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特開2022-133853型およびそれを用いた成形体の製造方法
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  • 特開-型およびそれを用いた成形体の製造方法 図1
  • 特開-型およびそれを用いた成形体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133853
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】型およびそれを用いた成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/38 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
B29C33/38
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032774
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】安藤 大悟
(72)【発明者】
【氏名】土田 実
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ09
4F202AJ10
4F202AJ12
4F202CA30
4F202CB01
4F202CM27
4F202CN01
4F202CN05
4F202CN11
4F202CN22
4F202CN24
(57)【要約】
【課題】脆い部分が生じ難く、全体の強度が均一な成形体が得られる型の提供。
【解決手段】成形体を得るための型であって、水または水溶液によって少なくとも一部が溶解可能な可溶性材料からなり、樹脂材料を装入する内部空間を備える本体部と、前記本体部の外側に配置された加熱手段と、前記加熱手段の外側に配置された送風手段と、を有し、前記本体部の少なくとも一部は通気性を有し、前記送風手段を駆動すると外気が前記本体部の内部へ入り込む、型。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体を得るための型であって、
水または水溶液によって少なくとも一部が溶解可能な可溶性材料からなり、樹脂材料を装入する内部空間を備える本体部と、
前記本体部の外側に配置された加熱手段と、
前記加熱手段の外側に配置された送風手段と、
を有し、
前記本体部の少なくとも一部は通気性を有し、前記送風手段を駆動すると外気が前記本体部の内部へ入り込む、型。
【請求項2】
前記可溶性材料が、平均粒子径(D50)が1~500μmである、金属酸化物、金属塩化物および糖類からなる群から選ばれる少なくとも1つから主としてなる、請求項1に記載の型。
【請求項3】
前記本体部が、
連通していない空孔と前記可溶性材料とから構成され、その内部に前記樹脂材料が装入される前記内部空間を含むA部と、
前記A部の外側に存在し、連通している空孔と前記可溶性材料とから構成されるB部と、
を有する、請求項1または2に記載の型。
【請求項4】
前記A部の空隙率が10~30%であり、前記B部の空隙率が25~75%である、請求項3に記載の型。
【請求項5】
前記A部の厚さが10~1000μmである、請求項3または4に記載の型。
【請求項6】
前記内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる前記内部空間を構成する前記本体部の少なくとも1つの箇所を加熱可能な位置に前記加熱手段が配置された、請求項1~5のいずれかに記載の型。
【請求項7】
前記内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる前記内部空間を構成する前記本体部の少なくとも1つの箇所に送風可能な位置に前記送風手段が配置された、請求項1~6のいずれかに記載の型。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の型の前記本体部における前記内部空間へ前記樹脂材料を装入する準備工程と、
前記加熱手段を駆動し、前記内部空間へ装入された、または装入しながら前記樹脂材料を加熱する加熱工程と、
前記加熱手段を駆動せずに前記送風手段を駆動することで、外気によって前記本体部における前記内部空間を冷却する冷却工程と、
を備える成形体の製造方法。
【請求項9】
前記加熱工程において、前記加熱手段と共に前記送風手段も駆動する、請求項8に記載の成形体の製造方法。
【請求項10】
前記冷却工程に供した後の前記型における前記本体部の少なくとも一部を水または前記水溶液を用いて溶解し、内部の成形体を取り出す溶解工程をさらに備える、請求項8または9に記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂材料が、湿気硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化型樹脂である、請求項8~10のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型およびそれを用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、型を用いて成形体を製造する方法が提案されている。
例えば特許文献1には、平均空孔径20μm以下、空孔率15~30%を有する多孔質金属型材の背面に通常鋼材をろう接すると共に該通常鋼材に温調用配管加工を施したことを特徴とする通気性金型が記載されている。そして、多孔質金属型材の背面に通常鋼材をろう接すると共に該通常鋼材に温調用配管加工を施したものであるため多孔質金属型材の通気性を損なうことなく型材としての強さ及び剛性を向上させることができると共に密着した状態での接合であるため温調用流体による熱伝達を効率よく行なうことができ、金型の温調を従来の鋼材金型と同様に実施できる等種々の効果があり利とするところは著大であると記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、通気性を有する金型であって、該金型の内部に冷却水流通路用の通孔が形成されていると共に、該通孔の内面にメッキ処理が施されていることを特徴とする通気性金型が記載されている。そして、このような通気性金型にあっては、金型内部に直接に穿設した通孔によって冷却水流通路が形成されることから、簡単な構造をもって通気性金型の水冷化が可能であると共に、冷却水と金型との間の熱伝導性が有利に且つ安定して得られることから、優れた冷却効率が発揮され得ると記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、成形組成物を射出成形型内に射出し、前記組成物を冷却して成形品を得、さらに前記成形品の被覆対象表面と前記射出成形型の内部表面との間に中間空隙部が生じるように前記射出成形型を調整し、さらに前記得られた中間空隙部内に反応性混合物を射出成形で充填することによって、被覆成形品を製造するための方法であって、前記反応性混合物を硬化させるために、前記射出成形型の少なくとも一部分の温度を少なくとも5℃上昇させることを1分以内に行うこと、前記反応性混合物が、熱開始剤を前記反応性混合物の質量に対して0.03質量%~5質量%含むこと、並びに、前記反応性混合物が、光開始剤を前記反応性混合物の質量に対して0.01質量%~3質量%含むことを特徴とする、被覆成形品を製造するための方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2858712号公報
【特許文献2】特開平5-42543号公報
【特許文献3】特許第5579069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1~3に記載のような従来の型または成形体の製造方法では、成形体の少なくとも一部において硬化が不十分になり、脆くなる場合があった。
【0007】
本発明は上記のような課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、脆い部分が生じ難く、全体の強度が均一な成形体が得られる型およびその型を用いた成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)~(11)である。
(1)成形体を得るための型であって、
水または水溶液によって少なくとも一部が溶解可能な可溶性材料からなり、樹脂材料を装入する内部空間を備える本体部と、
前記本体部の外側に配置された加熱手段と、
前記加熱手段の外側に配置された送風手段と、
を有し、
前記本体部の少なくとも一部は通気性を有し、前記送風手段を駆動すると外気が前記本体部の内部へ入り込む、型。
(2)前記可溶性材料が、平均粒子径(D50)が1~500μmである、金属酸化物、金属塩化物および糖類からなる群から選ばれる少なくとも1つから主としてなる、上記(1)に記載の型。
(3)前記本体部が、
連通していない空孔と前記可溶性材料とから構成され、その内部に前記樹脂材料が装入される前記内部空間を含むA部と、
前記A部の外側に存在し、連通している空孔と前記可溶性材料とから構成されるB部と、
を有する、上記(1)または(2)に記載の型。
(4)前記A部の空隙率が10~30%であり、前記B部の空隙率が25~75%である、上記(3)に記載の型。
(5)前記A部の厚さが10~1000μmである、上記(3)または(4)に記載の型。
(6)前記内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる前記内部空間を構成する前記本体部の少なくとも1つの箇所を加熱可能な位置に前記加熱手段が配置された、上記(1)~(5)のいずれかに記載の型。
(7)前記内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる前記内部空間を構成する前記本体部の少なくとも1つの箇所に送風可能な位置に前記送風手段が配置された、上記(1)~(6)のいずれかに記載の型。
(8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の型の前記本体部における前記内部空間へ前記樹脂材料を装入する準備工程と、
前記加熱手段を駆動し、前記内部空間へ装入された、または装入しながら前記樹脂材料を加熱する加熱工程と、
前記加熱手段を駆動せずに前記送風手段を駆動することで、外気によって前記本体部における前記内部空間を冷却する冷却工程と、
を備える成形体の製造方法。
(9)前記加熱工程において、前記加熱手段と共に前記送風手段も駆動する、上記(8)に記載の成形体の製造方法。
(10)前記冷却工程に供した後の前記型における前記本体部の少なくとも一部を水または前記水溶液を用いて溶解し、内部の成形体を取り出す溶解工程をさらに備える、上記(8)または(9)に記載の成形体の製造方法。
(11)前記樹脂材料が、湿気硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、または熱硬化型樹脂である、上記(8)~(10)のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脆い部分が生じ難く、全体の強度が均一な成形体が得られる型およびその型を用いた成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の型における本体部の好適態様を示す概略断面図である。
図2】本発明の型の好適態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、成形体を得るための型であって、水または水溶液によって少なくとも一部が溶解可能な可溶性材料からなり、樹脂材料を装入する内部空間を備える本体部と、前記本体部の外側に配置された加熱手段と、前記加熱手段の外側に配置された送風手段と、を有し、前記本体部の少なくとも一部は通気性を有し、前記送風手段を駆動すると外気が前記本体部の内部へ入り込む、型である。
このような型を、以下では「本発明の型」ともいう。
【0012】
また、本発明は、本発明の型の前記本体部における前記内部空間へ前記樹脂材料を装入する準備工程と、前記加熱手段を駆動し、前記内部空間へ装入された、または装入しながら前記樹脂材料を加熱する加熱工程と、前記加熱手段を駆動せずに前記送風手段を駆動することで、外気によって前記本体部における前記内部空間を冷却する冷却工程と、を備える成形体の製造方法である。
このような製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
【0013】
本発明の型について説明する。
本発明の型は、本体部と、加熱手段と、送風手段とを有する。
【0014】
本体部について説明する。
本体部は、水または水溶液によって少なくとも一部が溶解可能な可溶性材料からなる。
【0015】
ここで可溶性材料の少なくとも一部を溶解する水溶液として、従来公知の酸性またはアルカリ性の水溶液が挙げられる。
酸性の水溶液としては塩酸、硝酸、硫酸、酢酸などが挙げられる。
アルカリ性の水溶液としては水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などが挙げられる。
【0016】
可溶性材料は水または上記のような水溶液と接することで、その少なくとも一部が溶解するものであり、例えば可溶性材料を水または上記のような水溶液に浸漬することで、その少なくとも一部が溶解する。
【0017】
可溶性材料は水または上記のような水溶液と接することで、その少なくとも一部が溶解するものであり、例えば金属酸化物、金属塩化物および糖類からなる群から選ばれる少なくとも1つから主としてなるものであることが好ましい。
ここで「主としてなる」とは、含有率が概ね50質量%以上(好ましくは65質量%以上、より好ましくは80質量%以上、より好ましくは95質量%以上)であることを意味するものとする。また、可溶性材料は不可避的不純物を除き、実質的に、金属酸化物、金属塩化物および糖類からなる群から選ばれる少なくとも1つからなることが好ましい。
【0018】
また、可溶性材料は平均粒子径(D50)が1~500μmの粒であることが好ましく、平均粒子径(D50)が1~500μmの粒である、金属酸化物、金属塩化物および糖類からなる群から選ばれる少なくとも1つから主としてなることが好ましい。
ここで平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0019】
ここで金属酸化物として、例えば、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅等が挙げられる。可溶性材料として、金属酸化物の中でも酸化マグネシウムが好ましい。酸化マグネシウムはpH5~6の酸性水溶液で除去できることから、成形体の品質を保ちつつ、良質な成形体を得ることができる。
また、金属塩化物として、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等が挙げられる。可溶性材料として、金属塩化物の中でも塩化ナトリウムが好ましい。塩化ナトリウムは水で除去できることから、成形体を変質させることなく、成形体を得ることができる。
また、糖類として、例えば、ペンタエリトリトール、フルクトース、ガラクトース、マンノース等が挙げられる。可溶性材料として、糖類の中でもペンタエリトリトールが好ましい。ペンタエリトリトールは水で除去できることから、成形体を変質させることなく、成形体を得ることができる。また、ペンタエリトリトールは糖類の中では高融点(260度)である為、成形体の製造時に高温加熱が必要な成形体にも使用することが可能である。
【0020】
本体部は上記のような可溶性材料からなるので、内部空間にて成形された成形体を取り出す際に、本体部を水または水溶液によって容易に分解することができ、その結果、複雑な形状の成形体であっても壊すことなく、キズ等が少ない成形体を得ることができる。
【0021】
本体部は、上記のような可溶性材料からなり、樹脂材料を装入する内部空間を備える。
このような本体部について図を用いて説明する。
図1は本体部の好適例を示す概略断面図である。
【0022】
図1に示す本体部1はA部3とB部5とからなり、樹脂材料が装入される内部空間2を備える。
ここでA部は、連通していない空孔と可溶性材料とから構成されている。A部が含む空孔は連通していないため、A部の外の気体はA部内を通過することができない。
また、B部は連通している空孔と可溶性材料とから構成されている。B部が含む空孔は連通しているため、B部の外の気体はB部内を通過することができる。
したがって、例えば図1に示した本体部1の場合、B部の外の気体はB部内を通過してA部の外面にまでは到達するが、A部は通過できない(A部の外面付近の空孔内にまでしか到達しない)ため、内部空間2までは到達しない。
【0023】
ここで本体部をエポキシに浸漬させた場合に、エポキシが含浸する部分がB部、エポキシ含浸しない部分をA部とする。具体的には次のように本体部にエポキシを含浸させてA部とB部とを判別する。
初めに、主剤(例えばサンユレック社製SR-10)と硬化剤(例えばサンユレック社製H-230)を10:3で配合し、十分量用意して容器に入れる。
次に、本体部をこのエポキシに完全に浸漬し、減圧下(0.02MPa)で30分放置する。エポキシの温度は25℃前後に保つ。
次に、エポキシの温度を60℃に調整し、16時間かけてエポキシを硬化させる。
次に、カッターなどで本体部を分割し、断面においてエポキシが浸透している部分をB部、浸透していない部分をA部と判断する。B部は三次元に連通した空孔を有するためエポキシが浸透する。一方、Aは空孔を含むものの連通していないため、エポキシは浸透しない。
【0024】
内部空間2の形状、大きさ等は特に限定されない。図1に示す好適態様において、内部空間2はA部3の内面によって囲まれた空間である。
B部5はA部3の外側に配置され、図1に示す好適態様においてはA部3の外面を覆っている。
【0025】
本体部が図1に示すようなA部3とB部5とを含む場合、A部とB部とは同材料であっても、異材料であってもよい。
【0026】
本発明において本体部は、その少なくとも一部が通気性を有する。したがって、本体部は、その少なくとも一部が空隙を備える。
本体部は空隙率が0超、75%以下の部分を有することが好ましい。
【0027】
図1におけるA部3の空隙率は10~30%であることが好ましく、10~20%であることがより好ましい。
このような空隙率であると、空隙による断熱効果が発生し難く、熱伝導率が良くなるため、内部空間5に装入された樹脂材料の加熱または冷却を短時間に行うことができるからである。
【0028】
図1におけるB部5の空隙率は25~75%であることが好ましく、40~75%であることがより好ましい。
このような空隙率であると、内部空間5に装入された樹脂材料の加熱または冷却を短時間に行うことができるからである。
【0029】
ここで本体部における空隙率は、次のように測定するものとする。
初めに、本体部における複数個所(好ましくは10カ所以上)において、正方形等の任意の形状で試験片切り抜く。
次に、試験片の各辺を定規等で測定し、体積を算出する。
次に、試験片の重量を測定する。
次に、体積、重量、可溶性材料の真比重の値を用いて、以下の計算式により、その試験片における空隙率を算出する。
空隙率=1-{試験片の重量/(可溶性材料の真比重×試験片の体積)}
そして、各々の試験片における空隙率の単純平均値を算出して、本体部の空隙率とする。
なお、A部またはB部の空隙率についても同様に測定する。すなわち、A部またはB部に該当する部位における複数個所において試験片を切り抜き、各々の試験片について空隙率を求めた後、同様に空隙率を算出するものとする。
【0030】
図1におけるA部3の厚さは特に限定されないが、10~1000μmであることが好ましく、10~100μmであることがより好ましい。このような厚さであると、より熱伝導しやすく、短時間での調温が可能となる。
図1におけるB部5の厚さは特に限定されないが、1~1000cmであることが好ましい。
ここで緻密層3、B部5および本体部1の厚さとは、図1に示すような本体部の断面において、内部空間2を構成する内面(図1に示す好適態様の場合は、A部3の内面がこれに相当する)からその内面に垂直な外方向への長さを10箇所以上測定し、これを単純平均して求めた値を意味するものとする。
【0031】
本発明において本体部において内部空間の断面が狭い箇所を含んでいてよい。このような箇所における内部空間内の樹脂材料は、一般的に反応が進行し難い。
なお、本発明では、本体部の内部空間の断面積の最大値に対して50%以下(好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下)の断面積となる内部空間を構成する本体部の特定箇所を、断面が狭いための反応が進行し難い箇所とする。
【0032】
加熱手段および送風手段について説明する。
本発明の型は、上記のような本体部に加え、加熱手段と、送風手段とを有する。
ここで加熱手段は、本体部の外側に配置されている。
また、送風手段は、加熱手段の外側に配置されている。
そして、送風手段を駆動すると外気が本体部の内部へ入り込むように構成されている。
【0033】
加熱手段および送風手段を含む本発明の型について、図2を用いて説明する。
図2は本発明の型の好適例を示す概略断面図である。
図2に示す本発明の型10は、図1に示した本体部1を備え、さらに加熱手段20および送風手段30を有する。
【0034】
図2において、加熱手段20は本体部1の一部を構成するB部5の外面に付けられている。ここで加熱手段20は例えば接着剤を用いたり、ひもで巻き付けたりする方法でB部5の外面に付けられていてよい。接着剤はB部5の通気性を損なわないように用いることが好ましい。接着剤は無機系接着剤であってよく、耐熱性を備える有機系接着剤であってもよい。用いることができる接着剤として、セラマボンド571(マグネシアベースのセラミック接着剤、アレムコ社)、セラマボンド671(アルミナベースのセラミック接着剤アレムコ社)、アロンセラミック(耐熱性無機接着剤、東亞合成)などが挙げられる。
なお、本発明において加熱手段は本体部の外側に配置(および固定)されていればよく、必ずしも本体部に直接付いていなくてもよい。本体部の少なくとも一部を加熱することができる位置に配置されていればよい。
そして、加熱手段20の外側に送風手段30が配置されている。
【0035】
加熱手段20は特に限定されず、例えば従来公知のヒーターであってよく、SUSヒーター、線状ヒーター、シート状ヒーターであってもよい。
SUSヒーターとは繊維状のSUSがシート状に形成されているものであり、通電することによって熱を発するものである。
また、加熱手段20としてフレキシブルで通気性を持つヒーターを用いることが好ましい。フレキシブル性があることにより複雑な形状にも追従しやすくなる。
【0036】
送風手段30は特に限定されず、従来公知のファンであってよい。
【0037】
送風手段30は、これを駆動したときに、外気が本体部の内部へ入り込む位置に配置される。
また、送風手段30は、これを駆動したときに、加熱手段20によって加熱された外気が本体部の内部へ入り込む位置に配置されることが好ましい。
図2に示す態様の場合、送風手段30を駆動すると、加熱手段20によって加熱された外気が本体部の内部へ入り込む。つまり、図2に示す態様では、加熱手段20によって加熱された外気が本体部の内部へ入り込む位置に、加熱手段20および送風手段30が配置されている。加熱手段20を駆動せずに送風手段30を駆動すれば、加熱されていない常温の外気が本体部の内部へ入り込む。
【0038】
本発明の型において送風手段は、これを駆動したときに外気が本体部の内部へ入り込む位置に配置され、その位置を比較的自由に設定することができる。加熱手段についても、同様に、その位置を比較的自由に設定することができる。
したがって、例えば本発明の型において、内部空間に装入した樹脂材料が自己発熱し難かったり、加熱され難かったり、冷却され難かったりする箇所(例えば、内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる、内部空間を構成する本体部の箇所)がある場合に、その箇所を十分に加熱および/または冷却することができる位置に加熱手段および/または冷却手段を配置することが可能である。そのため、本発明の型を用いて成形した成形体には脆い部分が生じ難く、全体の強度が均一な成形体が得られる。
【0039】
また、図2に示す態様においてB部5の空隙率が高い(例えば25~75%(好ましくは40~75%)である場合)、送風手段30を駆動すると、外気がB部5を通過する。つまり、外気が少なくともA部3の外面にまで到達する。
したがって、本発明の型における所望の位置を速やかに加熱および/または冷却することができる。
【0040】
このような本発明の型の製造方法は特に限定されない。例えば次のような方法によって、本発明の型を製造することができる。
初めに、3次元造型機で親型を製作する。ここで親型の形状は任意であり、複雑な形状であってもよい。
次に、親型の表面を可溶性材料(例えば酸化マグネシウムの粒子)で被覆する。
次に、乾燥および/または焼成して本体部を形成する。そして、本体部から親型を取り外す。本体部を分割して取り外しても良い。また、例えば親型を可燃性のもので作成すれば、加熱することで、本体部を分割しなくても親型を除去することができる。本体部を分割した場合は、分割面を合わせて付けて元に戻し、本体部を得る。
次に、所望の位置に加熱手段および送風手段を配置する。
ここで本体部がA部とB部とを有する場合、まずA部を構成するための可溶性材料で親型の表面を被覆し、次に、その外面をB部を構成するための可溶性材料で被覆する。ここでA部を構成する可溶性材料よりもB部を構成する可溶性材料の二次粒子径を大きくすることで、相対的にB部の方の通気性を高くすることができる。
【0041】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、準備工程と、加熱工程と、冷却工程とを備える。
【0042】
準備工程について説明する。
準備工程は、上記のような本発明の型の本体部における内部空間へ樹脂材料を装入する工程である。
【0043】
ここで樹脂材料は特に限定されず、例えば硬化剤と混合すると硬化する樹脂を硬化剤と共に内部空間に装入することができる。
また、樹脂材料は、例えば、湿気硬化型樹脂、熱可塑性樹脂または熱硬化型樹脂であってもよい。
ここで熱硬化性樹脂として、例えば熱硬化性エポキシ、ウレタン、フェノール、ポリジシクロペンタジエンが挙げられる。
また、熱可塑性樹脂として、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレンが挙げられる。
また、湿気硬化型樹脂として、シリコーン、ウレタン、湿気硬化性エポキシが挙げられる。
これらの中でも本発明では樹脂材料として、ポリジシクロペンタジエンまたはエポキシを好ましく用いることができる。これらは自己発熱が大きいが、従来の方法では重合度のコントロールが難しい。
【0044】
加熱工程は、ヒーターなどの加熱手段を駆動することで、内部空間へ装入された樹脂材料を加熱する工程、またはヒーターなどの加熱手段を駆動することで、内部空間へ樹脂材料を装入しながら、この樹脂材料を加熱する工程である。
【0045】
ここで加熱工程において、加熱手段と共に送風手段も駆動することが好ましい。樹脂材料を効率的に加熱することができるからである。
【0046】
冷却工程は、加熱手段を駆動せずに送風手段を駆動することで、外気によって本体部内を冷却する工程である。
【0047】
本発明の製造方法では、上記のような準備工程と、加熱工程と、冷却工程とを備えるが、加熱工程と冷却工程との順番は限定されない。準備工程の後に冷却工程を行い、その後、加熱工程を行ってもよい。
【0048】
本発明の製造方法では、冷却工程に供した後の本発明の型における本体部の少なくとも一部を水または水溶液を用いて溶解し、内部の成形体を取り出す溶解工程をさらに備えることが好ましい。
本体部は可溶性材料からなるので、内部空間にて成形された成形体を取り出す際に、本体部を水または水溶液によって容易に分解することができ、その結果、複雑な形状の成形体であっても壊すことなく、キズ等が少ない成形体を得ることができる。
【0049】
例えば硬化剤とこれによって硬化する樹脂とを内部空間に装入すると、多くの場合、反応熱が発生し、自己発熱する場合がある。
また、例えば湿気硬化型樹脂を内部空間に装入すると、多くの場合、反応熱が発生し、自己発熱する場合がある。
このような場合、短時間に反応が進みすぎてしまい、部位(例えば、内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる、内部空間を構成する本体部の部位)によって強度が不均一な成形体が得られる可能性がある。
そこで、このような樹脂材料を内部空間に装入しながら、および/または装入した後に、上記のような冷却工程を行い、本体部内を冷却すると、相対的に反応速度が遅くなるので、部位による強度の不均一性が緩和された成形体を得ることができる。また、冷却工程を行った後に、加熱工程を行うことで樹脂材料の反応(架橋反応等)を進行させることができるので、強度が十分に高い成形体を得ることができる。ここで本体部の内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる内部空間を構成する本体部の特定箇所を、加熱手段によって加熱することが好ましい。
加熱した後は、再度、冷却工程に供して冷却してもよいし、自然冷却してもよい。
【0050】
例えば熱可塑性樹脂を内部空間に装入すると、加熱した後、自己発熱する場合がある。
このような場合、短時間に反応が進みすぎてしまい、部位(例えば、内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる、内部空間を構成する本体部の部位)によって強度が不均一な成形体が得られる可能性がある。
そこで、熱可塑性樹脂を内部空間に装入しながら、および/または装入した後、自己発熱によって短時間に反応が進み過ぎないように上記のような加熱工程を行って本体部内を加熱すると、相対的に反応速度が遅くなるので、部位による強度の不均一性が緩和された成形体を得ることができる。また、加熱することで樹脂の粘性が下がり、型の末端にまで樹脂を行き渡らせることができる。また、加熱工程を行った後に、再度、冷却工程を行ってもよく、この場合、樹脂材料の反応(架橋反応等)を進行させることができるので、強度が十分に高い成形体を得ることができる。
【0051】
例えば熱硬化樹脂を内部空間に装入すると、加熱した後、自己発熱する場合がある。
このような場合、短時間に反応が進みすぎてしまい、部位(例えば、内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる、内部空間を構成する本体部の部位)によって強度が不均一な成形体が得られる可能性がある。
そこで、熱硬化性樹脂を内部空間に装入しながら、および/または装入した後に、上記のような冷却工程を行い、本体部内を冷却すると、相対的に反応速度が遅くなるので、部位による強度の不均一性が緩和された成形体を得ることができる。また、冷却工程を行った後に、加熱工程を行うことで樹脂材料の反応(架橋反応等)を進行させることができるので、強度が十分に高い成形体を得ることができる。ここで本体部の内部空間の断面積の最大値に対して50%以下の断面積となる内部空間を構成する本体部の特定箇所を、加熱手段によって加熱することが好ましい。
加熱した後は、再度、冷却工程に供して冷却してもよいし、自然冷却してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 本体部
2 内部空間
3 A部
5 B部
10 本発明の型
20 加熱手段
30 送風手段
図1
図2