(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133791
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】液体燃料燃焼器
(51)【国際特許分類】
F23D 11/44 20060101AFI20220907BHJP
F23D 11/00 20060101ALI20220907BHJP
F23L 9/02 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F23D11/44 A
F23D11/00 C
F23L9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032679
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003229
【氏名又は名称】株式会社トヨトミ
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】野々川 佑也
【テーマコード(参考)】
3K023
【Fターム(参考)】
3K023KA04
3K023KD02
(57)【要約】
【課題】熱回収効率を向上させ、安定して液体燃料を気化させることが可能な液体燃料燃焼器を提供する。
【解決手段】液体燃料燃焼器1のバーナ・アセンブリ5は、燃料供給部19と、空気供給部21と、気化部23と、ガス室25と、バーナ部27から構成されている。気化部23は、燃料受け部51と気化室53を有する箱状体43と、初期加熱用のヒータ41を有している。また、バーナ部27の燃焼熱を吸熱し、気化部23の燃料受け部51に伝える伝熱構造を備えている。気化部23の側壁部43Bには、燃料受け部51の上方に位置する空間部分に向かって突出し且つ上壁部(蓋体45)から底壁部43Aまで熱を伝達するように延びる複数の熱伝導ピラー55,57が設けられており、伝熱構造は、バーナ部23から出る燃焼炎全体と臨んで燃焼熱を直接回収する熱回収部(凸状部65)と、熱回収部と熱的に接続された気化部23の箱状体43によって構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を供給する燃料供給部と、
一次空気を供給する一次空気供給部と、
熱伝導性を有し、底壁部、前記底壁部の縁部から立ち上がる側壁部及び前記底壁部と対向する上壁部を有する箱状体と、前記底壁部に沿って延びる初期加熱用のヒータと、前記底壁部の一部に形成され、前記燃料供給部から供給された液体燃料を受ける燃料受け部と、前記ヒータによって加熱された前記燃料受け部で前記液体燃料を気化させて前記一次空気と混合することにより混合気化燃料ガスとする気化室を有する細長い気化部と、
前記気化室と連通し、前記混合気化燃料ガスを貯留するガス室と、
前記混合気化燃料ガスと共に燃焼される二次空気を供給する二次空気供給部と、
前記気化部の上方に配置されて、前記ガス室から供給される前記混合気化燃料ガスを前記二次空気と共に燃焼する細長いバーナ部と、
前記バーナ部の燃焼熱を吸熱し、前記気化部の前記燃料受け部に伝える細長い伝熱構造とを備えた液体燃料燃焼器であって、
前記気化部の前記側壁部のうち少なくとも前記燃料受け部に対応する部分には、前記燃料受け部の上方に位置する空間部分に向かって突出し且つ前記上壁部から前記底壁部まで熱を伝達するように延びる複数の熱伝導ピラーが設けられており、
前記伝熱構造は、前記バーナ部から出る燃焼炎全体と臨んで前記燃焼熱を直接回収する熱回収部と、前記熱回収部と熱的に接続された前記気化部の前記箱状体によって構成されていることを特徴とする液体燃料燃焼器。
【請求項2】
前記複数の熱伝導ピラーには、前記気化部の前記気化室内に突出する位置に設けられて前記上壁部から前記底壁部まで延びる複数の熱伝導ピラーが含まれている請求項1に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項3】
前記箱状体は、前記底壁部と前記側壁部からなり、上面に開口部を有する細長い箱状本体と、前記上壁部を構成する前記開口部を塞ぐ細長い蓋体とを備えており、
前記複数の熱伝導ピラーのそれぞれには、前記蓋体を固定するネジを螺合するネジ孔が形成されている請求項1に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項4】
前記熱回収部は、前記蓋体と一体に形成されている請求項3に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項5】
前記熱回収部は、前記蓋体の前記バーナ部に対応する表面部に位置して前記蓋体の長手方向に延び且つ上端に頂部を有するように上方に向かって突出する凸状部を備えている請求項3または4に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項6】
前記凸状部には、少なくとも上方に向かって開口し且つ前記長手方向に延びる少なくとも1本以上のスリットが形成されている請求項5に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項7】
前記少なくとも1本以上のスリットは、前記頂部の両側に形成された一対のスリットからなる請求項6に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項8】
前記バーナ部は、前記混合気化燃料ガスに点火する点火部を備えており、
前記複数の熱伝導ピラーには、前記ヒータが発生する熱を前記点火部の周囲の前記バーナ部に伝達するように延びる複数の熱伝導ピラーが含まれている請求項1に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項9】
前記気化部の前記底壁部の長手方向の途中には、前記燃料供給部から出た前記液体燃料を堰き止める堰部が設けられている請求項1に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項10】
前記気化部の前記底壁部の内底面には、前記燃料供給部が設けられている側から前記堰部に向かって前記蓋体と前記内底面との間の間隔が拡がる向きの傾斜面が設けられている請求項9に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項11】
前記堰部内には、温度センサが配置されている請求項9に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項12】
前記バーナ部は、前記熱回収部の周囲を囲むように構成されており、
前記ガス室は、前記バーナ部の周囲を囲むように構成されており、
前記二次空気供給部は、前記ガス室の周囲を囲むが前記気化部の周囲を囲まないように構成された二次空気室と、前記バーナ部の上端部の周囲の少なくとも一部または全部に沿うように形成されて、前記二次空気室内の前記二次空気を前記バーナ部の前記上端部の上方に噴出する二次空気噴出口とを備えている請求項1に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項13】
前記バーナ部は、前記熱回収部の両側に位置して前記熱回収部の長手方向に沿って延びる一対のバーナ対向壁部と、前記一対のバーナ対向壁部に、前記長手方向に沿い且つ前記混合気化燃料ガスを相手方の前記バーナ対向壁部に向かって噴出するように形成された複数のガス流出孔を含む請求項1に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項14】
前記バーナ部は、前記一対のバーナ対向壁部の前記長手方向の両端を連結する一対の連結部を備えており、
前記二次空気噴出口は、前記一対のバーナ対向壁部及び前記一対の連結部の周囲を完全に囲むように形成されている請求項13に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項15】
前記気化部の前記側壁部の前記長手方向の一端に位置する端部側壁部には、前記燃料供給部の燃料噴射ノズルが貫通し、且つ、前記一次空気を導入する一次空気導入孔が形成されており、
前記気化部の前記側壁部の前記長手方向の他端に位置する端部側壁部に近接した前記蓋体の一部分には、前記気化室と前記ガス室とを連通する連通路が形成されており、
前記蓋体の上には、前記バーナ部の一部を構成するバーナ本体と、前記ガス室の一部を構成するガス室構成体下半部と、前記ガス室構成体下半部の上に組み合わされて前記バーナ部及び前記ガス室を完成するガス室構成体上半部からなる組立体が配置されており、
少なくとも前記組立体を収納する本体収納部を備えており、
前記組立体と前記本体収納部の間に形成された空間によって、前記二次空気室が形成されている請求項14に記載の液体燃料燃焼器。
【請求項16】
前記二次空気噴出口は、前記組立体の前記ガス室構成体上半部と前記本体収納部の間にあり、且つ、前記一対のバーナ対向壁部及び一対の連結部によって構成される環状壁部の上縁部に沿って形成された環状の間隙部である請求項15に記載の液体燃料燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体燃料を燃焼させて暖房に利用する暖房機の燃焼部を構成する液体燃料燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特公平4-11761号公報(特許文献1)に記載のバーナ(液体燃料燃焼器)では、気化筒29内に気化室28が形成されている。気化筒29はシーズヒータ30で温められており、気化筒29内に滴下された液体燃料が気化し、気化した燃料がバーナで燃焼に使用される。燃焼が進むと、燃焼室壁18や底板19によって対向火炎42の熱が熱回収され、熱回収された熱は気化筒29へ伝導する。これによって熱回収された熱も気化筒29の加熱に利用される。
【0003】
特公昭57-44882号公報(特許文献2)に記載の液体燃料燃焼器では、ヒータ4や、燃焼炎18から熱を回収する熱伝導フレーム2で気化壁5を温め、熱伝導フレーム2からの熱を燃料管14から気化面6に滴下された液体燃料の気化に利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4-11761号公報
【特許文献2】特公昭57-44882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の液体燃料燃焼器の場合、底板19が直接対向火炎42に炙られることはない構成になっている。また特許文献2に記載の液体燃料燃焼器の場合、熱伝導フレーム2のみで熱回収をしている。特許文献1及び2に記載の従来の構造では、熱回収効率を上げることに限界がある。
【0006】
本発明の目的は、熱回収効率を向上させ、安定して液体燃料を気化させることが可能な液体燃料燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が対象とする液体燃料燃焼器は、液体燃料を供給する燃料供給部と、一次空気を供給する一次空気供給部と、気化室を有する細長い気化部を有する。細長い気化部は、熱伝導性を有し、底壁部、該底壁部の縁部から立ち上がる側壁部及び底壁部と対向する上壁部を有する箱状体と、底壁部に沿って延びる初期加熱用のヒータと、底壁部の一部に形成され、燃料供給部から供給された液体燃料を受ける燃料受け部と、ヒータによって加熱された燃料受け部で液体燃料を気化させて一次空気と混合することにより混合気化燃料ガスとする気化室を有する。また本発明が対象とする液体燃料燃焼器は、更に気化室と連通し、混合気化燃料ガスを貯留するガス室と、混合気化燃料ガスと共に燃焼される二次空気を供給する二次空気供給部と、気化部の上方に配置されて、ガス室から供給される混合気化燃料ガスを二次空気と共に燃焼する細長いバーナ部と、バーナ部の燃焼熱を吸熱し、気化部の燃料受け部に伝える細長い伝熱構造とを備えている。
【0008】
本発明では、気化部の箱状体の側壁部のうち少なくとも燃料受け部に対応する部分には、燃料受け部の上方に位置する空間部分に向かって突出し且つ上壁部から底壁部まで熱を伝達するように延びる複数の熱伝導ピラーが設けられている。そして伝熱構造は、バーナ部から出る燃焼炎全体と臨んで燃焼熱を直接回収する熱回収部と、この熱回収部と熱的に接続された気化部の箱状体によって構成されている。
【0009】
このように伝熱構造が、燃焼炎全体と臨んで燃焼熱を直接回収する熱回収部と、熱回収部と熱的に接続された箱状体(上壁部、側壁部、底壁部、及び、複数の熱伝導ピラー)によって構成されているため、熱回収効率が向上する。特に、気化部の側壁部の少なくとも燃料受け部に対応する部分には、燃料受け部の上方に位置する空間部分に向かって突出し且つ上壁部から底壁部まで熱を伝達するように複数の熱伝導ピラーが設けられているため、ヒータへの通電が無くなった後における燃料受け部の上方に位置する空間部分の温度の低下を、複数の熱伝導ピラーの表面から該空間部分への放熱により抑制できる。そのため早期にヒータへの通電を停止することが可能になる。
【0010】
複数の熱伝導ピラーには、気化部の気化室内に突出する位置に設けられて上壁部から底壁部まで延びる複数の熱伝導ピラーが含まれていてもよい。このように気化室内に複数の熱伝導ピラーが突出している場合には、複数の熱伝導ピラーの表面からの放熱により気化室内の温度の低下が抑制される。しかも熱伝導ピラーの存在により、気化燃料ガスと一次空気が熱伝導ピラーに当たって流れることにより、乱流が形成され、気化燃料ガスと一次空気が効率よく混合される。
【0011】
箱状体は、底壁部と側壁部からなり、上面に開口部を有する細長い箱状本体と、上壁部を構成する開口部を塞ぐ細長い蓋体とを備えている。この場合、複数の熱伝導ピラーのそれぞれには、蓋体を固定するネジを螺合するネジ孔が形成されていてもよい。このようにすれば、蓋体と箱状体を確実に密着させることができ、熱伝達が阻害されることがない。
【0012】
熱回収部は、蓋体と別体でもよいが、蓋体と一体に形成されていてもよい。このようにすれば、熱回収部で回収した熱を効率的に伝達することができる。
【0013】
熱回収部は、蓋体のバーナ部に対応する表面部に位置して蓋体の長手方向に延び且つ上端に頂部を有するように上方に向かって突出する凸状部を備えていてもよい。このような形状にすることで、熱回収部が直接炎によって熱せられ、効率的に熱回収が可能となる。
【0014】
凸状部には、少なくとも上方に向かって開口し且つ長手方向に延びる少なくとも1本以上のスリットが形成されていてもよい。このようなスリットがあれば、熱回収部の面積を増大させ、熱回収効率を向上させることができる。少なくとも1本以上のスリットは、例えば、凸状部の頂部の両側に形成された一対のスリットからなっていてもよい。
【0015】
バーナ部は、混合気化燃料ガスに点火する点火部を備えており、複数の熱伝導ピラーには、ヒータが発生する熱を点火部の周囲のバーナ部に伝達するように延びる複数の熱伝導ピラーが含まれていてもよい。点火前の点火部(イグナイタ)周辺は冷えているため、ヒータの熱を点火部周辺のバーナ部に伝えることで、点火ミスを防止することができる。
【0016】
気化部の底壁部の長手方向の途中には、燃料供給部から出た液体燃料を堰き止める堰部が設けられていてもよい。このような堰部を設けることで、液体燃料を堰き止め、気化を促進することができる。また、液体燃料が流れて広がるようにするために、気化部の底壁部の内底面には、燃料供給部が設けられている側から堰部に向かって蓋体と内底面との間の間隔が拡がる向きの傾斜面が設けられていてもよい。堰部内には、温度センサが配置されていてもよい。堰部内に温度センサを設ければ、気化部の温度を高い精度で計測し、ヒータへの通電の要否を精度よく判断できる。
【0017】
バーナ部は、熱回収部の周囲を囲むように構成されており、ガス室は、バーナ部の周囲を囲むように構成されており、二次空気供給部は、ガス室の周囲を囲むが気化部の周囲を囲まないように構成された二次空気室と、バーナ部の上端部の周囲の少なくとも一部または全部に沿うように形成されて、二次空気室内の二次空気をバーナ部の上端部の上方に噴出する二次空気噴出口とを備えていてもよい。このように構成することで、二次空気により気化部が冷却されてしまうことがない。またバーナ部の上端部の周囲の少なくとも一部または全部に沿って二次空気を噴出すると、バーナ部から出た未燃ガスを燃焼させることができるので、燃焼効率を高めることができる。
【0018】
バーナ部は、熱回収部の両側に位置して熱回収部の長手方向に沿って延びる一対のバーナ対向壁部と、一対のバーナ対向壁部に、長手方向に沿い且つ混合気化燃料ガスを相手方のバーナ対向壁部に向かって噴出するように形成された複数のガス流出孔を含むように構成してもよい。このようにすることで、対向するバーナ部の燃焼炎により熱回収部が加熱されて、効率的に熱回収することが可能となる。バーナ部は、一対のバーナ対向壁部の長手方向の両端を連結する一対の連結部を備えており、二次空気噴出口は、一対のバーナ対向壁部及び一対の連結部の周囲を完全に囲むように形成されていてもよい。
【0019】
気化部の側壁部の長手方向の一端に位置する端部側壁部には、燃料供給部の燃料噴射ノズルが貫通し、且つ、一次空気を導入する一次空気導入孔が形成されており、気化部の側壁部の長手方向の他端に位置する端部側壁部に近接した蓋体の一部分には、気化室とガス室とを連通する連通路が形成されていてもよい。蓋体の上には、バーナ部の一部を構成するバーナ本体と、ガス室の一部を構成するガス室構成体下半部と、ガス室構成体下半部の上に組み合わされてバーナ部及びガス室を完成するガス室構成体上半部からなる組立体が配置されている。液体燃料燃焼器は、少なくとも組立体を収納する本体収納部を備えており、組立体と本体収納部の間に形成された空間によって、二次空気室が形成されていてもよい。
【0020】
二次空気噴出口は、組立体のガス室構成体上半部と本体収納部の間にあり、且つ、一対のバーナ対向壁部及び一対の連結部によって構成される環状壁部の上縁部に沿って形成された環状の間隙部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施の形態の液体燃料燃焼器の前面パネルを取り外した状態で示した斜視図である。
【
図3】バーナ・アセンブリの正面を一部切り欠いて示した断面図である。
【
図4】
図3に示したバーナ・アセンブリの斜視図である。
【
図6】
図3に示したVI-VI線斜視断面図である。
【
図7】
図3に示したVII-VII線斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の液体燃料燃焼器を、室外に延びる給排気筒から燃焼に必要な空気を給気し、且つ、燃焼後の燃焼ガスを室外に排気する強制給排気式(FF式)ストーブに適用した実施の形態を詳細に説明する。
【0023】
[全体構成]
図1は、本実施の形態の液体燃料燃焼器1の前面パネルを取り外した状態で示した斜視図である。液体燃料燃焼器1は、主に、枠体3と、バーナ・アセンブリ5と、バーナ・アセンブリ5に空気を送る送風機7と、熱交換器9とから構成されている。バーナ・アセンブリ5の後述する空気供給部21のパイプ31は、室外に延びる給排気筒の給気筒11と接続され、熱交換器9は給排気筒の排気筒13と接続されている。また、バーナ・アセンブリ5の後述する燃料供給部19の燃料噴射ノズル29は、図示しない燃料タンクから液体燃料(本例では灯油)を汲み出すポンプ15と接続されている。バーナ・アセンブリ5は、送風機7に接続された給気筒11から給気した空気で、液体燃料を燃焼させる。燃焼ガスは、熱交換器9に供給され、図示しない室内対流ファンによって送られる室内の空気と熱交換後、排気筒13から排気される。
【0024】
[バーナ・アセンブリ]
図2は、バーナ・アセンブリ5の斜視図であり、
図3は、バーナ・アセンブリ5の正面を一部切り欠いて示した断面図であり、
図4は、
図3の斜視図であり、
図5は、
図3に示したV-V線断面図であり、
図6は、
図3に示したVI-VI線斜視断面図であり、
図7は
図3に示したVII-VII線斜視断面図である。なお、断面図において、ハッチングにより不鮮明となる部分が存在するため、一部ハッチングについては図示を省略している。
【0025】
図2に示すように、バーナ・アセンブリ5は、ブラケット17上に設置されている。
図3及び
図4に示すように、バーナ・アセンブリ5は、大きく分けて、燃料供給部19と、空気供給部21と、気化部23と、ガス室25と、バーナ部27とから構成されている。
【0026】
〈燃料供給部〉
燃料供給部19は、ポンプ15と接続された細いパイプ状の燃料噴射ノズル29を有しており、液体燃料を気化部23の燃料受け部51に滴下する。本実施の形態では、燃料噴射ノズル29の先端部は、斜めに切断して形成されており、切断面形状は楕円形状になっている。
【0027】
〈空気供給部〉
空気供給部21は、
図1に示した送風機7に接続された給気筒11と接続されたパイプ31を有している。パイプ31内に供給された空気は、仕分け板33により、一次空気と二次空気に分けられ、一次空気は一次空気室35に流れ込み、二次空気は後述の二次空気室37に流れ込むようになっている。
【0028】
〈気化部〉
気化部23は、一次空気室35と連通する箱状体39と、初期加熱用のヒータ41を備えている。箱状体39は、アルミニウム等の金属の鋳造品によって構成された細長い箱状本体43と細長い蓋体45とを備えている。箱状本体43は、底壁部43Aと、底壁部43Aの縁部から立ち上がる側壁部43Bからなり、上面に開口部43Cを有する。蓋体45は、箱状本体43の上壁部を構成し、開口部43Cを塞いでいる。側壁部43Bの長手方向の一端に位置する端部側壁部43Dには、燃料噴射ノズル29が貫通し、且つ、一次空気室35と連通して、一次空気を箱状体39内に導入する一次空気導入孔47が形成されている。
【0029】
図3に示すように、ヒータ41は、他方の端部側壁部43E側に2つの端子41A,41Aを有し、端部側壁部43D側で折り返す、底壁部43Aに沿って延びるU字状のものである。ヒータ41の2つの端子41A,41Aは、図示しない電源ケーブルに接続されている。ヒータ41は、電力が供給されることで発熱し、箱状体39の底壁部43Aを加熱する。
【0030】
図5に示すように、箱状本体43の側壁部43Bの外側には、複数のネジ孔43fを有するフランジ部43Fが一体に形成されている。後に説明するが、複数のネジ孔43fには、ネジ72が螺合され、ネジ72の先端は気化部上カバー71の底壁部71Aに形成された複数のネジ孔71Fに螺合されている。これにより気化部23が気化部上カバー71に固定される。
【0031】
図3に示すように、箱状本体43の底壁部43Aの長手方向の途中には、燃料噴射ノズル29から出た液体燃料を堰き止める堰部49が設けられている。端部側壁部43Dと堰部49との間に、燃料噴射ノズル29から出た液体燃料を受ける燃料受け部51が形成されている。燃料受け部51は、その内面に、端部側壁部43Dから堰部49に向かって蓋体45と内底面との間の間隔が拡がる向きの傾斜面を備えている。堰部49内には、燃料受け部51の温度を測定するためのサーミスタ(温度センサ)50が埋設されている。堰部49から他方の端部側壁部43Eまでの間の空間は、ヒータ41によって加熱された燃料受け部51で気化された液体燃料を一次空気と混合して混合気化燃料ガスとする気化室53となっている。
【0032】
図6に示すように、箱状本体43の側壁部43Bの内壁部には、4本の熱伝導ピラー55,57が設けられている。このうち2本の熱伝導ピラー55,55は、燃料受け部51の上方に位置する空間部分に向かって突出するように設けられており、2本の熱伝導ピラー57,57は気化室53に向かって突出するように設けられている。箱状本体43の端部側壁部43E側には外側に向かって突出するように2本のピラー59,59が設けられている。
図5及び
図6に示すように、熱伝導ピラー55,57及びピラー59,59には蓋体45を固定するためのネジ63が螺合するネジ孔61がそれぞれ形成されている。
【0033】
蓋体45は、開口部43Cを塞ぐ蓋であり、ネジ63により箱状本体43に固定されている。
図5に示すように、蓋体45には、上方に向かって突出する凸状部65と、気化室53とガス室25を連通させる連通路67(
図4,
図7参照)が形成されている。凸状部65には、上方に向かって開口し且つ長手方向に延びる、頂部65Aの両側に形成された一対のスリット65B,65Bが形成されている(
図5参照)。後述のように、凸状部65は火炎によって直接炙られる熱回収部となることから、一対のスリット65B,65Bは、炙られる凸状部65の面積を増大させて、熱回収効率を向上させることができる。
【0034】
図2、
図3及び
図5に示すように、気化部23は、気化部下カバー69及び気化部上カバー71からなる気化部カバー68内に納められている。なお、気化部カバー68と後述のバーナ部カバー88により、本体収納部が構成されている。
【0035】
気化部下カバー69は、底壁部69Aと、底壁部69Aから立ち上がる側壁部69Bからなり、主に箱状本体43の底壁部43Aの周囲を囲む。側壁部69Bには、ブラケット17とネジ止めするためのネジ孔を有する固定部69Cと、気化部上カバー71とネジ止めするためのネジ孔を有する固定部69Dが形成されている。気化部下カバー69は、ネジ18(
図5,
図7参照)によりブラケット17と固定されている。
【0036】
気化部上カバー71は、底壁部71Aと、底壁部71Aから立ち上がる側壁部71Bと、側壁部71Bの上縁部に形成されたフランジ部71Cからなる。底壁部71Aには、気化部23の一部が貫通した状態で固定される気化部貫通孔71D(
図3,
図5参照)と、パイプ31が貫通するパイプ貫通孔71Eが形成されている(
図3参照)。また、底壁部71Aには、気化部下カバー69の固定部69Dのネジ孔と整合する位置、及び、気化部23のネジ孔43fと整合する位置に形成された複数のネジ孔71Fが形成されており、ネジ72により気化部下カバー69及び気化部23が気化部上カバー71に固定されている(
図5参照)。フランジ部71Cは、後述のバーナ部下カバー89が固定される部分であり、ネジ孔71Gが形成されている(
図2及び
図5参照)。
【0037】
箱状本体43の側壁部43Bと気化部上カバー71の側壁部71Bの間に形成された隙間には、気化部23を周囲から断熱するパッキン73が配置されている。また、
図4に示すように、蓋体45の上には、蓋体45と一体に形成された連通路67と整合する位置に貫通孔を有し、また、凸状部65が貫通する開口部を有する遮熱板46が配置されている。
【0038】
〈ガス室、及び、バーナ部〉
ガス室25及びバーナ部27は、組立体75によって構成されている。組立体75は、ガス室構成体下半部77、ガス室構成体上半部79、及び、バーナ本体81とからなる。ガス室構成体下半部77には、バーナ本体81が固定されるバーナ用開口部77Aと、気化室53とガス室25を連通させる連通路67と整合する位置に貫通孔77Bが形成されている(
図4,
図7参照)。ガス室構成体上半部79には、バーナ本体81が固定されるバーナ用開口部79Aが形成されている(
図4参照)。バーナ本体81は、長手方向に延びる一対のバーナ対向壁部83,83と、一対のバーナ対向壁部83,83の長手方向の両端を連結する一対の連結部85,85からなる環状である(
図7参照)。一対のバーナ対向壁部83,83には、複数のガス流出孔87が形成されている。ガス室構成体下半部77の上にガス室構成体上半部79が組み合わされ、バーナ本体81がバーナ用開口部77A及びバーナ用開口部79Aに固定されることで組立体75が構成されている。ガス室25は、組立体75内の貫通孔77Bの上に形成された空間、及び、バーナ本体81の周囲に形成された空間である。
【0039】
図3乃至
図5に示すように、組立体75は、パッキン86を介して、ガス室構成体下半部77の貫通孔77Bが連通路67と連通し、且つ、バーナ本体81が蓋体45の凸状部65の周囲を取り囲む状態で遮熱板46上に固定されている。具体的には、
図7に示すように、ガス室構成体上半部79の側面部と遮熱板46に形成されたネジ孔にL字状金具76A及びネジ76Bにより固定されている。これにより、気化室53で生成された混合気化燃料ガスはガス室25を通って、複数のガス流出孔87から噴出するようになっている。
【0040】
図2乃至
図5に示すように、組立体75は、バーナ部下カバー89とバーナ部上カバー91からなるバーナ部カバー88内に納められている。
【0041】
バーナ部下カバー89は、上壁部89Aと、上壁部89Aから下方に延びる側壁部89Bと、側壁部89Bの下縁部に形成されたフランジ部89Cからなる。上壁部89Aには、バーナ部27を露出させるバーナ用開口部89aが形成されている。バーナ用開口部89aには、後述の二次空気噴出口93から噴出する二次空気をバーナ本体81の上方に向ける送風板89Dが取り付けられている。
図2に示すように、フランジ部89Cには、気化部上カバー71のネジ孔71Gと整合する位置にネジ孔89cが形成されており、パッキンを間に挟んで、ネジ90により、気化部上カバー71とバーナ部下カバー89が固定されている。
【0042】
図3に示すように、気化部上カバー71にバーナ部下カバー89が固定された状態で、バーナ部下カバー89と組立体75の間には、パイプ31と仕分け板33によって形成された二次空気流路と連通した二次空気室37が形成されている。このように構成されていることで、二次空気室37は、ガス室25の周囲を囲むが、気化部23の周囲は囲まないようになっている。また、バーナ用開口部89aにより、組立体75のガス室構成体上半部79とバーナ部下カバー89の間であり、且つ、バーナ本体81の環状壁部の上縁部81Aに沿って、環状の間隙部である二次空気噴出口93が形成されている。
【0043】
バーナ部上カバー91は、底壁部91Aと、底壁部91Aから立ち上がる側壁部91Bと、側壁部91Bの上縁部に形成されたフランジ部91Cからなる。底壁部91Aには、バーナ部下カバー89のバーナ用開口部89aと整合する位置にバーナ開口部91aが形成されている。側壁部91Bには、バーナ本体81のガス流出孔87の周囲まで延びる点火部95と、バーナ部27の燃焼を検出するフレームロッド97が固定されている(
図2及び
図5参照)。フランジ部91Cにはネジ孔91cが形成されており、熱交換器9を載置し、固定するようになっている。
【0044】
[伝熱構造]
本実施の形態では、熱回収部を構成する蓋体45の凸状部65と、蓋体45と箱状本体43からなる箱状体39によって伝熱構造が構成されている。具体的には、蓋体45の凸状部65が一対のバーナ対向壁部83,83による対向火炎によって直接炙られる構成となっており、燃焼開始後は、凸状部65から熱回収が行われる。回収した燃焼熱は凸状部65から蓋体45を介して熱伝導ピラー55,57を含め、箱状本体43を熱するようになっている。
【0045】
[動作状態]
液体燃料燃焼器1が動作状態となると次のように動作する:
(1)ヒータ41に通電すると、気化部23の底壁部43Aが温められる。併せて、熱伝導ピラー57を介して、点火部95の周辺のバーナ部も温められる:
(2)ポンプ15が液体燃料を汲み出し、燃料噴射ノズル29から液体燃料が滴下される。燃料受け部51で温められた液体燃料は気化する:
(3)送風機7から送風された空気がパイプ31からバーナ・アセンブリ5内に供給される。供給された空気は、仕分け板33により一次空気と二次空気に分けられる(
図3及び
図4参照):
(4)一次空気は、一次空気導入孔47から気化部23内に入り、気化した液体燃料と混合されながら、気化室53内を進み、混合気化燃料ガスとなる(
図3、
図4及び
図6参照):
(5)混合気化燃料ガスは、連通路67からガス室25内に入り、バーナ部27のガス流出孔87から噴出する(
図3、
図4及び
図7参照):
(6)二次空気は、二次空気室37内に入り、二次空気噴出口93から噴出する(
図3及び
図4参照):
(7)点火部95によって混合気化燃料ガスが点火され、バーナ部27において二次空気とともに燃焼される
(8)蓋体45の凸状部65からの熱回収により、箱状本体43(燃料受け部51)に熱が伝達され、堰部49内に設けたサーミスタ50によって燃料受け部51が液体燃料の気化温度(本実施の形態では、灯油の95%留出温度である約270℃)以上になったことが検知されると、ヒータ41への通電を止める。本実施の形態では、特に、熱伝導ピラー55及び57によって燃料受け部51の上方に位置する空間部分の温度の低下を抑制することができるため、早期にヒータ41への通電を停止することが可能である。これによりヒータ41による熱を要することなく、液体燃料の気化が継続され、燃焼が継続される。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、熱回収効率を向上させ、安定して液体燃料を気化させることが可能な液体燃料燃焼器を提供することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 液体燃料燃焼器
3 枠体
5 バーナ・アセンブリ
7 送風機
9 熱交換器
11 給気筒
13 排気筒
15 ポンプ
17 ブラケット
18 ネジ
19 燃料供給部
21 空気供給部
23 気化部
25 ガス室
27 バーナ部
29 燃料噴射ノズル
31 パイプ
33 仕分け板
35 一次空気室
37 二次空気室
39 箱状体
41 ヒータ
43 箱状本体
43A 底壁部
43B 側壁部
43C 開口部
43D 端部側壁部
43E 端部側壁部
43F フランジ部
45 蓋体
46 遮熱板
47 一次空気導入孔
49 堰部
50 サーミスタ
51 燃料受け部
53 気化室
55,57 熱伝導ピラー
59 ピラー
61 ネジ孔
63 ネジ
65 凸状部
65A 頂部
65B スリット
67 連通路
68 気化部カバー
69 気化部下カバー
69A 底壁部
69B 側壁部
69C 固定部
69D 固定部
71 気化部上カバー
71A 底壁部
71B 側壁部
71C フランジ部
71D 気化部貫通孔
71E パイプ貫通孔
71F ネジ孔
71G ネジ孔
72 ネジ
73 パッキン
75 組立体
76A L字状金具
76B ネジ
77 ガス室構成体下半部
77A バーナ用開口部
77B 貫通孔
79 ガス室構成体上半部
79A バーナ用開口部
81 バーナ本体
83,83 一対のバーナ対向壁部
85,85 一対の連結部
86 パッキン
87 ガス流出孔
88 バーナ部カバー
89 バーナ部下カバー
89A 上壁部
89B 側壁部
89C フランジ部
91 バーナ部上カバー
91A 底壁部
91B 側壁部
91C フランジ部
93 二次空気噴出口
95 点火部
97 フレームロッド