【0110】
非イオン系の界面活性剤としては、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸ソルビタンエステル等のエステル型のもの、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のエーテル型のもの、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエーテルエステル型のもの等が挙げられる。
【0111】
本実施形態では、アセチレングリコール系界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0112】
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品として、アセチレングリコールであるサーフィノール104E、104H、アセチレングリコールにエチレンオキサイドを付加した構造のサーフィノール420、440、465、485等(エアープロダクツアンドケミカルズ社)、アセチレングリコールのオルフィンE-1004、E-1010、E-1020、PD-002W、PD-004、EXP.4001、EXP-4200、EXP-4123、EXP-4300等(日信化学工業株式会社)、アセチレングリコールのアセチレノールE00、E00P、アセチレングリコールのエチレンオキサイドを付加した構造のアセチレノールE40、E100等(川研ファインケミカル株式会社)が挙げられる。
【0113】
シリコーン系界面活性剤は、非常に高い表面張力低下能と接触角低下能を持つため、不燃木材の表面が親水性でなくてもその表面に表面処理液を速やかに拡散させることができる。その結果、不燃木材の表面に表面処理液の機能発現成分が均一に定着することができるため、印刷した際にインクが処理部分に均一に定着し、高発色で高品位の印刷画像を得ることができる。
【0114】
シリコーン系界面活性剤のなかでも、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル・アラルキル共変性シリコーン系界面活性剤、アクリルシリコーン系界面活性剤が好ましい。市販品では「シルフェイスSAGシリーズ」(日信化学工業株式会社)を好ましく使用できる。
【0115】
界面活性剤は、上記のシリコーン系界面活性剤等を、いずれか単独で用いてもよいし、互いに相溶性が良好な複数の界面活性剤を併用してもよい。
【0116】
界面活性剤を使用する場合の表面処理液中の含有量は、0.1重量%以上程度であることが好ましく、0.3重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることが一層好ましい、一方、界面活性剤量は、5重量%以下程度であることが好ましく、4重量%以下であることがより好ましく、3重量%以下であることが一層好ましい。
【0117】
表面処理液には、処理液の機能を阻害しない限り、上記の成分以外に、例えば、保湿剤、消泡剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等の公知の添加剤を任意に添加できる。これらの添加剤を複数種組み合わせて使用してもよい。
【0118】
表面処理液は、水、カチオン性の水分散性樹脂、及び表面張力調整剤、並びに任意に添加される添加剤があれば該添加剤を、例えばビーズミル等の公知の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散させ、所望により、メンブレンフィルター等の公知のろ過機を通すことにより調製できる。
【0119】
また、表面処理液が、カチオン性の水分散性樹脂として大粒子と小粒子を含む場合、表面処理液の適用を、2段階に分けて行うこともできる。すなわち、例えば、大粒子または小粒子のどちらか一方を含む表面処理液と、残りの一方を含む表面処理液を準備し、両者をそれぞれ、不燃木材に塗布することもできる。大粒子と小粒子を分けて適用する場合、小粒子の塗布が先であると、不燃木材の空隙への浸透が進み、インクに対するバインダーとしての効果が薄れる可能性があるため、大粒子を先に塗布するほうが好ましい。なお、上述したように2種類の表面処理液を塗布する場合、表面処理液の量とは、2種類の表面処理液の量の合計値である。
【0120】
本発明に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記)
【0121】
本発明の液体塗布装置において、塗布部は、塗布媒体に接触して塗布媒体に表面に対して液体を塗布することができ、摺動部が塗布媒体の表面を押圧する圧力は、塗布部が塗布媒体の表面を押圧する圧力よりも高くすることができる。
【0122】
本発明の液体塗布装置においては、摺動部を清掃する清掃部を備えることができる。
【0123】
本発明の液体塗布装置において、清掃部は、摺動部に吸収された液体を回収しながら、摺動部を清掃することができる。
【0124】
本発明の液体塗布装置において、摺動部は、塗布媒体に塗布された液体の一部を吸収するローラを有することができ、清掃部は、ローラの回転によって、そのローラに吸収された液体を回収することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 液体塗布装置
2 シャトルベースユニット
3 フラットベッドユニット
3a 媒体載置面
4 シャトルユニット
6 前処理ユニット
10 塗布ローラ
11 スポンジローラ
11a スポンジローラ本体
11b 支持部材
11c バネ部
12 清掃部
12a 回収ローラ
12b 液体受け部
12c ヘラ部
15 印刷制御装置
20 インクジェット印刷装置
31 架台部
32 副走査駆動モータ
41 筐体
42 主走査駆動ガイド
43 主走査駆動モータ
44 ヘッド昇降ガイド
45 ヘッド昇降モータ
46 ヘッドユニット
51 インクジェットヘッド
53 インク供給管
33A,33B 副走査駆動ガイド
L 液体
M 塗布媒体