IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワンワールドの特許一覧 ▶ 伊藤 智章の特許一覧 ▶ 株式会社ネイスの特許一覧

特開2022-133912産業廃棄物の有用化処理装置及びその処理方法
<>
  • 特開-産業廃棄物の有用化処理装置及びその処理方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133912
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】産業廃棄物の有用化処理装置及びその処理方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/00 20060101AFI20220907BHJP
   B62D 55/32 20060101ALI20220907BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20220907BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20220907BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
B62D55/32
C08J11/12
B09B3/00 302B
B09B5/00 D
B09B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032862
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】509172402
【氏名又は名称】株式会社ワンワールド
(71)【出願人】
【識別番号】512049971
【氏名又は名称】伊藤 智章
(71)【出願人】
【識別番号】520415258
【氏名又は名称】株式会社ネイス
(74)【代理人】
【識別番号】100101708
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 信宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智章
【テーマコード(参考)】
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
4D004AA11
4D004AB03
4D004BA03
4D004CA12
4D004CA25
4D004CA26
4D004CB04
4D004CB31
4D004CB34
4D004CC01
4D004DA02
4D004DA06
4F401AA03
4F401AC02
4F401BA02
4F401BA05
4F401BA10
4F401CA31
4F401CA48
4F401CA70
4F401CB01
4F401CB10
4F401CB15
4F401DA13
4F401DA16
4F401EA47
4F401FA01Y
(57)【要約】
【課題】産業廃棄物のうち、特に廃タイヤ又は廃ゴムクローラを効率よく有用化処理することができる処理装置及び処理方法に関する。
【解決手段】処理炉内に廃タイヤ又は廃ゴムクローラを投入し、過熱水蒸気発生手段により前記炉内へ過熱水蒸気を供給して所定温度まで雰囲気温度を高め、加熱手段により該処理炉内の所定温度を維持制御し、前記廃タイヤ又は廃ゴムクローラを構成する樹脂素材を炭化させ、該廃タイヤ又は廃ゴムクローラに含まれる金属部品を取り出す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理炉内に廃タイヤ又は廃ゴムクローラを投入し、
過熱水蒸気発生手段により前記炉内へ過熱水蒸気を供給して所定温度まで雰囲気温度を高め、
加熱手段により該処理炉内の所定温度を維持制御し、
前記廃タイヤ又は廃ゴムクローラを構成する樹脂素材を炭化させ、
該廃タイヤ又は廃ゴムクローラに含まれる金属部品を取り出す
廃棄物の有用化処理装置。
【請求項2】
処理炉内に廃タイヤ又は廃ゴムクローラを投入した後、
過熱水蒸気発生手段により前記処理炉内へ過熱水蒸気を供給して所定温度まで雰囲気温度を高め、その後、
加熱手段により該処理炉内の所定温度を維持制御することで、
前記廃タイヤ又は廃ゴムクローラを構成する樹脂素材を炭化させ、
該廃タイヤ又は廃ゴムクローラに含まれる金属部品を取り出す
廃棄物の有用化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃棄物を有用化処理する装置及びその処理方法に関し、特に廃タイヤ、廃ゴムクローラを処理する場合に適した処理装置及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般社団法人日本自動車タイヤ協会によると、2019年の廃タイヤ発生量102万6000トンに対し、リサイクル利用量は96万6000トンと、前年より3万1000トン減少した。一方、廃タイヤの不法投棄量は、3万6858トン(2010年)、3万2535トン(2015年)、2万6991トン(2020年)と減少傾向ではあるものの、依然として高い水準にある。
出典:「2019年廃タイヤ(使用済タイヤ)リサイクル状況」2020年4月24日
https://www.jatma.or.jp/environment/pdf/recycle_report2020.pdf
【0003】
一方、建設機械などに装着される環状のゴムクローラ(芯金と補強帯をエンドレスにゴムで包んだ走行用履帯)は、一般的に1500時間+αの耐久時間があると言われるものの、リースやレンタル機に至っては特に使用環境が厳しく、耐久性は短い。そして、使用中に切れたら履き替えるケースがほとんどであり、履き替えられたゴムクローラは再利用できない廃ゴムクローラとなる。
廃ゴムクローラは、重量比で約40%がゴム、残り約60%が鉄鋼で構成され、再利用可能な貴重な資源であるにも拘らず、リサイクルが進んでいない。「国内に存在する廃ゴムクローラは、推定20万トン弱で、年間の排出量は約2万5千トンと推定される。この内、鉄源リサイクルが出来ていると確認出来ているのは、わずか8%の2,000トンである。また、処理費用の高さや中間処理の困難さから、自社内で積み置きしている量が年間5,400トン、最終処分されている量も6,600トン余りもあり、今後、最終処分量の増加による地球環境への負荷が大きくなる事が予想される。」(「平成15年度廃ゴムクロータの広域リサイクルシステム報告書/平成16年3月 遮断法人日本建設機械工業会より)
【0004】
以上、廃タイヤ及び廃ゴムクローラが抱える問題は甚大である。
そこで、廃ゴムクローラの処理方法として、廃ゴムクローラを切断し、破砕して金属部とゴム部とを分離する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-99179号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の方法は、切断装置、冷凍装置、圧縮装置又は打撃装置、分離装置とからなり、切断したゴムクローラを冷凍し、金型に圧縮したり打撃したりして破砕し、金属部とゴム部とに分離するといった工程をたどるため、設備面や処理効率の点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みて、廃タイヤと廃ゴムクローラという産業廃棄物を炭化、油化そして金属部品への分離化を効率的に進めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成した。すなわち、請求項1に記載の廃棄物の有用化処理装置は、処理炉内に廃タイヤ又は廃ゴムクローラを投入し、過熱水蒸気発生手段により前記炉内へ過熱水蒸気を供給して所定温度まで雰囲気温度を高め、加熱手段により該処理炉内の所定温度を維持制御し、前記廃タイヤ又は廃ゴムクローラを構成する樹脂素材を炭化させ、該廃タイヤ又は廃ゴムクローラに含まれる金属部品を取り出すことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の廃棄物の有用化処理方法は、処理炉内に廃タイヤ又は廃ゴムクローラを投入した後、過熱水蒸気発生手段により前記炉内へ過熱水蒸気を供給して所定温度まで雰囲気温度を高め、その後、加熱手段により該処理炉内の所定温度を維持制御することで、前記廃タイヤ又は廃ゴムクローラを構成する樹脂素材を炭化させ、該廃タイヤ又は廃ゴムクローラに含まれる金属部品を取り出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る廃棄物の有用化処理装置そしてその処理方法によれば、過熱水蒸気発生手段により発生させた過熱水蒸気により所定温度まで雰囲気温度を高め、加熱手段により該処理炉内の所定温度を維持制御することで処理炉内雰囲気に晒した廃タイヤ又は廃ゴムクローラの樹脂素材が炭化し、一部を油化され、さらには廃タイヤ又は廃ゴムクローラに含まれる金属部品を効率良く取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の有用化処理装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づき説明する。
【0013】
図1に、本発明の有用化処理装置の構成を示す。本発明は、処理炉1、処理炉へ過熱水蒸気を供給する過熱水蒸気供給手段2、処理炉を別途加熱する加熱手段3、気化した油分を冷却する冷却装置、冷却した油水を分離する油水分離装置5、分離した油分を溜める油槽6から構成される。
【0014】
上記構成を実現させるために必要な構造、構成は当然に備えているものとする。
【0015】
Wは、廃タイヤ又は廃ゴムクローラを示し、特に言及しない場合は処理前の廃タイヤ又は廃ゴムクローラを指す。
【0016】
処理炉1内に廃タイヤ又は廃ゴムクローラを投入し、これを密閉する。そして、過熱水蒸気供給装置2により所定温度に調整された過熱水蒸気を、過熱水蒸気供給管(図示せず)を介して該処理炉1内へ供給する。
さらに、加熱手段3により該処理炉1を適宜加熱し、所定の設定温度を維持する。本実施の形態においては、前記処理炉1を内窯(図示せず)とし、該内窯の外側に外窯(図示せず)を設け、該外窯から加熱手段3による加熱処理を行う構成とするが、これに限られない。
【0017】
供給する過熱水蒸気の温度は150℃~540℃の範囲内とし、処理時間は180分を上限に所定の回数を繰り返し、適宜、加熱手段3により所定温度に維持し、調整する。
【0018】
過熱水蒸気の温度及び処理時間、処理対象物の種類や体積、状態に応じて決められるものとし、上記条件に限定されるものではない。
【0019】
上記処理過程で気化した熱分解油を、気化物排出管(図示せず)を介して収集し、脱塩素処理(図示せず)した後、冷却装置4で液化処理し、油水分解装置5へ送り出す。油水分割装置5は、流入してきた液化物を油水分離し、油分(A重油や軽油など)を油槽6へ送り出す。油槽6は、流入してきた油分を貯留する。
【0020】
<実験例1>
処理対象物:廃タイヤ・450kg
使用燃料:A重油
過熱水蒸気供給処理:
・第1クール;500℃/120分
・第2クール;500℃/150分
・第3クール;530℃/180分
・第4クール;150℃/60分
上記処理の結果、廃タイヤ・450kgから、ワイヤー111kg、炭化物133kg、油180リットルが得られた。
【0021】
<実験例2>
処理対象物:廃ゴムクローラ・1,410kg
使用燃料:A重油
過熱水蒸気供給処理:
・第1クール;500℃/120分
・第2クール;500℃/150分
・第3クール;540℃/180分
・第4クール;150℃/60分
上記処理の結果、廃ゴムクローラ・1,410kgから、金属(鉄)535kg、ワイヤー43kg、炭化物152kg、油170リットルが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、上述した廃タイヤ又は廃ゴムクローラに限定されず、いわゆる産業廃棄物全般に応用して利用され、資源回収に資するものである。
【符号の説明】
【0023】
1 処理炉
2 過熱水蒸気供給手段
3 過熱手段
4 冷却装置
5 油水分離装置
6 油槽
W 廃タイヤ又は廃ゴムクローラ
図1