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特開2022-1337462剤型急結剤、吹付け材料及び吹付け方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133746
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】2剤型急結剤、吹付け材料及び吹付け方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/14 20060101AFI20220907BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20220907BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220907BHJP
   E21D 11/10 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C04B22/14 A
C04B22/14 B
C04B22/08 Z
C04B28/02
E21D11/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032612
(22)【出願日】2021-03-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 泰之
(72)【発明者】
【氏名】三島 俊一
(72)【発明者】
【氏名】水野 博貴
【テーマコード(参考)】
2D155
4G112
【Fターム(参考)】
2D155DB00
2D155KA08
2D155LA17
4G112MB00
4G112MB13
4G112MB23
4G112PB05
4G112PB10
4G112PB11
4G112PC06
(57)【要約】
【課題】従来と同等以上の急結性及び取り扱い性を有し、環境負荷低減を図ることができる2剤型急結剤を提供する。
【解決手段】硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤との組み合わせからなる2剤型急結剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤との組み合わせからなる2剤型急結剤。
【請求項2】
前記液体急結剤のpHが7以下である請求項1に記載の2剤型急結剤。
【請求項3】
前記粉体助剤中のRO(Rはアルカリ金属)の含有量が1質量%未満である請求項1又は2に記載の2剤型急結剤。
【請求項4】
前記粉体助剤が硫酸カルシウムを含み、該硫酸カルシウムの含有量が10~50質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の2剤型急結剤。
【請求項5】
前記粉体助剤が硫酸アルミニウムを含み、該硫酸アルミニウムの含有量が20質量%以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の2剤型急結剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の2剤型急結剤とセメントコンクリートとを含む吹付材料。
【請求項7】
前記セメントコンクリートにおけるセメント100質量部に対して、硫酸アルミニウムが0.5質量部以上であり、カルシウムアルミネートが0.5質量部以上であり、
前記硫酸アルミニウムとカルシウムアルミネートの合計が、前記セメントコンクリートにおけるセメント100質量部に対して、15質量部以下である請求項6に記載の吹付材料。
【請求項8】
前記硫酸アルミニウムの含有量(X)と前記カルシウムアルミネートの含有量(Y)との質量比(Y/X)が、0.5~5である請求項6又は7に記載の吹付材料。
【請求項9】
硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤と、セメントコンクリートとを混合して吹付け処理を施す吹付け方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2剤型急結剤、吹付け材料及び吹付け方法に関し、特に土木・建築分野で使用される2剤型急結剤、吹付け材料及び吹付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をコンクリートに配合した急結性吹付けコンクリートを用いた吹付け工法による吹付が行われている(特許文献1参照)。
【0003】
この吹付け工法は、通常、掘削工事現場に設置した、セメント、骨材、及び水の計量混合プラントで吹付けコンクリートを調製し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で、他方から圧送した急結剤と混合し、急結性吹付けコンクリートとして地山面に所定の厚みになるまで吹付ける工法である。
【0004】
吹付け工法に使用される急結剤は大きく分類すると、カルシウムアルミネートやアルカリ金属アルミン酸等を主成分とする粉体急結剤と、アルカリ金属アルミン酸塩や硫酸アルミニウムなどを主成分とする液体急結剤の2種類が挙げられる。
【0005】
粉体急結剤の添加方法は、通常、空気輸送による粉体混合のために、添加量としては通常5~12%の範囲で実施している。
また、粉体急結剤の特性としては、吹付けセメントコンクリートと混合した時の凝結促進作用が大きく、コンクリートが速やかに硬化するため、崩落の危険がある地山面を保護でき、また、湧水部への吹付けに大きな効果を示すことが挙げられる。
しかしながら、粉体急結剤の急結剤供給装置が大規模で、かつ、圧縮空気を調製し、圧送するコンプレッサーなどの装置が別に必要であり、さらに、粉体急結剤を空気圧送して吹付けセメントコンクリートと混合したときに粉体急結剤の一部が作業空間に粉じんとして飛散する場合があるといった課題があった。
そのため、低添加で充分な急結力を有し、粉塵量やリバウンドのより少ない工法が求められていた。
また、粉体急結剤を使用する急結性吹付けコンクリートは、初期強度は粉体急結剤によって向上するが、長期強度は粉体急結剤を添加しないベースコンクリートよりも20~40%低下する傾向があった。
【0006】
また、液体急結剤の特性としては、急結剤供給装置が簡易であること、吹付けセメントコンクリートへの供給に定量性があること、吹付けセメントコンクリートとの混合が良好であること、急結性吹付けセメントコンクリートの地山への付着力が良好であり、跳ね返り率(リバウンド率)が少ないことなどが挙げられる。
しかしながら、吹付けセメントコンクリートと混合した時の凝結促進作用が粉体急結剤と比較して弱く、軟弱な地山や湧水部への吹付けに使用できない、厚吹きには適さないなどの課題があった。
【0007】
粉塵発生量が少ない工法として、急結剤を水や液体急結剤でスラリー化してセメントコンクリートに添加混合する方法が提案されている。(特許文献2、特許文献3参照)。
特に、特許文献3には、高性能減水剤を使用すること、シリカフュームを使用することも記載されているが、両者を併用することについては記載がない。
【0008】
しかしながら、この方法は、吹付けコンクリートの強度低下を低減するという点では、水/セメント比が増加するので不利であった。
【0009】
近年、より高品質な急結性吹付けコンクリートが求められるようになってきた。その一つの手段として急結剤をスラリー化し、かつ、セメントコンクリートにミョウバン類を配合することにより、作業性を向上する急結施工方法が提案されている(特許文献4参照)。
しかしながら、近年、作業性を更に良くし、工期短縮の面で、急結性や強度発現性をより向上させ、さらにリバウンドを低減させることでより低コストな吹付け方法が求められるようになった。
【0010】
また、アルカリ土類金属炭酸塩、カルシウムアルミネート、アルカリ金属硫酸塩、及び硫酸カルシウムを含有してなる粉体混和材と、液体急結剤とを混合したスラリー状の急結剤を含有する吹付け材料、それを用いる吹付け工法が提案されている(特許文献5参照)。
しかしながら、特許文献5には、フライアッシュ及び/又はシリカフユームと高性能減水剤を含有するセメントコンクリートに、粉体急結剤と液体急結剤を混合した急結剤スラリーを併用することについては記載がない。
【0011】
また、セメントと、カルシウムアルミネートなどの急硬物質を含有する急硬性セメントコンクリートの圧送性や強度発現性を向上する目的で、シリカフュームやフライアッシュなどの無機粉末を使用する急硬性セメントコンクリートが、提案され、高性能減水剤と併用することが、開示されている(特許文献6参照)。
しかしながら、特許文献6においても、粉体急結剤と液体急結剤を混合した急結剤スラリーを併用することについては記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公昭60-004149号公報
【特許文献2】特開2007-031166号公報
【特許文献3】特開平10-317671号公報
【特許文献4】特開平05-097491号公報
【特許文献5】国際公開08/056716号
【特許文献6】特開2002-338316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
また、作業性に加えて、環境負荷低減性が近年注目されており、急結剤や吹付材料においても良好な環境負荷低減性を有することが好ましい。
【0014】
以上から、本発明は、従来と同等以上の急結性及び取り扱い性を有し、環境負荷低減を図ることができる2剤型急結剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、下記本発明により当該課題を解決できることを見出して本発明を完成するに至った。すなわち本発明は下記のとおりである。
【0016】
[1] 硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤との組み合わせからなる2剤型急結剤。
[2] 前記液体急結剤のpHが7以下である[1]に記載の2剤型急結剤。
[3] 前記粉体助剤中のRO(Rはアルカリ金属)の含有量が1質量%未満である[1]又は[2]に記載の2剤型急結剤。
[4] 前記粉体助剤が硫酸カルシウムを含み、該硫酸カルシウムの含有量が10~50質量%である[1]~[3]のいずれかに記載の2剤型急結剤。
[5] 前記粉体助剤が硫酸アルミニウムを含み、該硫酸アルミニウムの含有量が20質量%以下である[1]~[4]のいずれかに記載の2剤型急結剤。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の2剤型急結剤とセメントコンクリートとを含む吹付材料。
[7] 前記セメントコンクリートにおけるセメント100質量部に対して、硫酸アルミニウムが0.5質量部以上であり、カルシウムアルミネートが0.5質量部以上であり、前記硫酸アルミニウムとカルシウムアルミネートの合計が、前記セメントコンクリートにおけるセメント100質量部に対して、15質量部以下である[6]に記載の吹付材料。
[8] 前記硫酸アルミニウムの含有量(X)と前記カルシウムアルミネートの含有量(Y)との質量比(Y/X)が、0.5~5である[6]又は[7]に記載の吹付材料。
[9] 硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤と、セメントコンクリートとを混合して吹付け処理を施す吹付け方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来と同等以上の急結性及び取り扱い性を有し、環境負荷低減を図ることができる2剤型急結剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態(本実施形態)について詳細に説明する。なお、本明細書で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。また、セメントコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、及びコンクリートを総称するものである。
【0019】
[1] 2剤型急結剤
本実施形態に係る2剤型急結剤は、硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤との組み合わせからなる。すなわち、液体急結剤と粉体助剤とは、混合されて使用される前までは物理的に分離されてなる。
【0020】
(液体急結剤)
本実施形態に係る液体急結剤は、硫酸アルミニウムを主成分として含有する。硫酸アルミニウムを主成分として含有することで、液体急結剤がアルカリ性となりにくく、結果として、良好な急結性を維持しながら、取り扱い性と環境負荷低減性を向上させることができる。
ここで「硫酸アルミニウムを主成分として含有する」とは、液体急結剤の急結剤成分中、硫酸アルミニウムの含有量(質量基準)が最も多いことをいい、急結剤成分中50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、なかでも急結剤成分が硫酸アルミニウムのみであることが好ましい。
【0021】
液体急結剤のpHは7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。pHが7以下であることで、環境負荷低減効果を発揮させることができる。pHは2以上であることが好ましい。
【0022】
液体急結剤中、硫酸アルミニウムは20~40質量%含有することが好ましく、25~30質量%含有することがより好ましい。なかでも、硫酸アルミニウムを25~30質量%含有することで、良好な急結性を維持しながら、取り扱い性と環境負荷低減性を向上させることができる。なお、硫酸アルミニウムを溶解若しくは分散させる液体成分としては水を用いることができる。
【0023】
(粉体助剤)
本実施形態に係る粉体助剤は、カルシウムアルミネートを主成分として含有する。
カルシウムアルミネートを主成分として含有することで、良好な急結性と強度発現性を高めることができる。
ここで「カルシウムアルミネートを主成分として含有する」とは、粉体助剤中の急結剤成分中、カルシウムアルミネートの含有量(質量基準)が最も多いことをいう。
【0024】
ここで、カルシウムアルミネートとは、CaOとAlを主成分とし、水和活性を有する化合物の総称であり、CaO及び/又はAlの一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、あるいは、CaOとAlを主成分とするものにこれらが少量固溶した物質であり、カルシウムアルミネートは結晶質、非晶質のいずれであってもよい。
【0025】
結晶質の具体例としては、CaOをC、AlをA、RO(例えば、NaO、KO、LiO)をRとすると、CAやこれにアルカリ金属が固溶したC14RA、CAやC12やC11・CaF、CA・Fe、及びC・CaSO等が挙げられるが、急結性が良好であることから、非晶質のカルシウムアルミネートが好ましい。
【0026】
なお、本実施形態で用いるカルシウムアルミネートは、工業原料から微量のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属が混入し、このアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属を含むカルシウムアルミネートが一部生成する可能性があるが、これらのわずかなアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の存在によって何ら制限を受けるものではない。
【0027】
カルシウムアルミネートのCaO/Alモル比は特に限定はされないが、極初期の強度発現性を考慮すると、当該モル比は2.0~3.0が好ましく、2.2~2.8がより好ましい。モル比が2.0以上であると、極初期の凝結性状を良好にすることができ、3.0以下であると、良好な長期強度発現性が得られやすくなる。
【0028】
本実施形態の粉体助剤におけるカルシウムアルミネートの含有量は、粉体助剤中、30質量%以上であり、30~80質量%であることが好ましく、45~60%であることがより好ましい。30質量%以上であると良好な凝結性状が得られやすくなる。なお、80質量%以下であると良好な長期強度発現性が得られやすくなる。
【0029】
カルシウムアルミネートのブレーン比表面積(以下、単に「ブレーン」ということがある)は、4000~8000cm/gであることが好ましく、5000~7000cm/gであることがより好ましい。4000~8000cm/gであることで、初期強度発現性が得られやすく、吹き付け時のモルタル及び/又はコンクリートの取扱い性を良好にすることができる。
なお、ブレーン比表面積とは、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に記載された比表面積試験に基づいて測定されたものである。
【0030】
粉体助剤中のRO(Rはアルカリ金属で、好ましくはKO及びNaO)の含有量は1質量%未満であることが好ましく、ROの含有量が1質量%未満であることで、取り扱い性と環境負荷低減性を向上させることができる。粉体助剤中のROの含有量は原子吸光分析により測定することができる。
【0031】
粉体助剤は硫酸カルシウムを含むことが好ましく、その含有量は10~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。粉体助剤中、硫酸カルシウムの含有量が10~50質量%であることで、強度発現を向上することができる。
【0032】
また、粉体助剤は硫酸アルミニウムを含んでもよく、その含有量(無水塩換算)は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。粉体助剤中、硫酸アルミニウムの含有量が20質量%以下であることで、凝結特性を向上させることができる。硫酸アルミニウムは、0.3質量%以上であることが好ましい。
【0033】
本明細書において、硫酸アルミニウムは、セメントモルタルやセメントコンクリートに対して、主に凝結速度を増進する効果を付与する。
【0034】
硫酸アルミニウムとしては、特に限定されるものではなく、市販されているものが使用でき、当該硫酸アルミニウムは、0~18水塩であることが好ましい。
【0035】
特に、硫酸アルミニウムは無水塩になると、溶解速度が小さくなるので、凝結特性を向上させる効果が小さくなる。そのため、有水塩(水和数18以下の有水塩)を使用することが好ましく、貯蔵安定性を考慮すると、8水塩を含むことがより好ましい。
【0036】
粉体助剤において、硫酸アルミニウム(無水塩換算)とカルシウムアルミネートとの質量比(硫酸アルミニウム/カルシウムアルミネート)は、凝結特性をより向上させる観点から、0.01~0.50であることが好ましく、0.02~0.30であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態に係る液体急結剤及び粉体助剤は、既述の成分以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で種々の添加剤を含有させることができるが、取り扱い性の観点から、アルミン酸ソーダは含有しないことが好ましい。
【0038】
[2] 吹付材料及び吹付け方法
本実施形態に係る吹付材料は、本発明の2剤型急結剤とセメントコンクリートとを含む。
当該吹付け材料に用いるセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)を挙げることができる。
【0039】
吹付材料には実際的には骨材を用いるが、当該骨材は特に限定されるものではなく、吸水率が低くて、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は、吹付けできれば特に限定されるものではない。細骨材としては、川砂、山砂、海砂、石灰砂、及び珪砂などが使用可能であり、粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利などが使用可能であり、砕砂、砕石も使用可能である。
【0040】
本実施形態に係る吹付材料において、セメントコンクリートにおけるセメント100質量部に対して、硫酸アルミニウムは0.5質量部以上であり、カルシウムアルミネートは0.5質量部以上であり、硫酸アルミニウムとカルシウムアルミネートの合計が、セメントコンクリートにおけるセメント100質量部に対して、15質量部以下であることが好ましい。
【0041】
また、セメント100質量部に対して、硫酸アルミニウムの含有量(X)とカルシウムアルミネートの含有量(Y)との質量比(Y/X)は、0.5~5であることが好ましく、0.8~3.0であることがより好ましい。質量比が、0.5~5であることで、吹付時の跳ね返りを防ぎ、取り扱い性をより向上させることができる。
【0042】
本実施形態に係る吹付け方法は、本発明の吹付材料を用いた吹付け方法であり、硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤と、セメントコンクリートとを混合して吹付け処理を施す方法である。
【0043】
本発明では、粉体急結剤と液体急結剤とを、吹付セメントコンクリートに添加する直前に、混合管で合流混合し、スラリー化することが、吹付けセメントコンクリートとの混合性を向上する面から好ましい。なお、水/セメント比は65%以下が好ましい。
【実施例0044】
以下、実験例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
「実験例1-1~1-14」
液体急結剤として市販品の硫酸アルミニウム水溶液(濃度27%)を使用した。
また、カルシウムアルミネート、硫酸カルシウム、及び硫酸アルミニウムを表1に示す配合で混合して粉体助剤を調製した。
さらに、セメント800g、細骨材2000g、及び水400gを混合してモルタルを調製した。
このモルタルのセメント100質量部に対して、液体急結剤及び粉体助剤を表1に示す配合で混合して吹付材料を調製した。吹付材料を調製したときから凝結が開始される始発時間と、凝結が終了する終結時間を測定する凝結試験を行った。また、圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。また、液体急結剤のpH及び粉体助剤中のRO割合も表1に示す。
なお、pHはpHメーターを用いて測定した。RO割合は原子吸光法で測定した。
【0046】
さらに、単位セメント量を400kg/mとし、細骨材比率(s/a)が65%、単位水量はセメント100部に対し50部としたコンクリートを練混ぜ、吹付けコンクリートとして調製し、コンクリートポンプ「シンテックMKW-25MT」を使用して圧送した。圧送配管途中にY字状の混合管を設け、液体急結剤と粉体助剤をコンクリートに圧送添加して急結性吹付けセメントコンクリートとし模擬トンネル壁面に吹付けを実施して発生した粉じんと跳ね返りを測定した。
【0047】
使用材料及び各種試験方法は下記のとおりである。
「使用材料」
セメント:市販品、普通ポルトランドセメント、密度3.15g/cm
細骨材:新潟県姫川水系川砂、密度2.61g/cm
粗骨材:新潟県糸魚川6号砕石、最大寸法15mm、密度2.64
水:工業用水
カルシウムアルミネート:CaO/Alモル比2.5となるように原料(CaCO及びAl)を粉砕混合し、電気炉で溶融し、急冷したもの、ガラス化率90%、ブレーン5500cm/g
硫酸アルミニウム:市販品、8水塩、粒径10μm以下の粒子含有率:5%
硫酸カルシウム:市販品、無水、ブレーン値4,000cm/g、密度2.9g/cm
【0048】
「試験方法」
凝結試験:吹付材料を調製した直後、素早くプロクター試験専用型枠へ型詰めし、吹付材料を調製したときからの凝結の始発時間、終結時間を測定(JSCE-D102付属書3に準じて測定)した。
【0049】
圧縮強度:凝結試験と同様に、急結モルタルを調製したときからの圧縮強度(N/mm)を測定した。材齢は3時間、1日、28日とした(JSCE D102に準じて測定)。
【0050】
粉じん量:急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、模擬トンネルに吹付けた。吹付け場所より5mの定位置で粉じん量を粉塵計(柴田化学株式会社、測定範囲0.01~100mg/m、P-5L型)により測定した。
【0051】
跳ね返り(リバウンド率):急結性吹付けコンクリートを10m/hの圧送速度で10分間、鉄板でアーチ状に作製した高さ4.4m、幅5.5mの模擬トンネルに吹付けた。その後、(リバウンド率)=(模擬トンネルに付着せずに落下した急結性吹付けコンクリートの量)/(模擬トンネルに吹付けた急結性吹付けコンクリートの量)×100(%)で算出した。
【0052】
「参考例」
参考液体急結剤として、無機塩系液体急結剤を用いた。参考粉体助剤として、鉱物系粉体急結剤を用いた。これらを用いた実験例と同様な試験を行った。結果を表1に示す。
無機塩系液体急結剤:商品名「ナトミックL」(アルミン酸アルカリ溶液系)
鉱物系粉体急結剤:商品名「ナトミックZ」(カルシウムアルミネート鉱物系)
【0053】
【表1】

「実験例2-1~2-6」
硫酸アルミニウムと水を表2に示す配合で混合して液体急結剤を調製した。
また、カルシウムアルミネート、硫酸カルシウム、及び硫酸アルミニウムを表2に示す配合で混合して粉体助剤を調製した。
実験例1に示したモルタルとコンクリートを用いた試験と同様に、凝結が開始される始発時間、凝結が終了する終結時間、圧縮強度、粉じん、跳ね返りを測定した。
【0054】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、特に土木分野、建築分野等で用いられる急結材料に好適に使用できる。
【手続補正書】
【提出日】2021-07-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤との組み合わせからなる2剤型急結剤であって、
前記粉体助剤中のR O(Rはアルカリ金属)の含有量が1質量%未満であり、
前記粉体助剤が硫酸カルシウムを含み、該粉体助剤における硫酸カルシウムの含有量が10~50質量%であり、
前記粉体助剤が8~18水塩の硫酸アルミニウムを含み、該粉体助剤における硫酸アルミニウムの含有量が0.3質量%以上20質量%以下である2剤型急結剤
【請求項2】
前記液体急結剤のpHが7以下である請求項1に記載の2剤型急結剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の2剤型急結剤とセメントコンクリートとを含む吹付材料。
【請求項4】
前記セメントコンクリートにおけるセメント100質量部に対して、硫酸アルミニウムが0.5質量部以上であり、カルシウムアルミネートが0.5質量部以上であり、
前記硫酸アルミニウムとカルシウムアルミネートの合計が、前記セメントコンクリートにおけるセメント100質量部に対して、15質量部以下である請求項に記載の吹付材料。
【請求項5】
前記硫酸アルミニウムの含有量(X)と前記カルシウムアルミネートの含有量(Y)との質量比(Y/X)が、0.5~5である請求項3又は4に記載の吹付材料。
【請求項6】
硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、
カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤であって、前記粉体助剤中のR O(Rはアルカリ金属)の含有量が1質量%未満であり、前記粉体助剤が硫酸カルシウムを含み、該粉体助剤における硫酸カルシウムの含有量が10~50質量%であり、前記粉体助剤が8~18水塩の硫酸アルミニウムを含み、該粉体助剤における硫酸アルミニウムの含有量が0.3質量%以上20質量%以下である粉体助剤と、セメントコンクリートとを混合して吹付け処理を施す吹付け方法。
【手続補正書】
【提出日】2021-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤との組み合わせからなる2剤型急結剤であって、
前記粉体助剤中のRO(Rはアルカリ金属)の含有量が1質量%未満であり、
前記粉体助剤が硫酸カルシウムを含み、該粉体助剤における硫酸カルシウムの含有量が10~40質量%であり、
前記粉体助剤が8~18水塩の硫酸アルミニウムを含み、該粉体助剤における硫酸アルミニウムの含有量が0.3質量%以上20質量%以下である2剤型急結剤。
【請求項2】
前記液体急結剤のpHが7以下である請求項1に記載の2剤型急結剤。
【請求項3】
硫酸アルミニウムを主成分として含有する液体急結剤と、
カルシウムアルミネートを主成分として含有する粉体助剤であって、前記粉体助剤中のRO(Rはアルカリ金属)の含有量が1質量%未満であり、前記粉体助剤が硫酸カルシウムを含み、該粉体助剤における硫酸カルシウムの含有量が10~40質量%であり、前記粉体助剤が8~18水塩の硫酸アルミニウムを含み、該粉体助剤における硫酸アルミニウムの含有量が0.3質量%以上20質量%以下である粉体助剤と、セメントコンクリートとを混合して吹付け処理を施す吹付け方法。