(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133959
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】複層フィルム、粘着フィルム及び半導体製造工程用粘着フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 25/08 20060101AFI20220907BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220907BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20220907BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220907BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220907BHJP
【FI】
B32B25/08
B32B27/00 M
B32B27/32 Z
H01L21/78 M
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032931
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】503048338
【氏名又は名称】ダイヤプラスフィルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】川口 祐二
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
5F063
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK05B
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK12C
4F100AL02A
4F100AL02B
4F100AL09A
4F100AL09B
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4F100BA02
4F100BA03
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4F100BA07
4F100CB05D
4F100DD07
4F100EH202
4F100GB31
4F100GB41
4F100JB16A
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4F100JK16C
4F100JL13D
4F100YY00B
4J004AA05
4J004AA07
4J004AA08
4J004AA10
4J004AA11
4J004AB01
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004EA06
4J004FA05
5F063AA05
5F063AA18
5F063AA31
5F063DD67
5F063DG21
5F063EE02
5F063EE04
5F063EE05
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE13
5F063EE22
5F063EE27
5F063EE42
(57)【要約】
【解決課題】
本発明の課題は、樹脂をフィルム状に成形する際の製膜性に優れ、且つ得られたフィルムの復元性にも優れたフィルムを提供することにある。
【解決手段】
少なくとも2層を有する複層フィルムであって、熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを80~100質量%を含有する層と、熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを0~40質量%を含有し、厚みが3~15μmである層を有し、複層フィルムを構成する熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン系エラストマーを75質量%以上含有することを特徴とする複層フィルム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層を有する複層フィルムであって、
熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを80~100質量%を含有する層Aと、
熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを0~40質量%を含有し、厚みが3~15μmである層Bを有し、
複層フィルムを構成する熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン系エラストマーを75質量%以上含有する、該複層フィルム。
【請求項2】
スチレン系エラストマー以外の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項3】
少なくとも表裏のいずれかの層が、熱可塑性樹脂としてスチレン系エラストマーのみからなる層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の複層フィルム。
【請求項4】
少なくとも表裏いずれかの層が層Bであり、当該層の静摩擦係数が0.800以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項5】
少なくとも表裏いずれかの層が層Bであり、当該層の静摩擦係数および動摩擦係数の双方が0.800以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項6】
以下の試験方法におけるフィルムの復元率が90%以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の複層フィルム。
<復元率の測定方法>
試験雰囲気:23℃、50%RH
試験片:JISK6732準拠のダンベル「SDK-600」使用
試験条件
試験速度:200mm/min
チャック間距離:40mm
引張伸度:50%
保持時間:50%伸長後、そのまま1分間保持
保持時間経過後、試験機から取り外し、5分経過後の試験片を用いて以下の計算式により復元率の計算を行う。
計算式:
【請求項7】
引張弾性率が50MPa以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の複層フィルム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の複層フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を設けてなる粘着フィルム。
【請求項9】
半導体製造工程に用いられる請求項8に記載の半導体製造工程用粘着フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程で使用される粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の粘着フィルム(テープ)、化粧シート等の基材に好適に用いられる複層フィルム及びその複層フィルムに粘着層を設けた粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着フィルム(テープ)、看板、自動車等へ意匠性を付与するために貼り付けされるステッカー、ラベル及びマーキングフィルム等の粘着フィルム(テープ)、化粧シート等には、着色性、加工性、耐傷付き性、耐候性等が優れるポリ塩化ビニル樹脂製のフィルム(以下、「PVC系フィルム」ともいう。)が基材として多用されている。
【0003】
上記PVC系フィルムは、それ自体剛性を有しているが、粘着フィルムとして機能し得るように、柔軟性付与の目的で可塑剤が添加される。しかしながら、用いる可塑剤によっては、粘着剤との相溶性が悪く、粘着フィルムとした場合に安定性が悪く、可塑剤のブリードアウトが著しくなるという問題がある。また、可塑剤の使用自体に規制が強まる傾向もある。
そこで、PVC系フィルムに代わる材料として、ポリオレフィン系樹脂フィルムが広く用いられてきている。
【0004】
また、半導体を製造する工程においても、半導体ウェハやパッケージ等を切断する際に半導体ウェハ加工用の粘着フィルムが用いられており、前述したような問題からPVC系フィルムに代わりポリオレフィン系樹脂フィルムが用いられるケースが増加している。
このような半導体製造工程用のフィルムとして、ポリオレフィン系樹脂を用いたフィルムが開発されている(例えば特許文献1)。また、特許文献2には、帯電防止性能の付与および柔軟性と耐熱性に優れた半導体製造工程用基材フィルムが開示されている。
【0005】
さらに、近年、半導体素子の小型化・薄型化が進み、半導体ウェハのチップ同士の間隔を拡張するためのエキスパンド工程における、フィルムの拡張性がより求められる傾向にある。チップが小さくなるに伴い、チップ同士の接触によるチップやデバイスの破損が起こりやすくなり、それに起因する歩留まりの低下といった経済性への影響も大きくなる。また、エキスパンド後に元の形状に復元することにより、チップの積層されたフィルムを一時的に保管・収納することの可能なフィルムも望まれている。
【0006】
それらの課題の解決のため、特許文献3、特許文献4および特許文献5には、スチレン系エラストマーや非晶質ポリオレフィンを多く含有するダイシング用基材フィルムが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に記載されている発明では、拡張性が十分ではないポリオレフィン系樹脂やオレフィン系エラストマーが主成分であり、復元性が不十分なものであった。
また、特許文献3に記載されている発明はスチレン系エラストマーが多く用いられているものの、同文献では、フィルムの製膜性や取り扱い性を考慮した材料が選定されておらず、スチレン系エラストマーについての詳細な記載はない。
特許文献4に記載されている発明は、中間層がスチレン系エラストマーのものが記載されているものの、樹脂をフィルム状に成形する際の製膜性を考慮した際の、スチレン系エラストマーの選択には改善の余地があった。
さらに、特許文献5にはスチレン系エラストマーと非晶質ポリオレフィンを用いた復元性に優れるフィルムが記載されているものの、熱をかけて復元させる必要があり、エキスパンドした後、加熱させることなく復元させるといった特性の付与には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-8111号公報
【特許文献2】特開2020-84143号公報
【特許文献3】特許4259050号公報
【特許文献4】特開2018-125521号公報
【特許文献5】特許6716396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる問題に鑑みて、熱可塑性樹脂をフィルム状に成形する際の製膜性に優れ、且つエキスパンド後の復元性に優れたフィルムを提供することを目的とする。また、本発明のフィルムは、復元性に優れることから、エキスパンド後に元の形状に近い状態に復元し、チップの積層された状態でも一時的に保管や収納することの容易な半導体製造工程用粘着フィルムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、熱可塑性樹脂をフィルム状に成形する際の製膜性に優れ、且つ得られたフィルムの復元性にも優れたフィルムを鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]
少なくとも2層を有する複層フィルムであって、
熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを80~100質量%を含有する層Aと、
熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを0~40質量%を含有し、厚みが3~15μmである層Bを有し、
複層フィルムを構成する熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン系エラストマーを75質量%以上含有する、該複層フィルム。
[2]
スチレン系エラストマー以外の熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である[1]に記載の複層フィルム。
[3]
少なくとも表裏のいずれかの層が、熱可塑性樹脂としてスチレン系エラストマーのみからなる層である[1]又は[2]に記載の複層フィルム。
[4]
少なくとも表裏いずれかの層が層Bであり、当該層の静摩擦係数が0.800以下である[1]~[3]のいずれか1項に記載の複層フィルム。
[5]
少なくとも表裏いずれかの層が層Bであり、当該層の静摩擦係数および動摩擦係数の双方が0.800以下である[1]~[3]のいずれか1項に記載の複層フィルム。
[6]
以下の試験方法におけるフィルムの復元率が90%以上であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の複層フィルム。
<復元率の測定方法>
試験雰囲気:23℃、50%RH
試験片:JISK6732準拠のダンベル「SDK-600」使用
試験条件
試験速度:200mm/min
チャック間距離:40mm
引張伸度:50%
保持時間:50%伸長後、そのまま1分間保持
保持時間経過後、試験機から取り外し、5分経過後の試験片を用いて以下の計算式により復元率の計算を行う。
計算式:
[7]
引張弾性率が50MPa以上である[1]~[6]のいずれか1項に記載の複層フィルム。
[8]
[1]~[7]のいずれか1項に記載の複層フィルムの少なくとも片方の面に粘着層を設けてなる粘着フィルム。
[9]
半導体製造工程に用いられる[8]に記載の半導体製造工程用粘着フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、樹脂をフィルム状に成形する際の製膜性に優れ、且つ得られたフィルムの復元性にも優れたフィルムを提供することが可能となる。また、本発明により、エキスパンド後に元の形状に近い状態に復元し、チップの積層された状態でも一時的に保管や収納することの容易な半導体製造工程用粘着フィルムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
本発明の1つの実施態様は、少なくとも2層を有する複層フィルムであって、
熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを80~100質量%を含有する層(以下「層A」とも言う)と、熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを0~40質量%を含有し、厚みが3~15μmである層(以下「層B」とも言う)を有し、複層フィルムを構成する熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン系エラストマーを75質量%以上含有する、該複層フィルムである。
【0015】
<熱可塑性樹脂>
本発明に用いられる複層フィルムを製造するために用いられる樹脂組成物には、成形性に優れる熱可塑性樹脂が用いられる。その中でも、層Aに用いられる熱可塑性樹脂には、スチレン系エラストマーが必須成分として含まれる。また、層Bに用いられる熱可塑性樹脂にも、当該熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン系エラストマーが0~40質量%含まれる。
また、スチレン系エラストマーの中でも、スチレン成分の含有量が15質量%以上であることが必要である。
また、スチレン系エラストマー以外の熱可塑性樹脂としては、入手のし易さ、耐熱性や柔軟性の調整が比較的容易であること、スチレン系エラストマーとの相溶性の観点からポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0016】
[スチレン系エラストマー]
本発明に用いられる複層フィルムには、スチレン系エラストマーが必須成分として含まれる。スチレン系エラストマーを用いることにより、複層フィルムに復元性を付与することが可能となる。
スチレン系エラストマーとは、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X-(Y-X)n …(I)
(X-Y)n …(II)
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロック(以下、スチレン成分)で、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0017】
具体例としては、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体、スチレン-水添ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-水添イソプレンジブロック共重合体、スチレン-ブタジエンジブロック共重合体、スチレン-イソプレンジブロック共重合体等が挙げられ、その中でもスチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレン共重合体が好適である。また、スチレン-エチレン・ブチレン-結晶性オレフィン共重合体であるブロック共重合体を用いることもできる。
【0018】
前記スチレン系エラストマーにおけるスチレン成分の含有量は15質量%以上であることが必要である。スチレン成分の含有量が15質量%未満の場合は、柔軟になりすぎ取扱い性に劣ることと、それを表層に用いた場合に材料のタック性による製膜時のロールへの貼りつきにより、フィルムを得ること自体が困難となる。
スチレン成分の含有量が15質量%以上であれば、得られるフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となり、且つ製膜性や取り扱い性に優れるフィルムを得ることが可能となる。より好ましくは17質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。
【0019】
スチレン成分の含有量およびそれ以外の成分の含有量は、1H-NMRや13C-NMRを用いることにより測定することができる。ここで、「スチレン成分の含有量」とは、スチレン系エラストマーの質量を基準としてスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックの含有割合(質量%)をいう。
スチレン系エラストマーのメルトフローレイト(230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値)は、0.1~10g/10分であることが好ましく、0.15~9g/10分であることがより好ましく、0.2~8g/10分であることが特に好ましい。スチレン系エラストマーのメルトフローレイトが0.1g/10分未満および、10g/10分を越えるとポリオレフィン系樹脂との相溶性の低下や製膜性の悪化により、十分な柔軟性やエキスパンド性が発現しない場合がある。
【0020】
スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフプレンA、タフプレン125、アサプレンT-438、アサプレンT-439、タフテックH1221、タフテックH1041、タフテックH1043、タフテックH1052、タフテックH1053、タフテックH1517、タフテックP1083、タフテックH5051、タフテックP2000(以上、旭化成社製)、セプトン4099、セプトンHG252、セプトン8004、セプトン8006、セプトン8007L、セプトンHG252、セプトンV9461、セプトンV9475、ハイブラー7311、ハイブラー7125F、ハイブラー5127、ハイブラー5125(以上、クラレ社製)、ダイナロン1320P、ダイナロン4600P、ダイナロン8300P、ダイナロン8903P、ダイナロン9901P(以上、JSR社製)等が挙げられる。
【0021】
中でもスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフテックH1041、タフテックH1043、タフテックH1052、タフテックH1053、タフテックH1517、タフテックP1083、タフテックP5051、タフテックP2000(以上、旭化成社製)、セプトン8007L、セプトンHG252、ハイブラー5125(以上、クラレ社製)、ダイナロン4600P、ダイナロン8903P、ダイナロン9901P(以上、JSR社製)等が挙げられる。
上記スチレン系エラストマーは、1種類のエラストマーを単独で用いてもよいし、2種類以上を併用して用いてもよい。複層フィルムを得る際の製膜性や、得られる複層フィルムの柔軟性や取扱い性、エキスパンド性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。複層フィルムの製膜性や、得られるフィルムの性能の観点から、2種類以上を併用することがより好ましい。
【0022】
[ポリオレフィン系樹脂]
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマーから選択される1種以上の樹脂が、入手のし易さや柔軟性、取り扱い性、経済性等の観点から、好適に用いられる。中でもポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂が、入手のし易さや経済性の観点、耐熱性や柔軟性の調節が比較的容易であることから好ましい。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体、これらの混合物等が例示できる。
前記プロピレンを主成分とするプロピレンと共重合可能な他の単量体との共重合体としては、プロピレンとエチレンまたは他のα-オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。
前記プロピレンと共重合可能な他の単量体として用いられるα-オレフィンとしては、炭素原子数が4~12のものが好ましく、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、1-デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0024】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られるエチレン系共重合体(メタロセン系ポリエチレン)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)等が挙げられる。
中でも入手のし易さや樹脂の取り扱い性、得られるフィルムへの柔軟性の調整が容易であるとの観点から、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0025】
オレフィン系エラストマーとは、ポリオレフィン系樹脂とゴム成分とを含んでなる軟質樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂にゴム成分が分散しているものでもよいし、互いが共重合されているものでもよい。
オレフィン系エラストマーの具体例としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン-1-オクテン共重合体エラストマー、エチレン-スチレン共重合体エラストマー、エチレン-ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン-1-ブテン共重合体エラストマー、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン-プロピレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0026】
前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1~50g/10分であることが好ましい。0.1g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/10分以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。より好ましくは0.5~40g/10分、さらに好ましくは1.0~30g/10分である。
【0027】
ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー等の強度については、それらの樹脂単独で得られるフィルムの引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が50~2000MPaの範囲内であれば、本発明のフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。より好ましくは80~1900MPaの範囲内、さらに好ましくは100~1800MPaの範囲内である。
上記ポリオレフィン系樹脂は、1種類の樹脂を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。得られる複層フィルムの柔軟性や耐熱性、製膜性を考慮し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0028】
[その他樹脂]
本発明の積層フィルムのエラストマー層には、前述したポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー以外の樹脂として、環状オレフィン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等を添加することもできる。
【0029】
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα-オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0030】
[その他成分]
本発明の複層フィルムには、得られるフィルムに必要とされる性能を付与するために、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系樹脂以外の成分として、耐熱性や耐候性、帯電防止性能等を付与するために各種添加剤を配合することができる。
具体例としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために前述したもの以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
また、複層フィルムの各層のそれぞれに異なった性能を付与する必要がある場合は、各層毎に各種添加剤を付与することも可能である。
【0031】
帯電防止剤としては、公知のものを使用することができるが、得られる複層フィルムとの相溶性や、長期的な帯電防止性能の付与、経時での帯電防止剤のブリードアウトの抑制といった観点から、高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。
【0032】
高分子型帯電防止剤としては公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができる。高分子型帯電防止剤は、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成している。
【0033】
疎水性ブロックには、例えば、ポリオレフィンブロックを挙げることができ、ポリオレフィンブロックには、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体からなるブロック等を挙げることができる。
【0034】
ポリオレフィンブロック等の疎水性ブロックは、その両末端にカルボニル基、水酸基、及び、アミノ基等の極性基を有している。疎水性ブロックが両末端に有している極性基を、親水性ブロックの両末端に存在するカルボニル基、水酸基、及び、アミノ基等に重合させるか、或いは、ジイソシアネートやジグリシジルエーテル等によって架橋させることにより、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を得ることができる。
【0035】
親水性ブロックには、例えば、ポリエーテルブロック、ポリエーテル含有親水性ポリマーブロック、カチオン性ポリマーブロック及びアニオン性ポリマーブロックを挙げることができる。
なお、高分子型帯電防止剤には、本発明の効果を損なわない範囲において、更に帯電防止性を向上させるために、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩、界面活性剤及びイオン性液体等が配合されていてもよい。
【0036】
高分子型帯電防止剤の一つであるポリエーテル-ポリオレフィンブロック共重合体の市販品としては、例えば、ペレスタット300、ペレスタット230、ペレクトロンUC、ペレクトロンPVL、ぺレクトロンPVH(以上、三洋化成工業社製)等が挙げられる。
【0037】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0038】
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0039】
滑剤やアンチブロッキング剤としては、有機系粒子や無機系粒子、アマイド系化合物といった公知のものを使用することができる。また、前述したポリオレフィン系樹脂との相溶性に優れ、得られるフィルムの表面へのブリードアウトによる不具合や長期的な耐傷付き性や滑り性の付与を可能にすることから、シリコーン-オレフィン共重合体を用いることが好ましい。
【0040】
<複層フィルム>
本発明の複層フィルムは、少なくとも2層を有する複層フィルムであって、 熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを80~100質量%を含有する層Aと、熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを0~40質量%を含有し、厚みが3~15μmである層Bを有し、複層フィルムを構成する熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン系エラストマーを75質量%以上含有することを特徴とする複層フィルムである。
【0041】
本発明の複層フィルムの少なくとも1つの層は、その層を構成する熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを80~100質量%含有する層(層A)である。
当該層に含まれるスチレン系エラストマーの含有量が80~100質量%であることで、得られるフィルムに復元性と良好な製膜性を付与することが可能となる。より好ましくは82~100質量%の範囲内、さらに好ましくは84~100質量%の範囲内である。当該層は単層であってもよく、2層以上で構成されていてもよい。2層以上とする場合の各層のスチレン系エラストマーの含有量は、上記含有量の範囲内であれば、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0042】
層Aに含まれるスチレン系エラストマーのスチレン成分の含有量は、15質量%以上であり、好ましくは17質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
スチレン成分の含有量が15質量%以上であれば、層Aに十分な柔軟性や復元性を付与しつつ、且つ層Aタック性を抑制することが可能となり、複層フィルムの製膜時の搬送性やフィルムを巻き取った際のフィルム同士のブロッキングを抑制することが可能となる。
【0043】
本発明の1つの好ましい態様においては、少なくとも表層、裏層のいずれかの層が、熱可塑性樹脂としてスチレン系エラストマーのみからなる層である。
少なくとも表層、裏層のいずれかの層が熱可塑性樹脂としてスチレン系エラストマーのみからなる層であれば、スチレン系エラストマーの柔軟性や復元性を損なうことの無い層を設けることが可能となり、得られるフィルムに柔軟性と復元性を十分に付与することが可能となる。
【0044】
もう一方の層は、熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン成分の含有量が15質量%以上であるスチレン系エラストマーを0~40質量%を含有し、厚みが3~15μmである層(層B)であることが必要となる。
当該層の厚みが3~15μmであり、且つ、層Bに含まれる熱可塑性樹脂100質量%に対してスチレン系エラストマーの含有量を0~40質量%とすることで、得られる複層フィルムの表裏いずれかの当該層を有する側の面のタック性を抑制でき、当該層側の面の摩擦係数を低下させ、複層フィルムの製膜時の搬送性やフィルムを巻き取った際のフィルム同士のブロッキングを抑制することが可能となる。
【0045】
層Bの厚みとして、より好ましくは4~15μm、さらに好ましくは5~15μmの範囲内であり、スチレン系エラストマーの含有量として、より好ましくは0~35質量%、さらに好ましくは0~30質量%である。
層Bは、複層フィルムの表層又は裏層のいずれかの層として設けることができるが、表裏のいずれの層に当該層を設けるかは、複層フィルムの使用方法等を考慮し、適宜選択することができる。
【0046】
層Bに含まれるスチレン系エラストマーのスチレン成分の含有量は15質量%以上であることが必要である。スチレン成分の含有量が15質量%未満の場合は、柔軟になりすぎ取扱い性に劣ることと、それを表層に用いた場合に材料のタック性による製膜時のロールへの貼りつきにより、フィルムを得ること自体が困難となる。
スチレン成分の含有量が15質量%以上であれば、得られるフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となり、且つ製膜性や取り扱い性に優れるフィルムを得ることが可能となる。より好ましくは17質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。
【0047】
層Bの表面粗さとしては、算術平均粗さRaの値が0.1~5.0μmの範囲内にあることが好ましい。算術平均粗さRaの値が0.1~5.0μmの範囲内にあることで、当該層に良好な滑り性とフィルムを巻き取った際のフィルム同士のブロッキングを良好なものとすることができる。0.1μmを下回ることで、ブロッキング性の悪化、5.0μmを上回ることで、フィルムを巻き取った際に当該層とは逆側の面に凹凸が転写する可能性が高くなるため、好ましくない。算術平均粗さRaのより好ましい範囲としては0.1~5.0μm、さらに好ましい範囲としては、0.1~3.0μmである。
【0048】
また、層Bの摩擦係数としては、静摩擦係数が0.800以下であることが好ましい。静摩擦係数が0.800以下であることにより、製膜時の各種ロールへのフィルムの貼りつき、フィルム同士の貼りつきが抑制され、フィルムの搬送性やフィルムを巻き取った際のフィルム同士のブロッキングを良好なものとすることが可能となる。静摩擦係数の値として、より好ましくは0.750以下、さらに好ましくは0.700以下である。摩擦係数としては、静摩擦係数だけでなく動摩擦係数も同様に0.800以下であることが好ましい。動摩擦係数が0.800以下を示すことで、静摩擦係数の際の説明と同様にフィルムの搬送性やフィルム同士のブロッキングを良好なものとすることが可能となる。動摩擦係数の値として、より好ましくは0.750以下、さらに好ましくは0.700以下である。
【0049】
[スチレン系エラストマーの総含有量]
さらに、複層フィルムを構成するすべての層に用いられている熱可塑性樹脂の合計100質量%中に、スチレン系エラストマーが75質量%以上含有されていることが必要である。スチレン系エラストマーの総含有量が75質量%以上であれば、得られるフィルムに十分な復元性を付与することが可能となる。より好ましくは78質量%以上、さらに好ましくは81質量%以上である。
【0050】
[複層フィルムの構成]
本発明の複層フィルムには、少なくとも層Aと層Bの2層を有し、複層フィルムを構成する熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン系エラストマーを75質量%以上含有するものであれば、任意の層構成を有するものが含まれる。例えば、層A/層B、層A1/層A2/層B、層A1/層A2/別の層/層B等が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、「層A1」、「層A2」は、同一又は異なる組成を有する層Aに該当する層を意味し、「別の層」は、層Aにも層Bにも該当しない層を意味する。
【0051】
[複層フィルムの厚み]
また、本発明の複層フィルムの総厚みは、30~250μmであることが好ましい。30μm以上であればフィルムを生産する際の製膜性や得られるフィルムの取り扱い性が良好となり、250μm以下であれば経済性の観点やフィルムを用いた粘着加工等の工程通過性を良好に保つことが可能となる。また、経済性の観点やエキスパンド時の当該フィルムや装置にかかる負荷の観点から30~200μmの範囲内であることがより好ましく、30~150μmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0052】
[複層フィルムの引張弾性率]
本発明の複層フィルムの引張弾性率は、50~1000MPaの範囲内であることが好ましい。50MPa以上であればフィルムに十分な剛性が付与されていることから、取り扱い性を良好に保つことが可能となり、1000MPa以下であれば該フィルムに粘着層を積層する工程におけるフィルムの加工性を良好に保つことが可能となり、さらにエキスパンド時に当該フィルムや装置にかかる負荷を適正なものとすることが可能となる。より好ましくは50~7000MPa、さらに好ましくは50~400MPaの範囲内である。
【0053】
[複層フィルムの成形方法]
本発明の複層フィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
【0054】
フィルムを得るためには、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。複数の押し出し機を利用した共押出Tダイ成形法を用いることで、複層のフィルムを得ることが可能となり、本発明の樹脂組成物からなる層を表裏の一方の面のみとすることも、表裏の両面とすることも可能となる。
さらに全ての押出機から同一の樹脂を押出すことで全層が同一の樹脂組成物からなる実質的に単層のフィルムを得ることも可能となる。
【0055】
共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
【0056】
フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。得られるフィルムの用途に応じて、片面または両方の面に表面処理を行うかを選択することができる。
【0057】
<粘着フィルム>
本発明の複層フィルムには、少なくとも片方の面に粘着層を積層することで、粘着フィルムとすることができる(以下「本発明の粘着フィルム」ともいう)。
【0058】
粘着剤層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
【0059】
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルムと粘着層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
粘着層やプライマー層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0060】
本発明の粘着フィルムは、復元性に優れ、一時的に保管や収納することの容易であることから、半導体製造工程用途に好適に用いることができる。
【実施例0061】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0062】
[使用材料]
熱可塑性樹脂として、以下に示すスチレン系エラストマーおよびポリオレフィン系樹脂を使用した。
【0063】
<スチレン系エラストマー>
スチレン系エラストマー(A):
旭化成社製、「タフテックH1221」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:4.5g/10分、スチレン成分含有量:12質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
スチレン系エラストマー(B):
旭化成社製、「タフテックH1041」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:5.0g/10分、スチレン成分含有量:30質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
スチレン系エラストマー(C):
旭化成社製、「タフテックH1517」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:3.0g/10分、スチレン成分含有量:43質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン共重合体)
スチレン系エラストマー(D):
JSR社製、「ダイナロン4600P」(230℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:5.5g/10分、スチレン成分含有量:20質量%、スチレン-エチレン・ブチレン-結晶性オレフィン共重合体)
【0064】
<ポリオレフィン系樹脂>
日本ポリエチレン社製、「ノバテックHF560」(高密度ポリエチレン、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレイト:7.0g/10分、融点:135℃、単独フィルムの引張弾性率:1000MPa)
【0065】
<樹脂組成物の調製>
上記のスチレン系エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを、各層毎に合計で100質量部となるよう配合し、ドライブレンドにより混合した。目視にて均一に混合できていることを確認し、表層、中間層、裏層の各層毎にフィルム成形用の樹脂組成物を作成した。
【0066】
<フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(表層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、裏層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーにドライブレンドした原料を投入し、各押出機の押出機温度を190~240℃に設定し、フィードブロック部にて、表層/中間層/裏層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定240℃、リップ開度0.5mm)から押し出した。厚み構成は、表1に記載の厚みとなるよう各押出機回転数を設定した。
【0067】
押出された溶融樹脂は、マット状の冷却ロールとマット状のゴムロールとを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にてニップ成形を行い、冷却固化後、両面にコロナ処理を実施し巻き取りを行い、所定の厚みを有する3種3層となる複層のフィルムを得た。また、本発明では、得られたフィルムの冷却ロール側の面を表層と表現している。
【0068】
[フィルムの総厚み]
接触式厚み計を用いてフィルムの中央部、両端部の厚みの測定を行い、所定の厚みになっていることを確認した。
【0069】
[各層の厚み]
各押出機から押し出される樹脂の吐出量から計算し、各層の厚みを設定した。また、得られたフィルムの断面観察の結果から、設定通りの厚みになっていることを確認した。
【0070】
[スチレン系エラストマーの総含有量]
各層に含まれるスチレン系エラストマーの含有量と、各層の厚みの比率から計算し、複層フィルムに含まれる熱可塑性樹脂全量(100質量%)に対するスチレン系エラストマーの総含有量(質量%)を算出した。
【0071】
[フィルムの製膜性]
前述した製膜方法でフィルムを生産した際の、フィルムの厚みの安定性と取扱性を以下の基準により評価した。
◎:巻取り機の搬送ロールへの貼りつきがなく製膜性良好。
〇:僅かに搬送ロールへの貼りつきがあるものの、製膜可能。
×:搬送ロールへの貼りつきが顕著であり、製膜不可。
【0072】
[算術表面粗さRaの測定]
JIS B0601:2001に準拠する方法により、株式会社東京精密製表面粗さ形状測定機SURFCOM FLEX-50Aで、先端半径2μm、円錐のテーパ角60°の触針を用い、測定力0.6mN、カットオフ値λc=0.8mm、評価長さ=2.0mm、フィルタ種類=ガウシアン、λsフィルタ種別=カットオフ比300、評価スピード=0.3mm/sの条件にて測定した。
【0073】
[摩擦係数の測定]
JIS K7125に準拠する方法と摩擦係数測定試験機を用い、試験温度:23℃、相対湿度:50%、試験速度:100mm/min、試験荷重:200g(1.96N)の条件下、本複層フィルムの裏層側の面と平滑なアルミ板とを重ね合わせ、その2種の材質間の静摩擦係数および動摩擦係数の測定を行った。各摩擦係数の値は、試験回数5回の平均値を用いた。
【0074】
[復元性の測定]
得られた複層フィルムから、JISK6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、次に示す試験条件にて、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、測定を行い、以下に示す計算式にて復元率を算出した。
復元率は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
試験雰囲気:23℃、50%RH
試験片:JISK6732準拠のダンベル「SDK-600」使用
試験条件
試験速度:200mm/min
チャック間距離:40mm
引張伸度:50%
保持時間:50%伸長後、そのまま1分間保持
計算式:
【0075】
[引張弾性率]
得られた複層フィルムから、JISK6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、JISK7127を参照し、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS-X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0076】
[引張破断強度、引張破断伸度]
得られたフィルムから、JISK6732に準じて作成されたダンベル「SDK-600」を使用して試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ-L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断強度(MPa)および伸度(%)を測定した。
引張破断強度および伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0077】
[実施例1]
表層用の樹脂としてスチレン系エラストマー(B)およびスチレン系エラストマー(D)、中間層用の樹脂として、スチレン系エラストマー(B)、スチレン系エラストマー(C)およびスチレン系エラストマー(D)、裏層用の樹脂として高密度ポリエチレンを表1に記載の含有量で用い、前述した製膜方法にて3種3層からなる厚さ100μmのフィルムを得た。各層の厚みは、表層が20μm、中間層が72.5μm、裏層が7.5μmであった。
表層および中間層は、用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが100質量%であり、当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総含有量は92.5質量%であった。
本フィルムの製膜時において、搬送ロールを含む各種ロールへのフィルムの貼りつきは見られず、製膜性は良好であった。
得られたフィルムの裏層側の算術平均粗さRaは0.80μm、静摩擦係数は0.316、動摩擦係数は0.191を示し、さらに裏層側にはスチレン系エラストマーを含んでおらず、タック性も無いことから、良好な滑り性を有し、フィルム同士の耐ブロッキング性にも優れたフィルムであった。
得られたフィルムの復元性は92%であり、良好な復元性を有し、引張弾性率は100MPa、引張破断強度は42MPa、引張破断伸度は550%を示し、十分な剛性と破断強伸度を有することから、復元性だけでなく取扱い性にも優れるフィルムであった。
【0078】
[実施例2]
中間層用の樹脂として、スチレン系エラストマー(B)、スチレン系エラストマー(D)および高密度ポリエチレンを表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様に行った。
表層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが100質量%であり、中間層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが90質量%であり、当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総含有量は約85.3質量%であった。
本フィルムの製膜時において、搬送ロールを含む各種ロールへのフィルムの貼りつきは見られず、製膜性は良好であった。
得られたフィルムの裏層側の算術平均粗さRaは0.83μm、静摩擦係数は0.262、動摩擦係数は0.171を示し、さらに裏層側にはスチレン系エラストマーを含んでおらず、タック性も無いことから、良好な滑り性を有し、フィルム同士の耐ブロッキング性にも優れたフィルムであった。
得られたフィルムの復元性は91%であり、良好な復元性を有し、引張弾性率は80MPa、引張破断強度は44MPa、引張破断伸度は560%を示し、十分な剛性と破断強伸度を有することから、復元性だけでなく取扱い性にも優れるフィルムであった。
【0079】
[実施例3]
表層用の樹脂として、スチレン系エラストマー(B)およびスチレン系エラストマー(D)を表1に記載の配合量とした以外は、実施例2と同様に行った。
表層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが100質量%であり、中間層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが90質量%であり、当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総含有量は約85.3質量%であった。
本フィルムの製膜時において、搬送ロールを含む各種ロールへのフィルムの貼りつきは見られず、製膜性は良好であった。
得られたフィルムの裏層側の算術平均粗さRaは0.78μm、静摩擦係数は0.320、動摩擦係数は0.192を示し、さらに裏層側にはスチレン系エラストマーを含んでおらず、タック性も無いことから、良好な滑り性を有し、フィルム同士の耐ブロッキング性にも優れたフィルムであった。
得られたフィルムの復元性は91%であり、良好な復元性を有し、引張弾性率は102MPa、引張破断強度は43MPa、引張破断伸度は560%を示し、十分な剛性と破断強伸度を有することから、復元性だけでなく取扱い性にも優れるフィルムであった。
【0080】
[実施例4]
表層用の樹脂としてスチレン系エラストマー(B)およびスチレン系エラストマー(D)、中間層用の樹脂として、スチレン系エラストマー(B)、スチレン系エラストマー(D)および高密度ポリエチレンを表1に記載の配合量で用いた以外は実施例2と同様に行った。
表層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが100質量%であり、中間層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが85質量%であり、当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総含有量は約81.6質量%であった。
本フィルムの製膜時において、搬送ロールを含む各種ロールへのフィルムの貼りつきは見られず、製膜性は良好であった。
得られたフィルムの裏層側の算術平均粗さRaは1.05μm、静摩擦係数は0.311、動摩擦係数は0.182を示し、さらに裏層側にはスチレン系エラストマーを含んでおらず、タック性も無いことから、良好な滑り性を有し、フィルム同士の耐ブロッキング性にも優れたフィルムであった。
得られたフィルムの復元性は91%であり、良好な復元性を有し、引張弾性率は108MPa、引張破断強度は48MPa、引張破断伸度は590%を示し、十分な剛性と破断強伸度を有することから、復元性だけでなく取扱い性にも優れるフィルムであった。
【0081】
[実施例5]
裏層用の樹脂として、スチレン系エラストマー(D)および高密度ポリエチレンを表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様に行った。
表層および中間層は、用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが100質量%であり、裏層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが15質量%であり、当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総含有量は約93.6質量%であった。
本フィルムの製膜時において、搬送ロールを含む各種ロールへのフィルムの貼りつきは見られず、製膜性は良好であった。
得られたフィルムの裏層側の算術平均粗さRaは1.00μm、静摩擦係数は0.525、動摩擦係数は0.488を示し、さらに裏層側は熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーを15質量%しか含まず、含有量も少ないことからタック性を示さず、滑り性を有し、フィルム同士の耐ブロッキング性にも優れたフィルムであった。
得られたフィルムの復元性は92%であり、良好な復元性を有し、引張弾性率は76MPa、引張破断強度は46MPa、引張破断伸度は570%を示し、十分な剛性と破断強伸度を有することから、復元性だけでなく取扱い性にも優れるフィルムであった。
【0082】
[比較例1]
各層の厚みを、表層が20μm、中間層が78.5μm、裏層が1.5μmの複層フィルムとした以外は実施例1と同様に行った。
表層および中間層は、用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが100質量%であり、当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総含有量は98.5質量%であった。
本フィルムの製膜時において、搬送ロールを含む各種ロールにわずかに貼り付きが認められたものの、製膜は可能であった。
得られたフィルムの裏層側の算術平均粗さRaは1.05μmであったが、静摩擦係数は1.003、動摩擦係数は0.980を示し、裏層側の熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン系エラストマーを含まないものの、当該層の十分な厚みを有さないことから、摩擦係数が大きく滑り性に劣り、フィルム同士の耐ブロッキング性にも劣るフィルムであった。
【0083】
[比較例2]
裏層用の樹脂として、スチレン系エラストマー(D)および高密度ポリエチレンを表1に記載の配合量とした以外は、実施例5と同様に行った。
表層および中間層は、用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが100質量%であり、裏層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが50質量%であり、当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総含有量は約96.3質量%であった。
本フィルムの製膜時において、搬送ロールを含む各種ロールにわずかに貼り付きが認められたものの、製膜は可能であった。
得られたフィルムの裏層側の算術平均粗さRaは0.80μmであったが、静摩擦係数は0.893、動摩擦係数は0.841を示し、裏層側の熱可塑性樹脂100質量%中にスチレン系エラストマーを50質量%と多量に含有するため、摩擦係数が大きく滑り性に劣り、フィルム同士の耐ブロッキング性にも劣るフィルムであった。
【0084】
[比較例3]
各層の厚みを、表層が20μm、中間層が60μm、裏層が20μmの複層フィルムとした以外は実施例4と同様に行った。
表層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが100質量%であり、中間層は用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが85質量%であり、当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総含有量は71.0質量%であった。
本フィルムの製膜時において、搬送ロールを含む各種ロールへのフィルムの貼りつきは見られず、製膜性は良好であった。
得られたフィルムの裏層側の算術平均粗さRaは0.81μm、静摩擦係数は0.301、動摩擦係数は0.190を示し、さらに裏層側にはスチレン系エラストマーを含んでおらず、タック性も無いことから、良好な滑り性を有し、フィルム同士の耐ブロッキング性にも優れたフィルムであった。
しかしながら、得られたフィルムの復元性は80%であった。
当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総量が不足したことから、十分な復元性を有するフィルムではないことが確認された。
【0085】
[比較例4]
表層用の樹脂として、スチレン系エラストマー(A)を表1に記載の配合量とした以外は、実施例1と同様に行った。
表層および中間層は、用いた熱可塑性樹脂100質量%中、スチレン系エラストマーが100質量%であり、当該複層フィルムに含まれるスチレン系エラストマーの総量は92.5%であった。
しかしながら、表層に用いたスチレン系エラストマーのスチレン成分量が少なく、表層側のタック性が強かったことから、本フィルムの製膜時において、搬送ロールを含む各種ロールへのフィルムの貼りつきが顕著であり、製膜を行いフィルムを得ることが困難であった。
【0086】
【0087】
[産業上の利用可能性]
本発明により、熱可塑性樹脂をフィルム状に成形する際の製膜性に優れ、且つエキスパンド後の復元性に優れたフィルムを提供することが可能となる。また、復元性に優れることから、エキスパンド後に元の形状に近い状態に復元し、チップの積層された状態でも一時的に保管や収納することの容易な半導体製造工程用粘着フィルムを提供することを可能にする。