(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133818
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ファン付き衣服用ファンユニット
(51)【国際特許分類】
A41D 13/002 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
A41D13/002 105
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032724
(22)【出願日】2021-03-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和 2年12月 1日 2021年春夏物展示商談会の案内状の発送 令和 2年12月11日 株式会社山善への商品説明 令和 3年 1月 5日 株式会社ミチオショップへの商品説明 令和 3年 1月12日 2021年春夏物展示商談会に展示 令和 3年 1月12日 日新被服株式会社のフェイスブックページに掲載 令和 3年 1月13日 ユーチューブに掲載 令和 3年 1月21日 2021年春夏物商品カタログの発送 令和 3年 2月 2日 ユーチューブに掲載 令和 3年 2月10日 ユーチューブに掲載 令和 3年 2月17日 2021年トルネードラカン専用パンフレットの発送 令和 3年 2月18日 ユーチューブに掲載 令和 3年 2月22日 ユーチューブに掲載
(71)【出願人】
【識別番号】595135246
【氏名又は名称】日新被服株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】特許業務法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 景紀
(72)【発明者】
【氏名】石川 宏
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA05
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC03
3B011AC21
(57)【要約】
【課題】生地厚調整と誤装着防止とを両立させ、あわせて装着動作の負担を軽減できるファン付き衣服用ファンユニットを提供する。
【解決手段】ケーシング11の環状壁22の内周面と一体に第1凸部25a~25dが断続的に形成され、装着体14の円筒壁23の外周面と一体に第2凸部27a~27dが断続的に形成され、装着体14にケーシング11を重ね合せた状態で、ケーシング11を回転させることにより、ケーシング11に形成された第1凸部25a~25dが、装着体14に形成された第2凸部27a~27dに沿って係合して、ケーシング11に装着体14が装着され、ケーシング11に装着体14が装着された状態で、回転規制片16を、装着体14に形成された第2凸部27aの先端46に対向する位置までスライドさせることにより、ケーシング11の装着体14に対する回転を規制するようにしている。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン付き衣服に用いるファン付き衣服用ファンユニットであって、
外気を取り込むファンと、
前記ファンを囲む環状壁を有するケーシングと、
前記環状壁に係合する円筒壁を有する装着体と、
前記ケーシングにスライド可能に取り付けられ、前記装着体から前記ケーシングが外れることを防止する回転規制片とを備えており、
前記環状壁の内周面と一体に、前記内周面の周方向に沿って傾斜した第1凸部が断続的に形成され、
前記円筒壁の外周面と一体に、前記外周面の周方向に沿って傾斜した第2凸部が断続的に形成され、
前記装着体に形成された前記円筒壁の外周面側に、前記ケーシングに形成された前記環状壁の内周面側が対応するように、前記装着体に前記ケーシングを重ね合せた状態で、前記ケーシングを回転させることにより、前記ケーシングに形成された前記第1凸部が、前記装着体に形成された前記第2凸部に沿って係合して、前記装着体に前記ケーシングが装着され、
前記装着体に前記ケーシングが装着された状態で、前記回転規制片を、前記装着体に形成された前記第2凸部の先端に対向する位置までスライドさせることにより、前記ケーシングの前記装着体に対する回転を規制するようにしたことを特徴とするファン付き衣服用ファンユニット。
【請求項2】
前記ケーシングに形成された前記第1凸部の一端に隣接して第1突起が形成され、前記装着体に形成された前記第2凸部の一端に隣接して第2突起が形成され、前記ケーシングの回転により、前記ケーシングに形成された前記第1突起が、前記装着体に形成された前記第2突起を乗り越えることにより、前記装着体から前記ケーシングが外れる方向の回転が規制される請求項1に記載のファン付き衣服用ファンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンで外気を取り込むファン付き衣服に用いるファン付き衣服用ファンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱中症対策や夏場の作業効率を高めるために、作業現場における作業服として、ファン付き衣服が用いられるようになってきた。ファン付き衣服は、ファンの回転で取り込んだ外気を身体と衣服との間に流動させて、身体を冷やすというものである。ファンはモータで駆動され、ファンはケーシング内に収容され、ファン、モータ及びケーシングは、ファンユニットとして一体になっている。
【0003】
ファンユニットの衣服への装着方式は、ねじ込み式と嵌め込み式とに大別することができる。ねじ込み式及び嵌め込み式のいずれの場合であっても、ケーシングとリングとの間に衣服が挟まれることにより、ファンユニットが衣服に装着される。
【0004】
ねじ込み式は、衣服にあらかじめ設けている衣服の開口にケーシングの円筒部を挿通させて、衣服からケーシングを突出させた状態で、ケーシングのねじ山形成部に、ケーシングとは別部品であるリングのねじ山形成部を螺合させて締め付けるというものである(下記特許文献1参照)。
【0005】
はめ込み式は、衣服からケーシングを突出させる点、リングを用いる点は、ねじ込み式と同様であるが、ねじの螺合は用いず、ケーシングに形成された係止爪(係止凹部)にリングに形成された係止突起を嵌め込むというものである(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6560433号公報
【特許文献2】特許第6108327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ねじ込み式は、リングのねじ込み量により、ケーシングとリングとの間隔を調整できるので、異なる生地厚の衣服へのファンユニットの装着にも対応できるという生地厚調整が可能であった。また、ファンユニットの装着の際には、リングを回転させる締め付け動作が必要であるため、誤装着の可能性が低い。一方、リングの締め付けの際には、リングを複数回に亘り回転させる必要があった。
【0008】
これに対し、嵌め込み式は、ファンユニットの装着はリングとケーシングとの係止によるものであるため、ねじ込み動作は不要であり、ねじ込み式に比べ、ファンユニットの装着が容易であった。一方、装着はリングをケーシングに押し込むだけでよいため、係止が完了したとの誤認識による誤装着の可能性があった。また、ファンユニットの装着は、リングとケーシングとの係止によるものであるため、特定の生地厚以外の衣服に対しては、ファンユニットの装着ができない場合があり、生地厚調整が可能でなかった。
【0009】
本発明は前記のような従来のファンユニットの装着に関する問題に鑑み、生地厚調整と誤装着防止とを両立させ、あわせて装着動作の負担を軽減できるファン付き衣服用ファンユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明のファン付き衣服用ファンユニットは、ファン付き衣服に用いるファン付き衣服用ファンユニットであって、外気を取り込むファンと、前記ファンを囲む環状壁を有するケーシングと、前記環状壁に係合する円筒壁を有する装着体と、前記ケーシングにスライド可能に取り付けられ、前記装着体から前記ケーシングが外れることを防止する回転規制片とを備えており、前記環状壁の内周面と一体に、前記内周面の周方向に沿って傾斜した第1凸部が断続的に形成され、前記円筒壁の外周面と一体に、前記外周面の周方向に沿って傾斜した第2凸部が断続的に形成され、前記装着体に形成された前記円筒壁の外周面側に、前記ケーシングに形成された前記環状壁の内周面側が対応するように、前記装着体に前記ケーシングを重ね合せた状態で、前記ケーシングを回転させることにより、前記ケーシングに形成された前記第1凸部が、前記装着体に形成された前記第2凸部に沿って係合して、前記装着体に前記ケーシングが装着され、前記装着体に前記ケーシングが装着された状態で、前記回転規制片を、前記装着体に形成された前記第2凸部の先端に対向する位置までスライドさせることにより、前記ケーシングの前記装着体に対する回転を規制するようにしたことを特徴とする。
【0011】
前記本発明のファン付き衣服用ファンユニットによれば、装着体へのケーシングの装着は、ケーシングを回転させて、ケーシングに断続的に形成された第1凸部を、装着体に断続的に形成された第2凸部に係合させればよい。このため、装着体へケーシングを装着させるためのケーシングの回転量は、1回転未満で足り、ケーシングの回転量は少なくて済み、装着操作の負担が軽減される。より具体的には、第1凸部及び第2凸部の長さの設定により、回転量を1/4回転(90°)以下としたり、1/8回転(45°)以下で足りるようにすることもできる。
【0012】
また、ケーシングの回転量でケーシングと装着体との間隔を調整できるので、異なる生地厚の生地に対するファンユニットの装着にも対応でき、生地厚調整が可能になる。さらに、回転規制片を備えたことにより、ロック機能が発揮されて、ケーシングの回転が規制され、ケーシングが装着体から外れることが防止され、衣服の着用時において、ケーシングの脱落防止を図ることができる。
【0013】
また、回転規制片のスライド方向を環状壁の側壁の高さ方向にすれば、回転規制片が第2凸部の先端を超えた位置になければ、回転規制片と第2凸部とが干渉して回転規制片をスライドさせることができない。この場合、使用者は装着不十分であると認識するので、ケーシングの回転移動を完了させてから、再度回転規制片をスライドさせることになる。すなわち、不完全な装着では、ロック機能が発揮されないので、誤装着を防止することができる。
【0014】
前記本発明のファン付き衣服用ファンユニットにおいては、前記ケーシングに形成された前記第1凸部の一端に隣接して第1突起が形成され、前記装着体に形成された前記第2凸部の一端に隣接して第2突起が形成され、前記ケーシングの回転により、前記ケーシングに形成された前記第1突起が、前記装着体に形成された前記第2突起を乗り越えることにより、前記装着体から前記ケーシングが外れる方向の回転が規制されることが好ましい。この構成によれば、ケーシングのより確実な装着が可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果は前記のとおりであり、要約すれば、本発明によれば、装着体へのケーシングの装着は、ケーシングを回転させて、ケーシングに断続的に形成された第1凸部を、装着体に断続的に形成された第2凸部に係合させればよく、装着のためのケーシングの回転量は、1回転未満で足り、装着操作の負担が軽減される。また、ケーシングの回転量でケーシングと装着体との間隔を調整できるので、異なる生地厚の生地に対するファンユニットの装着にも対応でき、生地厚調整が可能になる。さらに、回転規制片を備えたことにより、ロック機能が発揮され、ケーシングの回転が規制され、衣服の着用時において、ケーシングの脱落防止を図ることができる。また、回転規制片のスライド方向を環状壁の側壁の高さ方向にすれば、誤装着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るファンユニットを用いたファン付き衣服の正面図。
【
図3】本発明の一実施形態に係るファンユニットの分解斜視図及びファンユニットに接続されるバッテリの外観斜視図。
【
図4】本発明の一実施形態において、衣服の一部である生地にファンユニットを装着する前の状態を示す斜視図。
【
図5】
図4の状態から装着体を生地の開口に挿通させた状態を示す斜視図。
【
図6】
図5の状態から装着体にケーシングを重ね合わせた状態を示す斜視図。
【
図7】
図6において後方ファンガード及び前方ファンガードを省いた図。
【
図9】本発明の一実施形態に係るケーシングの平面図。
【
図10】本発明の一実施形態において、ケーシングの装着体への装着開始時の状態を示す平面図。
【
図11】本発明の一実施形態において、ケーシングの装着体への装着開始時の要部を示す図。
【
図12】
図11の状態からケーシングの回転が進んだ状態を示す図。
【
図13】
図12の状態からケーシングの回転が進んだ状態を示す図。
【
図14】
図13の状態からケーシングの回転が進んだ状態を示す図。
【
図17】本発明の一実施形態に係るケーシングの斜視図。
【
図19】
図18の状態から回転規制片のスライドが完了したときの断面図。
【
図20】本発明の一実施形態に係るロック機構の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ファン付き衣服に用いるファンユニットに関するものであり、本発明に係るファンユニットを衣服に取り付け、ファンユニットの電源としてのバッテリを衣服に収納すれば、ファン付き衣服として用いることができる。ファン付き衣服はファンで外気を取り込んで、身体を冷やすものであり、夏場の建設現場の作業、工場内の作業、屋外の点検作業、農作業等の高温下における作業の作業服として適している。
【0018】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係るファンユニット10(
図2、
図3参照)を用いたファン付き衣服(以下、単に「衣服」という。)1の正面図であり、
図2は衣服1の裏面図である。本実施形態では、衣服を上着として説明するが、衣服はこれに限るものではなく、ズボンであってもよい。
【0019】
図1において、衣服1は前身頃2に袖3が付けられたものであり、襟4から裾5に亘り取り付けられた前見頃ファスナ6の開閉により、着衣及び脱衣が可能である。
図2において、後ろ身頃7にはファンユニット10が装着されており、ファンユニット10は後ろ身頃7に設けたファン取り付け用の開口30(
図4参照)に装着されている。本実施形態において、ファンユニット10に関し前方又は前というときは、衣服1に装着したときの衣服1の外部側のことであり、後方又は後というときは、衣服1の内部側のことである。
【0020】
図3は、ファンユニット10の分解斜視図を示しており、あわせてファンユニット10に接続されるバッテリ40の外観斜視図を示している。ファンユニット10は、ケーシング11内にファン13が収容される。ケーシング11の一端には後方ファンガード12が取り付けられている。後方ファンガード12のモータ収容部17(
図4参照)にファン12を回転させるモータ(図示せず)を備えている。ケーシング11の前方の開放部側は、前方ファンガード15が取り付けられた装着体14が取付けられる。ファンユニット10の各部の詳細は後述する。
【0021】
後方ファンガード12のモータ収容部17(
図4参照)に収容されたモータ(図示せず)にはケーブル41の一端が接続され、ケーブル41の他端にはプラグ42が取り付けられており、プラグ42はバッテリ40のジャック43に接続されている。バッテリ40はモータの電源であり、上面に操作部44を有している。操作部44の操作により、電源ON/OFFと出力調整が可能である。
図3に示したバッテリ40は一例であり、モータの電源として機能し、衣服1(
図1参照)内に収納可能な程度に小型なものであればよい。
【0022】
図4は、衣服1(
図1参照)の一部である生地20にファンユニット10を装着する前の状態を示す斜視図である。本図では、図示の便宜のため、ケーシング11の内部のファン13(
図3参照)の図示は省略している。生地20のうちファンユニット10の装着部には開口30が形成されている。開口30を囲むように座部21が形成されている。座部21は、生地20に環状の生地を追加して、この環状の生地の内部に補強材を縫い込んだものである。
【0023】
ケーシング11の後方に取付けられた後方ファンガード12は、中央部にモータ収容部17が形成されている。また、放射状にリブ18が形成され、リブ18間の間隙で排気口を形成している。装着体14の前方に取り付けられた前方ファンガード15には、放射状にリブ19が形成され、リブ19間の間隙で吸気口を形成している。ケーシング11はファン13(
図3参照)を囲む環状壁22で本体部分を形成しており、環状壁22からフランジ29が延出している。装着体14は、円筒壁23で本体部分を形成しており、円筒壁23からフランジ24が延出している。
【0024】
ケーシング11の環状壁22の内周面には、第1凸部25a、25bが形成されている。
図4では全てが図示されていないが、
図9に示したように4箇所に第1凸部25a~25dが形成されている。
図4において、装着体14の円筒壁23の外周面には、第2凸部27a、27b、27dが形成されている。
図4では全てが図示されていないが、
図8に示したように4箇所に第2凸部27a~27dが形成されている。詳細は後述するが、第1凸部25a~25dと第2凸部27a~27dとが係合してケーシング11に装着体14が装着される。
【0025】
また、
図4において、装着体14の円筒壁23の外周面には、第2凸部27aの一端に隣接して第2突起28aが形成され、第2凸部27bの一端に隣接して第2突起28bが形成されている。
図4では全てが図示されていないが、
図8に示したように第2凸部27a~27dのそれぞれの一端に隣接して第2突起28a~28dが形成されている。
【0026】
詳細は後述するが、ケーシング11を回転させながら、装着体14にケーシング11を装着する際に、ケーシング11の第1突起26a(
図9参照)が装着体14の第2突起28aを乗り越えることにより、装着体14へのケーシング11の装着が完了する。他の3箇所の第1突起26b等、第2突起28b等についても同様である。
【0027】
図5は、
図4の状態から装着体14を生地20の開口30に挿通させた状態を示す斜視図である。生地20から装着体14の円筒壁23が露出しており、装着体14のフランジ24(
図4参照)は、生地20の下側にある。この状態からケーシング11を装着体14に重ね合わせて、装着体14へのケーシング11の装着を開始する。
【0028】
図6は、装着体14にケーシング11を重ね合わせた状態を示す斜視図である。この状態からケーシング11を回転させることにより(矢印a方向)、装着体14へケーシング11を装着する。
図7は、図示を見易くするため、
図6において後方ファンガード12を省き、さらに前方ファンガード15を省いた図である。
【0029】
図8は装着体14の平面図である。
図8において、装着体14の円筒壁23の外周面には、第2凸部27a~27dが形成されている。また、第2凸部27a~27dのそれぞれの一端に隣接して第2突起28a~28dが形成されている。
図8に示したように、第2凸部27a~27dは、円筒壁23の外周面の周方向に沿って断続的に形成されている。また、
図4に示したように、第2凸部27aは円筒壁23の外周面の周方向に沿って傾斜して形成されている。他の第2凸部27b~27dについても同様である。
【0030】
図9は、ケーシング11の平面図である。本図の環状壁22は断面状態で図示しており、
図4における第1凸部25a、25bの上側の横断面に相当する。
図9において、ケーシング11の環状壁の内周面には、第1凸部25a~25dが形成されている。また、第1凸部25a~25dのそれぞれの一端に隣接して第1突起26a~26dが形成されている。
図9に示したように、第1凸部25a~25dは、環状壁22の外周面の周方向に沿って断続的に形成されている。また、
図7に示したように、第1凸部25c、25dは環状壁22の外周面の周方向に沿って傾斜して形成されている。他の第1凸部25a、25cについても同様である。
【0031】
図10は、ケーシング11の装着体14への装着開始時の状態を示す平面図である。装着体14の円筒壁23の外周をケーシング11の環状壁22の内周面が囲むように、装着体14にケーシング11が重なり合っている。本図の状態は、
図6及
図7に示した装着体14とケーシング11との装着開始時の状態に相当する。
図10において、ケーシング11を回転(矢印a方向)させることにより、ケーシング11の装着体14への装着が進んでいく。
【0032】
以下、
図11~
図14を参照しながら、ケーシング11の装着体14への装着手順について説明する。
図11は、ケーシング11の装着体14への装着開始時の要部を示す図である。
図11(a)は、装着体14にケーシング11が重なり合った状態の要部を示している。本図は
図10の下半分の図に相当する。
【0033】
図11(b)は装着体14の側面図である。本図における第2凸部27a及び第2突起28aの位置は、
図11(a)の位置と一致させている。このことは、
図12(b)、
図13(b)、
図14(b)においても同じである。また、装着動作の説明の便宜のため、ケーシング11の第1凸部25a及び第1突起26aを2点鎖線で図示している。これらの
図11(b)における位置は、
図11(a)の位置と一致させている。このことは、
図12(b)、
図13(b)、
図14(b)においても同じである。
【0034】
図11(b)において、第2凸部27aと第1凸部25aとは横並び状態になっている。この状態から
図11(a)において、ケーシング11を回転(矢印a方向)させると、ケーシング11と一体に第1凸部25a及び第1突起26aも回転する。このとき、
図11(b)において、第1凸部25a及び第1突起26aは、装着体14の第2凸部27aに向って進んでいく(矢印b方向)。
【0035】
図12は、
図11の状態からケーシング11の回転が進んだ状態の要部を示す図である。
図12(a)においては、
図11(a)の状態からケーシング11が回転(矢印a方向)しており、ケーシング11と一体に第1凸部25a及び第1突起26aも回転移動している。このことにより、
図12(b)においては、第1凸部25aの先端側は、装着体14の第2凸部27aの下側に入り込み、第1凸部25aの第2凸部27aへの係合が開始している。第2凸部27aは傾斜しており、この傾斜に合わせて第1凸部25aも傾斜しているので、ケーシング11を回転させると(矢印a方向)、ケーシング11は、装着体のフランジ24に向けて進んでいく。
【0036】
図13は、
図12の状態からケーシング11の回転が進んだ状態の要部を示す図である。
図13(a)においては、
図12(a)の状態からケーシング11が回転(矢印a方向)しており、ケーシング11と一体に第1凸部25a及び第1突起26aも回転移動している。このことにより、
図13(b)においては、第1凸部25aと第2凸部27aとの係合範囲が
図12(b)に比べ広くなっている。
【0037】
図14は、
図13の状態からケーシング11の回転が進んだ状態の要部を示す図である。
図14(a)においては、ケーシング11の回転と一体に第1突起26aが回転移動したことにより、第1突起26aが装着体14の第2突起28aを乗り越えている。また、
図14(b)に示したように、第1凸部25aの全体が第2凸部27aに係合している。
【0038】
図14(b)においては、ケーシング11のフランジ29(
図14(a)参照)が生地20に当接しており、ケーシング11の回転移動が完了した状態である。
図15に、
図14の状態のファンユニットの斜視図を示している。本図の状態では、生地はケーシング11のフランジ29と装着体14のフランジ24(
図14(b)参照)との間に挟まれている。
【0039】
以下、第1のロック機構について説明する。
図16は
図14(a)のA部の拡大図を示している。本図は図示の便宜のため、一部を破断し、第1突起26aの全体を図示している。第1突起26aは、第1突起26b~26dと同じ構造であり(
図7の第1突起26c、26d参照)、ケーシング11の中心側に凸になった凸部31を有する板ばね構造である。このため、ケーシング11を回転させると、第1突起26aがケーシング11の外側に湾曲して、
図16に示したように,第1突起26aの凸部31が装着体14の第2突起28aを乗り越えることになる。この構成によれば、強制的に装着時とは逆方向にケーシング11を回転させない限り、装着体14からケーシング11が外れることがなく、衣服の着用時において、ケーシング11のより確実な装着が可能になる。
【0040】
次に、第2のロック機構について説明する。
図17はケーシング11の斜視図である。図示の便宜のため、ケーシング11は、第1凸部25a及び第1突起26aが見える角度で図示している。ケーシング11には回転規制片16が取り付けられている。回転規制片16は、装着体14からケーシング11から外れることを防止するものである。回転規制片16はガイド片32が一体になっており、ガイド片32はケーシング11に形成された溝33に係合している。このことにより、回転規制片16は側壁22の高さ方向にスライド可能である(矢印c)。
【0041】
図18は
図17のBB線における断面図である。回転規制片16は、規制体34、板ばね35及びレバー36が一体になっている。
図18の状態はロック解除状態である。この状態では、回転規制片16の底面37はケーシング11の底面38から離れており、底面37と底面38との間には空間45が形成されている。回転規制片16を押すことにより(矢印d)、回転規制片16はスライドし、回転規制片16の底面37がケーシング11の底面38に近づいていく。
【0042】
図19は、回転規制片16のスライドが完了したときの断面図である。
図19の状態がロック状態であり、
図17及び
図18に示した空間45は規制体34で塞がれることになる。
図19の状態は、板ばね35の先端がケーシング11に形成された凸部39を乗り越えている。このため、回転規制片16をロック時と逆方向にスライドさせるように(矢印e方向)、レバー36に強制的に力を加えない限りロック状態は解除されない。
【0043】
図20を参照しながら、第2のロック機構についてより具体的に説明する。
図20(a)は、装着体14にケーシング11を重ね合わせた状態の要部を示している。
図20(a)における装着体14とケーシング11との位置関係は、
図14(a)と同じであるが、
図20(a)においては、
図14(a)で図示を省略していた回転規制片16を図示している。
図20(a)において、回転規制片16のガイド片32がケーシング11の溝33に係合している。回転規制片16の規制体34の一端の位置は、装着体14の第2凸部27aの先端46の位置とほぼ一致している。
【0044】
図20(b)は装着体14の側面図である。本図は
図14(a)に回転規制片16の外形の概略線を追加したものである。
図20(b)の回転規制片16の位置はロック解除の位置にあり、回転規制片16とケーシング11との位置関係は
図18と同じである。
図20(b)の状態では、装着体14の第2凸部27aの先端46に、規制体34は対向していない。
【0045】
図20(c)は、回転規制片16を
図20(b)の位置からスライドさせたロック状態を示している。
図20(c)における回転規制片16とケーシング11との位置関係は
図19と同じである。
図20(c)の状態では、装着体14の第2凸部27aの先端46に、規制体34が対向している。このため、ケーシング11を装着体14から取り外す方向(矢印f方向)に回転させようとしても、ケーシング11と一体の回転規制片16の移動が第2凸部27aの先端46で規制される。このことにより、ケーシング11の回転が規制され、ケーシング11が装着体14から外れることが防止され、衣服の着用時において、ケーシング11の脱落防止を図ることができる。
【0046】
また、第2のロック機構は、前記のとおり、
図20(c)において、回転規制片16を、装着体14に形成された第2凸部27aの先端46に対向する位置までスライドさせることにより、ケーシング11の装着体14に対する回転を規制する構成である。このため、
図20(b)に示したように、回転規制片16が第2凸部27aの先端46を超えた位置になければ、回転規制片16と第2凸部27とが干渉して回転規制片16をスライドさせることができない。この場合、使用者は装着不十分であると認識するので、ケーシング11の回転移動を完了させてから、再度回転規制片16をスライドさせることになる。すなわち、第2のロック機構によれば、不完全な装着では、ロック機能が発揮されないので、誤装着を防止することができる。
【0047】
本実施形態においては、回転規制片16と第2凸部27aの先端46との対向の意味は、回転規制片16と第2凸部27aの先端46とが隣接又は近接した状態で向かい合うという意味であり、両者が接していなくてもよい。
図20(c)では、回転規制片16と第2凸部27aの先端46とが、接する程度に対向しているが、両者の間に隙間があってもよい。生地20が
図20(c)のものより薄ければ、ケーシング11はさらに回転可能であり、前記の隙間が生じることになる。隙間があっても、ケーシング11を装着体14から取り外す方向(矢印f方向)に回転させれば、回転規制片16は第2凸部27aの先端46に当接するので、ロック機能が発揮される。
【0048】
図20を参照して、回転規制片16による第2のロック機構について説明したが、
図17に示したように、本実施形態では回転規制片16は2個備えている。前記の
図20を参照した第2のロック機構についての説明は、他方の回転規制片16についても同様である。また、第2のロック機構は少なくとも1個所に設けていればよい。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明によれば、装着体14へのケーシング11の装着は、ケーシング11を回転させて、ケーシング11に断続的に形成された第1凸部25a~25dを、装着体14に断続的に形成された第2凸部27a~27dに係合させればよい。このため、装着体14へケーシング11を装着させるためのケーシング11の回転量は、1回転未満で足り、ケーシング11の回転量は少なくて済み、装着操作の負担が軽減される。より具体的には、第1凸部25a~25d及び第2凸部27a~27dの長さの設定により、回転量を1/4回転(90°)以下としたり、1/8回転(45°)以下で足りるようにすることもできる。
【0050】
この場合、第1凸部25a~25dと第2凸部27a~27dとの係合が進むにつれて、ケーシング11と装着体14との間隔が狭まることになるが、ケーシング11の1回転未満の回転により、ケーシング11と装着体14との間に衣服の生地20を挟むことができるように、第1凸部25a~25dと第2凸部27a~27dの傾斜角度を設定しておけばよい。
【0051】
また、ケーシング11の回転量でケーシング11と装着体14との間隔を調整できるので、異なる生地厚の生地に対するファンユニット10の装着にも対応でき、生地厚調整が可能になる。さらに、前記のとおり、回転規制片16を備えたことにより、ロック機能が発揮されるだけでなく、誤装着を防止することができる。
【0052】
また、前記実施形態は一例であり、適宜変更したものであってもよい。例えば、第1凸部は25a~25dの4箇所の例で説明し、第2凸部は27a~27dは4箇所の例で説明したが、これに限るものではなく、2箇所以上であればよい。また、ケーシング11のより確実な装着を図るために、第1のロック機構(
図16参照)を備えることが好ましいが、少なくとも第2のロック機構(
図18参照)を備えていれば、前記のとおり、ロック機能が発揮されるだけでなく、誤装着を防止することができるので、第1のロック機構を省いた構成であってもよい。
【0053】
さらに、前記実施形態においては、回転規制片16は側壁22の高さ方向にスライド可能な構成であったが、側壁22の周方向にスライド可能な構成であってもよい。この場合、回転規制片のスライドにより、回転規制片が装着体14に形成された第2凸部27aの先端46に近づき、回転規制片と先端46とが対向する。回転規制片は、スライド後の状態を保持できる構造にしておけば(例えば
図19のように板ばね35が凸部39を乗り越える構成)、ロック状態も保持されることになる。
【符号の説明】
【0054】
1 ファン付き衣服
10 ファンユニット
11 ケーシング
13 ファン
14 装着体
16 回転規制片
20 生地
22 側壁
23 円筒壁
25a,25b,25c,25d 第1凸部
26a,26b,26c,26d 第1突起
27a,27b,27c,27d 第2凸部
28a,28b,28c,28d 第2突起
30 開口
【手続補正書】
【提出日】2021-12-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン付き衣服に用いるファン付き衣服用ファンユニットであって、
外気を取り込むファンと、
前記ファンを囲む環状壁を有するケーシングと、
前記環状壁に係合する円筒壁を有する装着体と、
前記ケーシングと一体に、かつ前記ケーシングにスライド可能に取り付けられ、前記装着体から前記ケーシングが外れることを防止する回転規制片とを備えており、
前記環状壁の内周面と一体に、前記内周面の周方向に沿って傾斜した第1凸部が断続的に形成され、
前記円筒壁の外周面と一体に、前記外周面の周方向に沿って傾斜した第2凸部が断続的に形成され、
前記装着体に形成された前記円筒壁の外周面側に、前記ケーシングに形成された前記環状壁の内周面側が対応するように、前記装着体に前記ケーシングを重ね合せた状態で、前記ケーシングを回転させることにより、前記ケーシングに形成された前記第1凸部が、前記装着体に形成された前記第2凸部に沿って係合して、前記装着体に前記ケーシングが装着され、
前記装着体に前記ケーシングが装着された状態で、前記回転規制片を、前記装着体に形成された前記第2凸部の先端に対向する位置までスライドさせることにより、前記ケーシングを前記装着体から取り外す方向に回転させようとしたときに、前記ケーシングと一体の前記回転規制片の移動が前記第2凸部の先端で規制されて、前記ケーシングの前記装着体に対する回転を規制するようにしたことを特徴とするファン付き衣服用ファンユニット。
【請求項2】
前記ケーシングに形成された前記第1凸部の一端に隣接して第1突起が形成され、前記装着体に形成された前記第2凸部の一端に隣接して第2突起が形成され、前記ケーシングの回転により、前記ケーシングに形成された前記第1突起が、前記装着体に形成された前記第2突起を乗り越えることにより、前記装着体から前記ケーシングが外れる方向の回転が規制される請求項1に記載のファン付き衣服用ファンユニット。