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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134058
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】流体回転装置及び風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 1/06 20060101AFI20220907BHJP
   F03D 1/04 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
F03D1/06 B
F03D1/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021070014
(22)【出願日】2021-03-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年10月17日 第13回新☆エネルギーコンテストにて発表 令和3年1月18日 第5回電子情報科課題研究発表会兼第30回電子系学科研究大会にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】521159425
【氏名又は名称】奥山 聖也
(74)【代理人】
【識別番号】100185144
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 忠
(71)【出願人】
【識別番号】521159436
【氏名又は名称】片桐 魁斗
(74)【代理人】
【識別番号】100185144
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 忠
(71)【出願人】
【識別番号】521159447
【氏名又は名称】佐藤 凌
(74)【代理人】
【識別番号】100185144
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 忠
(72)【発明者】
【氏名】奥山 聖也
(72)【発明者】
【氏名】片桐 魁斗
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 凌
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA05
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC03
3H178CC12
3H178DD30X
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回転体の翼端に発生してしまう回転を妨げる渦による性能低下を抑制。さらに、本発明は、このような板状のエンドプレートが回転する際に受ける風の抵抗を低減し、さらに集風構造の工夫により回転体の回転数の増加を目的とする。
【解決手段】流体の流れ方向に略平行な回転軸体と、前記流体の流れ方向に対して略垂直に交差する回転面内で前記回転軸を中心に回転するように配設される回転体と、後流物体であるリング状体2を離間して備えた回転装置であって、前記回転体は複数の回転翼1を備え、その翼端に、前記翼端が回転する円周の曲面の一部をもつ円弧状エンドプレート3を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れ方向に略平行な回転軸体と、前記流体の流れ方向に対して略垂直に交差する回転面内で前記回転軸を中心に回転するように配設される回転体と、後流物体であるリング状体を離間して備えた回転装置において、
前記回転体は複数の回転翼を備え、その翼端に、前記翼端が回転する円周の曲面の一部をもつ円弧状エンドプレートを備えたことを特徴とする流体回転装置。
【請求項2】
前記円弧状エンドプレートに代えて各翼端が回転する円周の局面に沿ってリング状エンドプレートを備えた請求項1に記載の流体回転装置。
【請求項3】
流体の入口から出口に向かって開口面積が拡がるよう形成された筒状のディフューザ(風レンズ)を、回転体の外周を囲うよう設けていることを特長とする請求項1乃至2にそれぞれ記載の流体回転装置。
【請求項4】
流体の流れ方向に略平行な回転軸体と、前記流体の流れ方向に対して略垂直に交差する回転面内で前記回転軸を中心に回転するように配設される回転体と、後流物体であるリング状体を離間して備えた回転装置において、
流体の入口から出口に向かって開口面積が拡がるよう形成された筒状のディフューザ(風レンズ)を、回転体の外周を囲うよう設けていることを特長とする流体回転装置。
【請求項5】
前記筒状のディフューザの後面は流体の流れ方向において前記回転体の後面と同じかそれより上流側に位置することを特長とする請求項3乃至4にそれぞれ記載の流体回転装置。
【請求項6】
請求項1乃至5にそれぞれ記載の流体回転装置を用いた風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体回転装置及び風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流れ方向に対し、長手方向が交差するように配設された第1の柱状体と、当該第1の柱状体に対し離間して長手方向が交差するように配設された第2の柱状体とを有する。第1の柱状体と第2の柱状体との離間間隔が第1の柱状体の直径に対して所定の値になる場合に、第1の柱状体と第2の柱状体との交差部近傍から周期的に縦渦が発生する縦渦励振現象を利用した振動発電装置の提案がなされている(特許文献1参照)。
【0003】
縦渦励振現象の性質について調べる中で、縦渦が周期的に形成されるだけでなく、第1の柱状体が一方向に定速運動するときに、縦渦が片側のみに発生し、定常的揚力発生という新たな知見に基づき、縦渦を駆動力として利用する流体発電用回転装置および流体発電装置の提案がなされている(特許文献2参照)。また、円柱を回転翼とすることで高強度の堅牢な翼型を有する。
【0004】
図7aのように流体の流れ方向に円柱状の回転体とその後方に平板を十字交差するよう設置する。回転体と平板の離間間隔が回転体の直径に対して所定の値になる場合、回転体と平板の交差部近傍から周期的に図7bのような縦渦が発生する縦渦励振現象が生じる。縦渦は不安定に発生と消減を繰り返し、回転体が一方向に定速運動するときに、縦渦が片側のみに発生し、回転体の回転に合わせて移動する。その結果、回転体の回転方向の圧力が低下し、回転体に対して定常揚力が発生し回転する。
さらに、円柱状の回転翼の翼端に発生する翼端渦による性能低下の抑制を目的とし、円柱状の回転翼の翼端に板状のエンドプレートを設置した時のエンドプレートの直径が動力特性に及ぼす効果の検討が行われている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-011669号公報
【特許文献2】特許第6378366号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】仲田翔太,坂本夏澄,Hemsuwan Withun,高橋勉,縦渦により駆動される水平軸型円柱翼風車の動力特性に及す翼端の影響,太陽/風力エネルギー講演論文集,pp.335-336(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回転体の翼端に発生してしまう回転を妨げる渦による性能低下を抑制するために取り付けられた、従来技術にあるような板状のエンドプレートは渦による影響は抑制するが、翼端に板状のエンドプレートにより回転する際に風の抵抗を受けてしまう。
さらに、このような板状のエンドプレートが回転する際に受ける風の抵抗を低減し、さらに集風構造の工夫により回転体の回転数の増加を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の流体回転装置は、流体の流れ方向に略平行な回転軸体と、前記流体の流れ方向に対して略垂直に交差する回転面内で前記回転軸を中心に回転するように配設される回転体と、後流物体であるリング状体を離間して備えた回転装置であって、前記回転体は複数の回転翼を備え、その翼端に、前記翼端が回転する円周の曲面の一部をもつ円弧状エンドプレートを備えている。
【0009】
また、本発明の流体回転装置は、流体の流れ方向に略平行な回転軸体と、前記流体の流れ方向に対して略垂直に交差する回転面内で前記回転軸を中心に回転するように配設される回転体と、後流物体であるリング状体を離間して備えた回転装置であって、流体の入口から出口に向かって開口面積が拡がるよう形成された筒状のディフューザ(風レンズ)を、回転体の外周を囲うよう設けている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流体回転装置によれば、回転体の翌端のエンドプレートを円弧上又はリング状とすることで翼端に発生する翼端渦を抑制することができる。回転体が回転する際の抵抗が減り回転数を向上させることができる。また、流体の入口から出口に向かって開口面積が拡がるよう形成された筒状のディフューザ(風レンズ(集風構造流体))を回転体の外周を囲うよう設けることにより、カルマン渦のような渦を背後に形成し、集風構造の流出口付近を低圧力化して圧力差を利用することで、流速をさらに増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a】本発明の第1の実施例を示す正面写真である。
図1b】本発明の第1の実施例を示す側面写真である。
図1c】本発明の第1の実施例を示す斜視写真である。
図1d】本発明の第1の実施例の円弧状エンドプレート型円柱状回転体の概略正面図である。
図2a】本発明の第2の実施例を示す正面写真である。
図2b】本発明の第2の実施例を示す側面写真である。
図2c】本発明の第2の実施例を示す斜視写真である。
図2d】本発明の第2の実施例のリング状エンドプレート型円柱状回転体の概略正面図である。
図3a】本発明の第4の実施例1を示す正面写真である。
図3b】本発明の第4の実施例1を示す側面写真である。
図3c】本発明の第4の実施例1を示す斜視写真である。
図4a】本発明の第4の実施例2を示す正面写真である。
図4b】本発明の第4の実施例2を示す側面写真である。
図4c】本発明の第4の実施例2を示す斜視写真である。
図5a】本発明の第3の実施例を示す正面写真である。
図5b】本発明の第3の実施例を示す側面写真である。
図5c】本発明の第3の実施例を示す斜視写真である。
図6a】風レンズを設置した回転体の中心をとおる水平面の断面図である。
図6b】風レンズを設置した回転体の中心をとおる水平面の断面図で、風レンズの幅を風上に延長した図である。
図7a】縦渦励振発生の原理を示す模式側面図である。
図7b】同上、模式斜視図である。
図8a】本発明の第1の実施例の風速上昇時の風速と回転数と回転増加率との関係を示す表である。
図8b】同上、グラフである。
図9a】本発明の第1の実施例の風速下降時の風速と回転数と回転増加率との関係を示す表である。
図9b】同上、グラフである。
図10a】本発明の第2の実施例の風速上昇時の風速と回転数と回転増加率との関係を示す表である。
図10b】同上、グラフである。
図11a】本発明の第2の実施例の風速下降時の風速と回転数と回転増加率との関係を示す表である。
図11b】同上、グラフである。
図12a】本発明の第1の実施例及び第2の実施例の風速上昇時の風速と回転数の関係を示したグラフである。
図12b】本発明の第1の実施例及び第2の実施例の風速下降時の風速と回転数の関係を示したグラフである。
図13a】本発明の第3の実施例の風速上昇時の風速と回転数と回転増加率との関係を示す表である。
図13b】同上、グラフである。
図14a】本発明の第3の実施例の風速下降時の風速と回転数と回転増加率の関係を示す表である。
図14b】同上、グラフである。
図15a】本発明の第4の実施例1の風速上昇時の風速と回転数と回転増加率との関係を示す表である。
図15b】同上、グラフである。
図16a】本発明の第4の実施例1の風速下降時の風速と回転数と回転増加率との関係を示す表である。
図16b】同上、グラフである。
図17a】本発明の第4の実施例2の風速上昇時の風速と回転数と回転増加率との関係を示す表である。
図17b】同上、グラフである。
図18a】本発明の第4の実施例2の風速下降時の風速と回転数と回転増加率との関係を示す表である。
図18b】同上、グラフである。
図19a】本発明の第4の実施例1の円弧状エンドプレート型円柱回転体及び第4の実施例2のリング状エンドプレート型円柱回転体の風速上昇時の風速の関係を示すグラフである。
図19b】本発明の第4の実施例1の円弧状エンドプレート型円柱回転体及び第4の実施例2のリング状エンドプレート型円柱回転体の風速下降時の風速の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施例>
本発明の第1の実施例を図1a、図1b、図1cに示す。図1aの表から裏への方向が流体の流れ方向であり、この流れ方向に略並行な回転軸体がある。この流れ方向に対して略垂直に交差する回転面内で回転軸を中心に回転するように回転体が配置されている。図1aでは回転中心から90°おきに4つの円柱状の翼が配置されている。前記翼の長さはほぼ同じでありその一端はそれぞれ回転体の回転中心で連結しており、前記翼の他端(本発明では以下「翼端」と呼ぶ。)にはエンドプレートを備えられている。さらに後流物体であるリング状体が回転体に対して流れ方向の下流側に配置されている。
【0013】
本発明は回転体の翼端に、回転体の翼端が回転する際の軌跡の円弧とほぼ同じ円弧状の一部の曲面をもつ円弧状エンドプレートを備え円弧状エンドプレート型円柱状回転体と称した回転体を取り付けたことを特徴とする流体回転装置である。
【0014】
回転体の翼端に発生してしまう回転を妨げる渦による性能低下を抑制ために取り付けられた、従来技術にあるような板状のエンドプレートは渦による影響は抑制するが、翼端に板状のエンドプレートにより回転する際に風の抵抗を受けてしまう。しかし、本発明の回転体の翼端に、回転体の翼端が回転する際の軌跡の円弧とほぼ同じ円弧状の一部の曲面をもつ円弧状エンドプレートを備えたことにより、翼端に発生する渦を抑制し、さらに翼端が回転する際の軌跡の円弧とほぼ同じ円弧状の一部の曲面をもつことにより、回転する際に受ける風の抵抗を低減する効果がある。
【0015】
このような円弧状エンドプレートを備えた回転体の性能特性を測るため、翼端に何も付けていない円柱状回転体との比較実験を行った。実験には風洞を使用し、風速を1m/sから10m/sまで上昇させた風速上昇時と、風速を10m/sから1m/sまで下降させた風速下降時の実験を行い、始動トルクの違いや風車停止時の風速の比較を行った。この実験では、回転体の翼が円柱状の翼を用いている。また、後流物体を回転体の後方に配置している。
【0016】
図8a、図8bに風速上昇時の回転数および回転増加率を示す。この結果から風速9m/sでは回転増加率が3.6%と上がっているが、風速10m/sでは-2.9%と下がっている。しかし、回転体が回転し始める時の風速を比較すると、円柱状回転体は風速8m/s、円弧状エンドプレート型円柱状回転体は風速6m/sで回転し始めていることから、円弧状エンドプレート型円柱状回転体の方が始動トルクが小さいことがわかる。
【0017】
図9a、図9bに風速下降時の回転数および回転増加率を示す。この結果では風速5m/s、6m/sでは円柱状回転体に比べ円弧状エンドプレート型円柱状回転体の回転数が上昇しているが、風速上昇時と同様に回転数が下がっている時があった。しかし、回転体が停止する時の風速を比較すると円柱状回転体は風速5m/sで停止しているが、円弧型エンドプレート型円柱状回転体は風速4m/sで停止していることから円弧型エンドプレート型円柱状回転体の方が低風速で回転することがわかる。
【0018】
<第2の実施例>
図2a、図2b、図2cに第2の実施例を示す。第2の実施例はエンドプレートがリング状のエンドプレート(リング状エンドプレート)になっている。リング状エンドプレートは回転体の翼端に接合されている。従来の板状エンドプレートを用いた回転体や第1の実施例のような円弧状エンドプレートを用いた回転体は、エンドプレート間に一定の間隔があるため回転する際に風の抵抗を受けてしまう。しかし、第2の実施例では、エンドプレートがリング状であるため、エンドプレート間の間隔がなくなり、回転する際の抵抗を受けにくくなり、さらにエンドプレートによる翼端に発生する渦を抑制することができ、流体回転装置の回転数を増加する。
【0019】
リング状エンドプレートを備えた円柱状回転体の性能特性を測るため、翼端に何も付けていない状態の円柱状回転体との比較実験を第1の実施例と同様の方法で行った。
【0020】
図10a、図10bに風速上昇時の回転数および回転増加率を示す。風速8m/sおよび風速9m/sでは回転増加率が10%以上増加し、また、風速10m/sでも5.9%増加しており、回転体が回転している風速すべてで増加している。さらに、円柱状回転体は風速8m/sから回転し始めているのに対して、リング状エンドプレート型円柱状回転体は、風速6m/sで回転し始めていることから、リング状エンドプレート型円柱状回転体の方が始動トルクが小さいことがわかる。
【0021】
図11a、図11bに風速下降時の回転数および回転増加率を示す。風速下降時も風速上昇時同様に回転体が回転している項目でリング状エンドプレート型円柱状回転体の方が円柱状回転体より回転数が上回っており、風速6m/sでは最大の18.8%の増加となる結果であった。また、回転体が停止する時の風速を比較すると円柱状回転体は風速5m/sであるのに対し、リング状エンドプレート型円柱状回転体は風速4m/sで停止していることからリング状エンドプレート型円柱状回転体の方が低風速で回転することがわかる。
【0022】
図12a、図12bに実施例1及び実施例2の回転数の比較を示す。図12aは風速上昇時、図12bは風速下降時の回転数で、リング状エンドプレート型円柱状回転体の回転数が最も多く、また始動トルクが小さいことがわかる。
【0023】
<第3の実施例>
図5a、図5b、図5cは、流体の流れ方向に略平行な回転軸体と、前記流体の流れ方向に対して略垂直に交差する回転面内で前記回転軸を中心に回転するように配設される回転体と、後流物体であるリング状体を離間して備えた回転装置において、さらに風レンズを配置した実施例である。
【0024】
本発明はさらに、流体(風)の入口から出口に向かって開口面積が拡がるよう形成された筒状のディフューザ(通称:風レンズ)を、回転体の外周を囲うよう取り付けることができる。図3図4は実施例の写真である。図6aは回転体の中心をとおる水平面の断面図である。図6aでは風レンズの断面が扇型になっているが必ずしもこれに限らない。入口から出口に向かって開口面積が拡がるよう形成されていれば十分である。
風レンズ(筒状のディフューザー)において、風が入ってくる方の面(風上側の面)を前面とし、風が出る方の面(風下側の面)を後面とする(図6a参照)。同様に回転体の前面、後面も定義する。
図6aの実施例では風レンズの前面及び回転体の前面並びに風レンズの前面及び回転体の後面はそれぞれ流体の流れ方向に対して同じ位置に設置されている。すなわち、図6aでは風レンズの幅(流体の流れ方向の幅)は、回転体の幅(流体の流れ方向の幅)と同様の幅を有する。
【0025】
図6aのように風レンズの後面は回転体の後面と流体の流れ方向に対して同じ位置又はまたはそれより風上であることが望ましい。風レンズの後面が回転体の後面より後方に位置すると、円柱と後流物体との間で発生する縦渦が弱くなり回転揚力が小さくなるので望ましくない。一方図6bのように風レンズの前面は流体の流れ方向に対して回転体の前面と必ずしも同じでなくて構わない。風レンズの前面が回転体の前面に対して風上側であっても構わない。風上側に配置した場合、より整流効果が期待できる。
【0026】
図6aのように風レンズを設置し、リング状エンドプレート型円柱状回転体を使用したときの回転数と、風レンズを流体の流れ方向に対して前方に5mm前進時と流れ方向に対して後方に5mm後退時の回転数の比較を行い、風レンズの位置による動力特性を調べる。実験は実施例1同様風速1m/sから10m/sまで上昇させた風速上昇時と風速を10m/sから1m/sまで下降させた風速下降時で行った。
【0027】
図13a、図13bに風速上昇時の回転数および回転増加率を示す。図6aの位置に設置したときと、風レンズを流体の流れ方向に5mm前進時を比較すると、回転開始風速が図6aの方が小さく回転トルクの発生を阻害しているのがわかる。また、風速7m/sで回転しはじめるが、回転数が大幅に下がっている。また、風レンズの位置が流体の流れ方向に5mm後退時も、回転開始風速は同じである者の、回転数が-20%程度減少していることがわかる。
【0028】
図14a、図14bに風速下降時の回転数および回転増加率を示す。風レンズが流体の流れ方向に5mm前進時の回転数を図6aの位置に設置したときと比較すると回転体が回転したときすべてで減少し、20%程度減少している。また、回転体が停止する風速を比較すると、5mm前進させたとき風速3m/sで停止しているおり、図6aの位置に設置したほうが低風速で回転している。風レンズの位置を流体の流れ方向に5mm後退時では、回転体が回転してるすべてで減少し、風速8m/sから10m/sで80%以上の大幅な回転数低下となった。また、回転体が停止する風速も4m/sと低風速で回転することが出来ないことがわかる。
【0029】
以上のような実験結果から、風レンズの位置は、図6aのように風レンズを側面から見て回転体と重なるように設置した時が、風レンズの設置に適した位置である。
【0030】
<第4の実施例1>
図3a、図3b、図3cに第4の実施例を示す。第4の実施例1は、第1の実施例に風レンズ設けたことを特徴とする流体回転装置である。
【0031】
図15a、図15bに風速上昇時の回転数および回転増加率を示す。風レンズ設置時の円弧状エンドプレート型円柱状回転体の回転数は、回転体が回転している風速7m/sから10m/sで回転数が増加している。しかし回転開始風速が、風レンズを設置したときの方が始動トルクが大きいという結果となった。
【0032】
図16a、図16bに風速下降時の回転数および回転増加率を示す。風速下降時の回転数が、回転体が回転している時10%以上増加しており、風速8m/sでは回転数が20%以上増加した。また、風レンズ設置時は風速2m/sで停止しているのに対し、風レンズを設置していないときは風速3m/sで停止していることから、風レンズを設置した方が低風速で回転がする。
【0033】
<第4の実施例2>
図4a、図4b、図4cに第4の実施例2を示す。第4の実施例2は、第2の実施例に風レンズ設けたことを特徴とする流体回転装置である。
【0034】
図17a、図17bに風速上昇時の回転数および回転増加率を示す。風レンズ設置時のリング状エンドプレート型円柱状回転体が回転している風速6m/sでは15%以上増加し、それ以上の風速でも回転数が増加した。
【0035】
図18a,図18bに風速下降時の回転数および回転増加率を示す。風レンズ設置時のリング状エンドプレート型円柱状回転体が回転している時の回転数は5%以上増加している。また、レンズ設置時は風速2m/sで停止しており、風レンズを設置していないと比較して、第4の実施例1同様、低風速で回転する。
【0036】
図19a、図19bに、円弧状エンドプレート型円柱状回転体とリング状エンドプレート型円柱状回転体の回転数の比較を示す。図19aは風速上昇時、図19bは風速下降時の回転数で、リング状エンドプレート型円柱状回転体の始動トルクが小さく、回転数も多い傾向にあることがわかる。
【0037】
以上の第4の実施例1および第4の実施例2の結果から、風レンズを設置することにより、回転数の増加と低風速で回転する。
【0038】
<第5の実施例>
実施例1から4に記載の回転装置を用いた風力発電装置。
実施例1から4に記載の回転装置の回転体に発電機を設けることで風力発電装置として活用することができる。発電機としては、例えばDCブラシレスモーターなど公知な発電機をいずれも採用することができる。従来のプロペラ型風車に比べ、負傷する危険性を低減した安全性の高い、堅牢な回転装置を提供できる。本実施例の実験データではプロタイプとして回転体の直径が約30cmの大きさの回転装置を用いたが、家庭のベランダなどに配置する風力発電装置として用いる場合は回転体の直径は約30cmから80cm程度である。なお、このような実施例に限定されずさらに大型の発電装置への適用も可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 回転翼
2 リング状体
3 円弧状エンドプレート
4 回転軸体
5 円弧状エンドプレート型円柱状回転体
6 リング状エンドプレート
7 リング状エンドプレート型円柱状回転体
8 風レンズ
9 特定しない回転体
10 風レンズの断面
11 回転体
12 風レンズ前面
13 風レンズ後面
14 回転体前面
15 回転体後面
16 流体及び流体の流れ方向
17 円柱状の回転体
18 平板及びリング状体
19 縦渦
20 回転方向
図1a
図1b
図1c
図1d
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図12a
図12b
図13a
図13b
図14a
図14b
図15a
図15b
図16a
図16b
図17a
図17b
図18a
図18b
図19a
図19b
【手続補正書】
【提出日】2022-02-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れ方向に略平行な回転軸体と、前記流体の流れ方向に対して略垂直に交差する回転面内で前記回転軸を中心に回転するように配設される円柱状の回転体と、後流物体であるリング状体を離間して備え、前記回転体と後流物体との間で発生する縦渦を駆動力とする流体回転装置において、
前記回転体は複数の回転翼を備え、その翼端に、前記翼端が回転する円周の曲面の一部をもつ円弧状エンドプレートを備え、
前記円弧状エンドプレートは流体の流れ方向に略平行に配置されている、
ことを特徴とする流体回転装置。
【請求項2】
前記円弧状エンドプレートに代えて各翼端が回転する円周の局面に沿ってリング状エンドプレートを備え
前記円弧状エンドプレートは流体の流れ方向に略平行に配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の流体回転装置。
【請求項3】
流体の入口から出口に向かって開口面積が拡がるよう形成された筒状のディフューザ(風レンズ)を、回転体の外周を囲うよう設けていることを特長とする請求項1乃至2にそれぞれ記載の流体回転装置。
【請求項4】
前記筒状のディフューザの後面は流体の流れ方向において前記回転体の後面と同じかそれより上流側に位置することを特長とする請求項3に記載の流体回転装置。
【請求項5】
請求項1乃至4にそれぞれ記載の流体回転装置を用いた風力発電装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の流体回転装置は、流体の流れ方向に略平行な回転軸体と、前記流体の流れ方向に対して略垂直に交差する回転面内で前記回転軸を中心に回転するように配設される円柱状の回転体と、後流物体であるリング状体を離間して備え、前記回転体と後流物体との間で発生する縦渦を駆動力とする流体回転装置であって、前記回転体は複数の回転翼を備え、その翼端に、前記翼端が回転する円周の曲面の一部をもつ円弧状エンドプレートを備え、前記円弧状エンドプレートは流体の流れ方向に略平行に配置されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
また、本発明の流体回転装置は、前記円弧状エンドプレートに代えて各翼端が回転する円周の局面に沿ってリング状エンドプレートを備え、前記円弧状エンドプレートは流体の流れ方向に略平行に配置されている。