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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133775
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】パンツタイプ使い捨て着用物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/494 20060101AFI20220907BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20220907BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61F13/494 200
A61F13/496
A61F13/49 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032655
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 茜
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA05
3B200CA06
3B200DA01
3B200DA10
3B200DA21
3B200DA25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用に際して、意識せずに背側バリアが起き上がるパンツタイプ使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】後身頃Bにおける股間部よりもウエスト開口側に設けられた背側バリア70は、排泄物の後方への移動を遮断する第1遮断位置、及び幅方向の両側への移動を遮断する第2遮断位置とを有し、第1遮断位置よりも広い幅で、第1遮断位置の前側から後側まで延びたバリアシートを有しており、バリアシートは、第1遮断位置の後側に隣接する基部72と、第1遮断位置の前側に隣接する主部を有し、基部は後身頃の表面に固定されており、主部は、第2遮断位置の外側に隣接する両側部と、第2遮断位置の間に位置する中間部73mとを有し、主部の両側部は、第1遮断位置の前側に延びた第1部分と、第1部分の前縁に沿う折り位置で表側に折り返されて後側に延びた第2部分と、第2部分の後縁に沿う折り位置で表側に折り返されて前側に延びた第3部分とを有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃から後身頃にわたる一体的な外装体、又は前身頃及び後身頃に別々に設けられた外装体と、
前記外装体の幅方向の中間に取り付けられた、前記前身頃から前記後身頃にわたる内装体と、
前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシールと、
ウエスト開口及び左右一対の脚開口と、
前記後身頃にける股間部よりも前記ウエスト開口側に設けられた背側バリアとを備え、
前記背側バリアは、排泄物の後方への移動を遮断する第1遮断位置及び幅方向の両側への移動を遮断する第2遮断位置とを有するものであり、
前記背側バリアは、前記第1遮断位置よりも広い幅で、前記第1遮断位置の前側から後側まで延びたバリアシートを有しており、
前記バリアシートは、前記第1遮断位置の後側に隣接する基部と、前記第1遮断位置の前側に隣接する主部とを有し、
前記基部は、前記後身頃の表面に固定されており、
前記主部は、前記第2遮断位置の外側に隣接する両側部と、前記第2遮断位置の間に位置する中間部とを有し、
前記主部の前記両側部は、前記第1遮断位置の前側に延びた第1部分と、前記第1部分の前縁に沿う折り位置で表側に折り返されて後側に延びた第2部分と、第2部分の後縁に沿う折り位置で表側に折り返されて前側に延びた第3部分とを有し、
前記第1部分の裏面が前記後身頃の表面に固定されるとともに、前記第2部分の裏面が前記第1部分の表面に固定され、前記第3部分が前記第2部分に固定されておらず、
前記主部の中間部は、前記後身頃の表面に固定されておらず、
前記主部における一方の前記第3部分から他方の前記第3部分にわたり幅方向に延びる細長状のバリア弾性部材が設けられており、
前記第3部分の後端部には前記バリア弾性部材は設けられておらず、
自然長の状態で、前記主部は前記バリア弾性部材とともに幅方向に弾性収縮している、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記主部の前記中間部は、幅方向の寸法が180~200mmであり、
前記第2部分の前後方向の寸法が5~25mmであり、
前記第3部分の前後方向の寸法は10~35mmであり、
前記第3部分の幅方向の最大伸長時における伸長率は180~280%であり、
前記第3部分の後縁と、前記バリア弾性部材との前後方向の間隔が3~20mmである、
請求項1記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記主部における一方の前記第2部分から他方の前記第2部分にわたり幅方向に延びる細長状の整形弾性部材、
前記主部における一方の前記第1部分から他方の前記第1部分にわたり幅方向に延びる細長状の整形弾性部材、
前記基部における両側部にわたり幅方向に延びる細長状の整形弾性部材、
の少なくとも一つが設けられており、
自然長の状態で、前記主部は前記整形弾性部材とともに幅方向に弾性収縮している、
請求項1又は2記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記内装体は前記股間部を含む範囲に設けられた吸収体を有し、
前記外装体における前記サイドシールを有する前後方向の範囲に、幅方向に弾性収縮した胴周り伸縮領域を有するとともに、前記吸収体と重なる領域の幅方向の中間に非伸縮領域を有しており、
前記胴周り伸縮領域は、前記吸収体の後端の前記ウエスト開口側に隣接する部分を有しており、
前記バリアシートの基部は、前記胴周り伸縮領域における、前記吸収体の後端の前記ウエスト開口側に隣接する部分に固定されて、前記胴周り伸縮領域とともに伸縮可能となっている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記バリアシートにおける少なくとも主部の中間部は、表裏の色、模様又は表示が異なる、
請求項1~4のいずれか1項に記載のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背漏れ防止機能を有するパンツタイプ使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツタイプ使い捨ておむつ、パンツタイプ生理用品等のパンツタイプ使い捨て着用物品は、胴周り領域に幅方向の伸縮性を有し、装着者の背中とおむつとの間に隙間が生じにくいため、背中側から尿等の排泄物が漏れ出る事態(いわゆる背漏れ)が発生しにくいものである。
【0003】
例えば、一般的なパンツタイプ使い捨ておむつは、少なくとも前身頃の胴周り部及び後身頃の胴周り部を構成する外装体と、前身頃から後身頃にわたるように外装体に取り付けられた、吸収体を含む内装体とを備え、前身頃の外装体の両側縁部と後身頃の外装体の両側縁部とが接合されてサイドシールが形成されることにより、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されているものである。そして、外装体には、サイドシールを有する前後方向範囲(ウエスト開口から脚開口の上端に至る前後方向範囲)として定まる胴周り領域に、弾性部材が設けられることにより、幅方向の伸縮性が付加されている。弾性部材としては、糸ゴム等の細長状の弾性部材を用いるもののほか、弾性フィルムを用いるものも知られている。(例えば特許文献1~2参照)。
【0004】
このような背漏れ防止性の高さから、夜間等の長時間就寝時にパンツタイプ使い捨て着用物品を積極的に利用する使用者も存在する。このような使用形態では、パンツタイプ使い捨て着用物品であっても、背側バリアの装備が望ましいことはいうまでもない。このため、従来から、パンツタイプ使い捨て着用物品においても、背側バリアを設けることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、従来の背側バリアを備えたパンツタイプ使い捨て着用物品では、背側バリアが潰れた状態のまま使用してしまうことがあった。すなわち、背側バリアは、製造の際に全体が平坦に倒れた状態で取り付けられ、かつ厚み方向に加圧されるだけでなく、その後に使用されるまでの間も厚み方向に加圧された状態となるため、製品を使用する際になっても、起き上がり部が倒れた状態で対向面に弱く付着したままとなることがある。したがって、このような状況になっていることに気付かずに使用した場合、漏れ防止機能が不十分となるおそれがあり、使用に際して背側バリアを一度起こすことが望まれている。
【0006】
また、パンツタイプ使い捨て着用物品の内面にパッドタイプ吸収性物品を敷いて使用することもあり、その際、背側バリアが平坦に倒れた状態にあると、誤って背側バリアの上にパッドタイプ吸収性物品を敷いてしまい、背側バリアが機能しなくなったりするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-252303号公報
【特許文献2】特開2013-75106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、使用に際して意識せずに背側バリアを起こすことが可能なパンツタイプ使い捨て着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決したパンツタイプ使い捨て着用物品は以下のとおりである。
<第1の態様>
前身頃から後身頃にわたる一体的な外装体、又は前身頃及び後身頃に別々に設けられた外装体と、
前記外装体の幅方向の中間に取り付けられた、前記前身頃から前記後身頃にわたる内装体と、
前身頃における外装体の両側部と後身頃における外装体の両側部とがそれぞれ接合されたサイドシールと、
ウエスト開口及び左右一対の脚開口と、
前記後身頃にける股間部よりも前記ウエスト開口側に設けられた背側バリアとを備え、
前記背側バリアは、排泄物の後方への移動を遮断する第1遮断位置及び幅方向の両側への移動を遮断する第2遮断位置とを有するものであり、
前記背側バリアは、前記第1遮断位置よりも広い幅で、前記第1遮断位置の前側から後側まで延びたバリアシートを有しており、
前記バリアシートは、前記第1遮断位置の後側に隣接する基部と、前記第1遮断位置の前側に隣接する主部とを有し、
前記基部は、前記後身頃の表面に固定されており、
前記主部は、前記第2遮断位置の外側に隣接する両側部と、前記第2遮断位置の間に位置する中間部とを有し、
前記主部の前記両側部は、前記第1遮断位置の前側に延びた第1部分と、前記第1部分の前縁に沿う折り位置で表側に折り返されて後側に延びた第2部分と、第2部分の後縁に沿う折り位置で表側に折り返されて前側に延びた第3部分とを有し、
前記第1部分の裏面が前記後身頃の表面に固定されるとともに、前記第2部分の裏面が前記第1部分の表面に固定され、前記第3部分が前記第2部分に固定されておらず、
前記主部の中間部は、前記後身頃の表面に固定されておらず、
前記主部における一方の前記第3部分から他方の前記第3部分にわたり幅方向に延びる細長状のバリア弾性部材が設けられており、
前記第3部分の後端部には前記バリア弾性部材は設けられておらず、
自然長の状態で、前記主部は前記バリア弾性部材とともに幅方向に弾性収縮している、
ことを特徴とするパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0010】
(作用効果)
本パンツタイプ使い捨て着用物品の背側バリアは、特徴的な折り返し構造及びバリア弾性部材の配置を有している。この結果、自然長の状態では、バリアシートの主部は、両側部では第1部分から第2部分に続く折り返し及び第2部分から第3部分に続く折り返しを有しているものの、それらの間の中間部では、幅方向中央側に向かうにつれて、その折り返しが次第に前側へ展開していき、幅方向中央部では途中まで又は完全に前側へ展開される(第1の状態)。
この理由は定かではないが、バリア弾性部材を有する主部の中間部が非固定の自由部分であること、及びバリア弾性部材が第3部分の後縁から離間した位置にのみ設けられていることにより、主部の中間部がバリア弾性部材とともに弾性収縮する際、第3部分が自由に幅方向中央側に傾いて、バリア弾性部材の弾性収縮力により主部の中間部が受ける力のうち、主部の中間部を両側部同様に折り返す方向の成分が小さくなるからであると考えられる。また、主部の中間部が展開することには、主部の中間部の全体にわたり前後方向に延びる収縮皺が形成され、剛性が高くなる(前後方向に折れ曲がりにくくなる)ことも影響していると考えられる。
【0011】
一方、装着の際に、バリアシートの主部がバリア弾性部材とともに幅方向に伸長されると、主部の両側部では第1部分から第2部分に続く折り返しが維持され、第2部分から第3部分に続く折り返しもある程度維持されるものの、主部の中間部では第1部分及び第2部分の境界(折り返し位置)を通る幅方向に沿う仮想線よりも先端側の部分(以下、回動部分ともいう)が、当該仮想線を中心として後側に回動する(第2の状態)。
この理由も定かではないが、バリア弾性部材が幅方向に沿う直線に近づくように引っ張られ、バリア弾性部材の弾性収縮力により主部の中間部が受ける力のうち、主部の中間部を両側部同様に折り返す方向の成分が大きくなる一方、第3部分は幅方向全体にわたり非固定で折り返しの力が作用しにくいからと考えられる。この回動の程度はバリア弾性部材の配置等により適宜調節することができ、自然長の状態から少し起き上がる程度としたり、自然長の状態と反対の後側(ウエスト開口側)に倒れる程度としたりすることができる。
【0012】
また上述の第1の状態及び第2の状態の変化からも分かるように、ある程度収縮した装着状態では、主部の中間部が後身頃の表面に固定されておらず、その後側に位置する基部及びその両側に位置する主部の両側部が後身頃の表面に対して直接的又は間接的に固定されているため、主部の中間部と後身頃の表面との間が股間側に開口するポケットとなる。よって、このポケット内に到達する排泄物の後方及び側方移動を遮断することができる。
【0013】
以上のように、本パンツタイプ使い捨て着用物品では上述の第1の状態、第2の状態及び装着状態のように背側バリアが変化するため、使用に際して背側バリアが自動的に起き上がるようになり、背側バリアが潰れた状態のまま使用するといった事態や、誤って背側バリアの上にパッドタイプ吸収性物品を敷くといった事態が発生しにくくなる。
【0014】
<第2の態様>
前記主部の前記中間部は、幅方向の寸法が180~200mmであり、
前記第2部分の前後方向の寸法が5~25mmであり、
前記第3部分の前後方向の寸法は10~35mmであり、
前記第3部分の幅方向の最大伸長時における伸長率は180~280%であり、
前記第3部分の後縁と、前記バリア弾性部材との前後方向の間隔が3~20mmである、
第1の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0015】
(作用効果)
バリアシートの各部の寸法は適宜定めることができるが、本態様の範囲内であると、第3部分が最大伸長率の0.4倍以上伸長した状態で後身頃の表面に対する前述の回動部分の角度が90度前後となり、最大伸長率の0.6倍以上伸長した状態では回動部分が後側(ウエスト開口側)に倒れるようになるため好ましい。
【0016】
<第3の態様>
前記主部における一方の前記第2部分から他方の前記第2部分にわたり幅方向に延びる細長状の整形弾性部材、
前記主部における一方の前記第1部分から他方の前記第1部分にわたり幅方向に延びる細長状の整形弾性部材、
前記基部における両側部にわたり幅方向に延びる細長状の整形弾性部材、
の少なくとも一つが設けられており、
自然長の状態で、前記主部は前記整形弾性部材とともに幅方向に弾性収縮している、
第1又は2の態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0017】
(作用効果)
本態様では、第3部分を通るバリア弾性部材以外に、第1部分、第2部分及び基部の少なくとも一か所を通る整形弾性部材を設けることにより、背側バリアの形状が整うだけでなく、主部の中間部が自然長の状態で展開しやすくなるため好ましい。
【0018】
<第4の態様>
前記内装体は前記股間部を含む範囲に設けられた吸収体を有し、
前記外装体における前記サイドシールを有する前後方向の範囲に、幅方向に弾性収縮した胴周り伸縮領域を有するとともに、前記吸収体と重なる領域の幅方向の中間に非伸縮領域を有しており、
前記胴周り伸縮領域は、前記吸収体の後端の前記ウエスト開口側に隣接する部分を有しており、
前記バリアシートの基部は、前記胴周り伸縮領域における、前記吸収体の後端の前記ウエスト開口側に隣接する部分に固定されて、前記胴周り伸縮領域とともに伸縮可能となっている、
第1~3のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0019】
(作用効果)
吸収体を有するパンツタイプ使い捨て着用物品の多くは、本態様のような胴周り伸縮領域を有しており、この胴周り伸縮領域により吸収体の後端及びその近傍をしっかりと着用者の肌に押し付けることができる。また、外装体における吸収体と重なる部分には伸縮領域を設けないことも一般的である。本態様は、この胴周り伸縮領域を利用するものである。すなわち、胴周り伸縮領域における吸収体の後端のウエスト開口側に隣接する部分にバリアシートの基部を固定し、胴周り伸縮領域とともに伸縮可能とすると、背側バリアの形状が整うだけでなく、自然長の状態で、主部の中間部がより展開しやすくなる。
【0020】
<第5の態様>
前記バリアシートにおける少なくとも主部の中間部は、表裏の色、模様又は表示が異なる、
第1~4のいずれか1つの態様のパンツタイプ使い捨て着用物品。
【0021】
(作用効果)
本態様の場合、前述の背側バリアの自動変形(第1の状態と第2の状態との間の変化)を使用者が認識しやすくなる。そのため、例えば本パンツタイプ使い捨て着用物品の内面にパッドタイプ吸収性物品を敷いて使用する場合には、パッドタイプ吸収性物品の適切な装着位置を視認しやすくなるという利点もある。
【発明の効果】
【0022】
以上のとおり、本発明によれば、使用に際して意識せずに背側バリアを起こすことが可能となる、等の利点がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
図2】展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(外面側)である。
図3】背側バリアを除いて示した図1の1-1断面図である。
図4】展開状態における背側バリア部分を示す(a)平面図、(b)その5-5断面図、及び(c)その6-6断面図である。
図5図1の2-2断面図である。
図6図1の3-3断面図である。
図7】パンツタイプ使い捨ておむつの装着状態の斜視図である。
図8図1の4-4断面図である。
図9】自然長の状態における背側バリア部分を示す(a)平面図、(b)その5-5断面図、及び(c)その6-6断面図である。
図10】装着過程の要部の変化を示す断面図である。
図11】装着途中の伸長状態を示す斜視図である。
図12】背側バリアを除いて示した他の例の断面図である。
図13】展展開状態のパンツタイプ使い捨ておむつの平面図(内面側)である。
図14図13の1-1断面図である。
図15】展開状態における背側バリア部分を示す平面図である。
図16】従来の装着過程の要部の変化を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、パンツタイプ使い捨ておむつの例について、添付図面を参照しつつ詳説する。なお、図中の点模様部分はその表側及び裏側に位置する各構成部材を接合する接合手段としての接着剤を示しており、ホットメルト接着剤のベタ、ビード、カーテン、サミット若しくはスパイラル塗布、又はパターンコート(凸版方式でのホットメルト接着剤の転写)などにより、あるいは弾性部材の固定部分はこれに代えて又はこれとともにコームガンやシュアラップ塗布などの弾性部材の外周面への塗布により形成されるものである。ホットメルト接着剤としては、例えばEVA系、粘着ゴム系(エラストマー系)、オレフィン系、ポリエステル・ポリアミド系などの種類のものが存在するが、特に限定無く使用できる。各構成部材を接合する接合手段としてはヒートシールや超音波シール等の素材溶着による手段を用いることもできる。
【0025】
図1図7はパンツタイプ使い捨ておむつを示している。このパンツタイプ使い捨ておむつ(以下、単におむつともいう。)は、前身頃F及び後身頃Bにわたる一体的な外装体20と、前身頃Fから後身頃Bにわたるように外装体20の内面に固定された内装体10とを有しており、内装体10は液透過性のトップシート11と液不透過性シート12との間に吸収体13が介在されてなるものである。製造に際しては、外装体20の内面(上面)に対して内装体10の裏面がホットメルト接着剤などの接合手段によって接合(図2の点模様部分)された後に、内装体10及び外装体20が前身頃F及び後身頃Bの境界である前後方向LD(縦方向)の中央で折り畳まれ、その両側部が相互に熱溶着又はホットメルト接着剤などによって接合されてサイドシール21が形成されることによって、ウエスト開口及び左右一対の脚開口が形成されたパンツタイプ使い捨ておむつとなる。外装体20は、前身頃F及び後身頃Bに別々に設けられていてもよい。
【0026】
(内装体の構造例)
内装体10は、図4図6に示すように、トップシート11と液不透過性シート12との間に、吸収体13を介在させた構造を有しており、トップシート11を透過した排泄液を吸収体13により吸収保持するものである。内装体10の平面形状は特に限定されないが、図示形態のようにほぼ長方形とすることが一般的である。
【0027】
吸収体13の表側(肌当接面側)を覆うトップシート11としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維は、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。トップシート11に多数の透孔を形成した場合には、尿などが速やかに吸収されるようになる。図示形態では、トップシート11は、吸収体13の側縁部を巻き込んで吸収体13の裏側まで延在されている。
【0028】
吸収体13の裏側(非肌当接面側)を覆う液不透過性シート12は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどの液不透過性プラスチックシートが用いられるが、近年はムレ防止の点から透湿性を有するものが好適に用いられる。この遮水・透湿性シートとしては、例えばポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂中に、炭酸カルシウム等の無機微粒子を溶融混練してシートを形成した後、一軸又は二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートを好適に用いることができる。図示形態では、液不透過性シート12は、トップシート11とともに吸収体13の幅方向WDの両側で裏側に折り返されているが、このような構造に限定されず、公知の他の構造を採用することができる。
【0029】
吸収体13としては、公知のもの、例えばパルプ繊維の積繊体、セルロースアセテート等のフィラメントの集合体、あるいは不織布を基本とし、必要に応じて高吸収性ポリマーを混合、固着等してなるものを用いることができる。吸収体13の全体形状は、股間部分に前後両側よりも幅の狭い括れ部分を有する略砂時計状に形成するほか、長方形状等、適宜の形状とすることができる。吸収体13は、内装体10の後端部を含む範囲に設けられる限り、内装体10の一部の範囲にのみ設けることもできるが、通常の場合、内装体10の前後端部を除く領域のほぼ全体にわたり設けることが望ましい。
【0030】
吸収体13は、形状及びポリマー保持等のため、必要に応じてクレープ紙等の、液透過性及び液保持性を有する包装シート14によって包装することができる。包装シート14としては、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等を用いることができる。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMS不織布(SMS、SSMMS等)が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン複合材などを使用できる。包装シート14の目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0031】
包装シート14の包装形態は適宜定めることができるが、製造容易性や前後端縁からの高吸収性ポリマー粒子の漏れ防止等の観点から、吸収体13の表裏面及び両側面を取り囲むように筒状に巻き付け、且つその前後縁部を吸収体13の前後からはみ出させ、巻き重なる部分及び前後はみ出し部分の重なり部分をホットメルト接着剤、素材溶着等の接合手段により接合する形態が好ましい。
【0032】
内装体10の幅方向WDの両側には起き上がりギャザー90が設けられている。起き上がりギャザー90は、内装体10の側部から起き上がる起き上がり部分94を有しており、この起き上がり部分94が、装着者の鼠径部から脚周りを経て臀部までの範囲に接して横漏れを防止するものである。より詳細には、図示例の起き上がりギャザー90は、図5及び図6に示されるように、内装体10の裏面の側部に固定されたギャザー固定部91と、このギャザー固定部91から内装体10の側方を経て内装体10の表面の側部まで延在する本体部分92と、本体部分92の前後端部が倒伏状態で内装体10の表面の側部に固定されて形成された倒伏部分93と、この倒伏部分93間が非固定とされて形成された起き上がり部分94とを有している。そして、これらの部分はギャザーシート95が折り返されて形成された二層構造を有しており、その層間には、起き上がり部分94の先端部等に細長状のギャザー弾性部材96が配設されている。そしてこのような構造により、起き上がりギャザー90の起き上がり部分94が、装着者の肌に接するように立ち上がることとなる。ギャザーシート95としては撥水性とされた不織布が好適に用いられる。
【0033】
ギャザー弾性部材96としては、通常使用されるスチレン系ゴム、オレフィン系ゴム、ウレタン系ゴム、エステル系ゴム、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリスチレン、スチレンブタジエン、シリコーン、ポリエステル等の素材を用いることができる。また、外側から見え難くするため、太さは925dtex以下、テンションは150~350%、間隔は7.0mm以下として配設するのがよい。なお、ギャザー弾性部材96としては、図示形態のような糸状の他、ある程度の幅を有するテープ状のものを用いることもできる。
【0034】
前述のギャザーシート95を構成する素材繊維もトップシート11と同様に、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工方法に得られた不織布を用いることができるが、特にはムレを防止するために坪量を抑えて通気性に優れた不織布を用いるのがよい。さらにギャザーシート95については、尿などの透過を防止するとともに、カブレを防止しかつ肌触り(ドライ感)を高めるために、シリコーン系、パラフィン金属系、アルキルクロミッククロライド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いるのが望ましい。
【0035】
(外装体の構造例)
外装体20は、図4図6にも示されるように、それぞれ不織布等からなる押えシート20A及びバックシート20Bからなる2層構造とされ、押えシート20Aとバックシート20Bとの間、及びバックシート20Bをウエスト開口縁で内面側に折り返してなる折り返し部分20Cの不織布間に弾性部材24~27が配設され、自然長状態で弾性部材24~27の収縮力により外装体20が収縮することにより、外装体20に伸縮性が付与されている。外装体20の平面形状は、前後方向LDの中間における両側部にそれぞれ脚開口を形成するために形成された凹状の脚周りライン29により、全体としてほぼ砂時計形状をなしている。
【0036】
図示形態の外装体20においては、弾性部材として、図1及び図2に示される展開形状において、ウエスト開口近傍23に配置されたウエスト弾性部材24と、前身頃F及び後身頃Bに、縦方向に間隔をおいて幅方向WDに沿って配置された複数のウエスト下方弾性部材25とを有するとともに、前身頃F及び後身頃Bのそれぞれにおいて、ウエスト下方弾性部材25とは別に、一方のサイドシール21から一方の脚開口に沿って股間部分に向かい、股間部分を横断し、かつ他方の脚開口に沿って他方のサイドシール21に至るパターンで湾曲しつつ延在する、互いに交差することなく間隔をおいて配置された複数本の湾曲弾性部材26,27を備えている。これら、弾性部材24~27は、それぞれその延在方向に沿って所定の伸長率で伸長された状態で固定されている。なお、本外装体20では、脚周りライン29に沿って前身頃Fのサイドシールから後身頃Bのサイドシールまで連続する、所謂脚周り弾性部材は設けられていない。
【0037】
ウエスト弾性部材24は、前身頃Fと後身頃Bとが接合されたサイドシール21の範囲の内、ウエスト開口縁近傍に縦方向に間隔をおいて配置された複数条の糸ゴム等の細長状弾性部材であり、身体の胴周りを締め付けるように伸縮力を与えることによりおむつを身体に装着するためのものである。このウエスト弾性部材24は、図示例では糸ゴムを用いたが、例えばテープ状の伸縮部材を用いてもよい。また、図示形態のウエスト弾性部材24は、ウエスト部におけるバックシート20Bの折り返し部分20Cの不織布間に挟持されているが、押えシート20Aとバックシート20Bとの間に挟持しても良い。
【0038】
ウエスト下方弾性部材25は、サイドシール21の内、おおむね上部から下部までの範囲にわたり、縦方向に間隔をおいて配置された糸ゴム等の細長状弾性部材であり、前身頃F及び後身頃Bの腰周り部分にそれぞれ幅方向WDの伸縮力を与え、おむつを身体に密着させるためのものである。なお、ウエスト弾性部材24とウエスト下方弾性部材25との境界は必ずしも明確でなくてよい。例えば、前身頃F及び後身頃Bに縦方向に間隔をおいて幅方向WDに配置された弾性部材の内、数は特定できなくても、上部側の何本かがウエスト弾性部材として機能し、残りの弾性部材がウエスト下方弾性部材として機能していればよい。
【0039】
後身頃Bにおいて、ウエスト下方弾性部材25とは別に配設された背側湾曲弾性部材26は、糸ゴム等の細長状弾性部材であり、所定の曲線に沿って配置されている。背側湾曲弾性部材26は、一本であっても良いが複数本であるのが好ましく、図示例では4本の糸ゴム等の細長状弾性部材であり、これら背側湾曲弾性部材26は互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この背側湾曲弾性部材26は、2,3本程度の弾性部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように3~20mm、好ましくは6~16mm程度の間隔を空けて、3本以上、好ましくは4本以上配置される。
【0040】
外装体20の前身頃Fにおいて、ウエスト下方弾性部材25とは別に配設された腹側湾曲弾性部材27は糸ゴム等の細長状弾性部材であり、所定の曲線に沿って配置されている。腹側湾曲弾性部材27は、一本であっても良いが複数本であるのが好ましく、図示例では4本の糸状弾性部材であり、これら腹側湾曲弾性部材27は、互いに交差することなく、間隔をおいて配置されている。この腹側湾曲弾性部材27も、2,3本程度の弾性部材を間隔を密にして実質的に一束として配置されるのではなく、所定の伸縮ゾーンを形成するように3~20mm、好ましくは6~16mm程度の間隔を空けて、3本以上、好ましくは4本以上配置される。
【0041】
なお、図2に示すように、前身頃F及び後身頃Bに配置されたウエスト下方弾性部材25及び湾曲弾性部材26,27は、製造時に外装体20に対して連続的に固定した後に、吸収体13と重なる部分の幅方向WDの中間部(図中の二点鎖線で囲まれた部分)を、所定の切断パターンで細かく切断して収縮力が作用しない非収縮部分とし、この非収縮部分より側方に延在する部分を収縮力の作用する収縮部分(つまり、ウエスト下方弾性部材25及び湾曲弾性部材26,27が連続的に残された部分)とすることができる。これにより、内装体(特に吸収体13)の幅方向WDの不必要な収縮を防止することができる。もちろん、ウエスト下方弾性部材25及び湾曲弾性部材26,27を、内装体10を横切って連続的に配置することもできる。
【0042】
この例からも分かるように、弾性部材24~27が配置された部位のうち収縮部分が伸縮領域となり、非収縮部分が非伸縮領域となる。伸縮領域は、後身頃Bにおける、吸収体13の後端部よりウエスト側にのみ設けられていてもよいが、図示例又は他の公知例のように各部に設けることができる。
【0043】
上述した外装体20は、例えば特開平4-28363号公報や、特開平11-332913号公報記載の技術により製造することができる。また、湾曲弾性部材26,27を内装体10上で切断し不連続化するには、特開2002-35029号公報、特開2002-178428号公報及び特開2002-273808号公報に記載される切断方法が好適に採用される。
【0044】
図示例とは異なり、湾曲弾性部材26,27を、前身頃F及び後身頃Bのいずれか一方にのみ設けるだけでも良い。また、湾曲弾性部材26,27を、前身頃F及び後身頃Bの両方に設ける場合、前身頃F側に配置された湾曲弾性部材27の群の一部又は全部と、後身頃B側に配置された湾曲弾性部材26の群の一部又は全部とが交差する形態(図示せず)も採用できるが、図示例のように、前身頃F側に配置された湾曲弾性部材27の群と、後身頃B側に配置された湾曲弾性部材26の群とは互いに交差することなく前後方向LDの中間部、特に前身頃Fに若干偏った位置で縦方向に離間している形態が好適である。
【0045】
さらに、湾曲弾性部材26,27はその全体が湾曲していなくても良く、部分的に直線状の部分を有していても良い。
【0046】
弾性部材24~27の固定時の伸長率は適宜定めることができるが、通常の成人用の場合、ウエスト弾性部材24は160~320%程度、ウエスト下方弾性部材25は160~320%程度、湾曲弾性部材26,27は230~320%程度とすることができる。
【0047】
(カバーシート)
図1及び図4にも示されるように、外装体20の内面上に取り付けられた内装体10の前後端部をカバーし、かつ内装体10の前後縁からの漏れを防ぐために、カバーシート50,60が設けられていても良い。図示形態についてさらに詳細に説明すると、前側のカバーシート50は、前身頃Fの全幅にわたる幅で、前身頃Fのウエスト開口近傍から内装体10の前端部と重なる位置まで延在しており、後側のカバーシート60は、後身頃Bの全幅にわたる幅で、後身頃Bのウエスト開口の近傍から内装体10の後端部と重なる位置まで延在している。カバーシート50,60はそのほぼ全面を対向面にホットメルト接着剤等により接合するほか、カバーシート50,60の股間側の縁部に幅方向WDの全体にわたり(中央部のみでも良い)若干の非接着部分を設けることもでき、後者の場合、接着剤がはみ出さないだけでなく、この部分をトップシートから若干浮かせて防漏壁として機能させることができる。
【0048】
図示形態のように、カバーシート50,60を別体として取り付けると、素材選択の自由度が高くなる利点があるものの、資材や製造工程が増加する等のデメリットもある。そのため、外装体20をおむつ内面に折り返してなる折り返し部分20Cを、内装体10と重なる部分まで延在させて、前述のカバーシート50,60と同等の部分を形成することもできる。
【0049】
(背側バリア)
図1図3及び図4等に示すように、後身頃Bにける股間部よりもウエスト開口側には背側バリア70が設けられている。背側バリア70は、排泄物の後方への移動を遮断する第1遮断位置B1及び幅方向WD両側への移動を遮断する第2遮断位置B2とを有するものである。第1遮断位置B1は特に限定されるものではないが、内装体10の後端部と重なる位置が好ましく、特に内装体10の後端と吸収体13の後端との間であるとより好ましいが、吸収体13の後端部と重なる位置であってもよい。第2遮断位置B2は特に限定されるものではないが、内装体10の側縁10e近傍(例えば、起き上がりギャザー90の先端90eと、これを内装体10の側縁10eに関して鏡像反転した位置との間)を通り前後方向LD延びていることが好ましい。
【0050】
背側バリア70は主に、第1遮断位置B1の幅方向の寸法(第2遮断位置B2の幅方向の間隔)よりも広い幅で、第1遮断位置B1の前側から後側まで延びたバリアシート71と、後述するバリア弾性部材とを含む。バリアシート71は、図示例のように専用のシートを配置するほか、後身頃Bのカバーシート60を股間側に延長して形成してもよい。バリアシート71の素材は、特に限定されないが、ギャザーシート95と同様の素材を用いることが望ましいが、押えシート20Aやバックシート20Bと同様の素材を用いたり、カバーシート50,60と同様の素材を用いることもできる。
【0051】
バリアシート71は、第1遮断位置B1の後側に隣接する基部72と、第1遮断位置B1の前側に隣接する主部73とを有する。基部72は、後身頃Bの表面(図示例では外装体20におけるカバーシート60の表面)に固定された部分である。一方、主部73は、第2遮断位置B2の外側(両側方)に隣接する両側部73sと、第2遮断位置B2の間に位置する中間部73mとを有する。主部73の両側部73sは、第1遮断位置B1の前側に延びた第1部分81と、第1部分81の前縁に沿う折り位置で表側に折り返されて後側に延びた第2部分82と、第2部分82の後縁に沿う折り位置で表側に折り返されて前側に延びた第3部分83とを有し、第1部分81の裏面が後身頃Bの表面に固定されるとともに、第2部分82の裏面が第1部分81の表面に固定され、第3部分83が第2部分82に固定されていない。主部73の中間部73mは、後身頃Bの表面(図示例では外装体20におけるカバーシート60の表面及び内装体10の表面)に固定されていない。基部72及び第1部分81の固定、並びに第2部分82の固定は、図示例のようにホットメルト接着剤HM1、HM2により行うほか、図示しないがバリアシート71素材の溶着により行うことができる。
【0052】
また、主部73は、一方の第3部分83から他方の第3部分83にわたり幅方向WDに延びる細長状のバリア弾性部材74を有し、自然長の状態では図9に示すようにバリア弾性部材74とともに幅方向WDに弾性収縮している。ただし、バリア弾性部材74は一方の第3部分83の後端部から他方の第3部分83の後端部にわたるようには設けられていない。図示例では、バリアシート71はホットメルト接着剤(断面図注の点模様部分)等により一体化された二層構造を有しており、その層間に、バリア弾性部材74等が挟まれてホットメルト接着剤等により固定されているが、バリアシート71の表裏いずれか一方の面にバリア弾性部材74等を固定してもよい。また、バリアシート71を二層構造とする場合、図示例のように一枚のシートを後端(前端でもよい)で二つ折りするほか、別々の二枚のシートを積層してもよい。また、防水性や合成向上のために、液不透過性シート12と同様の遮水シートを、バリアシート71の層間に挟んでもよい。
【0053】
このように、背側バリア70が特徴的な折り返し構造及びバリア弾性部材74の配置を有していると、自然長の状態では図9に示すようになる。すなわち、バリアシート71の主部73は、両側部73sでは図9(b)に示すように第1部分81から第2部分82に続く折り返し及び第2部分82から第3部分83に続く折り返しを有しているものの、それらの間の中間部73mでは、幅方向WD中央側に向かうにつれて、その折り返しが次第に前側へ展開していき、幅方向WD中央部では図9(c)に示すように完全に(又は途中まで)前側へ展開される(第1の状態)。この理由は定かではないが、バリア弾性部材74を有する主部73の中間部73mが非固定の自由部分であること、及びバリア弾性部材74が第3部分83の後縁から離間した位置にのみ設けられていることにより、主部73の中間部73mがバリア弾性部材74とともに弾性収縮する際、図9(a)に示すように第3部分83が自由に幅方向WD中央側に傾いて、バリア弾性部材74の弾性収縮力により主部73の中間部73mが受ける力のうち、主部の中間部を両側部同様に折り返す方向の成分が小さくなるからであると考えられる。また、主部73の中間部73mが展開することには、主部73の中間部73mの全体にわたり前後方向LDに延びる収縮皺が形成され、剛性が高くなる(前後方向LDに折れ曲がりにくくなる)ことも影響していると考えられる。
【0054】
一方、装着の際に、バリアシート71の主部73がバリア弾性部材74とともに幅方向WDに伸長されると、主部73の両側部73sでは、図4(b)に示すように第1部分81から第2部分82に続く折り返しが維持され、第2部分82から第3部分83に続く折り返しもある程度維持されるものの、主部73の中間部73mでは、図4(a)(c)に矢印で示すように第1部分81及び第2部分82の境界(折り返し位置)を通る幅方向WDに沿う仮想線よりも先端側の回動部分が、当該仮想線を中心として後側に回動する(第2の状態)。この理由も定かではないが、バリア弾性部材74が幅方向WDに沿う直線に近づくように引っ張られ、バリア弾性部材74の弾性収縮力により主部73の中間部73mが受ける力のうち主部の中間部を両側部同様に折り返す方向の成分が大きくなる一方、第3部分は幅方向全体にわたり非固定で折り返しの力が作用しにくいからと考えられる。この回動の程度はバリア弾性部材74の配置等により適宜調節することができ、自然長の状態から少し起き上がる程度としたり、自然長の状態と反対の後側(ウエスト開口側)に倒れる程度としたりすることができる。
【0055】
また、上述の第1の状態及び第2の状態の変化からも分かるように、ある程度収縮した装着状態では、主部73の中間部73mが後身頃Bの表面に固定されておらず、その後側に位置する基部72及びその両側に位置する主部73の両側部73sが後身頃Bの表面に対して直接的又は間接的に固定されているため、主部73の中間部73mと後身頃Bの表面との間が股間側に開口するポケット状の背側バリア70が形成される。よって、このポケット内に到達する排泄物の後方及び側方移動を遮断することができる。図13及び図14に示すように、起き上がりギャザー90の起き上がり部分94がこのポケット内に位置するように構成されていると、起き上がりギャザー90の起き上がり力により背側バリア70のポケットが開口しやすくなるため好ましいが、起き上がりギャザー90の倒伏部分93が背側バリア70のポケット内に位置するように構成されていたり、背側バリア70のポケットよりも前側に内装体10の後端が位置するように構成されていたりしてもよい。
【0056】
以上のように、本パンツタイプ使い捨ておむつでは上述の第1の状態、第2の状態及び装着状態のように背側バリア70が変化するため、使用に際して背側バリア70が自動的に起き上がるようになり、背側バリア70が潰れた状態のまま使用するといった事態が起こりにくくなる。さらにいま、本パンツタイプ使い捨ておむつの内面上にパッドタイプ吸収性物品を敷く場合を考える。装着前のパンツタイプ使い捨ておむつは図10(a)に示す第1の状態にある。このパンツタイプ使い捨ておむつを穿くために図11に示すように脚開口に脚を通し、脚をある程度広げた状態にすると、図中矢印で示すように外装体20の胴周り領域の幅方向の伸長により、バリアシート71の主部73がバリア弾性部材74とともに幅方向WDに伸長される。この結果、図10(b)に示すように、主部73の中間部73mでは前述の回動部分が回動して捲れる。したがって、この状態で図10(c)に示すように、背側バリア70の捲れ位置に沿ってパッドタイプ吸収性物品30の後端を合わせるようにして、パッドタイプ吸収性物品30を敷くことができる。そして、パンツタイプ使い捨て着用物品を引き上げて装着状態にすると、図10(d)に示すように、背側バリア70は自然長に近い状態まで戻り、パッドタイプ吸収性物品30の後端部を覆うようになる。これに対して、図16(a)に示すように、背側バリア170が使用に際して自動的に起き上がらないと、背側バリア170を手動で起こしてその下にパッドタイプ吸収性物品30を挿入しない限り、背側バリア170をパッドタイプ吸収性物品30に対して適切に機能させることができないだけでなく、誤って図16(b)に示すように、背側バリア170の上にパッドタイプ吸収性物品30を敷いてしまうおそれがある。
【0057】
バリアシート71の各部の寸法や、第3部分83の伸長率を適宜定めることにより、どの程度の伸長で、主部73の中間部73mがどの程度回動するか調節することができる。一例を挙げると以下のとおりである。
主部73の中間部73mの幅方向WDの寸法:180~200mm
第2部分82の前後方向LDの寸法L2:5~25mm
第3部分83の前後方向LDの寸法L3:10~35mm
第3部分83の幅方向WDの最大伸長時における伸長率:180~280%
第3部分83後縁とバリア弾性部材74との前後方向LDの間隔74D:3~20mm
この場合、第3部分が最大伸長率の0.4倍以上伸長した状態で後身頃Bの表面に対する前述の回動部分の角度が90度前後となり、最大伸長率の0.6倍以上伸長した状態では図4に示す最大伸長状態と同様に、回動部分が後側(ウエスト開口側)に倒れるようになる。なお、このような挙動はこの条件に限られるものではない。
【0058】
バリア弾性部材74以外に、第1部分81、第2部分82及び基部72の少なくとも一か所を通り背側バリア70の幅方向WDの全体にわたる整形弾性部材75を設け、自然長の状態で背側バリア70は整形弾性部材75とともに幅方向WDに弾性収縮していると、背側バリア70の形状が整うだけでなく、中間部73mが自然長の状態で展開しやすくなるため好ましい。図示例は、主部73における一方の第2部分82から他方の第2部分82にわたり幅方向WDに延びる細長状の整形弾性部材75を1本、基部72における両側部73sにわたり幅方向WDに延びる細長状の整形弾性部材75を3本備えており、第1部分81を通る整形弾性部材75は設けられていない。基部72、第1部分81、第2部分82のいずれかに整形弾性部材75を複数本設ける場合、その前後方向LDの間隔は3~7mm程度とすることができる。
【0059】
本例のパンツタイプ使い捨ておむつは、外装体20におけるサイドシール21を有する前後方向LDの範囲に、幅方向WDに弾性収縮した胴周り伸縮領域(ウエスト弾性部材24及びウエスト下方弾性部材25による伸縮領域)を有するとともに、吸収体13と重なる領域の幅方向WDの中間に非伸縮領域を有している。このような場合には、バリアシート71の基部72を、胴周り伸縮領域における吸収体13の後端のウエスト開口側に隣接する部分に固定して、胴周り伸縮領域とともに伸縮可能に構成すると、背側バリア70の形状が整うため好ましい。また、自然長の状態では胴周り伸縮領域は幅方向WDに弾性伸縮するのに対して非伸縮領域は収縮していないため、図9(a)に示すように、背側バリア70を含む部分は前側に位置するほど幅方向WDの収縮が少なくなり、背側バリア70が扇形になる結果、自然長の状態で、中間部73mがより展開しやすくなる。
【0060】
バリアシート71は表裏の色又は模様が同一であってもよいが、バリアシート71における少なくとも主部73の中間部73m(好ましくは全体)は、図15に示すように表裏の色が異なっていると、前述の背側バリア70の自動変形(図9(a)に示す第1の状態と図15に示す第2の状態との間の変化)を使用者が認識しやすくなるため好ましい。また、本パンツタイプ使い捨ておむつの内面にパッドタイプ吸収性物品30を敷いて使用する場合には、パッドタイプ吸収性物品30の適切な装着位置を視認しやすくなるという利点もある。図示例は、第1の状態では裏側に隠れているものの、第2の状態で表側に露出する第1面に図中斜線で示す着色を施し、反対の第2面には着色を施さない場合を想定しているが、反対に第2面に着色し、第1面には着色しない構成や、第1面及び第2面に互いに異なる着色を施す構成としてもよい。着色はバリアシート71に印刷する手法や、バリアシート71の原料に原着する手法等、適宜の手法を採用することができる。また、着色に代えて、模様を印刷したり、模様をエンボス加工により付加したり、文字やマーク等の表示を付加したりすることもできる。
【0061】
<明細書中の用語の説明>
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「前後方向」とは図中に符号LDで示す方向(縦方向)を意味し、「幅方向」とは図中にWDで示す方向(左右方向)を意味し、前後方向と幅方向とは直交するものである。
・「展開状態」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「伸長率」は、自然長を100%としたときの値を意味する。例えば、伸長率が200%とは、伸長倍率が2倍であることと同義である。
・「目付け」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から1平米あたり、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・試験や測定における環境条件についての記載が無い場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、上記例のようなパンツタイプ使い捨ておむつの他、パンツタイプ使い捨ておむつカバーや、パンツタイプ生理用品等のパンツタイプ使い捨て着用物品全般に利用できるものである。
【符号の説明】
【0063】
10…内装体、11…トップシート、12…液不透過性シート、13…吸収体、14…包装シート、20…外装体、20C…折り返し部分、21…サイドシール、24…ウエスト弾性部材、25…ウエスト下方弾性部材、26,27…湾曲弾性部材、26…背側湾曲弾性部材、27…腹側湾曲弾性部材、29…脚周りライン、90…起き上がりギャザー、91…ギャザー固定部、92…本体部分、93…倒伏部分、94…起き上がり部分、95…ギャザーシート、96…ギャザー弾性部材、F…前身頃、B…後身頃、LD…前後方向、WD…幅方向、70…背側バリア、71…バリアシート、72…基部、73…主部、73s…両側部、73m…中間部、74…バリア弾性部材、75…整形弾性部材、81…第1部分、82…第2部分、83…第3部分、B1…第1遮断位置、B2…第2遮断位置、30…パッドタイプ吸収性物品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16