(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134070
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】レール組立体
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20220907BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
E04G21/16
E04G21/12 105E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110729
(22)【出願日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2021032899
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513192742
【氏名又は名称】建ロボテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞部 達也
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174DA17
2E174DA31
2E174DA52
2E174EA01
2E174EA07
(57)【要約】
【課題】施工現場に仮設するだけで所定のレール配置間隔を保持して、鉄筋工事用走行体の走行軌道を確保し、工事用走行体が走行する際に工事用走行体の脱輪を抑止して安定した走行軌道を確保し、施工面において作業者との衝突などの不慮の事故を防止することができるレール組立体を提供すること。
【解決手段】左右一対の下端筋112と上端筋111とトラス構造を形成する補強筋113とから構成されているユニットレール部材110と、レール幅保持部材120と、上端筋111に沿って一体に固定して上乗せ配置されている走行用鉄筋レール130とから構成されているレール組立体100。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユニットレール部材と該ユニットレール部材を所定のレール配置間隔に並列配置した状態で一体に連結する複数のレール幅保持部材とで少なくとも構成して、前記ユニットレール部材を走行軌道として工事用走行体を走行させるレール組立体であって、
前記ユニットレール部材が、レール敷設面上に配置する左右一対の下端筋と該下端筋の上方域に離間して平行設置する1本の上端筋と前記下端筋と上端筋との相互間を連結してトラス構造を形成する補強筋とで構成されているとともに、
前記工事用走行体を走行させる走行用鉄筋レールが、前記ユニットレール部材の上端筋に沿って一体に上乗せ配置されているレール組立体。
【請求項2】
前記工事用走行体が、自走ロボットであり、
該自走ロボットが、施工面に配設された複数の鉄筋のうち任意の一本を駆動走行用のレールとして走行する駆動車輪ユニットと、該駆動車輪ユニットの左右両側に並設して前記駆動走行用のレールに隣接して並列配置された鉄筋を従動走行用のレールとしてそれぞれ走行する左右一対の従動車輪ユニットと、前記駆動車輪ユニットと前記左右一対の従動車輪ユニットとを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成されているともに、
前記ユニットレール部材が、前記自走ロボットの駆動車輪ユニットと左右一対の従動車輪ユニットとにそれぞれ対向して前記レール敷設面上に3組並列配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレール組立体。
【請求項3】
前記工事用走行体が、建築資材用貨車であり、
該建築資材用貨車が、施工面に配設された任意の複数の鉄筋のうち任意の二本を走行用のレールとして走行する少なくとも左右一対の従動車輪ユニットと該左右一対の従動車輪ユニットを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成されているともに、
前記ユニットレール部材が、前記建築資材用貨車の左右一対の従動車輪ユニットに対向して前記レール敷設面上に少なくとも2組並列配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレール組立体。
【請求項4】
前記工事用走行体が、自走ロボット及び該自走ロボットに牽引される建築資材用貨車であり、
前記自走ロボットが、施工面に配設された複数の鉄筋のうち任意の一本を駆動走行用のレールとして走行する駆動車輪ユニットと、該駆動車輪ユニットの左右両側に並設して前記駆動走行用のレールに隣接して並列配置された鉄筋を従動走行用のレールとしてそれぞれ走行する左右一対の従動車輪ユニットと、前記駆動車輪ユニットと左右一対の従動車輪ユニットとを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成され、
前記建築資材用貨車が、施工面に配設された複数の鉄筋のうち任意の2本を走行用のレールとして走行する少なくとも左右一対の従動車輪ユニットと該左右一対の従動車輪ユニットを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成され、
前記ユニットレール部材が、前記自走ロボットの駆動車輪ユニットと前記自走ロボットの左右一対の従動車輪ユニット及び前記建築資材用貨車の左右一対の従動車輪ユニットとに対向して前記レール敷設面上に3組並列配置されていることを特徴とする請求項1に記載のレール組立体。
【請求項5】
前記自走ロボットが、鉄筋結束用自走ロボットであり、
前記施工面が、コンクリート打設施工面であり、
前記走行用鉄筋レールのレール配置間隔及びレール配置高さが、前記コンクリート打設施工面における走行鉄筋の鉄筋配置間隔及び鉄筋配置高さと対応する寸法にそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項2又は請求項4に記載のレール組立体。
【請求項6】
前記走行用鉄筋レールが、レール長手方向に並んだ多数の節状凸部を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のレール組立体。
【請求項7】
前記ユニットレール部材、前記レール幅保持部材、及び前記走行用鉄筋レールが、コンクリート打設に用いる鉄筋で構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載のレール組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打設面等の施工面に敷設して自走ロボット等の工事用走行体を走行させるレール組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人らは、これまでに、コンクリート施工面に格子状に敷設した複数の鉄筋上を走行する鉄筋結束用の自走ロボット(特許文献1参照)を提案している。
一方、上記自走ロボットとは独立に、従来、コンクリート施工面に配設する補強用の鉄筋として、上下の弦材の間を補強筋が繰り返し折り返して作るトラス構造を備えたトラス鉄筋が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6633720号公報
【特許文献2】特公昭第61-38307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の鉄筋結束用自走ロボットは、施工面としてのコンクリート打設面に格子状に配筋された鉄筋上を走行しながら鉄筋相互の交差部を結束するものであり、施工現場に当該ロボット又は建築資材を搬入する際にはクレーンで吊り下げて運搬する場合があるが、施工現場の上方にすでに屋根が設置されているようなときには、クレーンのロープと屋根とが干渉するため、ロボットや建築資材を施工現場の所望位置に下せないという問題があった。
【0005】
一方、施工現場に特許文献2に開示されているようなトラス鉄筋が配設されている場合に、鉄筋結束用自走ロボットにトラス鉄筋上を走行させようとすると、トラス鉄筋の補強筋の上端である折返部が鉄筋結束用自走ロボットの車輪にぶつかって障害物となり、鉄筋結束用自走ロボットがトラス鉄筋上をうまく走行できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、施工現場に仮設するだけで所定のレール配置間隔を保持して、鉄筋工事用走行体の走行軌道を確保し、工事用走行体が走行する際に工事用走行体の脱輪を抑止して安定した走行軌道を確保し、レール敷設面において作業者との衝突などの不慮の事故を防止することができるレール組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本請求項1に係る発明は、複数のユニットレール部材と該ユニットレール部材を所定のレール配置間隔に並列配置した状態で一体に連結する複数のレール幅保持部材とで少なくとも構成して、前記ユニットレール部材を走行軌道として工事用走行体を走行させるレール組立体であって、前記ユニットレール部材が、レール敷設面上に配置する左右一対の下端筋と該下端筋の上方域に離間して平行設置する1本の上端筋と前記下端筋と上端筋との相互間を連結してトラス構造を形成する補強筋とで構成されているとともに、前記工事用走行体を走行させる走行用鉄筋レールが、前記ユニットレール部材の上端筋に沿って一体に上乗せ配置されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0008】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記工事用走行体が、自走ロボットであり、該自走ロボットが、施工面に配設された複数の鉄筋のうち任意の一本を駆動走行用のレールとして走行する駆動車輪ユニットと、該駆動車輪ユニットの左右両側に並設して前記駆動走行用のレールに隣接して並列配置された鉄筋を従動走行用のレールとしてそれぞれ走行する左右一対の従動車輪ユニットと、前記駆動車輪ユニットと左右一対の従動車輪ユニットとを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成されているともに、前記ユニットレール部材が、前記自走ロボットの駆動車輪ユニットと左右一対の従動車輪ユニットとにそれぞれ対向して前記レール敷設面上に3組並列配置されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0009】
本請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記工事用走行体が、建築資材用貨車であり、該建築資材用貨車が、施工面に配設された複数の鉄筋のうち任意の二本を走行用のレールとして走行する少なくとも左右一対の従動車輪ユニットと該左右一対の従動車輪ユニットを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成されているともに、前記ユニットレール部材が、前記建築資材用貨車の左右一対の従動車輪ユニットに対向して前記レール敷設面上に少なくとも2組並列配置されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項4に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記工事用走行体が、自走ロボット及び該自走ロボットに牽引される建築資材用貨車であり、該前自走ロボットが、施工面に配設された複数の鉄筋のうち任意の一本を駆動走行用のレールとして走行する駆動車輪ユニットと、該駆動車輪ユニットの左右両側に並設して前記駆動走行用のレールに隣接して並列配置された鉄筋を従動走行用のレールとしてそれぞれ走行する左右一対の従動車輪ユニットと、前記駆動車輪ユニットと前記左右一対の従動車輪ユニットとを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成され、該建築資材用貨車が、施工面に配設された複数の鉄筋のうち任意の二本を走行用のレールとして走行する左右一対の従動車輪ユニットと該左右一対の従動車輪ユニットを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成され、前記ユニットレール部材が、前記自走ロボットの駆動車輪ユニットと前記自走ロボットの左右一対の従動車輪ユニット及び前記建築資材用貨車の左右一対の従動車輪ユニットとに対向して前記レール敷設面上に3組並列配置されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項5に係る発明は、請求項2又は請求項4に係る発明の構成に加えて、前記自走ロボットが鉄筋結束用自走ロボットであり、前記施工面がコンクリート打設施工面であり、前記走行用鉄筋レールのレール配置間隔及びレール配置高さが、前記コンクリート打設施工面における走行鉄筋の鉄筋配置間隔及び鉄筋配置高さと対応する寸法にそれぞれ設定されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記走行用鉄筋レールが、レール長手方向に並んだ多数の節状凸部を有していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0013】
本請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6に係る発明の構成に加えて、前記ユニットレール部材、前記レール幅保持部材、及び前記走行用鉄筋レールが、コンクリート打設に用いる鉄筋で構成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に係る発明のレール組立体によれば、複数のユニットレール部材とこのユニットレール部材を所定のレール配置間隔に並列配置した状態で一体に連結する複数のレール幅保持部材とで少なくとも構成されていることにより、レール組立体が工事用走行体の走行軌道を形成して、工事用走行体の可動領域がレール敷設面において明確に区画されるため、レール敷設面において作業者との衝突などの不慮の事故を防止することができる。
【0015】
また、ユニットレール部材が、レール敷設面上に配置する左右一対の下端筋と、この下端筋の上方域に離間して平行設置する1本の上端筋と、これら下端筋と上端筋との相互間を連結してトラス構造を形成する補強筋とで構成されていることにより、ユニットレール部材の下端筋と上端筋との相互間に形成されたトラス構造が鉄筋工事用走行体の走行時に生じる走行荷重を確実に支えるため、レール敷設面に不陸と称する多少の凹凸状態があってもユニットレール部材が撓まず、その結果、工事用走行体が走行する際に工事用走行体の脱輪を抑止して安定した走行軌道を確保することができる。
【0016】
さらに、ユニットレール部材を所定のレール配置間隔に並列配置した状態で一体に連結する複数のレール幅保持部材を備えていることにより、ユニットレール部材同士が所定のレール配置間隔で予め確実に固定されているため、レール組立体をレール敷設面に仮設するだけで所定のレール配置間隔を保持した走行軌道を確保することができる。
【0017】
本発明の請求項2に係る発明のレール組立体によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、工事用走行体が、自走ロボットであり、この自走ロボットが、コンクリート打設施工面に格子状に配設された複数の鉄筋のうち上側に配置された任意の一本を駆動走行用のレールとして走行する駆動車輪ユニットと、この駆動車輪ユニットの左右両側に並設して駆動走行用のレールに隣接して並列配置された鉄筋を従動走行用のレールとしてそれぞれ走行する左右一対の従動車輪ユニットと、駆動車輪ユニットと左右一対の従動車輪ユニットとを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成されているともに、ユニットレール部材が、自走ロボットの駆動車輪ユニットと左右一対の従動車輪ユニットとにそれぞれ対向してレール敷設面上に3組並列配置されていることにより、外側に配置している2本のユニットレール部材を左右一対の従動車輪ユニットがそれぞれ走行するレールとして使用し、内側に配置しているユニットレール部材を駆動車輪ユニットが走行するレールとして使用することで、駆動力を左右にバランスよく配分するため、安定した走行を確保することができる。
【0018】
本請求項3に係る発明のレール組立体によれば、請求項1に係る発明の構成に加えて、工事用走行体が、建築資材用貨車であり、建築資材用貨車が、施工面に配設された複数の鉄筋のうち任意の二本を走行用のレールとして走行する左右一対の従動車輪ユニットと左右一対の従動車輪ユニットを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成されているともに、ユニットレール部材が、建築資材用貨車の左右一対の従動車輪ユニットに対向してレール敷設面上に少なくとも2組並列配置されていることにより、2本のユニットレール部材を左右一対の従動車輪ユニットがそれぞれ走行するレールとして使用することで、建築資材の重量を左右にバランスよく配分するため、安定した運搬走行を確保することができる。
【0019】
本請求項4に係る発明のレール組立体によれば、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記工事用走行体が、自走ロボット及び自走ロボットに牽引される建築資材用貨車であり、記自走ロボットが、施工面に配設された複数の鉄筋のうち任意の一本を駆動走行用のレールとして走行する駆動車輪ユニットと、駆動車輪ユニットの左右両側に並設して駆動走行用のレールに隣接して並列配置された鉄筋を従動走行用のレールとしてそれぞれ走行する左右一対の従動車輪ユニットと、駆動車輪ユニットと左右一対の従動車輪ユニットとを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成され、建築資材用貨車が、コンクリート打設施工面に格子状に配設された複数の鉄筋のうち上側に配置された任意の二本を走行用のレールとして走行する左右一対の従動車輪ユニットと該左右一対の従動車輪ユニットを一体に連結して搭載するフレームユニットとで構成され、前記ユニットレール部材が、自走ロボットの駆動車輪ユニットと自走ロボットの左右一対の従動車輪ユニット及び建築資材用貨車の左右一対の従動車輪ユニットとに対向して前記レール敷設面上に3組並列配置されていることにより、内側に配置しているユニットレール部材を自走ロボットの駆動車輪ユニットが走行するレールとして使用し、外側に配置している2本のユニットレール部材を自走ロボットの左右一対の従動車輪ユニットがそれぞれ走行するレールとして使用することで、駆動力を左右にバランスよく配分するため、安定した走行を確保することができるとともに、外側に配置している2本のユニットレール部材を建築資材用貨車の左右一対の従動車輪ユニットがそれぞれ走行するレールとして使用することで、建築資材の重量を左右にバランスよく配分するため、安定した運搬走行を確保することができる。
【0020】
本発明の請求項5に係る発明のレール組立体によれば、請求項2又は請求項4に係る発明が奏する効果に加えて、自走ロボットが鉄筋結束用自走ロボットであり、施工面がコンクリート打設施工面であり、走行用鉄筋レールのレール配置間隔及びレール配置高さが、コンクリート打設施工面における走行鉄筋の鉄筋配置間隔及び鉄筋配置高さと対応する寸法にそれぞれ設定されていることにより、レール組立体と走行鉄筋とが段差のない面一状態で滑らかに接続されるため、鉄筋結束用自走ロボットがコンクリート打設現場のコンクリート打設施工面外で重量物を運搬してレール組立体上を走行した後に、コンクリート打設施工面に配設された走行鉄筋上に乗り換える場合など、レール組立体と走行鉄筋との相互間を乗り継ぐ際に、走行鉄筋に衝撃荷重が加わらずに安定して乗り継ぎ、構造材としての鉄筋の劣化や変形を防ぐことができる。
【0021】
本発明の請求項6に係る発明のレール組立体によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、走行用鉄筋レールが、この走行用鉄筋レールのレール長手方向に並んだ多数の節状凸部を有していることにより、節状凸部が工事用走行体の走行時に滑り止め機能を奏するため、工事用走行体が重量物を運搬する際、あるいは、傾斜部を走行する際に、走行用鉄筋レールに対する駆動車輪ユニットのスリップを防ぎ、工事用走行体の登坂動作及び制動動作を補助することができる。
【0022】
本発明の請求項7に係る発明のレール組立体によれば、請求項1乃至請求項6に係る発明が奏する効果に加えて、ユニットレール部材、レール幅保持部材、及び走行用鉄筋レールが、コンクリート打設に用いる鉄筋で構成されていることにより、レール組立体自体が、コンクリート打設後のコンクリート補強部材として活用されるため、コンクリート打設後にレール組立体をコンクリート打設現場から撤去する撤去作業が不要となり、コンクリート打設の施工工期を大幅に短縮するとともに、施工負担を著しく軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明のレール組立体を走行する鉄筋工事用走行体としての自走ロボットが格子状に配設された鉄筋を走行する様子を示す模式図。
【
図2】本発明の第1実施例に係るレール組立体を示す模式的斜視図。
【
図3】本発明の第1実施例に係るレール組立体組立方法を示す模式的組立図。
【
図4】本発明の第1実施例に係るレール組立体がレール敷設面上に配設されている状態を長手方向から見た状態を示す模式的断面図。
【
図5】本発明の第1実施例に係るレール組立体を走行する鉄筋工事用走行体としての自走ロボットがコンクリート打設施工面に配設された走行鉄筋上に乗り換える様子を示す模式図。
【
図6】本発明の第2実施例に係るレール組立体の上に鉄筋工事用走行体としての建築資材用貨車が搭載されている状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のレール組立体は、複数のユニットレール部材とこのユニットレール部材を所定のレール配置間隔に並列配置した状態で一体に連結する複数のレール幅保持部材とで少なくとも構成されていることにより、レール敷設面において作業者との衝突などの不慮の事故を防止することができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0025】
また、本発明のレール組立体は、ユニットレール部材が、レール敷設面上に配置する左右一対の下端筋とこの下端筋の上方域に離間して平行設置する1本の上端筋と前記下端筋と上端筋との相互間を連結してトラス構造を形成する補強筋とで構成されていることにより、コンクリート打設現場のレール敷設面に不陸と称する多少の凹凸状態があってもユニットレール部材が撓まず、その結果、工事用走行体が走行する際に工事用走行体の脱輪を抑止して安定した走行軌道を確保することができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0026】
さらに、本発明のレール組立体は、ユニットレール部材を所定のレール配置間隔に並列配置した状態で一体に連結する複数のレール幅保持部材を備えていることにより、レール組立体をレール敷設面に仮設するだけで所定のレール配置間隔を保持した走行軌道を確保することができるものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0027】
例えば、ユニットレール部材は、2本の下端筋と1本の上端筋との相互間を、左右2本の連続する補強筋でそれぞれ連絡してトラス構造を形成し、これらの鉄筋を相互に溶接固定して構成することができるが、市販のいわゆるトラス鉄筋を転用して用いれば、迅速にレール組立体を組み立てることができる。上端筋は丸鋼で構成してもよいし、異形鉄筋等の棒鋼で構成してもよい。
【0028】
また、走行用鉄筋レールとしては、市販の竹節鉄筋を用いることができるが、工事用走行体としての自走ロボットが建築資材用貨車に搭載した重量物を運搬する際、あるいは、工事用走行体としての自走ロボットが傾斜部を走行する際に、走行用鉄筋レールに対する駆動車輪ユニットのスリップを防ぎ、自走ロボットの登坂動作及び制動動作を補助することができるものであれば、市販のその他の形状の鉄筋又はラックレール(歯軌条)等、少なくともその上面に、レール長手方向に並んだ多数の凸部を有している形状の部材を用いることができる。
【0029】
複数のユニットレール部材を所定のレール配置間隔に並列配置した状態で、複数のレール幅保持部材により一体に連結する際には、構造鉄筋の結束に用いる鉄筋結束線を用いて結束すれば、レール配置間隔の調整やレール組立体を撤去する際の分解が容易であるが、レール配置間隔の調整やレール組立体の分解及び撤去が不要である場合には、ユニットレール部材とレール幅保持部材とを溶接により相互に固定させても良い。
【0030】
本発明のレール組立体は、建築現場の地面、建築物の床面等の工事用走行体を走行させる場所をレール敷設面として敷設することができる。また、格子状に仮設した鉄筋の上面等、工事用走行体がむやみに走行することによる状態変化が好ましくない施工面をレール敷設面としてレール組立体を仮設することにより用いることができる。
【0031】
本発明に係る工事用走行体は、走行用の駆動力を有する各種の自走ロボットとすることができ、特に鉄筋結束用自走ロボットとすることができる。この場合、単数の駆動車輪ユニットが1本の鉄筋を駆動走行用のレールとして走行するものに限らず、複数の駆動車輪ユニットが、2本以上の鉄筋をそれぞれ駆動走行用のレールとするものであってもよい。
【0032】
また、本発明に係る工事用走行体は、走行用の駆動力を有していない建築資材用貨車であってもよい。さらに、左右一対の従動車輪ユニットが従動走行用のレールとして鉄筋上をそれぞれ走行するものに限らず、3組以上の従動輪ユニットを有していてもよい。
【0033】
したがって、本発明のレール組立体は、必要に応じて3本以上のユニットレール部材を並列配置して構成される場合がある。
【実施例0034】
本発明の第1実施例であるレール組立体について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。ここで、
図1は、本発明のレール組立体を走行する鉄筋工事用走行体としての自走ロボットが格子状に配設された鉄筋を走行する様子を示す模式図であり、
図2は、本発明の第1実施例に係るレール組立体を示す模式的斜視図であり、
図3は、本発明の第1実施例に係るレール組立体の組立方法を示す模式的組立図であり、
図4は、本発明の第1実施例に係るレール組立体がレール敷設面上に配設されている状態を長手方向から見た状態を示す模式的断面図であり、
図5は、本発明の第1実施例に係るレール組立体を走行する鉄筋工事用走行体としての自走ロボットがコンクリート打設施工面に配設された走行鉄筋上に乗り換える様子を示す模式図である。
【0035】
まず、
図1を参照して、本発明のレール組立体を走行する鉄筋工事用走行体としての自走ロボットRが格子状に配設された鉄筋を走行する様子を説明する。本実施例の自走ロボットRは、鉄筋結束機能を有している。
【0036】
本発明のレール組立体を走行する自走ロボットRは、施工面としてのコンクリート打設施工面に格子状に配設された複数の鉄筋のうち、上側に配置された走行鉄筋LRの任意の一本を駆動走行用のレールとして走行する駆動車輪ユニットWdと、この駆動車輪ユニットWdの左右両側に並設して駆動走行用のレールに隣接して並列配置された走行鉄筋LRを従動走行用のレールとしてそれぞれ走行する左右一対の従動車輪ユニットWuと、駆動車輪ユニットWdと左右一対の従動車輪ユニットWuとを一体に連結して搭載するフレームユニットFuとを少なくとも有している。
【0037】
左右一対の従動車輪ユニットWuは、それぞれ軌道を同じくする前輪Wfと後輪Wrとから構成されている。
【0038】
自走ロボットRは、前輪Wfと後輪Wrとの間に、着脱自在に装着された鉄筋結束機TMを備えており、走行鉄筋LR上を走行しながら、走行鉄筋LRと直行鉄筋TRとの交差部分を結束することができる。
【0039】
次に、
図2乃至
図5を参照して、本発明のレール組立体100の一実施例について説明する。
【0040】
本実施例に係るレール組立体100は、
図2及び
図4に示すように、3本のユニットレール部材110と、このユニットレール部材110を所定のレール配置間隔Wに並列配置した状態で一体に連結する複数のレール幅保持部材120と、走行用鉄筋レール130と、鉄筋結束線140とから構成されている。
【0041】
ユニットレール部材110は、レール敷設面上に配置する左右一対の下端筋112とこの下端筋112の上方域に離間して平行設置する1本の上端筋111と、下端筋112と上端筋111との相互間を連結してトラス構造を形成する補強筋113とを相互に固定して構成されている。
【0042】
レール幅保持部材120は、1つのレール組立体100に複数個所に配置されており、3本のユニットレール部材110を所定のレール配置間隔Wに並列配置した状態で、これらと直交して相互に一体に連結している。
【0043】
走行用鉄筋レール130は、自走ロボットRを走行させるために、ユニットレール部材110の上端筋111に沿って、一体に固定して上乗せ配置されている。
【0044】
鉄筋結束線140は、3本のユニットレール部材110と複数のレール幅保持部材120とを結束固定している。
【0045】
次に、本実施例のレール組立体100を組み立てる手順を説明する。
【0046】
まず、ユニットレール部材110を組み立てる際には、左右一対の下端筋112とこの下端筋112の上方域に離間して1本の上端筋111を配置し、繰り返し折り返し構造を有している補強筋113の折り返し部113aをこれら下端筋112及び上端筋111の側部に沿わせて、下端筋112及び上端筋111の側部と補強筋113とが接している部位を溶接して相互に固定する。
【0047】
次に、ユニットレール部材110の上端筋111に沿って、走行用鉄筋レール130を上乗せ配置し、上端筋111と走行用鉄筋レール130とを溶接して相互に固定する。
【0048】
そして、走行用鉄筋レール130がそれぞれ一体に固定されている3本のユニットレール部材110を、所定のレール配置間隔Wに並列配置した状態で、これら3本のユニットレール部材110と、ユニットレール部材110の長手方向に直交して配置した複数のレール幅保持部材120とを、鉄筋結束線140により結束して相互に固定する。
【0049】
この際、上端筋111に沿って一体に固定して上乗せ配置されている走行用鉄筋レール130は、レール幅保持部材120により所定のレール配置間隔W及び所定のレール配置高さHに保持されて、相互に固定されることになる。
【0050】
次に、
図1及び
図5を参照して、本実施例のレール組立体100のユニットレール部材110を走行軌道として自走ロボットRを走行させる方法を説明する。
【0051】
自走ロボットRは、コンクリート打設施工面CPに鉄筋配置間隔wを保持して平行に配設された複数の走行鉄筋LRを、駆動走行用のレール及び従動走行用のレールとして走行することができるものであり、フレームユニットFuの中央部に同一軌道の2つの駆動車輪ユニットWdが前後に並んで搭載されており、これら前後2つの駆動車輪ユニットWdの左右両側に、一対の従動車輪ユニットWuが駆動車輪ユニットWdとwの間隔を保って、それぞれフレームユニットFuに搭載されている。
【0052】
したがって、レール組立体100の3本のユニットレール部材110が並列配置されるレール配置間隔Wを、鉄筋配置間隔wと同一寸法に設定しておけば、自走ロボットRの駆動車輪ユニットWd及び一対の従動車輪ユニットWuを、それぞれユニットレール部材110と一体に固定して上乗せ配置されている走行用鉄筋レール130の上に載置するだけで、左右の車輪の間隔について特段の調整を行うことなく、自走ロボットRにレール組立体100上を走行させることができる。
【0053】
さらに、
図5に示すように、自走ロボットRは、コンクリート打設施工面CPにおいてスペーサーSを用いて鉄筋配置高さhを保持して配設された複数の走行鉄筋LRを、駆動走行用のレール及び従動走行用のレールとして走行することができるものであり、レール配置高さHを、鉄筋配置高さhと同一寸法に設定しておけば、自走ロボットRが重量物を運搬してレール組立体100上を走行した後に、コンクリート打設施工面CPに配設された走行鉄筋LR上に乗り換える場合など、レール組立体100と走行鉄筋LRとの相互間を乗り継ぐ際に、走行鉄筋LRに衝撃荷重を与えずに安定して乗り継ぐことができる。
【0054】
なお、レール組立体100と走行鉄筋LRとの接続部や、複数のレール組立体100を長手方向に並べて接続する場合の接続部に、スリーブ状のレール接続部材Jを配置して両側から接続すべきレールまたは鉄筋を挿入すれば、レール接続部材Jが接続部の隙間を覆って、自走ロボットRの脱輪を防ぐことができる。
【0055】
以上説明したように、本実施例のレール組立体100によれば、コンクリート打設時に敷設して用いる複数のユニットレール部材110とこのユニットレール部材110を所定のレール配置間隔Wに並列配置した状態で一体に連結する複数のレール幅保持部材120とで少なくとも構成されていることにより、レール組立体100が自走ロボットRの走行軌道を形成して、自走ロボットRの可動領域がコンクリート打設現場において明確に区画されるため、コンクリート打設現場において作業者との衝突などの不慮の事故を防止することができる。
【0056】
また、ユニットレール部材110が、レール敷設面上に配置する左右一対の下端筋112と、この下端筋112の上方域に離間して平行設置する1本の上端筋111と、これら下端筋112と上端筋111との相互間を連結してトラス構造を形成する補強筋113とで構成されていることにより、ユニットレール部材110の下端筋112と上端筋111との相互間に形成されたトラス構造が自走ロボットRの走行時に生じる走行荷重を確実に支えるため、コンクリート打設現場のレール敷設面に不陸と称する多少の凹凸状態があってもユニットレール部材110が撓まず、その結果、自走ロボットRそれ自体が走行する場合や自走ロボットRが荷物を運搬する貨車を牽引して走行する際に自走ロボットRの脱輪を抑止して安定した走行軌道を確保することができる。
【0057】
さらに、ユニットレール部材110を所定のレール配置間隔Wに並列配置した状態で一体に連結する複数のレール幅保持部材120を備えていることにより、ユニットレール部材110同士が所定のレール配置間隔Wで予め確実に固定されているため、レール組立体100をコンクリート打設現場に仮設するだけで、所定のレール配置間隔Wを保持した走行軌道を確保することができる。
【0058】
加えて、自走ロボットRが、コンクリート打設施工面CPに格子状に配設された複数の鉄筋のうち上側に配置された走行鉄筋LRの任意の一本を駆動走行用のレールとして走行する駆動車輪ユニットWdと、この駆動車輪ユニットWdの左右両側に並設して駆動走行用のレールに隣接して並列配置された走行鉄筋LRを従動走行用のレールとしてそれぞれ走行する左右一対の従動車輪ユニットWuと、駆動車輪ユニットWdと左右一対の従動車輪ユニットWuとを一体に連結して搭載するフレームユニットFuとで構成されているともに、ユニットレール部材110が、自走ロボットRの駆動車輪ユニットWdと左右一対の従動車輪ユニットWuとにそれぞれ対向してレール敷設面上に3組並列配置されていることにより、外側に配置している2本のユニットレール部材110を左右一対の従動車輪ユニットWuがそれぞれ走行するレールとして使用し、内側に配置しているユニットレール部材110を駆動車輪ユニットWdが走行するレールとして使用することで、駆動力を左右にバランスよく配分するため、安定した走行を確保することができる。
【0059】
さらにまた、走行用鉄筋レール130が、この走行用鉄筋レール130のレール長手方向に並んだ多数の節状凸部130aを有していることにより、節状凸部130aが自走ロボットRの走行時に滑り止め機能を奏するため、自走ロボットRが重量物を運搬する際、あるいは、自走ロボットRが傾斜部を走行する際に、走行用鉄筋レール130に対する駆動車輪ユニットWdのスリップを防ぎ、自走ロボットRの登坂動作及び制動動作を補助することができる。
【0060】
そして、走行用鉄筋レール130のレール配置間隔W及びレール配置高さHが、コンクリート打設施工面CPに配設されている走行鉄筋LRの鉄筋配置間隔w及び鉄筋配置高さhと対応する寸法にそれぞれ設定されていることにより、レール組立体100と走行鉄筋LRとが段差のない面一状態で滑らかに接続されるため、鉄筋結束機能を有している自走ロボットRがコンクリート打設現場のコンクリート打設施工面CP外で重量物を運搬してレール組立体上を走行した後に、コンクリート打設施工面CPに配設された走行鉄筋LR上に乗り換える場合など、レール組立体100と走行鉄筋LRとの相互間を乗り継ぐ際に、走行鉄筋LRに衝撃荷重が加わらずに安定して乗り継ぎ、構造材としての走行鉄筋LR及び直行鉄筋TRの劣化や変形を防ぐことができる。
【0061】
これらに加えて、ユニットレール部材110、レール幅保持部材120、及び走行用鉄筋レール130が、コンクリート打設に用いる鉄筋で構成されていることにより、レール組立体100自体が、コンクリート打設後のコンクリート補強部材として活用されるため、コンクリート打設後にレール組立体100をコンクリート打設現場から撤去する撤去作業が不要となり、コンクリート打設の施工工期を大幅に短縮するとともに、施工負担を著しく軽減することができる。
本発明のレール組立体200を走行する鉄筋工事用走行体としての建築資材用貨車Cは、駆動走行するための駆動力源を備えておらず、外部から与えられる人力により、又は自走ロボットRに牽引されて従動走行するものである。
建築資材用貨車Cは、コンクリート打設施工面に格子状に配設された複数の鉄筋のうち、上側に配置された2本の走行鉄筋LRを走行用のレールとして従動走行する左右一対の従動車輪ユニットWucと、この左右一対の従動車輪ユニットWucを一体に連結して搭載するフレームユニットFucとを少なくとも有している。
本実施例に係るレール組立体200は、ユニットレール部材210及び走行用鉄筋レール230が、それぞれ2本である点、及び、ユニットレール部材210とレール幅保持部材220とが溶接により相互に固定されている点以外は、第1実施例に係るレール組立体100と同様に構成されている。
以上説明したように、鉄筋工事用走行体としての建築資材用貨車Cであり、建築資材用貨車Cが、コンクリート打設施工面に格子状に配設された複数の鉄筋のうち上側に配置された任意の二本を走行用のレールとして走行する左右一対の従動車輪ユニットと左右一対の従動車輪ユニットWucを一体に連結して搭載するフレームユニットFucとで構成されているともに、ユニットレール部材210が、建築資材用貨車Cの左右一対の従動車輪ユニットWucに対向してレール敷設面上に少なくとも2組並列配置されていることにより、2本のユニットレール部材210を左右一対の従動車輪ユニットWucがそれぞれ走行するレールとして使用することで、建築資材の重量を左右にバランスよく配分するため、安定した運搬走行を確保することができる。