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特開2022-134134活性化合物によって誘発される特定の効果を選択するための、RNA編集に基づくアルゴリズム及びインビトロの方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134134
(43)【公開日】2022-09-14
(54)【発明の名称】活性化合物によって誘発される特定の効果を選択するための、RNA編集に基づくアルゴリズム及びインビトロの方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20220907BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20220907BHJP
   G16B 5/20 20190101ALI20220907BHJP
   G16B 30/00 20190101ALI20220907BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220907BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220907BHJP
   C12N 9/78 20060101ALN20220907BHJP
【FI】
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/6869 Z
G16B5/20
G16B30/00
C12N15/09 Z
C12N15/12
C12N9/78
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022084981
(22)【出願日】2022-05-25
(62)【分割の表示】P 2018548117の分割
【原出願日】2017-03-13
(31)【優先権主張番号】16000600
(32)【優先日】2016-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518318200
【氏名又は名称】アルスディアグ
【氏名又は名称原語表記】ALCEDIAG
(71)【出願人】
【識別番号】511134470
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ ルシェルシェ サイエンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワイスマン,ディナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デール ラーン,シェム
(72)【発明者】
【氏名】サルヴタ,ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】モリーナ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】プジョール,ジャン-フランソワ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薬物又は候補薬物が有害な副作用を誘発するリスクを、高い正診率及び高い識別力でインビトロで判定することができるアルゴリズムを提供する。
【解決手段】薬物又は化合物が患者において特定の効果を誘発する確率をインビトロで予測するためのアルゴリズム、及びRNA編集機構及び同種のアデノシンデアミナーゼによるRNAのA-to-I編集を示す少なくとも1つの標的を使用する、前記アルゴリズムの使用方法、ならびにこの方法を実施するためのキットを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において化合物が特定の効果を誘発する確率をインビトロで予測するためのアルゴ
リズムであって、前記アルゴリズム又はモデルが、
a)-pre-mRNAがADAR酵素(RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(
Adenosine Deaminases Acting on RNA))の基質で
あるRNAの、少なくとも1つの編集部位に対する前記ADARの作用により異なるアイ
ソフォーム又は部位の生成がもたらされるA-to-I編集を示す少なくとも1つの標的
を選択する工程、
-前記少なくとも1つの標的及び少なくとも前記ADAR酵素を内因的に発現する
少なくとも1つの細胞株を選択する工程、
-前記細胞株の細胞が処理された場合、前記標的アイソフォーム又は編集部位の相
対的割合を用量依存的に変化させることができる陽性対照化合物を選択する工程、
-前記特定の効果を誘発するリスクスコアを注釈付けされた、一定の化合物比で構
成された分子の集合を選択する工程、
b)前記細胞株の細胞を、陰性対照及び前記陽性対照と併せて、前記分子の集合の個々
の単一分子で処理する工程、
c)前記標的のRNA編集レベルの割合を、その編集アイソフォーム及び/又は部位の
それぞれについて、前記集合の分子それぞれについて得るために、その集合の分子で処理
された個々の試料の前記少なくとも1つの標的RNA編集プロファイルを解析する工程、
d)-i)単変量解析統計法により、個々のアイソフォーム/又は編集部位について、
分子が前記特定の効果を誘発するリスクを識別するその正診率及びその能力を評価する工
程;及び/又は
-ii)多変量解析統計法により、アイソフォーム/又は編集部位の各組み合わせに
ついて、分子が前記特定の効果を誘発するリスクを識別するその正診率及びその能力を評
価する工程、及び
-iii)最良の識別能を示す組み合わせを選択する工程、
e)アイソフォーム/又は編集部位の前記選択された組み合わせを用いてアルゴリズム
を構築し、このようにして得られた前記アルゴリズムを、前記化合物が患者において前記
特定の効果を誘発する確率を予測するために使用する工程、
を含む方法によって得られる、アルゴリズム。
【請求項2】
前記効果が、有害な副作用又は所望の副作用、好ましくは有害な副作用から選択される
副作用である、請求項1に記載のアルゴリズム。
【請求項3】
RNAのA-to-I編集を示す前記標的が、5-HT2cR、PDE8A(ホスホジ
エステラーゼ8A)、GRIA2(グルタミン酸受容体2)、GRIA3、GRIA4、
GRIK1、GRIK2、GRIN2C、GRM4、GRM6、FLNB(フィラミンB
)、5-HT2A、GABRA3、FLNA、CYFIP2からなる群から選択される、
請求項1又は2に記載のアルゴリズム。
【請求項4】
前記特定の効果が有害な精神医学的副作用である、請求項1~3のいずれか1項に記載
のアルゴリズム。
【請求項5】
前記細胞株が、
-前記標的及び(1又は複数の)ADARを内因的に発現し、
-神経芽細胞腫細胞株、好ましくはヒト細胞株、
-陰性対照又はビヒクル対照に対して正規化された場合に、陽性対照が少なくとも4、5
、又は6の誘発倍率でADAR1a発現を誘発した神経芽腫細胞株、並びに
-ヒトSH-SY5Y細胞株、
からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項6】
工程b)において、前記細胞株の細胞が、12時間~72時間、好ましくは48時間±
4時間の間、被験分子又は対照で処理される、請求項1~5のいずれか1項に記載のアル
ゴリズム。
【請求項7】
前記陽性対照がインターフェロンアルファである、請求項1~6のいずれか1項に記載
のアルゴリズム。
【請求項8】
工程c)が、個々の分子及び個々の編集アイソフォーム/又は編集部位について、前記
標的のRNA編集レベルの平均/中央値の相対的割合を得るために、ビヒクル処理対照細
胞と比較した、前記細胞株中の個々のアイソフォーム/又は部位についてのRNA編集の
基底レベルを決定する工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項9】
前記方法が、薬物又は化合物が特定の効果を誘発する確率を、リスクなし、若しくは低
リスク、又は高リスクによりインビトロで予測する方法である、請求項1~8のいずれか
1項に記載のアルゴリズム。
【請求項10】
前記分子の集合が、それぞれが前記特定の効果の誘発に対して高リスク及び低リスクの
スコアを注釈付けされた、平衡化された治療クラスの分子比で構成される、請求項1~8
のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項11】
工程1)d)i)が、個々のアイソフォーム又はそれらの組み合わせについて:
-前記特定の効果について、少なくとも60の敏感度(Se%)及び少なくとも60%の
特異度(Sp%)の最適閾値;
-真の存在[真陽性/(真陽性+偽陽性)]及び真の不在[真陰性/(真陰性+偽陰性)
]の割合を評価するための陽性的中率(PPV、%)及び陰性的中率(NPV、%)
を計算する工程を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項12】
工程c)において、RNA編集プロファイルが、
-好ましくは2ステップPCR法を用いて標的の(編集部位を含む)目的の配列断片を選
択的にシーケンシングする、NGSライブラリーの調製を含むNGS法(次世代シーケン
シング);
-得られた全てのNGSライブラリーのシーケンシング;
並びに任意選択で
-前記シーケンシングデータのバイオインフォマティクス解析
を含み、
前記バイオインフォマティクス解析が、好ましくは以下の工程:
-配列のプリアライメント処理と品質管理
-参照配列に対するアライメント;及び
-編集レベルのコーリング
を含む方法によって実行され、標的の編集プロファイルを得る、請求項1~11のいずれ
か1項に記載のアルゴリズム又はモデル。
【請求項13】
工程1)d)i)及び1)d)ii)並びに工程1)e)において、前記アルゴリズム
又はモデルの取得を可能にする前記統計的方法が:
-mROCプログラム、特に、AUC(曲線下面積)ROCを最大化し、それぞれの組み
合わせについての方程式が新しい仮想マーカZとして以下:
Z=a1(アイソフォーム1)+a2(アイソフォーム2)+...ai(アイソフォ
ームi)+...an(アイソフォームn)
(式中、a1は計算された係数であり、(アイソフォームi)はアイソフォームの標的の
個々のRNA編集レベルの相対的割合である)
のように提供され、使用され得る、線形結合を特定するためのプログラム;及び/又は
-単変量及び多変量解析に適用され、異なるアイソフォームの値で分子の相対的リスクを
推定するロジスティック回帰モデル;及び/又は
-アイソフォームの組み合わせを評価するために適用されるCART(分類ツリー及び回
帰ツリー(Classification And Regression Trees
))アプローチ;及び/又は
-アイソフォームの組み合わせを評価し、特に、編集アイソフォームの重要度をランク付
けし、最良のアイソフォームを組み合わせて、分子の「相対的リスク」を分類するために
適用されるランダムフォレスト(RF)アプローチ、及び/又は任意選択で、
-以下の群:
-サポートベクターマシン(SVM)アプローチ;
-人工ニューラルネットワーク(ANN)アプローチ;
-ベイジアンネットワークアプローチ;
-wKNN(重み付けk近傍)アプローチ;
-部分最小二乗法-判別分析(PLS-DA);並びに
-線形及び二次判別分析(LDA/QDA)
からなる群から選択する、分子の「相対的リスク」についてアイソフォームの組み合わせ
を評価するために適用される多変量解析、
を含む方法によって実行される、請求項1~12のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項14】
-前記1つの標的が5-HT2cRであり、
-前記特定の効果が精神医学的有害副作用であり、
-細胞株がヒトSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞株であり、
-陽性対照がインターフェロンアルファであり、
並びに、
-試験薬物による前記精神医学的有害副作用の誘発が低リスクであるか、又は高リスクで
あるかを識別することができる部位の組み合わせが、以下の5-HT2cRの部位:
A、B、C、D、及びE、
好ましくは前記部位の少なくとも3、4、又は5つの組み合わせ、
で構成される群から選択される少なくとも2、3、4、又は5つの単一部位の少なくとも
1つの組み合わせを含むか、
-又は試験薬物による前記精神医学的有害副作用の誘発が低リスクであるか、又は高リス
クであるかを識別することができるアイソフォームの組み合わせが、以下の5-HT2c
Rのアイソフォーム:
A、B、AB、ABC、AC、C、D、AD、AE、ACD、AEC、ABCD、及
びNE、
好ましくは前記アイソフォームの少なくとも5、6、又は7つの組み合わせ
で構成される群から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
、12、又は13の、単一アイソフォームの少なくとも1つの組み合わせを含み、並びに
任意選択で、
前記アルゴリズムまたはモデルの取得を可能にする前記統計的方法が、
-mROCプログラム、ランダムフォレストアプローチ、及び/又はCartアルゴリズ

を含む方法により実行される、請求項1~13のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項15】
薬物、化合物、又は分子が、患者において特定の効果、好ましくは副作用、より好まし
くは有害又は所望の副作用を誘発する確率又はリスクを予測するインビトロの方法であっ
て、pre-mRNAがADAR酵素の基質であるRNAの、前記ADARの作用により
異なるアイソフォームまたは部位の生成がもたらされるA-to-I編集を示す標的を使
用し、
A)前記標的のRNA編集レベルの割合を、その編集アイソフォームのそれぞれについ
て得るために、前記薬物又は化合物または分子で処理された試料の標的RNA編集プロフ
ァイルを解析し、
前記標的RNA編集プロファイルが、前記特定の効果について得られた、請求項1~1
4のいずれか1項に記載のアルゴリズム又はモデルにおける分子集合の分子について得ら
れたものとして得られる工程、
B)請求項1~14のいずれか1項に記載の、前記標的及び前記特定の効果について得
られたアルゴリズム又はモデルを用いて、前記薬物若しくは化合物について得られた最終
値又は適用されたアルゴリズム若しくはモデルを計算する工程;並びに、
C)工程B)で得られた結果を考慮して、前記薬物又は化合物が、患者において前記特
定の効果を誘発するリスクがあるかどうかを、特に低リスク対高リスクで判定する工程:
を含む、方法。
【請求項16】
薬物が、患者において有害副作用を誘発するリスクがあるか、特に低リスク又はリスク
なし対高リスクであるかどうかを判定するためのキットであって、
1)解析により、患者において前記有害副作用を誘発するリスクが判定される最終値を
前記試験薬物について得るために、請求項1~15のいずれか1項に記載のアルゴリズム
又はモデルを使用するための説明書、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を適用
するための説明書であり、任意選択でROC曲線又はCart決定木を含む説明書;並び
に、
2)1)の前記説明書の前記アルゴリズム又は前記モデルを判定するために使用される
分子集合の個々の分子について編集RNAプロファイルを得るために必要な試薬に準じた
、前記試験薬物について得られる編集RNAプロファイルを判定するための試薬;
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物又は化合物が患者において特定の効果を誘発する確率をインビトロで予
測するためのアルゴリズム、及びRNAのA-to-I編集を示す少なくとも1つの標的
を使用する、前記アルゴリズムの使用方法に関する。本発明は、この方法を実施するため
のキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
精神障害は世界中の医療制度においてますます多くを占めるようになっている(1)。
それらは西洋社会における一般的な障害であり、5人のうち1人は生涯に少なくとも1回
は罹患する。精神障害は、脳回路、神経伝達、及び神経可塑性に影響を与える、分子経路
の撹乱によって引き起こされる。最近の研究は、メチル化、アセチル化、及び脱アミノ化
等の、DNA及びRNAに対するエピジェネティック修飾の変化が、例えば大うつ病、双
極性障害、及び統合失調症に関連することを示している(2、3)。最近の研究はまた、
RNA上のアデノシン脱アミノ化(RNAのA-to-I編集)を触媒する編集酵素の重
要性を明らかにした。この特異的機序は、高度に保存された神経伝達物質及びシナプス関
連因子を本質的にコードする遺伝子の機能を直接調節することが示されている(4~7)
。重要なことに、このRNA編集機構及び同種のADAR酵素(RNAに作用するアデノ
シンデアミナーゼ(Adenosine Deaminases Acting on
RNA))の健康及び疾患における役割が、精神障害に罹患している患者の脳におけるそ
の調節解除の証拠の蓄積により、更に明らかになってきた(8、9)。ADARは、二本
鎖pre-mRNAステムループに作用して、アデノシン残基を優先的、特異的に脱アミ
ノ化する。コード配列中に存在する残基の脱アミノ化は、異なる薬理学的特性を有する受
容体の変異体(例えば、セロトニン2c受容体、グルタミン酸受容体)を産生するアミノ
酸置換をもたらす(10)。
【0003】
脳におけるセロトニン生態学の異常は、うつ病及び/又は自殺行動の根底にある特徴的
な形質であることが提唱されている(11~13)。自殺犠牲者の死後脳組織を分析する
ことにより、本発明者らは、5-HT2CRの薬理学的特性を大きく損なうことが知られ
ている、セロトニン受容体2C(5HT2cR)pre-mRNAに対するRNA編集活
性の明確な変化を観察した(10、14)。興味深いことに、自殺犠牲者のヒト皮質にお
ける5-HT2cR mRNA編集プロファイルにおけるこれらの変化は、部分的に、S
H-SY5Y細胞で観察されるインターフェロン誘発性変化と重なる。本発明者らは、う
つ病/自殺患者に関連する5-HT2cRの「RNA編集のサイン」を特徴づけるための
特異的バイオマーカを正確に指摘した。
【0004】
異なる治療クラスに属するいくつかの薬物が、重度の精神医学的有害作用、特にうつ病
及び自殺念慮を誘発する可能性があると報告されている(15~18)。今日では、この
ような分子を同定するための認可された試験はなく、食品医薬品局(FDA)は全治療ク
ラスに関する一般的なアラートのみを出すことができる。
【0005】
このように、薬物又は候補薬物が有害な副作用を誘発するリスクを、高い正診率及び高
い識別力で判定することができるインビトロ試験を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】(WHO) WHO.Preventing suicide:A global imperative.2014.
【非特許文献2】The Official Journal of the International Academy for Suicide Research.2010;14(4):291-310.
【非特許文献3】The Official Journal of the Society for Neuroscience.2002 Dec 15;22(24):10529-32.
【非特許文献4】Molecular psychiatry.2001 Jul;6(4):373-9.
【非特許文献5】eLife.2015;4.
【非特許文献6】Rna.2016 Feb;22(2):290-302.
【非特許文献7】Nature communications.2014;5:4726.
【非特許文献8】Brain research Brain research reviews.1998 May;26(2-3):217-29.
【非特許文献9】Brain research Molecular brain research.2004 Apr 29;124(1):70-8.
【非特許文献10】Molecular psychiatry.2008 Nov;13(11):1001-10.
【非特許文献11】Official Publication of the American College of Neuropsychopharmacology.2001 May;24(5):467-77.
【非特許文献12】European psychiatry:the journal of the Association of European Psychiatrists.2010 Jun;25(5):268-71.
【非特許文献13】Archives of general psychiatry.2000 Aug;57(8):729-38.
【非特許文献14】Translational psychiatry.2016; Minor revision.
【非特許文献15】Lancet.2007 Nov 17;370(9600):1706-13.
【非特許文献16】Psychiatria Danubina.2010 Mar;22(1):79-84.
【非特許文献17】Revista brasileira de psiquiatria.2009 Jun;31(2):145-53.
【非特許文献18】Bmj.2010;341:c5812.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、慎重に選択された細胞株(SH-SY5Y)を用いて薬物誘発性精神医
学的副作用を予測する、これまでに設計された革新的インビトロアッセイを検証した。本
発明者らは、市場で承認された260種にわたる化合物をスクリーニングし、5-HT2
cRの編集の薬物誘発性変化を調べた。化合物は、自殺念慮を誘発する可能性が公知の、
(FDA警告ラベル及び/又は多数の症例報告を有する)広範囲の治療クラス(抗うつ薬
、抗精神病薬、抗肥満薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬、抗真菌薬、抗てんかん薬、気分安定
薬など)又は誘発しない(精神医学的副作用が報告されていない)広範囲の治療クラスを
選択した。このデータを用いて、高い特異度及び敏感度で「リスクあり」化合物を同定し
た。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、患者において化合物、特に薬物が特定の効果を誘発す
る確率をインビトロで予測するためのアルゴリズムであって、
a)-pre-mRNAがADAR酵素(RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(
Adenosine Deaminases Acting on RNA))の基質で
あるRNAの、前記ADARの作用により異なるアイソフォーム/又は部位の生成がもた
らされるA-to-I編集を示す少なくとも1つの標的を選択する工程、
-前記少なくとも1つの標的及び少なくとも前記ADAR酵素を内因的に発現する少
なくとも1つの細胞株を選択する工程、
-前記細胞株の細胞が処理された場合、前記(1又は複数の)標的アイソフォーム/
又は(1又は複数の)編集部位の相対的割合を用量依存的に変化させることができる陽性
対照化合物を選択する工程、
-前記特定の効果を誘発するリスクスコアを注釈付けされた、一定の薬物又は化合物
比で構成された分子の集合を選択する工程、
b)前記細胞株の細胞を、陰性対照及び前記陽性対照と併せて、前記分子の集合の個々
の単一分子で処理する工程、
c)前記標的のRNA編集レベルの割合を、その編集アイソフォーム/又は部位のそれ
ぞれについて、及び前記集合の分子それぞれについて得るために、その集合の分子で処理
された個々の試料の前記少なくとも1つの標的RNA編集プロファイルを解析する工程、
d)-i)単変量解析統計法により、個々のアイソフォーム/又は編集部位について、
分子が前記特定の効果を誘発するリスクを識別するその正診率及びその能力を評価する工
程;及び/又は
-ii)多変量解析統計法により、アイソフォーム/又は編集部位の各組み合わせに
ついて、分子が前記特定の効果を誘発するリスクを識別するその正診率及びその能力を評
価する工程、及び
-iii)最良の識別能を示す組み合わせを選択する工程、
e)アイソフォーム/又は編集部位の前記選択された組み合わせを用いてアルゴリズム
を構築し、このようにして得られた前記アルゴリズムを、薬物、化合物、又は分子が患者
において前記特定の効果を誘発する確率を予測するために使用する工程、
を含む方法によって得られるアルゴリズムに関する。
【0009】
化合物とは、本明細書では、特にヒト若しくは動物患者、又は植物において活性であり
得る鉱物、化学的、又は生物学的化合物を示すことが意図される。
【0010】
本明細書において、用語「患者」には、植物も含まれる。
【0011】
用語「アルゴリズム」には、統計モデル(Cartモデル等)も含まれる。
【0012】
好ましい実施形態では、本発明による前記アルゴリズムにおいて、前記特定の1又は複
数の効果は副作用であり、好ましくは有害な副作用又は所望の副作用から選択され、好ま
しくは有害な副作用である。
【0013】
好ましい実施形態では、RNAのA-to-I編集を示す前記標的は、5-HT2cR
、PDE8A(ホスホジエステラーゼ8A)、GRIA2(グルタミン酸受容体2)、G
RIA3、GRIA4、GRIK1、GRIK2、GRIN2C、GRM4、GRM6、
FLNB(フィラミンB)、5-HT2A、GABRA3(GABAα3)、FLNA、
CYFIP2からなる群から選択される。
【0014】
好ましい実施形態では、前記特定の効果、好ましくは副作用、より好ましくは所望又は
有害な副作用は、心臓血管、アレルギー、CNS、特に精神医学、皮膚病学、内分泌学、
胃腸病学、血液学、感染症、代謝、神経筋、腫瘍学、炎症性、及び肥満の有害副作用を含
む群から選択されている。
【0015】
より好ましくは、精神医学的有害副作用である。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明のアルゴリズムによる前記細胞株の細胞は、前記標的及
び(1又は複数の)ADARを内因的に発現する細胞株由来である。
より好ましくは、前記細胞株は、
-前記標的を内因的に発現し、ヒト皮質で観察されるものと同様のADAR酵素の発現を
定常状態で示すことができるヒト又は動物の細胞株、
-神経芽細胞腫細胞株、好ましくはヒト細胞株、
-陰性対照またはビヒクル対照に対して正規化された場合に、陽性対照が少なくとも4、
好ましくは少なくとも5又は6の誘発倍率でADAR1a発現を誘発した神経芽細胞腫細
胞株、並びに
-ヒトSH-SY5Y細胞株、
からなる群から選択される。
【0017】
好ましい実施形態では、本発明のアルゴリズムの工程b)において、前記細胞株の細胞
は、12時間~72時間、より好ましくは48時間±4時間の間、被験の分子又は対照で
処理され、48時間が最も好ましい。
【0018】
好ましい実施形態では、本発明によるアルゴリズムにおいて、前記陽性対照は、インタ
ーフェロンアルファ、又は100IU/mlでインターフェロンのRNA編集プロファイ
ル曲線を再現することができる化合物である(例えば、図6に示される)。SH-SY5
Yヒト神経芽細胞腫細胞株は、5-HT2cR mRNAを内因的に発現し、ヒト皮質イ
ンターフェロンアルファにおいて観察されるものと同様のADAR酵素発現を定常状態で
示すため、これが使用された。
【0019】
好ましい実施形態では、本発明によるアルゴリズム又はモデルにおいて、工程c)は、
個々の分子及び個々の編集アイソフォーム又は編集部位について、前記標的のRNA編集
レベルの平均/中央値の相対的割合を得るために、ビヒクル処理対照細胞と比較した、前
記細胞株中の個々のアイソフォーム又は部位についてのRNA編集の基底レベルを決定す
る工程を含む。
【0020】
好ましくは、前記ビヒクル処理対照細胞はDMSO処理対照細胞である。
【0021】
好ましい実施形態では、本発明によるアルゴリズム又はモデルにおいて、前記方法は、
化合物、特に薬物が前記特定の1又は複数の効果、好ましくは副作用、好ましくは有害又
は所望の副作用から選択される副作用、好ましくは有害副作用を誘発する確率を、リスク
なし若しくは低リスク、又は高リスク、好ましくはリスクなし又は高リスクによりインビ
トロで予測する方法である。
【0022】
特定の好ましい実施形態では、本発明によるアルゴリズム又はモデルにおいて、前記分
子の集合は、副作用、好ましくは有害又は所望の副作用から選択される副作用、好ましく
は有害副作用である前記特定の1又は複数の効果の誘発に対して高リスク及び非常に低リ
スク、好ましくはリスクなしのスコアを注釈付けされた、平衡化された分子比で構成され
る。
【0023】
「平衡化された分子比」とは、前記有害な副作用を誘発するリスクなし若しくは低リス
ク、又は高リスクであることが公知であり、特に、心臓血管、アレルギー、CNS、特に
精神医学、皮膚病学、内分泌学、胃腸病学、血液学、感染症、代謝、神経筋、腫瘍学、炎
症性、及び肥満の治療のクラスの群から選択される、少なくとも3つ、好ましくは少なく
とも4つ又は5つの異なる治療クラスを提示する、前記所望の有害な副作用について十分
に注釈付けされた分子の集合を示すことが意図される。
【0024】
好ましくは、前記少なくとも3、4、5、6、7、又は8つの異なる治療クラスのそれ
ぞれに含まれる分子の数は、前記集合の分子の合計の少なくとも10%に相当する。
【0025】
より好ましい実施形態では、所望の特定の1又は複数の効果、好ましくは副作用、好ま
しくは有害又は所望の副作用から選択される副作用、好ましくは有害な副作用のクラスを
提示する治療クラスは、集合の全分子の20%超、好ましくは25%、30%、又は35
%を含む。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明によるアルゴリズムの工程c)において、前記分子の集
合は、好ましくは前記集合の個々の分子について異なる濃度で同時に解析される。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明によるアルゴリズムにおいて、工程1)d)i)は、個
々のアイソフォームもしくは部位、またはそれらの組み合わせについて、:
-前記特定の1又は複数の効果、好ましくは副作用、好ましくは有害又は所望の副作用
から選択される副作用、好ましくは1又は複数の有害副作用について、少なくとも60%
、好ましくは70%、好ましくは80%以上の敏感度(Se%)、並びに少なくとも60
%、好ましくは70%、好ましくは80%以上の特異度(Sp%)、の最適閾値;
-真の存在[真陽性/(真陽性+偽陽性)]及び真の不在[真陰性/(真陰性+偽陰性
)]の割合を評価するための陽性的中率(PPV、%)及び陰性的中率(NPV、%);
を計算する工程を含み、前記方法は、前記(1又は複数の)アイソフォーム/若しくは(
1又は複数の)部位又はそれらの組み合わせの選択の全体性能の決定を可能にする。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明によるアルゴリズムまたはモデルにおいて、工程c)に
おいて、RNA編集プロファイルは、以下の工程:
-好ましくは2ステップPCR法を用いて(1又は複数の)標的の((1又は複数の)編
集部位を含む)目的の配列断片を選択的にシーケンシングする、NGSライブラリーの調
製を含むNGS法(次世代シーケンシング);
-得られた全てのNGSライブラリーのシーケンシング;
並びに任意選択で、
-前記シーケンシングデータのバイオインフォマティクス解析
を含み、
前記バイオインフォマティクス解析が、好ましくは以下の工程:
-配列のプリアライメント処理と品質管理
-参照配列に対するアライメント;及び
-編集レベルのコーリング、
を含む方法によって実行され、標的の編集プロファイルを得る。
【0029】
好ましい実施形態では、本発明によるアルゴリズムにおいて、工程d)i)及びd)i
i)並びに工程e)において、前記アルゴリズムの取得を可能にする前記統計的方法は、
-mROCプログラム、特に、AUC(曲線下面積)ROCを最大化し、それぞれの組
み合わせについての方程式が新しい仮想マーカZとして以下:
Z=a1(アイソフォーム1)+a2(アイソフォーム2)+...ai(アイソフ
ォームi)+...an(アイソフォームn)
(式中、a1は計算された係数であり、(アイソフォームi)はアイソフォームの標的の
個々のRNA編集レベルの相対的割合である)
のように提供され、使用され得る、線形結合を特定するためのプログラム;
及び/又は、
-単変量及び多変量解析に適用され、異なる(1又は複数の)アイソフォーム/若しく
は(1又は複数の)編集部位の値で分子の相対的リスクを推定するロジスティック回帰モ
デル;
及び/又は、
-(1又は複数の)アイソフォーム/若しくは(1又は複数の)編集部位の組み合わせ
を評価するために適用されるCART(分類ツリー及び回帰ツリー(Classific
ation And Regression Trees))アプローチ;
及び/又は、
-アイソフォーム/若しくは編集部位の組み合わせを評価し、特に、編集アイソフォー
ム/若しくは部位の重要度をランク付けし、最良のアイソフォーム/若しくは編集部位を
組み合わせて、分子の「相対的リスク」を分類するために適用されるランダムフォレスト
(RF)アプローチ、
及び/又は任意選択で、
-以下の群:
-サポートベクターマシン(SVM)アプローチ;
-人工ニューラルネットワーク(ANN)アプローチ;
-ベイジアンネットワークアプローチ;
-wKNN(重み付けk近傍)アプローチ;
-部分最小二乗法-判別分析(PLS-DA);並びに、
-線形及び二次判別分析(LDA/QDA);
から選択する、分子の「相対的リスク」についてアイソフォーム/若しくは編集部位の組
み合わせを評価するために適用される多変量解析
を含む方法によって実行される。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明によるアルゴリズムにおいて、
-前記少なくとも1つの標的は5-HT2cRであり、
-前記有害副作用は精神医学的有害副作用であり、
-細胞株はヒトSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞株であり、
-陽性対照はインターフェロンアルファであり、
並びに、
-試験薬物による前記精神医学的有害副作用の誘発が低リスクであるか、または高リスク
であるかを識別することができる部位の組み合わせは、以下の5-HT2cRの部位:
A、B、C、D、及びE、
好ましくは前記部位の少なくとも3、4、又は5つの組み合わせ、
で構成される群から選択される少なくとも2、3、4、又は5つの単一部位の少なくとも
1つの組み合わせを含むか、
-あるいは試験薬物による前記精神医学的有害副作用の誘発が低リスクであるか、又は高
リスクであるかを識別することができるアイソフォームの組み合わせは、以下の5-HT
2cRのアイソフォーム:
A、B、AB、ABC、AC、C、D、AD、AE、ACD、AEC、ABCD、及
びNE
好ましくは前記アイソフォームの少なくとも5、6、又は7つの組み合わせ、
で構成される群から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11
、12、又は13の、単一アイソフォームの少なくとも1つの組み合わせを含み、
並びに任意選択で、
前記アルゴリズム又はモデルの取得を可能にする前記統計的方法は、
-mROCプログラム、ランダムフォレストアプローチ及び/又はCartアルゴリズム
を含む方法により実行される。
【0031】
第2の態様では、本発明は、薬物、化合物、又は分子が、患者において特定の効果、好
ましくは副作用、より好ましくは有害又は所望の副作用を誘発する確率又はリスクを予測
するインビトロの方法であって、pre-mRNAがADAR酵素の基質であるRNAの
、前記ADARの作用により異なるアイソフォームまたは編集部位の生成がもたらされる
A-to-I編集を示す標的を使用し、
A)前記標的のRNA編集レベルの割合を、その編集アイソフォームのそれぞれについ
て得るために、前記薬物又は化合物又は分子で処理された試料の標的RNA編集プロファ
イルを解析し、
前記標的RNA編集プロファイルが、前記特定の効果について得られた、請求項1~1
5のいずれか1項に記載のアルゴリズム又はモデルにおける分子集合の分子について得ら
れたものとして得られる工程、
B)請求項1~15のいずれか1項に記載の、前記標的及び前記特定の効果について得
られたアルゴリズム又はモデルを用いて、前記薬物若しくは化合物について得られた最終
値又は適用されたアルゴリズム若しくはモデルを計算する工程;並びに、
C)工程B)で得られた結果を考慮して、前記薬物又は化合物が、患者において前記特
定の効果を誘発するリスクがあるかどうかを、特に低リスク対高リスクで判定する工程、
を含む方法に関する。
【0032】
別の実施形態では、薬物、化合物、又は分子が、患者において特定の効果を誘発する確
率又はリスクを予測する、本発明による前記インビトロの方法は、pre-mRNAがA
DAR酵素の基質であるRNAの、前記ADARの作用により異なるアイソフォーム又は
部位の生成がもたらされるA-to-I編集を示す少なくとも2、3、又は4つの標的の
組み合わせを使用し、
A)前記標的のそれぞれについてRNA編集レベルの割合を、その編集アイソフォーム
又は部位のそれぞれについて得るために、前記薬物又は化合物または分子で処理された試
料の前記標的組み合わせの個々の標的RNA編集プロファイルを解析し、
前記標的RNA編集プロファイルの前記それぞれが、前記特定の効果について得られた
、請求項1~15のいずれか1項に記載のアルゴリズム又はモデルにおける分子集合の分
子について得られたものとして得られる工程、
B)請求項1~15のいずれか1項に記載の、前記標的及び前記特定の効果について得
られたアルゴリズム又はモデルを用いて、前記薬物若しくは化合物について得られた最終
値又は適用されたアルゴリズム若しくはモデルを計算する工程;並びに、
C)工程B)で得られた結果を考慮して、前記薬物又は化合物が、患者において前記特
定の効果を誘発するリスクがあるかどうかを、特にリスクなし、若しくは低リスク対高リ
スクで判定する工程;
を含む。
【0033】
別の好ましい実施形態では、pre-mRNAがADAR酵素の基質であるRNAのA
-to-I編集を示す少なくとも2、3、又は4つの標的の前記組み合わせ、RNAのA
-to-I編集を示す標的は、5-HT2cR、PDE8A(ホスホジエステラーゼ8A
)、GRIA2(グルタミン酸受容体2)、GRIA3、GRIA4、GRIK1、GR
IK2、GRIN2C、GRM4、GRM6、FLNB(フィラミンB)、5-HT2A
、GABRA3(GABAα3)、FLNA、CYFIP2からなる群から選択される標
的の組み合わせから選択される。
【0034】
第3の態様では、本発明は、化合物、好ましくは薬物が、患者において前記特定の1又
は複数の効果、好ましくは副作用、好ましくは有害又は所望の副作用から選択される副作
用、好ましくは1又は複数の有害副作用を誘発するリスクがあるか、特に低リスク対高リ
スクで判定するためのキットであって、
1)解析により、患者において前記有害副作用を誘発するリスクが判定される最終値を
前記試験薬物について得るために、本発明によるアルゴリズムを使用するための説明書、
又は化合物若しくは好ましくは薬物が、患者において前記特定の1又は複数の効果、好ま
しくは副作用、好ましくは有害若しくは所望の副作用から選択される副作用、好ましくは
有害副作用を誘発する確率またはリスクを予測する、本発明による方法を適用するための
説明書であり、任意選択でROC曲線又はCart決定木を含む説明書;並びに、
2)1)の前記説明書の前記アルゴリズム又は前記モデルを判定するために使用される
分子集合の個々の分子について編集RNAプロファイルを得るために必要な試薬に準じた
、前記試験薬物について得られる編集RNAプロファイルを判定するための試薬;
を含むキットに関する。
【0035】
好ましい実施形態において、前記試薬は、本発明のアルゴリズム又はモデルに2ステッ
プPCRを使用する場合、NGSライブラリー調製のためのこの方法に必要なプライマー
のセットを含む。
【0036】
より好ましい態様において、前記試薬は、前記標的の少なくとも1つについて、又は少
なくとも2、3、若しくは4つの標的の組み合わせについて、請求項1から17に記載の
RNA編集プロファイルを得るために使用されるオリゴヌクレオチド配列を含む。
【0037】
より好ましい実施形態では、前記試薬は、NGSライブラリー調製のための2ステップ
PCRに必要なプライマーセットの1つ又は組み合わせを含み、前記少なくとも1つの標
的又は前記標的の組み合わせは、5-HT2cR、PDE8A(ホスホジエステラーゼ8
A)、GRIA2(グルタミン酸受容体2)、GRIA3、GRIA4、GRIK1、G
RIK2、GRIN2C、GRM4、GRM6、FLNB(フィラミンB)、5-HT2
A、GABRA3(GABAα3)、FLNA、CYFIP2からなる群から選択される
標的から選択される。
【0038】
別のより好ましい実施形態では、前記試薬は、以下からなる群から選択されるプライマ
ーセットの1つ又は組み合わせを含む:
【0039】
【化1】
【0040】
以下の実施例、図面、及び凡例は、本発明を実施及び使用することができるようにする
ために、当業者に完全な説明を提供するために選択された。これらの実施例は、本発明者
がその発明として考える範囲を限定する意図のものではなく、これ以下の実験のみが実施
されたことを示す意図のものでもない。
【0041】
本発明の他の特徴及び利点は、本明細書の以下に凡例が示される、実施例及び図面の説
明の残りの部分において明らかになると思われる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】インターフェロンアルファ誘発性RNA編集(用量応答)の図である。SH-SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株における(IFNα)5-HT2cR mRNA編集「プロファイル」を示す。FNαによる48時間の処理後の、インターフェロンアルファ(IFNα)の効果の用量応答解析である。5-HT2cR mRNAの相対的割合を、NGSベースのシーケンシングによって解析した。プロファイルは、ビヒクル処理対照細胞における5-HT2cR mRNA編集の相対的割合を、IFNα処理細胞において測定した5-HT2cR mRNA編集の相対的割合から差し引くことによって得た。
図2】インビトロアッセイで試験した全260の化合物の治療クラス分類の円グラフである。中枢神経系(CNS)作用化合物の更なるサブクラス分類を、図のB部分に示す。
図3】選択された分子の試験中に適用された実験構成及びアプローチの概略図である。全260の化合物は、5つの独立した生物学的反復実験において試験している。それぞれの個々の細胞培養プレートを10分子、ビヒクル対照(DMSO)及び100IU/mlのインターフェロンアルファで処理した。5つの独立した生物学的反復実験を試験し、NGSベースのRNA編集定量法によって同一の方法で処理された正確に1620個の試料を作製した。
図4】個々のウェルにおけるADAR1a mRNAの発現の図である。分子で48時間処理したSH-SY5Y細胞におけるADAR1a発現の定量的PCR(qPCR)分析。ADAR1a mRNAの発現レベルは、分子、ビヒクル(DMSO)又はIFNαで48時間処理した後、各試料において定量した。単一の生物学的反復実験(n=1)を示す。予想通り、IFNαで処理した各ウェルは、ADAR1a発現の増加を示した(A~J)。注目すべきことに、分子165もまた、この分子への曝露後にADAR1a mRNA発現レベルの強い増加を示した。
図5】全てのビヒクル対照及びIFNα処理(100UI/ml)SH-SY5Y細胞の生データ(A)である。全150のビヒクル対照(DMSO)及びIFN処理ウェルの全体解析。(A)この表は、全ての5-HT2cR mRNA編集アイソフォームの全基本的統計的特徴を表示している。全実験中に得られたビヒクル及びIFNα処理条件(n=150)を解析にプールし、5-HT2cRに対するIFN誘発性RNA編集変化の標準測定値を生成した。(B)ヒストグラムは、IFN処理によって最も有意に影響を受けた5HT2cR編集アイソフォームを示す。ビヒクル処理(DMSO)及びIFNα処理ウェルについての、全ての5-HT2cR mRNA編集アイソフォームについて平均、中央値、標準偏差、及び変動係数(CV、パーセンテージとして表される)を示す。
図6】プロファイル曲線-RNA編集曲線IFN100である。5HT2cR mRNA編集プロファイルは、ビヒクル処理対照細胞における5-HT2cR mRNA編集の相対的割合を、IFNα処理細胞において測定した5-HT2cR mRNA編集の相対的割合から差し引くことによって得た。平均及び中央値を示し、エラーバーは平均の標準誤差(sem、n=150)を表す。
図7】個々の分子による48時間の処理後に得られた5HT2cR mRNA編集プロファイルの実例である。例は、4種の「リスクあり」化合物(アリピプラゾール(Aririprazole)、セルトラリン、イソトレチノイン、及びタラナバント)(A)並びに4種の「低リスク」分子(リチウム、ケタミン、オンダンセトロン、及びリバビリン)(B)のセットについて示している。参照のIFN(黒色)を各グラフに示す。平均値を示し、エラーバーは平均の標準誤差(sem、n=5)を表す。
図8】低リスク分子と高リスク分子とを識別するための最も代表的な5HT2cR mRNA編集アイソフォームの診断可能性の実例である。箱ひげ図は、5数要約(最小値(smallest observation)、下側四分位(Q1)、中央値(Q2)、上側四分位(Q3)、および最大値(largest observation))を用いて数値データのグループを図式的に示す便利な方法である。箱ひげ図は、基礎となる統計分布を前提とせずに集団間の差異を表示するのに有用である。p値にはウィルコクソン順位和検定を用いた。記号*はp値≦0.05を示し、**はp値≦0.01を示し、***はp値≦0,001を示す。
図9図15の13のアイソフォームの群から選択された2つのアイソフォームの組み合わせを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用した、受信者動作特性(ROC)曲線の実例である。決定則:Z=0.121×ACD-0.142×NE。
図10図15の13個のアイソフォームの群から選択された3つのアイソフォームの組み合わせを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用した、受信者動作特性(ROC)曲線の実例である。決定則:Z=-0.1449×C+0.569×AE-0.1548×NE。
図11図15の13個のアイソフォームの群から選択された4つのアイソフォームの組み合わせを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用した、受信者動作特性(ROC)曲線の実例である。決定則:Z=0.0235xAB+0.1567×ACD+0.3880×AEC-0.1355×NE。
図12図15の13個のアイソフォームの群から選択された5つのアイソフォームの組み合わせを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用した、受信者動作特性(ROC)曲線の実例である。決定則:Z=0.016xAB-0.0563×ABC+0.183×ACD+0.386xAEC-0.1428×NE。
図13図15の13個のアイソフォームの群から選択された6つのアイソフォームの組み合わせを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用した、受信者動作特性(ROC)曲線の実例である。決定則:Z=0.0157×AB-0.0557×ABC+0.0187×D+0.1817×ACD+0.3883×AEC-0.1426×NE。
図14図15の13個のアイソフォームの群から選択された7つのアイソフォームの組み合わせを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用した、受信者動作特性(ROC)曲線の実例である。決定則:Z=-0.0505×B+0.0224×AB+0.001×D+0.163×ACD+0.389×AEC-0.1402×ABCD-0.1385×NE。
図15】13個のアイソフォームの組み合わせを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用した、受信者動作特性(ROC)曲線の実例である。決定則:0.2035×A+0.1283×B+0.1979×AB+0.1147×ABC+0.1860×AC+0.04331×C+0.1884×D+0.1259×AD+0.7739×AE+0.4295×ACD+0.4775×AEC-0.0415×ABCD+0.0245×NE。
図16図14の7つのアイソフォームの組み合わせを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用した、ランダムフォレスト(RF)アルゴリズムの受信者動作特性(ROC)曲線の実例である。すべてのデータセットのROC曲線を黒線で表し、試験データセットのROC曲線を点線で表す(A)。RFモデルにおけるアイソフォームの重要度(重み)(B)(C)。
図17】RFアプローチによる診断能の例である。図15の13のアイソフォームの組み合わせを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用した、ランダムフォレスト(RF)アルゴリズムの受信者動作特性(ROC)曲線の実例である。全てのデータセットのROC曲線を黒線で表し、試験データセットのROC曲線を点線で表す(A)。RFモデルにおけるアイソフォームの重要度(重み)(B)(C)。
図18】更なる標的:GRIA2(A)、FLNB(B)、及びPDE8A(C)によって測定されたRNA編集活性の定量を示す図である。全ての場合において、IFN処理は、未編集(NE)mRNAの減少によって示されるように、編集されたアイソフォームの相対的割合の増加を誘発した。
図19】LN18(A)及びLN229(B)神経芽細胞腫細胞株(HTR2C)の図である。LN18細胞(A)及びLN229細胞(B)において、5HT2cR mRNA編集プロファイルを、ビヒクル処理対照細胞における5-HT2cR mRNA編集の相対的割合を、IFNα処理細胞において測定した5-HT2cR mRNA編集の相対的割合から差し引くことによって得た。5HT2cR mRNAの平均mRNA編集プロファイルを示している。
図20】予測y CARTアルゴリズムを示す図である。6つのアイソフォームを分子データセット(n=143、低リスク対高リスク分子)に対して使用するCARTアルゴリズムの代表的な決定ツリー及び診断能の実例である。
図21】患者における特定の効果の誘発が低リスク、またはリスクなしである2つの化合物について得られたRNA編集プロファイルを示す図である。例として、ビヒクル対照処理細胞と比較した、リドカイン(A)及びオンダンセトロン(B)で得られたRNA編集プロファイルを提供する。患者における特定の効果の誘発が高リスクである、レセルピン(C)及びフルオキセチン(D)など2つの化合物についてRNA編集プロファイルを得た。
図22】アリピプラゾール(A)、インターフェロン(IFN)(B)、及びレセルピン(C)によって観察された、HTR2Cに対するRNA編集変化の経時的解析を示す図である。
図23】3つの異なる化合物:クロザピン(A)、セルトラリン(B)、及びケタミン(C)によるSH-SY5Y細胞の処理後のRNA編集プロファイルの用量依存的変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
【実施例0044】
実施例1:材料及び方法
【0045】
薬物誘発性精神医学的有害副作用に関するデータベースの作成
正確に10mMでDMSOに溶解した1280種の小分子の集合を含む化学ライブラリ
ーをPrestwick Chemicalsから購入した。ライブラリーに含まれる全
ての小分子は、100%認可された薬物(FDA、EMA、及び他の機関)であり、最大
の薬物類似性を示し、それらの高い化学的及び薬理学的多様性並びにヒトにおけるそれら
の公知のバイオアベイラビリティに関して選択されている。化学ライブラリー(Pres
twick Chemicals)の購入時に、各単一分子の標的、治療クラス/効果、
特許及びADMETに関する詳細な情報を含む、高度に注釈を付けられたデータベースが
提供された。本発明者らは、安全情報や症例報告(FDA Medwatch、EMEA
など)を、定期的に更新するデータベースに問い合わせることで、ヒトに処方された場合
のこれらの薬物の自殺及びうつ病に関連した有害副作用について出された報告書を検索し
た。次に、質問の結果をまとめ、化学物質ライブラリーに含まれる各薬物にリスクスコア
を帰属させた。自殺及び/又はうつ病に関連する有害副作用が報告された症例の数、薬物
の処方の程度、WHOによる必須医薬品のリストに掲載されている、等の様々なパラメー
タを考慮に入れて、薬物による有害な精神医学的副作用(うつ病及び/又は自殺関連有害
副作用)の誘発可能性のリスクを定量化するために、スコア付けシステムを確立した。本
発明者らは、有害な精神医学的副作用を誘発するリスクに関する特定の情報を含む包括的
なデータベースを取得した。
【0046】
細胞培養
SH-SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株は、5-HT2cR mRNAを内因的に発現
し、ヒト皮質で観察されるものと同様のADAR1酵素発現の定常状態を示すため、これ
を使用した(Cavarec et al.2013,Weissmann et al
.2016 Translational Psychiatry, Patent T
OXADAR)。SH-SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株は、Sigma Aldric
hから購入した。細胞を、標準的な条件で、37℃において5%COの加湿雰囲気(h
umified atmosphere)中で通常通りに培養した。血清中にしばしば存
在するセロトニンによる5-HT2cR mRNA発現の脱感作及び下方制御のために、
透析胎児ウシ血清(FBS Science Tech 参照番号FB-1280D/5
00)が非透析より好ましかった(Saucier et al.1998)。実験の経
過中、細胞を継代数P8からP22までの間培養した。細胞を12ウェル細胞培養プレー
トに播種する前に、トリプシン処理された細胞懸濁液をKovaslide(Kova
International)(透明なプラスチックで作られた、血球計数グリッドの付
いた使い捨て顕微鏡用スライド)のチャンバーに2つの独立した添加を行うことによって
細胞数を推定した。両方のチャンバーを2人の実験技術者によって計数し、4つの独立し
た計数結果の平均を、更に12ウェル細胞培養プレートの細胞数およびプレーティングの
計算に使用した。
【0047】
薬理学的処理及び細胞溶解
受領後、Prestwick化学ライブラリー全体を個別のチューブに移し、コード化
し、アリコートに分け、その後の使用まで-80℃で保存した。社内で生成された薬物誘
発性の精神医学的有害副作用データベースから、高リスクおよび非常に低リスクのスコア
を注釈付けされた、平衡化された薬物比で構成された260の分子を選択した。薬物をコ
ード化し、実験構成全体を通して分子をランダムに処理するよう注意を払った。陰性対照
(ビヒクルDMSO)及び陽性対照(インターフェロンアルファ)と共に、各実験におい
て260分子全てを同時に解析した。各12ウェル細胞培養プレートにおいて、試験分子
のための10個の空の位置を残して、陰性対照及び陽性対照を添加した。順に、単一の反
復実験はそれぞれ、27個の12ウェル培養プレート(参照)で構成された。各被験分子
について5つの独立した生物学的反復実験(n=5)を作製するように、実験を全く同じ
ように5回繰り返した。実験の過程にわたって、合計1620個、即ち27(ウェルプレ
ートの数)×12(プレート当たりのウェル数)×5(反復実験数)の試料が作製された
。予備実験により、10μMでSH-SY5Y細胞に対して致死的であった7分子を同定
することができた。これらの分子については、毒性の低下が検出されるまで濃度を適応さ
せ、低下させた。実験前に、分子及び対照の全ての希釈物を調製し、ラックに配置した。
324ウェル(27×12ウェル)全ての細胞密度、形態、生存率、及び汚染は、処理前
に顕微鏡によって制御した。更に、各ウェルの画像をCanon EOS700デジタル
カメラを用いて撮影した。細胞を分子で処理してから正確に48時間後、各ウェルの画像
を、規定されたパラメータを用いてデジタルカメラで撮影した。増殖培地を慎重に除去し
た後、1%β-メルカプトエタノールを含有するRLT溶解緩衝液(Qiagen)35
0μlを、細胞の完全な化学的溶解のために添加した。12ウェルプレートを積み重ね、
RNA抽出まで冷凍庫に保存した。
【0048】
全RNA抽出、品質管理、及び逆転写
全RNA抽出は、製造業者のガイドライン(Qiagen)に従って行った。RNea
sy Mini Kitは、シリカメンブレンRNeasyスピンカラムを用いて細胞か
ら高品質のRNAを迅速に精製する。全ての細胞溶解物を、完全自動化試料調製QIAc
ubeを用いて抽出した。抽出は、適切なプロトコルを用いて、1回の操作につき12の
試料のバッチ(1つの完全な12ウェルプレート)において標準的な手順を用いて処理し
た。試料調製及びRNA抽出中、RNAseによるRNA分解を避けるための標準的な注
意を払った。全ての抽出RNA試料をlabChipGx(Perkin Elmer)
により解析して、全RNAを定量及び定性した。更にQubitによる蛍光ベースの定量
化を、LabChipGxデータを検証するために実施した。各個別の試料について、R
NA品質スコア(RQSスコア)を決定した(1620試料の平均RQSスコア=9.6
/10)。次に、試料を正規化し、精製RNAの逆転写を、最終反応容積20μl中1μ
gのRNA材料から開始して、Takaraキット(PrimeScript RT T
akara 参照番号RR037A)を用いて行った。cDNA合成をPeqstar
96xサーモサイクラーで42℃において15分間行い、反応混合物を更なる使用まで4
℃において保存した。
【0049】
定量的PCR(qPCR)による相対的mRNA発現
cDNA合成後、試料を4℃において保存し、その後、LC480システム(Roch
e)においてqPCRによりADAR1a mRNA発現の解析を行った。標準曲線法を
用いて、qPCRデータを定量した。ADAR1aのmRNA発現は、インターフェロン
アルファ処理(IFNα)によって誘発されることが公知である。想定されたように、I
FNαで48時間処理された全ての試料は、ADAR1a発現の増加を示し、6~7の間
の遺伝子発現の誘発倍率を示した。更に、レセルピン処理はまた、ADAR1a mRN
Aレベルを一貫して増加させた。
【0050】
NGSライブラリーの調製
NGSライブラリー調製のために、2ステップPCR法を使用して、前述の、本発明者
らなどによってRNA編集に供されたことが確認された5-HT2cRのエキソンVを選
択的にシーケンシングした。検証されたPCRプライマーを使用して、目的の領域をPC
Rによって増幅した。PCR増幅のために、Q5Hot Start High Fid
elity酵素(New England Biolabs)を製造業者のガイドライン
(参照番号M0494S)に従って使用した。最適化されたPCRプロトコルを用いて、
Peqstar 96xサーモサイクラーでPCR反応を行った。PCR後、全ての試料
をLabChipGx(Perkin Elmer)により解析し、PCR産物の量及び
質の両方を評価した。アンプリコンの純度を決定し、蛍光ベースのQubit法を用いて
定量を行った。品質管理後、磁気ビーズ(Mokascience製のHigh Pre
p PCR MAGbioシステム)を用いて96種類のPCR反応物(マイクロプレー
ト)を精製した。精製後、Qubitシステムを用いてDNAを定量し、精製収率を計算
した。次に、Q5 Hot start High fidelity PCR酵素(N
ew England Biolabs)およびIllumina 96 Indexe
sキット(Nextera XTインデックスキット;Illumina)を用いたPC
R増幅により、試料を個別にインデックス付けした。PCR後、試料をライブラリーにプ
ールし、Magbio PCRクリーンアップシステムを用いて精製した。ライブラリー
を変性させ、MiSeqプラットフォームでFASTQのみをシーケンシングするための
Illuminaのガイドラインに従ってシーケンシングカートリッジに負荷した。決定
された量の5HT2cRアイソフォームを含むプラスミドのプールを各ライブラリーに含
めて、各シーケンシング操作におけるシーケンシングの質及びエラーを制御した。更に、
標準RNAプールをライブラリーに組み込んで、実験の過程で異なるシーケンシングフロ
ーセル間の可変性を決定した。全1620の試料をシーケンシングするためには、18個
のMiSeq ReagentキットV3が必要であった(Illumina)。全ての
NGSライブラリーを14pMでシーケンシングし、10%Phix(PhiX Con
trol V3)をスパイクして、ライブラリーの多様性を導入した。
【0051】
実施例2:シーケンシングデータのバイオインフォマティクス解析
【0052】
1.Fastq配列のプリアライメント処理および品質管理
シーケンシングデータを、Miseqシーケンサ(Illumina)からfastq
ファイルとしてダウンロードした。シーケンシング品質を評価するために、FastQC
ソフトウェアバージョン0.11.5を使用して、各生のfastqファイルの初期品質
調査を実行した。アダプター配列の除去、それらのサイズ及び品質スコアによる配列のフ
ィルタリング(全ての短いリード(<50nt)及び平均QC<30のリードを除去)か
らなる予備処理ステップを行った。次に、配列のアライメントの質を向上させ、改善する
ために、Illumina NGSデータ用のフレキシブルリードトリミングツールを使
用した(トリムモマティック・プログラム バージョン0.35)。予備処理ステップを
実行後、クリーニングした各fastqファイルの更なる品質管理を実施し、その後、更
なる配列処理を実行した。
【0053】
2.参照配列に対するアライメント
処理されたリードのアライメントを、bowtie2バージョン2.2.5をエンドツ
ーエンドのsensitiveモードで使用して実行した。アライメントはヒトゲノム配
列(UCSC hg38)の最新の注釈に対して行われ、多重アライメント領域のリード
、アライメント品質の低いリード(Q<40)又は挿入/欠失(INDEL)を含むリー
ドを更なる解析から取り除いた。ファイルアライメントのフィルタリングはSAMtoo
lsソフトウェアバージョン1.2を使用して実行した。SAMtoolsソフトウェア
バージョン1.2は、ソート、マージ、インデックス作成、及び位置ごとのフォーマット
でのアライメント生成を含む、SAMフォーマットでアライメントを扱うための様々なユ
ーティリティを提供する。
【0054】
3.編集レベルのコーリング
次に、SAMtools mpileupを使用して、複数の試料から同時に得られた
アライメント結果のデータをパイルアップした。各ゲノム位置における異なるATGCヌ
クレオチドの数(「塩基数」)を数えるために社内スクリプトを実行した。従って、各ゲ
ノム位置について、自家製スクリプトは「G」を有するリードのパーセンテージを計算す
る、[「G」リードの数/(「G」リードの数+「A」リードの数)×100]。「G」
リードのパーセンテージ>0.5のゲノム位置「A」参照は、このスクリプトによって自
動的に検出され、「A-to-I編集部位」とみなされる。最後の段階は、前述の「A-
to-I編集部位」の全ての可能な組み合わせのパーセンテージを計算し、標的の編集プ
ロファイルを得ることであった。
【0055】
4.標的のベースラインと分子編集プロファイルとの比較
本発明者らは、広範囲の分子セット(n=260)の5HT2cR RNA編集プロフ
ァイルを解析した。分子を一緒に比較するために、本発明者らは、最初の工程において、
ビヒクル処理(DMSO)対照細胞と比較して、SH-SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株
の各アイソフォーム/又は部位について本発明者らの標的のRNA編集の基底レベルを決
定した。このために、本発明者らは、実施例により示された150にわたるビヒクル独立
実験(反復実験)からの5HT2cRのRNA編集レベルの平均を計算した。第2に、社
内のスクリプトは、基準対照(CTRL)に対する分子の各反復実験(n=5)の偏差を
自動的に計算した。
【0056】
最後に、個々の分子及び個々の編集アイソフォーム/又は部位について、標的のRNA
編集レベルの平均/中央値の相対的割合を得た。
【0057】
実施例3:統計解析
【0058】
全ての統計と数値は、統計オープンソースソフトウェア「R/Bioconducto
r」(19、20)を使用して計算した。RNA編集の値は、通常平均±平均の標準誤差
(SEM)として表される。非パラメトリックウィルコクソン順位和検定とウェルチのt
検定を用いて差異解析を行った。複数の試験方法では、個々の編集アイソフォーム(例と
して:5つの編集部位(A、B、C、E、D)からの5HT2cRの未編集アイソフォー
ム(Ne)を含む32のRNA編集アイソフォーム))のp値を調整して、偽発見率(F
DR)を制御することが重要である。Benjamini及びHochberg(BH)
手順(21)を「multtest package」を用いて全ての統計的検定に適用
し、調整した0.05未満のp値を統計学的に有意とみなした。編集レベルの相対的割合
は正規分布していたため、正規化を適用しなかった。全てのデータ分布は、個々の有意な
アイソフォームについての中央値及び棒グラフ(barplot)又は箱ひげ図として示
す。有意なアイソフォームによる、SH-SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞株における5H
T2cRのRNA編集レベルを提示する編集プロファイル曲線も各分子について示す。全
ての分子群についてアイソフォーム相関を同定するためにピアソン相関検定を適用した。
【0059】
5HT2cR編集アイソフォーム診断能は、「高リスク分子」群を検出する能力を表す
敏感度及び「リスクなし分子又は低リスク分子」群を検出する能力を表す特異度を特徴と
することができる。診断テストの評価結果は、これらの2つの十分に定義された群を比較
する2×2の分割表に要約することができる。カットオフを固定することにより、試験の
結果に従って2つの群を陽性又は陰性のいずれかに分類することができた。特定のアイソ
フォームが与えられた場合、a「高リスク」群の中で陽性の試験結果を有する多数の分子
(「真陽性」:TP)、及びb「低リスク」群の中で分子の間で、陽性の試験結果を有す
る分子(「真陰性」:TN)を同定することができる。同じように、c「高リスク」群の
中で陰性の試験結果を有する分子(「偽陽性」:FP)、及びd「低リスク」群の中で陰
性の試験結果を有する分子(「偽陰性」:FN)が観察される。敏感度はTP/(TP+
FN)と定義され、これを本明細書では「真陽性率」と呼ぶ。特異度は、TN/(TN+
FP)として定義され、これを本明細書では「真陰性率」と呼ぶ。
【0060】
各5HT2cR編集アイソフォームの正診率及びその識別力を、受信者動作特性(RO
C)解析を用いて評価した。ROC曲線は、様々な値に対する試験の敏感度(Se)と特
異度(Sp)との間の相反関係をグラフで視覚化したものである。
【0061】
更に、全ての5HT2cR編集アイソフォームを互いに組み合わせて、mROCプログ
ラム[Comput.Methods Programs Biomed.2001;
66:199-207]、ロジスティック回帰(22)、並びに2つの教師付き学習アル
ゴリズム、CART(23)、及びランダムフォレスト(24)のいくつかのアプローチ
を用いて、敏感度(sensibility)及び特異度の増加可能性を評価した。
【0062】
mROCはAUC(曲線下面積)ROC(27)を最大にする線形結合(25、26)
を特定するための専用プログラムである。それぞれの組み合わせのための方程式が提供さ
れ、以下のように新しい仮想マーカZとして使用できる:
Z=a×アイソフォーム1+b×アイソフォーム2+c×アイソフォーム3
(式中、a、b、cは計算された係数であり、アイソフォーム1、2、3はアイソフォー
ムの標的の個々のRNA編集レベルの相対的割合である)。
【0063】
2、3、又は4つの標的の組み合わせを互いに組み合わせて、例えばmROCプログラ
ム又はロジスティック回帰のような多変量アプローチを用いて敏感度(sensibil
ity)及び特異度の増加可能性を評価することができる。個々の組み合わせのための方
程式を計算することができ、次のように新しい仮想マーカZnとして使用することができ
る:
Zn=n1×標的1+n2×標的2+n3×標的3、
(式中、n1、n2、n3...は、計算された係数であり、標的1、2、3は、例えば
、標的のレベルと相関する値である)。
【0064】
異なるアイソフォーム又は部位の値における分子の相対的リスクを推定するために、単
変量及び多変量解析にロジスティック回帰モデルを適用した。本発明者らは、アイソフォ
ームを連続変数(データ非掲載)及びカテゴリー変数(三分位値をカットポイントとして
使用する)の両方として解析した。最後のケースでは、オッズ比(OR)及びその95%
信頼区間を計算する。罰則付きロジスティック回帰(LASSO、リッジ又はElast
ic-Netアプローチ)も連続変数に適用した。これらの方法の場合、パッケージ:R
ソフトウェアバージョン3.2.3のglmnetバージョン2.0-3を使用する。
【0065】
CART(分類ツリー及び回帰ツリー(Classification And Re
gression Trees))アプローチも、アイソフォームの組み合わせを評価す
るために適用した。この決定ツリーアプローチは、ユーザにとって容易に理解できる階層
グラフによって表される、分類則のセットを生成することを可能にする。ツリーの各ノー
ドで決定が行われる。慣例により、左側の枝は、対象の質問に対する肯定的な応答に対応
し、右側の枝は、対象の質問に対する否定的な応答に対応する。次に、分類手順は、「I
F-THEN」則のセットとして翻訳することができる(例については図20を参照)。
【0066】
以前と同様にランダムフォレスト(RF)アプローチを適用し、アイソフォームの組み
合わせを評価した。この方法は、分散が制御された決定ツリーの集合を構築するために、
Breimanの「バギング」アイデアと機能のランダムな選択を組み合わせる。従って
、ランダムフォレストは、編集アイソフォームの重要度をランク付けし、最良のアイソフ
ォームを組み合わせて分子の「相対的リスク」を分類するために使用することができる(
図16及び図17を参照)。
【0067】
CARTとランダムフォレストは教師付き学習方法である。これらの方法は、モデルを
構築するために使用されるトレーニングセットと、それを検証するためのテストセットの
使用を必要とする。本発明者らのデータセットを分割し、データセットの2/3を学習フ
ェーズに使用し、1/3を検証フェーズに使用する。この分割はランダム化されており、
各試料の様々な規制(statutes)の初期割合を尊重している。これらの分類器の
予測誤差を推定するために、10倍交差検定法を使用して、オーバーフィット問題を回避
するために10回繰り返した。これらのアプローチでは、Rソフトウェアバージョン3.
2.3の「rpartパッケージ4.1-10」と「ランダムフォレストパッケージ4.
6-12」を使用した。
【0068】
別の多変量解析を使用して、分子の「相対的リスク」について5HT2cR編集アイソ
フォームの組み合わせを評価することができる:
-サポートベクターマシン(SVM)アプローチ(28);
-人工ニューラルネットワーク(ANN)アプローチ(29);
-ベイジアンネットワークアプローチ(30);
-wKNN(重み付けk近傍)アプローチ(31);
-部分最小二乗法-判別分析(PLS-DA)(32);
-線形および二次判別分析(LDA/QDA)(33);等。
【0069】
実施例4:結果
【0070】
SH-SY5Y細胞株の検証
実験の前に、ヒト神経芽細胞腫細胞株(SH-SY5Y)を漸増用量のインターフェロ
ンで処理し、5HT2cRのRNA編集をNGSベースのアプローチを用いて測定した。
予想通り、5HT2cRアイソフォームの相対的割合は変化しており、特に用量依存的に
増加可能であり(図1)、この特定の培養細胞株における前述のIFN誘発性応答が確認
される。IFNプロファイルは、全く異なる解析法を用いて以前に得られたデータと厳密
に一致した(34、35)。
【0071】
実験手順
一旦細胞株が安定した増殖特性を示し、それに応じてIFN処理に応答した時点で、2
60分子のスクリーニングを調製した。社内で定められた基準に基づいて、リスクスコア
は、化学ライブラリー中の個々の1280分子に帰属させた。実用上の理由から、260
分子を選択して、独自のインビトロアッセイで更に試験した。分子の選択手順の間、化学
ライブラリー(図2)に含まれる図2で同定された主要な治療クラスのすべて、好ましく
は少なくとも3、4、5、6、又は7つの部分を含むように注意を払った。260分子の
うち112は抗けいれん剤、抗うつ剤等の中枢神経系障害のための処方薬である(図2B
)。全ての分子を移し、処理前に適切な管にアリコートに分けた。260分子のスクリー
ニングのために選択された実験構成は、10種の分子、ビヒクル対照(DMSO)及び1
00IU/mlインターフェロンアルファで個別に処理された26個のウェルプレート(
12ウェルのプレート)からなり、各細胞培養プレートについて陽性対照及び陰性対照を
設けた。追加の細胞培養プレートを使用して、追加の対照ウェルを加えた。各分子を、3
週間の間隔で5回の生物学的反復実験において試験した(図3)。厳密に48時間の処理
後、細胞を適切な溶解緩衝液で溶解し、更なる処理まで-20℃で保存した。全てのRN
A抽出はQiacube自動RNA抽出を用いて行い、プレートは個別に処理した(1回
の抽出につき12試料のバッチ)。
【0072】
相対的ADAR1a mRNA発現
RNA抽出後、cDNAを合成し、384ウェルマイクロプレート中でLC480ライ
トサイクラー(Roche)においてADAR1a発現を評価した。このようにして、同
じバッチの全ての試料を単一のqPCR操作で分析することが可能であった。応答の堅牢
性を反映して、12ウェルプレートそれぞれの全てのIFN処理細胞について、ADAR
1aのインターフェロン依存性誘発が観察された。興味深いことに、分子165もADA
R1a mRNA発現を誘発した(図4A~4I、プレート17)。この応答は、全ての
生物学的反復実験(n=5)で見ることができた。以前にSH-SY5Y細胞で観察され
たように、IFNは、ビヒクル対照に対して正規化した場合、6.6の誘発倍率でADA
R1a発現を誘発した(表1)。9.31%の変動係数は、生物学的現象の再現性をはっ
きりと示している。
【0073】
表1:SH-SY5Y細胞におけるIFN処理後のADAR1a mRNA発現の基本統
計学的特徴。平均誘発倍率(DMSO処理対照細胞と比較)標準偏差、中央値、及びCV
(パーセンテージとして表される)。
【表1】
【0074】
A)5HT2cR編集アイソフォームの単変量解析
SH-SY5Y細胞におけるIFN RNA編集アイソフォームと対照との比較
cDNA合成工程の後、5HT2cRのエキソンVを標的とする2ステップPCRアプ
ローチを適用してNGSライブラリーを構築し、全ての試料中の個々の5HT2cR m
RNAの相対的割合を正確に定量した。全てのビヒクル対照及びIFN処理ウェル(n=
150)の平均値を図5Aに示し、ヒストグラムとして表す。ビヒクル対照とIFN処理
条件との間で、アイソフォームの相対的割合に明確な差異を観察することができる(図5
B)。これらのデータは、前述のRNA編集プロファイル(図7A~7B)を生成するR
NA編集プロファイルとして表わされ、前述のプロファイル(図1及びCavarecら
を参照されたい)と非常によく一致していた。
【0075】
例として、SH-SY5Y細胞株における、IFNの存在下での5-HT2cR RN
A編集アイソフォーム(n=150)のレベルと、ビヒクル対照(ビヒクル、n=150
)のレベルとを比較した場合、5-HT2cRのAC、ABC、AB、A、AE、ACE
、D、ABCD、ABE、C、B、BC、及びABCEのRNA編集レベルが有意に変化
した(図5A~5B及び図6)。5-HT2cRの未編集アイソフォーム(Ne)のレベ
ルは、IFN分子とビヒクル対照(基底0)との比較のために最も有意である。更に、本
発明者らは、AC、ABC、AB、A、AE、AEC、ABCD、ABE、C、B、BC
、及びABECの5-HT2cR RNA編集のレベルの増加、並びに5-HT2cR
RNA編集のD及び未編集(Ne)アイソフォームのレベルの減少を観察した。これらの
結果は、全体として、SH-SY5Y細胞においてIFNの存在下で5-HT2cRに対
するRNA編集活性が増加することを示唆している。
【0076】
表2:IFN分子(n=150)と対照(n=150)とを比較した場合の5-HT2c
R RNA編集レベルの差異解析
【表2】
【0077】
SH-SY5Y細胞における高リスク分子対低リスク分子のRNA編集アイソフォームレ
ベルの比較
例えば、低リスク分子(n=82)と高リスク分子(n=61)とを比較すると、5-
HT2cRアイソフォームの単一編集又は未編集(Ne)レベルを有意に変化させること
ができる(図7A~7B)。5-HT2cRアイソフォームのRNA編集レベル、個々の
アイソフォームの曲線下面積(AUC)の受信者動作特性(ROC)解析に基づいて、低
リスク又は高リスクの分子の識別が可能であった(表3)。
【0078】
表3:低リスク分子(n=82)と高リスク分子(n=61)とを比較した場合の、単一
編集アイソフォームの識別能
【表3】
【0079】
各アイソフォームの正診率及びその識別力を、受信者動作特性(ROC)解析を用いて
評価した。ROC曲線は、様々な値に対する試験の敏感度(Se)と特異度(Sp)との
間の相反関係をグラフで視覚化したものである。AUCは、その信頼区間(CI)を有す
る曲線下面積を意味する。ROC曲線は、単一マーカの敏感度(Se%)及び特異度(S
p%)の最適閾値を計算することによる、分子の相対リスクの予測モデルに基づく。単一
RNA編集アイソフォームの陽性的中率(PPV、%)及び陰性的中率(NPV、%)を
計算して、「自殺副作用群」における高リスク分子の真の存在の割合[真陽性/(真陽性
+偽陽性)及び真の不在の割合[真陰性/(真陰性+偽陰性)]を評価した。
【0080】
B)5-HT2cR編集アイソフォームの多変量解析
低リスク分子と高リスク分子とを比較する場合、mROC(multiple Rec
eiving-Operating-Characteristic)アプローチによる
複数マーカ解析が有意にAUCを改善した。以下の組み合わせの13のアイソフォームの
群から選択される、例えば2、3、4、5、6、7、又は13のアイソフォームに関連す
るアイソフォームの組み合わせ:A+B+AB+ABC+AC+C+D+AD+AE+A
CD+AEC+ABCD+NE(本発明の方法によって得られた組み合わせ)は、Cav
arecら(2013)で得られたものより高い敏感度及び特異度によって報告されるよ
うに、高リスク分子において自殺の副作用の高いリスク予測値を有する。本発明の組み合
わせで特定された2、3、4、5、6、7、8、9、0、11、12、及び13のアイソ
フォームを組み合わせた統計解析により、一連の決定則を生成し、図9図15及び以下
の対応する表4~9(低リスク分子対高リスク分子)に示すように、各組み合わせについ
て新しい仮想マーカ(Z)を計算した。
【0081】
マルチアイソフォームパネルの正診率及びその識別力を、受信者動作特性(ROC)解
析を使用して評価した。ROC曲線は、様々な値に対する試験の敏感度(Se)と特異度
(Sp)との間の相反関係をグラフで視覚化したものである。AUCは、その信頼区間(
CI)を有する曲線下面積を意味する。ROC曲線は、マルチアイソフォームパネルの敏
感度(Se%)及び特異度(Sp%)の最適閾値を計算することによる、毒性の高リスク
の予測モデルに基づく。組み合わせマーカの陽性的中率(PPV、%)及び陰性的中率(
NPV、%)を計算して、自殺/うつ病誘導有害副作用の高リスク分子の真の存在の割合
[真陽性/(真陽性+偽陽性)及び真の不在の割合[真陰性/(真陰性+偽陰性)]を評
価した。
【0082】
表4:2つのアイソフォーム(低リスク対高リスク分子)による多変量解析を用いた5-
HT2cR編集アイソフォームの性能
【表4】
【0083】
決定則:
RD1:Z=0.121×ACD-0.142×NE
【0084】
表5:3つのアイソフォーム(低リスク対高リスク分子)による多変量解析を用いた5-
HT2cR編集アイソフォームの性能
【表5】
【0085】
決定則:
RD1:Z=-0.1449×C+0.569×AE-0.1548×NE
【0086】
表6:4つのアイソフォーム(低リスク対高リスク分子)による多変量解析を用いた5-
HT2cR編集アイソフォームの性能
【表6】
【0087】
決定則:
RD1:Z=0.0235×AB+0.1567×ACD+0.3880×AEC-0.
1355×NE
【0088】
表7:5つのアイソフォーム(低リスク対高リスク分子)による多変量解析を用いた5-
HT2cR編集アイソフォームの性能
【表7】
【0089】
決定則:
RD1:Z=0.016×AB-0.0563×ABC+0.183×ACD+0.38
6×AEC-0.1428×NE
【0090】
表8:6つのアイソフォーム(低リスク対高リスク分子)による多変量解析を用いた5-
HT2cR編集アイソフォームの性能
【表8】
【0091】
決定則:
RD1:Z=0.0157×AB-0.0557×ABC+0.0187×D+0.18
17×ACD+0.3883×AEC-0.1426×NE
【0092】
表9:7つのアイソフォーム(低リスク対高リスク分子)による多変量解析を用いた5-
HT2cR編集アイソフォームの性能
【表9】
【0093】
決定則:
RD1:Z=-0.0505×B+0.0224×AB+0.001×D+0.163×
ACD+0.389×AEC-0.1402×ABCD-0.1385×NE
【0094】
表10:13のアイソフォーム(低リスク対高リスク分子)による多変量解析を用いた5
-HT2cR編集アイソフォームの性能
【表10】
【0095】
Z=0.2035×A+0.1283×B+0.1979×AB+0.1147×ABC
+0.1860×AC+0.04331×C+0.1884×D+0.1259×AD+
0.7739×AE+0.4295×ACD+0.4775×AEC-0.0415×A
BCD+0.0245×NE。
【0096】
C)決定ツリーアプローチ:多変量解析
「分類ツリー及び回帰ツリー(Classification And Regres
sion Trees)」を表すCARTアルゴリズムは、決定ツリーアプローチである
。これらのツリーは、ユーザにとって容易に理解できる階層グラフとして表される、分類
則のセットを構築するのに役立つ。ツリーは、内部ノード(決定ノード)、エッジ、及び
末端リーフからなる。これらのノードは、テスト及びこのノードからのエッジのラベルと
一致する、該テストに対する応答候補によってラベル付けされる。決定ツリーがバイナリ
である場合、慣例により、左エッジはテストに対する肯定応答に対応し、右エッジは否定
応答に対応する。得られた分類の手順は、決定則に関して即座に翻訳される。
【0097】
決定ツリーは、教師付き分類の一般的で効率的な方法である。この方法は、モデルを構
築するためのトレーニングセットと、それを検証するためのテストセットの使用を必要と
する。データセットを構築するにあたっては、「曖昧でない」分子(n=143)のリス
トを分割し、データセットの90%を学習フェーズ(n=93の薬物)に使用し、10%
をテストフェーズ(50の薬物)に使用する。この分割はランダム化されており、各分子
の様々な規制(statutes)の初期割合を尊重している。更に、
【0098】
例として、6個のRNA編集アイソフォームを「IFNプロファイル」に組み合わせ、
CART法を使用して意思決定モデルを構築した(図20)。
【0099】
表11:いくつかのアイソフォーム又はC13の組み合わせから選択された5個のアイソ
フォーム、X1、X2、X3、X4、及びX5の組み合わせによる、分子のデータセット
(低リスク対高リスク分子)に対する、CARTアルゴリズムを用いた5-HT2cR編
集アイソフォーム診断能
【表11】
【0100】
データテストにおける5-HT2cRの5つのRNA編集アイソフォームを用いたCA
RTモデルの診断能は、低リスク分子対高リスク分子の識別に関しても非常に興味深いと
思われる。
【0101】
D)ランダムフォレストアプローチ:多変量解析
ランダムフォレストは、教師付き分類の一般的且つ効率的な方法である。この方法は、
モデルを構築するためのトレーニングセットと、それを検証するためのテストセットの使
用を必要とする。データセットを構築するにあたっては、「曖昧でない」分子(n=14
3)のリストを分割し、データセットの65%を学習フェーズ(n=93の薬物)に使用
し、35%をテストフェーズ(50の薬物)に使用する。この分割はランダム化されてお
り、各分子の様々な規制(statutes)の初期割合を尊重している。更に、IFN
による学習データセットの重み付けを行い、「IFNプロファイル」を有する薬物及び「
基底0プロファイル」を有する薬物の分離力を改善した。従って、本発明者らはランダム
に採取された12のIFN分子と8個の対照(基底0)を学習セット(n=113)に加
えた。
【0102】
例として、本発明者らは、意思決定のモデルを構築するためのランダムフォレスト(R
F)アルゴリズムを用いて、「IFNプロファイル」の7及び13の代表的RNA編集ア
イソフォーム(C7のRD1、表9、及びC13のRD1、表10を参照)を組み合わせ
た(RFモデルのパラメータ:mtryStart=1、stepFactor=2、n
tree=500、improve=0.01;RFモデルのOut Of Bag(O
OB)推定値=0.21)(図16A~C及び17A~C))。
【0103】
表12:分子データセット(低リスク分子対高リスク分子)に対して7個のアイソフォー
ムを用いた、ランダムフォレストアルゴリズムを使用した分割表
【表12】
【0104】
表13:分子データセット(低リスク対高リスク分子)に対して13個のアイソフォーム
を用いた、ランダムフォレストアルゴリズムを使用した5-HT2cR編集アイソフォー
ム診断能
【表13】
【0105】
5-HT2cRの7又は13のRNA編集アイソフォームを用いたRFモデルの診断能
は、低リスク分子対高リスク分子の識別に関して非常に興味深く、敏感度、特異度、及び
正診率は90%(C7の場合)及び95%(C13の場合)より高く、Cavarecら
(2013)に開示されたものよりも有意に高い。
【0106】
実施例5:標的多様化
【0107】
SH-SY5Y細胞における5HT2cR mRNA編集を更に補うために、本発明者
らは更なるADAR基質(GRIA2、FLNB、PDE8A、GRIK2、及びGAB
RA3)を解析した。興味深いことに、IFN処理は、研究した3つの標的全てについて
、RNA編集アイソフォームの相対的割合を変化させた(図11)。従って、バイオマー
カを追加することにより、試験の診断能が更に高まることが予見可能である。
【0108】
実施例6:様々な標的のNGSベースの解析によって得られた、化合物特異的RNA編集
プロファイル
【0109】
化合物特異的RNA編集プロファイルを、標的GABRA3、GRIA2、GRIK2
、及びHTR2CのNGSベースの解析によって得た(図21A~21B参照)。図21
A及び21Bにおいて、ヒストグラムは、ビヒクル対照処理細胞と比較した、表示の化合
物で処理したヒトSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞株の各特異的部位において定量された
RNA編集レベルの相対的割合を示す。
【0110】
正の値(%)は、ビヒクル処理細胞と比較した、化合物によって誘発される特異的部位
におけるRNA編集の増加を示す。反対に、負の値(%)は、ビヒクル処理細胞と比較し
た、化合物による処理の結果としての特異的部位におけるRNA編集の減少を示す。
【0111】
患者における特定の効果の誘発が低リスク又はリスクなしである2つの化合物について
、RNA編集プロファイルを得た(図21A、21B参照)。例として、ビヒクル対照処
理細胞と比較した、リドカイン(A)及びオンダンセトロン(B)で得られたRNA編集
プロファイルを提供する。
【0112】
レセルピン(図21C参照)及びフルオキセチン(図21D参照)のような、患者にお
ける特定の効果の誘発が高リスクである2つの化合物について、RNA編集プロファイル
を得た。
【0113】
実施例7:RNA編集の経時的解析
【0114】
HTR2Cに対するアリピプラゾール、インターフェロン(IFN)、及びレセルピン
によるRNA編集の変化の経時的解析を観察した(図22A~22C参照)。SH-SY
5Y細胞を3個全ての化合物で処理すると、RNA編集プロファイルの時間依存的変化が
生じた。これは、未編集HTR2Cのそれぞれの相対的割合が経時的な減少を示すことに
よって、明確に示されている。興味深いことに、処理によって誘発された変化の特異度は
、アリピプラゾール(図22A参照)及びインターフェロン(図22B参照)又はレセル
ピン(図22C参照)の間で得られたプロファイルの違いによって示される。最も好まし
いアルゴリズムを適用して、各化合物のリスクスコアを、研究の各時点において決定した
(prob(アルゴリズム))。インターフェロンとレセルピンのリスクスコアは全ての
時点で高かったが、アリピプラゾール処理は24時間以降にリスクがあることが確実に特
定された(下記表14参照)。
【0115】
表14:アリピプラゾール、インターフェロン、及びレセルピン処理後の、いくつかの時
点におけるリスクスコアのレベル
【表14】
【0116】
実施例8:SH-SY5Y細胞を異なる化合物で処理した後の、RNA編集プロファイル
の用量依存的変化
【0117】
クロザピン、セルトラリン、及びケタミンの3種の異なる化合物でSH-SY5Y細胞
を処理した後、RNA編集プロファイルの用量依存的変化が得られた(図23A~23C
参照)。
【0118】
RNA編集プロファイルは、ビヒクル処理したSH-SY5Y細胞と比較した、HTR
2C RNA編集のそれぞれの相対的割合を表す。
【0119】
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8247.
図1
図2
図3
図4A-B】
図4C-D】
図4E-F】
図4G-H】
図4I
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A-B】
図22C
図23A
図23B-C】
【配列表】
2022134134000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者において化合物が特定の効果を誘発する確率をインビトロで予測するためのアルゴリズムであって、前記アルゴリズム又はモデルが、
a)-pre-mRNAがADAR酵素(RNAに作用するアデノシンデアミナーゼ(Adenosine Deaminases Acting on RNA))の基質であるRNAの、少なくとも1つの編集部位に対する前記ADARの作用により異なるアイソフォーム又は部位の生成がもたらされるA-to-I編集を示す少なくとも1つの標的を選択する工程、
-前記少なくとも1つの標的及び少なくとも前記ADAR酵素を内因的に発現する少なくとも1つの細胞株を選択する工程、
-前記細胞株の細胞が処理された場合、前記標的アイソフォーム又は編集部位の相対的割合を用量依存的に変化させることができる陽性対照化合物を選択する工程、
-前記特定の効果を誘発するリスクスコアを注釈付けされた、一定の化合物比で構成された分子の集合を選択する工程、
b)前記細胞株の細胞を、陰性対照及び前記陽性対照と併せて、前記分子の集合の個々の単一分子で処理する工程、
c)前記標的のRNA編集レベルの割合を、その編集アイソフォーム及び/又は部位のそれぞれについて、前記集合の分子それぞれについて得るために、その集合の分子で処理された個々の試料の前記少なくとも1つの標的RNA編集プロファイルを解析する工程、
d)-i)単変量解析統計法により、個々のアイソフォーム/又は編集部位について、分子が前記特定の効果を誘発するリスクを識別するその正診率及びその能力を評価する工程;及び/又は
-ii)多変量解析統計法により、アイソフォーム/又は編集部位の各組み合わせについて、分子が前記特定の効果を誘発するリスクを識別するその正診率及びその能力を評価する工程、及び
-iii)最良の識別能を示す組み合わせを選択する工程、
e)アイソフォーム/又は編集部位の前記選択された組み合わせを用いてアルゴリズムを構築し、このようにして得られた前記アルゴリズムを、前記化合物が患者において前記特定の効果を誘発する確率を予測するために使用する工程、
を含み、

工程1)d)i)が、個々のアイソフォーム又はそれらの組み合わせについて:
-前記特定の効果について、少なくとも60の敏感度(Se%)及び少なくとも60%の特異度(Sp%)の最適閾値;
-真の存在[真陽性/(真陽性+偽陽性)]及び真の不在[真陰性/(真陰性+偽陰性)]の割合を評価するための陽性的中率(PPV、%)及び陰性的中率(NPV、%)
を計算する工程を含み、

工程c)において、RNA編集プロファイルが、標的の編集プロファイルを得るために、
-NGSライブラリーの調製を含むNGS法(次世代シーケンシング)及び
-得られた全てのNGSライブラリーのシーケンシング;
を含む方法によって実行され

工程1)d)i)及び1)d)ii)並びに工程1)e)において、前記アルゴリズム又はモデルの取得を可能にする前記統計的方法が:
-mROCプログラム、特に、AUC(曲線下面積)ROCを最大化し、それぞれの組み合わせについての方程式が新しい仮想マーカZとして以下:
Z=a1(アイソフォーム1)+a2(アイソフォーム2)+...ai(アイソフォームi)+...an(アイソフォームn)
(式中、a1は計算された係数であり、(アイソフォームi)はアイソフォームの標的の個々のRNA編集レベルの相対的割合である)
のように提供され、使用され得る、線形結合を特定するためのプログラム;及び/又は
-単変量及び多変量解析に適用され、異なるアイソフォームの値で分子の相対的リスクを推定するロジスティック回帰モデル;及び/又は
-アイソフォームの組み合わせを評価するために適用されるCART(分類ツリー及び回帰ツリー(Classification And Regression Trees))アプローチ;及び/又は
-アイソフォームの組み合わせを評価し、特に、編集アイソフォームの重要度をランク付けし、最良のアイソフォームを組み合わせて、分子の「相対的リスク」を分類するために適用されるランダムフォレスト(RF)アプローチ、及び/又は、
-以下の群:
-サポートベクターマシン(SVM)アプローチ;
-人工ニューラルネットワーク(ANN)アプローチ;
-ベイジアンネットワークアプローチ;
-wKNN(重み付けk近傍)アプローチ;
-部分最小二乗法-判別分析(PLS-DA);並びに
-線形及び二次判別分析(LDA/QDA)
からなる群から選択する、分子の「相対的リスク」についてアイソフォームの組み合わせを評価するために適用される多変量解析、
を含む方法によって実行される、アルゴリズム。
【請求項2】
前記効果が、有害な副作用又は所望の副作用から選択される副作用である、請求項1に記載のアルゴリズム。
【請求項3】
RNAのA-to-I編集を示す前記標的が、5-HT2cR、PDE8A(ホスホジエステラーゼ8A)、GRIA2(グルタミン酸受容体2)、GRIA3、GRIA4、GRIK1、GRIK2、GRIN2C、GRM4、GRM6、FLNB(フィラミンB)、5-HT2A、GABRA3、FLNA、CYFIP2からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のアルゴリズム。
【請求項4】
前記特定の効果が有害な精神医学的副作用である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項5】
前記細胞株が、
-前記標的及び(1又は複数の)ADARを内因的に発現し、
-神経芽細胞腫細胞株
-陰性対照又はビヒクル対照に対して正規化された場合に、陽性対照が少なくとも4、5、又は6の誘発倍率でADAR1a発現を誘発した神経芽腫細胞株、並びに
-ヒトSH-SY5Y細胞株、
からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項6】
工程b)において、前記細胞株の細胞が、12時間~72時間被験分子又は対照で処理される、請求項1~5のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項7】
前記陽性対照がインターフェロンアルファである、請求項1~6のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項8】
工程c)が、個々の分子及び個々の編集アイソフォーム/又は編集部位について、前記標的のRNA編集レベルの平均/中央値の相対的割合を得るために、ビヒクル処理対照細胞と比較した、前記細胞株中の個々のアイソフォーム/又は部位についてのRNA編集の基底レベルを決定する工程を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項9】
前記方法が、薬物又は化合物が特定の効果を誘発する確率を、リスクなし、若しくは低リスク、又は高リスクによりインビトロで予測する方法である、請求項1~8のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項10】
前記分子の集合が、それぞれが前記特定の効果の誘発に対して高リスク及び低リスクのスコアを注釈付けされた、平衡化された治療クラスの分子比で構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項11】
工程c)において、NGS法は、
2ステップPCR法を用いて標的の(編集部位を含む)目的の配列断片を選択的にシーケンシングする、NGSライブラリーの調製を含み;
並びに
-前記シーケンシングデータのバイオインフォマティクス解析
を含み、
前記バイオインフォマティクス解析が以下の工程:
-配列のプリアライメント処理と品質管理
-参照配列に対するアライメント;及び
-編集レベルのコーリング
を含、標的の編集プロファイルを得る、請求項1~10のいずれか1項に記載のアルゴリズム
【請求項12】
-前記1つの標的が5-HT2cRであり、
-前記特定の効果が精神医学的有害副作用であり、
-細胞株がヒトSH-SY5Y神経芽細胞腫細胞株であり、
-陽性対照がインターフェロンアルファであり、
並びに、
-試験薬物による前記精神医学的有害副作用の誘発が低リスクであるか、又は高リスクであるかを識別することができる部位の組み合わせが、以下の5-HT2cRの部位:
A、B、C、D、及びEで構成される群から選択される少なくとも2、3、4、又は5つの単一部位の少なくとも1つの組み合わせを含むか、
-又は試験薬物による前記精神医学的有害副作用の誘発が低リスクであるか、又は高リスクであるかを識別することができるアイソフォームの組み合わせが、以下の5-HT2cRのアイソフォーム:
A、B、AB、ABC、AC、C、D、AD、AE、ACD、AEC、ABCD、及びNEで構成される群から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13の、単一アイソフォームの少なくとも1つの組み合わせを含み、並びに、
前記アルゴリズムまたはモデルの取得を可能にする前記統計的方法が、
-mROCプログラム、ランダムフォレストアプローチ、及び/又はCartアルゴリズム
を含む方法により実行される、請求項1~11のいずれか1項に記載のアルゴリズム。
【請求項13】
試験薬物による前記精神医学的有害副作用の誘発が低リスクであるか、又は高リスクであるかを識別することができる部位の組み合わせが、以下の5-HT2cRの部位:
A、B、C、D、及びE、
で構成される群から選択される少なくとも3、4、又は5つの単一部位の少なくとも1つの組み合わせを含む、請求項12に記載のアルゴリズム。
【請求項14】
試験薬物による前記精神医学的有害副作用の誘発が低リスクであるか、又は高リスクであるかを識別することができるアイソフォームの組み合わせが、以下の5-HT2cRのアイソフォーム:
A、B、AB、ABC、AC、C、D、AD、AE、ACD、AEC、ABCD、及びNE、
で構成される群から選択される少なくとも5、6、又は7の、単一アイソフォームの少なくとも1つの組み合わせを含む、請求項12に記載のアルゴリズム。
【請求項15】
薬物、化合物、又は分子が、患者において特定の効果誘発する確率又はリスクを予測するインビトロの方法であって、pre-mRNAがADAR酵素の基質であるRNAの、前記ADARの作用により異なるアイソフォームまたは部位の生成がもたらされるA-to-I編集を示す標的を使用し、
A)前記標的のRNA編集レベルの割合を、その編集アイソフォームのそれぞれについて得るために、前記薬物又は化合物または分子で処理された試料の標的RNA編集プロファイルを解析し、
前記標的RNA編集プロファイルが、前記特定の効果について得られた、請求項1~14のいずれか1項に記載のアルゴリズム又はモデルにおける分子集合の分子について得られたものとして得られる工程、
B)請求項1~14のいずれか1項に記載の、前記標的及び前記特定の効果について得られたアルゴリズム用いて、前記薬物若しくは化合物について得られた最終値又は適用されたアルゴリズム計算する工程;並びに、
C)工程B)で得られた結果を考慮して、前記薬物又は化合物が、患者において前記特定の効果を誘発するリスクがあるかどうかを、特に低リスク対高リスクで判定する工程:
を含む、方法。
【請求項16】
薬物が、患者において有害副作用を誘発するリスクがあるか、特に低リスク又はリスクなし対高リスクであるかどうかを判定するためのキットであって、
1)解析により、患者において前記有害副作用を誘発するリスクが判定される最終値を前記試験薬物について得るために、請求項1~14のいずれか1項に記載のアルゴリズム使用するための説明書、又は請求項15記載の方法を適用するための説明書並びに、
2)1)の前記説明書の前記アルゴリズム判定するために使用される分子集合の個々の分子について編集RNAプロファイルを得るために必要な試薬に準じた、前記試験薬物について得られる編集RNAプロファイルを判定するための試薬;
を含む、キット。
【外国語明細書】