(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134085
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】弾性波地震周波数共振探査方法
(51)【国際特許分類】
G01V 1/28 20060101AFI20220907BHJP
【FI】
G01V1/28
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021175360
(22)【出願日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】202110230159.2
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521471073
【氏名又は名称】北京派特森科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】薛 愛民
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA02
2G105BB01
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE02
2G105GG05
2G105LL01
2G105MM01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】弾性地震波伝播過程で共振が発生する原理を利用して、地下媒体に対して空間と属性イメージングを行うことができる探査方法を提供する。
【解決手段】弾性波地震周波数共振探査方法に関し、設定された測定領域内に地面基準点x及び任意の採集点yを設置することを含み、以下のステップを実行する。ステップS1、前記地面基準点xでの励起源フィールドIn
(x,f)を算出し、ステップS2、前記励起源フィールドIn
(x,f)に基づいて、前記採集点yでの励起源フィールドIn
(y,f)を決定し、ステップS3、前記励起源フィールドIn
(y,f)に基づいて、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM
(y,f)を算出する。この方法は、雑音源弾性波地震データに基づき地下媒体に対して空間と属性のイメージングを行うのに適用されるが、人工励起源を使用する場合のこの方法の有効性を排除するものではない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性波地震周波数共振探査方法であって、
設定された測定領域内に地面基準点x及び任意の採集点yを設置することを含み、以下のステップ:
ステップS1、前記地面基準点xでの励起源フィールドIn(x,f)を算出し、
ステップS2、前記励起源フィールドIn(x,f)に基づいて、前記採集点yでの励起源フィールドIn(y,f)を決定し、
ステップS3、前記励起源フィールドIn(y,f)に基づいて、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,f)を算出する
を含む
ことを特徴とする弾性波地震周波数共振探査方法。
【請求項2】
前記ステップS1において、In(x,f)=Amp(x,f)/M(x,f)の式を用いて、前記地面基準点xでの励起源フィールドIn(x,f)を算出し、そのうち、Amp(x,f)は、前記地面基準点xでの周波数領域振幅スペクトルデータであり、M(x,f)は、前記地面基準点xでの周波数領域地層波動インピーダンス比率データである
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップS2において、実際の探査必要に応じて、設定された測定領域内で複数の前記地面基準点xiを設計し、そのうち、iは、1,2…nであり、前記地面基準点xiの励起源フィールドIn(Xi,f)を算出し、数学方法を採用して外延及び補間を行い、前記採集点yでの励起源フィールドIn(y,f)を得る
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップS3において、M(y,f)=Amp(y,f)/In(y,f)の式を用いて、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,f)を算出し、そのうち、Amp(y,f)は、前記採集点yでの周波数領域振幅スペクトルデータである
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップS1の前に、以下のプリ処理ステップ:
ステップA1、振動信号センサを利用して、前記地面基準点xと前記採集点yでの地下媒体弾性波時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)をそれぞれ採集し、
ステップA2、前記時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)を、それぞれフーリェ変換して、周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)を得て、
ステップA3、前記地面基準点xで、周波数fと地下深度dとの関数関係を確立し、
ステップA4、前記関数関係に従って、前記地面基準点xでの深度領域地層波動インピーダンス比率データM(x,d)を周波数領域地層波動インピーダンス比率データM(x,f)に変換する
を含む
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記地面基準点xで、以下の式に従って周波数fと地下深度dとの線形関数関係を確立し、
d=0.25・V/f、ただし、Vは、地層波動場平均速度であり、fは、周波数であり、dは、地下深度であり、
又は、前記地面基準点xでの周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)と深度領域地層波動インピーダンス比率データM(x,d)とを比較分析し、周波数f、地層波動場平均速度Vと地下深度dとの非線形関数関係を確立する
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)は、単回又は複数回で得られた単一成分又は多成分データであり、採集時間長さとサンプリング時間間隔は、検出深度によって決定され、前記採集時間長さは、以下の式:
T≧1500・D/V
(ただし、Dは、検出深度であり、単位がメートルであり、Vは、地層波動場平均速度であり、単位がメートル/秒であり、Tは、採集時間長さであり、単位が秒)
前記サンプリング時間間隔は、以下の式:
ΔT=4・ΔD/V
(ΔTは、サンプリング時間間隔であり、単位が秒であり、Vは、地層波動場平均速度であり、単位がメートル/秒であり、ΔDは、所望の検出深度最低解像度であり、単位がメートル)
による
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップA2の前に、採集された前記時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)に対して、それぞれプリ処理を行い、前記プリ処理は、フィルタリング処理、振幅時変補正処理及び外れ値抑圧処理を含む
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップA2は、同一位置で複数回の採集によって得られた前記周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)に対して、それぞれ、周波数領域の算術平均を行うことをさらに含む
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップA3の前に、採集機器の一致性について、前記周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)の損害に対して、それぞれ、補償と補正を行う
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップS3の後に、以下のステップ:
ステップS4、前記線形又は非線形関数関係に従って、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,f)を深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)に変換し、
ステップS5、前記深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)を積分して、地層見かけ波動インピーダンス比率データR(y,d)を得る
を含む
請求項6ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ステップS4は、前記深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)を地面標高補正、地表静補正、標準ウェルパラメータ補正を行うことをさらに含む、ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップS4は、前記深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)を正則化処理することをさらに含む
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記弾性波は、圧縮波、剪断波、表面波を含む
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震探査技術分野に関し、特に、弾性波地震周波数共振探査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の地震探査方法技術は、地震波走時と地層の速度を利用して、地質体の空間構造と属性特徴を測定し、所要波動場は人工励起することを要求する。この技術は、既に100年近く発展し、地学分野に広く応用されている。とはいえ、この方法技術は、応用において多くの不足がある。まず、この技術は、人工震源が必要であり、その次、大量の探査ブラインド領域が存在する。人工震源は、人口密集エリアと環境保護エリアなどのエリアで使用が困難であり、探査ブラインド領域も方法技術の応用範囲を極めて大きく制限し、例えば、浅層探査、高角度地層探査、火成岩変質岩地域の探査、岩石に明らかな界面がない岩質地域探査、及びカルスト発育及び複雑地質構造地域の探査などの分野では、従来の地震探査技術は応用が困難である。
【0003】
上記従来の地震探査方法技術の不足に基づき、特許文献1:中国特許出願CN110954943Aに記載の「受動源地震周波数共振探査方法」は、上記技術の不足を一部補完した。しかし、この方法技術を応用する過程において、我々は、まだ一部の理論的や技術的な弱点と欠陥を補充や改善する必要があることを見出した。まず、特許文献1:特許出願CN110954943Aは、まだ励起源フィールドが探査結果に与える影響を考慮していない。その次、深度領域の地層波動インピーダンス比率データに対して、必要な技術的補正を行っておらず、この点では、従来の反射地震探査技術も既に比較的に成熟している。最後に、波動インピーダンス比率データを波動インピーダンスデータと他の弾性地質体パラメータ断面に変換する必要がある。上記欠陥を補充し、特に励起源フィールド影響問題という理論的欠陥を改善するには、地震波周波数領域探査方法にとって、非常に必要である。
【0004】
そのため、本発明は、「受動源地震周波数共振探査方法」における補充すべき技術を補充するだけでなく、方法技術における理論的問題を改善し、この方法技術をより完璧及び実用にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願CN110954943A「受動源地震周波数共振探査方法」
【発明の概要】
【0006】
従来技術の不足を解決するために、本発明は、弾性地震波伝播過程で共振が発生する原理を利用して、地下媒体に対して空間と属性イメージングを行うことができる弾性波地震周波数共振探査方法を提案する。原則として、この方法は震源と受信機との関係を考慮せず、地球表面が受信した地下からの振動雑音のみによって地下媒体に対してイメージングすることができる。
【0007】
上記目的を実現するために、本発明で用いられる技術案は、
弾性波地震周波数共振探査方法であって、
設定された測定領域内に地面基準点x及び任意の採集点yを設置することを含み、以下のステップを実行し、
ステップS1、前記地面基準点xでの励起源フィールドIn(x,f)を算出し、
ステップS2、前記励起源フィールドIn(x,f)に基づいて、前記採集点yでの励起源フィールドIn(y,f)を決定し、
ステップS3、前記励起源フィールドIn(y,f)に基づいて、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,f)を算出する、ことを特徴とする弾性波地震周波数共振探査方法を含む。
【0008】
さらに、前記ステップS1において、In(x,f)=Amp(x,f)/M(x,f)の式を用いて、前記地面基準点xでの励起源フィールドIn(x,f)を算出し、そのうち、Amp(x,f)は、前記地面基準点xでの周波数領域振幅スペクトルデータであり、M(x,f)は、前記地面基準点xでの周波数領域地層波動インピーダンス比率データである。
【0009】
さらに、前記ステップS2において、実際の探査必要に応じて、設定された測定領域内で複数の前記地面基準点xiを設計し、そのうち、iは、1,2…nであり、前記地面基準点xiの励起源フィールドIn(Xi,f)を算出し、数学方法を採用して外延及び補間を行い、前記採集点yでの励起源フィールドIn(y,f)を得る。
【0010】
さらに、前記ステップS3において、M(y,f)=Amp(y,f)/In(y,f)の式を用いて、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,f)を算出し、そのうち、Amp(y,f)は、前記採集点yでの周波数領域振幅スペクトルデータである。
【0011】
さらに、前記ステップS1の前に、以下のプリ処理ステップをさらに含み、
ステップA1、振動信号センサを利用して、前記地面基準点xと前記採集点yでの地下媒体弾性波時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)をそれぞれ採集し、
ステップA2、前記時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)を、それぞれフーリェ変換して、周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)を得、
ステップA3、前記地面基準点Xで、周波数fと地下深度dとの関数関係を確立し、
ステップA4、前記関数関係に従って、前記地面基準点xでの深度領域地層波動インピーダンス比率データM(x,d)を周波数領域地層波動インピーダンス比率データM(x,f)に変換する。
【0012】
さらに、前記地面基準点xで、以下の式に従って周波数fと地下深度dとの線形関数関係を確立し、
d=0.25・V/f、ただし、Vは、地層波動場平均速度であり、fは、周波数であり、dは、地下深度であり、
又は、前記地面基準点xでの周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)と深度領域地層波動インピーダンス比率データM(x,d)とを比較分析し、周波数f、地層波動場平均速度Vと地下深度dとの非線形関数関係を確立する。
【0013】
さらに、前記時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)は、単回又は複数回で得られた単一成分又は多成分データであり、採集時間長さとサンプリング時間間隔は、検出深度によって決定され、前記採集時間長さは、以下の経験式に従って、
T≧1500・D/V、
ただし、Dは、検出深度であり、単位がメートルであり、Vは、地層波動場平均速度であり、単位がメートル/秒であり、Tは、採集時間長さであり、単位が秒であり、
前記サンプリング時間間隔は、以下の経験式に従って、
ΔT=4・ΔD/V、
ΔTは、サンプリング時間間隔であり、単位が秒であり、Vは、地層波動場平均速度であり、単位がメートル/秒であり、ΔDは、所望の検出深度最低解像度であり、単位がメートルである。
【0014】
さらに、前記ステップA2の前に、採集された前記時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)に対して、それぞれプリ処理を行い、前記プリ処理は、フィルタリング処理、振幅時変補正処理及び外れ値抑圧処理を含む。
【0015】
さらに、前記ステップA2は、同一位置で複数回の採集によって得られた前記周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)に対して、それぞれ、周波数領域の算術平均を行うことをさらに含む。
【0016】
さらに、前記ステップA3の前に、採集機器の一致性について、前記周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)の損害に対して、それぞれ、補償と補正を行う。
【0017】
さらに、前記ステップS3の後に、以下のステップをさらに含み、
ステップS4、前記線形又は非線形関数関係に従って、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,f)を深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)に変換し、
ステップS5、前記深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)を積分して、地層見かけ波動インピーダンス比率データR(y,d)を得る。
【0018】
さらに、前記ステップS4は、前記深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)を地面標高補正、地表静補正、標準ウェルパラメータ補正を行うことをさらに含む。
【0019】
さらに、前記ステップS4は、前記深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)を正則化処理することをさらに含む。
【0020】
さらに、前記弾性波は、圧縮波、剪断波、表面波を含む。
【0021】
本発明の有益効果は以下の通りである。
本発明に記載の弾性波地震周波数共振探査方法を採用すれば、従来の地震探査と比べて、以下の有益な効果を実現することができる。1)人工爆発励起源が必要ないため、探査費用を直接低減し、環境汚染を減少させる。2)地球表面の「振動雑音」を直接利用するため、地震探査の応用範囲を拡大し、広野郷村だけでなく、繁華都市でもその方法技術を応用して探査できる。3)「振動雑音」の利用は、透過波による探査の利用に属するため、反射波で探査することに比べて、使用範囲が広く、従来の反射探査において地質体をイメージングするために反射界面を有しなければならないという制約を回避し、それによって、高角度地質体、明らかな界面のない及び粗界面の地質体に対するイメージングが可能となる。4)本発明は、弾性波が弾性地質体内で伝播する周波数特性を利用して地質体をイメージングし、時間伝播特性を利用してイメージングすることの何らかの不足を補填し、例えば、最初の到着の探査ブラインド領域が存在しなくなり、直立断層に対するイメージングが容易であり、及び密度に対して異常に敏感である。
【0022】
本発明に記載の弾性波地震周波数共振探査方法を採用すれば、特許文献1:特許出願CN110954943Aに比べて、本発明で採用されている、設定された測定領域内に地面基準点x及び任意の採集点yを設置し、前記地面基準点xでの励起源フィールドIn(x,f)を算出し、前記励起源フィールドIn(x,f)に基づいて、前記採集点yでの励起源フィールドIn(y,f)を決定し、前記励起源フィールドIn(y,f)に基づいて、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,f)を算出する技術案は、特許文献1:特許出願CN110954943A理論的探査方案を改善し、且つ全波動場周波数範囲内(深度に換算すると、地面から任意の深度まで)の地質探査ステップを完了する。特許文献1:特許出願CN110954943Aが深いところに対して探査を行う時、励起源フィールドに対して振幅が一致するという条件を仮定しなければならないことに比べて、本出願は、地層の状況をより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例による弾性波地震周波数共振探査方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の実施例による「弾性波地震周波数共振探査方法」と「受動源地震周波数共振探査方法」の探査結果の比較図である。
【
図3】本発明の実施例による「弾性波地震周波数共振探査方法」と「従来の反射地震探査技術」の探査結果の比較図である。
【
図4】本発明の実施例による弾性波地震周波数共振探査方法によるカルスト地域に対する探査結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の内容をより明瞭に理解するために、添付図面と実施例を結び付けながら、詳細に説明する。
【0025】
本発明の目的は、従来とは異なる地震探査方法を提供することである。この方法の特徴は、人工励起源を利用する必要がなく、地震波走時を利用せずに、地震波周波数特徴を利用して探査を行う方法であることである。この方法は、弾性地震波伝播過程で共振が発生する原理を利用して、地下媒体に対して空間と属性イメージングを行う。原則として、この方法は、震源と受信機との間の関係を考慮しないため、地球表面が受信した地下からの振動雑音のみによって地下媒体に対してイメージングすることができる。
【0026】
本発明の基本原理は、以下のとおりである。
【0027】
地下弾性波伝播は、波動方程式を満たし、層状媒体(νは速度である)の場合、波動方程式は、下式である。
【0028】
【0029】
均一な大地の上方で単層媒体のみがあり、単層媒体の底部に入力される波動場振幅を1単位とし、且つ波動場の周波数成分が単層媒体固有周波数と一致する場合、その解の振幅関数は、下式でもよい。
【0030】
【0031】
ただし、ωは角周波数であり、ρは密度であり、νは速度であり、ρ・ν乗積は波動インピーダンスデータであり、付添字1は上部単層媒体番号であり、付添字2は下部半空間番号である。(2)式で説明するように、波動場の地面における振幅解は、波動インピーダンス比率データである。
【0032】
探査深度範囲Hをいずれも厚さがHである単層媒体に設定し、その速度を地層波動場平均速度νに設定し、地面が受信した周波数がωである波がH厚さの地層が共振する結果である場合、(2)式は、H厚さの地層の地面上で地震波振幅を得る伝送関数であり、その値は、地層励起源フィールドが地面に到達した後、場振幅の拡大倍数である。地面採集データにおける地層のオリジナル励起源フィールドを除去すると、残りのデータは、即ち(2)式で表される波動インピーダンス比率データである。
【0033】
探査において、センサで地面のある点の地下からの振動を採集し、ある周波数の振幅を合理的に選択し、励起源フィールドの影響を消去すれば、地下のある対応位置の波動インピーダンス比率データが得られる。
【0034】
実施例1
上記基本原理に基づき、
図1は、本発明の実施例による弾性波地震周波数共振探査方法のフローチャートである。前記方法は、設定された測定領域内に地面基準点x及び任意の採集点yを設置することを含み、以下のステップを実行する。
【0035】
ステップA1、振動信号センサを利用して、前記地面基準点xと前記採集点yでの地下媒体弾性波時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)をそれぞれ採集し、
そのうち、前記時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)は、単回又は複数回で得られた単一成分又は多成分データであり、且つ複数の採集点で同一時間で採集する要求がなく、採集時間長さとサンプリング時間間隔は、検出深度によって決定され、前記採集時間長さは、以下の経験式に従って、
T≧1500・D/V、
ただし、Dは、検出深度であり、単位がメートルであり、Vは、地層波動場平均速度であり、単位がメートル/秒であり、Tは、採集時間長さであり、単位が秒であり、
前記サンプリング時間間隔は、以下の経験式に従って、
ΔT=4・ΔD/V、
ΔTは、サンプリング時間間隔であり、単位が秒であり、Vは、地層波動場平均速度であり、単位がメートル/秒であり、ΔDは、所望の検出深度最低解像度であり、単位がメートルである。
【0036】
好ましくは、採集された前記時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)に対して、それぞれプリ処理を行い、前記プリ処理は、フィルタリング処理、振幅時変補正処理及び外れ値抑圧処理を含み、
【0037】
【0038】
ステップA2、前記時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)を、それぞれフーリェ変換して、周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)を得る。
【0039】
好ましくは、フーリェ変換の時間領域データのウィンドウタイム長さは、1/Fminより大きくなるべきである。
【0040】
好ましくは、同一位置で複数回の採集によって得られた前記周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)に対して、それぞれ、周波数領域の算術平均を行う。
【0041】
採集機器のパラメータの一致性が前記周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)に影響を与える場合、採集機器の一致性について、前記周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)とAmp(y,f)の損害に対して、それぞれ、補償と補正を行う。
【0042】
ステップA3、前記地面基準点xで、周波数fと地下深度dとの関数関係を確立する。
【0043】
統計学観点から、以下のルールを規定する。1)前記ステップA1で採集された弾性波データの多くはすでに、その伝播経路で地層を透過して地面に到達する時、「共振」された結果である。2)弾性波は、深層から地面採集点に到達する経路で、厚さが徐々に薄くなる単層板状体に分けることができる。3)ステップA1で採集された時間領域振幅スペクトルデータAmp(x,t)とAmp(y,t)では、地質情報に関連し、且つ上記ルール1)に従う部分が非ランダム信号であり、地質情報に関連しなく、且つ上記ルール1)に従わない部分がランダム信号である。そのため、周波数fと地下深度dとの線形又は非線形関数関係を選択的に確立することができる。
【0044】
以下の式に従って、周波数fと地下深度dとの線形関数関係を確立し、
d=0.25・V/f、ただし、Vは、地層波動場平均速度であり、fは、周波数であり、dは、地下深度であり、
又は、前記地面基準点xでの周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)と深度領域地層波動インピーダンス比率データM(x,d)とを比較分析し、周波数f、地層波動場平均速度Vと地下深度dとの非線形対応関係を確立し、掘削資料の収集が困難である場合、経験的に仮想の深度領域地層波動インピーダンス比率データM(x,d)を設定し、さらに、前記地面基準点xでの周波数領域振幅スペクトルデータAmp(x,f)と設定された深度領域地層波動インピーダンス比率データM(x,d)を比較分析し、周波数f、地層波動場平均速度Vと地下深度dとの非線形対応関係を確立してもよい。
【0045】
ステップA4、前記関数関係に従って、前記地面基準点xでの深度領域地層波動インピーダンス比率データM(x,d)を周波数領域地層波動インピーダンス比率データM(x,f)に変換する。
【0046】
ステップS1、In(x,f)=Amp(x,f)/M(x,f)の式を用いて、前記地面基準点xでの励起源フィールドIn(x,f)を算出する。
【0047】
ステップS2、前記励起源フィールドIn(x,f)に基づいて、前記採集点yでの励起源フィールドIn(y,f)を決定する。
【0048】
設定された測定領域が比較的に小さく、単一地面基準点xが励起源フィールド振幅が均一フィールドである条件を満たす場合、励起源フィールドIn(x,f)値を励起源フィールドIn(y,f)に等しくする。
【0049】
測定領域が比較的に大きく、単一地面基準点xが励起源フィールド振幅が均一フィールドである条件を満たさない場合、実際の探査必要に応じて、設定された測定領域内で複数の地面基準点xiを設計し、そのうち、iは、1,2…nであり、上記ステップに従って、前記地面基準点xiの励起源フィールドIn(Xi,f)を算出し、数学方法を採用して外延及び補間を行い、前記採集点yでの励起源フィールドIn(y,f)を得る。
【0050】
ステップS3、M(y,f)=Amp(y,f)/In(y,f)の式を用いて、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,f)を算出する。
【0051】
励起源フィールドIn(y,f)変化が比較的に小さく、又は測定領域が比較的に小さく、又は探査精度要求が比較的に低く、直接にIn(y,f)=1にしてもよい。
【0052】
ステップS4、前記線形又は非線形関数関係に従って、前記採集点yでの周波数領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,f)を深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)に変換する。
【0053】
好ましくは、前記深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)を地面標高補正、地表静補正、標準ウェルパラメータ補正を行う。
【0054】
好ましくは、前記深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)を正則化処理する。
【0055】
【0056】
ステップS5、前記深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)を積分して、地層見かけ波動インピーダンス比率データR(y,d)を得る。
【0057】
他の地質情報のサポートで、密度と他の地質体の弾性波パラメータをさらに得ることができ、例えば、前記波動インピーダンスデータが横波波動インピーダンスデータであれば、岩石密度と横波波動インピーダンスデータの式R(y,d)=27135-28744・ρ+7825ρ2を用いて、前記採集点yでの任意の地下深度dでの地層密度ρを算出し、すなわち、横波波動インピーダンスデータを密度に換算し、前記波動インピーダンスデータが縦波波動インピーダンスデータであれば、前記縦波波動インピーダンスデータと岩石密度との関係式を統計して確立し、すなわち、縦波波動インピーダンスデータを密度に換算し、他の地質体弾性パラメータも、上記の方法により波動インピーダンスデータとこの地質体弾性パラメータとの関係式を確立し、すなわち、波動インピーダンスデータを求められるパラメータに換算する。
【0058】
算出された上記地層見かけ波動インピーダンス比率データR(y,d)及び他の地質パラメータデータは、すなわちイメージング結果データであり、イメージング結果を直接に出力してもよく、前記データを上記ステップA3に戻して、繰り返し計算処理を行ってもよい。
【0059】
好ましくは、前記弾性波は、圧縮波、剪断波、表面波である。
【0060】
好ましくは、前記振動信号センサは、速度センサ又は加速度センサであり、単一採集点で単一成分センサ又は多成分センサを採用してもよい。
【0061】
上記方法で得られた地層見かけ波動インピーダンス比率データR(y,d)及び他の地質パラメータは、すなわちイメージング結果データであり、前記イメージング結果データは、上記方法に従って標準ウェルモデルパラメータを用いて波動場振幅スペクトルデータを補正して得られた深度領域地層見かけ波動インピーダンス比率データM(y,d)と地層見かけ波動インピーダンス比率データR(y,d)であり、真実地質パラメータと比較して近似であるため、そのイメージング結果データを視波動インピーダンス比率データと視波動インピーダンスデータと呼ぶ。
【0062】
実施例2
本発明の実施例1による「弾性波地震周波数共振探査方法」と「受動源地震周波数共振探査方法」を応用して、同一地勢で探査を行い、探査結果を比較する。測定地は、浅層400メートル以上が砂頁岩構造で、400メートル以下が灰岩地質構造である。山泥岩内部の深度125メートルから260メートルの間は粗砂岩挟薄層泥岩であり、深度40メートルから125メートルの間は安定した細砂岩であり、底部に泥岩が見られ、40メートル及びそれより浅いところは第四系である。本発明の実施例1に記載の方法と「弾性波地震周波数共振探査方法」を応用して比較探査を行い、実施例1は、励起源フィールド影響を消去し、断面に対して上記各補正を行ったため、イメージング結果は、
図2の右側に示されるように、地質情報が明瞭、豊富で、薄層岩石特徴がすべて表れている。逆に、「弾性波地震周波数共振探査方法」のイメージング結果は、
図2の左側に示されるように、励起源フィールド振幅がイメージング結果に与える影響が比較的に大きいため、幾つかの大きな岩層について比較的に良好なイメージング結果を得ており、そのうちの薄層、第四系と下層細砂岩構造、100メートル~125メートルの薄層泥岩、及び400メートルの深度以下の灰岩内部構造について、いずれも明瞭に表れていない。
図2の左側と
図2の右側のイメージング結果を比較分析すると、本発明の実施例1による方法は、「弾性波地震周波数共振探査方法」に対して、岩層の横方向解像度が大きく向上したことが分かる。
【0063】
実施例3
本発明の実施例1による「弾性波地震周波数共振探査方法」と「従来の反射地震探査技術」を応用して、同一地勢で探査を行い、探査結果を比較する。測定地は、北京南部地域で、最大探査深度は、5500メートルである。従来の反射地震探査イメージング断面は、プレスタック深度オフセット断面であり、弾性波地震周波数共振断面は、視波動インピーダンス比率断面であり、
図3に示されるように、
図3の左側は、「従来の反射地震探査技術」のイメージング結果であり、
図3の右側は、実施例1による「弾性波地震周波数共振探査方法」のイメージング結果であり、両者を比較すると分かるように、浅部新生界砂頁岩地層に対して、弾性波地震周波数共振イメージング断面は、従来の反射地震プレスタック深度オフセット断面よりも解像度が高く、特に上部古生界内部の石炭系地層に対して、下部古生界内部の細隙、カルストと小型断層及びオルドビス系頂部の風化殻などの地質体に対するイメージングに関して、実施例1の弾性波地震周波数共振探査は、いずれも特別な優勢がある。
【0064】
実施例4
本発明の実施例1による弾性波地震周波数共振探査方法を応用して、中国雲南カルスト発育地域で探査実験を行った結果は、
図4に示されるように、この地域の浅部は、いずれも高度風化の岩質地層であり、下層は、中等風化ドロマイトであり、大量のカルストを内蔵しており、より下層は、中等風化砂頁岩地層である。実施例1による弾性波地震周波数共振探査方法は、本地域の精細地質構造と三つの大型カルスト発育部位を掲示した。掘削検証によって、そのうちの1つは、泥質を充填したドロマイト鍾乳洞であり、2つは、充填物がない大型ドロマイト鍾乳洞であり、掘削も、異なる程度の風化殻の存在とそれらの深度範囲及び異なる岩質分布特徴を実証した。
【0065】
以上をまとめると、本発明の実施例1による弾性波地震周波数共振探査方法は、地面で採集された異なる源からの信号データから探査対象の地質画像と属性を得ることができ、人工震源を必要とせず、従来の反射地震探査方法が波動場走時に依存する場合とは異なり、信号の周波数-振幅データを用いて地下媒体の空間と属性特徴を測定することができる。具体的な実験を通じて、本発明が地下媒体空間と属性変化を精密に探査する能力を持つことを説明したため、本発明は、従来の地震探査で解決することが困難である、密度-波動インピーダンス変化を探査する問題を解決し、近地表が地震データの最初の到着による従来の地震探査技術のブラインド領域という問題を解決し、垂直断層などの横方向速度と密度の急速変化によりイメージングが困難である問題を解決した。特に、複雑な媒体の内部差異の精細区別という問題を解決し、複雑な構造の地域の地震探査のために一つの問題解決策を提供し、新規の周波数領域の地震探査技術方法であり、応用分野は、工事地質及び水文地質探査、地質災害評価、道路地下欠損検出、鉱物資源探査、環境保護及び地下文物探査などに関するものであってもよい。
【0066】
以上に記述されているのは、本発明の好ましい具体的な実施の形態に過ぎず、本発明の保護範囲は、それに限らない。いかなる当業者が、本発明に掲示される技術的範囲内に、容易に想到できる変形又は置き換えは、いずれも、本発明の保護範囲内に含まれる。そのため、本発明の保護範囲は、請求項の保護範囲を基にされる。