(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133852
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】光硬化型インクジェット印刷用インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20220907BHJP
C09D 11/101 20140101ALI20220907BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220907BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/101
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032773
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 良一
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
(72)【発明者】
【氏名】明瀬 拓哉
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EE18
2C056FB10
2C056FC01
2C056FD20
2C056HA42
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA09
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB34
2H186FB35
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB54
2H186FB57
4J039AD21
4J039BC02
4J039BC19
4J039BC31
4J039BC33
4J039BC50
4J039BC56
4J039BE27
4J039EA36
4J039EA48
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】臭いが少なく、バンディングが生じにくく、基材に印刷された際に得られる印刷物の耐折り曲げ性が優れ、タック性が優れた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を提供する。
【解決手段】2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルを5~50質量%含み、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を5質量%以上含み、多官能性光重合性化合物を1~30質量%含み、含窒素単官能性光重合性化合物を5~35質量%含み、多官能性光重合性化合物は、アミン変性オリゴマーを含む、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルを5~50質量%含み、
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を5質量%以上含み、
多官能性光重合性化合物を1~30質量%含み、
含窒素単官能性光重合性化合物を5~35質量%含み、
前記多官能性光重合性化合物は、アミン変性オリゴマーを含む、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項2】
前記2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルの含有量は、5~35質量%である、請求項1記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項3】
前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、および、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または2記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項4】
前記アミン変性オリゴマーの含有量は、1.5~12質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項5】
前記多官能性光重合性化合物の含有量は、10~30質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項6】
前記含窒素単官能性光重合性化合物は、アクリロイルモルフォリン、ビニルメチルオキサゾリジノン、ビニルカプロラクタム、および、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記含窒素単官能性光重合性化合物の含有量は、10~25質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。より詳細には、本発明は、臭いが少なく、バンディングが生じにくく、基材に印刷された際に得られる印刷物の耐折り曲げ性が優れ、タック性が優れた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低臭気であり、かつ、基材に印刷された際に耐折り曲げ性が優れる活性エネルギー線硬化型インクが開発されている。特許文献1には、光重合開始剤とジアリルフタレート樹脂とを含む活性エネルギー線硬化型インクが開示されている。
【0003】
ところで、2-アリルオキシメチルアクリル酸アルキルを含む活性エネルギー線硬化性インクが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-210975号公報
【特許文献2】特開2019-2009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~2に記載のインク組成物は、いずれも、臭気が充分に改善されておらず、かつ、印刷時にバンディングが生じやすく、基材に印刷された際に得られる印刷物を折り曲げた際にクラックを生じやすく、タック性も不充分であった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、臭いが少なく、バンディングが生じにくく、基材に印刷された際に得られる印刷物の耐折り曲げ性が優れ、タック性が優れた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、所定量の2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシル、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、多官能性光重合性化合物、含窒素単官能性光重合性化合物を含み、多官能性光重合性化合物がアミン変性オリゴマーを含む光硬化型インクジェット印刷用インク組成物が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。上記課題を解決する本発明は、以下の構成を主に備える。
【0008】
(1)2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルを5~50質量%含み、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を5質量%以上含み、多官能性光重合性化合物を1~30質量%含み、含窒素単官能性光重合性化合物を5~35質量%含み、前記多官能性光重合性化合物は、アミン変性オリゴマーを含む、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【0009】
このような構成によれば、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、臭いが少なく、バンディングが生じにくく、硬化性が優れ、基材に印刷された際に得られる印刷物の耐折り曲げ性が優れ、タック性が優れる。
【0010】
(2)前記2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルの含有量は、5~35質量%である、(1)記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【0011】
このような構成によれば、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、より臭いが少なく、よりバンディングが生じにくく、得られる印刷物の耐折り曲げ性およびタック性がより優れる。
【0012】
(3)前記アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、および、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、(1)または(2)記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【0013】
このような構成によれば、光硬化型インクジェット印刷用インクは、低粘度となり、得られる印刷物の耐擦過性がさらに優れる。
【0014】
(4)前記アミン変性オリゴマーの含有量は、1.5~12質量%である、(1)~(3)のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【0015】
このような構成によれば、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、比較的低粘度であり、かつ、硬化性が優れる。
【0016】
(5)前記多官能性光重合性化合物の含有量は、10~30質量%である、(1)~(4)のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【0017】
このような構成によれば、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、耐擦過性およびタック性がさらに優れる。
【0018】
(6)前記含窒素単官能性光重合性化合物は、アクリロイルモルフォリン、ビニルメチルオキサゾリジノン、ビニルカプロラクタム、および、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、前記含窒素単官能性光重合性化合物の含有量は、10~25質量%である、(1)~(5)のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【0019】
このような構成によれば、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、タック性がさらに優れ、かつインク粘度を低くすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、臭いが少なく、バンディングが生じにくく、基材に印刷された際に得られる印刷物の耐折り曲げ性が優れ、タック性が優れた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<光硬化型インクジェット印刷用インク組成物>
本発明の一実施形態の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物(以下、インク組成物ともいう)は、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルを5~50質量%含み、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を5質量%以上含み、多官能性光重合性化合物を1~30質量%含み、含窒素単官能性光重合性化合物を5~35質量%含む。多官能性光重合性化合物は、アミン変性オリゴマーを含む。
【0022】
(2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシル)
2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルの含有量は、インク組成物中、5質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましい。また、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルの含有量は、インク組成物中、50質量%以下であればよく、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましい。2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルの含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、臭いが少なく、バンディングが生じにくく、得られる印刷物の耐折り曲げ性およびタック性が優れる。特に、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルの含有量は、5~35質量%であることにより、インク組成物は、より臭いが少なく、よりバンディングが生じにくく、得られる印刷物の耐折り曲げ性およびタック性がより優れる。
【0023】
(アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤)
本実施形態のインク組成物は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を5質量%以上含む。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は特に限定されない。一例を挙げると、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤は、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジメチルベンゾイルジメチルフォスフィンオキサイド、4-メチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4-エチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、4-イソプロピルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1-メチルシクロヘキサノイルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,3,3-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド等であり、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、および、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、および、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドからなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれることにより、インク組成物は、良好な硬化性が得られる。
【0024】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量は、インク組成物中、5質量%以上であればよく、6質量%以上であることが好ましい。また、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量は、インク組成物中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、低粘度となり、得られる印刷物の耐擦過性がさらに優れる。
【0025】
(多官能光重合性化合物)
本実施形態のインク組成物は、多官能光重合性化合物を1~30質量%含む。多官能光重合性化合物は、アミン変性オリゴマーを含んでいればよい。アミン変性オリゴマーが含まれることにより、インク組成物は、硬化性が優れ、バンディングがより生じにくく、タック性がより優れ、得られる印刷物の耐折り曲げ性がさらに優れる。
【0026】
アミン変性オリゴマーは特に限定されない。一例を挙げると、アミン変性オリゴマーは、アミノ基および活性光線照射により架橋または重合する官能基を分子内に有する反応性オリゴマーであり、反応性アミン共開始剤、反応性アミンシナジスト、アクリレート変性アミンシナジスト、アミンアクリレート等とも呼ばれる。
【0027】
アミン変性オリゴマーには多数の市販品が存在する。一例を挙げると、アミン変性オリゴマーの市販品は、Sartomer社製のCN371、CN373、CN383、CN386、CN501、CN550、およびCN551;ダイセル・オルネクス社製のEBECRYL80、およびEBECRYL7100;RAHN社製のGENOMER 5142、GENOMER 5161、およびGENOMER 5275;Miwon社製のMiramer AS2010、およびMiramer AS5142;並びに長興化学社製のEtercure 641、Etercure 6410、Etercure 6411、Etercure 6412、Etercure 6413、Etercure 6417、Etercure 6420、Etercure 6422、Etercure 6423、Etercure 6425、Etercure 6430、Etercure 645、およびEtercure 647等である。
【0028】
本実施形態のアミン変性オリゴマーは、CN371、CN373、CN383、CN386(Sartomer社製)等のアクリル化アミン化合物であることが好ましく、分子内に2個以上の光重合性官能基を有するCN371、CN386(Sartomer社製)、EBECRYL80(ダイセル・オルネクス社製)等がさらに好ましい。アミン変性オリゴマーが含まれる場合において、アミン変性オリゴマーの含有量は、インク組成物中、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、アミン変性オリゴマーの含有量は、インク組成物中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
アミン変性オリゴマー以外の多官能光重合性化合物は特に限定されない。一例を挙げると、アミン変性オリゴマー以外の多官能光重合性化合物は、ヘキサンジオールジアクリレート等の2官能モノマー、アルコキシ変性トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能モノマーであることが好ましい。
【0030】
多官能光重合性化合物の含有量は、インク組成物中、1質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、多官能光重合性化合物の含有量は、インク組成物中、30質量%以下であればよく、25質量%以下であることがより好ましい。多官能光重合性化合物の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、タック性および耐擦過性が優れる。特に、多官能光重合性化合物の含有量が10~30質量%である場合、インク組成物は、耐擦過性およびタック性がさらに優れる。
【0031】
アミン変性オリゴマーの含有量は、インク組成物中、1.5質量%以上であることが好ましく、3.0質量%以上であることがより好ましい。また、アミン変性オリゴマーの含有量は、インク組成物中、12質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。アミン変性オリゴマーの含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、比較的低粘度であり、かつ、硬化性が優れる。
【0032】
(含窒素単官能光重合性化合物)
本実施形態のインク組成物は、含窒素単官能光重合性化合物を5~35質量%含む。含窒素単官能光重合性化合物は特に限定されない。一例を挙げると、含窒素単官能光重合性化合物は、アクリロイルモルフォリン、ビニルメチルオキサゾリジノン、ビニルカプロラクタム、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミドであることが好ましく、アクリロイルモルフォリン、ビニルメチルオキサゾリジノン、ビニルカプロラクタム、および、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。アクリロイルモルフォリン、ビニルメチルオキサゾリジノン、ビニルカプロラクタム、および、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種が含まれることにより、インク組成物は、タック性に優れ、比較的低粘度である。
【0033】
含窒素単官能光重合性化合物の含有量は、インク組成物中、5質量%以上であればよく、10質量%以上であることが好ましい。また、含窒素単官能光重合性化合物の含有量は、インク組成物中、35質量%以下であればよく、25質量%以下であることが好ましい。含窒素単官能光重合性化合物の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、タック性がさらに優れる。
【0034】
(任意成分)
本実施形態のインク組成物は、所定量の2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシル、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、多官能性光重合性化合物、含窒素単官能性光重合性化合物のほか、さらに任意成分を含んでもよい。任意成分は特に限定されない。一例を挙げると、任意成分は、上記以外の光重合性化合物、上記以外の光重合開始剤、増感剤、添加剤、顔料、分散剤等である。
【0035】
・上記以外の光重合性化合物
本実施形態のインク組成物に配合され得る上記以外の光重合性化合物は、特に限定されない。一例を挙げると、上記以外の光重合性化合物は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等の単官能アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、1H-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、2,6-ジブロモ-4-ブチルフェニルアクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチルアクリレート、2,4,6-トリブロモフェノール3EO付加アクリレート等の単官能含ハロゲンアクリレート類、2-メトキシエチルアクリレート、1,3-ブチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、メトキシポリプロピレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、クレジルポリエチレングリコールアクリレート、アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)エチル、p-ノニルフェノキシエチルアクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、グリシジルアクリレート等の単官能含エーテル基アクリレート類、β-カルボキシエチルアクリレート、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート等の単官能含カルボキシルアクリレート類等である。
【0036】
これら光重合性化合物が含まれる場合において、光重合性化合物の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、光重合性化合物の含有量は、インク組成物中、5質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、光重合性化合物の含有量は、インク組成物中、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
・上記以外の光重合開始剤
本実施形態のインク組成物に配合され得る上記以外の光重合開始剤は、特に限定されない。一例を挙げると、上記以外の光重合開始剤は、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンおよび2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン等である。
【0038】
これら光重合開始剤が含まれる場合において、光重合開始剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、光重合開始剤の含有量は、インク組成物中0.5質量%以上であることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、インク組成物中、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましい。
【0039】
・増感剤
増感剤は特に限定されない。一例を挙げると、増感剤は、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等であることが好ましは、チオキサントン系増感剤であることがより好ましい。具体的には、増感剤は、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤等である。市販品の代表例は、アントラセン系増感剤としては、DBA、DEA(川崎化成工業(株)製)、チオキサントン系増感剤としては、DETX、ITX(Lambson社製)等である。
【0040】
増感剤が含まれる場合において、増感剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、増感剤の含有量は、インク組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましい。また、増感剤の含有量は、インク組成物中、2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。増感剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、硬化性が優れ、塗膜の黄変を抑制できる。
【0041】
なお、増感剤として、チオキサントン系増感剤を含む場合、インク組成物は、黄色に変色しやすい。そのため、インク組成物は、顔料に基づく色(本来の色相)より黄味がかった色相になるため、色毎にチオキサントン系増感剤の含有量を適宜決めることが好ましい。具体的には、色味の変化の影響を受けやすいホワイトインク組成物およびクリアーインク組成物では、インク組成物は、増感剤として、チオキサントン系増感剤を含まないことが好ましい。また、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物では色相の変化が問題となりやすいため、光増感剤は、色相に問題が生じない範囲で使用することが好ましい。また、ブラックインク組成物、およびイエローインク組成物は、変色があっても色相に影響しにくく、かつ、光重合性が他の色相より乏しいことから、光重合開始剤として、チオキサントン系増感剤を併用使用することが好ましい。
【0042】
・添加剤
本実施形態にインク組成物は、添加剤が含まれてもよい。添加剤は特に限定されない。一例を挙げると、添加剤は、表面調整剤、界面活性剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤等である。
【0043】
表面調整剤は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤は、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤、ビニル系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレングリコール系表面調整剤等である。
【0044】
表面調整剤が含まれる場合において、表面調整剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤の含有量は、インク組成物中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、表面調整剤の含有量は、インク組成物中、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。表面調整剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、基材への濡れ性に優れ、耐擦過性が向上する。
【0045】
・顔料
本実施形態のインク組成物は、顔料が含まれてもよい。顔料は特に限定されない。一例を挙げると、顔料は、各種有機顔料、無機顔料である。
【0046】
有機顔料は、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等である。
【0047】
無機顔料は、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、群青、紺青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料等である。
【0048】
本実施形態のインク組成物の代表的な色相ごとの顔料の具体例は、以下のとおりである。イエロー顔料は、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等であり、C.I.Pigment Yellow 150、155、180、213等であることが好ましい。
【0049】
マゼンタ顔料は、C.I.Pigment Red 5、7、12、19、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等であり、C.I.Pigment Red 122、202、Pigment Violet 19等であることが好ましい。
【0050】
シアン顔料は、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等であり、C.I.Pigment Blue 15:4等であることが好ましい。
【0051】
ブラック顔料は、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等である。
【0052】
ホワイト顔料は、酸化チタン、酸化アルミニウム等であり、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理された酸化チタン等であることが好ましい。
【0053】
顔料が含まれる場合において、顔料の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ホワイト以外の顔料の含有量は、インク組成物中、0.5質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましい。また、ホワイト以外の顔料の含有量は、インク組成物中、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。一方、ホワイト顔料の含有量は、インク組成物中、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、ホワイト顔料の含有量は、インク組成物中、18質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。顔料の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、色再現性が優れる。
【0054】
・分散剤
本実施形態のインク組成物は、分散剤が含まれてもよい。分散剤は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤は、ポリビニルアルコール、アクリル酸系樹脂、スチレン-アクリル酸系樹脂、および酢酸ビニル系樹脂が挙げられる。アクリル酸系樹脂としては、たとえば、ポリアクリル酸、アクリル酸-アクリロニトリル共重合体、およびアクリル酸-アクリル酸アルキルエステル共重合体等である。
【0055】
分散剤が含まれる場合において、分散剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、分散剤の含有量は、顔料100質量%に対し、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、分散剤の含有量は、顔料100質量%に対し、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。分散剤の含有量が上記範囲内であることにより、インク組成物は、分散安定性が優れる。
【0056】
インク組成物全体の説明に戻り、本実施形態のインク組成物は、25℃における粘度が、20.0mPa・s以下であることが好ましく、15.0mPa・s以下であることがより好ましい。インク組成物は、必要に応じて粘度調整剤等が配合される。なお、本実施形態において、粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を用いて、25℃で測定することができる。
【0057】
<インク組成物の調製方法>
本実施形態のインク組成物を調製する方法は特に限定されない。一例を挙げると、インク組成物は、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して分散混合して調製し得る。
【0058】
<印刷物の製造方法>
次に、本実施形態のインク組成物を用いて印刷物を製造する方法について説明する。
【0059】
本実施形態の印刷物の製造方法は、上記したインク組成物を、インクジェット方式にて基材に印刷する工程を含む。
【0060】
基材は特に限定されない。一例を挙げると、基材は、各樹樹脂基材、紙、カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、木材、布等である。本実施形態のインク組成物は、基材に印刷された後に、基材が折り曲げられる場合であっても、優れた折り曲げ耐性を示す。そのため、インク組成物は、基材が段ボールシート等の折り曲げられる用途に使用される基材である場合に、特に好適に使用される。
【0061】
基材がCライナー、Kライナー等の段ボールシートである場合、インク組成物は、段バールシートに対して直接付与されてもよく、段ボールシートにプライマー層を設けたり、コロナ放電処理等を施した後に、付与されてもよい。すなわち、近年、環境に配慮するために、段ボールシートは、古紙や再生紙等が利用される場合がある。段ボールシートとしてKライナーを使用する場合は、表面の凹凸が粗く、色合いが不鮮明であり、印字した際にインクの浸透性が高い。そのため、段ボールシートにインク組成物が印字されると、下地であるライナー原紙の茶色が印刷品質の低下の原因となりやすい。特に、印刷部分に下地の色が発現すると、インクジェット画像がくすんで見え、印刷物の見栄えが損なわれ得る。このような段ボールシートに対し、上記凹凸等を解消するために、プライマー層が適宜設けられる。
【0062】
プライマー層は、段ボールシートを構成するライナー原紙の白色度や色味等を調整し、下地の白色度を高めること等を目的として設けられる。プライマー層は、顔料および接着剤を含むプレコート剤を塗布することにより形成され得る。
【0063】
顔料は特に限定されない。一例を挙げると、顔料は、二酸化チタン(アナターゼ、ルチル)のほか、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、無定形シリカ、クレー等の体質顔料が挙げられる。また、白色顔料の含有量はプレコート剤100質量部中20~85質量部が好ましく、より好ましくは20~80質量部である。
【0064】
本実施形態において、段ボールのプレコート剤に使用されるバインダー樹脂は、水性樹脂であることが好ましい。水性樹脂は、天然樹脂、合成樹脂等であることが好ましく、澱粉誘導体、カゼイン、シェラック、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系およびマレイン酸系樹脂等がより好ましい。より具体的には、水性樹脂は、アクリル酸あるいはメタクリル酸とそのアルキルエステル、あるいはスチレン等を主なモノマー成分として共重合した水性アクリル系樹脂、水性スチレン-アクリル樹脂、水性スチレン-マレイン酸樹脂、水性スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等が好適に用いられる。バインダー樹脂の含有量は、プレコート剤100質量部中1~25質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。
【0065】
本実施形態のプレコート剤で使用できる水性媒体は、水または水と水混和性溶剤との混合物が挙げられる。水混和性溶剤は、低級アルコール類、多価アルコール類、およびそれらのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類等である。具体的には、水混和性溶剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プルピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等である。
【0066】
本実施形態で使用されるプレコートには、上記に示した成分以外に、必要に応じて造膜剤、顔料分散剤または顔料分散樹脂、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、一般の界面活性剤等の種々の添加剤を適宜選択して使用することができる。
【0067】
これら各種材料を使用してプレコート剤を製造する方法は特に限定されない。一例を挙げると、プレコート剤を製造する方法は、白色顔料、水性バインダー樹脂、水、必要に応じて水混和性溶剤、および顔料分散剤または顔料分散樹脂を混合して混練し、さらに、添加剤、水、必要に応じて水混和性溶剤、および所定の材料の残りを添加、混合する方法が一般的である。
【0068】
なお、本実施形態のプレコート剤は、上記の各成分を必要量混合し、ホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機や、3本ロールミルやビーズミル等の分散機にて混合、分散することにより容易に得ることが出来る。
【0069】
プライマー層が設けられる場合、プライマー層の厚み(プレコート剤の塗布量)は特に限定されない。プライマー層は、固形分塗布量が0.1~5g/m2の範囲あることが好ましい。プライマー層の厚み(プレコート剤の塗布量)が上記範囲内であることにより、段ボールシートは、白色度や色味が適切に調整されやすい。
【0070】
インク組成物の説明に戻り、インク組成物を硬化する方法は特に限定されない。一例を挙げると、インク組成物は、基材に吐出された後、光を照射することにより硬化することができる。光を照射する光源は特に限定されない。一例を挙げると、光源は、紫外線、電子線、可視光線、発光ダイオード(LED)等である。
【0071】
具体的には、基材への吐出は、上記インク組成物をインクジェット方式用のプリンター装置のプリンターヘッドに供給し、このプリンターヘッドから基材に塗膜の膜厚が1~20μmとなるように吐出することにより行うことができる。光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗工されたインク組成物に光を照射することにより行うことができる。
【0072】
以上、本実施形態のインク組成物は、臭いが少なく、バンディングが生じにくく、基材に印刷された際に得られる印刷物の耐折り曲げ性が優れ、タック性が優れる。
【実施例0073】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0074】
使用した原料および調製方法を以下に示す。
2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシル:AOMA-CH、(株)日本触媒製
2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチル:AOMA、(株)日本触媒製
(多官能光重合性化合物)
CN371:Sartomer社製、アミン変性オリゴマー
EO(3)変性トリメチロールプロパントリアクリレート
PO(3)変性トリメチロールプロパントリアクリレート
ヘキサンジオールジアクリレート
(含窒素単官能光重合性化合物)
アクリロイルモルフォリン
ビニルメチルオキサゾリジノン
ビニルカプロラクタム
(その他の光重合性化合物)
イソボルニルアクリレート
ベンジルアクリレート
ラウリルアクリレート
エチルカルビトールアクリレート
(アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤)
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(Lambson社製)
TPOL:エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド
Omnirad 819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製)
(その他の光重合開始剤)
Omnirad 184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resins B.V.社製)
(増感剤)
DETX:2,4-ジエチルチオキサントン(Lambson社製)
(添加剤)
BYK-315N:ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン、固形分25質量%、溶剤成分:メトキシプロピルアセテートとフェノキシエタノールの質量比1/1の混合物(ビックケミー社製)
(顔料)
PB15:4:ピグメントブルー15:4
PR122:ピグメントレッド122
PY155:ピグメントイエロー155
PBk7:ピグメントブラック7
(分散剤)
SS32000:Solsperse32000(ルーブリゾール社製)
【0075】
(光硬化型インクジェット印刷用インク組成物)
表1の配合組成(質量%)となるように各材料を攪拌混合し、実施例1~11および比較例1~6の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得た。
【0076】
(基材)
PETフィルム:E5100、東洋紡(株)製
PVC板:T938、タキロンシーアイ(株)製
【0077】
<光硬化型インクジェット印刷用インク組成物および印刷物の評価>
実施例1~11および比較例1~6の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を用いて、以下の評価方法および評価基準にしたがって、インク組成物の粘度、塗膜臭気、硬化性、耐折り曲げ性、バンディング、タック性、耐擦過性を評価した。結果を表1に示す。
【0078】
【0079】
(光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の粘度の測定)
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を使用して、温度25℃、ローター回転速度20rpmの条件で測定した。
【0080】
(塗膜臭気)
PETフィルムの表面に実施例および比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.6を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた硬化塗膜を8cm×12cmに切断し、24cm×34cmのチャック袋に入れ、25℃で1時間放置したのち開口して、開口部での臭気を以下の5段階で評価した。
5:臭気を感じなかった。
4:わずかに臭気を感じた。
3:中程度の臭気を感じた。
2:強い臭気を感じた。
1:非常に強い臭気を感じた。
同様の評価を10人が行い、評価結果の算術平均値を得た。
【0081】
(硬化性)
PETフィルムの表面に実施例および比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を市販のインクジェットプリンターを用いて印刷し、1500mJ/cm2の紫外線を照射して硬化塗膜を得た。得られた塗膜を綿棒で擦り、跡残りと指触により、硬化性を下記評価基準に従って評価した。
○:跡残りもべたつきもなかった。
△:跡残りはなかったが、少しべたつきがあった。
×:跡残りがあり、べたつきが大きかった。
【0082】
(耐折り曲げ性)
PETフィルムの表面に実施例および比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.12を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた塗膜を180度折り曲げた時の塗膜状態を目視により下記評価基準に従って評価した。
○:塗膜の割れがなかった。
△:わずかな塗膜の割れがあった。
×:塗膜の割れがあった。
【0083】
(バンディング)
市販のインクジェットプリンターで、PVCフィルムの表面に実施例および比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を印刷し、紫外線を照射して硬化した塗膜を変角光沢計(商品名:GlossMeter VG7000、日本電色工業(株)製)を用いて測定角度60°のときの光沢度を測定し、下記評価基準に従って評価した。
○:測定値が15.0以上であった。
△:測定値が10.0以上15.0未満であった。
×:測定値が10.0未満であった。
【0084】
(タック性)
2枚のPETフィルムの各表面に、実施例および比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.4を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた2枚のPETフィルム表面の硬化塗膜同士を一旦重ね合わせ、30秒後に手で剥がしたときの貼り付きの程度を下記評価基準に従って評価した。
○:タックが認められなかった。
△:わずかにタックが認められた。
×:タックが認められた。
【0085】
(耐擦過性)
PVC板(T938、タキロンシーアイ(株)製)の表面に実施例および比較例で得られた光硬化型インクジェット印刷用インク組成物をバーコーターNo.6を用いて塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。
得られた塗膜に対し、学振堅牢度試験機にて荷重500g、速度60rpmにて展色塗膜と白さらし布を100回擦った際の、塗膜の剥がれ具合および白さらし布への色移り具合を下記評価基準に従って評価した。
○:色移りが発生しなかったか、または布面積の5%未満の色移りが発生した。
△:布面積の5%以上70%未満の色移りが発生した。
×:布面積の70%以上の色移りが発生した。
【0086】
表1に示されるように、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、臭いが少なく、硬化性が優れ、バンディングが生じにくく、基材に印刷された際に得られる印刷物の耐折り曲げ性が優れ、タック性が優れた。一方、2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルを含まない比較例1の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、臭気が強く、耐折り曲げ性、タック性の結果が劣った。2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルを過剰に含む比較例2の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、タック性の結果が劣った。2-(アリルオキシメチル)アクリル酸シクロヘキシルの代わりに2-(アリルオキシメチル)アクリル酸メチルを含む比較例3の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、臭気が強かった。アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量が少ない比較例4の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、硬化性の結果が劣った。アミン変性オリゴマーを含まない比較例5の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、硬化性およびタック性の結果が劣った。含窒素単官能性光重合性化合物を含まない比較例6の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、硬化性の結果が劣った。