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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133742
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20220907BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20220907BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
H05K1/02 A
H05K3/28 A
H01L23/12 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032606
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】松橋 憲助
【テーマコード(参考)】
5E314
5E338
【Fターム(参考)】
5E314AA04
5E314BB06
5E314FF02
5E314FF12
5E314GG26
5E338AA18
5E338BB03
5E338BB19
5E338BB80
5E338EE60
(57)【要約】
【課題】セラミック基板の段差部に形成される絶縁コートの剥がれを抑えることのできる配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板1は、第1セラミック層21と、第1セラミック層21上に積層され、上面視で第1セラミック層21の上面の一部を囲う枠状の第2セラミック層22とを備えている。第1セラミック層21と第2セラミック層22との間には、電気的に互いに独立した複数の配線部31が設けられている。この配線部31は、上面視で第2セラミック層22に囲われた第1セラミック層21上にはみ出ているはみ出し部31aを有している。第2セラミック層22の内周面22aと、第1セラミック層21の上面21aなどとで形成される入隅部Cには、その一部を被覆するように絶縁コートが設けられている。複数の配線部31のうち、幅Wが最大のものには少なくとも、絶縁コートが設けられていない露出部Eが存在する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セラミック層と、
前記第1セラミック層上に積層され、上面視で前記第1セラミック層の上面の一部を囲う枠状の第2セラミック層と、
前記第1セラミック層と前記第2セラミック層との間に介在し、上面視で前記第2セラミック層に囲われた前記第1セラミック層上にはみ出ているはみ出し部をそれぞれ有する、電気的に独立した複数の配線部と
備えている配線基板であって、
前記第2セラミック層の内周面と、前記第1セラミック層の上面及び前記はみ出し部の上面とで形成される入隅部の一部を被覆する絶縁コートが設けられており、
前記複数の配線部のうち、上面視において前記はみ出し部の前記第2セラミック層と隣接する部分の幅が最大のものには少なくとも、前記絶縁コートが設けられていない露出部が存在する、
配線基板。
【請求項2】
前記幅が2.5mm以上である前記配線部には、前記絶縁コートが設けられていない露出部が存在する、
請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記絶縁コートは、前記露出部が存在する前記配線部と隣り合う前記配線部を被覆しており、前記絶縁コートの端部がそれらの配線部間の第1セラミック層上に配置されており、
前記露出部は、前記配線部の幅方向の全領域にわたって設けられている、
請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記露出部が存在する前記配線部は、前記入隅部において前記配線部の幅が部分的に狭められた狭幅部を有している、請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記狭幅部上に位置する前記露出部の幅は、前記はみ出し部における前記狭幅部以外の位置における前記配線部の幅よりも小さくなっている、請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記入隅部に沿った前記露出部の最大幅は、前記入隅部に沿った前記配線部の最大幅よりも小さくなっており、
前記配線部の幅方向の端部上には、前記絶縁コートが設けられている、
請求項1または2に記載の配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップなどを載置するための段差を有している配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路などを搭載した半導体チップは、例えば、スイッチング素子、抵抗、コンデンサなどの様々な回路素子で構成されている。この半導体チップは、非導電性材料であるセラミックで形成されているセラミック基板上に搭載され、モジュール化された配線基板を構成する。
【0003】
半導体チップが搭載される配線基板は、非導電性のセラミック基板、および、このセラミック基板の内部および表面に金属などの導電性材料を用いて形成されている配線パターンなどを備えている。また、半導体チップが搭載される配線基板には、半導体チップを収容するための段差または凹部が設けられている。この段差または凹部は、形状の異なる複数のセラミック基板を積層することによって形成され得る。
【0004】
例えば、特許文献1には、集積回路を収容する凹部の内周壁を、段部上面および段部側面を有するように階段状に形成し、また、複数のメタライズ層を、前記内周壁の内部から前記段部上面と段部側面との境界部を通り、前記段部上面上に延出するように形成してなる集積回路用セラミックパッケージ本体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-147355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている集積回路用セラミックパッケージ本体では、前記段部上面及び複数のメタライズ層のうち前記境界部の近傍に位置する各部分を、絶縁コーティング層で被覆している。これにより、階段状内周壁の段部上面に並んで配置された各メタライズ層上にメッキ処理を行ったときに、各メタライズ層の間に存在するセラミック部分まで余分にメッキされる、いわゆる「メッキだれ」の発生を防止している。そのため、メタライズ層同士の短絡を防止することができる。
【0007】
ところで、配線基板上に形成される複数の配線の幅は、それぞれに異なっている場合がある。このような幅の異なる複数の配線が設けられている配線基板において、上記のような絶縁コーティング層(絶縁コートとも呼ぶ)を形成すると、比較的幅の広い配線上の絶縁コーティング層に剥がれが発生しやすくなる。セラミック基板の段差の境界において、このような絶縁コーティング層の剥がれが発生すると、メッキが段差の内部に入り込みやすくなり、隣り合う配線同士の短絡の原因となり得る。
【0008】
そこで、本発明では、セラミック基板の段差部分に形成される絶縁コートの剥がれを抑えることのできる配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面にかかる配線基板は、第1セラミック層と、前記第1セラミック層上に積層され、上面視で前記第1セラミック層の上面の一部を囲う枠状の第2セラミック層と、前記第1セラミック層と前記第2セラミック層との間に介在し、上面視で前記第2セラミック層に囲われた前記第1セラミック層上にはみ出ているはみ出し部をそれぞれ有する、電気的に独立した複数の配線部と備えている。この配線基板には、前記第2セラミック層の内周面と、前記第1セラミック層の上面及び前記はみ出し部の上面とで形成される入隅部の一部を被覆する絶縁コートが設けられており、前記複数の配線部のうち、上面視において前記はみ出し部の前記第2セラミック層と隣接する部分の幅が最大のものには少なくとも、前記絶縁コートが設けられていない露出部が存在する。
【0010】
上記の構成によれば、絶縁コートが入隅部を被覆するように設けられていることで、第1セラミック層の上面に並んで配置された各配線部のはみ出し部上にメッキ処理を行ったときに、セラミック部分まで余分にメッキされる「メッキだれ」の発生を防止することができる。そのため、隣接する配線部同士の短絡を防止することができる。
【0011】
さらに、複数の配線部のうち、前記幅が最大のものには少なくとも、前記絶縁コートが設けられていない構成とすることで、前記幅が比較的大きな配線部上に絶縁コートを形成した場合に起こり得る絶縁コートの剥がれを抑えることができる。
【0012】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記幅が2.5mm以上である前記配線部には、前記絶縁コートが設けられていない露出部が存在してもよい。
【0013】
前記幅が2.5mm以上の配線部上に絶縁コートが設けられていると、絶縁コートが剥がれやすい。そのため、上記の構成によれば、複数の配線部のうちの一部の配線部において、絶縁コートの剥がれが発生することをより確実に抑えることができる。
【0014】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記絶縁コートは、前記露出部が存在する前記配線部と隣り合う前記配線部を被覆しており、前記絶縁コートの端部がそれらの配線部間の第1セラミック層上に配置されており、前記露出部は、前記配線部の幅方向の全領域にわたって設けられていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、絶縁コートの端部がセラミック層上に配置されるため、絶縁コートの端部が配線部上にある場合と比較して、絶縁コートの剥がれをより確実に抑えることができる。
【0016】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記露出部が存在する前記配線部は、前記入隅部において前記配線部の幅が部分的に狭められた狭幅部を有していてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、狭幅部を有する配線部と、それに隣接して配置される配線部との間隔をより大きくすることができる。そのため、配線部と配線部との間に絶縁コートの端部を配置する領域を確保しやすくなり、絶縁コートの端部を配線間に配置することがより容易になる。
【0018】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記狭幅部上に位置する前記露出部の幅は、前記はみ出し部における前記狭幅部以外の位置における前記配線部の幅よりも小さくなっていてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、はみ出し部におけるボンディングワイヤの接続エリアを確保しつつ、絶縁コートと第1セラミック層との接合エリアをより広範囲に設けることができる。
【0020】
上記の本発明の一局面にかかる配線基板において、前記入隅部に沿った前記露出部の最大幅は、前記入隅部に沿った前記配線部の最大幅よりも小さくなっており、前記配線部の幅方向の端部上には、前記絶縁コートが設けられていてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、配線部の幅方向の両端部において、絶縁コートの一部が第2セラミック層と配線部との間に配置されるため、それらの間に隙間が発生しにくくなる。したがって、メッキがこの隙間に入り込むことが抑制され、「メッキだれ」が起こりにくくなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一局面にかかる配線基板によれば、セラミック基板の段差部分に形成される絶縁コートの剥がれを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態にかかる配線基板の構成を示す平面模式図である。
図2図1に示す配線基板に半導体素子が搭載された半導体パッケージの構成を示す平面模式図である。
図3図1に示す配線基板のA-A線部分の構成を示す断面図である。
図4図1に示す配線基板のB-B線部分の構成を示す断面図である。
図5】第1の実施形態にかかる配線基板の一部分の構成を示す平面図である。
図6】第2の実施形態にかかる配線基板の一部分の構成を示す平面図である。
図7】第3の実施形態にかかる配線基板の一部分の構成を示す平面図である。
図8】従来の配線基板の一部分の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0025】
〔第1の実施形態〕
本実施形態では、本発明にかかる配線基板の一例として、配線基板1を例に挙げて説明する。この配線基板1には、半導体チップ(半導体素子)51が搭載され、半導体モジュール50を構成する。
【0026】
図1には、配線基板1の平面構成を模式的に示す。配線基板1は、上面視で略四角形状を有している。配線基板1の外形は、複数のセラミック層を含むセラミック基材で形成されている。セラミック基材の上面の中央部には、上面視で略四角形状の凹部10が形成されている。凹部10の底面には、半導体チップ51などの半導体素子が搭載される素子搭載予定部10aとなっている。
【0027】
上記のような構成を有する配線基板1の素子搭載予定部10aには、半導体チップ51が搭載される。これにより、半導体モジュール50が得られる。図2には、半導体モジュール50の概略構成を示す。
【0028】
配線基板1は、ボンディングワイヤ52を介して半導体チップ51と電気的に接続される。具体的には、配線基板1の配線群30に含まれる各配線部31と、半導体チップ51の各接続端子(図示せず)とが、ボンディングワイヤ52によって電気的に接続される。これにより、各配線部31と半導体チップ51との間で電気信号の伝達が可能となる。
【0029】
配線基板1上に半導体チップ51が搭載された状態で、セラミック基材の凹部10には、液状の樹脂材料が流し込まれる。この樹脂材料が硬化することで、凹部10には、樹脂が充填された状態となる。これにより、半導体モジュール50が得られる。なお、セラミック基材の凹部10に樹脂材料を流し込まない構成も可能である。すなわち、別の実施態様では、半導体モジュール50は、配線基板1上に半導体チップ51を載せ、これらを互いに電気的に接続させることによって形成される。
【0030】
図3および図4には、配線基板1の一部分の断面構成を示す。図3は、図1に示す配線基板1のA-A線部分の構成を示す断面図である。図4は、図1に示す配線基板1のB-B部分の構成を示す断面図である。
【0031】
配線基板1は、主として、複数のセラミック層を積層した積層構造を有している。本実施形態では、配線基板1は、下層から順に、基台セラミック層20、第1セラミック層21、および第2セラミック層22が積層された構成を有している。
【0032】
各セラミック層は、例えば、アルミナ(Al)を主成分とする高温焼成セラミックで形成することができる。また、別の実施態様では、セラミックシートは、ガラス-セラミックなどの中温焼成セラミック(MTCC)、または低温焼成セラミック(LTCC)で形成されていてもよい。
【0033】
基台セラミック層20は、略四角形の平板状を有している。基台セラミック層20の上面の中央部は、素子搭載予定部10aとなっている。
【0034】
第1セラミック層21は、基台セラミック層20と略同じ大きさの略四角形の平板状を有しており、中央部に開口部を有する枠状の形状を有している。第1セラミック層21は、基台セラミック層20上に積層され、上面視で基台セラミック層20の上面の外周部分を囲うように設けられている。
【0035】
なお、本実施形態では、第1セラミック層21は中央部に開口部を有する枠状の形状を有しているが、本発明では、第1セラミック層21に開口部が設けられていない構成も可能である。例えば、配線基板が、第1セラミック層21と第2セラミック層22との二層構造の場合には、第1セラミック層21は開口部を有していない平板状の形状とすることができる。
【0036】
第2セラミック層22は、基台セラミック層20および第1セラミック層21と略同じ大きさの略四角形の平板状を有しており、中央部に開口部を有する枠状の形状を有している。第2セラミック層22の開口部は、第1セラミック層21の開口部よりも大きな開口面積を有している。第2セラミック層22は、第1セラミック層21上に積層され、上面視で第1セラミック層21の上面の外周部分を囲うように設けられている。
【0037】
上記の構成により、配線基板1のセラミック基材の上面の中央部には、凹部10が形成される。また、第1セラミック層21および第2セラミック層22に形成されている互いに大きさの異なる開口部によって、凹部10の底面から第2セラミック層22の上面に向かって、段差が形成される(図3など参照)。
【0038】
この段差のうち、第1セラミック層21と第2セラミック層22とで形成される段差部には、第1セラミック層21の上面21a上に複数の配線部31からなる配線群30などが設けられている。図1では、この段差部分にドットのパターン模様を付している。第1セラミック層21の上面21aと第2セラミック層22の開口部の内周面22aとで形成される領域を入隅部C(図3など参照)と呼ぶ。
【0039】
第1セラミック層21の上面21a上に形成されている配線群30は、導電性材料を所定形状に成形して得られる導電パターンで形成されている。導電パターンは、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、またはマンガン(Mn)などの金属材料、あるいはこれらの金属材料を主成分とする合金材料によって形成することができる。
【0040】
導電パターンの形成には、例えば、印刷ペーストによるメタライズ法、パターン状の金属層を転写する方法などの従来公知の方法が用いられる。これらの各方法の中でも、例えば、メタライズ法を用いることが好ましい。
【0041】
配線群30を構成している各配線部31は、第1セラミック層21の上面21aの開口部側から外周端部へ向けて延びている。この各配線部31が延びる方向を、配線部31の伸長方向と呼ぶ。
【0042】
本実施形態では、図1に示すように、各配線部31は、略四角形状の第1セラミック層21の上面21aにおいて、4つの端辺から開口部の各端辺向かって線状に延びている。一つの端辺に沿って並んで配置されている複数の配線部31は、間隔L(図5参照)を空けて、互いに略平行に配置されている。間隔Lの大きさは一定であっても、異なっていてもよい。これにより、電気的に独立した複数の配線部31からなる配線群30が構成される。なお、図1に示す各配線部31のパターン構成は一例であり、本発明はこれに限定されない。
【0043】
図3などに示すように、配線部31は、一部分(配線基板1の凹部10側の部分)が段差部を形成している第1セラミック層21の上面21aに位置しており、その他の部分(配線基板1の外周側の部分)が第1セラミック層21と第2セラミック層22との間に介在している。配線部31において、段差部を形成している第1セラミック層21の上面21a上にはみ出している部分をはみ出し部31aと呼ぶ。なお、図3および図4などに示すように、はみ出し部31aの一部は、入隅部Cに形成されている。各配線部31のはみ出し部31aの表面は、メッキ層(図示せず)で覆われている。
【0044】
配線基板1に半導体チップ51が搭載された半導体モジュール50においては、各配線部31と、半導体チップ51の各接続端子(図示せず)とが、ボンディングワイヤ52によって電気的に接続される。図2に示すように、ボンディングワイヤ52の一端が、各配線部31のはみ出し部31aに取り付けられる。これにより、各配線部31と半導体チップ51との間で電気信号の伝達が可能となる。
【0045】
また、第1セラミック層21と第2セラミック層22とで形成される段差部において、第2セラミック層22の開口部の内周面22aと、第1セラミック層21の上面21aおよび配線部31のはみ出し部31aとで形成される入隅部Cには、アルミナコート(絶縁コート)41が設けられている。図3に示すように、アルミナコート41の一部分は、第1セラミック層21と第2セラミック層22との間に挟まれた状態となっており、その他の部分は、入隅部Cにおいて第1セラミック層21の上面21a上に配置されている。
【0046】
図1に示すように、アルミナコート41は、入隅部Cの全領域に形成されているのではなく、入隅部Cの一部に形成されている。アルミナコートは、第1セラミック層21などのセラミック層と同じ材料で形成されている。そのため、セラミック層上にアルミナコートを載せた状態で焼成すると、アルミナコートはセラミック層と一体化し、アルミナコートとセラミック層との間に挟まれた配線部31などの導電パターンの密着性が向上する。
【0047】
また、アルミナコート41が入隅部Cに設けられていることで、セラミック基材において段差部を形成している第1セラミック層21の上面に並んで配置された各配線部31上にメッキ処理を行ったときに、各配線部31の間に存在するセラミック部分まで余分にメッキされる「メッキだれ」の発生を防止することができる。そのため、隣接する配線部31同士の短絡を防止することができる。
【0048】
なお、「メッキだれ」による配線間の短絡は、隣り合う配線同士の間隔が狭い場合(例えば、この間隔200μm以下の場合)に発生しやすい。そこで、本実施形態では、隣接する配線部31同士の間隔Lが200μm以下の場合に、アルミナコート41を設けることが好ましく、間隔Lが100μm以下の場合に、アルミナコート41を設けることがより好ましい。
【0049】
以下では、アルミナコート41が形成される領域の具体的な例について、図5を参照しながら説明する。図5には、第1の実施形態にかかる配線基板1の一端辺の上面を拡大して示す。また、比較のために、図8には、従来の配線基板1の一端辺の上面の構成を示す。
【0050】
図5に示す配線基板1の一端辺には、互いに異なる幅を有する複数の配線部31(具体的には、8個の配線部31)で構成された配線群30が設けられている。ここで、配線部31の幅とは、第1セラミック層21の上面21a上において、配線部31の伸長方向と直交する方向の配線部31のはみ出し部31aの長さを意味する。
【0051】
また、本実施形態では、上面視においてはみ出し部31aの第2セラミック層22と隣接する部分(すなわち、入隅部Cの角部分)の幅を、幅Wとする。なお、比較的幅の小さい配線部31に関しては、配線部31の幅はその伸長方向において一定であり、幅Wと一致する。一方、例えば、配線部31Aのように、比較的幅の大きい配線部31に関しては、配線部31の幅が部分的に異なっている。この場合には、上面視においてはみ出し部31aの第2セラミック層22と隣接する部分(すなわち、入隅部Cの角部分)の幅を、幅W1とし、それ以外の部分の幅を、幅W2とする。
【0052】
本実施形態では、図5に示すように、配線基板1の一端辺に間隔Lを空けて並んでいる複数の配線部31のうち、幅Wが最大の配線部31(すなわち、幅W1を有する配線部31A)およびその左右両側周辺には、アルミナコート41が設けられていない。すなわち、幅W1を有する配線部31Aおよびその左右両側に隣接する第1セラミック層21上には、アルミナコート41が存在せず、配線部31の表面などが露出した露出部Eとなっている。
【0053】
このように、アルミナコート41が設けられていない露出部Eは、複数の配線部31のうち、幅Wが最大の配線部31A上には少なくとも存在する。これにより、幅Wが比較的大きな配線部31上にアルミナコート41を形成した場合に起こり得るアルミナコート41の剥がれを抑えることができる。
【0054】
ここで、比較のために、従来の配線基板901の構成について、図8を参照しながら説明する。図8には、配線基板901の一部分の平面構成を示す。
【0055】
配線基板901の外形は、本実施形態にかかる配線基板1と同様に、セラミック基材で形成されている。セラミック基材の上面の中央部には、上面視で略四角形状の凹部10が形成されている。
【0056】
図8に示す配線基板901の一端辺には、互いに異なる幅を有する複数の配線部31(具体的には、7個の配線部31)で構成された配線群30が設けられている。
【0057】
図8に示す配線基板901では、第1セラミック層21と第2セラミック層22とで形成される段差部において、第2セラミック層22の開口部の内周面22aと、第1セラミック層21の上面21aおよび配線部31のはみ出し部31aとで形成される入隅部Cの全領域にアルミナコート941が設けられている。
【0058】
すなわち、アルミナコート941は、配線部31の幅Wとは無関係に、すべての配線部31上に設けられている。このような構成では、幅Wが大きな配線部31上に形成されたアルミナコート941が、配線部31の表面と密着せず、アルミナコート941の剥がれが発生し得る。このようなアルミナコート941の剥がれが発生すると、配線部31表面に対するメッキ処理時にメッキ液が配線部31と剥がれたアルミナコート941との隙間に入り込みやすくなり、隣り合う配線同士の短絡の原因となり得る。
【0059】
そこで、本実施形態にかかる配線基板1においては、複数の配線部31のうち、幅Wが最大のものには少なくとも、アルミナコート41が設けられていない露出部Eが存在するように構成されている。
【0060】
本実施形態では、アルミナコート41は、露出部Eが存在する配線部31Aと隣り合う配線部31を被覆しており、アルミナコート41の端部がそれらの配線部間の第1セラミック層21上に配置されている。そして、露出部Eが存在する配線部31Aにおいて、露出部Eは、配線部31Aの幅方向の全領域にわたって設けられている。アルミナコート41の端部が第1セラミック層21上に配置されることで、アルミナコート41の端部が配線部上にある場合と比較して、アルミナコート41の剥がれをより確実に抑えることができる。
【0061】
なお、上記のようなアルミナコートの剥がれは、幅Wが2.5mm以上の配線部31において発生しやすい傾向にある。そのため、幅Wが2.5mm以上である配線部31上に、アルミナコート41が設けられていない露出部Eが存在することが好ましい。
【0062】
すなわち、配線基板1においては、一端辺に並んで配置されている複数の配線部31のうち、幅Wが最大のものに加えて、幅Wが2.5mm以上のものにも露出部Eが存在することが好ましい。これにより、アルミナコートの剥がれをより確実に抑えることができる。
【0063】
また、本実施形態にかかる配線基板1においては、露出部Eが存在する配線部31Aは、入隅部Cにおいて配線部の幅が部分的に狭められた狭幅部32を有している。
【0064】
この構成によれば、狭幅部32を有する配線部31と、それに隣接して配置される配線部31との間隔(すなわち、隣接する配線部31間の第1セラミック層21の幅)をより大きくすることができる。そのため、狭幅部32を有する配線部31Aの幅方向の全領域に露出部Eを設けつつ、配線部31Aとそれに隣り合う配線部31との間にアルミナコート41の端部を配置する領域を確保しやすくなる。したがって、アルミナコート41の端部を配線間に存在する第1セラミック層21上に配置することがより容易になる。
【0065】
このような狭幅部32を有する配線部31においては、狭幅部32の幅W1が、他の配線部31の幅Wよりも大きくなっている。すなわち、一端辺に並んで配置されている複数の配線部31の各幅Wのうち、幅W2が最大となっている。また、この幅W1は、2.5mm以上となっていることが好ましい。
【0066】
図5に示すように、狭幅部32の幅方向の左右両側は、導電パターンが一部切り欠かれた切り欠き部になっている。アルミナコート41は、この切り欠き部に入り込むように設けられている。すなわち、狭幅部32上に位置する露出部Eの幅w1は、狭幅部32以外の位置における配線部31の幅W2よりも小さくなっている。これにより、狭幅部32には露出部Eを設けつつ、配線部31Aとそれに隣り合う配線部31との間にアルミナコート41の端部を配置する領域を確保しやすくなる。したがって、アルミナコート41の端部を配線間に存在する第1セラミック層21上により広範囲にわたって配置することが可能となる。
【0067】
なお、幅Wが最大となる配線部31が複数存在する場合には、それらすべての配線部31上に、アルミナコート41が設けられていない露出部Eが存在してもよい。
【0068】
また、図1に示す例のように、同一の辺に間隔を空けて並んでいる複数の配線部31のうち、幅Wが最大の配線部31に、アルミナコート41が設けられていない露出部Eが存在してもよい。すなわち、露出部Eは、略四角形状の配線基板1の4つの端辺のそれぞれに存在してもよい。また、露出部Eは、1つの配線基板1において複数個存在してもよい。
【0069】
配線部31の幅Wは、配線基板1の上面側からX線照射装置(例えば、マイクロフォーカスX線CTシステム(株式会社ユニハイトシステム製、型番:XVA-160N)を用いてX線を照射することによって測定することができる。
【0070】
(第1の実施形態のまとめ)
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1は、第1セラミック層21と、第1セラミック層21上に積層され、上面視で第1セラミック層21の上面の一部を囲う枠状の第2セラミック層22とを備えている。第1セラミック層21と第2セラミック層22との間には、電気的に互いに独立した複数の配線部31が設けられている。この配線部31は、上面視で第2セラミック層22に囲われた第1セラミック層21上にはみ出ているはみ出し部31aを有している。
【0071】
第2セラミック層22の内周面22aと、第1セラミック層21の上面21aおよびはみ出し部31aの上面とで形成される入隅部Cには、その一部を被覆するようにアルミナコート(絶縁コート)41が設けられている。複数の配線部31のうち、幅Wが最大のものには少なくとも、アルミナコート41が設けられていない露出部Eが存在する。すなわち、露出部Eは、第2セラミック層の内周面22aと、配線部31の上面とで形成されている入隅部Cが露出している部分である(図4参照)。
【0072】
上記の構成によれば、幅Wが比較的大きな配線部31上にアルミナコート41を形成した場合に起こり得るアルミナコート41の剥がれを抑えることができる。なお、幅Wが最大となる配線部31が複数存在する場合には、それらすべての配線部31上に、アルミナコート41が設けられていない露出部Eが存在することが好ましい。
【0073】
本実施形態では、絶縁コートの一例としてアルミナコートを挙げているが、絶縁コートの材料は非導電性を有しているものであればよく、アルミナに限定はされない。
【0074】
〔第2の実施形態〕
続いて、第2の実施形態にかかる配線基板1について、図6を参照しながら説明する。図6には、第2の実施形態にかかる配線基板1の一端辺の上面を拡大して示す。
【0075】
図6に示す配線基板1の一端辺には、互いに異なる幅を有する複数の配線部31(具体的には、8個の配線部31)で構成された配線群30が設けられている。ここで、配線部31の幅とは、第1セラミック層21の上面21a上において、配線部31の伸長方向と直交する方向の配線部31のはみ出し部31aの長さを意味する。また、本実施形態では、上面視においてはみ出し部31aの第2セラミック層22と隣接する部分(すなわち、入隅部Cの角部分)の幅を、幅Wとする。
【0076】
本実施形態では、図6に示すように、配線基板1の一端辺に間隔Lを空けて並んでいる複数の配線部31のうち、幅Wが最大の配線部31(すなわち、配線部31B)およびその左右両側周辺には、アルミナコート41が設けられていない。すなわち、配線部31Bおよびその左右両側に隣接する第1セラミック層21上には、アルミナコート41が存在せず、配線部31の表面などが露出した露出部Eとなっている。
【0077】
このように、アルミナコート41が設けられていない露出部Eは、複数の配線部31のうち、幅Wが最大の配線部31B上には少なくとも存在する。これにより、幅Wが比較的大きな配線部31上にアルミナコート41を形成した場合に起こり得るアルミナコート41の剥がれを抑えることができる。
【0078】
本実施形態では、配線群30に含まれるすべての配線部31は、その伸長方向において幅が一定となっている。すなわち、配線部31Bには、第1の実施形態で説明した配線部31Aのような狭幅部32は設けられていない。
【0079】
以上のように、本実施形態にかかる配線基板1においては、本実施形態にかかる配線基板1においては、複数の配線部31のうち、幅Wが最大のもの(すなわち、配線部31B)には少なくとも、アルミナコート41が設けられていない露出部Eが存在する。
【0080】
本実施形態では、アルミナコート41は、露出部Eが存在する配線部31Bと隣り合う配線部31を被覆しており、アルミナコート41の端部がそれらの配線部間の第1セラミック層21上に配置されている。そして、露出部Eが存在する配線部31Bにおいて、露出部Eは、配線部31Bの幅方向の全領域にわたって設けられている。アルミナコート41の端部が第1セラミック層21上に配置されることで、アルミナコート41の端部が配線部上にある場合と比較して、アルミナコート41の剥がれをより確実に抑えることができる。
【0081】
なお、上記のようなアルミナコートの剥がれは、幅Wが2.5mm以上の配線部31において発生しやすい傾向にある。そのため、幅Wが2.5mm以上である配線部31上に、アルミナコート41が設けられていない露出部Eが存在することが好ましい。
【0082】
また、配線基板1においては、一端辺に並んで配置されている複数の配線部31のうち、幅Wが最大のものに加えて、幅Wが2.5mm以上のものにも露出部Eが存在することが好ましい。これにより、アルミナコートの剥がれをより確実に抑えることができる。
【0083】
〔第3の実施形態〕
続いて、第3の実施形態にかかる配線基板1について、図7を参照しながら説明する。図7には、第3の実施形態にかかる配線基板1の一端辺の上面を拡大して示す。
【0084】
図7に示す配線基板1の一端辺には、互いに異なる幅を有する複数の配線部31(具体的には、7個の配線部31)で構成された配線群30が設けられている。ここで、配線部31の幅とは、第1セラミック層21の上面21a上において、配線部31の伸長方向と直交する方向の配線部31のはみ出し部31aの長さを意味する。また、本実施形態では、上面視においてはみ出し部31aの第2セラミック層22と隣接する部分(すなわち、入隅部Cの角部分)の幅を、幅Wとする。
【0085】
本実施形態では、図7に示すように、配線基板1の一端辺に間隔Lを空けて並んでいる複数の配線部31のうち、幅Wが所定値以上(例えば、2.5mm以上)となっている配線部31(すなわち、配線部31Cおよび配線部31D)の幅方向の中央部には、アルミナコート41が設けられていない。すなわち、配線部31Cおよび配線部31D上には、一部分を除いてアルミナコート41が存在せず、配線部31の表面が露出した露出部Eとなっている。
【0086】
このように、アルミナコート41が設けられていない露出部Eは、複数の配線部31のうち、幅Wが所定値以上となっている配線部31Cおよび配線部31Dの幅方向の中央部には少なくとも存在する。これにより、幅Wが比較的大きな配線部31上にアルミナコート41を形成した場合に起こり得るアルミナコート41の剥がれを抑えることができる。
【0087】
本実施形態では、配線群30に含まれるすべての配線部31は、その伸長方向において幅が一定となっている。すなわち、配線部31Cおよび配線部31Dには、第1の実施形態で説明した配線部31Aのような狭幅部32は設けられていない。
【0088】
また、本実施形態では、入隅部Cに沿った露出部Eの最大幅は、入隅部Cに沿った配線部31の最大幅よりも小さくなっている。例えば、図7に示すように、入隅部Cに沿った露出部Eの幅wは、入隅部Cに沿った配線部31の幅Wよりも小さくなっている。そして、配線部31の幅方向の左右両側の端部上には、アルミナコート41が設けられている。
【0089】
この構成では、配線部31Cおよび31Dの幅方向の両端部は、アルミナコート41と第1セラミック層21の上面21aとで挟まれた状態となる。これにより、第1セラミック層21と第2セラミック層22との間に存在する配線部31の幅方向の端部近傍に隙間が発生しにくくなる。したがって、メッキがこの隙間に入り込むことが抑制され、「メッキだれ」が起こりにくくなる。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、本明細書で説明した異なる実施形態の構成を互いに組み合わせて得られる構成についても、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1 :配線基板
10 :凹部
10a :素子搭載予定部
20 :基台セラミック層
21 :第1セラミック層
21a :第1セラミック層の上面
22 :第2セラミック層
22a :第2セラミック層の内周面
30 :配線群
31 :配線部
31a :はみ出し部
32 :狭幅部
41 :アルミナコート(絶縁コート)
50 :半導体パッケージ(電子部品)
51 :半導体素子
C :入隅部
E :露出部
W :入隅部における配線部の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8