(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133826
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】動物用検温装置およびこれを用いた体調管理システム
(51)【国際特許分類】
A01K 29/00 20060101AFI20220907BHJP
A01K 7/06 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A01K29/00 D
A01K7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032734
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
(71)【出願人】
【識別番号】391011700
【氏名又は名称】宮崎県
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】李 根浩
(72)【発明者】
【氏名】長友 敏
(72)【発明者】
【氏名】岐本 博紀
(72)【発明者】
【氏名】壱岐 侑祐
【テーマコード(参考)】
2B102
【Fターム(参考)】
2B102AA01
2B102AA13
2B102AB14
2B102AB18
2B102AB23
2B102AB50
2B102AD05
2B102AE10
2B102CA32
(57)【要約】
【課題】動物の深部温度を検出することができる動物用検温装置およびこれを用いた体調管理システムを提供する。
【解決手段】水が供給される飲み口部20と、飲み口部20の近傍に配置され動物Aの口内温度を検出する検出部30を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が供給される飲み口部と、
前記飲み口部の近傍に配置され動物の口内温度を検出する検出部を備えることを特徴とする動物用検温装置。
【請求項2】
前記検出部は、非接触式温度計を有することを特徴とする請求項1に記載の動物用検温装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記非接触式温度計と、前記飲み口部に並設される検出導管を有することを特徴とする請求項2に記載の動物用検温装置。
【請求項4】
前記飲み口部は、給水スイッチを備え、
前記給水スイッチのオン動作によって、前記検出部による動物の口内温度の検出を開始し、その後前記飲み口部に水が供給されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の動物用検温装置。
【請求項5】
前記動物用検温装置が給水または動物の口内温度を検出した日時と、動物の個体識別情報を認識した日時を合わせて管理することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の動物用検温装置を用いた体調管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜や実験動物等の動物の体調管理を行うための動物用検温装置およびこれを用いた体調管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜や実験動物等の動物の体調管理において、体温は健康状態を反映する重要な指標となっている。動物の体温は、測定箇所によって異なることから、正確な体温を知るためには深部体温を測定する必要がある。一般的に、動物の深部体温の測定は、動物を拘束し、体温計を直腸内に挿入した状態で測定が終了するまでの間、定位置に留めておく必要があるため、測定者のみならず、動物にも多大な労力やストレスを伴うものである。
【0003】
特に、畜産業においては、牛や豚等の家畜を多数飼育管理することから、個別に動物の体温を測定して体調管理を行うためには、多大な労力と時間が必要となる。そこで、赤外線カメラにより動物の体外表面から発せられる赤外線量を測定しサーモグラフィ画像を生成することで、体外表面の各部位の健康な状態における基準温度との差に基づき動物の体調を判定する技術が開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6101878号公報(第3頁~第7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、赤外線カメラを用いることにより非接触での動物の体温測定を可能としたものであり、測定者や動物の労力やストレスを大幅に軽減することができる。しかしながら、体外表面の温度は、深部体温とは異なり、気温や日射等の外部環境の影響を受けて変化しやすいため、サーモグラフィ画像に正確な体温が反映されず体調管理の精度が低下してしまう虞があった。
【0006】
発明者らは、動物、特に豚の口内温度が外部環境の影響を受け難く安定しており、口内と直腸内で測定される温度の差が小さいことから、口内温度が深部体温を好適に反映しており、豚の体調管理を行うための指標として有意であることを見出した。さらに、豚は定期的に飲水行動をとることから、この飲水行動に伴って継続的に口内温度の測定を行うことで体温に基づいた豚の体調管理の精度向上に寄与できることが判明した。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、動物の深部温度を検出することができる動物用検温装置およびこれを用いた体調管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の動物用検温装置は、
水が供給される飲み口部と、
前記飲み口部の近傍に配置され動物の口内温度を検出する検出部を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、動物の飲水行動に伴い飲み口部が咥えられることで検出部により開かれた動物の口内の温度、すなわち深部体温を検出することができる。
【0009】
前記検出部は、非接触式温度計を有することを特徴としている。
この特徴によれば、温度計が動物と接触することによる破損を防止できるとともに、接触式温度計と比べて応答が速いため、検出対象が動いていても正確な温度の検出を行うことができる。
【0010】
前記検出部は、前記非接触式温度計と、前記飲み口部に並設される検出導管を有することを特徴としている。
この特徴によれば、飲み口部に検出導管が並設されていることから、動物の飲水行動に伴い飲み口部と共に検出導管が確実に咥えられる。
【0011】
前記飲み口部は、給水スイッチを備え、
前記給水スイッチのオン動作によって、前記検出部による動物の口内温度の検出を開始し、その後前記飲み口部に水が供給されることを特徴としている。
この特徴によれば、検出部により動物の口内温度を検出した後、飲み口部から口内に水が供給されるため、水の影響を受けずに口内温度を検出することができる。
【0012】
本発明の体調管理システムは、
前記動物用検温装置が給水または動物の口内温度を検出した日時と、動物の個体識別情報を認識した日時を合わせて管理することを特徴としている。
この特徴によれば、動物用検温装置を利用する複数の動物の体調管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例における動物用検温装置を畜舎に設置した様子を示す部分断面図である。
【
図2】実施例における動物用検温装置(正面側)を示す斜視図である。
【
図3】実施例における動物用検温装置(背面側)を示す斜視図である。
【
図4】実施例における動物用検温装置の飲み口部および検出導管が豚に咥えられた状態を示す部分断面図である。
【
図5】動物用検温装置の変形例1を示す斜視図である。
【
図6】変形例1における検出導管の構造を示す拡大断面図である。
【
図7】動物用検温装置の変形例2を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る動物用検温装置およびこれを用いた体調管理システムを実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例に係る動物用検温装置およびこれを用いた体調管理システムにつき、
図1から
図4を参照して説明する。以下、
図1の紙面左側を動物用検温装置の正面側(前方側)とし、紙面右側を動物用検温装置の背面側(後方側)として説明する。
【0016】
本発明の動物用検温装置は、家畜や実験動物等の動物に適用され、これらの動物の飲水行動に伴い飲み口部が咥えられることを利用して検出部により開かれた動物の口内の温度を検出するものである。本実施例においては、動物用検温装置が家畜として飼育管理される豚に適用される場合を例に挙げて説明する。
【0017】
図1に示されるように、動物用検温装置1(以下、単に「検温装置1」と表記する。)は、豚Aを飼育する畜舎に設置される餌箱2のような構造物に図示しないビス等により固定されるベース部10と、水が供給される飲み口部20と、飲み口部20の近傍に配置され動物の口内温度を検出する検出部30と、から主に構成されている。尚、近傍とは、飲み口部そのもの、および飲み口部の近くを含む。
【0018】
図2および
図3に示されるように、飲み口部20は、樹脂や金属等の硬質材から円筒状に形成され、前端部がベース部10から前方に突出して設けられている。飲み口部20の後端部には、給水ホースH(
図1参照)が接続固定され、飲み口部20の先端開口20aから水の供給が可能となっている。
【0019】
検出部30は、飲み口部20と左右方向に並設される検出導管31と、検出導管31の後端部に配置・固定される非接触式温度計としての赤外線温度センサ32と、から主に構成されている。また、検出部30は、検出導管31の先端開口31aから臨む範囲において赤外線温度センサ32の先端に設けられる図示しない検出面により物体表面から発せられる赤外線量を測定し、この赤外線量を温度に換算することで温度を検出する。
【0020】
検出導管31は、樹脂や金属等の硬質材から円筒状に形成され、前端部がベース部10から前方に突出して設けられている。また、検出導管31は、飲み口部20よりも細く、かつその先端開口31aが飲み口部20の先端開口20aよりも僅かに前方に突出している(
図2および
図4参照)。尚、検出導管31の先端開口31aは、赤外線温度センサ32の測定視野よりも大きく構成されている。
【0021】
図2~
図4に示されるように、ベース部10は、餌箱2(
図4参照)に対して図示しないビス等により直接固定される固定部材11と、固定部材11の前方側に図示しないヒンジにより傾動可能に取り付けられる傾動部材12と、から構成されている。また、ベース部10の上部には、傾動部材12の傾動によりオン動作が行われる給水スイッチ21が設けられている。給水スイッチ21は、背面側の信号線L2により図示しない制御回路に接続されている(
図1参照)。
【0022】
傾動部材12は、樹脂や金属等の硬質材から正面視矩形状に形成され、前後方向に貫通する2つの貫通孔12a,12b(
図3参照)が左右方向に並設されている。貫通孔12aには、正面側から飲み口部20の後端部が固定される。貫通孔12bには、固定部材33を介して正面側から検出導管31の後端部が配置・固定され、背面側から赤外線温度センサ32の前端部が配置・固定される。このようにして、検出導管31の先端開口31aと赤外線温度センサ32の先端に設けられる図示しない検出面が略平行に配置される。赤外線温度センサ32は、信号線L1により図示しない制御回路に接続されている(
図1参照)。
【0023】
固定部材11は、樹脂や金属等の硬質材から正面視略H形状に形成され、前後方向に貫通する角丸四角形状の貫通孔11a(
図3参照)が設けられている。貫通孔11aには、飲み口部20の後端部に接続固定される給水ホースH(
図1参照)と、固定部材33の背面側に配置・固定される赤外線温度センサ32の先端部が挿通されている。また、貫通孔11aの内周面と給水ホースHや赤外線温度センサ32との間には、上下方向に空間が形成されており、固定部材11に対して傾動部材12と共に給水ホースHや赤外線温度センサ32が傾動可能となっている。
【0024】
ここで、傾動部材12の傾動動作について説明する。傾動部材12は、前方に突出する飲み口部20および検出導管31と、後方に突出する赤外線温度センサ32および給水ホースHとの重量バランスにより紙面時計回りに傾動し、固定部材11と当接することにより、飲み口部20および検出導管31が略水平となる姿勢で保持されるように構成されている(
図1参照)。傾動部材12は、豚Aの飲水行動に伴い前方に突出する飲み口部20および検出導管31の前端部が豚Aに咥えられ、略下方向に力が作用することで紙面反時計回りに傾動する(
図4参照)。このとき、固定部材11の貫通孔11aの上方の内周面に赤外線温度センサ32または給水ホースHの一部が当接することにより、傾動部材12の反時計回りへの更なる傾動が規制される。本実施例において、飲み口部20および検出導管31は、略水平となる姿勢を基準として下方向に約25度傾斜した姿勢で保持可能となっている。尚、飲み口部20および検出導管31の傾斜角度は、検温装置1の設置位置や検温装置1を利用する動物の大きさ等に応じて適宜変更されてよい。
【0025】
また、傾動部材12は、豚Aの飲水行動が終わり、飲み口部20および検出導管31の前端部に作用していた略下方向の力が取り除かれると上述した重量バランスにより時計回りに傾動し、飲み口部20および検出導管31が略水平となる姿勢に復帰する。
【0026】
次に、傾動部材12の傾動による給水スイッチ21のオン動作について説明する。本実施例において、給水スイッチ21は、図示しない制御回路に接続されており、飲み口部20および検出導管31が略水平となる姿勢で保持された状態ではオフになっている。これにより、飲み口部20への水の供給を制御する図示しない電磁式の給水弁が閉弁されるとともに、赤外線温度センサ32が待機状態に制御される。尚、給水弁は、飲み口部20の内部に設けられていてもよいし、飲み口部20と給水ホースHとの接続部分や給水ホースHとその上流部を構成する配管や貯水タンクとの接続部分に設けられていてもよい。
【0027】
傾動部材12が反時計回りに傾動し、傾動部材12の上部に配置される給水スイッチ21のトリガー21a(
図4参照)が操作されることにより、給水スイッチ21がオンに切り替わる。このオン動作により、飲み口部20への水の供給を制御する給水弁が開弁されるとともに、赤外線温度センサ32による測定が開始される。詳しくは、給水スイッチ21と接続される図示しない制御回路にはディレイ回路が適用されており、上述したオン動作によって、赤外線温度センサ32、給水弁の順に制御が行われる。
【0028】
すなわち、豚Aの飲水行動に伴い飲み口部20および検出導管31の前端部が豚Aに咥えられ、傾動部材12が傾動し始めると、給水スイッチ21のオン動作によって、先に赤外線温度センサ32の測定が開始される。そして、赤外線温度センサ32により豚Aの口内温度が検出された後、予め決められた遅延時間遅れて給水弁が開弁されることにより、飲み口部20の先端開口20aから豚Aの口内に水が供給される。
【0029】
これによれば、検温装置1は、豚Aの飲水行動に伴い飲み口部20が咥えられることを利用して、飲み口部20の近傍に設けられる検出部30、詳しくは飲み口部20に並設され飲み口部20と共に豚Aに咥えられる検出導管31の先端開口31aが臨む範囲において赤外線温度センサ32により開かれた豚Aの口内の温度、すなわち深部体温を検出することができる。これにより、測定者および豚Aの労力やストレスを軽減しながら、正確な体温測定を行うことができる。また、豚Aの定期的な飲水行動を利用することにより、継続的な体温測定が可能となり豚Aの体調管理の精度を高めることができる。
【0030】
また、検出部30は、非接触式の赤外線温度センサ32を備えることにより、赤外線温度センサ32が豚Aと接触することによる破損を防止できるとともに、接触式温度計と比べて応答が速いため、喉や舌等の検出対象が動いていても正確な温度の検出を行うことができる。
【0031】
また、飲み口部20の近くに検出導管31が並設されていることから、豚Aの飲水行動に伴い飲み口部20と共に検出導管31が確実に咥えられる。
【0032】
さらに、検出導管31は、飲み口部20よりも細く、かつその先端開口31aが飲み口部20の先端開口20aよりも僅かに前方に突出していることにより、検出導管31が飲み口部20と共に豚Aに咥えられやすくなっている。これにより、検出導管31の先端開口31aを豚Aの口内奥側を臨むように配置することができるため、より深部体温に近い口内奥側の温度を検出することができる。
【0033】
また、飲み口部20は、給水スイッチ21を備え、当該給水スイッチ21のオン動作によって、赤外線温度センサ32による豚Aの口内温度の検出を開始し、その後遅れて飲み口部20の先端開口20aから水が供給されるため、飲み口部20の先端開口20aから豚Aの口内に供給される水の影響を受けずに口内温度を確実に検出することができる。
【0034】
さらに、給水スイッチ21は、豚Aの飲水行動に伴う傾動部材12の傾動を利用してオン動作が行われるとともに、ディレイ回路を用いることにより、検温装置1の構成を簡素にしつつ、検出部30により豚Aの口内に供給される水の影響を受けずに口内温度を確実に検出することができる。
【0035】
また、検出部30は、赤外線温度センサ32を備えることにより、測定時間が1秒以下となり、数十秒から数分の測定時間を必要とする接触式温度計と比べて応答が非常に速いため、ディレイ回路による赤外線温度センサ32と給水弁の制御における遅延時間を数秒程度に設定することができ、飲水行動を行う豚Aにストレスを与えることがない。
【0036】
また、検温装置1は、豚Aに装着させるものではないため、豚の体力消耗や衛生的な問題が生じることがない。
【0037】
次いで、検温装置1を用いた体調管理システムについて説明する。本実施例において、検温装置1の図示しない制御回路は、給水スイッチ21のオン動作により給水を行った日時とその継続時間または動物の口内温度を検出した日時の情報を有線または無線によって体調管理システムを構成するパーソナルコンピュータやタブレット等に送信する。
【0038】
また、検温装置1の周辺に設置されたカメラやタグリーダ等により検温装置1を利用して飲水行動を行う動物の個体識別情報を認識した日時の情報を有線または無線によって体調管理システムを構成するパーソナルコンピュータやタブレット等に送信する。
【0039】
体調管理システムは、検温装置1が給水スイッチ21のオン動作により給水を行った日時とその継続時間または動物の口内温度を検出した日時と、検温装置1の周辺に設置されたカメラやタグリーダ等が検温装置1を利用して飲水行動を行う動物の個体識別情報を認識した日時を合わせて管理する。具体的には、検温装置1が給水スイッチ21のオン動作により給水を行った日時または動物の口内温度を検出した日時と、検温装置1の周辺に設置されたカメラやタグリーダ等が検温装置1を利用して飲水行動を行う動物の個体識別情報を認識した日時が近い情報を紐付けて管理し、これらの情報に紐付けられる動物の口内温度を抽出することにより、検温装置1を利用する個体毎に口内温度の変化を時系列で記録することができるため、複数の動物の体調管理を行うことができる。
【0040】
尚、個体識別情報を認識するためのカメラやタグリーダ等の機器は、検温装置1と一体に設けられてもよいし、検温装置1と別体に設けられてもよい。
【0041】
また、体調管理システムは、赤外線温度センサ32により検出された動物の口内温度の情報以外にも、例えば畜舎内の気温や湿度、給水量や給餌量等の飼育環境情報、日常行動や心拍、呼吸、体外表面の温度等の体外の生体情報等の各種情報に基づいて総合的に動物の体調管理を行ってもよい。これにより、動物の成育状態を判断して栄養管理を省力かつ効率的に行うことができる。また、動物の生体情報を総合的かつ継続的にモニタリングできるため、動物の異常をいち早く察知することができる。
【0042】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0043】
例えば、前記実施例においては、非接触式温度計として赤外線温度センサ32を用いて豚Aの口内温度の測定を行う態様について説明したが、これに限らず、例えば赤外線カメラを利用したサーモグラフィや2色温度計等の非接触式温度計を用いて動物の口内温度の測定を行ってもよい。また、検出部は、非接触式温度計と検出導管から構成されるものに限らず、検出導管を用いることなく非接触式温度計や接触式温度計のみで構成されていてもよい。
【0044】
また、前記実施例においては、豚Aの飲水行動に伴い飲み口部20および検出導管31が共に豚Aに咥えられ、傾動部材12が初期状態から反時計回りに傾動し始めると給水スイッチ21のオン動作によって、先に赤外線温度センサ32による測定が開始された後、電気的なディレイ回路により遅れて給水弁の開弁が行われる態様について説明したが、これに限らず、電気的なディレイ回路以外にも機械的なディレイ回路等であってもよく、例えば傾動部材が傾動し始めると給水スイッチのオン動作によって、先に赤外線温度センサによる測定が開始された後、傾動部材の反時計回りへの更なる傾動が規制される位置(
図4参照)まで傾動することで給水弁の開弁が行われるように傾動部材の傾動に応じた段階的な制御が行われてもよい。
【0045】
また、飲み口部20から口内に供給される水の影響を受けずに動物の口内温度を検出することができれば、飲み口部からの水の供給と検出部による動物の口内温度の検出が同時に行われてもよいし、動物の口内温度の検出よりも先に飲み口部からの水の供給が行われてもよい。
【0046】
また、前記実施例では、傾動部材12は、重量バランスにより時計回りに傾動し飲み口部20および検出導管31が略水平となる姿勢で保持される態様について説明したが、これに限らず、傾動部材は、図示しないスプリング等の付勢手段によって時計回りに傾動するように後方に向けて付勢されることにより飲み口部および検出導管が略水平となる姿勢で保持されていてもよい。
【0047】
また、前記実施例においては、飲み口部20および検出導管31が豚Aに咥えられることに伴う傾動部材12の傾動を利用して給水スイッチ21のオン動作を行う態様について説明したが、これに限らず、例えば飲み口部または検出導管が動物に咥えられたことを接触センサやカメラ等により感知することで赤外線温度センサおよび給水弁の制御が行われてもよい。これにより、前記実施例のように検温装置1に可動部分を設ける必要がなく、構造強度を保証することができる。
【0048】
また、前記実施例において、検出部30を構成する検出導管31は、先端開口31aが豚Aの口内奥側を臨むように構成されるものとして説明したが、これに限らず、
図5に示される変形例1の動物用検温装置101のように、検出導管131の先端部分の下方側に矩形の開口131bを設けるとともに、検出導管131の先端開口131aを塞ぐキャップ134の挿入部134aの先端に鏡面を形成するテーパ面134bを設け、このテーパ面134bが検出導管131の開口131bを向くように配置してもよい。これによれば、飲み口部20および検出導管131が豚に咥えられることにより、検出導管131の開口131bが豚の舌の根元付近を臨むこととなり、豚の舌の根元付近から発せられる赤外線を検出導管131内においてテーパ面134bにより反射し赤外線温度センサ32の先端に設けられる図示しない検出面に導くことができる。さらに、検出導管131が豚に咥えられたときに、検出導管131の開口131bには下方から豚の舌が密着しやすくなるため、口内に供給される水の影響を受け難く、正確な温度を検出することができる。尚、変形例1の動物用検温装置101は、検出導管131からキャップ134を取り外すことにより、前記実施例と同様に先端開口131aから臨む範囲の温度を赤外線温度センサ32により検出できることは言うまでもない。
【0049】
また、検出部30を構成する検出導管31は、飲み口部20を咥えた動物の口内温度を検出することができれば、飲み口部の近傍に自由に配置されてよく、例えば検出導管は、飲み口部の近くに上下方向に並設されてもよい。また、
図7に示される変形例2の動物用検温装置201のように、飲み口部220そのものの内部に検出導管231が入れ子状に配置されていてもよい。
【0050】
また、前記実施例において、検出導管31の先端開口31aが飲み口部20の先端開口20aよりも僅かに前方に突出している態様について説明したが、これに限らず、飲み口部と検出導管の先端開口は同じ位置に並設されてもよいし、飲み口部の先端開口が検出導管の先端開口よりも僅かに前方に突出していてもよい。また、飲み口部と検出導管は、それぞれ長さが変更可能に構成されていてもよい。
【0051】
また、飲み口部と検出部は、別体に設けられるものに限らず、飲み口部の先端部分に検出部が一体に設けられていてもよい。
【0052】
また、飲み口部から供給されるものは水に限らず、例えば液状の給餌物やミルク等であってもよい。
【0053】
また、本発明の動物用検温装置は、飲水行動または摂食行動に伴い飲み口部を咥えることができる動物であれば、豚以外にも牛、羊、犬等の動物に適用されてもよい。