(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134159
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20220908BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20220908BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01L23/28 J
H01L23/50 G
H01L21/56 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033099
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】市田 智也
(72)【発明者】
【氏名】咲間 光廣
(72)【発明者】
【氏名】秋野 勝
【テーマコード(参考)】
4M109
5F061
5F067
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109AA02
4M109BA01
4M109CA21
4M109DA08
4M109EA02
4M109EE02
5F061AA01
5F061AA02
5F061BA01
5F061CA01
5F061CB03
5F061CB13
5F061GA03
5F067AB04
5F067BD02
(57)【要約】
【課題】半導体チップへの封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置を提供する。
【解決手段】ダイパッド5には半導体チップ1が搭載され、半導体チップ1の表面の外周に配置された電極パッド6とリード4がワイヤ3を介して電気的に接続され、半導体チップ1、ダイパッド5、リード4は封止樹脂2に覆われている。半導体チップ1には応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aがあり、その外側には第1領域を取り囲む第2領域1bが位置する。そして、第1領域1aの周縁部の上方である封止樹脂2の表面には樹脂凹部61が設けられ、封止樹脂2から第1領域1aにかかる応力は樹脂凹部61によって低減される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体チップと、
前記ダイパッドと離間して配置され、前記半導体チップと電気的に接続されたリードと、
前記ダイパッドと前記半導体チップと前記リードとを封止している封止樹脂と、を備え、
前記半導体チップは、対を形成するトランジスタからなる回路を内側に含む第1領域と、
前記第1領域を取り囲む第2領域と、を有し、
前記半導体チップの上方の前記封止樹脂の表面に、前記第1領域の周縁部と平面視的に重畳する樹脂凹部が設けられ、前記樹脂凹部が取り囲む内側に第1の樹脂凸部が位置し、前記樹脂凹部の外側に第2の樹脂凸部が位置していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記樹脂凹部には、前記封止樹脂よりもヤング率の低い充填物が埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置
【請求項3】
平面視的に、前記樹脂凹部が格子状に前記封止樹脂の表面に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体装置
【請求項4】
断面視的に、前記樹脂凹部の底面は尖頭形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体チップと前記リードがフリップチップ接合していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記対を形成するトランジスタからなる回路がカレントミラー回路であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体チップと、
前記ダイパッドと離間して配置され、前記半導体チップと電気的に接続されたリードと、
前記ダイパッドと前記半導体チップと前記リードとを封止している封止樹脂と、を備える半導体装置の製造方法であって、
主面に対を形成するトランジスタからなる回路を内側に含む第1領域が形成された前記半導体チップを用意する工程と、
前記ダイパッド上に前記半導体チップが搭載され、前記ダイパッドと離間して配置したリードを用意する工程と、
前記半導体チップが搭載された前記ダイパッドと前記リードを封止するための金型であって、前記樹脂凹部を形成するための金型凸部を有する金型を用意する工程と、
前記半導体チップが搭載された前記ダイパッドを封止するとともに、前記第1領域の周縁部の上方に位置する前記封止樹脂の表面に、前記金型凸部と相対する樹脂凹部を形成する工程と、からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
さらに、前記半導体装置の電気特性を検査する工程と、
前記検査する工程で得られた電気特性を補正する工程と、を備え、
前記補正する工程は、前記樹脂凹部の底面を除去することを特徴とする請求項7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂凹部の底面を除去する工程は、レーザー加工によって前記封止樹脂の一部を除去することを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂凹部の底面を除去する工程は、ルーター加工によって前記封止樹脂の一部を除去することを特徴とする請求項8記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体チップを用意する工程において、前記対を形成するトランジスタからなる回路をカレントミラー回路とすることを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型軽量化及び高機能化のニーズに伴い、電子機器に半導体装置を高密度に実装することが可能な表面実装型パッケージが多用されている。アナログICなどでは、近年、さらなる電気特性の高精度化が要求されている。しかし、パッケージング工程などの実装工程において、半導体チップに応力がかかることで電気特性の変動が生じて目標とする電気特性を得られないことがある。
フルモールドタイプの半導体装置において、ダイパッドの上下の樹脂厚を同一とすることで、半導体装置の実装時の応力に起因する反りを低減することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フルモールドタイプの半導体装置では放熱性が十分でなく、半導体チップから発生する熱が蓄熱して半導体装置の電気特性を悪化させてしまうこともある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、ノンリードタイプの半導体装置であっても半導体チップへの応力を低減することができる半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では以下の手段を用いた。
ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体チップと、
前記ダイパッドと離間して配置され、前記半導体チップと電気的に接続されたリードと、
前記ダイパッドと前記半導体チップと前記リードとを封止している封止樹脂と、を備え、
前記半導体チップは、対を形成するトランジスタからなる回路を内側に含む第1領域と、
前記第1領域を取り囲む第2領域と、を有し、
前記半導体チップの上方の前記封止樹脂の表面に、前記第1領域の周縁部と平面視的に重畳する樹脂凹部が設けられ、前記樹脂凹部が取り囲む内側に第1の樹脂凸部が位置し、前記樹脂凹部の外側に第2の樹脂凸部が位置していることを特徴とする半導体装置とする。
【0006】
また、ダイパッドと、
前記ダイパッド上に搭載された半導体チップと、
前記ダイパッドと離間して配置され、前記半導体チップと電気的に接続されたリードと、
前記ダイパッドと前記半導体チップと前記リードとを封止している封止樹脂と、を備える半導体装置の製造方法であって、
主面に対を形成するトランジスタからなる回路を内側に含む第1領域が形成された前記半導体チップを用意する工程と、
前記ダイパッド上に前記半導体チップが搭載され、前記ダイパッドと離間して配置したリードを用意する工程と、
前記半導体チップが搭載された前記ダイパッドと前記リードを封止するための金型であって、前記樹脂凹部を形成するための金型凸部を有する金型を用意する工程と、
前記半導体チップが搭載された前記ダイパッドを封止するとともに、前記第1領域の周縁部の上方に位置する前記封止樹脂の表面に、前記金型凸部と相対する樹脂凹部を形成する工程と、からなることを特徴とする半導体装置の製造方法を用いる。
【発明の効果】
【0007】
上記手段を用いることで、半導体チップへの封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図2】本発明の第2実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図3】本発明の第3実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図4】本発明の第4実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図5】本発明の第5実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図6】本発明の第6実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図7】本発明の第7実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
【
図8】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
【
図9】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
【
図10】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
【
図11】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の半導体装置の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図1(a)の断面図に示すように、銅(Cu)合金などからなるダイパッド5上に半導体チップ1が搭載されている。ダイパッド5の周囲にはダイパッド5と離間してリード4が設けられている。そして、半導体チップ1の上面に設けられた電極パッド(図示せず)とリード4の上面とが接続部材であるワイヤ3を介して電気的に接続されている。ワイヤ3の材料としては金(Au)や銅(Cu)が用いられる。なお、半導体チップ1とリード4との電気的接続はワイヤ法に限られることなく、バンプを介したフリップチップボンディング法を用いても構わない。
【0010】
半導体チップ1とダイパッド5とワイヤ3の周囲は封止樹脂2によって被覆されるが、ダイパッド5の半導体チップ1搭載面の反対側の裏面は封止樹脂2から露出している。ダイパッド5の裏面はメッキ層12によって覆われて放熱性に優れる形状である。リード4の底面と外側面も封止樹脂2から露出し、リード4の底面の露出面もメッキ層12で覆われる構成である。リード4の外側面は封止樹脂2の側面から突出せず、ノンリードタイプの半導体装置21となっている。なお、メッキ層12は、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、錫(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、金(Au)のいずれかの金属もしくは複数の金属の合金からなり、電解メッキ法または無電解メッキ法によって形成される。
【0011】
半導体装置21を構成する半導体チップ1の主面の一部には、応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aがあり、その外側には第1領域1aを取り囲む第2領域1bが位置する。そして、第1領域1aと第2領域1bとの境界、すなわち第1領域1aの周縁部の上方である封止樹脂2の表面のみに、封止樹脂2の一部が窪んでいる樹脂凹部61が設けられている。樹脂凹部61の幅は10~30μm、深さは封止樹脂2の厚さにもよるが5~150μmである。図示するように、樹脂凹部61の下部の封止樹脂の厚さは周囲に比べ薄く、樹脂凹部61以外の領域における封止樹脂2の厚さは相対的に厚いものである。樹脂凹部61の内側は厚肉の封止樹脂2の樹脂凸部2aであり、この樹脂凸部2aの直下に第1領域1aが位置している。そして、樹脂凹部61の外側にも樹脂凸部2bが位置している。つまり、樹脂凹部61はその内側に位置する樹脂凸部2aおよびその外側に位置する樹脂凸部2bによって挟まれる形状である。なお、樹脂凸部2aと樹脂凸部2bの表面高さは同じである。図示する樹脂凹部61の断面は矩形形状をなしているが、樹脂凹部61の底面(下部)61aのみを尖頭形状や、樹脂凹部61全体を頂点が下を向く二等辺三角形形状にすることで応力をより効果的に低減できる。
【0012】
図1(b)は半導体装置の上面から透視した平面図である。矩形形状の封止樹脂2の中央領域にダイパッド5が配置されている。封止樹脂2の一方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置され、一方の辺と対向する他方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置されている。そして、互いの辺(側面)に沿って配置されたリード4はダイパッド5を挟んで向かい合っている。ダイパッド5上には半導体チップ1が搭載され、半導体チップ1の外周に配置された電極パッド6とリード4がワイヤ3を介して電気的に接続されている。半導体チップ1には応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aとその外側の第1領域1aを取り囲む第2領域1bが設けられている。
【0013】
高温の成形用金型に注入された溶融状の樹脂が硬化する時、及び常温に戻る時の樹脂の収縮によって、シリコンからなる半導体チップ1に圧縮、せん断等の応力が加わると、シリコン単結晶にピエゾ効果が生じ、半導体チップの主面に形成された半導体集積回路素子の電気特性が変動することがあるが、該半導体集積回路素子の中でもピエゾ効果の影響で電気特性が変動しやすい素子が応力に対する感度が高い素子xに相当する。例えば、カレントミラー回路は、対を形成するMOSトランジスタのゲート同士と一方のソースを結線することにより、或いは対を形成するバイポーラトランジスタのベース同士と一方のコレクターを結線することにより、上記の対を形成するトランジスタに流れる電流経路に同じ電流を流せるようにした回路であり、この対を形成するトランジスタ間で同一な電流が流れることを利用して、2つの電流経路の電流が等しくなるように働くことを利用した回路であるが、この回路に応力がかかると2つの電流経路の電流がずれてしまう。このような対を成すトランジスタはその特性が大きく違わないことが必要である。上述のカレントミラー回路は応力に対する感度が高い素子xに相当し、第1領域1aの内側に形成されることが望ましい。カレントミラー回路を用いた差動増幅回路なども応力に対する感度が高い素子xに相当し、第1領域1aの内側に形成されることが望ましい。
【0014】
樹脂凹部61を半導体チップ1上に平面投影した領域は応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aの周縁部と重畳し、その外形状は矩形であって、その第1領域1aの中央付近に、応力に対する感度が高い素子xが設けられている。半導体チップ1の外周領域には電極パッド6が配置されているが、樹脂凹部61の平面投影領域は電極パッド6が配置されている領域と重畳しないことが望ましい。
図1(a)に図示したように、ワイヤ3はループ状に形成され、そのループ高さは半導体チップ1の上面よりも高いため、樹脂凹部61が電極パッド6の配置領域と重畳し、かつ樹脂凹部61が深くなると、ワイヤ3が樹脂凹部61から露出して信頼性を低下させる懸念が生じる。よって、樹脂凹部61の平面投影領域は電極パッド6が配置されている領域と重畳しないことが望ましい。
【0015】
樹脂凹部が無く封止樹脂の厚さが一定である半導体装置では、封止樹脂の厚さに応じた応力が半導体チップにかかり、半導体チップが反ることになり、その結果、半導体チップの特性の変動に至るが、本発明の半導体装置21のように、応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aの周縁部上方に位置する封止樹脂2の表面に選択的に樹脂凹部61を設けると、その樹脂凹部61で封止樹脂2の厚さが薄くなり、応力がそこで緩和されることになり、第1領域1aにかかる応力を低減できる。その結果、この第1領域1aの内側に形成された回路から得られる電気特性値が本来の値からずれてしまうことを低減できる。このように、上記構造とすることで半導体チップ1への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置21を実現できる。
以上では、封止樹脂2の2つの側面のそれぞれにリード4を設けたDFN(Dual Flat Non-leaded)パッケージの例で説明したが、本技術は封止樹脂2の4つの側面のそれぞれにリード4を設けたQFN(Quad Flat Non-leaded)パッケージにも適用可能である。
【0016】
図2は、本発明の第2実施形態にかかる半導体装置の構造図であって、半導体装置の断面図である。
図1に示した半導体装置21との違いは、樹脂凹部62の中に充填物16を埋め込んでいる点である。充填物16の表面と封止樹脂2の樹脂凸部2a、2bの表面は面一となっている。封止樹脂2として用いるエポキシ樹脂のヤング率は、2.6~3GPaであるが、樹脂凹部62に埋め込む物質のヤング率は、封止樹脂2よりも小さいものが望ましく、ゴムなどのエラストマ、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)等の柔らかいものが適当である。因みに、ゴムのヤング率は0.01~0.1GPaである。このように、樹脂凹部62に充填物16を埋め込むことで、第1領域1aにかかる応力を低減できるだけでなく、第1実施形態にかかる半導体装置21よりも信頼性の向上した半導体装置22とすることができる。
【0017】
図3は、本発明の第3実施形態にかかる半導体装置の構造図であって、半導体装置の上面から透視した平面図である。
図1に示した半導体装置21との違いは、樹脂凹部63を格子状に設けた点である。したがって、樹脂凹部63以外の構造は第1実施形態にかかる半導体装置21と同じであり、応力に対する感度が高い素子xは半導体チップ1の中央付近に配置されている。半導体装置23の封止樹脂2の表面には横方向の2本の樹脂凹部63xが応力に対する感度が高い素子xを挟むように形成され、樹脂凹部63xは封止樹脂2の一方の辺(側面)から他方の辺(側面)にかけて直線状に形成されている。また、樹脂凹部63xと直交するように縦方向の樹脂凹部63yが形成され、縦方向の2本の樹脂凹部63yが応力に対する感度が高い素子xを挟むように形成され、2本の樹脂凹部63yは封止樹脂2の一方の辺(側面)から他方の辺(側面)にかけて直線状に形成されている。このような形状とすることにより、樹脂凹部63x、63yによって応力がより効果的に緩和されることになり、第1領域1aにかかる応力を低減できる。このような格子状の樹脂凹部63の応力低減効果は、
図1に示した矩形の樹脂凹部61に比べると大きいものであり、第1領域1aの内側に形成された回路から得られる電気特性値が本来の値からずれてしまうことをより効果的に低減できる。なお、図示していないが、格子状の樹脂凹部63以外の封止樹脂2の表面は樹脂凸部となっている。
【0018】
図4は、本発明の第4実施形態にかかる半導体装置の構造図であって、半導体装置の断面図である。
図1に示した半導体装置21との違いは、リード4と半導体チップ1の電気的接続としてワイヤ3に代えて貫通電極(図示せず)を用い、樹脂凹部64を第1実施形態にかかる半導体装置21に比べ深い溝として半導体チップ1の主面近傍に、そして、樹脂凹部64の間隔を広くした点である。このように樹脂凹部64の深さを深くした場合、封止樹脂2によってかかる応力は樹脂凹部64によって緩和され、第1領域1aにかかる応力は低減される。そして、この応力低減効果は、
図1に示した矩形の樹脂凹部61に比べると大きいものである。逆に、樹脂凹部64の間隔が広くなって応力に対する感度が高い素子xから遠ざかると、幾分応力低減効果は小さくなる傾向を示す。
【0019】
図5は、本発明の第5実施形態にかかる半導体装置の構造図であって、樹脂凹部の各種形状を示した平面図である。
図5(a)に示す半導体装置25では、樹脂凹部65の平面投影領域の周縁部が円形である例を示し、この円形に囲まれた領域に応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aが設けられている。
図5(b)に示す半導体装置26では、樹脂凹部66の平面投影領域の周縁部が楕円形である例を示し、この楕円形に囲まれた領域に応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aが設けられている。
図5(c)に示す半導体装置27では、樹脂凹部67の平面投影領域の周縁部が多角形である例を示し、この多角形に囲まれた領域に応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aが設けられている。いずれの上記形状においても、第1領域1aの中央付近に応力に対する感度が高い素子xが配置され、その外側には第1領域1aを取り囲む第2領域1bが位置している。
【0020】
図6は、本発明の第6実施形態にかかる半導体装置の構造図である。
図1に示した半導体装置21との違いは、応力に対する感度が高い素子xを複数有する点である。
図6(a)に示すように、半導体チップ1の主面の一部には、応力に対する感度が高い素子xが離間した位置に複数あり、おのおのの素子を内側に含む領域1aを複数設け、それぞれの上方に位置する封止樹脂2の表面に樹脂凹部68を複数設けた半導体装置28としている。ただ、
図6(b)に示すように、複数の応力に対する感度が高い素子xが近接している場合は、平面視的に複数の素子xを一緒に囲む樹脂凹部69としても良い。
【0021】
図7は、本発明の第7実施形態にかかる半導体装置の構造図である。第1実施形態との違いはワイヤボンディング法に代えてフリップチップボンディング法を用いた点である。
第1実施形態では、半導体チップ1の素子面がリード4と反対方向に向く構造であったのに対し、本実施形態では、
図7(a)の断面図に示すように、金属材料からなる放熱板13の下面に固着した半導体チップ1の素子面がリード4側に向く構造としている。したがって、放熱板13はダイパッドとしての機能も有する。半導体チップ1の素子面にはバンプ電極11が設けられ、このバンプ電極11を介して半導体チップ1の素子面とリード4の支持面が向き合って電気的に接続している。バンプ電極11は錫(Sn)や金(Au)などの金属材料からなる。
【0022】
放熱板13とリード4は半導体チップ1を上下に挟む構造で、半導体チップ1と放熱板13とリード4は封止樹脂2によって被覆される。ただし、放熱板13の裏面、すなわち、本図における放熱板13の上面に相当する面は封止樹脂2から露出し、メッキ層12で覆われている。また、リード4の底面と外側面も封止樹脂2から露出し、リード4の底面の露出面もメッキ層12で覆われる構成である。リード4の外側面は封止樹脂の側面から突出しないノンリードタイプの半導体装置30となっている。
【0023】
半導体チップ1の主面の一部には、応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aがあり、その下方に位置する封止樹脂2の表面には、平面視的に第1領域1aの周縁部と重畳するように樹脂凹部70が設けられている。ここでは、樹脂凹部70の断面は矩形形状をなしている。樹脂凹部70の底面(上部)70aのみを尖頭形状や、樹脂凹部70全体を頂点が上を向く二等辺三角形形状にすることで応力をより効果的に緩和できる。
【0024】
図7(b)は半導体装置30の底面側からの平面図である。メッキ層12は図示していない。矩形形状の封止樹脂2の中央領域に銅材からなる放熱板13が配置されている。封止樹脂2の一方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置され、一方の辺と対向する他方の辺(側面)に沿って複数のリード4が配置されている。そして、互いの辺(側面)に沿って配置されたリード4は放熱板13を中心にして向かい合っている。放熱板13には半導体チップ1が固着され、半導体チップ1の外周に配置されたバンプ電極11とリード4が重なって電気的に接続されている。半導体チップ1には応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aと、第1領域1aを取り囲む第2領域1bがある。例えば、カレントミラー回路は、対を形成するトランジスタ間で同一な電流が流れることを利用して、2つの電流経路の電流が等しくなるように働くことを利用した回路であるが、この回路に応力がかかると2つの電流経路の電流がずれてしまう。このような対を成すトランジスタはその特性が大きく違わないことが必要であり、上述の第1領域1aに形成されることが望ましい。
【0025】
応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aの下方に位置する封止樹脂2の表面には、平面視的に第1領域1aの周縁部と重畳するように樹脂凹部70を設けることで、樹脂凹部70の上方の封止樹脂2の厚さが薄くなり、この第1領域1aにかかる応力が低減することができる。その結果、この第1領域1aの内側に形成された回路から得られる電気特性値が本来の値からずれてしまうことを低減できる。このように、上記構造とすることで半導体チップ1への封止樹脂からの応力を低減できる半導体装置29を実現することができる。
以上では、封止樹脂2の2つの側面のそれぞれにリード4を設けたDFN(Dual Flat Non-leaded)パッケージの例で説明したが、本技術は封止樹脂2の4つの側面のそれぞれにリード4を設けたQFN(Quad Flat Non-leaded)パッケージにも適用可能である。
【0026】
図8は、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。まず、
図8(a)に示すように、ダイパッド5とダイパッド5の周囲に離間して複数のリード4を配置したリードフレーム7を用意する。リードフレーム7は矩形状のダイパッド5およびダイパッド5から離間して配置された複数のリード4を1つのユニット7aとして、そのユニット7aを複数有する形状である。破線で囲むように図示するユニット7aはフレーム枠7bに囲まれており、リード4はフレーム枠7bに接続され、ダイパッド5は吊りリード7cを介してフレーム枠7bに接続されている。なお、リードフレーム7は主に銅材や銅合金材からなるものである。
図8(b)は
図8(a)に示されるA-A線に沿った断面図である。この段階で隣接するユニット7aどうしのリード4はフレーム枠7bを介して繋がっている。
【0027】
次いで、
図8(c)に示すように、ダイパッド5上に半導体チップ1を搭載し、半導体チップ1上に設けられた電極パッド(図示せず)とリード4とをワイヤ3を介して電気的に接続する。
【0028】
図9は、
図8に続く、本発明の第1実施形態にかかる半導体装置の製造方法を示す構造図である。
図9(a)に示すように、半導体チップ1を搭載したリードフレーム7を封止するための金型8を用意する。金型8は上金型8aと下金型8bとから構成され、それらの間にキャビティ9を有する。そして、上金型8aからキャビティ9に向かって突出するように金型凸部10が設けられている。金型凸部10は半導体チップ1の主面の一部の応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aの周縁部上方に位置している。ここに図示した金型凸部10の断面形状は矩形である。
【0029】
図9(b)に示すように、上金型8aと下金型8bの間に設けられたキャビティ9に封止樹脂2を流入させ、半導体チップ1とダイパッド5とワイヤ3とリード4を封止樹脂2にて封止する。このとき、半導体チップ1の主面の一部には、応力に対する感度が高い素子xを内側に含む第1領域1aがあり、その周縁部上方に位置する封止樹脂2の表面に樹脂凹部61が形成されるが、封止時にこの樹脂凹部61は上金型8aの金型凸部10と相対して形成されるものである。
【0030】
図9(c)に示すように、封止体15を金型8から取り出し、ダイパッド5の裏面およびリード4の底面にメッキ層12を形成する。その後、回転ブレード14を用いてフレーム枠7bに沿って封止体15を切断する。このとき、回転ブレード14の幅をフレーム枠7bの幅よりも大きくすることでフレーム枠7bを完全に除去することができる。なお、回転ブレード14による切断方向は封止体15底面から上方向、上面から下方向のいずれでも構わない。
【0031】
切断後、
図10に示すような個々に分離された半導体装置21が得られる。
図10(a)は断面図、
図10(b)は平面図であり、複数の半導体装置21の集合体として図示している。なお、上記では金型の一つのキャビティから複数の半導体装置を得る方法について述べたが、一つのキャビティから一つ半導体装置を得るという封止方法を採用することも可能である。
【0032】
次に、得られた半導体装置21の電気特性検査を実施する。そして、半導体装置21に組み込まれている半導体チップ1の組立前のプロービングテストで得られた電気特性と比較して特性変動量を確認する。この特性変動量が検査基準内であれば、これ以降の工程を実施しなくてもよい。検査基準を越える特性変動量であれば、以降の工程を追加して電気特性の補正を行う。
【0033】
図11に示すように、電気特性の補正は、樹脂凹部61の底面61aの封止樹脂2の一部を所定量除去して、樹脂凹部61の深さをさらに深くすることにて行う。樹脂凹部61の底面61aの除去すべき所定量は、以前のサンプルでの事前評価によって予め決定しておいた電気特性の補正量と除去量との関係式から求めることができる。樹脂凹部61の底面61aの封止樹脂2の除去にはレーザー加工や機械的なルーター加工が用いられ、加工前の樹脂凹部61の実線で図示する底面61aが加工後の樹脂凹部61bの破線で図示する底面のように深くなる。このとき、封止樹脂2の除去量は樹脂凹部61の底面全面において一様であることが望ましい。
【0034】
封止樹脂2の一部を除去した後、再度電気特性検査を実施し、プロービングテストで得られた電気特性と比較して特性変動量を確認する。この特性変動量が検査基準内であれば、これ以降の工程を実施しなくてもよい。検査基準を越える特性変動量であれば、上記の電気特性の補正の工程を追加で行い、特性変動量が検査基準内に収まるまで行う。仮に、特性変動量が補正不可であると判断すれば該半導体装置21を不良として適切に処置する。以上の追加工程によって得られた半導体装置21は、樹脂封止前の半導体チップ1単体の電気特性からのズレが極めて小さく、要求性能を十分に満たす半導体装置21である。
【符号の説明】
【0035】
1 半導体チップ
1a 第1領域
1b 第2領域
2 封止樹脂
2a、2b 樹脂凸部
3 ワイヤ
4 リード
4a インナーリード部
4b アウターリード部
5 ダイパッド
6 電極パッド
7 リードフレーム
7a ユニット
7b フレーム枠
7c 吊りリード
8 金型
8a 上金型
8b 下金型
9 キャビティ
10 金型凸部
11 バンプ電極
12 メッキ層
13 放熱板
14 回転ブレード
15 封止体
16 充填物
21、22、23、24,25、26、27、28、29、30 半導体装置
61、62、63、63x、63y、64、65、66、67、68、69、70 樹脂凹部
61a、70a 樹脂凹部の底面
61b 加工後の樹脂凹部
x 応力に対する感度が高い素子