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特開2022-133836鞍乗型車両用キャストホイールおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133836
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】鞍乗型車両用キャストホイールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60B 1/08 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
B60B1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032748
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】塚本 耕平
(57)【要約】
【課題】スポークを備えた鞍乗型車両用キャストホイールにおいて、構造の複雑化を抑制しつつ、軽量化を図る。
【解決手段】鞍乗型車両用キャストホイール(100)の製造方法は、環状のリム(110)と、リムの内周側に位置するハブ(120)と、リムとハブとを連結する複数のスポーク(130)とを含む中間製品(100’)を鋳造法により形成する鋳造工程(S1)と、鋳造工程の後、中間製品に対して切削加工を行う切削加工工程(S2)とを包含する。鋳造工程において形成される中間製品は、それぞれが複数のスポークのうちの隣接する2つのスポークを接続する複数の板状接続部(140)をさらに含む。切削加工工程において、複数の板状接続部が除去される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のリムと、前記リムの内周側に位置するハブと、前記リムと前記ハブとを連結する複数のスポークとを含む中間製品を鋳造法により形成する鋳造工程と、
前記鋳造工程の後、前記中間製品に対して切削加工を行う切削加工工程と、
を包含する鞍乗型車両用キャストホイールの製造方法であって、
前記鋳造工程において形成される前記中間製品は、それぞれが前記複数のスポークのうちの隣接する2つのスポークを接続する複数の板状接続部をさらに含み、
前記切削加工工程において、前記複数の板状接続部が除去される、製造方法。
【請求項2】
前記複数のスポークのそれぞれは、リム周方向を向く第1側面および第2側面を有し、
前記複数のスポークは、
前記第1側面および前記第2側面がリム幅方向に対して一側に傾斜した第1スポークと、
前記第1側面および前記第2側面がリム幅方向に対して他側に傾斜した第2スポークと、
を含み、
前記第1スポークと前記第2スポークとはリム周方向において交互に配置されている、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記複数の板状接続部は、
隣接する2つのスポークのリム幅方向における一側端同士を接続する第1板状接続部と、
隣接する2つのスポークのリム幅方向における他側端同士を接続する第2板状接続部と、
を含み、
前記第1板状接続部と前記第2板状接続部とはリム周方向において交互に配置されている、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記複数の板状接続部のそれぞれは、開口部を有する、請求項1から3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
環状のリムと、
前記リムの内周側に位置するハブと、
前記リムと前記ハブとを連結する複数のスポークと、
を備えた鞍乗型車両用キャストホイールであって、
前記複数のスポークのそれぞれは、リム周方向を向く第1側面および第2側面を有し、
前記複数のスポークは、
前記第1側面および前記第2側面がリム幅方向に対して一側に傾斜した第1スポークと、
前記第1側面および前記第2側面がリム幅方向に対して他側に傾斜した第2スポークと、
を含み、
前記第1スポークと前記第2スポークとはリム周方向において交互に配置されている、鞍乗型車両用キャストホイール。
【請求項6】
前記複数のスポークのそれぞれの厚さは、リム幅方向において略一定である、請求項5に記載の鞍乗型車両用キャストホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鞍乗型車両用キャストホイールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両用のホイールについて、種々の材料や製法、構造が提案されている。ホイールには、燃費の向上等のため、車両本体と同様に軽量化が求められている。
【0003】
特許文献1には、鞍乗型車両用のキャストホイールが開示されている。特許文献1に開示されているキャストホイールでは、ハブとリムとを接続する各スポークは、1つのハブ側スポーク部から2つのリム側スポーク部に分かれる股部を有しており、ブレーキディスクを取り付けるためのボス部が股部に設けられている。また、スポークのボス部が設けられている側面とは反対側の側面に、軽量化のために凹部が形成されている。
【0004】
特許文献2には、ディスクホイールの製造方法が開示されている。特許文献2に開示されている製造方法では、まず、鋳造法によりリム、ハブおよびディスク部を一体形成し、その後、ディスク部にプレス加工により複数の開口部を打ち抜く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-213237号公報
【特許文献2】特公平6-98417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、スポークに凹部を形成すると、ホイールの構造が複雑化する。また、特許文献1のキャストホイールでは、抜き勾配を設ける必要があるという製法上の制約により、スポークにはまだ駄肉が存在している。
【0007】
特許文献2の製造方法では、ディスク部が薄いことにより軽量化を図ることができるものの、車幅方向に相応の厚みを有する立体的なスポークの形成を行うことはできない。
【0008】
本発明の実施形態は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、スポークを備えた鞍乗型車両用キャストホイールにおいて、構造の複雑化を抑制しつつ、軽量化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、以下の項目に記載の鞍乗型車両用キャストホイールの製造方法および鞍乗型車両用キャストホイールを開示している。
【0010】
[項目1]
環状のリムと、前記リムの内周側に位置するハブと、前記リムと前記ハブとを連結する複数のスポークとを含む中間製品を鋳造法により形成する鋳造工程と、
前記鋳造工程の後、前記中間製品に対して切削加工を行う切削加工工程と、
を包含する鞍乗型車両用キャストホイールの製造方法であって、
前記鋳造工程において形成される前記中間製品は、それぞれが前記複数のスポークのうちの隣接する2つのスポークを接続する複数の板状接続部をさらに含み、
前記切削加工工程において、前記複数の板状接続部が除去される、製造方法。
【0011】
本発明の実施形態の製造方法によれば、鋳造工程において形成される中間製品が、隣接する2つのスポークを接続する板状接続部を含んでおり、板状接続部は、切削加工工程において除去される。鋳造工程において、キャビティの板状接続部に対応する部分を湯道として利用できるので、湯流れ性に起因するスポーク形状の制約(スポークの最小厚さや最小断面積など)を緩和することができる。そのため、スポークの軽量化や意匠性の向上を図ることができる。また、キャビティの板状接続部に対応する部分を湯道として利用できるので、製品形状に依存せずに湯道を設定することができる。そのため、湯流れ性を向上させ、鋳造不良を低減することができる。
【0012】
さらに、板状接続部がスポーク間に位置していることにより、スポーク表面に対応する位置にパーティングラインが存在しなくなる。そのため、スポーク表面にバリが発生しないので、手加工によるバリの除去が不要となる。板状接続部は、除去される必要があるが、旋盤等を用いた切削加工は、手加工と比較して大幅に生産性が高いので、総工数を減らすことができ、生産性を向上できる。また、手加工によるバリの除去作業を廃止できるので、回転工具や刃物を取り扱う作業を廃止し、且つ、粉塵の発生を伴う作業環境を改善することができる。さらに、手加工によるバリの除去作業を廃止できるので、製品の仕上がりのばらつき要因を減少させることができる。
【0013】
[項目2]
前記複数のスポークのそれぞれは、リム周方向を向く第1側面および第2側面を有し、
前記複数のスポークは、
前記第1側面および前記第2側面がリム幅方向に対して一側に傾斜した第1スポークと、
前記第1側面および前記第2側面がリム幅方向に対して他側に傾斜した第2スポークと、
を含み、
前記第1スポークと前記第2スポークとはリム周方向において交互に配置されている、項目1に記載の製造方法。
【0014】
スポークのリム周方向を向く2つの側面(第1側面および第2側面)がリム幅方向に対して同じ側に傾斜していることにより、スポークの肉厚をリム幅方向において略一定にすることが可能となる。そのため、抜き勾配の付与に伴う駄肉をなくすことができ、いっそうの軽量化を図ることができる。また、一定肉厚のスポークを中子型を使用せずに形成することができるので、鋳造工程において用いる中子型の小型化および単純化によるコスト削減を図ることができる。スポークを一定肉厚とするための中子型を使用する必要がないので、本発明の実施形態による製造方法は、鋳造法として重力鋳造法を用いる場合のみならず、ダイカスト鋳造法を用いる場合にも好適に用いることができる。
【0015】
[項目3]
前記複数の板状接続部は、
隣接する2つのスポークのリム幅方向における一側端同士を接続する第1板状接続部と、
隣接する2つのスポークのリム幅方向における他側端同士を接続する第2板状接続部と、
を含み、
前記第1板状接続部と前記第2板状接続部とはリム周方向において交互に配置されている、項目1または2に記載の製造方法。
【0016】
隣接する2つのスポークのリム幅方向における一側端同士を接続する板状接続部(第1板状接続部)と他側端同士を接続する板状接続部(第2板状接続部)とがリム周方向において交互に配置されている構造は、可動型の凸部と固定型の凸部とがリム周方向に沿って交互に配置されることによって実現され得る。各スポークのリム周方向を向く2つの側面(第1側面および第2側面)に対し、可動型の凸部に対する抜き勾配と固定型の凸部に対する抜き勾配とが付与されると、第1側面および第2側面は、リム幅方向に対して同じ側に傾斜することになる。このように、第1板状接続部と第2板状接続部とがリム周方向において交互に配置されていることにより、スポークのリム周方向を向く2つの側面(第1側面および第2側面)がリム幅方向に対して同じ側に傾斜している構成を好適に実現することができる。
【0017】
[項目4]
前記複数の板状接続部のそれぞれは、開口部を有する、項目1から3のいずれかに記載の製造方法。
【0018】
各板状接続部が開口部を有することにより、切削加工工程において除去される部分の体積を小さくすることができる。
【0019】
[項目5]
環状のリムと、
前記リムの内周側に位置するハブと、
前記リムと前記ハブとを連結する複数のスポークと、
を備えた鞍乗型車両用キャストホイールであって、
前記複数のスポークのそれぞれは、リム周方向を向く第1側面および第2側面を有し、
前記複数のスポークは、
前記第1側面および前記第2側面がリム幅方向に対して一側に傾斜した第1スポークと、
前記第1側面および前記第2側面がリム幅方向に対して他側に傾斜した第2スポークと、
を含み、
前記第1スポークと前記第2スポークとはリム周方向において交互に配置されている、鞍乗型車両用キャストホイール。
【0020】
本発明の実施形態による鞍乗型車両用キャストホイールでは、リム周方向を向く2つの側面(第1側面および第2側面)がリム幅方向に対して一側に傾斜したスポーク(第1スポーク)と、第1側面および第2側面がリム幅方向に対して他側に傾斜したスポーク(第2スポーク)とがリム周方向において交互に配置されている。つまり、各スポークにおいて、第1側面および第2側面がリム幅方向に対して同じ側に傾斜している。そのため、スポークの肉厚をリム幅方向において略一定にすることが可能となり、軽量化を図ることができる。
【0021】
[項目6]
前記複数のスポークのそれぞれの厚さは、リム幅方向において略一定である、項目5に記載の鞍乗型車両用キャストホイール。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態によると、スポークを備えた鞍乗型車両用キャストホイールにおいて、構造の複雑化を抑制しつつ、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態による鞍乗型車両用キャストホイール(ホイール)100を模式的に示す側面図である。
図2】ホイール100を模式的に示す斜視図である。
図3】ホイール100を模式的に示す断面図であり、図1中の3A-3A’線に沿った断面を示している。
図4】ホイール100を模式的に示す断面図であり、図1中の4A-4A’線に沿った断面を示している。
図5】ホイール100を模式的に示す断面図であり、図1中の5A-5A’線に沿った断面を示している。
図6】ホイール100の製造方法の例を示すフローチャートである。
図7】鋳造工程S1において形成される中間製品(ワークピース)100’を模式的に示す側面図である。
図8】ワークピース100’を模式的に示す斜視図である。
図9】ワークピース100’を模式的に示す断面図であり、図7中の9A-9A’線に沿った断面を示している。
図10】ワークピース100’を模式的に示す断面図であり、図7中の10A-10A’線に沿った断面を示している。
図11】ワークピース100’を模式的に示す断面図であり、図7中の11A-11A’線に沿った断面を示している。
図12】第1板状接続部140Aと第2板状接続部140Bとがリム周方向D1において交互に配置されている構造を形成するためのキャビティ30を示す図である。
図13】ワークピース100’の他の例を示す側面図である。
図14】ワークピース100’の他の例を示す斜視図である。
図15】ホイール100を模式的に示す断面図であり、図5に対応する断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
[ホイールの構造]
図1図2図3および図4を参照しながら、本発明の実施形態による鞍乗型車両用キャストホイール(以下では単に「ホイール」と呼ぶ)100を説明する。図1および図2は、ホイール100を模式的に示す側面図および斜視図である。図3および図4は、ホイール100を模式的に示す断面図であり、それぞれ図1中の3A-3A’線および4A-4A’線に沿った断面を示している。
【0026】
ホイール100は、図1図2図3および図4に示すように、リム110と、ハブ120と、複数のスポーク130とを備える。ホイール100は、金属材料から形成されている。リム110、ハブ120および複数のスポーク130は、一体に形成されている。
【0027】
リム110は、環状である。リム110は、内周面110aおよび外周面110bを有する。リム110の外周面110bに、タイヤが装着される。
【0028】
ハブ120は、ホイール100の中央に位置している。つまり、ハブ120は、リム110の内周側に位置している。ハブ120は、車軸が挿通される孔(車軸挿通孔)121を有する。なお、ハブ120の具体的な形状は、図1などに例示しているものに限定されない。
【0029】
複数のスポーク130は、リム110とハブ120とを連結する。より具体的には、複数のスポーク130は、リム110の内周面110aとハブ120の外周とを連結している。なお、図示している例では、ホイール100は10個のスポーク130を有しているが、スポーク130の個数は10に限定されない。
【0030】
ここで、さらに図5も参照しながら、ホイール100の構造をより具体的に説明する。図5は、ホイール100を模式的に示す断面図であり、図1中の5A-5A’線に沿った断面(つまりリム周方向D1に平行な断面)を示している。なお、以下の説明においては、リム110の周方向(以下「リム周方向」と呼ぶ)D1およびリム110の幅方向(以下「リム幅方向」と呼ぶ)D2に言及する。リム周方向D1は、ホイール100の周方向ともいえる。リム幅方向D2は、車軸挿通孔121の中心軸に平行である。
【0031】
図5に示すように、複数のスポーク130のそれぞれは、リム周方向D1を向く第1側面s1および第2側面s2と、リム幅方向D2を向く第3側面s3および第4側面s4とを有する。第1側面s1および第2側面s2は、それぞれ第3側面s3および第4側面s4の間に位置し、第3側面s3と第4側面s4とを接続しているといえる。また、第3側面s3および第4側面s4は、それぞれ第1側面s1および第2側面s2の間に位置し、第1側面s1と第2側面s2とを接続しているといえる。
【0032】
各スポーク130の第1側面s1および第2側面s2は、リム幅方向D2に対して平行ではなく、傾斜している。なお、図5では、第1側面s1および第2側面s2の、リム幅方向D2に対する傾斜を誇張して示している。図示している例では、第1側面s1のリム幅方向D2に対する傾斜角θと、第2側面s2のリム幅方向D2に対する傾斜角θとは、実質的に同じである。傾斜角θ、θは、それぞれ例えば1.5°以上である。
【0033】
複数のスポーク130は、第1側面s1および第2側面s2がリム幅方向D2に対して一側(図5では右側)に傾斜したスポーク130A(以下「第1スポーク」と呼ぶ)と、第1側面s1および第2側面s2がリム幅方向D2に対して他側(図5では左側)に傾斜したスポーク130B(以下「第2スポーク」と呼ぶ)とを含んでいる。第1スポーク130Aと第2スポーク130Bとは、リム周方向D1において交互に配置されている。
【0034】
このように、本実施形態のホイール100では、リム周方向D1を向く2つの側面(第1側面130aおよび第2側面130b)がリム幅方向D2に対して一側に傾斜したスポーク130(第1スポーク130A)と、第1側面130aおよび第2側面130bがリム幅方向D2に対して他側に傾斜したスポーク130(第2スポーク130B)とがリム周方向D1において交互に配置されている。つまり、各スポーク130においては、第1側面130aおよび第2側面130bがリム幅方向D2に対して同じ側に傾斜している。そのため、各スポーク130の厚さ(スポーク130の長手方向およびリム幅方向D2に略直交する方向(図5における左右方向)に沿った厚さ)をリム幅方向D2において略一定にすることが可能となり、軽量化を図ることができる。
【0035】
[ホイールの製造方法]
図6を参照しながら、ホイール100の製造方法を説明する。図6は、ホイール100の製造方法の例を示すフローチャートである。
【0036】
まず、リム110、ハブ120および複数のスポーク130を含む中間製品(以下「ワークピース」と呼ぶ)を鋳造法により形成する(鋳造工程S1)。ワークピースの材料としては、例えばアルミニウム合金を用いることができる。また、鋳造法としては、例えば重力鋳造法を用いることができる。鋳造工程S1において形成されるワークピースの例を、図7図8図9および図10に示す。図7および図8は、ワークピース100’を模式的に示す側面図および斜視図である。図9および図10は、ワークピース100’を模式的に示す断面図であり、それぞれ図7中の9A-9A’線および10A-10A’線に沿った断面を示している。
【0037】
ワークピース100’は、図7図8図9および図10に示すように、環状のリム110と、リム110の内周側に位置するハブ120と、リム110とハブ120とを連結する複数のスポーク130とを含む。なお、ワークピース100’におけるリム110、ハブ120およびスポーク130の形状は、最終製品であるホイール100におけるリム110、ハブ120およびスポーク130の形状と異なり得る。後述する切削加工工程S2において、ワークピース100’のリム110、ハブ120およびスポーク130の形状は変化し得る。
【0038】
ワークピース100’は、複数の板状接続部140をさらに含む。複数の板状接続部140のそれぞれは、複数のスポーク130のうちの隣接する2つのスポーク130を接続する。図11に、ワークピース100’のリム周方向D1に平行な断面(図7中の11A-11A’線に沿った断面)を示す。
【0039】
図11に示すように、複数のスポーク130のそれぞれは、リム周方向D1を向く第1側面s1および第2側面s2を有する。各スポーク130の第1側面s1および第2側面s2は、リム幅方向D2に対して傾斜している。なお、図11では、第1側面s1および第2側面s2の、リム幅方向D2に対する傾斜を誇張して示している。
【0040】
複数のスポーク130は、第1側面s1および第2側面s2がリム幅方向D2に対して一側(図11では右側)に傾斜した第1スポーク130Aと、第1側面s1および第2側面s2がリム幅方向D2に対して他側(図11では左側)に傾斜した第2スポーク130Bとを含んでいる。第1スポーク130Aと第2スポーク130Bとは、リム周方向D1において交互に配置されている。
【0041】
また、図11に示すように、複数の板状接続部140は、隣接する2つのスポーク130のリム幅方向D2における一側端(図11では上側端)同士を接続する板状接続部140A(以下「第1板状接続部」と呼ぶ)と、隣接する2つのスポーク130のリム幅方向D2における他側端(図11では下側端)同士を接続する板状接続部140B(以下「第2板状接続部」と呼ぶ)とを含んでいる。第1板状接続部140Aと第2板状接続部140Bとは、リム周方向D1において交互に配置されている。
【0042】
次に、ワークピース100’に対して切削加工を行う(切削加工工程S2)。切削加工により、車軸挿通孔121等が形成されるとともに、寸法調整が行われる。また、この切削加工工程S2において、複数の板状接続部140が除去される。
【0043】
なお、鋳造工程S1の後で、切削加工工程S2の前に、熱処理工程が行われてもよい。例えば、ワークピース100’の材料としてアルミニウム合金が用いられる場合、熱処理工程において、溶体化処理、焼き入れ処理および人工時効処理(これら一連の処理は、T6熱処理と呼ばれることもある)が行われてもよい。
【0044】
このようにして、図1などに示したホイール100が得られる。
【0045】
本実施形態の製造方法によれば、鋳造工程S1において形成されるワークピース(中間製品)100’が、隣接する2つのスポーク130を接続する板状接続部140を含んでおり、板状接続部140は、切削加工工程S2において除去される。鋳造工程S1において、キャビティの板状接続部140に対応する部分を湯道として利用できるので、湯流れ性に起因するスポーク形状の制約(スポーク130の最小厚さや最小断面積など)を緩和することができる。そのため、スポーク130の軽量化や意匠性の向上を図ることができる。また、キャビティの板状接続部140に対応する部分を湯道として利用できるので、製品形状に依存せずに湯道を設定することができる。そのため、湯流れ性を向上させ、鋳造不良を低減することができる。
【0046】
さらに、板状接続部140がスポーク130間に位置していることにより、スポーク130表面に対応する位置にパーティングラインが存在しなくなる。そのため、スポーク130表面にバリが発生しないので、手加工によるバリの除去が不要となる。板状接続部140は、除去される必要があるが、旋盤等を用いた切削加工は、手加工と比較して大幅に生産性が高いので、総工数を減らすことができ、生産性を向上できる。また、手加工によるバリの除去作業を廃止できるので、回転工具や刃物を取り扱う作業を廃止し、且つ、粉塵の発生を伴う作業環境を改善することができる。さらに、手加工によるバリの除去作業を廃止できるので、製品の仕上がりのばらつき要因を減少させることができる。
【0047】
また、本実施形態の製造方法では、スポーク130のリム周方向D1を向く2つの側面(第1側面s1および第2側面s2)がリム幅方向D2に対して同じ側に傾斜していることにより、スポーク130の肉厚をリム幅方向D2において略一定にすることが可能となる。そのため、抜き勾配の付与に伴う駄肉をなくすことができ、いっそうの軽量化を図ることができる。また、一定肉厚のスポーク130を中子型を使用せずに形成することができるので、鋳造工程S1において用いる中子型の小型化および単純化によるコスト削減を図ることができる。スポーク130を一定肉厚とするための中子型を使用する必要がないので、本実施形態の製造方法は、鋳造法として重力鋳造法を用いる場合のみならず、ダイカスト鋳造法を用いる場合にも好適に用いることができる。
【0048】
既に説明したように、ワークピース100’において、隣接する2つのスポーク130のリム幅方向D2における一側端同士を接続する板状接続部(第1板状接続部)140Aと他側端同士を接続する板状接続部(第2板状接続部)140Bとは、リム周方向D1において交互に配置されている。図12に、このような構造を形成するためのキャビティ30を示す。
【0049】
キャビティ30は、図12に示すように、第1の型(ここでは可動型)10と第2の型(ここでは固定型)20との間に規定される空間である。キャビティ30は、スポーク130に対応する部分30aおよび板状接続部140に対応する部分30bと、リム110に対応する部分およびハブ120に対応する部分(いずれも不図示)とを含んでいる。
【0050】
第1板状接続部140Aと第2板状接続部140Bとがリム周方向D1において交互に配置されている構造は、図12に示すように、可動型10の凸部10aと固定型20の凸部20aとがリム周方向D1に沿って交互に配置されることによって実現され得る。各スポーク130のリム周方向D1を向く2つの側面(第1側面s1および第2側面s2)に対し、可動型10の凸部10aに対する抜き勾配と固定型20の凸部20aに対する抜き勾配とが付与されると、第1側面s1および第2側面s2は、リム幅方向D2に対して同じ側に傾斜することになる。このように、第1板状接続部140Aと第2板状接続部140Bとがリム周方向D1において交互に配置されていることにより、スポーク130のリム周方向D1を向く2つの側面(第1側面s1および第2側面s2)がリム幅方向D2に対して同じ側に傾斜している構成を好適に実現することができる。
【0051】
ワークピース100’の板状接続部140の厚さに特に制限はないが、切削加工工程S2において除去される部分の体積を小さくする観点からは、板状接続部140の厚さはなるべく小さいことが好ましく、例えば3mm以下であることが好ましい。
【0052】
図13および図14に、鋳造工程S1において形成されるワークピース100’の他の例を示す。図13および図14に示す例では、ワークピース100’の複数の板状接続部140のそれぞれは、開口部140aを有する。各板状接続部140が開口部140aを有することにより、切削加工工程S2において除去される部分の体積を小さくすることができる。なお、開口部140aの形状や大きさは、図13および図14に示した例に限定されない。
【0053】
また、図5には、スポーク130の断面が略平行四辺形状である場合、つまり、第1側面s1および第2側面s2が略平面状である場合を示したが、第1側面s1および第2側面s2は略平面状に限定されるものではない。図15に示すように、第1側面s1および第2側面s2がそれぞれ曲面状であってもよい。第1側面s1および第2側面s2が曲面状であっても、スポーク130の肉厚をリム幅方向D2において略一定にすることが可能である。
【0054】
上述したように、本発明の実施形態による鞍乗型車両用キャストホイール100の製造方法は、環状のリム110と、前記リム110の内周側に位置するハブ120と、前記リム110と前記ハブ120とを連結する複数のスポーク130とを含む中間製品100’を鋳造法により形成する鋳造工程S1と、前記鋳造工程S1の後、前記中間製品100’に対して切削加工を行う切削加工工程S2と、を包含する。前記鋳造工程S1において形成される前記中間製品100’は、それぞれが前記複数のスポーク130のうちの隣接する2つのスポーク130を接続する複数の板状接続部140をさらに含む。前記切削加工工程S2において、前記複数の板状接続部140が除去される。
【0055】
本発明の実施形態の製造方法によれば、鋳造工程S1において形成される中間製品100’が、隣接する2つのスポーク130を接続する板状接続部140を含んでおり、板状接続部140は、切削加工工程S2において除去される。鋳造工程S1において、キャビティ30の板状接続部140に対応する部分30bを湯道として利用できるので、湯流れ性に起因するスポーク形状の制約(スポーク130の最小厚さや最小断面積など)を緩和することができる。そのため、スポーク130の軽量化や意匠性の向上を図ることができる。また、キャビティ30の板状接続部140に対応する部分30bを湯道として利用できるので、製品形状に依存せずに湯道を設定することができる。そのため、湯流れ性を向上させ、鋳造不良を低減することができる。
【0056】
さらに、板状接続部140がスポーク130間に位置していることにより、スポーク130表面に対応する位置にパーティングラインが存在しなくなる。そのため、スポーク130表面にバリが発生しないので、手加工によるバリの除去が不要となる。板状接続部140は、除去される必要があるが、旋盤等を用いた切削加工は、手加工と比較して大幅に生産性が高いので、総工数を減らすことができ、生産性を向上できる。また、手加工によるバリの除去作業を廃止できるので、回転工具や刃物を取り扱う作業を廃止し、且つ、粉塵の発生を伴う作業環境を改善することができる。さらに、手加工によるバリの除去作業を廃止できるので、製品の仕上がりのばらつき要因を減少させることができる。
【0057】
ある実施形態において、前記複数のスポーク130のそれぞれは、リム周方向D1を向く第1側面s1および第2側面s2を有する。前記複数のスポーク130は、前記第1側面s1および前記第2側面s2がリム幅方向D2に対して一側に傾斜した第1スポーク130Aと、前記第1側面s1および前記第2側面s2がリム幅方向D2に対して他側に傾斜した第2スポーク130Bと、を含む。前記第1スポーク130Aと前記第2スポーク130Bとはリム周方向D1において交互に配置されている。
【0058】
スポーク130のリム周方向D1を向く2つの側面(第1側面s1および第2側面s2)がリム幅方向D2に対して同じ側に傾斜していることにより、スポーク130の肉厚をリム幅方向D2において略一定にすることが可能となる。そのため、抜き勾配の付与に伴う駄肉をなくすことができ、いっそうの軽量化を図ることができる。また、一定肉厚のスポーク130を中子型を使用せずに形成することができるので、鋳造工程S1において用いる中子型の小型化および単純化によるコスト削減を図ることができる。スポーク130を一定肉厚とするための中子型を使用する必要がないので、本発明の実施形態による製造方法は、鋳造法として重力鋳造法を用いる場合のみならず、ダイカスト鋳造法を用いる場合にも好適に用いることができる。
【0059】
ある実施形態において、前記複数の板状接続部140は、隣接する2つのスポーク130のリム幅方向D2における一側端同士を接続する第1板状接続部140Aと、隣接する2つのスポーク130のリム幅方向D2における他側端同士を接続する第2板状接続部140Bと、を含み、前記第1板状接続部140Aと前記第2板状接続部140Bとはリム周方向D1において交互に配置されている。
【0060】
隣接する2つのスポーク130のリム幅方向D2における一側端同士を接続する板状接続部(第1板状接続部)140Aと他側端同士を接続する板状接続部(第2板状接続部)140Bとがリム周方向D1において交互に配置されている構造は、可動型10の凸部10aと固定型20の凸部20aとがリム周方向D1に沿って交互に配置されることによって実現され得る。各スポーク130のリム周方向D1を向く2つの側面(第1側面s1および第2側面s2)に対し、可動型10の凸部10aに対する抜き勾配と固定型20の凸部20aに対する抜き勾配とが付与されると、第1側面s1および第2側面s2は、リム幅方向D2に対して同じ側に傾斜することになる。このように、第1板状接続部140Aと第2板状接続部140Bとがリム周方向D1において交互に配置されていることにより、スポーク130のリム周方向D1を向く2つの側面(第1側面s1および第2側面s2)がリム幅方向D2に対して同じ側に傾斜している構成を好適に実現することができる。
【0061】
ある実施形態において、前記複数の板状接続部140のそれぞれは、開口部140aを有する。
【0062】
各板状接続部140が開口部140aを有することにより、切削加工工程S2において除去される部分の体積を小さくすることができる。
【0063】
本発明の実施形態による鞍乗型車両用キャストホイール100は、環状のリム110と、前記リム110の内周側に位置するハブ120と、前記リム110と前記ハブ120とを連結する複数のスポーク130と、を備える。前記複数のスポーク130のそれぞれは、リム周方向D1を向く第1側面s1および第2側面s2を有する。前記複数のスポーク130は、前記第1側面s1および前記第2側面s2がリム幅方向D2に対して一側に傾斜した第1スポーク130Aと、前記第1側面s1および前記第2側面s2がリム幅方向D2に対して他側に傾斜した第2スポーク130Bと、を含む。前記第1スポーク130Aと前記第2スポーク130Bとはリム周方向D1において交互に配置されている。
【0064】
本発明の実施形態による鞍乗型車両用キャストホイール100では、リム周方向D1を向く2つの側面(第1側面s1および第2側面s2)がリム幅方向D2に対して一側に傾斜したスポーク(第1スポーク)130Aと、第1側面s1および第2側面s2がリム幅方向D2に対して他側に傾斜したスポーク(第2スポーク)130Bとがリム周方向D1において交互に配置されている。つまり、各スポーク130において、第1側面s1および第2側面s2がリム幅方向D2に対して同じ側に傾斜している。そのため、スポーク130の肉厚をリム幅方向D2において略一定にすることが可能となり、軽量化を図ることができる。
【0065】
ある実施形態において、前記複数のスポーク130のそれぞれの厚さは、リム幅方向D2において略一定である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の実施形態によると、スポークを備えた鞍乗型車両用キャストホイールにおいて、構造の複雑化を抑制しつつ、軽量化を図ることができる。本発明の実施形態による製造方法は、自動二輪車をはじめとする種々の鞍乗型車両用のキャストホイールの製造に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
10:可動型、20:固定型、30:キャビティ、100:鞍乗型車両用キャストホイール、100’:中間製品(ワークピース)、110:リム、110a:リムの内周面、110b:リムの外周面、120:ハブ、121:車軸挿通孔、130:スポーク、130A:第1スポーク、130B:第2スポーク、140:板状接続部、140A:第1板状接続部、140B:第2板状接続部、140a:板状接続部の開口部、s1:スポークの第1側面、s2:スポークの第2側面、s3:スポークの第3側面、s4:スポークの第4側面、D1:リム周方向、D2:リム幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15