(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133934
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】アシストドア
(51)【国際特許分類】
E05F 15/60 20150101AFI20220907BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
E05F15/60
E06B3/46
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032896
(22)【出願日】2021-03-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】御手洗 佳枝
(72)【発明者】
【氏名】川島 歩
【テーマコード(参考)】
2E014
2E052
【Fターム(参考)】
2E014AA02
2E014FA00
2E014FB05
2E014FB11
2E014FC00
2E052AA02
2E052BA01
2E052CA07
2E052DA01
2E052DB01
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052GD05
2E052KA13
2E052KA15
2E052KA16
(57)【要約】
【課題】扉枠10の鴨居13に扉35を吊り下げて移動させる吊戸レール23が固定され、吊戸レール23内に扉35の移動をアシストするリニアモータ装置40が収容された引戸タイプのアシストドアAにおいて、扉枠10が壁部の開口内に施工されるインセット構造であっても、リニアモータ装置40に接続される配線45を扉枠10の外側に露出することなく配置できるようにして、アシストドアAの外観見映えの向上や施工の容易化を図る。
【解決手段】鴨居13の戸先側端部は戸先側の縦枠11に突き合わされて連結されている。この鴨居13の戸先側端部に切欠部13aが形成され、その切欠部13aの開口が戸先側縦枠11により閉塞されている。この切欠部13aの閉塞構造により、扉枠10に、リニアモータ装置40に接続される配線45を扉枠10外に引き出すための配線挿通孔14が扉枠10をその内外方向に貫通して設けられている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠と、該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉とを備え、扉のスライド移動がアシストされるアシストドアであって、
上記扉枠が壁部の開口内に施工されたインセット構造であり、
上記上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ、該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車と、該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置とが設けられており、
上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられていることを特徴とするアシストドア。
【請求項2】
請求項1のアシストドアにおいて、
上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、
配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものであることを特徴とするアシストドア。
【請求項3】
請求項1又は2のアシストドアにおいて、
配線挿通孔には、少なくともアシスト装置に接続される電源配線が挿通されていることを特徴とするアシストドア。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つのアシストドアにおいて、
アシスト装置は、吊戸レールに固定された固定子と、該固定子によって駆動され、吊車に移動一体に連結された可動子と、該可動子の動作を固定子により制御して扉のスライド移動時のアシスト力をコントロールするコントローラとを備えたリニアモータ装置であることを特徴とするアシストドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉枠内に吊り下げられてスライド移動する扉を備え、その扉の移動をアシストするようにしたアシストドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアシストドアとして、例えば特許文献1に示されるように、扉の上側に吊戸レールが設けられ、その吊戸レール内に扉を吊り下げて移動する吊車が移動可能に収容され、吊車の移動により扉がスライド移動する上吊り式の引戸において、吊車を吊戸レール内のリニアモータ装置によって駆動して、扉の移動をアシストするようにしたものは知られている。
【0003】
また、特許文献2に示される自動ドアでは、上枠のレール部に支持されて動く戸車により戸本体が吊り下げられ、上枠内には駆動及び従動プーリと、両プーリに巻き掛けられ、両端部が戸本体の戸幅方向両端部に連結された有端の駆動ベルトと、駆動プーリを駆動する電動モータとが設けられ、電動モータにより駆動プーリを駆動して駆動及び従動プーリ間で駆動ベルトを走行させ、戸本体を移動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6418565号公報
【特許文献2】特許第5147005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上吊り式の引戸では、上記のように、左右の縦枠と上枠とを備えた三方枠の扉枠を備えており、上枠の下面に吊戸レールが固定され、その吊戸レールに吊車を介して扉が吊り下げられている。吊車は通常は2つで扉の左右端部(扉幅方向の端部)に固定されている。
【0006】
上記特許文献1のアシストドアのように、吊戸レール内に吊車だけでなく、その吊車を駆動するリニアモータ装置等の電動アシスト装置が収容されていると、アシスト装置に接続される電源用やセンサ用等の配線を扉枠の外側に引き出してそれぞれ壁部内の電源装置や壁部外側のセンサに接続する必要がある。
【0007】
扉枠が壁部の開口外にあるアウトセット構造では、吊戸レールから引き出された配線を例えば壁部との間を通して扉枠の外側に延ばすことができる。そうすれば、配線は縦枠の陰に隠れるので、外部から目立ち難くなる。これに対し、扉枠が壁部の開口内に施工されたインセット構造では、扉枠の外側に柱や壁部があるので、アウトセット構造のように、吊戸レールから引き出された配線を扉枠によって隠蔽することができず、外観見映えや施工の点で問題が生じる。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アシストドアの構造の改良により、インセット構造であっても、電動型のアシスト装置に接続される配線を扉枠の外側に露出することなく配置できるようにして、外観見映えの向上や施工の容易化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、インセット構造の扉枠に対し、その扉枠そのものにアシスト装置の接続配線を挿通するための配線挿通孔を貫通して形成するようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠と、該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉とを備え、扉のスライド移動がアシストされるアシストドアが対象である。
【0011】
このアシストドアは、上記扉枠が壁部の開口内に施工されたインセット構造であり、この上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ、該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車と、該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置とが設けられている。そして、上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられていることを特徴とする。
【0012】
この第1の発明では、アシストドアは、その扉枠が壁部の開口内に施工されたインセット構造であり、扉枠の上枠下面に取り付けられた吊戸レール内で吊車が移動し、この吊車に吊り下げられた扉がスライド移動して扉枠内の開口部が開閉され、その扉のスライド移動が吊戸レール内の電動型のアシスト装置によってアシストされる。
【0013】
そして、扉枠に配線挿通孔が扉枠をその内外方向に貫通して設けられているので、上記アシスト装置に接続される配線は、吊戸レールから配線挿通孔に挿通されて扉枠の外側に引き出される。そのため、吊戸レールから引き出された配線を扉枠によって隠蔽することができ、施工後に配線が露出することによってアシストドアの外観見映えが悪化することはない。また、露出を避けるために配線を長くして取り回す必要もなく、配線挿通孔に配線を挿通させるだけで済み、配線の施工を容易に行うことができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明のアシストドアにおいて、上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、上記配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものであることを特徴としている。
【0015】
この第2の発明では、扉枠における上枠の戸先側端部に切欠部が形成され、この切欠部の開口が、上枠の戸先側端部が突き合わされる戸先側の縦枠により閉塞されて、貫通孔状の配線挿通孔が形成される。
【0016】
このように上枠の戸先側端部が縦枠に突き合わされる縦枠勝ちの扉枠において、その上枠の戸先側端部に切欠部を形成するだけで、上枠を縦枠に連結する施工に伴って自動的に貫通孔状の配線挿通孔が形成される。そのため、上枠や縦枠の中間部に配線挿通孔を孔開け加工する場合に比べて、配線挿通孔の位置決めや加工が容易になり、配線挿通孔を容易に形成することができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明のアシストドアにおいて、配線挿通孔には、少なくともアシスト装置に接続される電源配線が挿通されていることを特徴とする。このことで、アシスト装置に電力を供給する電源配線を外枠外に引き出すための配線挿通孔を外枠に容易に形成して、電源配線を隠すことができ、見映えの向上を図ることができる。
【0018】
第4の発明は、第1~第3の発明のアシストドアのいずれか1つにおいて、アシスト装置は、吊戸レールに固定された固定子と、該固定子によって駆動され、吊車に移動一体に連結された可動子と、該可動子の動作を固定子により制御して扉のスライド移動時のアシスト力をコントロールするコントローラとを備えたリニアモータ装置であることを特徴とする。
【0019】
この第4の発明では、閉じ位置にある扉が開かれ、或いは開き位置にある扉が閉じられると、アシスト装置としてのリニアモータ装置が作動し、そのコントローラによる固定子に対する制御により可動子の移動がコントロールされ、それに伴い、可動子に移動一体に連結されている吊車及び扉の移動もコントロールされる。このことで扉のスライド移動がアシストされる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によると、縦枠及び上枠を備えた扉枠が壁部の開口内にインセット構造で施工され、上枠の吊戸レールに扉がスライド移動可能に吊り下げられ、そのスライド移動がアシストされる上吊り式の引戸からなるアシストドアにおいて、扉枠に、アシスト装置に接続される配線を扉枠外側に引き出すための配線挿通孔が扉枠を内外方向に貫通して設けられているので、吊戸レール内のアシスト装置から引き出された配線が扉枠内を通って隠蔽され、この配線の隠蔽によってアシストドアの外観見映えの向上を図ることができるとともに、露出を避けるために長い配線を取り回す必要もなく、配線の施工を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るアシストドアの全体構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、アシストドアの全体構成を拡大して示す水平断面図である。
【
図3】
図3は、アシストドアの全体構成を拡大して示す垂直断面図である。
【
図4】
図4は、アシストドアの全体構成を分解して示す斜視図である。
【
図5】
図5は、方立を含めた扉枠の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、鴨居を下側から見て示す平面図である。
【
図7】
図7は、吊戸レールを鴨居下面に取り付ける状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、扉の取付凹部に吊戸レールの吊車を取り付ける状態を拡大して示す斜視図である。
【
図9】
図9は、左右の吊車がリニアモータ装置の可動子によって移動一体に連結された状態を示す正面図である。
【
図10】
図10は、吊戸レールを鴨居から取り外した状態で吊戸レール内のリニアモータ装置に対する電源配線の接続構造を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、吊戸レール内のリニアモータ装置に対する電源配線の接続構造を示す正面図である。
【
図12】
図12は、鴨居端部の切欠き部と縦枠とにより形成される配線挿通孔を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、鴨居端部の切欠き部と縦枠との間の配線挿通孔からまぐさに配線用ドリル孔を形成する状態を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、鴨居端部の切欠き部と縦枠との間の配線挿通孔、及びまぐさに形成された電源配線用ドリル孔を示す平面図である。
【
図16】
図16は、戸先側縦枠の扉収容溝と吊戸レールとの配置関係を拡大して示す水平断面図である。
【
図17】
図17は、戸先側吊車が扉の戸先側端面から所定距離ずれた内側位置に取り付けられている状態を拡大して示す断面図である。
【
図18】
図18は、扉の戸先側端面の取付凹部に取り付けられた戸先側吊車の固定部と扉の戸先側端面との間の空間部にキャップ部材を充填する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0023】
図1~
図3は本発明の実施形態に係るアシストドアAの全体構成を示す。このアシストドアAは、建物における壁部の開口内に施工されたインセット構造の片引き戸からなる。具体的には、
図7や
図10にも示すように、例えば建物の壁部に、左右の柱1,1と、両柱1,1の高さ方向中間部間に架設された横架材としてのまぐさ2と、床部3とで囲まれた開口4が形成され、この開口4にアシストドアAの扉枠10がインセット構造で施工されている。尚、説明においては、壁部の一方側を「前」側として、また他方側を「後」側としてそれぞれ説明し、左右は前側から後側を見たときの「左右」側として説明する。また、それら前後の方向を図中にも記載している。
【0024】
図4及び
図5にも示すように、上記扉枠10は、左側の縦枠11と、右側の控壁縦枠12と、両縦枠11,12の上部間に連結された上枠としての鴨居13とを有する三方枠からなり、左側の縦枠11は扉枠10外側にある左側の柱1に、また右側の控壁縦枠12は同様に扉枠10外側にある右側の柱1にそれぞれ固定され、鴨居13はまぐさ2の下面に固定されている。
図5に示すように、鴨居13の左右端部は左右の縦枠11,12の対向側面に突き合わされてビスV,V,…により連結されており、扉枠10は縦枠勝ちの構造となっている。また、鴨居13の左右長さ方向の略中央部後側には方立15の上端部がビスVにより連結固定され、この方立15の下端部は床部3に固定されている。
【0025】
右側の控壁縦枠12は戸尻側縦枠である。一方、左側の縦枠11は戸先側縦枠であり、前後幅が右側の控壁縦枠12よりも大きい広幅の厚肉板材からなり、その前端面は控壁縦枠12の前端面と同じ前後位置にあるが、後端部は控壁縦枠12よりも後側に突出している。
【0026】
図6は鴨居13を下側から見た状態を示し、左側部が右側部よりも後側に突出していて、左側部の前後幅が右側部よりも大きく、右側部左端の後面に方立切欠き13bが形成され、この方立切欠き13bに上記方立15の上端部が嵌合されて固定されている。
【0027】
そして、
図2に示すように、方立15と右側の控壁縦枠12の後部との間に控壁5が施工され、この控壁5により方立15及び控壁縦枠12の間の開口部(空間)が閉塞されている。このことで、扉枠10内に縦枠11、方立15、鴨居13及び床部3で囲まれる開口部が形成され、この開口部が後述する扉35によって開閉される。尚、控壁5の前側壁パネル5aは、方立15の右側面前部と控壁縦枠12の左側面後部との間に固定され、後側壁パネル5bは、方立15の右側面後部から控壁縦枠12右側の柱1を超えて右側に延びている。
【0028】
再び
図6に示すように、上記鴨居13の下面(左側部では前側部分)には、鴨居13の長さ方向の全体に亘り断面矩形状のレール取付溝17が形成され、その前側には幕板取付溝18が、また後側には左側部のみに幕板取付溝19がそれぞれレール取付溝17と平行に形成され、これら幕板取付溝18,19にそれぞれ幕板20,21(
図3及び
図4参照)が上端部を嵌合して取付固定されている。
【0029】
図3、
図4及び
図7に示すように、上記レール取付溝17には、その全体に亘って延びる吊戸レール23が嵌合されてビスV,V,…(
図7参照)により取付固定されている。この吊戸レール23は、下側に開放された断面略コ字状の角形レールからなり、開放された両下端部は互いに近づくように内側に折り曲げられて、その折曲げ部分の上面がレール面となっている。吊戸レール23内は上下の空間に区画されている。吊戸レール23には、戸先側及び戸尻側の左右2つの吊車25,26(
図7及び
図10参照)が移動可能に支持されている。
【0030】
上記左右の吊車25,26は互いに同じもので、吊戸レール23内の下側空間に位置する基部27と、その基部27の左右両側部に前後方向(吊戸レール23の幅方向)の軸心回りに回転可能に支持された前後4つのローラ28,28,…とを有し、これらの基部27とロ-ラ28,28,…とで吊戸レール23内の下側空間を移動する移動部29が構成されている。そして、4つのローラ28,28,…が吊戸レール23下端部の上記レール面上を転動することにより、吊車25,26が吊戸レール23内で移動するようになっている。
【0031】
各吊車25,26の基部27には固定部31が、上下方向に延びる1本の棒状の連結部30を介して基部27から垂下するように連結されている。連結部30の上端部は基部27において左右ローラ28,28間の位置に連結され、下端部は吊戸レール23外でその下側まで延びている。固定部31は、後述する扉35の取付凹部36に嵌合されて取り付けられる略矩形箱形状のもので、その上端部において左右端よりも内側(吊戸レール23の左右長さ方向中央側)寄りの位置に上記連結部30の下端が連結されている。固定部31の外面(吊戸レール23の左右長さ方向両端側の面)は、全体として平面状に形成されている。
【0032】
図1~
図4に示すように、扉枠10内には、該扉枠10内の開口部を開閉する1枚の板状の扉35が配置されている。この扉35は、鴨居13(上枠)に吊り下げられて左右方向にスライド移動する上吊り引戸であり、扉35が左側に移動したときに扉枠10内の開口部が閉じられる。そのため、扉35の左側が戸先側に、また右側が戸尻側になる。
図3及び
図8に拡大して示すように、扉35の左右端面つまり戸先側及び戸尻側端面の上端部には取付凹部36が形成されている。この各取付凹部36は、扉35の左右端面の上端部を左右方向(扉幅方向)が深さになるように断面略矩形状に孔開けしたもので、取付凹部36は扉35の上面にも開口している。つまり取付凹部36は、扉35の左右上端角部の扉厚さ方向の一部を切り欠いた構造であり、扉35の左右端面及び上面に開口している。そして、この各取付凹部36に上記吊車25,26の固定部31が扉35の左右端面側から嵌合されて図外のロック構造により取付固定されており、吊車25,26の連結部30及び移動部29は取付凹部36の上側開口(扉35の上端面)から扉35の上側に突出している。すなわち、上記吊車25,26は、扉35の左右端部の取付凹部36,36に取り付けられる従来の一般的なものが用いられている。そして、この状態で、吊戸レール23内での吊車25,26の移動により扉35が左右方向にスライド移動し、
図2に実線にて示すように、扉35が左側に移動したときに、その扉35は控壁5と前後に重ならない状態になって、扉枠10内の開口部を閉じる一方、仮想線にて示すように、右側に移動したときに、扉35は控壁5と前後に重なって、開口部を開くようになっている。図中、38,38は扉35の戸先側端部(左端部)の前後面に取り付けられたハンドルである。
【0033】
尚、床部3には、方立15の前側位置に床付けガイドピン7が固定されている(
図1、
図3及び
図4参照)。
図3に示すように、扉35の下面には左右方向(扉幅方向)に延びるガイド溝35aが形成されており、このガイド溝35aに床付けガイドピン7を嵌合させることで、扉35の下部が床部3に前後方向に振れ止めされた状態で左右方向にスライド移動可能に支持されている。
【0034】
図3、
図4、
図7、
図10及び
図11に示すように、上記吊戸レール23内には、吊車25,26を駆動して扉35のスライド移動をアシストするアシスト装置としてのリニアモータ装置40(リニアエンジン)が収容されている。このリニアモータ装置40は、吊戸レール23に固定された固定子41と、この固定子41によって駆動され、吊車25,26に移動一体に連結された可動子42と、この可動子42の動作を固定子41により制御して扉35のスライド移動時のアシスト力をコントロールするコントローラ43とを備えている。具体的には、
図9及び
図10に示すように、可動子42は、吊戸レール23の長さ方向に延びかつ扉35の左右幅と同程度の長さを有する板状の永久磁石の集合体からなるもので、吊戸レール23の下側の空間に配置されている。可動子42の両端部に上記左右の両吊車25,26の基部27,27が移動一体に連結されている。よって、可動子42、左右の吊車25,26及び扉35は吊戸レール23に沿って一体的に移動する。
【0035】
上記固定子41及びコントローラ43は、吊戸レール23の上側の空間に収容されて固定されている。固定子41は、界磁コイルを有する電磁石からなり、その左右長さは吊戸レール23の長さよりも短い。この固定子41は、吊戸レール23の左右中央部に配置されて固定されており、扉35が開閉方向のどの位置にあっても固定子41が可動子42の少なくとも一部と上下方向に重なって可動子42との間に磁界が形成される。コントローラ43は、固定子41よりも左側(戸先側縦枠1側)に配置されており、コントローラ43は固定子41に電気的に接続されているだけでなく、電源配線45により後述する電源ボックス46と接続されている。そして、コントローラ43によって固定子41の可動子42に対する磁界の作用を制御し、扉35が閉じ位置から開き操作されたときには、その操作や移動距離の検出により固定子41が可動子42を介して扉35に開き方向のアシスト力(推力)を加えて扉35の開き動作をアシストし、扉35が開き位置に近付くにつれてアシスト力を低下させる一方、逆に扉35が開き位置から閉じ操作されたときには、同様にして閉じ操作や移動距離の検出により固定子41が可動子42を介して扉35に閉じ方向のアシスト力を加えて扉35の閉じ動作をアシストし、扉35が閉じ位置に近付くにつれてアシスト力を低下させるようになっている。扉35の移動距離(移動行程)に対しアシスト力の大きさが変化する特性は、例えば扉35の移動開始から所定距離に達するまではアシスト力が次第に増大し、所定距離に達すると、アシスト力が一定値に保たれ、扉35の移動停止の位置から所定距離手前側の位置に達すると、アシスト力が一定値から次第に低下するものとなっている。
【0036】
尚、上記リニアモータ装置40の構成や作動は公知のものである。また、吊車25,26、リニアモータ装置40の可動子42、固定子41及びコントローラ43は吊戸レール23にその端部から挿入されて収容される。
【0037】
図6、
図12~
図14に示すように、扉枠10における鴨居13の左端部には、その前後幅方向の中間部を矩形状に切り欠いた切欠部13aが形成されている。この鴨居13の左端部を左側の戸先側縦枠11に突き合わせて連結した状態で切欠部13aの開口が縦枠11内面によって閉じられて、扉枠10を内外方向に貫通する貫通状の配線挿通孔14が形成されている。そして、この配線挿通孔14に上記リニアモータ装置40の電源配線45が挿通され、その電源配線45は扉枠10外に引き出されるようになっている。また、配線挿通孔14の上側でまぐさ2上部の壁内には、予め電源ボックス46が埋め込まれている(図では説明のために実線で表している)。そして、
図13に示すように、施工時には電源配線45をまぐさ2を通して電源ボックス46に接続するために、まぐさ2に対し下側から配線挿通孔14を通してドリルDにより配線用ドリル孔2aの孔開け加工が行われる。
【0038】
図2及び
図15に示すように、上記左側の戸先側縦枠10の右側面(控壁縦枠12と対向する面)には、扉35が閉じ位置にあるときにその戸先側端部を収容する扉収容溝48が形成され、この扉収容溝48は縦枠の高さ方向全体に亘って延びている。扉収容溝48の溝幅W1は扉35の前後厚さよりも大きく、閉じ位置にある扉35の左端部(戸先側端部)を扉収容溝48内に収容して、扉35の戸先側端部と縦枠11との間の隙間の発生をなくし、その隙間による光や空気の漏れを遮断するようにしている。尚、扉収容溝48の上端部には、鴨居13と略同じ厚さのスペーサ49(
図12参照)が嵌合され、このスペーサ49により扉収容溝48の上端が閉じられている。
【0039】
上記吊戸レール23は、内部にリニアモータ装置40が収容されているので、リニアモータ装置40が収容されていない通常のものよりも大きくなっている。そのため、
図16に示すように、吊戸レール23の前後方向のレール幅W2は上記縦枠11における扉収容溝48の溝幅W1よりも広くなっている(W2>W1)。そして、吊戸レール23の左端部は縦枠11の内面に当接している(又は近接していてもよい)。
【0040】
さらに、
図17に示すように、上記左側の戸先側吊車25は、扉35の閉じ位置でその戸先側端部が上記左側縦枠11の扉収容溝48に収容されたときに、同吊車25が吊戸レール23の左端部から脱落しないように扉35の戸先側端面から扉幅方向の内側に所定のずれ距離L(例えばL=3mm)だけずれた内側位置に取り付けられている。
【0041】
具体的には、扉35の左右端面にある戸先側及び戸尻側の取付凹部36,36に吊車25,26の固定部31が嵌合されて取り付けられるとき、その固定部31の平面状の外面が扉35の左右端面に面一ないし略面一になるのが通常の基準取付位置である。これに対し、本実施形態では、扉35左側の戸先側の取付凹部36のみの左右方向の深さd(扉35の左端面からの深さ)が、左側の吊車25の固定部31の左右方向の厚さtよりも大きく(d>t)なっており、このことで、固定部31の取付位置が基準取付位置よりも内側(戸尻側、右側)に意図的かつ積極的にずらされている。そのため、吊車25の固定部31は取付凹部36内に扉35の戸先側端面との間に空間部51が形成された状態で嵌合されて固定され、吊車25は扉35の戸先側端面から扉幅方向(左右方向)の内側に所定のずれ距離Lだけずれた内側位置に位置している。そして、
図18に示すように、上記取付凹部36において吊車25の固定部31と戸先側端面との間に形成されている上記空間部51にキャップ部材52が充填され、このキャップ部材52の外面は扉35の戸先側端面と面一になっている。上記戸先側吊車25のずれ距離Lの最大値は、縦枠11の扉収容溝48の深さとするのが好ましく、例えば6mmが好ましい。尚、右側の戸尻側吊車26にあっては、上記通常の基準取付位置に取り付けられている。
【0042】
したがって、上記実施形態のアシストドアAにおいては、扉35が移動範囲左端の閉じ位置にあるときに、使用者によって扉35が閉じ位置から右側に開き操作されると、リニアモータ装置40のコントローラ43によって固定子41が可動子42を駆動し、その駆動により可動子42及び吊車25,26を介して扉35に開き方向のアシスト力が加えられて扉35の開き動作がアシストされる。扉35が移動範囲右端の開き位置に近付くにつれてアシスト力が低下して、開き位置ではアシストが終了する。逆に、扉35が移動範囲右端の開き位置にあるときに、使用者によって扉35が開き位置から左側に閉じ操作されると、同様にしてリニアモータ装置40により、扉35に閉じ方向のアシスト力が加えられて扉35の閉じ動作がアシストされ、扉35が閉じ位置に近付くにつれてアシスト力が低下し、閉じ位置でアシストが終了する。
【0043】
上記扉35の閉じ位置では、扉35の左端部(戸先側端部)が縦枠11の右側面の扉収容溝48内に収容される。このことで、扉35の戸先側端部と縦枠11との間に隙間が生じなくなり、その隙間による光や空気の漏れを遮断することができる。
【0044】
そして、扉35を吊車25,26によってスライド移動可能に吊下げ支持している吊戸レール23は、その内部に吊車25,26の移動部29,29だけでなく、扉35の移動のアシストのためにリニアモータ装置40が収容されて前後のレール幅W2が大きくなっており、この吊戸レール23の左端部は縦枠11の上記扉収容溝48内に配置されておらず、扉収容溝48外に位置して縦枠11の左側面に当接(又は近接)している。そのため、吊戸レール23の左端部の収容配置のために扉収容溝48の溝幅W1を拡げる必要はなく、その分、縦枠11の前後幅(奥行)も大きくせずに済み、この縦枠11の前後幅の小幅化によって扉枠10の大型化や外観見映えの低下を避けることができる。
【0045】
このように、吊戸レール23の端部が縦枠11の扉収容溝48の外側に配置される構造においては、扉35の閉じ位置で戸先側端部が扉収容溝48内に収容されたときに、その戸先側端部は吊戸レール23よりも突出することになり、通常の構造では戸先側吊車25が吊戸レール23の左端部から脱落する虞れがある。
【0046】
しかし、本実施形態においては、扉35の戸先側端面に形成されて戸先側の吊車25の固定部31が嵌合して取り付けられる戸先側の取付凹部36の深さdが吊車25の固定部31の左右方向の厚さtよりも大きくなっており、吊車25の固定部31が取付凹部36に戸先側端面との間に空間部51が形成された状態で嵌合されて固定されている。このような固定構造により、吊車25は扉35の左端面(戸先側端面)から所定のずれ距離Lだけ離れた右側の内側位置にずれて取り付けられることになる。そのため、扉35の戸先側端部が扉収容溝48に収容された状態であっても、上記吊車25が縦枠11の扉収容溝48の外側にある吊戸レール23の左端部から脱落することはない。このことによって、アシストドアAの作動信頼性を確保することができる。
【0047】
以上のことから、扉枠10が壁部の開口内に施工されたインセット構造のアシストドアAにおいて、縦枠11の前後幅(奥行)の増大防止と、扉35の戸先側端部の扉収容溝48への収容状態での吊車25の脱落防止とを併せ図ることができることとなる。
【0048】
また、扉35の戸先側の取付凹部36において、吊車25の固定部31と戸先側端面との間に形成される空間部51が露出したままにしておくと、固定部31のずれによる段差が見えて違和感が生じる。しかし、この空間部51にキャップ部材52が充填されているので、違和感が生じるのを防ぐことができ、見映えを良くすることができる。
【0049】
また、扉枠10が壁部の開口内に施工されたインセット構造のアシストドアAにおいて、鴨居13下部に吊戸レール23が固定され、その吊戸レール23内にアシスト装置としてのリニアモータ装置40が収容されている場合、そのリニアモータ装置40に接続される電源配線45を扉枠10外に引き出して電源ボックス46(電源)に接続する必要がある。仮に、その電源配線45がアシストドアAの外側に露出していると、外観の見映えが著しく低下するのは避けられない。
【0050】
本実施形態では、鴨居13の左端部に切欠部13aが形成され、鴨居13の左端部が左側の縦枠11に突き合わされて連結された状態で、切欠部13aの開口が縦枠11によって閉じられて扉枠10における貫通孔からなる配線挿通孔14となり、この配線挿通孔14に上記リニアモータ装置40の電源配線45が挿通されている。このことで、インセット構造のアシストドアAであっても、リニアモータ装置40の電源配線45を扉枠10外にその外部露出を招くことなく引き出すことができ、インセット構造のアシストドアAの外観の見映えを向上させることができる。また、露出を避けるために電源配線45を長くしてそれを取り回す必要もなく、配線挿通孔14に電源配線45を挿通させるだけで済み、電源配線45の施工を容易に行うことができる。
【0051】
また、鴨居13の戸先側端部が戸先側縦枠11に突き合わされる縦枠勝ちの扉枠10において、その鴨居13の戸先側端部に切欠部13aを形成するだけで、鴨居13を縦枠11に連結する施工に伴って自動的に貫通孔状の配線挿通孔14が形成される。そのため、鴨居13や縦枠11,12の中間部に配線挿通孔14を孔開け加工する場合に比べて、配線挿通孔14の位置決めや加工が容易になり、配線挿通孔14を容易に形成することができる。
【0052】
(その他の実施形態)
上記実施形態は、扉35を前側から見て右側に引いて開く右引きタイプのアシストドアAであるが、扉35を左側に引いて開く左引きタイプであってもよいのは勿論である。
【0053】
また、上記実施形態では、扉35が左右端部の2箇所で吊車25,26により吊戸レール23に吊り下げられるようにしているが、例えば扉35の左右方向の長さが大きい場合や重量のある扉35の場合には、吊車の数を増やして、扉35の左右中間部でも吊車により吊り下げられるようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態は、片引き戸のアシストドアAの例であるが、本発明は引き違い戸や引込み戸からなるアシストドアに対しても適用することができ、扉の閉じ位置で戸先側となる縦枠に扉の戸先側端部を収容する扉収容溝が形成されているアシストドアであればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、アシスト装置としてリニアモータ装置40を用いているが、例えばベルト装置、ワイヤ装置、ねじ送り装置等の他のタイプの電動型アシスト装置を用いることもできる。
【0056】
さらに、上記実施形態は、扉枠10の配線挿通孔14にリニアモータ装置40の電源配線45のみを挿通させているが、例えば鴨居13の前側面又は後側面のいずれか一方にドアAを出入りしようとする利用者の存在を検出する人感センサを取り付けた場合等には、その人感センサとリニアモータ装置40のコントローラ43とを接続する配線を配線挿通孔14に挿通させるようにしてもよく、要はアシスト装置に接続される配線であれば挿通させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、引戸タイプのアシストドアにおいて、吊戸レール内のアシスト装置から引き出された配線の外部露出をなくしてアシストドアの外観見映えの向上を図り得る点で極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0058】
A アシストドア
10 扉枠
11 縦枠(戸先側縦枠)
12 控壁縦枠(戸尻側縦枠)
13 鴨居(上枠)
14 配線挿通孔
15 方立
23 吊戸レール
W2 レール幅
25 戸先側吊車
L ずれ距離
26 戸尻側吊車
29 移動部
31 固定部
t 厚さ
35 扉
36 取付凹部
d 深さ
40 リニアモータ装置(アシスト装置)
41 固定子
42 可動子
43 コントローラ
45 電源配線
46 電源ボックス
48 扉収容溝
W1 溝幅
51 空間部
52 キャップ部材
【手続補正書】
【提出日】2022-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉枠内に吊り下げられてスライド移動する扉を備え、その扉の移動をアシストするようにしたアシストドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアシストドアとして、例えば特許文献1に示されるように、扉の上側に吊戸レールが設けられ、その吊戸レール内に扉を吊り下げて移動する吊車が移動可能に収容され、吊車の移動により扉がスライド移動する上吊り式の引戸において、吊車を吊戸レール内のリニアモータ装置によって駆動して、扉の移動をアシストするようにしたものは知られている。
【0003】
また、特許文献2に示される自動ドアでは、上枠のレール部に支持されて動く戸車により戸本体が吊り下げられ、上枠内には駆動及び従動プーリと、両プーリに巻き掛けられ、両端部が戸本体の戸幅方向両端部に連結された有端の駆動ベルトと、駆動プーリを駆動する電動モータとが設けられ、電動モータにより駆動プーリを駆動して駆動及び従動プーリ間で駆動ベルトを走行させ、戸本体を移動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6418565号公報
【特許文献2】特許第5147005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上吊り式の引戸では、上記のように、左右の縦枠と上枠とを備えた三方枠の扉枠を備えており、上枠の下面に吊戸レールが固定され、その吊戸レールに吊車を介して扉が吊り下げられている。吊車は通常は2つで扉の左右端部(扉幅方向の端部)に固定されている。
【0006】
上記特許文献1のアシストドアのように、吊戸レール内に吊車だけでなく、その吊車を駆動するリニアモータ装置等の電動アシスト装置が収容されていると、アシスト装置に接続される電源用やセンサ用等の配線を扉枠の外側に引き出してそれぞれ壁部内の電源装置や壁部外側のセンサに接続する必要がある。
【0007】
扉枠が壁部の開口外にあるアウトセット構造では、吊戸レールから引き出された配線を例えば壁部との間を通して扉枠の外側に延ばすことができる。そうすれば、配線は縦枠の陰に隠れるので、外部から目立ち難くなる。これに対し、扉枠が壁部の開口内に施工されたインセット構造では、扉枠の外側に柱や壁部があるので、アウトセット構造のように、吊戸レールから引き出された配線を扉枠によって隠蔽することができず、外観見映えや施工の点で問題が生じる。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、アシストドアの構造の改良により、インセット構造であっても、電動型のアシスト装置に接続される配線を扉枠の外側に露出することなく配置できるようにして、外観見映えの向上や施工の容易化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、インセット構造の扉枠に対し、その扉枠そのものにアシスト装置の接続配線を挿通するための配線挿通孔を貫通して形成するようにした。
【0010】
具体的には、第1の発明は、左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠と、該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉とを備え、扉のスライド移動がアシストされるアシストドアが対象である。
【0011】
このアシストドアは、左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口内に上記扉枠が施工されたインセット構造であり、上枠は上記横架材の下面に、また縦枠は柱にそれぞれ固定されている。上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ、該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車と、該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置とが設けられている。そして、上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられていることを特徴とする。
【0012】
この第1の発明では、アシストドアは、左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口内に扉枠が施工されたインセット構造であり、扉枠の上枠は横架材の下面に、また縦枠は柱にそれぞれ固定され、扉枠の上枠下面に取り付けられた吊戸レール内で吊車が移動し、この吊車に吊り下げられた扉がスライド移動して扉枠内の開口部が開閉され、その扉のスライド移動が吊戸レール内の電動型のアシスト装置によってアシストされる。
【0013】
そして、扉枠に配線挿通孔が扉枠をその内外方向に貫通して設けられているので、上記アシスト装置に接続される配線は、吊戸レールから扉枠の配線挿通孔に挿通されて扉枠の外側に引き出される。そのため、吊戸レールから引き出された配線を扉枠によって隠蔽することができ、施工後に配線が露出することによってアシストドアの外観見映えが悪化することはない。また、露出を避けるために配線を長くして取り回す必要もなく、配線挿通孔に配線を挿通させるだけで済み、配線の施工を容易に行うことができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明のアシストドアにおいて、上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、上記配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものであることを特徴としている。
【0015】
この第2の発明では、扉枠における上枠の戸先側端部に切欠部が形成され、この切欠部の開口が、上枠の戸先側端部が突き合わされる戸先側の縦枠により閉塞されて、貫通孔状の配線挿通孔が形成される。
【0016】
このように上枠の戸先側端部が縦枠に突き合わされる縦枠勝ちの扉枠において、その上枠の戸先側端部に切欠部を形成するだけで、上枠を縦枠に連結する施工に伴って自動的に貫通孔状の配線挿通孔が形成される。そのため、上枠や縦枠の中間部に配線挿通孔を孔開け加工する場合に比べて、配線挿通孔の位置決めや加工が容易になり、配線挿通孔を容易に形成することができる。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明のアシストドアにおいて、配線挿通孔には、少なくともアシスト装置に接続される電源配線が挿通されていることを特徴とする。このことで、アシスト装置に電力を供給する電源配線を外枠外に引き出すための配線挿通孔を外枠に容易に形成して、電源配線を隠すことができ、見映えの向上を図ることができる。
【0018】
第4の発明は、第1~第3の発明のアシストドアのいずれか1つにおいて、アシスト装置は、吊戸レールに固定された固定子と、該固定子によって駆動され、吊車に移動一体に連結された可動子と、該可動子の動作を固定子により制御して扉のスライド移動時のアシスト力をコントロールするコントローラとを備えたリニアモータ装置であることを特徴とする。
【0019】
この第4の発明では、閉じ位置にある扉が開かれ、或いは開き位置にある扉が閉じられると、アシスト装置としてのリニアモータ装置が作動し、そのコントローラによる固定子に対する制御により可動子の移動がコントロールされ、それに伴い、可動子に移動一体に連結されている吊車及び扉の移動もコントロールされる。このことで扉のスライド移動がアシストされる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によると、縦枠及び上枠を備えた扉枠が左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口内にインセット構造で施工され、上枠が横架材の下面に、また縦枠が柱にそれぞれ固定されており、上枠の吊戸レールに扉がスライド移動可能に吊り下げられ、そのスライド移動がアシストされる上吊り式の引戸からなるアシストドアにおいて、扉枠に、アシスト装置に接続される配線を扉枠外側に引き出すための配線挿通孔が扉枠を内外方向に貫通して設けられているので、吊戸レール内のアシスト装置から引き出された配線が扉枠内を通って隠蔽され、この配線の隠蔽によってアシストドアの外観見映えの向上を図ることができるとともに、露出を避けるために長い配線を取り回す必要もなく、配線の施工を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るアシストドアの全体構成を示す正面図である。
【
図2】
図2は、アシストドアの全体構成を拡大して示す水平断面図である。
【
図3】
図3は、アシストドアの全体構成を拡大して示す垂直断面図である。
【
図4】
図4は、アシストドアの全体構成を分解して示す斜視図である。
【
図5】
図5は、方立を含めた扉枠の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、鴨居を下側から見て示す平面図である。
【
図7】
図7は、吊戸レールを鴨居下面に取り付ける状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、扉の取付凹部に吊戸レールの吊車を取り付ける状態を拡大して示す斜視図である。
【
図9】
図9は、左右の吊車がリニアモータ装置の可動子によって移動一体に連結された状態を示す正面図である。
【
図10】
図10は、吊戸レールを鴨居から取り外した状態で吊戸レール内のリニアモータ装置に対する電源配線の接続構造を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、吊戸レール内のリニアモータ装置に対する電源配線の接続構造を示す正面図である。
【
図12】
図12は、鴨居端部の切欠き部と縦枠とにより形成される配線挿通孔を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、鴨居端部の切欠き部と縦枠との間の配線挿通孔からまぐさに配線用ドリル孔を形成する状態を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、鴨居端部の切欠き部と縦枠との間の配線挿通孔、及びまぐさに形成された電源配線用ドリル孔を示す平面図である。
【
図16】
図16は、戸先側縦枠の扉収容溝と吊戸レールとの配置関係を拡大して示す水平断面図である。
【
図17】
図17は、戸先側吊車が扉の戸先側端面から所定距離ずれた内側位置に取り付けられている状態を拡大して示す断面図である。
【
図18】
図18は、扉の戸先側端面の取付凹部に取り付けられた戸先側吊車の固定部と扉の戸先側端面との間の空間部にキャップ部材を充填する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0023】
図1~
図3は本発明の実施形態に係るアシストドアAの全体構成を示す。このアシストドアAは、建物における壁部の開口内に施工されたインセット構造の片引き戸からなる。具体的には、
図7や
図10にも示すように、例えば建物の壁部に、左右の柱1,1と、両柱1,1の高さ方向中間部間に架設された横架材としてのまぐさ2と、床部3とで囲まれた開口4が形成され、この開口4にアシストドアAの扉枠10がインセット構造で施工されている。尚、説明においては、壁部の一方側を「前」側として、また他方側を「後」側としてそれぞれ説明し、左右は前側から後側を見たときの「左右」側として説明する。また、それら前後の方向を図中にも記載している。
【0024】
図4及び
図5にも示すように、上記扉枠10は、左側の縦枠11と、右側の控壁縦枠12と、両縦枠11,12の上部間に連結された上枠としての鴨居13とを有する三方枠からなり、左側の縦枠11は扉枠10外側にある左側の柱1に、また右側の控壁縦枠12は同様に扉枠10外側にある右側の柱1にそれぞれ固定され、鴨居13はまぐさ2の下面に固定されている。
図5に示すように、鴨居13の左右端部は左右の縦枠11,12の対向側面に突き合わされてビスV,V,…により連結されており、扉枠10は縦枠勝ちの構造となっている。また、鴨居13の左右長さ方向の略中央部後側には方立15の上端部がビスVにより連結固定され、この方立15の下端部は床部3に固定されている。
【0025】
右側の控壁縦枠12は戸尻側縦枠である。一方、左側の縦枠11は戸先側縦枠であり、前後幅が右側の控壁縦枠12よりも大きい広幅の厚肉板材からなり、その前端面は控壁縦枠12の前端面と同じ前後位置にあるが、後端部は控壁縦枠12よりも後側に突出している。
【0026】
図6は鴨居13を下側から見た状態を示し、左側部が右側部よりも後側に突出していて、左側部の前後幅が右側部よりも大きく、右側部左端の後面に方立切欠き13bが形成され、この方立切欠き13bに上記方立15の上端部が嵌合されて固定されている。
【0027】
そして、
図2に示すように、方立15と右側の控壁縦枠12の後部との間に控壁5が施工され、この控壁5により方立15及び控壁縦枠12の間の開口部(空間)が閉塞されている。このことで、扉枠10内に縦枠11、方立15、鴨居13及び床部3で囲まれる開口部が形成され、この開口部が後述する扉35によって開閉される。尚、控壁5の前側壁パネル5aは、方立15の右側面前部と控壁縦枠12の左側面後部との間に固定され、後側壁パネル5bは、方立15の右側面後部から控壁縦枠12右側の柱1を超えて右側に延びている。
【0028】
再び
図6に示すように、上記鴨居13の下面(左側部では前側部分)には、鴨居13の長さ方向の全体に亘り断面矩形状のレール取付溝17が形成され、その前側には幕板取付溝18が、また後側には左側部のみに幕板取付溝19がそれぞれレール取付溝17と平行に形成され、これら幕板取付溝18,19にそれぞれ幕板20,21(
図3及び
図4参照)が上端部を嵌合して取付固定されている。
【0029】
図3、
図4及び
図7に示すように、上記レール取付溝17には、その全体に亘って延びる吊戸レール23が嵌合されてビスV,V,…(
図7参照)により取付固定されている。この吊戸レール23は、下側に開放された断面略コ字状の角形レールからなり、開放された両下端部は互いに近づくように内側に折り曲げられて、その折曲げ部分の上面がレール面となっている。吊戸レール23内は上下の空間に区画されている。吊戸レール23には、戸先側及び戸尻側の左右2つの吊車25,26(
図7及び
図10参照)が移動可能に支持されている。
【0030】
上記左右の吊車25,26は互いに同じもので、吊戸レール23内の下側空間に位置する基部27と、その基部27の左右両側部に前後方向(吊戸レール23の幅方向)の軸心回りに回転可能に支持された前後4つのローラ28,28,…とを有し、これらの基部27とロ-ラ28,28,…とで吊戸レール23内の下側空間を移動する移動部29が構成されている。そして、4つのローラ28,28,…が吊戸レール23下端部の上記レール面上を転動することにより、吊車25,26が吊戸レール23内で移動するようになっている。
【0031】
各吊車25,26の基部27には固定部31が、上下方向に延びる1本の棒状の連結部30を介して基部27から垂下するように連結されている。連結部30の上端部は基部27において左右ローラ28,28間の位置に連結され、下端部は吊戸レール23外でその下側まで延びている。固定部31は、後述する扉35の取付凹部36に嵌合されて取り付けられる略矩形箱形状のもので、その上端部において左右端よりも内側(吊戸レール23の左右長さ方向中央側)寄りの位置に上記連結部30の下端が連結されている。固定部31の外面(吊戸レール23の左右長さ方向両端側の面)は、全体として平面状に形成されている。
【0032】
図1~
図4に示すように、扉枠10内には、該扉枠10内の開口部を開閉する1枚の板状の扉35が配置されている。この扉35は、鴨居13(上枠)に吊り下げられて左右方向にスライド移動する上吊り引戸であり、扉35が左側に移動したときに扉枠10内の開口部が閉じられる。そのため、扉35の左側が戸先側に、また右側が戸尻側になる。
図3及び
図8に拡大して示すように、扉35の左右端面つまり戸先側及び戸尻側端面の上端部には取付凹部36が形成されている。この各取付凹部36は、扉35の左右端面の上端部を左右方向(扉幅方向)が深さになるように断面略矩形状に孔開けしたもので、取付凹部36は扉35の上面にも開口している。つまり取付凹部36は、扉35の左右上端角部の扉厚さ方向の一部を切り欠いた構造であり、扉35の左右端面及び上面に開口している。そして、この各取付凹部36に上記吊車25,26の固定部31が扉35の左右端面側から嵌合されて図外のロック構造により取付固定されており、吊車25,26の連結部30及び移動部29は取付凹部36の上側開口(扉35の上端面)から扉35の上側に突出している。すなわち、上記吊車25,26は、扉35の左右端部の取付凹部36,36に取り付けられる従来の一般的なものが用いられている。そして、この状態で、吊戸レール23内での吊車25,26の移動により扉35が左右方向にスライド移動し、
図2に実線にて示すように、扉35が左側に移動したときに、その扉35は控壁5と前後に重ならない状態になって、扉枠10内の開口部を閉じる一方、仮想線にて示すように、右側に移動したときに、扉35は控壁5と前後に重なって、開口部を開くようになっている。図中、38,38は扉35の戸先側端部(左端部)の前後面に取り付けられたハンドルである。
【0033】
尚、床部3には、方立15の前側位置に床付けガイドピン7が固定されている(
図1、
図3及び
図4参照)。
図3に示すように、扉35の下面には左右方向(扉幅方向)に延びるガイド溝35aが形成されており、このガイド溝35aに床付けガイドピン7を嵌合させることで、扉35の下部が床部3に前後方向に振れ止めされた状態で左右方向にスライド移動可能に支持されている。
【0034】
図3、
図4、
図7、
図10及び
図11に示すように、上記吊戸レール23内には、吊車25,26を駆動して扉35のスライド移動をアシストするアシスト装置としてのリニアモータ装置40(リニアエンジン)が収容されている。このリニアモータ装置40は、吊戸レール23に固定された固定子41と、この固定子41によって駆動され、吊車25,26に移動一体に連結された可動子42と、この可動子42の動作を固定子41により制御して扉35のスライド移動時のアシスト力をコントロールするコントローラ43とを備えている。具体的には、
図9及び
図10に示すように、可動子42は、吊戸レール23の長さ方向に延びかつ扉35の左右幅と同程度の長さを有する板状の永久磁石の集合体からなるもので、吊戸レール23の下側の空間に配置されている。可動子42の両端部に上記左右の両吊車25,26の基部27,27が移動一体に連結されている。よって、可動子42、左右の吊車25,26及び扉35は吊戸レール23に沿って一体的に移動する。
【0035】
上記固定子41及びコントローラ43は、吊戸レール23の上側の空間に収容されて固定されている。固定子41は、界磁コイルを有する電磁石からなり、その左右長さは吊戸レール23の長さよりも短い。この固定子41は、吊戸レール23の左右中央部に配置されて固定されており、扉35が開閉方向のどの位置にあっても固定子41が可動子42の少なくとも一部と上下方向に重なって可動子42との間に磁界が形成される。コントローラ43は、固定子41よりも左側(戸先側縦枠1側)に配置されており、コントローラ43は固定子41に電気的に接続されているだけでなく、電源配線45により後述する電源ボックス46と接続されている。そして、コントローラ43によって固定子41の可動子42に対する磁界の作用を制御し、扉35が閉じ位置から開き操作されたときには、その操作や移動距離の検出により固定子41が可動子42を介して扉35に開き方向のアシスト力(推力)を加えて扉35の開き動作をアシストし、扉35が開き位置に近付くにつれてアシスト力を低下させる一方、逆に扉35が開き位置から閉じ操作されたときには、同様にして閉じ操作や移動距離の検出により固定子41が可動子42を介して扉35に閉じ方向のアシスト力を加えて扉35の閉じ動作をアシストし、扉35が閉じ位置に近付くにつれてアシスト力を低下させるようになっている。扉35の移動距離(移動行程)に対しアシスト力の大きさが変化する特性は、例えば扉35の移動開始から所定距離に達するまではアシスト力が次第に増大し、所定距離に達すると、アシスト力が一定値に保たれ、扉35の移動停止の位置から所定距離手前側の位置に達すると、アシスト力が一定値から次第に低下するものとなっている。
【0036】
尚、上記リニアモータ装置40の構成や作動は公知のものである。また、吊車25,26、リニアモータ装置40の可動子42、固定子41及びコントローラ43は吊戸レール23にその端部から挿入されて収容される。
【0037】
図6、
図12~
図14に示すように、扉枠10における鴨居13の左端部には、その前後幅方向の中間部を矩形状に切り欠いた切欠部13aが形成されている。この鴨居13の左端部を左側の戸先側縦枠11に突き合わせて連結した状態で切欠部13aの開口が縦枠11内面によって閉じられて、扉枠10を内外方向に貫通する貫通状の配線挿通孔14が形成されている。そして、この配線挿通孔14に上記リニアモータ装置40の電源配線45が挿通され、その電源配線45は扉枠10外に引き出されるようになっている。また、配線挿通孔14の上側でまぐさ2上部の壁内には、予め電源ボックス46が埋め込まれている(図では説明のために実線で表している)。そして、
図13に示すように、施工時には電源配線45をまぐさ2を通して電源ボックス46に接続するために、まぐさ2に対し下側から配線挿通孔14を通してドリルDにより配線用ドリル孔2aの孔開け加工が行われる。
【0038】
図2及び
図15に示すように、上記左側の戸先側縦枠10の右側面(控壁縦枠12と対向する面)には、扉35が閉じ位置にあるときにその戸先側端部を収容する扉収容溝48が形成され、この扉収容溝48は縦枠の高さ方向全体に亘って延びている。扉収容溝48の溝幅W1は扉35の前後厚さよりも大きく、閉じ位置にある扉35の左端部(戸先側端部)を扉収容溝48内に収容して、扉35の戸先側端部と縦枠11との間の隙間の発生をなくし、その隙間による光や空気の漏れを遮断するようにしている。尚、扉収容溝48の上端部には、鴨居13と略同じ厚さのスペーサ49(
図12参照)が嵌合され、このスペーサ49により扉収容溝48の上端が閉じられている。
【0039】
上記吊戸レール23は、内部にリニアモータ装置40が収容されているので、リニアモータ装置40が収容されていない通常のものよりも大きくなっている。そのため、
図16に示すように、吊戸レール23の前後方向のレール幅W2は上記縦枠11における扉収容溝48の溝幅W1よりも広くなっている(W2>W1)。そして、吊戸レール23の左端部は縦枠11の内面に当接している(又は近接していてもよい)。
【0040】
さらに、
図17に示すように、上記左側の戸先側吊車25は、扉35の閉じ位置でその戸先側端部が上記左側縦枠11の扉収容溝48に収容されたときに、同吊車25が吊戸レール23の左端部から脱落しないように扉35の戸先側端面から扉幅方向の内側に所定のずれ距離L(例えばL=3mm)だけずれた内側位置に取り付けられている。
【0041】
具体的には、扉35の左右端面にある戸先側及び戸尻側の取付凹部36,36に吊車25,26の固定部31が嵌合されて取り付けられるとき、その固定部31の平面状の外面が扉35の左右端面に面一ないし略面一になるのが通常の基準取付位置である。これに対し、本実施形態では、扉35左側の戸先側の取付凹部36のみの左右方向の深さd(扉35の左端面からの深さ)が、左側の吊車25の固定部31の左右方向の厚さtよりも大きく(d>t)なっており、このことで、固定部31の取付位置が基準取付位置よりも内側(戸尻側、右側)に意図的かつ積極的にずらされている。そのため、吊車25の固定部31は取付凹部36内に扉35の戸先側端面との間に空間部51が形成された状態で嵌合されて固定され、吊車25は扉35の戸先側端面から扉幅方向(左右方向)の内側に所定のずれ距離Lだけずれた内側位置に位置している。そして、
図18に示すように、上記取付凹部36において吊車25の固定部31と戸先側端面との間に形成されている上記空間部51にキャップ部材52が充填され、このキャップ部材52の外面は扉35の戸先側端面と面一になっている。上記戸先側吊車25のずれ距離Lの最大値は、縦枠11の扉収容溝48の深さとするのが好ましく、例えば6mmが好ましい。尚、右側の戸尻側吊車26にあっては、上記通常の基準取付位置に取り付けられている。
【0042】
したがって、上記実施形態のアシストドアAにおいては、扉35が移動範囲左端の閉じ位置にあるときに、使用者によって扉35が閉じ位置から右側に開き操作されると、リニアモータ装置40のコントローラ43によって固定子41が可動子42を駆動し、その駆動により可動子42及び吊車25,26を介して扉35に開き方向のアシスト力が加えられて扉35の開き動作がアシストされる。扉35が移動範囲右端の開き位置に近付くにつれてアシスト力が低下して、開き位置ではアシストが終了する。逆に、扉35が移動範囲右端の開き位置にあるときに、使用者によって扉35が開き位置から左側に閉じ操作されると、同様にしてリニアモータ装置40により、扉35に閉じ方向のアシスト力が加えられて扉35の閉じ動作がアシストされ、扉35が閉じ位置に近付くにつれてアシスト力が低下し、閉じ位置でアシストが終了する。
【0043】
上記扉35の閉じ位置では、扉35の左端部(戸先側端部)が縦枠11の右側面の扉収容溝48内に収容される。このことで、扉35の戸先側端部と縦枠11との間に隙間が生じなくなり、その隙間による光や空気の漏れを遮断することができる。
【0044】
そして、扉35を吊車25,26によってスライド移動可能に吊下げ支持している吊戸レール23は、その内部に吊車25,26の移動部29,29だけでなく、扉35の移動のアシストのためにリニアモータ装置40が収容されて前後のレール幅W2が大きくなっており、この吊戸レール23の左端部は縦枠11の上記扉収容溝48内に配置されておらず、扉収容溝48外に位置して縦枠11の左側面に当接(又は近接)している。そのため、吊戸レール23の左端部の収容配置のために扉収容溝48の溝幅W1を拡げる必要はなく、その分、縦枠11の前後幅(奥行)も大きくせずに済み、この縦枠11の前後幅の小幅化によって扉枠10の大型化や外観見映えの低下を避けることができる。
【0045】
このように、吊戸レール23の端部が縦枠11の扉収容溝48の外側に配置される構造においては、扉35の閉じ位置で戸先側端部が扉収容溝48内に収容されたときに、その戸先側端部は吊戸レール23よりも突出することになり、通常の構造では戸先側吊車25が吊戸レール23の左端部から脱落する虞れがある。
【0046】
しかし、本実施形態においては、扉35の戸先側端面に形成されて戸先側の吊車25の固定部31が嵌合して取り付けられる戸先側の取付凹部36の深さdが吊車25の固定部31の左右方向の厚さtよりも大きくなっており、吊車25の固定部31が取付凹部36に戸先側端面との間に空間部51が形成された状態で嵌合されて固定されている。このような固定構造により、吊車25は扉35の左端面(戸先側端面)から所定のずれ距離Lだけ離れた右側の内側位置にずれて取り付けられることになる。そのため、扉35の戸先側端部が扉収容溝48に収容された状態であっても、上記吊車25が縦枠11の扉収容溝48の外側にある吊戸レール23の左端部から脱落することはない。このことによって、アシストドアAの作動信頼性を確保することができる。
【0047】
以上のことから、扉枠10が壁部の開口内に施工されたインセット構造のアシストドアAにおいて、縦枠11の前後幅(奥行)の増大防止と、扉35の戸先側端部の扉収容溝48への収容状態での吊車25の脱落防止とを併せ図ることができることとなる。
【0048】
また、扉35の戸先側の取付凹部36において、吊車25の固定部31と戸先側端面との間に形成される空間部51が露出したままにしておくと、固定部31のずれによる段差が見えて違和感が生じる。しかし、この空間部51にキャップ部材52が充填されているので、違和感が生じるのを防ぐことができ、見映えを良くすることができる。
【0049】
また、扉枠10が壁部の開口内に施工されたインセット構造のアシストドアAにおいて、鴨居13下部に吊戸レール23が固定され、その吊戸レール23内にアシスト装置としてのリニアモータ装置40が収容されている場合、そのリニアモータ装置40に接続される電源配線45を扉枠10外に引き出して電源ボックス46(電源)に接続する必要がある。仮に、その電源配線45がアシストドアAの外側に露出していると、外観の見映えが著しく低下するのは避けられない。
【0050】
本実施形態では、鴨居13の左端部に切欠部13aが形成され、鴨居13の左端部が左側の縦枠11に突き合わされて連結された状態で、切欠部13aの開口が縦枠11によって閉じられて扉枠10における貫通孔からなる配線挿通孔14となり、この配線挿通孔14に上記リニアモータ装置40の電源配線45が挿通されている。このことで、インセット構造のアシストドアAであっても、リニアモータ装置40の電源配線45を扉枠10外にその外部露出を招くことなく引き出すことができ、インセット構造のアシストドアAの外観の見映えを向上させることができる。また、露出を避けるために電源配線45を長くしてそれを取り回す必要もなく、配線挿通孔14に電源配線45を挿通させるだけで済み、電源配線45の施工を容易に行うことができる。
【0051】
また、鴨居13の戸先側端部が戸先側縦枠11に突き合わされる縦枠勝ちの扉枠10において、その鴨居13の戸先側端部に切欠部13aを形成するだけで、鴨居13を縦枠11に連結する施工に伴って自動的に貫通孔状の配線挿通孔14が形成される。そのため、鴨居13や縦枠11,12の中間部に配線挿通孔14を孔開け加工する場合に比べて、配線挿通孔14の位置決めや加工が容易になり、配線挿通孔14を容易に形成することができる。
【0052】
(その他の実施形態)
上記実施形態は、扉35を前側から見て右側に引いて開く右引きタイプのアシストドアAであるが、扉35を左側に引いて開く左引きタイプであってもよいのは勿論である。
【0053】
また、上記実施形態では、扉35が左右端部の2箇所で吊車25,26により吊戸レール23に吊り下げられるようにしているが、例えば扉35の左右方向の長さが大きい場合や重量のある扉35の場合には、吊車の数を増やして、扉35の左右中間部でも吊車により吊り下げられるようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態は、片引き戸のアシストドアAの例であるが、本発明は引き違い戸や引込み戸からなるアシストドアに対しても適用することができ、扉の閉じ位置で戸先側となる縦枠に扉の戸先側端部を収容する扉収容溝が形成されているアシストドアであればよい。
【0055】
また、上記実施形態では、アシスト装置としてリニアモータ装置40を用いているが、例えばベルト装置、ワイヤ装置、ねじ送り装置等の他のタイプの電動型アシスト装置を用いることもできる。
【0056】
さらに、上記実施形態は、扉枠10の配線挿通孔14にリニアモータ装置40の電源配線45のみを挿通させているが、例えば鴨居13の前側面又は後側面のいずれか一方にドアAを出入りしようとする利用者の存在を検出する人感センサを取り付けた場合等には、その人感センサとリニアモータ装置40のコントローラ43とを接続する配線を配線挿通孔14に挿通させるようにしてもよく、要はアシスト装置に接続される配線であれば挿通させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、引戸タイプのアシストドアにおいて、吊戸レール内のアシスト装置から引き出された配線の外部露出をなくしてアシストドアの外観見映えの向上を図り得る点で極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0058】
A アシストドア
10 扉枠
11 縦枠(戸先側縦枠)
12 控壁縦枠(戸尻側縦枠)
13 鴨居(上枠)
14 配線挿通孔
15 方立
23 吊戸レール
W2 レール幅
25 戸先側吊車
L ずれ距離
26 戸尻側吊車
29 移動部
31 固定部
t 厚さ
35 扉
36 取付凹部
d 深さ
40 リニアモータ装置(アシスト装置)
41 固定子
42 可動子
43 コントローラ
45 電源配線
46 電源ボックス
48 扉収容溝
W1 溝幅
51 空間部
52 キャップ部材
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の縦枠の上部間に上枠が連結された扉枠と、該扉枠内に上枠に吊り下げられて左右方向にスライド移動可能に配置された扉とを備え、扉のスライド移動がアシストされるアシストドアであって、
左右の柱と両柱間に架設された横架材とにより形成された、壁部の開口内に上記扉枠が施工されたインセット構造であり、
上記上枠は上記横架材の下面に、また上記縦枠は上記柱にそれぞれ固定されており、
上記上枠の下面に吊戸レールが取り付けられ、該吊戸レールには、上記扉を少なくとも左右端部で吊り下げて吊戸レール内を移動する吊車と、該吊車を駆動して扉のスライド移動をアシストする電動型のアシスト装置とが設けられており、
上記扉枠には、上記アシスト装置に接続される配線を扉枠外に引き出すための配線挿通孔が扉枠を該扉枠の内外方向に貫通して設けられていることを特徴とするアシストドア。
【請求項2】
請求項1のアシストドアにおいて、
上枠の戸先側端部は戸先側の縦枠に突き合わされて連結され、
配線挿通孔は、上記上枠の戸先側端部に形成された切欠部を有しかつ該切欠部の開口が上記戸先側の縦枠により閉塞されたものであることを特徴とするアシストドア。
【請求項3】
請求項1又は2のアシストドアにおいて、
配線挿通孔には、少なくともアシスト装置に接続される電源配線が挿通されていることを特徴とするアシストドア。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つのアシストドアにおいて、
アシスト装置は、吊戸レールに固定された固定子と、該固定子によって駆動され、吊車に移動一体に連結された可動子と、該可動子の動作を固定子により制御して扉のスライド移動時のアシスト力をコントロールするコントローラとを備えたリニアモータ装置であることを特徴とするアシストドア。