(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134128
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】勾配繊維不織布、その紡糸装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/14 20120101AFI20220907BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220907BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20220907BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20220907BHJP
【FI】
D04H3/14
D04H3/16
B32B5/26
B32B5/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032143
(22)【出願日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】202110232407.7
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522083189
【氏名又は名称】佛山市南海中邦無紡有限公司
【氏名又は名称原語表記】CENTRAL ALLIANCE NONWOVEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 1-1 Xidi Road, Nansha Industrial Zone, Danzao Town, Nanhai District, Foshan City, Guangdong Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】程仕元
(72)【発明者】
【氏名】李流泉
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG15
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100GB56
4F100JA06
4L047AA21
4L047AB07
4L047CA02
4L047CA05
4L047CC12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】勾配繊維不織布、その紡糸装置及び製造方法を提供する。
【解決手段】勾配繊維不織布は太長繊維層1と細長繊維層2とを含み、太長繊維層の繊維直径が30μm~40μmであり、細長繊維層の繊維直径が13μm~17μmであり、太長繊維層の1m
2あたりの重量が100g~150gであり、細長繊維層の繊維の1m
2あたりの重量が100g~150gである。
【効果】本発明の不織布は、圧力差が小さく、除塵を必要とする業界に適用する場合、(1)本発明は、通気性が大きく、除塵装置で吹き返して灰を除去することがより容易になるため、耐久性がより高くなり、フィルタカートリッジの耐用年数が30%以上増加し、(2)除塵装置のモーターの消費電力が小さくなり、本発明は10%の電気量を節約し、(3)ろ過効率が99.5%までに達することができ、省エネルギー、排出削減が実現される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
勾配繊維不織布であって、
太長繊維層と、細長繊維層とを含み、前記太長繊維層の繊維直径が30μm~40μmであり、前記細長繊維層の繊維直径が13μm~17μmであり、前記太長繊維層の1m2あたりの重量が100g~150gであり、前記細長繊維層の繊維の1m2あたりの重量が100g~150gであり、
前記勾配繊維不織布の圧延点が不織布の総面積の25%を占め、前記圧延点の深さが0.05mm~0.1mmである、ことを特徴とする勾配繊維不織布。
【請求項2】
前記勾配繊維不織布の厚さが0.5mm~0.8mmであり、前記太長繊維層の厚さが0.2mm~0.5mmであり、前記細長繊維層の厚さが0.2mm~0.4mmである、ことを特徴とする請求項1に記載の勾配繊維不織布。
【請求項3】
紡糸ビームと、糸揺動装置と、通気搬送網とを含み、前記紡糸ビームに第1の計量ポンプ及び第2の計量ポンプが設けられ、前記紡糸ビームの下端に前列紡糸口金群と後列紡糸口金群という2列の紡糸口金群が設けられ、前記前列紡糸口金群及び前記後列紡糸口金群のそれぞれの下方に第1の糸延伸装置及び第2の糸延伸装置が設けられ、前記第1の糸延伸装置の下方には第1の糸揺動装置が設けられ、前記第2の糸延伸装置の下方には第2の糸揺動装置が設けられ、前記第1の糸揺動装置と前記第2の糸揺動装置との間の間隔が1mであり、前記第1の糸揺動装置及び前記第2の糸揺動装置の下方に通気搬送網が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の勾配繊維不織布の紡糸装置。
【請求項4】
請求項3に記載の紡糸装置により勾配繊維不織布を製造する方法であって、
原材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)チップを前結晶、乾燥し、前記PETチップを結晶化流動層内で前結晶しながら、PETチップが固結しないようにパルスブローを行い、次に乾燥後のPETチップの含水率が40ppm未満になるように乾燥させるステップ1と、
乾燥させたPETチップを熔融して、液体メルトとするステップ2と、
前記液体メルトをフィルタでろ過した後、紡糸ビームに流入させて吐出し、第1の計量ポンプ及び第2の計量ポンプのそれぞれにより前記紡糸ビームの下端の前列紡糸口金群及び後列紡糸口金群に前記液体メルトを定量的に供給し、次に前記前列紡糸口金群及び後列紡糸口金群から吐出しながら冷却させ、糸状に冷却した後、第1の糸延伸装置及び第2の糸延伸装置のそれぞれに入れるステップ3と、
前記第1の糸延伸装置及び前記第2の糸延伸装置のそれぞれにより糸を延伸して長くし、糸を延伸した後、第1の糸揺動装置及び第2の糸揺動装置のそれぞれに入れるステップ4と、
前記第1の糸揺動装置及び前記第2の糸揺動装置の両方により同時に糸を揺動しながら通気搬送網に落下させ、前記第1の糸揺動装置によって通気搬送網上に第1の綿状糸層を形成し、前記第2の糸揺動装置によって通気搬送網上に第2の綿状糸層を形成し、前記通気搬送網の移動方向については第1の糸揺動装置から第2の糸揺動装置へ移動するステップ5と、
積層された第1の綿状糸層及び第2の綿状糸層を前記通気搬送網によって熱融着機に搬送して熱融着し、緻密な勾配繊維不織布とするステップ6と、
前記緻密な勾配繊維不織布を冷却し、完成品として巻き取るステップ7とを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項5】
前記PETチップの溶融点が260℃であり、前記ステップ1の結晶化流動層の温度が160℃~180℃であり、前結晶の時間が20min~30minであり、乾燥時間が4h~6hである、ことを特徴とする請求項4に記載の勾配繊維不織布を製造する方法。
【請求項6】
前記ステップ2の熔融温度が270℃~300℃である、ことを特徴とする請求項4に記載の勾配繊維不織布を製造する方法。
【請求項7】
前記ステップ3の紡糸ビーム内の温度が285℃~295℃に維持され、前記第1の計量ポンプ及び前記第2の計量ポンプの回転数が8回転/min~25回転/minである、ことを特徴とする請求項4に記載の勾配繊維不織布を製造する方法。
【請求項8】
前記ステップ5の第1の糸延伸装置及び第2の糸延伸装置の揺動頻度が100回/s~1000回/sであり、前記通気搬送網の線速度が6m/min~15m/minであり、前記通気搬送網の下方で排気が行われ、風圧が-800pa~-1500paである、ことを特徴とする請求項4に記載の勾配繊維不織布を製造する方法。
【請求項9】
前記ステップ6の熱融着機の圧力が20トン~60トンであり、圧力が±1%の精度で制御され、前記熱融着機の温度が230℃~270℃であり、前記熱融着機の熱融着ローラの表面に突起した圧延点が設けられ、前記圧延点は十字形模様として熱融着ローラの表面に分布しており、前記圧延点の面積が熱融着ローラの表面積の25%を占める、ことを特徴とする請求項4に記載の勾配繊維不織布を製造する方法。
【請求項10】
製造方法は全体としてセントラルコントローラにより制御され、前記セントラルコントローラは構成ソフトウェア及びPLCを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の勾配繊維不織布を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布の分野に属し、特に勾配繊維(gradient fibers)不織布、その紡糸装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、繊維で構成されたものであり、空気や水のろ過のためのものの規格は260g/m2であり、市販の不織布の繊維直径が16μm~18μmであり、一例として、日本から輸入された不織布は、繊維直径が一般的に16μmであり、圧力差が60pa~70paであり、表面にフィルムを被覆して使用する場合の圧力差が250paである。ただし、不織布を産業用除塵装置に応用した場合、不織布の圧力差が大きいため、通気度が不足し、不織布に捕集された粉塵を完全に吹き返し除去することができず、不織布の表面の被膜が吹き破れやすく、さらに、使用期間が長ければ長いほど、不織布に堆積した粉塵が多くなり、その結果、除塵装置のモーターのエネルギー消費量が上昇する。よって、エネルギー消費量を低減するために、除塵装置のカートリッジを定期的に交換しなければならず、このように、コストが増加し、特に製鉄所やセメント工場などでは長時間の連続作業が必要であるため、カートリッジの交換がより頻繁になり、コストが高くなるだけでなく、大きな無駄が生じるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明名称が「フィルタ用スパンボンド不織布及びその製造方法」、特許番号が「201680074618.X」である発明特許は、複合型ポリエステル繊維で構成されたフィルタ用不織布を開示しているが、複合型ポリエステル繊維の直径が小さい場合、例えば直径が16μmであれば、そのろ過精度が高いが、直径が小さいほど構造が密になるため、通気性が小さく、これにより、不織布の圧力差が大きくなり、一方、複合型ポリエステル繊維の直径が大きい場合、通気性の不足を解消できるが、ろ過精度が要件を満たせないという問題がある。いかにろ過精度を高く維持しながら、不織布の圧力差を小さくするかは、業界が解決しなければならない課題である。
【0004】
上記従来技術の欠陥を解決するために、本発明は、ろ過効率が高く、圧力差が小さく、耐用年数が長い勾配繊維不織布、その紡糸装置及び製造方法を提案している。下記技術的解決手段により、本発明が解決しようとする技術的課題は解決される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
勾配繊維不織布であって、
太長繊維層と細長繊維層とを含み、太長繊維層の繊維直径が30μm~40μmであり、細長繊維層の繊維直径が13μm~17μmであり、太長繊維層の1m2あたりの重量が100g~150gであり、細長繊維層の繊維の1m2あたりの重量が100g~150gであり、
勾配繊維不織布の圧延点が不織布の総面積の25%を占め、圧延点の深さが0.05mm~0.1mmである。
【0006】
さらに、勾配繊維不織布の厚さが0.5mm~0.8mmであり、太長繊維層の厚さが0.2mm~0.5mmであり、細長繊維層の厚さが0.2mm~0.4mmである。
【0007】
勾配繊維不織布の紡糸装置であって、
紡糸ビームと、糸揺動装置と、通気搬送網とを含み、紡糸ビームに第1の計量ポンプ及び第2の計量ポンプが設けられ、紡糸ビームの下端に前列紡糸口金群と後列紡糸口金群という2列の紡糸口金群が設けられ、前列紡糸口金群及び後列紡糸口金群のそれぞれの下方に第1の糸延伸装置及び第2の糸延伸装置が設けられ、第1の糸延伸装置の下方には第1の糸揺動装置が設けられ、第2の糸延伸装置の下方には第2の糸揺動装置が設けられ、第1の糸揺動装置と第2の糸揺動装置との間の間隔が1mであり、第1の糸揺動装置及び第2の糸揺動装置の下方に通気搬送網が設けられている。
【0008】
勾配繊維不織布の製造方法であって、
原材料としてポリエチレンテレフタレート(PET)チップを前結晶(precrystallization)、乾燥し、PETチップを結晶化流動層内で前結晶しながら、PETチップが固結しないようにパルスブローを行い、次に乾燥後のPETチップの含水率が40ppm未満になるように乾燥させるステップ1と、
乾燥させたPETチップを熔融して、液体メルトとするステップ2と、
液体メルトをフィルタでろ過した後、紡糸ビームに流入させて吐出し、第1の計量ポンプ及び第2の計量ポンプのそれぞれにより紡糸ビームの下端の前列紡糸口金群及び後列紡糸口金群に液体メルトを定量的に供給し、次に前列紡糸口金群及び後列紡糸口金群から吐出しながら冷却させ、糸状に冷却した後、第1の糸延伸装置及び第2の糸延伸装置のそれぞれに入れるステップ3と、
第1の糸延伸装置及び第2の糸延伸装置のそれぞれにより糸を延伸して長くし、糸を延伸した後、第1の糸揺動装置及び第2の糸揺動装置のそれぞれに入れるステップ4と、
第1の糸揺動装置及び第2の糸揺動装置の両方により同時に糸を揺動しながら通気搬送網に落下させ、第1の糸揺動装置によって通気搬送網上に第1の綿状糸層を形成し、第2の糸揺動装置によって通気搬送網上に第2の綿状糸層を形成し、通気搬送網の移動方向については第1の糸揺動装置から第2の糸揺動装置へ移動するステップ5と、
積層された第1の綿状糸層及び第2の綿状糸層を通気搬送網によって熱融着機に搬送して熱融着し、緻密な勾配繊維不織布とするステップ6と、
緻密な勾配繊維不織布を冷却し、完成品として巻き取るステップ7とを含む。
【0009】
具体的には、PETチップの溶融点が260℃であり、ステップ1の結晶化流動層の温度が160℃~180℃であり、前結晶時間が20min~30minであり、乾燥時間が4h~6hである。
【0010】
具体的には、ステップ2の熔融温度が270℃~300℃である。
【0011】
具体的には、ステップ3の紡糸ビーム内の温度が285℃~295℃に維持され、第1の計量ポンプ及び第2の計量ポンプの回転数が8回転/min~25回転/minである。
【0012】
具体的には、ステップ5の第1の糸延伸装置及び第2の糸延伸装置の揺動頻度が100回/s~1000回/sであり、通気搬送網の線速度が6m/min~15m/minであり、
通気搬送網の下方で排気が行われ、風圧が-800pa~-1500paである。
【0013】
具体的には、ステップ6の熱融着機の圧力が20トン~60トンであり、圧力が±1%の精度で制御され、熱融着機の温度が230℃~270℃であり、熱融着機の熱融着ローラの表面に突起した圧延点が設けられ、圧延点は十字形模様として熱融着ローラの表面に分布しており、圧延点の面積が熱融着ローラの表面積の25%を占める。
【0014】
特に、製造方法は全体としてセントラルコントローラにより制御され、セントラルコントローラは構成ソフトウェア及びPLC(programmable logic controller)を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の勾配繊維不織布は、圧力差が小さく、除塵を必要とする産業、例えば製鉄所やセメント工場などに適用する場合、(1)本発明は、通気性が大きく、除塵装置で吹き返しして灰を除去することがより容易になるため、耐久性がより高くなり、市販の不織布と比較してフィルタカートリッジの耐用年数が30%以上増加し、(2)除塵装置のモーターの消費電力が小さくなり、市販の不織布と比較して本発明は10%の電気量を節約し、(3)ろ過効率が99.5%までに達することができ、製鉄所の排出物を検出した結果、製鉄所のすべての粉塵の排出濃度は1立方メートルあたり3mg~5mgであり、中国により規定される1立方メートルあたり10mgの排出基準よりもはるかに低く、省エネルギー、排出削減が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の構造模式図であり、
図2は、
図1のA部の拡大図である。
図1及び
図2に示すように、勾配繊維不織布は、太長繊維層1と細長繊維層2とを含み、太長繊維層1の繊維直径D1が30μm~40μmであり、細長繊維層2の繊維直径D2が13μm~17μmであり、太長繊維層1の1m
2あたりの重量が100g~150gであり、細長繊維層2の繊維の1m
2あたりの重量が100g~150gである。勾配繊維不織布とは、一層の繊維直径が30μm~40μmであり、他層の繊維直径が13μm~17μmである、2層の繊維の密度が異なる不織布が一定の圧力と温度で粘着されたものを意味する。本実施例の勾配繊維不織布は長繊維不織布であり、勾配繊維不織布の圧延点100が不織布の総面積の25%を占め、圧延点100の深さdが0.05mm~0.1mmである。
【0018】
勾配繊維不織布の厚さL3は0.6mm~0.65mmであり、太長繊維層1の厚さL1は0.2mm~0.3mmであり、細長繊維層2の厚さL2は0.3mm~0.4mmである。本発明では、細長繊維層2の表面にはPTFE膜が熱融着により被覆されることが適しており、膜が被覆されると、ろ過効率が99.5%までに達することができ、これは、細長繊維層2の繊維直径が小さく、且つ圧延点100の深さが小さいので、表面の膜がより強固、平坦且つ光沢良好になるためである。本発明では、細長繊維層2の主な役割は、表面のPTFE膜を支持し、PTFE膜の平坦性及び強固さを維持し、PTFE膜を吹き破れにくくし、ろ過効率を確保しながら耐久性を向上させることであり、太長繊維層1の役割は、細長繊維層2を支持することであり、しかも太長繊維層1の繊維直径が大きいため、太長繊維層1の孔径が大きくなり、これにより、通気性がより良好になる。
【0019】
本発明は、特に折り畳み可能なフィルタカートリッジに好適に適用することができる。まず、膜が被覆されるとろ過効率が高くなるので、フィルタカートリッジの除塵効率が高く確保され、次に、太長繊維層1及び細長繊維層2の硬さが良好であることにより、勾配繊維不織布の折り畳みが容易になり、且つフィルタカートリッジに支持されやすくなり、最後に、本発明の最も主な利点としては、太長繊維層1の通気性がよりよいため、全体の通気性が良好になり、これにより、本発明の勾配繊維不織布の圧力差が小さくなる。中国の国家標準GB/T6165-2008に準じたテストの結果、本発明の勾配繊維不織布は、圧力差が10paであり、市販の不織布の圧力差よりも6倍と減少しており、かつ、本発明は、膜が被覆されていても圧力差が市販の不織布よりも小さく、具体的なデータを表1に示す。本発明は特に製鉄所やセメント工場などでの除塵装置に好適に適用することができる。
【0020】
【0021】
圧力差が小さいことによる効果については、産業除塵を必要とする産業、例えば製鉄所やセメント工場等に用いられる場合、(1)本発明は、通気性が大きく、除塵装置で吹き返して灰を除去することがより容易になるため、耐久性がより高くなり、市販の不織布と比較してフィルタカートリッジの耐用年数が30%以上増加し、(2)除塵装置のモーターの消費電力が小さくなり、市販の不織布と比較して本発明は10%の電気量を節約し、(3)ろ過効率が99.5%までに達することができ、製鉄所の排出物を検出した結果、製鉄所のすべての粉塵の排出濃度は1立方メートルあたり3mg~5mgであり、中国により規定される1立方メートルあたり10mgの排出基準よりもはるかに低く、省エネルギー、排出削減が実現される。
【0022】
図3は、紡糸装置の構造模式図であり、
図3に示すように、勾配繊維不織布の紡糸装置は、紡糸ビーム3と、糸揺動装置と、通気搬送網4とを含み、紡糸ビーム3に第1の計量ポンプ5及び第2の計量ポンプ6が設けられ、紡糸ビーム3の下端に前列紡糸口金群7及び後列紡糸口金群8という2列の紡糸口金群が設けられ、前列紡糸口金群7及び後列紡糸口金群8のそれぞれの下方には第1の糸延伸装置9及び第2の糸延伸装置10が設けられ、第1の糸延伸装置9の下方には第1の糸揺動装置11が設けられ、第2の糸延伸装置10の下方には第2の糸揺動装置12が設けられ、第1の糸揺動装置11と第2の糸揺動装置12との間の間隔が1mであり、第1の糸揺動装置11及び第2の糸揺動装置12の下方には通気搬送網4が設けられる。
【0023】
前列紡糸口金群7及び後列紡糸口金群8は複数組の紡糸口金から構成され、前列紡糸口金群7及び後列紡糸口金群8の幅が2.4mに達し、前列紡糸口金群7及び後列紡糸口金群8の各紡糸口金内には密に分布している一定数の糸吐出孔が設けられ、糸吐出孔の直径が0.1mm~0.4mmであり、本実施例では、前列紡糸口金群7の各紡糸口金の糸吐出孔の数が小さく、直径が大きく、これにより、第1の糸延伸装置9により延伸された糸の直径が40μmになり、後列紡糸口金群8の各紡糸口金の糸吐出孔の数が多く、直径が小さく、これにより、第2の糸延伸装置10により延伸された糸の直径が16μmである。もちろん、前列紡糸口金群7の各紡糸口金の糸吐出孔の数が多く、直径が小さく、これにより、第1の糸延伸装置9により延伸された糸の直径が13μm~17μmであり、後列紡糸口金群8の各紡糸口金の糸吐出孔の数が小さく、直径が大きく、これにより、第2の糸延伸装置10により延伸された糸の直径が30μm~40μmであるようにしてもよく、その作動過程及び方法のステップは本実施例と同様であるため、ここでは詳しく説明しない。
【0024】
勾配繊維不織布の製造方法であって、
原材料としてPETチップと略称したポリエチレンテレフタレートを前結晶、乾燥し、PETチップを結晶化流動層内で前結晶しながら、PETチップが固結しないようにパルスブローを行い、次に乾燥後のPETチップの含水率が40ppm未満になるように乾燥させるステップ1と、
乾燥させたPETチップを熔融して、液体メルトとするステップ2と、
液体メルトをフィルタでろ過した後、紡糸ビーム3に流入させて吐出し、第1の計量ポンプ5及び第2の計量ポンプ6のそれぞれにより紡糸ビーム3の下端の前列紡糸口金群7及び後列紡糸口金群8に液体メルトを定量的に供給し、次に前列紡糸口金群7及び後列紡糸口金群8から吐出しながら冷却させ、糸状に冷却した後、第1の糸延伸装置9及び第2の糸延伸装置10のそれぞれに入れるステップ3と、
第1の糸延伸装置9及び第2の糸延伸装置10のそれぞれにより糸を延伸して長くし、糸を延伸した後、第1の糸揺動装置11及び第2の糸揺動装置12のそれぞれに入れるステップ4と、
第1の糸揺動装置11及び第2の糸揺動装置12の両方により同時に糸を揺動しながら通気搬送網4に落下させ、第1の糸揺動装置11によって通気搬送網4上に第1の綿状糸層40を形成し、第2の糸揺動装置12によって通気搬送網4上に第2の綿状糸層50を形成し、通気搬送網4の移動方向について第1の糸揺動装置11から第2の糸揺動装置12へ移動するステップ5と、
積層された第1の綿状糸層40及び第2の綿状糸層50を通気搬送網4によって熱融着機13に搬送して熱融着し、緻密な勾配繊維不織布60とするステップ6と、
緻密な勾配繊維不織布60を冷却し、最後に完成品として巻き取るステップ7とを含む。
【0025】
本発明では、PETチップの溶融点は260℃であり、ステップ1の結晶化流動層の温度は160℃~180℃であり、前結晶時間は20min~30minであり、乾燥時間は4h~6hであり、ステップ2の熔融温度は270℃~300℃であり、ステップ3の紡糸ビーム3の内の温度は285℃~295℃に維持され、第1の計量ポンプ5及び第2の計量ポンプ6の回転数は8回転/min~25回転/minである。ステップ5の第1の糸延伸装置9及び第2の糸延伸装置10の揺動頻度は100回/s~1000回/sであり、ステップ5の通気搬送網4の線速度は6m/min~15m/minであり、通気搬送網4の下方で排気が行われ、風圧は-800pa~-1500paである。ステップ6の熱融着機の圧力は20トン~60トンであり、圧力は±1%の精度で制御され、熱融着機の温度は230℃~270℃であり、熱融着機の熱融着ローラ13の表面には突起した圧延点13.1が設けられ、圧延点13.1は十字形模様として熱融着ローラ13の表面に分布しており、圧延点13.1の面積は熱融着ローラ13の表面積の25%を占める。
【0026】
製造方法は全体としてセントラルコントローラにより制御され、セントラルコントローラは構成ソフトウェアとPLCを含み、プロセス全体は自動化しており、手動操作を必要としない。
【0027】
以下、規格260g/m2の不織布の製造を例として、勾配繊維不織布の製造方法を説明する。
【0028】
ステップ1:原材料を前結晶、乾燥し、未乾燥のPETチップは一般に含水率が約0.4%であり、且つチップはアモルファスポリマーであり、軟化点が低く、紡糸に直接使用すると、加熱溶融時に激しく分解し、分子量を低下させ、紡糸品質に影響を与え、また、高温で水分が気化して気泡糸となり、その結果、紡糸の切れや糸のバリの原因となり、このため、乾燥が重要なことである。
【0029】
本発明では、PETチップを温度160℃の結晶流動層内で25分前結晶化しながら、パルスブローを行い、これによりPETチップを沸騰させるとともに固結を回避し、結晶化度の増加に伴い、チップは硬くなり、このように、乾燥させる際に環状に結着して供給口を詰めるような現象を回避し、紡糸時のメルトの品質を均一にする。含水率を一定の範囲に抑える目的で5時間乾燥させ、本発明では、乾燥後のPETチップの含水率が40ppm未満であり、乾燥後の固有粘度の変化には0.01未満が要求され、固有粘度に変化が生じる原因は、ポリエステル高分子が分解して固有粘度を低下させるか、固相重合により固有粘度を向上させることであり、このため、温度、時間、乾燥空気の露点を適切に制御する必要があり、露点とは、空気中の水蒸気が飽和に達する温度であり、空気中の水分含有量が低いほど露点が低くなり、本発明では、乾燥空気の露点は-10℃未満である。
【0030】
ステップ2:乾燥させたPETチップを290℃で熔融し、液体メルトとし、本実施例では、PETの溶融点は260℃である。
【0031】
ステップ3:液体メルトをフィルタでろ過した後、紡糸ビーム3に流入させて吐出し、次に、前列紡糸口金群7及び後列紡糸口金群8から液体メルトを吐出しながら冷却させ、糸状に冷却した後、第1の糸延伸装置9及び第2の糸延伸装置10に入れ、ここで、紡糸ビーム3の内の温度が295℃に維持され、紡糸ビーム3の下端には前列紡糸口金群7及び後列紡糸口金群8が設けられ、前列紡糸口金群7は第1の計量ポンプ5によって計量を行い、第1の計量ポンプ5の回転数が18回転/minであり、後列紡糸口金群8は第2の計量ポンプ6によって計量を行い、第2の計量ポンプ6の回転数が18回転/minである。
【0032】
ステップ4:第1の糸延伸装置9によって糸を延伸して長くし、直径40μmの糸20を得て、第2の糸延伸装置10によって糸を延伸して長くし、直径16μmの糸30を得て、糸を延伸した後、直径40μmの糸20を第1の糸揺動装置11、直径16μmの糸30を第2の糸揺動装置12に入れる。
【0033】
ステップ5:第1の糸揺動装置11及び第2の糸揺動装置12の両方により同時に糸を揺動しながら通気搬送網4に落下させ、第1の糸延伸装置9及び第2の糸延伸装置10の揺動頻度を700回/sとし、第1の糸揺動装置11によって直径40μmの糸20を通気搬送網4上に第1の綿状糸層40として形成し、第2の糸揺動装置12によって直径16μmの糸30を通気搬送網4上に第2の綿状糸層50として形成し、これと同時に、通気搬送網4の下方で風圧-1200paにて排気を行い、通気搬送網4の移動方向が第1の糸揺動装置11から第2の糸揺動装置12へ移動することであり、通気搬送網4の線速度が8m/minであるため、下層は第1の綿状糸層40となり、下層が第2の糸揺動装置12を通過するときに、第2の綿状糸層50は第1の綿状糸層40上に積層され、上層となる。本実施例では、通気搬送網4の線速度と第1の計量ポンプ5及び第2の計量ポンプ6の回転数とを組み合わせることにより、第1の綿状糸層の規格を130g/m2、第2の綿状糸層の規格を130g/m2とする。
【0034】
ステップ6:積層された第1の綿状糸層40及び第2の綿状糸層50を通気搬送網4によって熱融着機に搬送して熱融着し、緻密な勾配繊維不織布60とし、ここで、熱融着機の圧力は40トンであり、圧力は±1%の精度で制御され、温度は250℃であり、即ち、
図1に示すように、勾配繊維不織布60は、上層として細長繊維層2、下層として太長繊維層1であり、圧延点100の深さdが0.1mmである。本発明では、熱融着機の熱融着ローラ13の表面には突起した圧延点13.1が設けられ、圧延点13.1は十字状模様として熱融着ローラ13の表面に分布しており、圧延点13.1の面積が熱融着ローラ13の表面積の25%を占め、これにより、勾配繊維不織布の圧延点が不織布の総面積の25%を占めることが確保される。
【0035】
ステップ7:緻密な勾配繊維不織布60を冷却し、最後に完成品として巻き取る。
【0036】
装置を起動させる直後に、糸揺動も同時に行われるので、第2の綿状糸層50は第1の綿状糸層40上に積層されておらず、したがって、装置を起動させるときの数メートルから数十メートルの不織布を切り落とす必要があり、これ以降連続的に作動するため、常に所望の規格の勾配繊維不織布を生産することができる。
【0037】
要するに、本発明の勾配繊維不織布は、圧力差が小さく、除塵を必要とする産業、例えば製鉄所やセメント工場などに適用しており、(1)本発明は、通気性が大きく、除塵装置の吹き返し除塵がより容易になり、そのため、より耐久性が高く、市販の不織布と比較してフィルタカートリッジの耐用年数が30%以上増加し、(2)除塵装置のモーターの消費電力が小さく、市販の不織布と比較して本発明は10%の電気量を節約し、(3)ろ過効率が99.5%までに達することができ、製鉄所の排出物を検出した結果、製鉄所のすべての粉塵の排出濃度は1立方メートルあたり3mg~5mgであり、中国により規定される1立方メートルあたり10mgの排出基準よりもはるかに低く、省エネルギー、排出削減が実現される。