(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013390
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】台車のブレーキ構造及びそれを備える台車
(51)【国際特許分類】
B62B 5/04 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
B62B5/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115915
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】000200792
【氏名又は名称】浅香工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117374
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】川岡 陸
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050BB02
3D050BB03
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050JJ03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロック手段の主要部を、車輪を支持するブラケットの内部に組み付けて外部からの衝撃を受けにくい構造とし、操作体が衝撃による変形を起こしにくい台車のブレーキ構造を提供する。
【解決手段】台車1の荷台2の下面に取り付けられるブラケット8と、車軸を介して前記ブラケット8に回転自在に設けられる車輪9と、前記車輪9の回転を阻止すべく前記ブラケット8と前記車輪9との間に介装されるロック手段10とを備え、前記ロック手段10は、前記車輪9の回転をロックするストッパーと、前記ストッパーによる前記車輪9のロック及びロック解除を行わせる操作体40とを備え、前記ブラケット8を前記荷台2に取り付けた際に、前記操作体40が平面視において前記荷台2から後方へ突出するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車の荷台の下面に取り付けられるブラケットと、
車軸を介して前記ブラケットに回転自在に設けられる車輪と、
前記車輪の回転を阻止すべく前記ブラケットと前記車輪との間に介装されるロック手段とを備え、
前記ロック手段は、前記車輪の回転をロックするストッパーと、前記ストッパーによる前記車輪のロック及びロック解除を行わせる操作体とを備え、
前記ブラケットを前記荷台に取り付けた際に、前記操作体が平面視において前記荷台から後方へ突出するように構成されてなることを特徴とする台車のブレーキ構造。
【請求項2】
台車の荷台の後部下面に所定間隔を有して取り付けられる一対のブラケットと、
車軸を介して前記ブラケットに回転自在に設けられる車輪と、
前記車輪の回転を阻止すべく前記ブラケットと前記車輪との間に介装されるロック手段とを備え、
前記ロック手段は、前記車輪の回転をロックするストッパーと、前記ストッパーによる前記車輪のロック及びロック解除を行わせる操作体とを備え、
前記ブラケットを前記荷台に取り付けた際に、前記操作体が平面視において前記荷台から後方へ突出するように構成され、
前記荷台から突出する前記操作体の部位は連結杆により相互に連結されてなることを特徴とする台車のブレーキ構造。
【請求項3】
前記車輪は、前記荷台に対して旋回しない車輪である請求項1又は2に記載の台車のブレーキ構造。
【請求項4】
前記ストッパーは、前記ブラケットの内側に配されるとともに、前記車軸が挿通される長孔が上下方向に設けられるストッパー本体と、前記ストッパー本体の下部に内向きに設けられる第1係止凸部と、所定間隔を有して前記第1係止凸部に対向させて前記ストッパー本体に内向きに設けられる第2係止凸部と、前記車輪の外周面に接離自在となるべく前記ストッパー本体の上部に設けられる係止片とを備え、
前記操作体は、前記荷台から後方に突出する操作体本体と、前記操作体本体に設けられるアームと、前記アームの一端部に設けられるとともに、前記ストッパー本体と前記車輪の間に配される連結片とを備え、前記連結片には、前記車軸が挿通される孔が設けられ、下部に前記ストッパーの第1係止凸部に係合可能なカム部が設けられるとともに、上部に前記第2係止凸部に係合可能な一対の溝が突起を介して前後に設けられてなることを特徴する請求項1乃至3のいずれかに記載の台車のブレーキ構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の台車のブレーキ構造を備えてなることを特徴とする台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台車の下面に取り付けられるキャスターのブレーキ構造に関する。特に、旋回キャスターと固定キャスターを有する台車における固定キャスターのブレーキ構造に好適な台車のブレーキ構造及び台車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台車の下面に取り付けられるキャスターのブレーキ構造に関しては、例えば、特開2013-10367号公報(特許文献1)に記載のものが公知である。この台車のブレーキ構造は、ブレーキシューを金属製の片からなる第1シュー構成部とゴム又はエラストマ製のブロックからなる第2シュー構成部とで構成することにより、第1シュー構成部により制動力の強化を図り、第2シュー構成部により緩衝力を作用させて、制動時の制動力と緩衝力とのバランスがとれるようにするために、キャスターの車輪のトレッド面に押し付けられて車輪の制動を行うブレーキシューが、金属製からなる第1シュー構成部とゴム又はエラストマ製のブロックからなる第2シュー構成部とを有しており、第1シュー構成部の底面の第1制動部と第2シュー構成部の底面の第2制動部とが制動時にともにトレッド面に押圧されて制動が行われるキャスターのブレーキシュー構造において、第1シュー構成部は、車輪のトレッド面の回転方向に対して断面が略ハ字状となるように配置されたブレード状の片からなる第1制動部が車輪の回転方向の前後に離間するとともに、該第1制動部は車輪の回転方向と交差する方向に延びており、一対の第1制動部の間に第2制動部が配置されるように構成されている。
【0003】
また、特開2000-79804号(特許文献2)に記載される台車の下面に取り付けられるキャスターのブレーキ構造は、車輪ロック手段の操作体がロック操作とロック解除との中間になったとき、ロック解除を維持してロック姿勢に戻らないようにするために、車輪を回転自在に設けたブラケットに、車輪の回転を阻止する車輪ロック手段を設け、車輪ロック手段の操作体は、ロック操作時とロック解除時との両姿勢が維持され、ロック操作時の姿勢維持は、操作体をロック操作限まで操作することで行われ、ロック操作とロック解除との中間ではロック解除になり、これにより、走行中に操作体が簡単にロック操作姿勢に切り換わることを防止できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-10367号公報
【特許文献2】特開2000-79804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記台車は、いずれも前記ロック手段を操作する操作体は、前記ブラケットの側面外方に取り付けられており、操作体は外部にむき出しとなっている。外部に向きだしとなっているため、足で操作はし易いが、段差において段差に接触し易くなる等、外部からの衝撃を受けやすく、変形等するなどの不具合が生じる。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、前記ロック手段の主要部を、車輪を支持するブラケットの内部に組み付けて外部からの衝撃を受けにくい構造とし、前記操作体が衝撃による変形を起こしにくい台車のブレーキ構造を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ブラケットの内部に組み付けられる操作体を容易に操作することのできる台車のブレーキ構造を提供すること及びそれらを備える台車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の台車のブレーキ構造は、台車の荷台の下面に取り付けられるブラケットと、車軸を介して前記ブラケットに回転自在に設けられる車輪と、前記車輪の回転を阻止すべく前記ブラケットと前記車輪との間に介装されるロック手段とを備え、前記ロック手段は、前記車輪の回転をロックするストッパーと、前記ストッパーによる前記車輪のロック及びロック解除を行わせる操作体とを備え、前記ブラケットを前記荷台に取り付けた際に、前記操作体が平面視において前記荷台から後方へ突出するように構成されてなることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の台車のブレーキ構造あっては、キャスターのブラケットは荷台の後方側下面に取り付けられることになる。台車の走行を停止させたい場合は、荷台から後方へ突出させた操作体を操作して、ストッパーにより車輪をロックする。一方、台車を走行させたい場合は、操作体を操作してストッパーによる車輪のロック状態を解除すればよい。
【0009】
請求項2に記載の台車のブレーキ構造は、台車の荷台の後部下面に所定間隔を有して取り付けられる一対のブラケットと、車軸を介して前記ブラケットに回転自在に設けられる車輪と、前記車輪の回転を阻止すべく前記ブラケットと前記車輪との間に介装されるロック手段とを備え、前記ロック手段は、前記車輪の回転をロックするストッパーと、前記ストッパーによる前記車輪のロック及びロック解除を行わせる操作体とを備え、前記ブラケットを前記荷台に取り付けた際に、前記操作体が平面視において前記荷台から後方へ突出するように構成され、前記荷台から突出する前記操作体の部位は連結杆により相互に連結されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の台車のブレーキ構造にあっては、通常一対のキャスターのブラケットは荷台の後方側下面に所定間隔を有して取り付けられることになる。そして、台車の走行を停止させたい場合は、連結杆を介して操作体を操作することによりストッパーで車輪をロックする。一方、台車を走行させたい場合は、連結杆を介して操作体を操作し、ストッパーによる車輪のロック状態を解除すればよい。これらいずれの場合においても、連結杆により両操作体を連動させて操作することができる。
【0011】
請求項3に記載の台車のブレーキ構造は、前記車輪が前記荷台に対して旋回しない車輪であることを特徴する。
【0012】
請求項3に記載の台車のブレーキ構造にあっては、車輪が荷台に対して旋回しないために、ロック手段である操作体が荷台から後方へ突出する状態が常に維持されることになる。
【0013】
請求項4に記載の台車のブレーキ構造は、前記ストッパーが、前記ブラケットの内側に配されるとともに、前記車軸が挿通される長孔が上下方向に設けられるストッパー本体と、前記ストッパー本体の下部に内向きに設けられる第1係止凸部と、所定間隔を有して前記第1係止凸部に対向させて前記ストッパー本体に内向きに設けられる第2係止凸部と、前記車輪の外周面に接離自在となるべく前記ストッパー本体の上部に設けられる係止片とを備え、前記操作体は、前記荷台から後方に突出する操作体本体と、前記操作体本体に設けられるアームと、前記アームの一端部に設けられるとともに、前記ストッパー本体と前記車輪の間に配される連結片とを備え、前記連結片には、前記車軸が挿通される孔が設けられ、下部に前記ストッパーの第1係止凸部に係合可能なカム部が設けられるとともに、上部に前記第2係止凸部に係合可能な一対の溝が突起を介して前後に設けられてなることを特徴する。
【0014】
請求項4に記載の台車のブレーキ構造にあっては、例えば、使用者が足で操作体本体を下方に踏み込めば、操作体が車軸を軸心として下向きに回動することになる。そして、操作体に設けた連結片のカム部によりストッパーの第1係止凸部が下向きに押圧されて、車軸がストッパーの長孔内を上向きに移動するとともに、ストッパーが下降し、その係止片が車輪の外周面に圧接され、これにより車輪がロックされることになる。かかる一連のロック動作において、連結片の後方側の溝と係合していたストッパーの第2係止凸部は突起上を移動して連結片の前方側の溝に係合することになるため、ロック手段による車輪のロック状態が確実に維持される。一方、車輪のロック状態を解除する場合は、操作体本体を少し引き上げるようにして、操作体を上向きに回動すれば、連結片のカム部とストッパーの第1係止凸部との押圧状態が解除されて、この両者が離間するとともに、ストッパーの係止片と車輪との圧接状態が解除されてロック解除の状態となり、台車を走行することが可能になる。
【0015】
請求項5に記載の台車は、請求項1乃至4に記載の台車のブレーキ構造を備えていることを特徴する。
【0016】
請求項5に記載の台車にあっては、ロック手段は適切に保護されることになるため、ロック手段によるロック状態及びロック解除状態を良好に維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の台車のブレーキ構造によれば、ロック手段がブラケットと車輪との間に介装されるとともに、操作体が平面視において荷台から後方に突出するように構成されているため、例えば、台車の走行面に存在する異物等にキャスターが接触しても衝撃を受けにくく、変形等することもなく、ロック手段は適切に保護されることになる。従って、ロック手段によるロック状態及びロック解除状態を良好に維持することが可能になる。
【0018】
請求項2に記載の台車のブレーキ構造によれば、ロック手段がブラケットと車輪との間に介装されるとともに、操作体が平面視において荷台から後方に突出するように構成されているため、ロック手段によるロック状態及びロック解除状態を良好に維持することが可能になるのは、請求項1に記載の台車のブレーキ構造と同様である。さらに、請求項2に記載の台車のブレーキ構造にあっては、荷台から突出する操作体の部位が連結杆により相互に連結されているため、連結杆の操作により両方の操作体を連動させて操作することができる。これにより、ロック手段によるロック及びロック解除を簡易に、かつ確実に行うことが可能になる。
【0019】
請求項3に記載の台車のブレーキ構造によれば、車輪が荷台に対して旋回しない車輪で構成されているため、ロック手段である操作体が荷台から後方へ突出する状態が常に維持されることになり、操作体の操作が簡単に、かつ確実に行うことができる。
【0020】
請求項4に記載の台車のブレーキ構造によれば、ロック手段による車輪のロック時及びロック解除時において、ストッパーの第2係止凸部は操作体の連結片に設けたいずれか一方の溝に係合するため、ロック手段によるロック状態及びロック解除状態を良好に維持することができる。
【0021】
請求項5に記載の台車によれば、例えば、台車の走行面に存在する異物等にキャスターが接触しても衝撃を受けにくく、変形等することもなく、ロック手段は適切に保護されることになる。従って、ロック手段によるロック状態及びロック解除状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る台車を斜め上方から見た斜視図を示し、(a)は車輪のロック解除時の斜視図であり、(b)は車輪のロック時の斜視図である。
【
図2】同ロック手段を備えたキャスターの分解斜視図である。
【
図4】(a)はロック手段によるロックが解除された状態にある車輪の斜視図であり、(b)は同要部正面図である。
【
図5】(a)は車輪のロックが解除された状態にあるキャスターの斜視図であり、(b)は断面図である。
【
図6】(a)はロック手段によりロックされた状態にある車輪の斜視図であり、(b)は同要部正面図である。
【
図7】(a)は車輪がロック状態にあるキャスターの斜視図であり、(b)は同断面図である。
【
図8】車輪がロック状態にあるキャスターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づいて具体的に説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係る台車を斜め上方から見た斜視図、
図2及び
図3は、ロック手段を備えたキャスターの分解斜視図、
図4は、ロック手段によるロックが解除された状態にある車輪の斜視図及び要部正面図、
図5は、車輪ロック解除時におけるキャスターの斜視図及び断面図、
図6は、ロック手段によりロックされた状態にある車輪の斜視図及び要部正面図、
図7は、車輪ロック時におけるキャスターの斜視図及び断面図、
図8は、同断面図である。
【0025】
図1に示すように、台車1は、略矩形状平板からなる荷台2と、荷台2の上面後方位置に設けられる略逆∪の字状の手押しハンドル3と、荷台2の下面四隅にそれぞれ設けられる複数のキャスター4(4a、4b)とを備えている。手押しハンドル3の両端部は、取り付け部材5を介して荷台2に回動自在に取り付けられており、前方向に傾倒させた状態に折り畳んで収納することが可能である。
【0026】
荷台2の下面の前方位置に所定間隔を有して取り付けられた一対のキャスター4aは、荷台2に対して水平に旋回可能な車輪6を備えており、取り付け用のブラケット7を介して荷台2の下面に固定されている。
【0027】
荷台2の下面の後方位置に所定間隔を有して取り付けられた一対のキャスター4b、4bは、
図2及び
図3に示すように、荷台2の下面に固定されるブラケット8と、荷台2に対して旋回することのできない車輪9と、車輪9の回転をロックして台車1の走行を停止させるべく、ブラケット8と車輪9との間に介装されるロック手段10とを備えている。
【0028】
ブラケット8は、幅方向に所定間隔を有して対向配置される固定片11a、11bを有しており、各固定片11a、11bの下部には固定孔12、12が設けられるともに、固定孔12の上方位置には上下方向に所定長さを有する角孔13が設けられている。車輪9は、車輪9の中央部に穿設した孔15にボールベアリング16を嵌入着したものであり、車軸17をブラケット8の固定孔12、ロック手段10及びボールベアリング16に挿通し、車軸17の先端に形成したネジ部19にナット20が螺合されて、ブラケット8に取り付けられている。
【0029】
ロック手段10は、ストッパー30と操作体40とからなっている。ストッパー30は、車軸17が挿通される長孔32が上下方向に設けられるストッパー本体14と、ストッパー本体14の下端部に内向きに設けられる第1係止凸部33と、第1係止凸部33の上方位置に所定間隔を有して対向配置される第2係止凸部34と、車輪9の外周面に接離自在となるべくストッパー本体14の上端部に内向き設けられる係止片31とを備えている。ストッパー本体14の略中間部には、ブラケット8の側片11aに設けた角孔13に係入されるガイド片35が外向きに折曲形成されており、ガイド片35は角孔13内を上下にスライドすることが可能である。なお、ストッパー本体14はブラケットの側片11aの内側に配される。
【0030】
操作体40は、断面略コの字状の操作体本体41と、操作体本体41の各側片42、42にそれぞれ設けられるアーム43、43と、各アーム43、43の一先端に対向して形成される連結片44a、44bとからなっている。操作体40の後端部を構成する操作体本体41は、
図1に示すように、平面視において荷台2から後方に突出している。連結片44a、44bには車軸17が挿通される円孔45が設けられており、一方(外側)の連結片44aはストッパー30の内側に配される。このように、ロック手段10の主要部を構成するストッパー本体14と操作体40の連結片44a、44bとは、ブラケット8内に配置されることになる。
【0031】
連結片44aの下部には、ストッパー30を上下動させるために、ストッパー30の第1係止凸部34に係合するカム部46が設けられている。連結片44aの上部には、ストッパー30の第2係止凸部34に係止可能な溝47、48が突起49を介して前後に設けられている。第2係止凸部34と溝47とは車輪9のロック時に係合し、ロック解除時には第2係止凸部34と溝48とが係合するように構成されており、かかるロック状態及びロック解除状態は突起49によって良好に維持される。
【0032】
操作体本体41、41は、略棒状の連結杆50により相互に連結されており、
図1に示すように、連結杆50は操作体本体41の上面に複数個穿設した取り付け孔51を利用してネジ止め固定される。台車1の使用者が連結杆50を上下に操作すれば、これに連動してロック手段10が動作を行うことになる。
【0033】
本実施形態に係る台車は以上のような構成からなっており、次にこれを使用する場合について具体的に説明する。
【0034】
台車1は、
図1(a)に示すように、通常その荷台2の上面に被搬送物たる物品(図示せず)を載置した状態で、使用者が手押しハンドル3を把持しつつ前方に押して使用されるのであるが、この状態においては、
図4及び
図5に示すように、操作体40、40に設けられた連結片44aのカム部46とストッパー30の第1係止凸部33とは離間した状態にあるとともに、ストッパー30の第2係止凸部34は連結片44aの溝48と係合しており、ストッパー30のガイド片35はブラケット8の側片11aに形成した角孔13の上方に位置している。この状態でストッパー30の係止片31は、車輪9に接触していないロック解除状態にあるため、台車1を走行させることができる。なお、連結片44aの溝47と溝48との間には突起49が設けられているために、ストッパー30の第2係止凸部34と溝48との係合状態が不用意に解除されるようなことはなく、ロック手段10によるロック解除の状態が良好に維持される。
【0035】
以上に説明したような台車1の走行時において、例えば物品の積み下ろし作業等を行う場合には台車1の走行を停止させる必要がある。この場合は、
図1(b)に示すように、使用者が足で連結杆50を下方に踏み込めば、
図6~
図8のように、操作体40、40が車軸17、17を軸心として下向きに回動することになる。そして、操作体40、40に設けた連結片44aのカム部46によりストッパー30の第1係止凸部33が下向きに押圧されて、車軸17がストッパー30の長孔32内を上向きに移動するとともに、ストッパー30が下降して、その係止片31が車輪9の外周面に圧接され、これにより車輪9がロックされることになる。かかる一連のロック操作において、連結片44aの後方側の溝48と係合していたストッパー30の第2係止凸部34は突起49上を移動して連結片44aの前方側の溝47に係合することになるため、ロック手段10による車輪9のロック状態が確実に維持されるのである。なお、ストッパー30の下降時には、ストッパー30のガイド片35はブラケット8の角孔13によりガイドされるため、ストッパー30の係止片31を車輪9の外周面にスムーズに、かつ確実に圧接させることができる。
【0036】
このような車輪9のロック状態を解除する場合は、次のようにして行う。すなわち、連結杆50を少し引き上げるようにして、操作体40を上向きに回動する。これにより、連結片44aのカム部46とストッパー30の第1係止凸部33との押圧状態が解除されて、この両者が離間するとともに、ストッパー30の係止片31と車輪9との圧接状態が解除されてロック解除の状態となり、台車1を走行することが可能になる。
【0037】
以上で説明したように、ロック手段10の主要部を構成するストッパー本体14と操作体40の連結片44a、44bとをブラケット8の固定片11aの内側に配して、ブラケット8と車輪9との間に介装させるとともに、操作体40の操作体本体41を平面視において荷台2から後方に突出するように構成したために、例えば、台車1の走行面に異物等が存在して、これにキャスター4bが接触してもロック手段10の主要部は衝撃を受けにくく、変形等が発生するようなこともなく、適切に保護されることになる。従って、ロック手段10による車輪9のロック状態及びロック解除状態を良好に維持することが可能になる。
【0038】
しかも、上述したように、ロック手段10による車輪9のロック時及びロック解除時において、ストッパー30の第2係止凸部34は溝47又は溝48のいずれかに一方に係合しているため、ロック手段10によるロック状態及びロック解除状態を適切に維持することができる。
【0039】
また、操作体40、40の操作体本体41、41は連結杆50により相互に連結されているため、連結杆50のみを操作することにより両方の操作体40、40を連動させて操作することが可能になる。これにより、ロック手段10によるロック及びロック解除操作を簡易に、かつ確実に行うことができる。
【0040】
なお、上記実施形態においては、ロック手段10を有する一対のキャスター4b、4bを備えた台車1について説明したが、本発明はこれに決して限定されるものではない。例えば、小型の台車1等にあっては1個のキャスター4bのみで後輪を構成することも可能であり、この場合には上記実施形態のような連結杆50は不要となる。
【0041】
また、ロック手段10であるストッパー30及び操作体40は、必ずしも上記実施形態のように構成する必要はなく、その具体的な構成は適宜変更が可能である。
【0042】
また、上記実施形態における後方の車輪9、9は、荷台2に対して旋回することのできない所謂固定車輪で構成されているが、本発明は決してこれに限定されない。
【0043】
その他、台車1の荷台2の形状等の各部の構成も本発明の意図する範囲内において任意に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0044】
1 台車
2 荷台
8 ブラケット
9 車輪
10 ロック手段
14 ストッパー本体
17 車軸
30 ストッパー
32 長孔
33 第1係止凸部
34 第2係止凸部
31 係止片
40 操作体
41 操作体本体
43 アーム
44 連結片
45 孔
46 カム部
47 溝
48 溝
49 突起
50 連結杆