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  • 特開-気化器 図1
  • 特開-気化器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022133978
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】気化器
(51)【国際特許分類】
   F02M 7/00 20060101AFI20220907BHJP
   F02M 3/02 20060101ALI20220907BHJP
   F02M 3/12 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F02M7/00 K
F02M3/02 A
F02M3/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021032956
(22)【出願日】2021-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(72)【発明者】
【氏名】森 健司
【テーマコード(参考)】
3G061
【Fターム(参考)】
3G061BA20
3G061CA21
3G061FA05
(57)【要約】
【課題】
停止時にアフターバーンを生じさせない気化器を提供する。
【解決手段】
燃料1を貯留したフロート室2の底部内に配置したメインジェット3と、バタフライ式のスロットル弁を設ける吸気通路4に配置したメインノズル5とが燃料通路9により連結されているとともに、エアブリード室7に連結されたエアジェット8からの空気と燃料通路9からの燃料1の混合体がメイン通路9を介してメインノズル5から吸気通路4に流れる吸気に吸出されて、所定割合の燃料を霧化させてエンジンに吸入させる気化器において、メイン通路9にエアジェット8に加えて第2のエアジェット14がサブ通路13を介して連結されているとともにサブ通路15にエンジンのイグニションスイッチ12がONのときに閉鎖し、イグニションスイッチ12がOFFになることにより開放する開閉装置16を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯留したフロート室の底部内に配置したメインジェットと、バタフライ式のスロットル弁を設ける吸気通路に配置したメインノズルとが燃料通路により連結されているとともに前記燃料通路に多数のブリード孔を介して連通するエアブリード室を形成し、このエアブリード室に連結されたエアジェットからの空気と前記燃料通路からの燃料の混合体がメイン通路を介して前記メインノズルから前記吸気通路に流れる吸気に吸出されて、所定割合の燃料を霧化させてエンジンに吸入させる気化器において、
前記メイン通路に前記エアジェットに加えて第2のエアジェットがサブ通路を介して連結されているとともに前記サブ通路にエンジンのイグニションスイッチがONのときに閉鎖し、前記イグニションスイッチがOFFになることにより開放する開閉装置を備えたことを特徴とする気化器。
【請求項2】
前記第2のエアジェットに備えられた開閉装置が、ソレノイドにより前記サブ通路を開閉する開閉弁を有していることを特徴とする請求項1記載の気化器。
【請求項3】
前記開閉弁がニードル弁であることを特徴とする請求項2記載の気化器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農業や林業用の機械などの汎用エンジンに用いられる気化器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの吸気通路に燃料を霧化状態にして供給する気化器、特に、農業や林業用の機械等の大きく傾けて使用することが少ない汎用エンジンに付設された汎用気化器においては、構造が簡単なため従来からフロートの上下動により燃料導入口を開閉してフロート室の油面レベルを一定に維持するフロート式の気化器が用いられており、例えば特開2011-58471号公報などに提示されている。
【0003】
ところで、前記フロート式の気化器において、エンジンを運転時に、イグニションスイッチをOFFにしてエンジンを停止させる場合、エンジンには回転惰性が生じることから、直ぐに停止することができない。
【0004】
そのため、イグニションスイッチをOFF後に、前記回転慣性により気化器から吸入された燃料が燃焼しないでシリンダを経由して排気系統に移送され、加熱された排気系で爆発的な燃焼(以下「アフターバーン」と言う)が発生することになる。
【0005】
このアフターバーンは、排気ガス浄化のために排気系に装備された触媒などのリアクタを損傷することになり、また、近時、排気ガス中のTHC(CH4+NMHC)を低減させるため希薄混合比の燃料を使用することから、アフターバーンを生じ易い。
【0006】
また、希薄混合比の燃料を使用するエンジンにおいては、イグニションスイッチをOFFしても自己着火による回転が続く(以下「ランオン現象」と言う)と言う問題もある。
【0007】
そこで、エンジンのイグニションスイッチのON・OFFを検知してメインジェットを閉鎖する開閉弁を設けたことでエンジンのイグニションスイッチをOFFした際のアフターバーンやランオン現象を防止した気化器が特開昭52-106030号公報に提示されている。
【0008】
図2は前記特開昭52-106030号公報に提示されていると同様な従来のアフターバーンおよびランオン現象を防止した気化器の一例を示すものであり、燃料1を貯留したフロート室2の底部内に配置したメインジェット3と、バタフライ式のスロットル弁を設ける(図示せず)吸気通路4に配置したメインノズル5とが燃料通路6により連結されているとともに前記燃料通路6に多数のブリード孔71を介して連通するエアブリード室7を形成し、このエアブリード室7に連結されたエアジェット8からの空気と前記燃料通路6からの燃料1の混合体が前記燃料通路6からメイン通路9を介して前記メインノズル5から前記吸気通路4に流れる吸気に吸出されて、所定割合の燃料を霧化させてエンジンに吸入させる構成である。
【0009】
そして、この従来例では前記フロート室2の底部内に配置したメインジェット3にソレノイド10により開閉する開閉弁11が付設されており、この開閉弁11をエンジン(図示せず)のイグニションスイッチ12がONのときに開放して、前記イグニションスイッチ12がOFFになることにより閉鎖する開閉装置13が備えられている。
【0010】
この従来の気化器は、前記イグニションスイッチ12がOFFになるとエンジンの運転時に開放していた開閉装置13が閉鎖してメインジェット3からの燃料1の流入を即座に停止してその後におけるエンジンの惰性による回転でのアフターバーンおよびランオン現象を防止するものである。
【0011】
しかしながら、前記従来のアフターバーンを防止した気化器は、前記イグニションスイッチ12がOFFになるとエンジンの運転時に開放していた開閉装置13が閉成してメインジェット3からの燃料の流入を即座に停止しても、既にメインジェット3の下流の燃料通路6に滞留している燃料が、エンジンが完全に停止するまでの惰性によりメインノズル5からエンジン内に吸い出されてしまい、その後、排気系統内に充満してアフターバーンを生じてしまう、と言う問題がある。
【0012】
また、この種の気化器では通常運転時のメイン系とアイドル時などのスロー系の2系統の燃料吸入系を備える場合にはそれぞれの系ごとに開閉装置を備える必要があることから部品点数の増加による組立および点検などの煩雑および経済的な負担が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011-58471号公報
【特許文献2】特開昭52-106030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、部品点数が少なくて済み、停止時にアフターバーンを確実に生じさせないフロート式の気化器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するためになされた本発明である気化器は、燃料を貯留したフロート室の底部内に配置したメインジェットと、バタフライ式のスロットル弁を設ける吸気通路に配置したメインノズルとが燃料通路により連結されているとともに前記燃料通路に多数のブリード孔を介して連通するエアブリード室を形成し、このエアブリード室に連結されたエアジェットからの空気と前記燃料通路からの燃料の混合体がメイン通路を介して前記メインノズルから前記吸気通路に流れる吸気に吸出されて、所定割合の燃料を霧化させてエンジンに吸入させる気化器において、前記メイン通路に前記エアジェットに加えて第2のエアジェットがサブ通路を介して連結されているとともに前記サブ通路にエンジンのイグニションスイッチがONのときに閉鎖し、前記イグニションスイッチがOFFになることにより開放する開閉装置を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明において、前記第2のエアジェットに備えられた開閉装置が、ソレノイドにより前記サブ通路を開閉する開閉弁を有している場合には、イグニションスイッチをOFFしたときに確実に開閉弁を迅速かつ確実に開放させることができる。
【0017】
更に、本発明において、前記開閉弁がニードル弁である場合には、エンジン停止時における振動などがあっても確実に作動し、また、開弁時において摩擦抵抗がなくエアジェットからの空気が迅速にサブ通路からメイン通路に流入することができるばかりか耐久性にも優れている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、イグニションスイッチをOFFにしたときに、第2のエアジェットからの空気がサブ通路を介してメイン通路に流入するので、エンジンが完全に停止するまでの惰性により回転しても、メインジェット3の下流の燃料通路6に滞留している燃料がメインノズルからエンジン内に吸い出されることがなく、排気系統内に充満してアフターバーンやランオン現象を生じてしまう、と言うことがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明における好ましい実施の形態の概略断面図。
図2】従来例の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
図1は、本発明における好ましい実施の形態を示すものであり、気化器の全体の構成は前記図2に示した従来の気化器と同様に、燃料1を貯留したフロート室2の底部内に配置したメインジェット3にエンジンのイグニションスイッチ12がONのときに開放して、前記イグニションスイッチ12がOFFになることにより閉鎖する開閉装置13を備えていない点を除くとほぼ同様であり、それらの部分については詳細な説明を省略する。また、前記従来例と同一構成部には同一符号を付して説明する。
【0022】
そして、本実施の形態が前記図2に示した従来の気化器と異なる点は、前記エアジェット8を備えたメイン通路9に第2のエアジェット14を備えたサブ通路15が連結されているとともに前記サブ通路15にエンジン(図示せず)のイグニションスイッチ12がONのときに閉鎖し、前記イグニションスイッチ12がOFFになることにより開放する開閉装置16を備えた点である、
【0023】
更に、詳細に説明すると、本実施の形態における前記第2のエアジェット14が備えられたサブ通路15に配置された開閉装置16は、前記図2に示した開閉装置13と同様なソレノイドを用いた構成であり、イグニションスイッチ12がON状態にあるときは固定コア(図示せず)に巻回したソレノイド17に電流が流れており、可動コア18が弾発バネ19の付勢力に打ち勝ち、その先端に備えられた弁体20が前記サブ通路15に配置された弁座21に着座して開閉弁22が閉じており、従来の気化器と同様に、エンジンのイグニションスイッチ12をオンにしてエンジンを回転させるとともに火花を点火させ、前記エアブリード室7に連結されたエアジェット8からの空気と前記フロート室2内に貯留した燃料通路6からの燃料1と空気の混合体がメイン通路9を介して前記メインノズル5から所定割合の燃料1と空気を霧化させてエンジンに吸入させることで運転状態となる。
【0024】
そして、運転が終わって、イグニションスイッチ12をOFF状態にしてエンジンを停止させた際に、固定コア(図示せず)に巻回したソレノイド17に電流が流れて可動コア18が前記弾発バネ19の付勢力に抗して軸線方向を基端側に移動し、その先端に配置した弁体20が弁座21から離脱して開閉弁22が開放する。
【0025】
そのため、本実施の形態では、イグニションスイッチ12をOFFにしたときに、前記開閉装置16(開閉弁22)が開放して、第2のエアジェット14からの空気がサブ通路15を介してメイン通路9に流入するので、エンジンが完全に停止するまでの惰性により回転しても、メインジェット3の下流の燃料通路6に滞留している燃料がメインノズル5からエンジン内に吸い出されることがなく、排気系統内に充満してアフターバーンやランオン現象を生じてしまう、と言うことがない。
【0026】
また、本実施の形態では、サブ通路15に配置した開閉装置16に、ニードル状の弁体20とメイン通路9に配置した弁座21とからなるニードル弁を採用したことから、エンジン停止時における振動などがあっても確実に作動するとともに耐久性にも優れており、且つ、ニードル状の弁体20の開閉抵抗が少ないので瞬時に開放するばかりか、開弁時において摩擦抵抗がなく第2のエアジェット14から必要量の空気が迅速にサブ通路13からメイン通路9に流入することができ、また、耐久性にも優れているためイグニションスイッチ12をOFFしたときに確実に開閉弁22を迅速かつ確実に開放させることができる。
【0027】
尚、図1に示した実施の形態では、イグニションスイッチ12からの電源を直接、開閉装置16のソレノイド17に送電する構成であり、殊に、ニードル状の弁体20が弾発バネ19により開方向に付勢されているとともにイグニションスイッチ12がONのときはソレノイド17に電流が流れて可動コア18が前記弾発バネ19の付勢力に抗して弁体20を閉方向に待機させており、イグニションスイッチ12をOFFとしたときにソレノイド17への電流が停止して前記可動コア18がフリーとなり、前記弾発バネ19の付勢力により弁体20が開方向に移動して開閉装置16が開かれるので、エンジンを運転していないときにはソレノイド17に電流が流れていないので電気の無駄になることがない。
【0028】
尚、例えばイグニションスイッチ12の開閉信号を用いたリレースイッチ(図示せず)を用いること、更には、ソレノイド17への電流を例えばキャパシタ(コンデンサ)(図示せず)などに一時的に充電した電源により供給するなどしてイグニションスイッチ12をオフ操作してエンジンを停止したときだけ一時的にソレノイド17に電流を流して開閉装置16を開放させ、その後、常時は開閉装置16には電流を流さない構造にして電気の無駄を省くとともに弾発バネ19が劣化することを防止して経年における作動の確実さと省電化を図ることができる。
【0029】
また、本実施の形態は、従来のアフターバーンやランオン現象を生じさせない気化器のように通常運転時のメイン系とアイドル時などのスロー系の2系統の燃料吸入系を備える場合にはそれぞれの系ごとに開閉装置を備える必要があったが、本実施の形態は、イグニションスイッチ12をオフ操作してエンジンを停止したときに前記第2のエアジェット14からの空気が、サブ通路15を介してメイン通路9に即座に供給されることでメインノズル5の負圧が上がらず燃料1が吸い出されることが無くなる為、メインジェット3の下流の燃料通路6に滞留している燃料がメインノズル5からエンジン内に吸い出されることがなく、エンジン停止後の惰性で排気系統内に充満して生じるアフターバーンやランオン現象を生じさせないものであり、更に、通常運転時のメイン系とアイドル運転時などのスロー系の2系統の燃料吸入系を備える場合(図示せず)であってもメイン系に1つの開閉装置16を備えるだけでよく、部品点数の増加による組立および点検などの煩雑さおよび経済的な負担が削減できる、などの利点も有している。
【符号の説明】
【0030】
1 燃料、2 フロート室、3 メインジェット、4 吸気通路、5 メインノズル、6 燃料通路、7 エアブリード室、8 エアジェット、9 メイン通路、10 ソレノイド、11 開閉弁、12 イグニションスイッチ、13 開閉装置、14 第2のエアジェット、15 サブ通路、16 開閉装置、17 ソレノイド、18 可動コア、19 弾発バネ、20 弁体、21 弁座、22 開閉弁、71 ブリード孔
図1
図2