(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133887
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】ベッド
(51)【国際特許分類】
A61G 7/015 20060101AFI20220907BHJP
A47C 19/04 20060101ALI20220907BHJP
A47C 20/10 20060101ALI20220907BHJP
A61G 7/018 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
A61G7/015
A47C19/04 A
A47C20/10
A61G7/018
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032824
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】599139442
【氏名又は名称】株式会社プラッツ
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】二里 洋輔
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA03
4C040DD01
4C040DD05
4C040EE05
4C040EE08
(57)【要約】
【課題】可動部の可動に遅延が生じてしまうのを抑制すること。
【解決手段】本発明では、アクチュエーター(12,13,14,24)のロッド(21,22,23,27)を進退させることで可動部を可動させるベッド(1)において、目標とする可動部の可動状態(到達状態)とその到達状態に到達するまで可動部を可動させる予定の時間(到達時間)とに基づいてアクチュエーター(12,13,14,24)のロッド(21,22,23,27)の進退速度を制御することにした。また、前記到達状態に到達する前に、到達時間に現在の可動部の可動状態から到達状態に到達するようにアクチュエーター(12,13,14,24)のロッド(21,22,23,27)の進退速度を補正することにした。さらに、複数の可動部の可動状態を、各アクチュエーター(12,13,14,24)のロッド(21,22,23,27)の進退速度を制御することによって、連動させることにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエーターのロッドを進退させることで可動部を可動(横臥者の身体を受ける受台の回転、受台を設けた支持台の昇降など)させるベッドにおいて、
目標とする可動部の可動状態(受台の回転角度、支持台の昇降位置など。「到達状態」という。)とその到達状態に到達するまで可動部を可動させる予定の時間(「到達時間」という。)とに基づいてアクチュエーターのロッドの進退速度を制御することを特徴とするベッド。
【請求項2】
前記到達状態に到達する前に、到達時間に現在の可動部の可動状態から到達状態に到達するようにアクチュエーターのロッドの進退速度を補正することを特徴とする請求項1に記載のベッド。
【請求項3】
複数の可動部の可動状態を、各アクチュエーターのロッドの進退速度を制御することによって、連動させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエーターのロッドを進退させることで可動部を可動(横臥者の身体を受ける受台の回転、受台を設けた支持台の昇降など)させるベッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、主に病院用や介護用などで使用されるベッドとして、横臥者の背部や大腿部を起こすことができたり高さを調節することができるリクライニング式のベッドが広く利用されている。
【0003】
従来のリクライニング式のベッドでは、横臥者の背部を受ける背部受台と横臥者の大腿部を受ける大腿部受台とを支持台に対して起倒可能に設けるとともに、支持台と背部受台や大腿部受台との間にモーターでロッドを進退させるアクチュエーターを設けている。
【0004】
そして、背部受台や大腿部受台の傾斜角度が所定の角度となるようにそれぞれのアクチュエーターのモーターを制御することによって支持台に対して背部受台や大腿部受台を起倒させるようにしている(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来のベッドでは、横臥者の体重や背部受台や大腿部受台の傾斜角度によってはアクチュエーターのモーターに過大な負荷が掛かってしまい、アクチュエーターのロッドの進退速度が低下して、背部受台や大腿部受台の動作に遅延が生じてしまうおそれがある。
【0007】
また、背部受台や大腿部受台などの複数の可動部を連動させて動作させる場合には、複数の可動部の動作が複合的に遅延してしまい、ベッド上で横臥者の身体がずれて横臥者の腹部や胸部に圧迫感を与えてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、アクチュエーターのロッドを進退させることで可動部を可動(横臥者の身体を受ける受台の回転、受台を設けた支持台の昇降など)させるベッドにおいて、目標とする可動部の可動状態(到達状態)とその到達状態に到達するまで可動部を可動させる予定の時間(到達時間)とに基づいてアクチュエーターのロッドの進退速度を制御することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記到達状態に到達する前に、到達時間に現在の可動部の可動状態から到達状態に到達するようにアクチュエーターのロッドの進退速度を補正することにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、複数の可動部の可動状態を、各アクチュエーターのロッドの進退速度を制御することによって、連動させることにした。
【発明の効果】
【0011】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0012】
すなわち、本発明では、アクチュエーターのロッドを進退させることで可動部を可動させるベッドにおいて、目標とする可動部の可動状態(到達状態)とその到達状態に到達するまで可動部を可動させる予定の時間(到達時間)とに基づいてアクチュエーターのロッドの進退速度を制御することにしているために、可動部の可動に遅延が生じてしまうのを抑制することができる。
【0013】
特に、前記到達状態に到達する前に、到達時間に現在の可動部の可動状態から到達状態に到達するようにアクチュエーターのロッドの進退速度を補正することにした場合には、可動部の可動に遅延が生じてしまうのを防止することができる。
【0014】
また、複数の可動部の可動状態を、各アクチュエーターのロッドの進退速度を制御することによって、連動させることにした場合には、複数の可動部を所望の動作で良好に連動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係るベッドの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示すように、ベッド1は、基台2の上部に支持台3を昇降可能に設けるとともに、支持台3の上部に横臥者の身体を支持する受台4を設けている。なお、ここでは、便宜的に、ベッド1に横臥する者の足側を前側とし、頭側を後側として説明する。
【0018】
受台4は、主に横臥者の尻の荷重を受ける(横臥者の尻を下方から支える)ための尻部受台5と、主に横臥者の上半身(尻よりも上側)の荷重を受ける(横臥者の上半身を下方から支える)ための上半身受台6と、主に横臥者の下半身(尻よりも下側)の荷重を受ける(横臥者の下半身を下方から支える)ための下半身受台7とで構成している。
【0019】
尻部受台5は、支持台3の概略中央部に水平状に固定されている。
【0020】
上半身受台6は、支持台3の後側(尻部受台5よりも後側)に前端部を上下回動自在に枢着することによって支持台3や尻部受台5に対して起倒可能に設けられている。
【0021】
この上半身受台6は、主に横臥者の肩(肩甲骨)よりも下側の背中(背骨)の荷重を受ける(横臥者の肩(肩甲骨)よりも下側の背中(背骨)を下方から支える)ための背部受台8と、主に横臥者の肩(肩甲骨)から上側の肩及び頭の荷重を受ける(横臥者の肩(肩甲骨)から上側の肩及び頭を下方から支える)ための肩部受台9とに分割して構成している。なお、肩部受台9は、横臥者の頭を受けるだけでなく、肩(肩甲骨)を受けているが、これに限られず、横臥者の頭を受けるだけのヘッドレストに変更した構成であってもよい。
【0022】
そして、上半身受台6は、支持台3の尻部受台5よりも後側に背部受台8の前端部を上下回動自在に枢着している。これにより、背部受台8は、支持台3や尻部受台5に対して起倒可能となっている。また、上半身受台6は、背部受台8の後端部に肩部受台9の前端部を上下回動自在に枢着している。これにより、肩部受台9は、支持台3や尻部受台5に対して背部受台8とともに起倒するとともに、背部受台8に対して起倒可能となっている。
【0023】
下半身受台7は、支持台3の前側(尻部受台5よりも前側)に後端部を上下回動自在に枢着することによって支持台3や尻部受台5に対して起倒可能に設けられている。
【0024】
この下半身受台7は、主に横臥者の大腿の荷重を受ける(横臥者の大腿を下方から支える)ための大腿部受台10と、主に横臥者の下腿の荷重を受ける(横臥者の下腿を下方から支える)ための下腿部受台11とに分割して構成している。
【0025】
そして、下半身受台7は、支持台3の尻部受台5よりも前側に大腿部受台10の後端部を上下回動自在に枢着している。これにより、大腿部受台10は、支持台3や尻部受台5に対して起倒可能となっている。また、下半身受台7は、大腿部受台10の前端部に下腿部受台11の後端部を上下回動自在に枢着している。これにより、下腿部受台11は、支持台3や尻部受台5に対して大腿部受台10とともに起倒するとともに、大腿部受台10に対して起倒可能(自由に屈曲可能)となっている。なお、下腿部受台11は、後端部が大腿部受台10の前端部とともに動き、前端部が支持台3の上面に沿って動くようになっている。
【0026】
背部受台8、肩部受台9、大腿部受台10には、支持台3に対してそれぞれを独立して起倒させるためのアクチュエーター12,13,14が連動機構15,16,17を介して接続されている。ここで、各アクチュエーター12,13,14は、モーター18,19,20と、モーター18,19,20によって前後に進退移動させることができるロッド21,22,23とで構成されている。また、各連動機構15,16,17は、各アクチュエーター12,13,14のロッド21,22,23の進退移動によって背部受台8、肩部受台9、大腿部受台10が上下に回動するように構成されている。
【0027】
背部受台8や肩部受台9や大腿部受台10を支持する支持台3には、基台2に対して上下に昇降させるためのアクチュエーター24が連動機構25を介して接続されている。ここで、アクチュエーター24は、モーター26と、モーター26によって前後に進退移動させることができるロッド27とで構成されている。また、連動機構25は、アクチュエーター24のロッド27の進退移動によって支持台3が上下に昇降するように構成されている。
【0028】
アクチュエーター12,13,14,24は、制御部28に接続されており、制御部28に格納されたプログラムに従ってモーター18,19,20,26が駆動制御される。
【0029】
制御部28には、各アクチュエーター12,13,14,24のロッド21,22,23,27の伸長を検出するセンサー40~43が接続されている。
【0030】
また、制御部28には、操作部29や各種センサー(たとえば、各受台8,9,10の起立角度を検出するセンサー)などが接続されている。操作部29には、支持台3(受台4)を上昇させるための操作スイッチ30と、支持台3(受台4)を下降させるための操作スイッチ31とを有している。また、操作部29には、背部受台8を単独で起立させるための操作スイッチ32と、背部受台8を単独で倒伏させるための操作スイッチ33と、肩部受台9を単独で起立させるための操作スイッチ34と、肩部受台9を単独で倒伏させるための操作スイッチ35と、大腿部受台10を単独で起立させるための操作スイッチ36と、大腿部受台10を単独で倒伏させるための操作スイッチ37とを有している。さらに、操作部29には、背部受台8を起立させるとともに肩部受台9や大腿部受台10を起倒させることで背部受台8と肩部受台9と大腿部受台10とを共動して動作(共動動作)させるための起立側の操作スイッチ38と、背部受台8を倒伏させるとともに肩部受台9や大腿部受台10を起倒させることで背部受台8と肩部受台9と大腿部受台10とを共動して動作(共動動作)させるための倒伏側の操作スイッチ39とを有している。
【0031】
制御部28は、各操作スイッチ30~37が操作されたことを検出した場合に、操作された操作スイッチ30~37に応じていずれかのアクチュエーター12,13,14,24を駆動制御して、支持台3を単独で上昇又は下降する方向に駆動させ、或は、背部受台8や肩部受台9や大腿部受台10をそれぞれ単独で起立又は倒伏する方向に駆動させる。
【0032】
また、制御部28は、共動動作を行う起立側の操作スイッチ38が操作されたことを検出した場合に、アクチュエーター12,13,14を駆動制御して、背部受台8を起立する方向に駆動させるとともに、肩部受台9や大腿部受台10を起立又は倒伏する方向に駆動させて、背部受台8と肩部受台9と大腿部受台10とに共動動作を行わせる。一方、制御部28は、共動動作を行う倒伏側の操作スイッチ39が操作されたことを検出した場合に、アクチュエーター12,13,14を駆動制御して、背部受台8を倒伏する方向に駆動させるとともに、肩部受台9や大腿部受台10を起立又は倒伏する方向に駆動させて、背部受台8と肩部受台9と大腿部受台10とに共動動作を行わせる。
【0033】
そして、制御部28は、操作された操作スイッチ30~39に応じて可動部を可動(支持台3の昇降や背部受台8・肩部受台9・大腿部受台10の回動)させる際に、
図2に示すように、予め目標とする可動部の可動状態(到達状態)を各アクチュエーター12,13,14,24に設けられたモーター18,19,20,26のロッド21,22,23,27のストロークS1で設定するとともに、その到達状態に到達するまで可動部を可動させる予定の時間(到達時間T1)を設定し、これらのストロークS1と時間T1とから各ロッド21,22,23,27の進退速度(S1/T1)を算出し、各ロッド21,22,23,27がその進退速度(S1/T1)となるように各モーター18,19,20,26を駆動制御する。
【0034】
このように、制御部28では、可動部の可動速度(支持台3の昇降速度や背部受台8・肩部受台9・大腿部受台10の回動速度)に基づいて制御するのではなく、各アクチュエーター12,13,14,24に設けられたモーター18,19,20,26のロッド21,22,23,27の進退速度に基づいて制御するようにしている。
【0035】
また、制御部28は、連動機構15,16,17,25の構成や可動部(支持台3、背部受台8、肩部受台9、大腿部受台10)が受ける荷重などに起因して、到達時間T1で到達状態に到達できなくなることも考えられるため、到達状態に到達する前に、現在の可動部の可動状態を各センサー40~43で検出して、現在の可動状態を各アクチュエーター12,13,14,24に設けられたモーター18,19,20,26のロッド21,22,23,27のストロークS2に設定し、現在の時間T2から到達時間T1までに現在の可動状態S2から到達状態S1に到達させる各ロッド21,22,23,27の進退速度((S1-S2)/(T1-T2))を算出し、各ロッド21,22,23,27がその進退速度((S1-S2)/(T1-T2))となるように補正して各モーター18,19,20,26を駆動制御する。
【0036】
なお、進退速度の補正は、到達状態に到達する前に行えばよく、可動開始から一定時間ごとに行ってもよく、到達時間を等間隔で分割した時間ごとに行ってもよい。また、進退速度の補正は、到達状態に到達する前に少なくとも1回行えばよく、複数回行ってもよい。さらに、進退速度の補正時に予め設定したストローク量にまで到達していない場合には、可動部に人や物が挟まれているために過負荷による動作遅延が発生しているとみなして、安全対策として、可動部の可動を停止させたり、一定時間逆方向への可動を行うようにしてもよい。
【0037】
制御部28は、操作された操作スイッチ30~37に応じて各可動部を可動(支持台3の昇降や背部受台8・肩部受台9・大腿部受台10の回動)させるとともに、操作スイッチ38,39が操作された場合には、
図3に示すように、複数の可動部(ここでは、背部受台8と肩部受台9と大腿部受台10)を上記と同様に各アクチュエーター12,13,14のロッド21,22,23の進退速度で駆動制御して、複数の可動部を連動させるようにしている。
【0038】
たとえば、
図3に示すように、背部受台8は、第1の到達状態s4に時間t2で到達した後に、その状態を時間t3まで維持し、その後、時間t4に第2の到達状態s5に到達するように駆動制御され、肩部受台9は、第1の到達状態s1に時間t1で到達した後に、その状態を時間t4まで維持するように駆動制御され、大腿部受台10は、第1の到達状態s3に時間t1で到達した後に、時間t2に第2の到達状態s0に到達し、その状態を時間t3まで維持し、その後、時間t4に第3の到達状態s2に到達するように駆動制御される。
【0039】
このように複数の可動部を連動させる場合においても、各アクチュエーター12,13,14,24がそれぞれに設定した到達状態に到達する前に進退速度の補正を行うようにしてもよい。
【0040】
以上に説明したように、上記ベッド1は、目標とする可動部の可動状態(到達状態。受台4の回転角度、支持台3の昇降位置など。)とその到達状態に到達するまで可動部を可動させる予定の時間(到達時間)とに基づいてアクチュエーター12,13,14,24のロッド21,22,23,27の進退速度を制御する構成となっている。
【0041】
そのため、上記構成のベッド1では、可動部の可動に遅延が生じてしまうのを抑制することができる。
【0042】
また、上記ベッド1は、到達状態に到達する前に、到達時間に現在の可動部の可動状態から到達状態に到達するようにアクチュエーター12,13,14,24のロッド21,22,23,27の進退速度を補正する構成となっている。
【0043】
そのため、上記構成のベッド1では、可動部の可動に遅延が生じてしまうのを防止することができる。
【0044】
また、上記ベッド1は、複数の可動部の可動状態を、各アクチュエーター12,13,14,24のロッド21,22,23,27の進退速度を制御することによって、連動させる構成となっている。
【0045】
そのため、上記構成のベッド1では、複数の可動部を所望の動作で良好に連動させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ベッド 2 基台
3 支持台 4 受台
5 尻部受台 6 上半身受台
7 下半身受台 8 背部受台
9 肩部受台 10 大腿部受台
11 下腿部受台 12,13,14,24 アクチュエーター
15,16,17,25 連動機構 18,19,20,26 モーター
21,22,23,27 ロッド 28 制御部
29 操作部 30~39 操作スイッチ
40~43 センサー