(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133883
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】パルプモールド容器
(51)【国際特許分類】
B32B 23/08 20060101AFI20220907BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220907BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220907BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20220907BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20220907BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B32B23/08
B32B27/00 H
B32B27/32
B32B27/28 102
B65D1/00 111
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032817
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 淳
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 淳
【テーマコード(参考)】
3E033
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA10
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4F100AJ02
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4F100AK03
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4F100JD05B
4F100JD05C
(57)【要約】
【課題】食品と接する面において耐水性及び耐油性を有し、パルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生を抑えたパルプモールド容器を提供する。
【解決手段】課題は、パルプモールドと、前記パルプモールドに対して耐水耐油層とを有し、前記耐水耐油層が、樹脂中の酢酸ビニル単量体の含有量が28質量%以上47質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合系樹脂を含有する第一層及びポリオレフィン系樹脂を含有する第二層から成り、パルプモールドに近い側から第一層及び第二層の順番で有するパルプモールド容器によって解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールドと、前記パルプモールドに対して耐水耐油層とを有し、前記耐水耐油層が、樹脂中の酢酸ビニル単量体の含有量が28質量%以上47質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合系樹脂を含有する第一層及びポリオレフィン系樹脂を含有する第二層から成り、パルプモールドに近い側から第一層及び第二層の順番で有するパルプモールド容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁当容器及び総菜などの食品用容器に使用するパルプモールド容器に関し、特に食品が直に接するパルプモールド容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプモールド容器とは、植物由来のパルプ、段ボール及び新聞などに由来する古紙パルプを原料としたパルプモールドを、所定の形状にした成形物である。
パルプモールドは、例えば、卵及び果物の保持材、並びに家電及びパソコン周辺機器などの輸送用緩衝材などに利用される。食品を入れるための水蒸気バリア性及びガスバリア性が高いパルプモールド容器が公知である(例えば、特許文献1参照)。また、植物性の流動性原料から形成した食品容器が公知である(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1のパルプモールド容器は、容器の内側にバリア積層体を有する。バリア積層体はポリ塩化ビニリデン系フィルム及びポリアミド系フィルムを含む。前記パルプモールド容器は、容器の内側にバリア積層体を有することによって水蒸気バリア性及びガスバリア性を有する。
弁当容器及び総菜等の食品用容器に使用するパルプモールド容器では、密閉状態が要求されないために、水蒸気バリア性及びガスバリア性を必要としない。しかしながら、食品由来の水分及び油分がパルプモールドに浸透乃至パルプモールドを透過してパルプモールド容器周辺を汚さないように、パルプモールド容器には耐水性及び耐油性が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-159965号公報
【特許文献2】特開2006-199348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のパルプモールド容器は、原料のパルプを含むスラリーを成形機で所定の型に成形し、成形したパルプモールドに対してバリア積層体を熱融着することによって製造することができる。すなわち、パルプモールドを成形した後にパルプモールドに対して前記バリア積層体のような樹脂層を設ける。ただし、特許文献1のパルプモールド容器は、筒状部、底部及びフランジ部からなる単純な形状である。一方、特許文献2のように弁当容器及び総菜等の食品用容器に使用する容器は、容器の強度、食品の保持安定化、仕切り及び容器の積載性のために細かい複雑な凹凸を有する。そのために、弁当容器及び総菜等の食品用容器に使用するパルプモールド容器の製造では、成形したパルプモールドに対して耐水耐油層などの樹脂層を設ける際に樹脂層に亀裂等が生じて、パルプモールド容器の量産時に不良品を発生し易い。
よって、本発明の目的は、耐水性及び耐油性を有し、パルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生を抑えたパルプモールド容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明の目的は以下によって達成される。
【0007】
[1]パルプモールドと、前記パルプモールドに対して耐水耐油層とを有し、前記耐水耐油層が、樹脂中の酢酸ビニル単量体の含有量が28質量%以上47質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合系樹脂を含有する第一層及びポリオレフィン系樹脂を含有する第二層から成り、パルプモールドに近い側から第一層及び第二層の順番で有するパルプモールド容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、パルプモールド容器は、耐水性及び耐油性を有し、パルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のパルプモールド容器は、パルプモールドの食品と接する側に耐水耐油層を有する。前記耐水耐油層は、パルプモールドに近い側から第一層及び第二層をこの順番で有する。すなわち、パルプモールド容器は、パルプモールドに対して第一層を有し、さらに第一層に対して第二層を有する。
【0010】
パルプモールドは、パルプを含有するスラリーから抄紙及び成形機を用いた従来公知の方法で得ることができる。スラリーには、必要に応じて各種添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、顔料、サイズ剤、紙力剤、界面活性剤、着色剤、天然由来の樹脂、合成樹脂、防腐剤、防バイ剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤及び耐水化剤などを挙げることができる。
いくつかの実施態様において、前記スラリーは、澱粉類及びセルロース類から選ばれる天然由来の樹脂及び/又は合成樹脂を含有する。この理由は、パルプモールド容器の強度が増すからである。いくつかの実施態様において、前記スラリーは、合成樹脂を含有しない。この理由は、パルプモールド容器のリサイクルに有利になるからである。
【0011】
上記パルプは、製紙分野で従来公知のものである。パルプは、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、新聞由来及び段ボール由来の古紙パルプ(Waste Paper Pulp)、DIP(DeInked Pulp)、並びに製紙工場で発生する損紙(Spoilage)を離解して成るパルプなどを挙げることができる。いくつかの実施態様において、パルプは、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
前記木材パルプは、製紙分野で従来公知のものである。木材パルプの例としては、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)、NBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)などの化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)などの機械パルプ、CGP(ChemiGroundwood Pulp)などのセミケミカルパルプを挙げることができる。
非木材パルプは、製紙分野で従来公知の非木材繊維からなるパルプである。非木材繊維の原料は、例えば、コウゾ、ミツマタ及びガンピなどの木本靭皮、亜麻、大麻及びケナフなどの草本靭皮、マニラ麻、アバカ及びサイザル麻などの葉繊維、イネわら、ムギわら、サトウキビバカス、タケ及びエスパルトなどの禾本科植物、並びにワタ及びリンターなどの種毛を挙げることができる。
【0012】
上記耐水耐油層の第一層は、エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂を含有する。エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は、エチレン単量体及び酢酸ビニル単量体を少なくとも含有する共重合系樹脂であって、エチレン単量体及び酢酸ビニル単量体から乳化重合法又はエチレン単量体、酢酸ビニル単量体及び下記他の単量体から乳化重合法によって得ることができる。前記エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は、樹脂中において酢酸ビニル単量体の含有量が28質量%以上47質量%以下である。パルプモールド容器は、樹脂中の酢酸ビニル単量体の含有量がこの範囲から外れると、耐水性、耐油性、及びパルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生を抑えることの少なくとも一つを満足できない。
【0013】
いくつかの実施態様において、エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は、エチレン単量体及び酢酸ビニル単量体以外に、これら単量体と共重合可能な他の単量体を含有する。前記他の単量体の例としては、プロピレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン及びビニルアルコール等を挙げることができる。いくつかの実施態様において、エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は樹脂中において他の単量体の含有量が10質量%以下である。また、いくつかの実施態様において、エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は、樹脂中において酢酸ビニル単量体の含有量が28質量%以上47質量%以下かつ他の単量体の含有量が10質量%以下である。少なくとも一つの実施態様において、エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は他の単量体を含有しない。これらの理由は、耐水性及び耐油性を有しつつ、パルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生をより抑えることができるからである。
【0014】
第一層は、樹脂分野で従来公知の可塑剤、安定剤、耐候性向上剤、着色剤、防曇剤、抗菌剤、滑剤及び核剤などを必要に応じて適宜含有することができる。
【0015】
上記耐水耐油層の第二層は、ポリオレフィン系樹脂を含有する。ポリオレフィン系樹脂は、樹脂中、エチレンの同族列である一般式CnH2nで表される脂肪族不飽和炭化水素の含有量が50質量%超を占める樹脂である。一般式CnH2nで表される脂肪族不飽和炭化水素の例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、イソプレン及びブタジエン等を挙げることができる。ポリオレフィン系樹脂の例としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸メチル共重合体、カルボン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンカルボン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー及びこれらの誘導体、ポリプロピレン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、及びポリブタジエン系樹脂等を挙げることができる。さらにポリオレフィン系樹脂はこれらから成る群から選ばれる二種以上の混合物を挙げることができる。前記ポリプロピレン系樹脂の例としては、ポリプロピレンホモポリマー、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体等を挙げることができる。
【0016】
いくつかの実施態様において、前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレンを少なくとも含む。この理由は、パルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生をより抑えるからである。低密度ポリエチレンは、通常、密度が0.910g/cm3以上0.925g/cm3以下のものを指す。このようなポリエチレンは、ICI法又は高圧法により商業的に製造される。少なくとも一つの実施態様において、ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリオレフィンを含みかつポリオレフィン系樹脂に対して低密度ポリエチレンの含有量が50質量%超である。
【0017】
第二層は、樹脂分野で従来公知の可塑剤、安定剤、耐候性向上剤、着色剤、防曇剤、抗菌剤、滑剤及び核剤などを必要に応じて適宜含有することができる。
【0018】
ポリエチレンは結晶性を有し、耐水性及び耐油性を有する。しかしながら、ポリエチレンは柔軟性及び物理的強度に劣る。エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は、酢酸ビニル単量体を含有するために、ポリエチレンに比べて結晶性が低下する。その結果、ポリエチレンの耐水性及び耐油性を幾分有しながら柔軟性及び物理的強度を得ることができる。そしてさらに、エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は、酢酸ビニル単量体をある程度含有することによって接着性を発現する。よって、樹脂中において酢酸ビニル単量体の含有量が28質量%以上47質量%以下であるエチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は、耐水性、耐油性、柔軟性、物理的強度及び接着性とを中庸に有する。エチレン酢酸ビニル共重合系樹脂は、耐水性及び耐油性を有するポリオレフィン系樹脂とパルプモールドとに対して接着性を発現して、パルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生を抑えることができる。
低密度ポリエチレンは、耐水性及び耐油性を有しつつ、他のポリエチレンに比べて結晶化度が低いために柔軟性及び耐衝撃性を有する。この結果、第二層がポリオレフィン系樹脂として低密度ポリエチレンを有する場合ではパルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生をより抑えることができる。
【0019】
パルプモールド容器は、従来公知の方法で製造することができる。
パルプモールド容器は、例えば、下記の方法で製造することができる。
必要に応じて添加剤を配合したパルプスラリーを抄紙槽に入れる。抄紙槽から、容器形状に合う抄紙金網を用いてパルプを漉きあげる。その際、金網の裏側から真空吸引を行いながらパルプを漉く。このようにして金網上に形成された含水状態のパルプモールドを得る。得たパルプモールドを含水用乾燥金型にセットした後に、真空吸引及びプレス成形を行ってパルプモールドを所定の含水率まで乾燥する。さらに、圧縮乾燥金型にてプレス加熱成形を行って乾燥したパルプモールドを得る。
次に、乾燥したパルプモールドにおいて、パルプモールドの食品が接する側(内側)に対して第一層及び第二層から成る耐水耐油層を真空成型、プラグアシスト真空成型及び真空圧空成型などによって貼り合わせて、パルプモールド容器を製造する。このような製造方法は、例えば、特許文献1に開示される。ここで、耐水耐油層の貼り合わせには、例えば、第一層と第二層を予め積層した耐水耐油層用のフィルムを貼り合わせる方法、及びフィルム化した第一層を貼り合わせて次にフィルム化した第二層を貼り合わせる方法などを挙げることができる。
【0020】
パルプモールド容器は、シート状であるパルプシートから製造することもできる。
製造は、例えば、パルプシートに対して耐水耐油層を積層し、耐水耐油層を積層したパルプシートを成形機で成形する方法である。積層する方法の例としては、ドライラミネート、押出しラミネート、溶融押出しラミネート、ホットメルトラミネート、ウェットラミネート及びサーマルラミネートなどを挙げることができる。
【0021】
いくつかの実施態様において、耐水耐油層の第一層の厚さは0.06μm以上1.3μm以下である。いくつかの実施態様において、耐水耐油層の第二層の厚さは0.5μm以上4μm以下である。少なくとも一つの実施態様において、耐水耐油層は、第一層の厚さが0.06μm以上1.3μm以下及び第二層の厚さが0.5μm以上4μm以下である。この理由は、耐水性及び耐油性を有しながら、パルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生をより抑えることができるからである。厚さは、パルプモールド容器の断面を電子顕微鏡で撮影し、撮影画像から求めることができる。耐水耐油層の厚さは、第一層及び第二層のフィルム作製時の樹脂供給量、押出しスリット幅及び延伸など従来公知の方法によって、又は第一層及び第二層の積層時の樹脂供給量及び押出しスリット幅など従来公知の方法で調整することができる。
【実施例0022】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工層の塗工量は乾燥固形分量を表す。
【0023】
濾水度330csfのNBKPのパルプ、サイズ剤、紙力剤及び防バイ剤を含む所定濃度のパルプスラリーを調成した。従来公知の常法によって、含水用乾燥金型を用いて平均肉厚4mmのパルプモールドを作製した。平均肉厚4mmのパルプモールドをさらに圧縮乾燥金型を用いてプレス加熱成形して平均肉厚1.5mmのパルプモールドを作製した。パルプモールドの形状は、特許文献2の記載に類似する容器形とした。
【0024】
耐水耐油層の第二層として、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリスチレンから選ばれるフィルムを用いた。フィルムは、常法により、溶融押出し機及び延伸機を用いて製造した。第二層の厚さは、いずれも2μmとした。各実施例及び各比較例に用いた樹脂の種類は、表1に記載する。
【0025】
耐水耐油層の第一層として、酢酸ビニル単量体の含有量が異なるエチレン酢酸ビニル共重合系樹脂及び高密度ポリエチレンから選ばれるフィルムを用いた。第一層用のフィルムは、上記第二層の片面に対して溶融押出し機を用いて積層して形成し、第二層の片面に第一層が積層した耐水耐油層用のフィルムを得た。ここで、第一層の厚さは、いずれも0.8μmとした。各実施例及び各比較例に用いた樹脂の種類は、表1に記載する。
【0026】
次に、得た上記パルプモールドを内側が上向きにして真空成型金型内にセット及び加熱した。セラミックヒーターで耐水耐油層用のフィルムを加熱して軟化させた。軟化させた耐水耐油層用のフィルムを、加熱した金型内のパルプモールドの開口部近傍に、耐水耐油層用のフィルムの第一層がパルプモールドに対向するよう移動した。直後に加熱したプラグを用いて、パルプモールドの内側に沿って耐水耐油層を形成し、同時にパルプモールドと耐水耐油層とを熱溶着させてパルプモールド容器を得た。
【0027】
<耐水性>
耐水性の評価は、パルプモールド容器の内側(耐水耐油層を有する側)に赤く着色した約2mlの水滴を滴下し、滴下した水がパルプモールド容器の内側に染み込む程度及びパルプモールド容器の裏面(耐水耐油層を有しない側)に滲み出す程度を目視で観察して行った。観察結果から、耐水性を下記の基準で評価した。本発明において、パルプモールド容器は、評価Aであれば耐水性を有するものとする。
A:染み込みが無く、及び滲み出しが認められない。
B:染み込みが僅かに認められる。しかし、滲み出しが認められない。
C:染み込みが認められる。また、滲み出しが認められる。
【0028】
<耐油性>
耐油性の評価は、パルプモールド容器の内側(耐水耐油層を有する側)に赤く着色したサラダ油約2mlの油滴を滴下し、滴下した油がパルプモールド容器の内側に染み込む程度及びパルプモールド容器の裏面(耐水耐油層を有しない側)に滲み出す程度を目視で観察して行った。観察結果から、耐油性を下記の基準で評価した。本発明において、食品包装用紙は、評価Aであれば耐油性を有するものとする。
A:染み込みが無く、及び滲み出しが認められない。
B:染み込みが僅かに認められる。しかし、滲み出しが認められない。
C:染み込みが認められる。また、滲み出しが認められる。
【0029】
<不良品の発生>
不良品の発生に関する評価は、パルプモールド容器を250個製造した時に、耐水耐油層の湾曲部に亀裂等の発生に基づく耐水性及び耐油性に関する不良品の発生個数を数える方法で行った。不良品の発生個数から下記の基準で評価した。本発明において、パルプモールド容器は、評価A又は評価Bであればパルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生を抑えたものとする。
A:250個中、不良品が2個以下である。
B:250個中、不良品が2個超4個以下である。
C:250個中、不良品の4個超である。
【0030】
評価結果を表1に示す。
【0031】
【0032】
表1から、本発明の構成を満足する実施例1~4は、耐水性及び耐油性を有しつつ、パルプモールド容器の製造時にできる不良品の発生が抑えられたパルプモールド容器であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~6は、耐水性、耐油性及び不良品の発生に関して少なくともいずれかを満足できないパルプモールド容器であると分かる。