(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133750
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】トノカバー
(51)【国際特許分類】
B60R 5/04 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
B60R5/04 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032626
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】武田 博敬
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022BA03
3D022BB03
3D022BB04
3D022BC10
(57)【要約】
【課題】シート状部材に弛み及びしわが生じ難くすることを目的とする。
【解決手段】トノカバー20は、シート状部材22と、前記シート状部材の外周縁部に縫付けられる縁取り部材であって、前記縁取り部材の内面と前記外周縁部との間に細長い芯材収容空間を形成する縁取り部材30と、縁取り部材30の芯材収容空間32S内に収容されるループ状の芯材40と、外周縁部24の少なくとも一部に取付けられるフレーム部材50とを備える。フレーム部材50は、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62を含み、それらのうちの少なくとも一方において、外周縁部24と縁取り部材30と芯材40とを収容する縁収容空間53S、63Sを形成するための縁収容部53、63が形成されると共に、縁収容空間内に突出し、縁取り部材30を介して芯材40のうち前記シート状部材22側の面に接触可能な接触部58、68が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後部荷室を覆う車両用のトノカバーであって、
シート状部材と、
前記シート状部材の外周縁部に縫付けられる縁取り部材であって、前記縁取り部材の内面と前記外周縁部との間に細長い芯材収容空間を形成する縁取り部材と、
前記芯材収容空間内に収容されるループ状の芯材と、
前記シート状部材の外周縁部の少なくとも一部に取付けられるフレーム部材と、
を備え、
前記フレーム部材は、前記シート状部材の外周縁部の少なくとも一部において前記縁取り部材を挟込む第1分割フレームと第2分割フレームとを含み、
前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとのうちの少なくとも一方において、前記シート状部材の外周縁部と前記縁取り部材と前記芯材とを収容する縁収容空間を、前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとの間に形成するための縁収容部が形成されると共に、前記縁収容空間内に突出し、前記縁取り部材を介して前記芯材のうち前記シート状部材側の面に接触可能な接触部が設けられている、トノカバー。
【請求項2】
請求項1記載のトノカバーであって、
前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとのそれぞれのうち互いに対向する部分に、前記縁収容部が形成され、
前記接触部は、前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとが合体した状態で、前記シート状部材の外周縁部を前記接触部に対向する前記縁収容部に押込む突出長に形成されている、トノカバー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のトノカバーであって、
前記接触部が前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとの両方に設けられ、
前記第1分割フレームに設けられた前記接触部と、前記第2分割フレームに設けられた前記接触部とが、前記シート状部材の外周縁部の方向に沿って互いに異なる位置に設けられている、トノカバー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のトノカバーであって、
前記フレーム部材が2つ設けられ、
前記2つのフレーム部材が前記シート状部材の外周縁部のうち互いに対向する位置に取付けられる、トノカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、自動車等の車両に搭載されるトノカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状のメインカバーと周縁部材とフレキシブルなループ状のワイヤとで構成されているカバー本体を備えるトノカバーを開示している。周縁部材は、メインカバーの全周囲を取り囲むように縫合されたレザー又は布によって構成されている。ループ状のワイヤは、メインカバーの全周囲に沿って配設されかつ周縁部材により完全に包み込まれた状態で当該周縁部材に一体的に取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メインカバーの外周に対するワイヤの取付は、周縁部材を折返して袋状に形成し、これにより袋状に形成された部分でワイヤを包込み、ワイヤを包込んだ周縁部材をメインカバーの外周に縫合することによってなされる。
【0005】
しかしながら、ワイヤを周縁部材で包込みながら、当該周縁部材をメインカバーに縫合する作業は困難である。このため、ワイヤの外周に沿った方向において、メインカバーの外周に対するワイヤの距離が不揃いとなり得る。この場合、ワイヤがメインカバーの外周を外周側に引っ張る力が弱い部分で、メインカバーに弛み及びしわが生じ得る。
【0006】
そこで、本開示は、シート状部材に弛み及びしわが生じ難くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、トノカバーは、車両の後部荷室を覆う車両用のトノカバーであって、シート状部材と、前記シート状部材の外周縁部に縫付けられる縁取り部材であって、前記縁取り部材の内面と前記外周縁部との間に細長い芯材収容空間を形成する縁取り部材と、前記芯材収容空間内に収容されるループ状の芯材と、前記シート状部材の外周縁部の少なくとも一部に取付けられるフレーム部材と、を備え、前記フレーム部材は、前記シート状部材の外周縁部の少なくとも一部において前記縁取り部材を挟込む第1分割フレームと第2分割フレームとを含み、前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとのうちの少なくとも一方において、前記シート状部材の外周縁部と前記縁取り部材と前記芯材とを収容する縁収容空間を、前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとの間に形成するための縁収容部が形成されると共に、前記縁収容空間内に突出し、前記縁取り部材を介して前記芯材のうち前記シート状部材側の面に接触可能な接触部が設けられているものである。
【発明の効果】
【0008】
このトノカバーによると、シート状部材に弛み及びしわが生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るトノカバーが車両に装着された状態を示す説明図である。
【
図3】
図2のIII-III線断面における説明図である。
【
図4】
図2のIV-IV線断面における説明図である。
【
図5】トノカバーの溝に沿う面における部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るトノカバーについて説明する。
図1はトノカバー20が車両10に装着された状態を示す説明図である。
図1は車両10の後部の一部を斜め上方から見た図である。
【0011】
<車両におけるトノカバーの位置について>
図1では、後部座席11、後部荷室Rの両側壁12及びバックドア14が示される。同図に示すように、車両10は、ハッチバイクタイプ又はステーションワゴンタイプ等と称される車両である。車両10は、図示省略の前部座席と、当該前部座席よりも後方に位置する後部座席11とを備える。後部座席11の後方に後部荷室Rが広がっている。後部荷室Rの両側に前後及び上下に延びる側壁12が設けられる。側壁12は、例えば、金属ボディの内側に広がる樹脂製の内装部材である。後部座席11の下方には、前後及び左右方向に広がる図示省略の床が設けられる。
【0012】
後部荷室Rは、リアゲートRGを介して開口している。リアゲートRGは、後部座席11とは反対側の車両外後方から後部荷室Rに対して荷物を出し入れ可能な位置に開口していればよい。
図1では、リアゲートRGは、荷室Rの後部上方から真上に向かう領域に広がっている。
図1に示す例に限られず、リアゲートが設けられる領域は任意である。
【0013】
リアゲートRGは、バックドア14によって開閉される。バックドア14の上部が図示省略のヒンジを介して車体に支持されている。バックドア14は、ヒンジから斜め下後方に延在する状態となって、リアゲートRGを閉じる。この状態で、バックドア14のうちヒンジから遠い側の端部が斜め後方に持上げられることで、バックドア14が開かれる。バックドア14が開かれた状態では、バックドア14は、ヒンジから斜め上後方に延在する状態となる。バックドア14には、リアウインドウ14Wが設けられる。バックドア14が閉じられた状態で、リアウインドウ14Wの少なくとも一部は、後部座席11の背もたれ部分11aよりも上方に広がる。
【0014】
トノカバー20は、車両10の後部荷室Rを覆う。例えば、トノカバー20は、後部座席11の背もたれ部分11aの上部の高さ位置において、後部荷室R内に水平方向に沿って全体的に広がり得る形状及び大きさに形成される。かかるトノカバー20は、背もたれ部分11aの上部の高さ位置において、後部荷室R内の空間、特に、背もたれ部分11aの後方空間を上方から覆うことができる。これにより、後部荷室R内に格納された物をトノカバー20が上方から覆うことができる。外部からリアウインドウ14Wを介して車内に向う視線は、トノカバー20によって遮られるため、後部荷室R内の物が車外から隠される。
【0015】
車両におけるトノカバー20の支持は、バックドア14によってなされてもよい。この場合、例えば、バックドア14を閉じた状態でトノカバー20が水平姿勢となるように、トノカバー20がバックドア14のうちリアウインドウ14Wの下側部分に一定姿勢で支持されていてもよい。例えば、後述するフレーム部材50の一端部が嵌込構造等によってバックドア14に支持されてもよい。この場合、トノカバー20は、バックドア14が開かれると、当該バックドア14と共に上方に移動し、バックドア14が閉じられるとバックドア14と共に下方に移動して後部荷室Rを覆うようになる。この状態で、トノカバー20は、リアウインドウ14Wよりも下方に位置し、運転者による後方視界を妨げない位置に設けられてもよい。
【0016】
また、トノカバー20は、側壁12及び背もたれ部分11aのうちの一方又は両方によって支持されてもよい。例えば、側壁12に、トノカバー20を載置上に支持する支持面又はトノカバー20の外周部の一部が嵌め込まれる凹部又は凹溝が形成されており、トノカバー20が支持面、凹部又は凹溝によって支持されることによって、トノカバー20が後部荷室Rを覆った状態が保たれる構成であってもよい。この場合、バックドア14の開閉に拘らず、トノカバー20は後部荷室Rを覆った状態を保つ。
【0017】
<トノカバーの全体構成について>
図2はトノカバー20の一方側部の分解斜視図である。
図2において第1分割フレーム52に対して分離して上下反転した第2分割フレーム62が2点鎖線で示される。
図3及び
図4は、一対の分割フレーム52、62間に、外周縁部24、縁取り部材30及び芯材40を挟込む状態を示す説明図である。
図3は
図2のIII-III線断面における説明図であり、
図4は
図2のIV-IV線断面における説明図である。
【0018】
トノカバー20は、シート状部材22と、縁取り部材30と、芯材40と、フレーム部材50とを備える。
【0019】
シート状部材22は、柔軟なシートによって構成される。シートは、例えば、樹脂シート、布、皮革(天然皮革であってもよいし、人工皮革であってもよい)、網であってもよい。シート状部材は、単層構造であってもよいし、複数層構造であってもよい。
【0020】
シート状部材22は、後部荷室Rを覆うことができる程度の広がりを有している。ここでは、シート状部材22は、後部荷室Rの上部の高さ位置で、後部荷室Rを覆うことができる程度の形状及び大きさに形成されている。シート状部材22は、外周側に凸となる曲線で囲まれた形状に形成される。シート状部材22の外周の一部が直線を描いていてもよい。本実施形態では、シート状部材22は、上底22aが下底22bよりも短い等脚台形において、上底22aと2つの斜辺22c、22dとが外側に凸となる曲線連結部を介して繋がり、かつ、下底22bと2つの斜辺22c、22dとが外側に凸となる曲線連結部を介して繋がる形状に形成されている。トノカバー20が車両10に装着された状態で、下底22bが後部座席11の背もたれ部分11a側を向き、上底22aがバックドア14側を向く。上底22a、下底22b、斜辺22c、22dも、外側に凸となる曲線をなしていてもよいが、これらの部分の曲げ半径は、上記曲線連結部における曲げ半径よりも大きい。以下の説明では、斜辺22c(又は斜辺22d)は、曲線連結部を含むとして説明がなされることがある。なお、シート状部材22は、多角形状に対して、各辺の中央に向うほど曲率半径が大きく、角部に対応する位置に向う程曲率半径が小さくなるように、全体的に曲線で囲むような変形を加えた形状であると把握されてもよい。
【0021】
なお、以下の説明において、シート状部材22の中心に対して外側に向う方向を外側又は外周側、その中心に向う方向を内側又は内周側という場合がある。
【0022】
縁取り部材30は、シート状部材22の外周縁部24に縫付けられる部材である。例えば、縁取り部材30は、柔軟な帯状のシートによって構成される。シートは、上記シート状部材22と同様に、例えば、樹脂シート、布であってもよいし、皮革(天然皮革であってもよいし、人工皮革であってもよい)、網であってもよい。縁取り部材30を構成するシートは、単層構造であってもよいし、複数層構造であってもよい。
【0023】
縁取り部材30は、シート状部材22の外周縁部24の全体に縫付け可能な程度の寸法、例えば、外周縁部24の長さと同じ又はそれ以上の長さ寸法の帯状に形成される。縁取り部材30がシート状部材22の外周縁部24に縫付けられた状態で、縁取り部材30の端部が重なっていてもよい。
【0024】
上記は、縁取り部材30が1つであることを前提とした説明であるが、縁取り部材は外周縁部に沿う方向において複数に分割されていてもよい。この場合、複数の縁取り部材が連なりつつ、シート状部材の外周縁部の全体に縫付けられてもよい。
【0025】
縁取り部材30は、幅方向中間に芯材40を収容可能で、かつ、幅方向両側をシート状部材22の外周縁部24に縫付け可能な幅寸法に形成される。つまり、縁取り部材30は、芯材収容部32と、その両外側の一対の縫付け部34とを含む。
【0026】
芯材収容部32は、縁取り部材30の幅方向中央部に設定される帯状の領域である。芯材収容部32の幅方向中央部を曲げて芯材収容部32の幅方向両側部を互いに近づけることにより、芯材収容部32を、その横断面(芯材収容部32の長手方向に対して直交する断面)で観察したときに輪をなすように変形させる。これにより、芯材収容部32内に芯材40を収容可能な芯材収容空間32Sが形成される。
【0027】
縫付け部34は、縁取り部材30の幅方向両側に設定される一対の帯状の領域である。本実施形態では、縫付け部34は、縁取り部材を構成するシートの側部を、その延在方向に沿ったラインで2つ折りされることにより2重構造に形成されている。この場合、縫付け部34の縁は、内側に折込まれていることが好ましい。縫付け部34は、一重構造であってもよいし、3層構造以上であってもよい。
【0028】
芯材収容部32によって芯材収容空間32Sを形成した状態で、縁取り部材30の幅方向両側の一対の縫付け部34が、シート状部材22の外周縁部24に縫糸38で縫付けられることによって、シート状部材22の外周側に、縁取り部材30の内面と外周縁部24との間に細長い芯材収容空間32Sが形成される。本実施形態では、一方の縫付け部34が外周縁部24の一方主面側に配置され、他方の縫付け部34が外周縁部24の他方主面側に配置される。そして、一対の縫付け部34の間に外周縁部24を挟込んだ状態で、一対の縫付け部34が外周縁部24に縫付けられる。これにより、シート状部材22の両面側で、縁取り部材30が対称構造をなし、芯材収容空間32S内に収容された芯材40による引張り力が、縁取り部材30を介してバランスよくシート状部材22の両面側に伝達される。なお、重ねられた一対の縫付け部34が、外周縁部24のいずれか一方側の面に配置されて、当該外周縁部24に縫付けられてもよい。
【0029】
芯材40は、ループ状の部材であり、そのループの内周側及び外周側に弾性変形可能な部材である。芯材40は、例えば、ばね鋼、弾性変形可能な樹脂によって形成される。芯材40は、縫付け部34を介してシート状部材22の外周縁部24を外周側に引張ることができる程度に、シート状部材22の外周縁部よりも大きい形状に形成されている。芯材40が、縫付け部34によって形成された芯材収容空間32S内に収容されることで、芯材40がシート状部材22の外周縁部24の全体に亘って配置される。これにより、芯材40が縫付け部34を介して、シート状部材22を平面的に展開した状態に保つことができる。また、芯材40が外周側に拡がろうとする弾性力によって、外周縁部24を外周側に引張ることができる。これにより、シート状部材22が平面的にぴんと張った状態となる。
【0030】
芯材40の横断面形状(芯材40の延在方向に対して直交する方向の断面形状)は任意であり、円形であってもよいし、楕円形状であってもよいし、長方形状であってもよい。
図3及び
図4では、芯材40の横断面形状が、当該芯材40の内外方向において短い長方形状でかつ角が丸められた形状である例が示される。
【0031】
フレーム部材50は、シート状部材22の外周縁部24の少なくとも一部に取付けられる部材である。フレーム部材50は、剛性部材、例えば、芯材40よりも曲り難い長尺部材である。フレーム部材50は、例えば、樹脂によって形成される。シート状部材22の外周縁部24のうちフレーム部材50が取付けられた部分は、他の部分と比較して変形し難くなるため、本トノカバー20が一定形状に保たれ易い。
【0032】
本実施形態では、トノカバー20は、2つのフレーム部材50を備える。2つのフレーム部材50は、シート状部材22の外周縁部24のうち互いに対向する位置に取付けられる。ここでは、2つのフレーム部材50が、シート状部材22の外周縁部24のうち対向する2つの斜辺22c、22dに取付けられる。
【0033】
<フレーム部材について>
このトノカバー20では、芯材収容空間32S内の芯材40が、芯材収容部32の内周面にシート状部材22側から接触する。そして、芯材40が外周側に拡がろうとする弾性力が、芯材収容部32及び縫付け部34を介してシート状部材22の外周縁部24に伝達される。これにより、外周縁部24がシート状部材22の外周側に引張られる。芯材40がシート状部材22の外周縁部24を外周側に引張ろうとする力が、シート状部材22の外周縁部全体に亘ってほぼ均等であれば、シート状部材22は、弛み及びしわ無く、ぴんと張った状態に保たれる。
【0034】
しかしながら、芯材収容部32内の芯材収容空間32Sに芯材40を収容した状態で、一対の縫付け部34をシート状部材22の外周縁部24に縫付けていく作業は困難である。このため、外周縁部24の全体において、一対の縫付け部34及び外周縁部24における縫付け位置を揃えることは、難しい。それらの縫付け位置が不揃いになること等が原因で、シート状部材22の外周縁部24に対する芯材40の位置が、外周縁部24の延在方向において、相対的に異なってしまう事態が生じ得る。すると、芯材40のうち外周縁部24に相対的に近くに位置する部分では、シート状部材22の外周縁部24を外周側に引張る力が相対的に弱くなってしまう。この部分の内側等で、シート状部材22に弛み又はしわが生じ得る。
【0035】
フレーム部材50に、シート状部材22に弛み及びしわが生じ難くための構成が設けられる。フレーム部材50についてより具体的に説明する。なお、本実施形態では、2つのフレーム部材50は、左右対称構造であるため、以下では、一方のフレーム部材50を中心にした説明がなされる。
【0036】
フレーム部材50は、長尺部材に形成される。より具体的には、フレーム部材50は、シート状部材22の一方の斜辺22c(又は斜辺22d)に応じた長尺形状に形成される。フレーム部材50は、シート状部材22の厚み方向において平たい部材に形成される。フレーム部材50のうち外向き部分50aは、斜辺22c(又は斜辺22d)の湾曲形状に応じて湾曲する形状に形成される。フレーム部材50のうち一方側端部50bは、外向き部分50aに対して滑らかに連続する曲線を描く。フレーム部材50のうち内向き部分50cは、外向き部分50aよりも内側で、斜辺22c(又は斜辺22d)の湾曲形状に応じて湾曲する形状に形成される。フレーム部材50のうちの他方側端部50dは、外向き部分50a及び内向き部分50cに対して交差する方向に沿って延在する。
【0037】
斜辺22cは、フレーム部材50のうち外向き部分50a及び一方側端部50bの内側に配置される。斜辺22cの一方側の湾曲連結部が内向き部分50cのうち一方側端部50b寄りの部分を通過してフレーム部材50の外に延び出る。斜辺22cのうちの他方側の湾曲連結部は、他方側端部50dを通ってフレーム部材50の外に延び出る。
【0038】
フレーム部材50は、第1分割フレーム52と、第2分割フレーム62とを含む。第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とは、シート状部材22の外周縁部24の少なくとも一部において縁取り部材30を挟込む。本実施形態では、シート状部材22のうちの斜辺22c(又は斜辺22d)において縁取り部材30を挟込む。
【0039】
より具体的には、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とは、フレーム部材50をその厚み方向(シート状部材22の厚み方向)において2分割した部材である。第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とのうちの少なくとも一方に縁収容部53、63が形成される。縁収容部53、63は、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62との間に縁収容空間53S、63Sを形成する。縁収容空間53S、63Sは、シート状部材22の外周縁部24と縁取り部材30と芯材40とを収容するための空間である。
【0040】
本実施形態では、第1分割フレーム52のうち第2分割フレーム62と対向する部分に、縁収容空間53Sを形成するための縁収容部53が形成される。また、第2分割フレーム62のうち第1分割フレーム52と対向する部分に縁収容空間63Sを形成するための縁収容部63が形成される。
【0041】
より具体的には、第1分割フレーム52は、樹脂等によって一体的に金型成形された部材であり、ベース板部54と外側壁部56と内側壁部57とを備える。ベース板部54は、シート状部材22の延在方向に沿って延びる板状に形成された部分である。ベース板部54の外形状は、上記フレーム部材50の外形状と同様に、外周縁部24の少なくとも一部、ここでは、斜辺22c(又は斜辺22d)が延びる形状に応じた細長い形状に形成されている。外側壁部56及び内側壁部57は、ベース板部54から第2分割フレーム62側に突出している。外側壁部56は、ベース板部54のうち上記一方側端部50bから外向き部分50aを経て他方側端部50dの途中に至る部分に形成される。内側壁部57は、内向き部分50cのうち一方側端部50bに対して離れた位置から他方側端部50dに至る部分に形成される。ベース板部54と外側壁部56と内側壁部57とによって縁収容部53が構成される。ベース板部54と外側壁部56と内側壁部57とで囲まれる空間は、外周縁部24と縁取り部材30と芯材40とを収容可能な縁収容空間53Sである。この縁収容空間53Sは、第2分割フレーム62側に向けて開口している。また、ベース板部54の全周のうち外側壁部56と内側壁部57との間には、壁が無い部分が形成されており、この部分を通って外周縁部24、縁取り部材30及び芯材40がフレーム部材50内から外方に延出する。
【0042】
第2分割フレーム62は、樹脂等によって一体的に金型成形された部材である。第2分割フレーム62は、第1分割フレーム52との合わせ面を対称面として、第1分割フレーム52と対称構造を有している。すなわち、第2分割フレーム62は、ベース板部54に対応するベース板部64と、外側壁部56に対応する外側壁部66と、内側壁部57に対応する内側壁部67とを備える。なお、外側壁部56の内側縁はその外側縁よりも突出しており、これとは逆に、外側壁部66の内側縁はその外側縁よりも凹んでいる。このため、外側壁部56、66が突合わされた状態で、外側壁部56、66の先端部同士が嵌り合って重なった状態となり、それらの間に隙間が生じ難くなっている。ベース板部64と外側壁部66と内側壁部67とによって縁収容部63が構成される。ベース板部64と外側壁部66と内側壁部67とで囲まれる空間は、外周縁部24と縁取り部材30と芯材40とを収容可能な縁収容空間63Sである。この縁収容空間63Sは、第1分割フレーム52側に向けて開口している。
【0043】
上記例に限られず、第1分割フレームと第2分割フレームとの一方のみに縁収容部が形成されてもよい。例えば、第1分割フレームのうち第2分割フレームに対向する部分に縁収容空間を形成する縁収容部が形成され、第2分割フレームのうち第1分割フレームと対向する部分は上記縁収容部の開口を塞ぐ平面形状に形成されていてもよい。
【0044】
第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とが合体した状態で、縁収容空間53Sと縁収容空間63Sとを含む空間に、外周縁部24と縁取り部材30と芯材40とが収容される。本実施形態では、ベース板部54の内面54fとベース板部64の内面64f間の距離H1は、シート状部材22及び縁取り部材30のうちシート状部材22に縫付けられた縫付け部34を収容可能な大きさに設定される。本実施形態では、外周縁部24に二重構造の縫付け部34が縫付けられている。距離H1は、外周縁部24の厚み寸法に当該外周縁部24に縫付けられた一対の縫付け部34の厚み寸法を付加した程度の大きさに設定される。
【0045】
また、本実施形態では、芯材40及び縁取り部材30のうち芯材40を囲む部分の総厚みT2は、上記距離H1よりも大きい。ここでは、芯材40に対して第1分割フレーム52及び第2分割フレーム62の両側を芯材収容部32が覆っているので、シート状部材22の厚み方向における芯材40の寸法に芯材収容部32の2枚分の厚み寸法を付加した寸法が上記厚みT2である。この場合、芯材40及び芯材40を覆う縁取り部材30は、ベース板部54の内面54fとベース板部64の内面64fとの間に収まり難い。そこで、ベース板部54、64のうち芯材40の予定配置経路に沿って溝54g、64gが形成されている。溝54g、64gは、内向き部分50cのうち一方側端部50b寄りの位置から内向き部分50cと外向き部分50aとの間を通り他方側端部50dに至り、かつ、斜辺22c(又は斜辺22d)の形状に応じた形状に形成される。溝54g、64gは、芯材40及び芯材40を囲む縁取り部材30を収容可能な深さに設定される。換言すれば、溝54g、64gは、溝54g、64gの底間の寸法が、内側壁及び外側壁間の少なくとも一部において、上記厚みT2以上となるように形成される。
【0046】
上記のように、ベース板部54、64に部分的な溝54g、64gが形成されることは必須ではなく、ベース板部54、64の間の全体に芯材40及び芯材40を囲む縁取り部材30が配置可能とされていてもよい。もっとも、上記のように、溝54g、64gが形成されれば、ベース板部54、64の間において芯材40が配置される位置が、当該溝54g、64gの存在領域に限定される。
【0047】
本実施形態では、溝54g、64gは、三角溝形状に形成される。内向き部分50c側の面54ga、64gaは、外向き部分50a側の面54gb、64gbよりもベース板部54、64の他の面(又はシート状部材22)に対する傾斜角度が小さくかつ内外方向において長い斜面形状に形成されている。これにより、芯材40を囲む縁取り部材30が溝54g、64g内のうち一定以上の深さを有する範囲に案内されるため、芯材40の存在領域がより限定される。もっとも、溝54g、64gは、内向き部分50cと外向き部分50aとを結ぶ方向において同じ深さ部分が連続する部分を含む溝形状であってもよい。また、溝54g、64gが設けられることは必須ではない。
【0048】
第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とが合体した状態で、シート状部材22の外周縁部24、縁取り部材30及び芯材40は、次のような状態で第1分割フレーム52と第2分割フレーム62との間に挟込まれる。
【0049】
すなわち、芯材40は、溝54g、64gによって形成される細長い空間内に配置される。芯材40は、フレーム部材50の内向き部分50cのうち一方側端部50b寄りの箇所及び他方側端部50dから外部に延出する。縁取り部材30は、芯材40を覆った状態で、縁収容空間53S、63Sによって形成される細長い空間内に配置される。縁取り部材30のうち芯材40を囲む芯材収容部32は、芯材40と共に、溝54g、64gによって形成される空間内に配置される。特に、芯材40及び芯材40を囲む芯材収容部32は、溝54g、64gのうち芯材40及び芯材40を囲む芯材収容部32を収容可能な深さを有する領域(最も深い箇所及びその周辺領域)に配置される。
【0050】
縁取り部材30のうちシート状部材22の外周縁部24に縫付けられた一対の縫付け部34は、溝54g、64gから内側壁部57側に向い、ベース板部54、64の内面54f、64f(ベース板部54、64の内面のうち溝54g、64gが形成されていない部分であり、本実施形態では平面に形成される)間に配置される。シート状部材22の外周縁部24は、一対の縫付け部34に挟込まれた状態で、ベース板部54、64の内側の内面54f、64fの間に配置される。
図3及び
図4では外周縁部24は、芯材40の内周側近くまで達しているが、これは必須ではなく、縫付け部34に縫付けられた箇所よりも外周側に延在していればよい。シート状部材22は、一対の縫付け部34の間から出て、一対の内側壁部57,67間を通ってフレーム部材50から延出する。
【0051】
第1分割フレーム52と第2分割フレーム62との合体状態は任意の構成によってなされ得る。例えば、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とは熱溶着によって接合されてもよい。より具体的には、外側壁部56、66の先端縁同士が熱によって溶けて接合されてもよい。また、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とのそれぞれの内部に、互いに突合うことができる凸部が形成され、それらの凸部同士が熱溶着されてもよい。また、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とは、互いに引っ掛り合うロック構造、接着剤、ネジ、リベット等によって合体状態に保たれてもよい。
【0052】
芯材40及び芯材40を囲む芯材収容部32は、上記溝54g、64g内に配置される。
【0053】
第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とのうちの少なくとも一方の縁収容部53、63に、縁取り部材30を介して芯材40のうちシート状部材22側の面に接触可能な接触部58、68が形成される。本実施形態では、第1分割フレーム52の縁収容部53に接触部58が形成され、第2分割フレーム62の縁収容部63に接触部68が形成される例が示される。
【0054】
接触部58、68は、溝54g、64gの延在方向において部分的な凸部として形成されている。接触部は、溝54g、64gの延在方向に延びる細長い凸部であってもよい。
【0055】
接触部58は、溝54gのうち最も深い部分よりも内側壁部57寄りの位置、即ち、面54gaから突出して形成されている。溝54gの延在方向に沿って接触部58を見ると、接触部58のうち外側壁部56側の面58f1は、シート状部材22(内面54f)に対して交差している。接触部58のうち内側壁部57側の面58f2は、シート状部材22(内面54f)に対して交差している。面58f2は途中で傾斜角度が変る面に形成されているが、これは必須ではない。面58f1は、面58f2よりもシート状部材22(内面54f)に対して垂直に近い角度をなしている。面58f1は、シート状部材22(内面54f)に対して垂直であってもよい。面58f1がシート状部材22(内面54f)に対して垂直であれば、芯材40を内側壁部57側でより確実に一定位置で位置決めできる。
【0056】
接触部58の先端部と、当該接触部58に対向する溝64gの底間の間隔は、上記厚みT2よりも小さい。このため、芯材40は、接触部58を超えて当該接触部58よりも内側壁部57側に移動できない。縁取り部材30の変形可能性を考慮すると、間隔は、芯材40部分の厚みよりも小さくてもよい。
【0057】
接触部68は、溝64gのうち最も深い部分よりも内側壁部67寄りの位置に形成されている。
【0058】
接触部68は、溝54g、64gの延在方向における位置が異なる点を除き、接触部58に対して前記対称面の両面側で対称構造をなしている。このため、接触部68は、外側壁部66側の面68f1(上記面58f1に対応)と、内側壁部67側の面68f2(面58f2に対応)とを有する。
【0059】
接触部58、68が上記形状であることは必須ではない。接触部58は、フレーム部材50内において、外周縁部24側から縁取り部材30を介して芯材40に接触し、もって、芯材40の内側への移動を規制できる形状であればよい。例えば、接触部58、68は、直方体形状、円柱形状であってもよい。
【0060】
なお、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62の一方の縁収容部のみに接触部が形成されていても、上記と同様に、芯材40をシート状部材22から離れる外周側に変位させることができる。
【0061】
第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とを合体させるにあたって、例えば、シート状部材22の外周縁部24、縁取り部材30及び芯材40を、第1分割フレーム52の縁収容部53内に配置する。この際、芯材40を溝54g内において、接触部58よりも外側壁部56側に配置する。この状態で、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とを合体させる。これにより、シート状部材22の外周縁部24、縁取り部材30及び芯材40が、縁収容部53、63内に配置される。この際、接触部58が設けられた箇所において、芯材40が内側壁部57側に移動しようとしても、接触部58が縁取り部材30を介して芯材40に接触しているため、芯材40が内側壁部57側に移動することが規制される。また、接触部68が設けられた箇所においても、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62との合体により、接触部68が縁取り部材30を介して芯材40に接触することとなるため、芯材40が内側壁部67側に移動することが規制される。このため、接触部58、68が設けられ箇所において、芯材40が接触部58、68よりも内周側に移動することが規制される。
【0062】
なお、芯材40が縁取り部材30を介して接触部58、68に接触した状態で、溝54g、64gのうち外向き部分50a側の面54gb、64gbは、接触部58、68とは反対側で、芯材40に縁取り部材30を介して接触していてもよいし、接触していなくてもよい。面54gb、64gbは、接触部58、68に対して芯材40を介して外側で対向し、芯材40の外側への移動を規制する面の一例である。そのように接触部側を向いて芯材の外側への移動を規制する面は、シート状部材に対して傾斜する面であってもよいし、シート状部材に対して垂直な面であってもよい。
【0063】
芯材40の一部が他の部分と比べてシート状部材22に近い位置に存在している場合、当該芯材40は、接触部58、68と接触することによって、シート状部材22から遠ざかる方向に押される。特に、芯材40が接触部58、68と当該溝54g、64gの上記面54gb、64gbとの間に存在し得る範囲を超えて、芯材40の一部が他の部分と比べてシート状部材22に近い位置に存在している場合、芯材40の当該一部は、接触部58、68によってシート状部材22から遠ざかる方向に押される。
【0064】
芯材40の上記一部が接触部58、68によって外側に変位することによって、当該芯材40に対して縁取り部材30を介して繋がったシート状部材22の外周縁部24も外側に引っ張られる。これにより、芯材40のうち外側への変位部分に対して内側に存在するシート状部材22の部分にも外側への引張り力が作用し、弛み及びしわを伸す。
【0065】
また、縁取り部材30は、芯材40を収容する芯材収容部32を含んでおり、接触部58、68が縁取り部材30を介して芯材40に接触すると、縁取り部材30のうち芯材40から縫付け部34に向う部分が接触部58、68によって内側に押されて曲げられる。すると、縁取り部材30が部分的に曲げられた分、接触部58、68が存在する側の縫付け部34も芯材40が存在する外側に引っ張られる。この引張り力によっても、シート状部材22が外側に引っ張られる。この引張り力によっても、シート状部材22の弛み及びしわを伸すことができる。
【0066】
接触部58、68の突出長Lは、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とが合体した状態で、シート状部材22の外周縁部24を接触部58、68に対向する縁収容部53、63に押込む大きさに形成されていてもよい。
【0067】
つまり、接触部58、68の突出長Lは、接触部58、68によって縁取り部材30を介して押された外周縁部24の一部を、接触部58、68に対向する縁収容部53、63内に侵入させることができる程度の大きさに設定されていてもよい。
【0068】
本実施形態では、縫付け部34は二重構造を有する。縫付け部34及び外周縁部24は、それらの縫付け箇所よりも芯材40に向けて延びており、接触部58、68の頂部近くに位置している。接触部58を例として説明すると、接触部58は、一方の二重構造の縫付け部34を介して外周縁部24を縁収容部63に向けて押込む。この場合、縁収容空間53Sと縁収容空間63Sとの境界面は、例えば、内面54f及び溝54gの底面(面54ga、54gb)と、内面64f及び溝64gの底面(面64ga、64gb)との中央に存在する対称面であると考え、外周縁部24の一部が当該境界面を越えて縁収容空間63S内に侵入すると捉えてもよい。
【0069】
例えば、接触部58の突出長Lに、縁取り部材30を構成するシート2枚分の厚み寸法(一方の二重構造の縫付け部34による厚み寸法)と、シート状部材22の厚み寸法を付加した長さが、溝54gのうち接触部58が形成された部分から上記境界面に至る距離を超える大きさであってもよい。
【0070】
接触部58、68の突出長Lが上記のように設定されることで、シート状部材22の外周縁部24が対向する縁収容部53、63内に入り込むことができる。このシート状部材22の大きな変形量に応じて、縁取り部材30が大きく曲げられることで、シート状部材22がより大きく外側に引っ張られる。これによっても、シート状部材22の弛み及びしわが伸される。
【0071】
図5に溝54g、64gの延在方向に沿う部分断面が示される。
図2から
図5に示すように、接触部58と接触部68とが、外周縁部24の方向に沿って互いに異なる位置に設けられてもよい。本実施形態では、接触部58は複数設けられ、接触部68も複数設けられる。複数の接触部58と複数の接触部68とが、溝54g、64gの延在方向に沿って交互に設けられる。接触部58と接触部68との各間隔は、均等であってもよいし、互いに異なっていてもよい。接触部58と接触部68との各間隔は、均等であれば、溝54g、64gの延在方向において、後述する弛みの除去をなるべく均等に行うことができる。
【0072】
接触部58と接触部68とが、外周縁部24の方向に沿って互いに異なる位置に設けられていれば、縁取り部材30のうち芯材40と外周縁部24とを連結する部分が、外周縁部24の方向に沿って互いに異なる位置で互いに逆方向に押される。本実施形態では、複数の接触部58と複数の接触部68とが溝54g、64gの延在方向に沿って交互に設けられるため、縁取り部材30のうち芯材40と外周縁部24とを連結する部分が、緩やかなジグザクを描くように変位する。これにより、縁取り部材30に連結された外周縁部24も、その延在方向においてシート状部材22の厚み方向に沿って緩やかにジグザグに変位する。外周縁部24が緩やかにジグザグに変位した分、シート状部材22が引っ張られ、シート状部材22の外周縁部の方向に沿った方向の弛みが除去され得る。
【0073】
本トノカバー20は例えば次のようにして組立てられる。まず、縁取り部材30の芯材収容部32内に芯材40を収容させつつ、縁取り部材30の一対の縫付け部34をシート状部材22の外周縁部24に縫付けていく。そして、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62の一方に、外周縁部24、縁取り部材30及び芯材40を収容する。例えば、第1分割フレーム52の開口を上向きにした状態で、外周縁部24、縁取り部材30及び芯材40を縁収容部53内に収容する。この状態で、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とを合体させて、縁収容部53、63内に、外周縁部24、縁取り部材30及び芯材40を収容する。上記したように、合体状態は、ロック構造、接着剤、ネジ、リベット等によって維持されてもよい。
【0074】
同様にして、シート状部材22の斜辺22c、22dのそれぞれに、フレーム部材50が取付けられる。これにより、トノカバー20が組立てられる。
【0075】
このように構成されたトノカバー20によると、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62との合体状態で、芯材40のうち接触部58、68が設けられた部分が他の部分と比較して大きく内側に位置している場合、その部分は、接触部58、68によって当該接触部58、68よりも外側に向けて押される。これにより、接触部58、68が芯材40を押す部分の内側において、シート状部材22が外側に引っ張られ、シート状部材22に弛み及びしわが生じ難くなる。
【0076】
また、接触部58、68は、第1分割フレーム52と第2分割フレーム62とが合体した状態で、シート状部材22の外周縁部24を対向する縁収容部53、63内に押込む突出長に形成されている。このため、シート状部材22の外周縁部24が外周側に向けて大きく引っ張られ、シート状部材22に弛み及びしわがより生じ難くなる。
【0077】
また、接触部58と接触部68とが、外周縁部24の方向に沿って互いに異なる位置に設けられている。このため、接触部58と接触部68とは、外周縁部24の方向に沿って互いに異なる位置で、縁取り部材30を互いに逆方向に押す。これにより、縁取り部材30がシート状部材22の厚み方向で位置を変えるように緩やかにジグザグに変位する。これにより、シート状部材22の外周縁部24の方向に沿った弛みが除去され得る。
【0078】
また、2つのフレーム部材50が、シート状部材22の外周縁部24のうち対向する位置に取付けられる。このため、外周縁部24のうち対向する2つの部分(ここでは、斜辺22c、22d)で、2つのフレーム部材50が、シート状部材22を当該フレーム部材50の形状に応じた姿勢に保ちつつ、上記のように接触部58、68によってシート状部材22を外周側に引っ張る。このため、シート状部材22における弛み及びしわがより効果的に除去される。
【0079】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0080】
本明細書及び図面は下記の各態様を開示する。
【0081】
第1の態様は、車両の後部荷室を覆う車両用のトノカバーであって、シート状部材と、前記シート状部材の外周縁部に縫付けられる縁取り部材であって、前記縁取り部材の内面と前記外周縁部との間に細長い芯材収容空間を形成する縁取り部材と、前記芯材収容空間内に収容されるループ状の芯材と、前記シート状部材の外周縁部の少なくとも一部に取付けられるフレーム部材と、を備え、前記フレーム部材は、前記シート状部材の外周縁部の少なくとも一部において前記縁取り部材を挟込む第1分割フレームと第2分割フレームとを含み、前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとのうちの少なくとも一方において、前記シート状部材の外周縁部と前記縁取り部材と前記芯材とを収容する縁収容空間を、前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとの間に形成するための縁収容部が形成されると共に、前記縁収容空間内に突出し、前記縁取り部材を介して前記芯材のうち前記シート状部材側の面に接触可能な接触部が設けられている、トノカバーである。
【0082】
このトノカバーによると、シート状部材の外周縁部に、縁取り部材及び芯材を取付け、第1分割フレームと第2分割フレームとを合体させ、第1分割フレームと第2分割フレームとの間の縁収容空間に、シート状部材の外周縁部、縁取り部材及び芯材を配置した状態とすることができる。この状態で、縁収容空間内に突出する接触部が、前記縁取り部材を介して前記芯材のうち前記シート状部材側の面に接触し得る。このため、芯材のうち接触部が設けられた部分が芯材の他の部分と比較してシート状部材の外周縁部近くに位置している場合、その部分は、接触部によって外周側に押される。これにより、シート状部材の外周縁部のうち接触部が設けられた部分が外周側に引っ張られることになり、シート状部材に弛み及びしわが生じ難くなる。
【0083】
また、接触部が縁取り部材を介して芯材に接触するため、縁取り部材のうち芯材とシート状部材の外周縁部とを連結する部分が、芯材収容空間内に向けて折曲げられる。これによっても、シート状部材の外周縁部が芯材に向けて、すなわち、外周側に向けて引っ張られる。これによっても、シート状部材に弛み及びしわが生じ難くなる。
【0084】
第2の態様は、第1の態様に係るトノカバーであって、前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとのそれぞれのうち互いに対向する部分に、前記縁収容部が形成され、前記接触部は、前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとが合体した状態で、前記シート状部材の外周縁部を前記接触部に対向する前記縁収容部に押込む突出長に形成されているものである。
【0085】
この場合、縁取り部材のうち芯材とシート状部材の外周縁部とを連結する部分が、外周縁部と共に、芯材収容空間内に向けてより大きく折曲げられる。これにより、シート状部材の外周縁部が外周側に向けてより大きく引っ張られ、シート状部材に弛み及びしわがより生じ難くなる。
【0086】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るトノカバーであって、前記接触部が前記第1分割フレームと前記第2分割フレームとの両方に設けられ、前記第1分割フレームに設けられた前記接触部と、前記第2分割フレームに設けられた前記接触部とが、前記シート状部材の外周縁部の方向に沿って互いに異なる位置に設けられているものである。
【0087】
この場合、第1分割フレームに設けられた前記接触部と、第2分割フレームに設けられた前記接触部とが、縁取り部材のうち芯材とシート状部材の外周縁部とを連結する部分を、前記シート状部材の外周縁部の方向に沿って互いに異なる位置で、互いに逆方向に押す。このため、シート状部材の外周縁部の方向に沿った弛みが除去され得る。
【0088】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係るトノカバーであって、前記フレーム部材が2つ設けられ、前記2つのフレーム部材が前記シート状部材の外周縁部のうち互いに対向する位置に取付けられるものである。
【0089】
この場合、シート状部材のうち対向する外周縁部に設けられた2つのフレーム部材が、それぞれシート状部材を引っ張るので、弛み及びしわがより効果的に除去される。
【0090】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0091】
10 車両
20 トノカバー
22 シート状部材
24 外周縁部
30 縁取り部材
32 芯材収容部
32S 芯材収容空間
34 縫付け部
40 芯材
50 フレーム部材
52 第1分割フレーム
53、63 縁収容部
53S、63S 縁収容空間
58、68 接触部
62 第2分割フレーム