(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134104
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】トナーバインダー
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20220907BHJP
C08G 63/46 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
G03G9/087 331
C08G63/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022017824
(22)【出願日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2021032205
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田畠 雄太
(72)【発明者】
【氏名】嘉納 亮治
(72)【発明者】
【氏名】小野 康弘
【テーマコード(参考)】
2H500
4J029
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500CA06
2H500CA18
2H500EA39B
4J029AA03
4J029AB02
4J029AE18
4J029BA01
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA04
4J029BA05
4J029CA02
4J029CA04
4J029CA06
4J029FA16
4J029FB15
4J029HA01
4J029HB01
4J029JB122
4J029JB162
(57)【要約】
【課題】分散性、低温定着性、帯電性、耐熱保存性及び画像強度優れたトナーバインダーを提供する。
【解決手段】アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とフッ素化合物(z)との重縮合体である結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーバインダーであって、アルコール成分(x)が炭素数2~24の脂肪族ジオールを含有し、カルボン酸成分(y)が炭素数2~24の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸を含有し、フッ素化合物(z)が水酸基及び/又はカルボキシル基を有するフッ素化合物であるトナーバインダーを用いる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とフッ素化合物(z)との重縮合体である結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーバインダーであって、
アルコール成分(x)が炭素数2~24の脂肪族ジオールを含有し、
カルボン酸成分(y)が炭素数2~24の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸を含有し、
フッ素化合物(z)が水酸基及び/又はカルボキシル基を有するフッ素化合物であるトナーバインダー。
【請求項2】
フッ素化合物(z)が含フッ素モノアルコール及び/又は含フッ素モノカルボン酸である請求項1に記載のトナーバインダー。
【請求項3】
フッ素化合物(z)がペンタフルオロベンジルアルコール及び/又は1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デカノールである請求項1又は2に記載のトナーバインダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーバインダーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真装置の小型化、高速化、高画質化の促進とともに、定着工程における消費エネルギーを低減するという省エネルギーの観点から、トナーの低温定着性の向上が強く求められている。しかしながら、一般に低温定着性を向上させようとすると、耐熱保存性が低下し、耐熱保存性を向上させようとすると低温定着性が低下するため、低温定着性と耐熱保存性はトレードオフの関係にあり、低温定着性と耐熱保存性との両立が可能となるトナーバインダーの開発が求められている。
例えば、低温定着性と耐熱保存性の両立を目的として、結着樹脂に非晶性樹脂と結晶性樹脂を併用することで、結晶性樹脂の溶融特性から、耐熱保存性を維持しつつ、低温定着性を改善できるポリエステル系トナーバインダーを含有するトナー組成物が提案されている(特許文献1,2参照)。
しかしながら、上記結晶性樹脂を使用したトナーは、現像の際に、高速印刷に対応するために必要な帯電量が十分とはいえず、それらの改善が望まれている。
また、帯電性を向上させる目的として、フッ素を結合した非晶性ポリエステルを含有するトナー組成物が提案されている(特許文献3参照)。
しかしながら、いずれの方法によっても、これらの課題を同時に解決することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-77930号公報
【特許文献2】特開2012-98719号公報
【特許文献3】特開2015-224312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、分散性、低温定着性、帯電性、耐熱保存性及び画像強度に優れたトナーバインダーを提供することにある。
【0005】
本発明者らは、これらの問題点を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とフッ素化合物(z)との重縮合体である結晶性ポリエステル樹脂を含むトナーバインダーであって、
アルコール成分(x)が炭素数2~24の脂肪族ジオールを含有し、
カルボン酸成分(y)が炭素数2~24の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸を含有し、
フッ素化合物(z)が水酸基及び/又はカルボキシル基を有するフッ素化合物であるトナーバインダーである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、分散性、低温定着性、帯電性、耐熱保存性及び画像強度に優れたトナーバインダーを提供することが可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明のトナーバインダーは、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とフッ素化合物(z)との重縮合体である結晶性ポリエステル樹脂を含む。
また、本発明における「結晶性」とは示差走査熱量測定(DSC測定ともいう)において、DSC曲線が吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)を有することを意味する。
以下に結晶性ポリエステル樹脂の吸熱ピークのピークトップ温度の測定方法を記載する。
示差走査熱量計(例えばTA Instruments(株)製、DSC Q20)を用いて測定する。結晶性ポリエステル樹脂を30℃から10℃/分の条件で180℃まで第1回目の昇温を行い、続いて180℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で180℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の吸熱ピークのトップを示す温度を結晶性ポリエステル樹脂の吸熱ピークのピークトップ温度とする。
【0009】
本発明の結晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とフッ素化合物(z)との重縮合体である結晶性ポリエステル樹脂である。アルコール成分(x)は、炭素数2~24の脂肪族ジオールを必須成分として含有し、カルボン酸成分(y)は、炭素数2~24の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸を含有する。また、フッ素化合物(z)は水酸基及び/又はカルボキシル基を有するフッ素化合物である。フッ素化合物(z)は、分散性や結晶性の観点から、結晶性ポリエステル樹脂の末端に結合していることが好ましい。
【0010】
アルコール成分(x)はフッ素を含有するものは除くアルコール成分であり、必須成分である炭素数2~24の脂肪族ジオールの他、炭素数2~24の脂肪族ジオール以外のジオール(x1)、モノアルコール及び3価以上のポリオールを含有してもよい。
【0011】
炭素数2~24の脂肪族ジオールとしては、炭素数2~24の直鎖型脂肪族ジオールが好ましい。炭素数2~24の直鎖型脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,19-ノナデカンジオール及び1,20-エイコサンジオール等が挙げられる。低温定着性の観点から炭素数2~12の直鎖型脂肪族ジオールが好ましく、エチレングリコール、1,9-ノナンジオール、及び1,12-ドデカンジオールがより好ましい。
【0012】
炭素数2~24の脂肪族ジオール以外のジオール(x1)としては、炭素数6~36の脂環式ジオール及び/又は芳香族ジオールが挙げられる。
【0013】
炭素数6~36の脂環式ジオールとしては、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,1-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、5-ノルボルネン-2,3-ジメタノール、水素添加ビスフェノールA、スピログリコール、イソソルバイド及び上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下、「アルキレンオキサイド」をAOと略記することがある。)付加物等が挙げられる。
【0014】
上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、上記脂環式ジオールのエチレンオキサイド(以下、「エチレンオキサイド」をEOと略記することがある。)付加物、プロピレンオキサイド(以下、「プロピレンオキサイド」をPOと略記することがある。)付加物及びブチレンオキサイド(以下、「ブチレンオキサイド」をBOと略記することがある。)付加物等が挙げられる。上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数は好ましくは1~30であり、より好ましくは2~5である。
【0015】
芳香族ジオールとしては、1,3-ベンゼンジメタノール,1,4-ベンゼンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、トリクロロビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ジブロモビスフェノールF、2-メチルビスフェノールA、2,6-ジメチルビスフェノールA及び2,2’-ジエチルビスフェノールF及び上記芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0016】
上記芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物としては、上記芳香族ジオールのEO付加物、PO付加物及びBO付加物等が挙げられる。上記アルキレンオキサイドの平均付加モル数は好ましくは1~15であり、より好ましくは2~5である。
【0017】
3価以上のポリオールとしては、多価脂肪族アルコール(アルカンポリオール及びその分子内もしくは分子間脱水物、例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、及びポリグリセリン、糖類及びそのエステル化物、例えばショ糖、及びメチルグルコシド等)、トリスフェノール類(トリスフェノールPA等)のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数は好ましくは2~30)、ノボラック樹脂(フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等が含まれ、平均重合度としては好ましくは3~60)のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数は好ましくは2~30)及びアクリルポリオール[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他のビニルモノマーの共重合物等]等が挙げられる。
【0018】
モノアルコールとしては、炭素数1~30の直鎖又は分岐アルキルアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、1-デカノール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール及びリグノセリルアルコール等)等が挙げられる。
【0019】
アルコール成分(x)として、炭素数2~24の脂肪族ジオール以外の成分を含む場合は、耐熱保存性の観点から、モノアルコールが好ましく、炭素数1~30の直鎖又は分岐アルキルアルコールがより好ましい。
【0020】
アルコール成分(x)のうち炭素数2~24の脂肪族ジオールの含有量は、低温定着性の観点から結晶性ポリエステル樹脂の構成成分であるアルコール成分(x)のモル数に基づいて80~100モル%であることが好ましく、より好ましくは90~100モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0021】
カルボン酸成分(y)は、フッ素を含有するものは除くカルボン酸成分であり、必須成分である炭素数2~24の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸の他、後述する3価以上のポリカルボン酸及びこれらの酸の無水物や低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)等が挙げられる。また、カルボン酸成分(y)には、必要によりモノカルボン酸を使用してもよい。
【0022】
炭素数2~24の脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数2~24の直鎖型脂肪族ジカルボン酸が好ましい。炭素数2~24の直鎖型脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸及び1,18-オクタデカンジカルボン酸等が挙げられる。低温定着性の観点から炭素数2~12の直鎖型脂肪族ジカルボン酸が好ましく、より好ましくはアジピン酸、セバシン酸及びドデカン二酸である。
【0023】
炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸及び4,4’-ビフェニルジカルボン酸等が挙げられる。帯電性の観点から炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸が好ましく、より好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸である。
【0024】
3価以上のポリカルボン酸としては、炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、炭素数6~36の脂肪族トリカルボン酸(ヘキサントリカルボン酸等)及び不飽和カルボン酸のビニル重合体[数平均分子量(Mn):450~10,000](スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/アクリル酸共重合体、及びスチレン/フマル酸共重合体等)等が挙げられる。また、これらの酸の無水物や低級アルキルエステルであってもよい。
【0025】
モノカルボン酸としては、炭素数7~37の芳香族モノカルボン酸(安息香酸、トルイル酸、4-エチル安息香酸、4-プロピル安息香酸等)、炭素数2~50の脂肪族モノカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、(メタ)アクリル酸[「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。]、クロトン酸、イソクロトン酸及び桂皮酸等)等が挙げられる。
【0026】
カルボン酸成分(y)として、炭素数2~24の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸以外の成分を含む場合は、耐熱保存性の観点から、モノカルボン酸が好ましく、炭素数2~50の脂肪族モノカルボン酸がより好ましい。
【0027】
カルボン酸成分(y)のうち炭素数2~24の脂肪族ジカルボン酸及び/又は炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸の含有量は、低温定着性の観点から結晶性ポリエステル樹脂の構成成分であるカルボン酸成分(y)のモル数に基づいて80~100モル%であることが好ましく、より好ましくは90~100モル%であり、さらに好ましくは100モル%である。
【0028】
フッ素化合物(z)は、フッ素原子を含む化合物であり、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するフッ素化合物であれば、特に限定されないが、例えば、含フッ素モノアルコール、含フッ素フェノール、含フッ素ポリオール、含フッ素モノカルボン酸、含フッ素ポリカルボン酸等が挙げられる。フッ素化合物(z)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
含フッ素モノアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、フルオロアルキルアルコール及びフルオロベンジルアルコール等が挙げられる。
フルオロアルキルアルコールとしては、フッ素原子数1~41であり炭素数1~20のアルコール{例えば、2,2-ジフルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ペンタフルオロエタノール、3-フルオロ-1-プロパノール、3,3,3-トリフルオロ-1-プロパノール、2-トリフルオロメチル-2-プロパノール、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール、ペンタフルオロプロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール、ヘプタフルオロプロパノール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メチル-2-プロパノール、4,4,4-トリフルオロ-1-ブタノール、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブタノール、ヘプタフルオロブタノール、ノナフルオロ-tert-ブチルアルコール、4,4,5,5,5-ペンタフルオロ-1-ペンタノール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール、1H,1H-ノナフルオロ-1-ペンタノール、ノナフルフルオロヘキサノール、1H,1H-ウンデカフルオロ-1-ヘキサノール、1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノール、1H,1H-トリデカフルオロ-1-ヘプタノール、トリデカフルオロオクタノール、1H,1H-ペンタデカフルオロ-1-オクタノール、1H,1H,2H,2H,3H,3H-トリデカフルオロ-1-ノナノール、1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロ-1-ノナノール、1H,1H-ヘプタデカフルオロ-1-ノナノール、ヘプタデカフルオロドデカノール(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デカノール)、1H,1H,11H-エイコサフルオロ-1-ウンデカノール、及び1H,1H-トリコサフルオロ-1-ドデカノール等}等が挙げられる。
フルオロベンジルアルコールとしては、フッ素原子数1~41であり炭素数7~20のベンジルアルコール{例えば、α-(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、2-(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、4-(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジルアルコール、1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタノール、2-フルオロベンジルアルコール、3-フルオロベンジルアルコール、4-フルオロベンジルアルコール、4-フルオロ-α-メチルベンジルアルコール、2,3-ジフルオロベンジルアルコール、2,4-ジフルオロベンジルアルコール、2,5-ジフルオロベンジルアルコール、2,6-ジフルオロベンジルアルコール、3,4-ジフルオロベンジルアルコール、3,5-ジフルオロベンジルアルコール、4,4-ジフルオロシクロヘキサノール、4,4’-ジフルオロベンズヒドロール、2,4,5-トリフルオロベンジルアルコール、2,3,5,6-テトラフルオロベンジルアルコール、2,3,4,5-テトラフルオロベンジルアルコール、2,3,4,6-テトラフルオロベンジルアルコール、1-(ペンタフルオロフェニル)エタノール及びペンタフルオロベンジルアルコール等}等が挙げられる。
【0030】
含フッ素フェノールとしては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子数1~41であり炭素数7~20のフェノール{例えば、ビスフェノールAF、オクタフルオロ-4,4’-ビフェノール、2-フルオロフェノール、3-フルオロフェノール、4-フルオロフェノール、4-フルオロクレゾール、4-フルオロ-4’-ヒドロキシビフェニル、2,3-ジフルオロフェノール、2,4-ジフルオロフェノール、2,5-ジフルオロフェノール、2,6-ジフルオロフェノール、3,4-ジフルオロフェノール、3,5-ジフルオロフェノール、2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)フェノール、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノール、3-ヒドロキシベンゾトリフルオリド、2,3,4-トリフルオロフェノール、2,3,6-トリフルオロフェノール、3,4,5-トリフルオロフェノール、2,3,5,6-テトラフルオロフェノール、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェノール、及びペンタフルオロフェノール等}等が挙げられる。
【0031】
含フッ素ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子数4~40であり炭素数1~20のポリオール{例えば、2,2,3,3-テトラフルオロ-1,4-ブタンジオール、ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオール、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1,5-ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1,6-ヘキサンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロ-1,8-オクタンジオール、及び1H,1H,10H,10H-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジオール、1H,1H,12H,12H-イコサフルオロ-1,12-ドデカンジオール、1,3-ビス(ヘキサフルオロ-α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、及び2,3,5,6-テトラフルオロ-1,4-ベンゼンジメタノール等}等が挙げられる。
【0032】
含フッ素モノカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、フルオロアルキルカルボン酸及びフルオロ安息香酸等が挙げられる。
フルオロアルキルカルボン酸としては、フッ素原子数1~41であり炭素数1~21のカルボン酸{例えば、1-(トリフルオロメチル)シクロブタンカルボン酸、4-(トリフルオロメチル)シクロヘキサンカルボン酸、4,4-ジフルオロシクロヘキサンカルボン酸、フルルビプロフェン、4’-(トリフルオロメチル)ビフェニル-2-カルボン酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、2-フルオロフェニル酢酸、3-フルオロフェニル酢酸、4-フルオロフェニル酢酸、2-(トリフルオロメチル)フェニル酢酸、3-(トリフルオロメチル)フェニル酢酸、4-(トリフルオロメチル)フェニル酢酸、2,3-ジフルオロフェニル酢酸、2,4-ジフルオロフェニル酢酸、2,6-ジフルオロフェニル酢酸、3,4-ジフルオロフェニル酢酸、3,5-ジフルオロフェニル酢酸、2,4-ビス(トリフルオロメチル)フェニル酢酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル酢酸、2,4,5-トリフルオロフェニル酢酸、ペンタフルオロフェニル酢酸、ペンタフルオロエタン酸、2,2-ジフルオロプロピオン酸、3-(3-フルオロフェニル)プロピオン酸、3-(4-フルオロフェニル)プロピオン酸、3-(3-トリフルオロメチルフェニル)プロピオン酸、3-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]プロピオン酸、3,3,3-トリフルオロプロピオン酸、3,3,3-トリフルオロ-2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2,3,3-テトラフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロパン酸、4,4,4-トリフルオロ酪酸、ヘプタフルオロブタン酸、パーフルオロペンタン酸、ノナフルフルオロヘキサン酸、ウンデカフルオロヘキサン酸、トリデカフルオロヘプタン酸、トリデカフルオロオクタン酸、ペンタデカフルオロオクタン酸、ヘプタデカフルオロノナン酸、ノナデカフルオロデカン酸、2H,2H,3H,3H-ヘプタデカフルオロウンデカン酸、ヘンエイコサフルオロウンデカン酸、ヘプタデカフルオロドデカン酸、及びトリコサフルオロドデカン酸等}等が挙げられる。
フルオロ安息香酸としては、フッ素原子数1~41であり炭素数7~20の安息香酸{例えば、2-フルオロ安息香酸、2-(トリフルオロメチル)安息香酸、3-フルオロ安息香酸、3-(トリフルオロメチル)安息香酸、4-フルオロ安息香酸、4-(トリフルオロメチル)安息香酸、及び、2-フルオロ-3-メチル安息香酸、2-フルオロ-4-メチル安息香酸、2-フルオロ-5-メチル安息香酸、2,3-ジフルオロ安息香酸、2,4-ジフルオロ安息香酸、2,5-ジフルオロ安息香酸、2,6-ジフルオロ安息香酸、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)安息香酸、2-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸、2-フルオロ-6-(トリフルオロメチル)安息香酸、3-フルオロ-4-メチル安息香酸、3,4-ジフルオロ安息香酸、3,5-ジフルオロ安息香酸、3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)安息香酸、3-フルオロ-5-(トリフルオロメチル)安息香酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸、4-フルオロ-2-メチル安息香酸、4-フルオロ-3-メチル安息香酸、4-メチル-3-(トリフルオロメチル)安息香酸、4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)安息香酸、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)安息香酸、5-フルオロ-2-メチル安息香酸、2,3,4-トリフルオロ安息香酸、2,3,5-トリフルオロ安息香酸、2,3,6-トリフルオロ安息香酸、2,4,5-トリフルオロ安息香酸、2,4,6-トリフルオロ安息香酸、3,4,5-トリフルオロ安息香酸、2,3,4,5-テトラフルオロ安息香酸、2,3,5,6-テトラフルオロ安息香酸、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メチル安息香酸、及びペンタフルオロ安息香酸等}等が挙げられる。
【0033】
含フッ素ポリカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、フッ素原子数1~40であり炭素数1~21のカルボン酸(例えば、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3-フルオロフタル酸、テトラフルオロフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、テトラフルオロこはく酸、ヘキサフルオログルタル酸、オクタフルオロアジピン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、及びドデカフルオロスベリン酸等)等が挙げられる。
【0034】
フッ素化合物(z)のうち、結晶性ポリエステル樹脂末端への導入が容易であり、分散性が良好となることから含フッ素モノアルコール、含フッ素フェノール、含フッ素モノカルボン酸が好ましく、より好ましくは含フッ素モノアルコール、含フッ素モノカルボン酸であり、さらに好ましくはフルオロアルキルアルコール、フルオロベンジルアルコール、フルオロアルキルカルボン酸であり、特に好ましくは、フッ素原子数1~41であり炭素数1~20のモノアルコール、フッ素原子数1~41であり炭素数7~20のベンジルアルコール、フッ素原子数1~41であり炭素数7~20の安息香酸であり、最も好ましくはペンタフルオロベンジルアルコール及び/又は1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デカノールである。
また、本発明に用いるフッ素化合物(z)は、帯電性の観点から、少なくとも2つ以上のフッ素原子を含む化合物が好ましく、5つ以上のフッ素原子を含む化合物であることがより好ましい。
【0035】
フッ素化合物(z)の重量割合は、低温定着性と帯電性の両立の観点から、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とフッ素化合物(z)の合計重量を基準として、好ましくは0.1~20重量%であり、より好ましくは0.5~10重量%であり、さらに好ましくは1~5重量%である。
【0036】
アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とフッ素化合物(z)との反応比率は、水酸基とカルボキシル基のモル比{[OH]/[COOH]}として、好ましくは1/2~2/1であり、より好ましくは1/1.3~1.5/1、さらに好ましくは1/1.2~1.4/1である。上記水酸基は、フッ素化合物(z)が水酸基を有する化合物である場合は、アルコール成分(x)及びフッ素化化合物(z)由来の水酸基の合計であり、カルボキシル基は、フッ素化合物(z)がカルボキシル基を有する化合物である場合は、カルボン酸成分(y)及びフッ素化合物(z)由来のカルボキシル基の合計である。
【0037】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は、フッ素化合物(z)を使用すること以外は、公知のポリエステル製造法と同様にして製造することができる。例えば、アルコール成分(x)とカルボン酸成分(y)とフッ素化合物(z)を含む成分を、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気中で、反応温度が好ましくは150~280℃、より好ましくは160~250℃、さらに好ましくは170~235℃で反応させることにより行うことができる。また反応時間は、重縮合反応を確実に行う観点から、好ましくは30分以上、より好ましくは2~40時間である。反応末期の反応速度を向上させるために減圧することも有効である。
【0038】
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することもできる。
エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド等)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、テレフタル酸チタンアルコキシド、特開2006-243715号公報に記載の触媒{チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、チタニルビス(トリエタノールアミネート)及びそれらの分子内重縮合物等}、及び特開2007-11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート及びチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)等]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル等)並びに酢酸亜鉛等が挙げられる。
エステル化触媒の中で好ましくは、低温定着性の観点から、チタン含有触媒であり、更に好ましくは特開2006-243715号公報に記載の触媒及び特開2007-11307号公報に記載の触媒である。
【0039】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は、示差走査熱量計を用いて30℃から10℃/分の条件で180℃まで第1回目の昇温を行い、続いて180℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で180℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程における吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が40~125℃であることが好ましく、より好ましくは60~85℃である。40℃以上であると耐熱保存性が良好になり、125℃以下であると低温定着性が良好になる。
【0040】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は、低温定着性の観点から、上記のピークトップ温度(Tm)を持つ吸熱ピークにおける吸熱量が40~130J/gであることが好ましく、より好ましくは50~130J/gである。
【0041】
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、帯電性及び耐熱保存性の観点から、0~20mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは0.1~5mgKOH/gである。
【0042】
本発明において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、低温定着性、及び画像強度の観点から、好ましくは10,000~30,000であり、より好ましくは10,000~20,000である。
【0043】
本発明のトナーバインダーは、上記結晶性ポリエステル樹脂を必須成分として含む。結晶性ポリエステル樹脂をそのままトナーバインダーとして用いてもよく、必要により公知の他のトナー用結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤、流動化剤などの種々の添加剤等を混合し、トナーとして用いてもよい。トナーバインダー中の結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、好ましくは1~50重量%であり、より好ましくは3~20重量%であり、さらに好ましくは5~15重量%である。
【0044】
上記結晶性ポリエステル樹脂と混合する結着樹脂としては、非晶性樹脂が好ましく、例えば、非晶性ポリエステル樹脂、非晶性ビニル樹脂、非晶性エポキシ樹脂、非晶性ポリカーボネート樹脂及び非晶性ポリウレタン樹脂等の樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、低温定着性の観点から非晶性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0045】
非晶性ポリエステル樹脂は、アルコール成分(X)とカルボン酸成分(Y)との重縮合体である非晶性ポリエステル樹脂であればその樹脂の組成は特に限定されない。
なお、本発明における「非晶性」とは、示差走査熱量計を用いて試料の転移温度測定を行った場合に、吸熱ピークのピークトップ温度が存在しないことを意味する。
【0046】
非晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分(X)としては、炭素数2~12のアルキレングリコール、3価以上の価数の多価脂肪族アルコール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(付加モル数は好ましくは2~30)及びノボラック樹脂のアルキレンオキサイド付加物(付加モル数は好ましくは2~30)等が挙げられ、カルボン酸成分(Y)としては、炭素数8~36の芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸等)及び炭素数9~20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)等が挙げられる。
また、カルボン酸成分(Y)として、これらのカルボン酸の無水物、低級アルキル(炭素数1~4)エステル(メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等)を用いてもよいし、該無水物又は低級アルキルエステルと、上記カルボン酸とを併用してもよい。
【0047】
非晶性ポリエステル樹脂に用いるアルコール成分(X)のうち、低温定着性と画像強度の観点から、好ましくは、ビスフェノールAのEO付加物(平均付加モル数2~3)及びビスフェノールAのPO付加物(平均付加モル数2~3)であり、カルボン酸成分(Y)のうち、低温定着性と画像強度の観点から、好ましくはテレフタル酸、アジピン酸及び無水トリメリット酸である。
【0048】
本発明に用いる非晶性ポリエステル樹脂には、線形ポリエステル樹脂(B1)及び非線形ポリエステル(分岐又は架橋ポリエステル)樹脂(B2)があり、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、線形ポリエステル樹脂(B1)と非線形ポリエステル樹脂(B2)とを混合して用いても良い。
また、非晶性ポリエステル樹脂は低温定着性と耐ホットオフセット性とを両立させる観点から、線形ポリエステル樹脂(B1)と非線形ポリエステル樹脂(B2)とからなるのが好ましい。線形ポリエステル樹脂(B1)と非線形ポリエステル樹脂(B2)との重量比((B1)/(B2))は、低温定着性と耐ホットオフセット性とを両立させる観点から、好ましくは10/90~90/10、より好ましくは15/85~85/15、さらに好ましくは20/80~80/20、特に好ましくは30/70~70/30である。
【0049】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、40~75℃が好ましく、より好ましくは45~72℃、さらに好ましくは50~70℃である。
【0050】
非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは30mgKOH/g以下であり、より好ましくは2~25mgKOH/gである。
【0051】
非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、好ましくは60mgKOH/g以下であり、より好ましくは1~55mgKOH/gである。
【0052】
非晶性ポリエステル樹脂のMwは、好ましくは4,000~150,000、さらに好ましくは5,000~15,000である。
【0053】
非晶性ポリエステル樹脂の1/2降下温度は、80~170℃が好ましく、より好ましくは95~150℃である。
非晶性ポリエステル樹脂は1/2降下温度の異なるものを2種類以上併用してもよく、1/2降下温度が80℃以上115℃未満のものと115℃以上170℃以下のものとの組み合わせが好ましく、1/2降下温度が85℃以上115℃以下のものと120℃以上~160℃以下のものとの組み合わせがより好ましい。
【0054】
本発明の結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂の重量比は、3:97~30:70であることが好ましい。
【0055】
着色剤としては黒色着色剤、青色着色剤、赤色着色剤及び黄色着色剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有することが好ましい。着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料、顔料等のすべてを使用することができる。
具体的には、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ソルベントイエロー(21、77及び114等)、ピグメントイエロー(12、14、17及び83等)、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトアニリンレッド、トルイジンレッド、ソルベントレッド(17、49、128、5、13、22及び48・2等)、ディスパースレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ソルベントブルー(25、94、60及び15・3等)、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられる。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト及びニッケル等の強磁性金属の粉末、マグネタイト、ヘマタイト並びにフェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明の結晶性ポリエステル樹脂と結着樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは2~15重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、磁性粉の含有量は、結晶性ポリエステル樹脂と結着樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは20~150重量部、より好ましくは30~120重量部である。
【0056】
離型剤としては、天然ワックス(蜜ろう、カルナバワックス及びモンタンワックス等)、石油ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、及びペトロラタム等)、合成ワックス(フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス及び酸化ポリプロピレンワックス等)、及び合成エステルワックス(炭素数10~30の脂肪酸と炭素数10~30のアルコールから合成される脂肪酸エステル等)等が挙げられ、これらの離型剤からなる群より選ばれる1種類以上を含有することが好ましい。離型剤の含有量は、本発明の結晶性ポリエステル樹脂と結着樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
【0057】
離型剤の融点は、低温定着性の観点から好ましくは40~90℃であり、更に好ましくは45~85℃、特に好ましくは50~80℃である。
【0058】
離型剤の100℃における動粘度は、低温定着性の観点から好ましくは3~20mm2/sであり、更に好ましくは4~19mm2/s、特に好ましくは5~18mm2/sである。
【0059】
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、例えば、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー、ハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。荷電制御剤の含有量は、本発明の結晶性ポリエステル樹脂と結着樹脂の合計100重量部に対して、0~20重量%であってよく、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~7.5重量%である。
【0060】
流動化剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。トナーの帯電性の観点からシリカが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。流動化剤の含有量は、本発明の結晶性ポリエステル樹脂と結着樹脂の合計100重量部に対して、0~10重量%であってよく、好ましくは0~5重量%、より好ましくは0.1~4重量%である。
【0061】
また、着色剤、離型剤、荷電制御剤、流動化剤などの添加剤の合計重量はトナー重量に基づき、3~70重量%であってよく、好ましくは4~58重量%、より好ましくは5~50重量%である。トナーの組成比が上記の範囲であることで帯電特性が良好なものを容易に得ることができる。
【0062】
トナーの体積平均粒径(D50)は、好ましくは1~15μmであり、更に好ましくは2~10μm、特に好ましくは3~7μmである。
【0063】
トナーの製造方法については特に制限はなく、公知の混練粉砕法、特公昭36-10231号公報、特開昭59-53856号公報、特開昭59-61842号公報に記載されている懸濁重合法、単量体には可溶で水溶性重合開始剤の存在下で直接重合させてトナーを生成するソープフリー重合法に代表される乳化重合法、マイクロカプセル製法のような界面重合法、in site重合法、コアセルベーション法、特開昭62-106473号公報や特開昭63-186253号公報に開示されている様な少なくとも1種以上の微粒子を凝集させ所望の粒径のものを得る会合重合法、単分散を特徴とする分散重合法、非水溶性有機溶媒に必要な樹脂類を溶解させた後水中でトナー化する溶解懸濁法により得られたものであってもよいし、超臨界状態の二酸化炭素中で分散する方法により製造してもよい。
【0064】
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分をヘンシェルミキサ、ナウターミキサー及びバンバリーミキサー等で乾式ブレンドした後、二軸混練機、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等の連続式の混合装置で溶融混練し、その後ミル機等で粗粉砕し、最終的に気流式粉砕機等を用いて微粒化して、さらにエルボージェット等の分級機で粒度分布を調整することにより、体積平均粒径(D50)を4~12μmの微粒子とした後、流動化剤をミル機等で混合して製造することができる。
【0065】
例えば、溶解懸濁法によりトナーを得る場合は、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解又は分散して油相とした後、界面活性剤を含有した水相と上記油相を混合することで微細な粒子化を行い、更に油相と水相の混合物から有機溶剤を除去し、次いでトナー粒子を分離、分級した後、最後に流動化剤を混合して製造することができる。
【0066】
本発明のトナーバインダーを用いたトナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、ポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法、フラッシュ定着方法等が適用できる。
【0067】
本発明のトナーバインダーを用いたトナーは電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像又は磁気潜像の現像に好ましく用いることができる。更に好ましくは、フルカラー用の静電荷像又は磁気潜像の現像に用いることができる。
【実施例0068】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り「部」は重量部を示す。
【0069】
結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂及びトナー等の各物性値については次の方法により測定した。
【0070】
<結晶性ポリエステル樹脂(A)の吸熱ピークのピークトップ温度の測定方法>
示差走査熱量計{「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて測定した。結晶性ポリエステル樹脂(A)を30℃から10℃/分の条件で180℃まで第1回目の昇温を行い、続いて180℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で180℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の吸熱ピークのトップを示す温度を結晶性ポリエステル樹脂(A)の吸熱ピークのピークトップ温度とした。
【0071】
<結晶性ポリエステル樹脂(A)の吸熱ピークにおける吸熱量>
上記吸熱ピークのピークトップ温度の測定と同様の測定条件で観測される第2回目の昇温過程のDSC曲線で、吸熱ピークの吸熱開始温度(T0)以下のベースライン上の最もピークに近い点と吸熱ピークの終点温度以上のベースライン上の最もピークに近い点とを結ぶ直線を引くことにより、上記吸熱ピークのピークトップ温度をもつ吸熱ピークにおける吸熱量を算出した。
【0072】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
分子量の測定は、ポリエステル樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とし、以下の条件で測定した。
装置 : 東ソー(株)製 HLC-8120
カラム : TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
【0073】
<酸価及び水酸基価>
JIS K0070に規定の方法で測定した。ただし、酸価の測定溶媒はアセトン、メタノール及びトルエンの混合溶媒(アセトン:メタノール:トルエン=12.5:12.5:75)、水酸基価の測定溶媒はTHFとした。
【0074】
<1/2降下温度>
定試験力押出形細管式レオメータフローテスタ{(株)島津製作所製、CFT-500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)を1/2降下温度とした。
【0075】
<ガラス転移温度(Tg)の測定方法>
示差走査熱量計(TA Instruments(株)製、DSC Q20)を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で、以下の条件により測定した。
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で-35℃まで冷却
(4)-35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
(6)(5)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析しガラス転移温度を求めた。
【0076】
<トナーの体積平均粒径(D50)(μm)、個数平均粒径(μm)、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)>
コールターカウンター[商品名:マルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)]を用いて測定した。
まず、電解水溶液であるISOTON-II(ベックマン・コールター社製)100~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1~5mL加えた。さらに測定試料を2~20mg加え、試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパーチャーとして50μmアパーチャーを用いて、トナーの体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出した。得られた分布から、トナーの体積平均粒径(D50)(μm)、個数平均粒径(μm)、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)を求めた。
【0077】
<製造例1>〔結晶性ポリエステル樹脂(A-1)の合成〕
冷却管、加熱冷却装置、温度計、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、1,9-ノナンジオール447部(48.5モル%)、ドデカン二酸607部(50モル%)、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デカノール40部(1.5モル%)、及び縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)1.5重量部を入れ、170℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させ、さらに0.5~2.5kPaの減圧下に反応させ、酸価が0.2mgKOH/gになった時点で取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕して粒子化し、結晶性ポリエステル樹脂(A-1)を得た。結晶性ポリエステル樹脂(A-1)の重量平均分子量(Mw)は20,000、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は72℃、吸熱ピークにおける吸熱量は107J/g、酸価は0.2mgKOH/gだった。
【0078】
<製造例2~5>[結晶性ポリエステル樹脂(A-2)~(A-5)の合成]
表1の製造例2~5に記載の原料を用いた以外は製造例1と同様にして結晶性ポリエステル樹脂(A-2)~(A-5)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)、吸熱ピークにおける吸熱量、酸価を表1に記載した。
【0079】
<比較製造例1~2>〔結晶性ポリエステル樹脂(AR-1)~(AR-2)の合成〕
表1の比較製造例1~2に記載の原料を用いた以外は製造例1と同様にして結晶性ポリエステル樹脂(AR-1)~(AR-2)を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)、吸熱ピークにおける吸熱量、酸価を表1に記載した。
【0080】
製造例1~5で得られた本発明の結晶性ポリエステル樹脂(A)及び比較製造例1~2で得られた結晶性ポリエステル樹脂(AR)の配合部数及び樹脂物性を表1に示す。
【0081】
【0082】
なお、表1、表2中で使用した原料の詳細は下記の通りである。
エチレングリコール[(株)日本触媒製]。プロピレングリコール[(株)ADEKA製]。1,9-ノナンジオール[(株)クラレ製]。1,12-ドデカンジオール[日本アエロジル(株)製]。ベヘニルアルコール[BASF製、STENOL1822 80 PAST]。セバシン酸[豊国製油(株)製]。ドデカン二酸[宇部興産(株)製]。テレフタル酸[三井化学(株)製]。アジピン酸[旭化成(株)製]。無水トリメリット酸[三菱ガス化学(株)製]。安息香酸[Emerald Kalama Chemical,BV製]。1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デカノール[東京化成工業(株)製]。ペンタフルオロベンジルアルコール[東京化成工業(株)製]。4-(トリフルオロメチル)安息香酸[東京化成工業(株)製]。1H,1H,10H,10H-ヘキサデカフルオロ-1,10-デカンジオール[東京化成工業(株)製]。
【0083】
<製造例6>[非晶性ポリエステル樹脂(B-1)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)193部(14.6モル%)、ビスフェノールA・PO3モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-3P」)539部(35.4モル%)、テレフタル酸173部(26.7モル%)、アジピン酸67部(11.8モル%)、無水トリメリット酸86部(11.5モル%)、縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3.6部を入れ、220℃で反応させ、生成する水を留去しながら20時間反応させた。さらに0.5~2.5kPaの減圧下で反応させ、1/2降下温度が150℃になったところで、スチールベルトクーラーを使用して取り出した。取り出した樹脂を粉砕して粒子化し、非晶性ポリエステル樹脂(B-1)を得た。非晶性ポリエステル樹脂(B-1)の1/2降下温度は150℃、ガラス転移温度(Tg)は60℃、酸価は23mgKOH/g、水酸基価は1mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は130,000だった。
【0084】
<製造例7>[非晶性ポリエステル樹脂(B-2)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)324部(20.0モル%)、ビスフェノールA・EO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBPE-20」)443部(30.0モル%)、テレフタル酸280部(47.7モル%)、縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)3.0部を入れ、230℃まで0.5~2.5kPaの減圧下で昇温しながら、生成する水を留去しながら反応させ、酸価が2mgKOH/g未満になるまで反応させた。次いで180℃まで冷却し、無水トリメリット酸14部(2.3モル%)を加え、常圧下で1時間反応させて取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕して粒子化し、非晶性ポリエステル樹脂(B-2)を得た。非晶性ポリエステル樹脂(B-2)の1/2降下温度は97℃、ガラス転移温度(Tg)は58℃、酸価は8mgKOH/g、水酸基価は55mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は5,000だった。
【0085】
<製造例8>[非晶性ポリエステル樹脂(B-3)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール649部(50.0モル%)、テレフタル酸673部(42.0モル%)、アジピン酸32部(2.3モル%)、無水トリメリット酸52部(2.8モル%)、安息香酸34部(2.9モル%)、縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ220℃で反応させ、生成する水を留去しながら20時間反応させた。さらに0.5~2.5kPaの減圧下で反応を進め、1/2降下温度が130℃になったところで、スチールベルトクーラーを使用して取り出した。取り出した樹脂を粉砕して粒子化し、非晶性ポリエステル樹脂(B-3)を得た。非晶性ポリエステル樹脂(B-3)の1/2降下温度は130℃、ガラス転移温度(Tg)は64℃、酸価は2mgKOH/g、水酸基価は25mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は65,000だった。
【0086】
<製造例9>[非晶性ポリエステル樹脂(B-4)の合成]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、プロピレングリコール583部(48.5モル%)、ビスフェノールA・PO2モル付加物(三洋化成工業(株)製、「ハイマーBP-2P」)49部(1.5モル%)、テレフタル酸627部(40.8モル%)、アジピン酸8部(0.6モル%)、無水トリメリット酸58部(3.3モル%)、安息香酸49(4.4モル%)、縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2.5部を入れ、220℃で反応させ、生成する水を留去しながら20時間反応させた。さらに0.5~2.5kPaの減圧下で反応を進め、1/2降下温度が105℃になったところで常圧にもどし、180℃に冷却した。無水トリメリット酸17部(0.9モル%)加え、1時間反応させてスチールベルトクーラーを使用して取り出した。取り出した樹脂を粉砕して粒子化し、非晶性ポリエステル樹脂(B-4)を得た。非晶性ポリエステル樹脂(B-4)の1/2降下温度は114℃、ガラス転移温度(Tg)は64℃、酸価は10mgKOH/g、水酸基価は24mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は13,000だった。
【0087】
<製造例10>[非晶性ポリエステル樹脂(B-5)の合成]
表2の製造例10に記載の原料を用いた以外は製造例7と同様にして非晶性ポリエステル樹脂(B-5)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂の1/2降下温度、ガラス転移温度(Tg)、酸価、水酸基価、重量平均分子量(Mw)を表2に記載した。
【0088】
製造例6~10で得られた非晶性ポリエステル樹脂(B)の配合部数及び樹脂物性を表2に示す。
【0089】
【0090】
<実施例1>[トナー(T-1)の製造]
結晶性ポリエステル樹脂(A-1)10部、非晶性ポリエステル樹脂(B-1)27部、非晶性ポリエステル樹脂(B-2)63部に対して、着色剤として顔料のカーボンブラック「MA-100」[三菱化学(株)製]8部、離型剤としてパラフィンワックス「HNP-9」[日本精鑞(株)製]4部、荷電制御剤「T-77」[保土谷化学(製)]1重量部を加え、ヘンシェルミキサ[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。
ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[日本ニューマチック工業(株)製]を用いて微粉砕した後、気流分級機[日本ニューマチック工業(株)製 MDS-I]で分級し、体積平均粒径が5μm、粒度分布が1.2の樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子(99部に流動化剤の疎水性シリカ「アエロジルR972」[日本アエロジル製]1部をサンプルミルにて混合して、トナー(T-1)を得た。
【0091】
<実施例2、3、5>[トナー(T-2)、(T-3)、(T-5)の製造]
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(A-1)を(A-2)、(A-3)、(A-5)に置き換えた以外は実施例1と同様にトナー(T-2)、(T-3)、(T-5)を得た。
【0092】
<実施例4>[トナー(T-4)の製造]
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(A-1)を(A-4)、(B-1)27部を(B-3)50部、(B-2)63部を(B-4)50部に置き換えた以外は実施例1と同様にトナー(T-4)を得た。
【0093】
<比較例1~2>[トナー(TR-1)、(TR-2)の製造]
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(A-1)を(AR-1)~(AR-2)に置き換えた以外は実施例1と同様にトナー(TR-1)、(TR-2)を得た。
【0094】
<比較例3>[トナー(TR-3)の製造]
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(A-1)を使用しないこと以外は実施例1と同様にトナー(TR-3)を得た。
【0095】
<比較例4>[トナー(TR-4)の製造]
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(A-1)を使用しないこと、(B-1)27部及び(B-2)63部を(B-5)100部に置き換えた以外は実施例1と同様にトナー(TR-4)を得た。
【0096】
[評価方法]
以下に得られたトナーバインダーの分散性(結晶性ポリエステル樹脂の最大粒径と平均粒径)、トナーの低温定着性、帯電性、耐熱保存性、定着強度、画像強度の測定方法、評価方法、判定基準を説明する。
【0097】
<分散性>(結晶性ポリエステル樹脂の最大粒径と平均粒径)
結晶性ポリエステル樹脂(A)及び非晶性ポリエステル樹脂(B)を、表3に記載の配合部数で、ヘンシェルミキサ[三井三池化工機(株)製 FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製 PCM-30]で混練した。得られたトナーバインダーを用いて、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察されるトナーバインダー断面を以下のようにして作製した。得られたトナーバインダーを可視光硬化性包埋樹脂(D-800、日新EM社製)で包埋し、超音波ウルトラミクロトーム(EM5、ライカ社製)により60nm厚に切削し、真空染色装置(フィルジェン社製)によりルテニウム染色を行った。その後、透過型電子顕微鏡(H7500、株式会社日立ハイテクノロジー製)を用い、加速電圧120kVで、得られたトナーバインダーの断面から結晶性ポリエステル樹脂の分散状態を観察した。観察された画像全体の内、最も長径が大きい結晶性ポリエステル樹脂の長径を最大粒径とした。また、無作為に選んだ拡大画像(×1000)に対しフリーソフト「image J」を用いて以下の手順で画像処理を行い、算出される「mean feret」を結晶性ポリエステル樹脂の平均粒径とした。なお、比較例2~4のトナーバインダーでは、結晶性ポリエステル樹脂の分散が確認できなかった。
1.image type → 8bit
2.line → analyse → set scale
→ known distance 5.0
3.process → binary → median filter 10
4.image → adjust → threshold
5.process → binary → fill holl
6.analyse particle
(set mesearements → feret diameter)
【0098】
<低温定着性>(MFT)
トナーを紙面上に0.6mg/cm2となるよう均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。上記の重量密度で粉体を均一に載せることができるのであれば他の方法を用いてもよい。この紙を加圧ローラーに定着速度(加熱ローラ周速)213mm/sec、定着圧力(加圧ローラ圧)10kg/cm2の条件で、加熱ローラーの温度90~230℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのコールドオフセットの有無を目視し、コールドオフセットの発生がなくなった温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味し、この評価条件では、MFTは一般には125℃以下であることが好ましい。トナーの低温定着性を表3に、MFT(℃)として示した。
【0099】
<帯電性>(帯電量)
(1)トナー0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F-150)10gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを23℃、相対湿度50%で8時間調湿した。
(2)ターブラーシェーカーミキサーにて90rpm×2分間摩擦攪拌し、攪拌後の混合粉体0.2gを目開き20μmステンレス金網がセットされたブローオフ粉体帯電量測定装置に装填し、ブロー圧10KPa,吸引圧5KPaの条件で、残存フェライトキャリアの帯電量を測定し、定法によりトナーの帯電量(μC/g)を算出した。なお、トナー用としてはマイナス帯電量が高いほど帯電特性が優れており、-15μC/g以下であることが好ましい。
測定にはブローオフ帯電量測定装置[東芝ケミカル(株)製]を用いた
【0100】
<耐熱保存性>(凝集度)
トナー1gとアエロジルR8200(エボニックジャパン(株)製)0.013gをシェイカーで1時間混合し、混合物を密閉容器に入れ、温度45℃、湿度80%の雰囲気で48時間静置し、パウダーテスターで凝集度を測定し、耐熱保存性を評価した。
下記方法により求められる凝集性試験の数値が低いほど、耐熱保存性に優れることを意味する。この評価条件では、3%以下であることが好ましい。
装置: POWDER TESTER model PT-X(ホソカワミクロン製)
篩の目開き: 355μm、250μm、150μm
振動幅: 1mm
振動時間: 30秒
操作方法: パウダーテスターの振動台に、篩を上段355μm、中段250μm、下段150μmの順でセットし、上段の篩にトナーを1g乗せ、1mmの振動幅で30秒間振動させて、各篩上に残存したトナーの重量を測定。
凝集度: 測定に使用したトナー重量と篩後の残存トナー重量から算出。
凝集度(%)=(U/N+M/N×3/5+L/N×1/5)×100
U:上段の重量、M:中段の重量、L:下段の重量、N:サンプルの重量(1g)
【0101】
<定着強度>(テープ剥離)
上記低温低着性の評価で定着したMFTでの定着画像の定着強度をテープ剥離試験により評価した。定着画像にテープ(3M社製の「スコッチメンディングテープ」)を貼り付けた後、そのテープを剥離し、テープに付着した画像の画像濃度(ID)を反射濃度計(商品名「X-Rite model 404」、X-Rite社製)により測定した。付着した画像の画像濃度(数値)が小さいほど、定着強度が高いことを示す。この評価条件では、0.2以下であることが好ましい。
【0102】
<画像強度>(鉛筆硬度)
上記低温低着性の評価で定着したMFTでの定着画像を、JIS K5600-5-4(1999)に準じて、斜め45度に固定した鉛筆の真上から10gの荷重が加わる様にして、手かき法によりかけ引っ掻き硬度試験を行い、傷のつかない鉛筆硬度から画像強度を評価した。鉛筆硬度が高いほど画像強度に優れることを意味する。一般にはHB以上であることが好ましい。
【0103】
上記の評価結果を表3に示す。
【0104】
【0105】
表3の評価結果から明らかなように、実施例1~5に係る結晶性ポリエステル(A-1)~(A-5)を含有するトナー(T-1)~(T-5)はいずれもすべての性能評価が優れた結果が得られた。
一方、比較例1~4に係るトナー(TR-1)~(TR-4)は、いくつかの性能項目が不良であった。