(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134180
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/265 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
H01L21/265 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033146
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉村 充弘
(57)【要約】
【課題】イオン注入領域の形成される位置により規定される不純物形成領域の位置ずれを検出できる半導体装置を提供する。
【解決手段】単位モニター素子を有する半導体装置であって、前記単位モニター素子は、ポリシリコンからなる抵抗領域と、前記抵抗領域の第1の方向の両端に設けられた、ポリシリコンからなる第2導電型の高濃度領域と、前記高濃度領域にそれぞれ接して、相互に離間して形成された第2導電型の一組の不純物拡散領域と、前記抵抗領域の外側に設けられた、前記一組の不純物拡散領域を連結する連結領域からなるイオン注入領域と、を有し、前記イオン注入領域と前記抵抗領域の間の第2の方向の相互位置が基準量以上ずれた場合に、前記抵抗領域内に、前記一組の不純物拡散領域を相互に接続する接続部が形成され、前記単位モニター素子の電気特性測定結果に基づいて、前記イオン注入領域の前記抵抗領域に対するずれの有無を識別できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に不純物イオンを注入して形成された不純物拡散領域とポリシリコンからなる抵抗素子との位置合わせの良否を評価するアライメント評価用素子が前記半導体基板に形成された半導体装置であって、
前記アライメント評価用素子は、単位モニター素子を有し、
前記単位モニター素子は、
矩形形状を有するポリシリコンからなる抵抗領域と、
前記抵抗領域の第1の方向の両端にそれぞれ接して設けられた、ポリシリコンからなる一組の、第2導電型の高濃度領域と、
前記高濃度領域にそれぞれ接して、前記抵抗領域の表面に互いに前記第1の方向に離間して形成された第2導電型の一組の不純物拡散領域と、
前記一組の不純物拡散領域を含むとともに前記抵抗領域の外側に設けられた、前記一組の不純物拡散領域を連結する連結領域からなるイオン注入領域と、
を有し、
前記イオン注入領域と前記抵抗領域の間の前記第1の方向と垂直な第2の方向の相互位置が基準量以上ずれた場合に、前記抵抗領域内において、前記一組の不純物拡散領域を相互に接続する接続部が形成され、
前記単位モニター素子からの前記抵抗領域に対する電気特性測定結果に基づいて、前記イオン注入領域の前記抵抗領域に対するずれの有無を識別できる半導体装置。
【請求項2】
半導体基板に不純物イオンを注入して形成された不純物拡散領域とポリシリコンからなる抵抗素子との位置合わせの良否を評価するアライメント評価用素子が前記半導体基板に形成された半導体装置であって、
前記アライメント評価用素子は、単位モニター素子を有し、
前記単位モニター素子は、
矩形形状を有するポリシリコンからなる抵抗領域と、
前記抵抗領域の第1の方向の両端にそれぞれ接して設けられた、ポリシリコンからなる一組の、第2導電型の高濃度領域と、
前記高濃度領域にそれぞれ接して、前記抵抗領域の表面に互いに前記第1の方向に離間して形成された第2導電型の一組の不純物拡散領域と、
前記一組の不純物拡散領域を含んで前記抵抗領域の一辺に沿って前記抵抗領域の表面の一部を覆う、前記一組の不純物拡散領域を連結する連結領域からなるイオン注入領域と、
を有し、
前記イオン注入領域と前記抵抗領域の間の前記第1の方向と垂直な第2の方向の相互位置が基準量以上ずれた場合に、前記抵抗領域内において、前記一組の不純物拡散領域を相互に接続する接続部が除去され、
前記単位モニター素子からの前記抵抗領域に対する電気特性測定結果に基づいて、前記イオン注入領域の前記抵抗領域に対するずれの有無を識別できる半導体装置。
【請求項3】
前記抵抗領域は、第1導電型のポリシリコンである請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記抵抗領域は、不純物を含まないノンドープのポリシリコンである請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記アライメント評価素子は複数の前記単位モニター素子を含む請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記単位モニター素子は、前記高濃度領域の上方に、前記高濃度領域とコンタクトを介して接続された測定端子を有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体のウェハ製造工程におけるレジストをマスクとするイオン注入工程において、合わせずれを検知できる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レジストを用いたパターンが形成されたシリコン等からなる半導体基板の表面に、電界により加速されたイオンを打ち込み、所定の位置に不純物拡散領域を形成することができるイオン注入工程は、半導体装置を製造するための前工程ともいわれるウェハ製造工程において、欠くことのできない技術となっている。
【0003】
レジストを用いたパターンの形成が正常に行われたかどうかは、ウェハ製造工程において合わせマーク等を用いた光学的手段により確認されている。しかし、イオン注入により不純物イオンが拡散された不純物拡散領域が正しく形成されたかどうかをその場で検知することは困難である。
【0004】
そのため、特許文献1に示されるように、出来上がった半導体製品に含まれる素子の電気的特性の変化により間接的にイオン注入による不純物拡散領域の形成に不備があったことを推測したり、X線光電子分光法(XPS)による分光学的な手法を用いて、本来あるはずのない不純物原子の存在を直接に確認したりすることにより、イオン注入工程において不純物イオンが拡散された不純物拡散領域が正しく形成されなかったことを後から知ることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された半導体装置は、イオン注入により形成された異なる導電型を有する2種類の不純物拡散領域のずれ量を複数の単位モニター素子の抵抗値の比較により識別するものである。しかし、抵抗の形状をした単位モニター素子の個々の抵抗値は、様々な要因でばらつくため、ある一つの半導体装置、即ち一つのICに付随する複数の単位モニター素子の抵抗値から異常の有無を直接判断することは困難となる。判断には積み上げられたデータが必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、単位モニター素子に電流が流れるか流れないかを択一的に判定することで、イオン注入により形成された不純物拡散領域とポリシリコン抵抗との重なりの有無を識別できるアライメント評価素子を有する半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る半導体は、以下の構成を有している。
半導体基板に不純物イオンを注入して形成された不純物拡散領域とポリシリコンからなる抵抗素子との位置合わせの良否を評価するアライメント評価用素子が前記半導体基板に形成された半導体装置であって、
前記アライメント評価用素子は、単位モニター素子を有し、
前記単位モニター素子は、矩形形状を有するポリシリコンからなる抵抗領域と、前記抵抗領域の第1の方向の両端にそれぞれ接して設けられた、ポリシリコンからなる一組の、第2導電型の高濃度領域と、前記高濃度領域にそれぞれ接して、前記抵抗領域の表面に互いに前記第1の方向に離間して形成された第2導電型の一組の不純物拡散領域と、前記一組の不純物拡散領域を含むとともに前記抵抗領域の外側に設けられた、前記一組の不純物拡散領域を連結する連結領域からなるイオン注入領域と、を有し、
前記イオン注入領域と前記抵抗領域の間の前記第1の方向と垂直な第2の方向の相互位置が基準量以上ずれた場合に、前記抵抗領域内において、前記一組の不純物拡散領域を相互に接続する接続部が形成され、
前記単位モニター素子からの前記抵抗領域に対する電気特性測定結果に基づいて、前記イオン注入領域の前記抵抗領域に対するずれの有無を識別できる半導体装置とする。
【0009】
また、本発明の他の実施形態に係る半導体は、以下の構成を有している。
半導体基板に不純物イオンを注入して形成された不純物拡散領域とポリシリコンからなる抵抗素子との位置合わせの良否を評価するアライメント評価用素子が前記半導体基板に形成された半導体装置であって、
前記アライメント評価用素子は、単位モニター素子を有し、
前記単位モニター素子は、矩形形状を有するポリシリコンからなる抵抗領域と、前記抵抗領域の第1の方向の両端にそれぞれ接して設けられた、ポリシリコンからなる一組の、第2導電型の高濃度領域と、前記高濃度領域にそれぞれ接して、前記抵抗領域の表面に互いに前記第1の方向に離間して形成された第2導電型の一組の不純物拡散領域と、前記一組の不純物拡散領域を含んで前記抵抗領域の一辺に沿って前記抵抗領域の表面の一部を覆う、前記一組の不純物拡散領域を連結する連結領域からなるイオン注入領域と、を有し、
前記イオン注入領域と前記抵抗領域の間の前記第1の方向と垂直な第2の方向の相互位置が基準量以上ずれた場合に、前記抵抗領域内において、前記一組の不純物拡散領域を相互に接続する接続部が除去され、
前記単位モニター素子からの前記抵抗領域に対する電気特性測定結果に基づいて、前記イオン注入領域の前記抵抗領域に対するずれの有無を識別できる半導体装置とする。
【発明の効果】
【0010】
イオン注入領域の形成される位置により規定される不純物形成領域の位置ずれを高い精度で検出できる基本ミニター素子からなるアライメント評価用素子を有する半導体装置を提供することができる。そのため、品質ばらつきの少ない半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置に含まれるアライメント評価用素子を構成する単位モニター素子の上面模式図である。(a)は評価対象のイオン注入領域が正常に形成された場合、(b)はイオン注入領域がずれて形成された場合を示す。
【
図2】
図1に示した単位モニター素子の切断線に沿った断面模式図である。(a)は評価対象のイオン注入領域が正常に形成された場合、(b)はイオン注入領域がずれて形成された場合を示す。
【
図3】
図1に示した単位モニター素子におけるポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域との位置関係を示す図である。(a)は評価対象のイオン注入領域が正常に配置された場合、(b)はイオン注入領域がずれて配置された場合を示す。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る単位モニター素子を複数用いたアライメント評価用素子におけるポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域の位置関係を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の変形例を示す図である。
【
図6】
図3に示した単位モニター素子のイオン注入領域を形成するためのフォトレジストの配置例を示す図である。
【
図7】ポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域の間に設けられる間隙を説明するための図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る半導体装置に含まれるアライメント評価用素子を構成する単位モニター素子の上面模式図である。(a)は評価対象のイオン注入領域が正常に形成された場合、(b)はイオン注入領域がずれて形成された場合を示す。
【
図9】
図8に示した単位モニター素子におけるポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域との位置関係を示す図である。(a)は評価対象のイオン注入領域が正常に配置された場合、(b)はイオン注入領域がずれて配置された場合を示す。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る単位モニター素子を複数用いたアライメント評価用素子におけるポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域の位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置に含まれるアライメント評価用素子を構成する単位モニター素子の上面模式図である。(a)は評価対象のイオン注入領域が正常に形成された場合、(b)はイオン注入領域がずれて形成された場合を示している。
【0013】
図1(a)に示すように、単位モニター素子100は、基本的な形状として、第1導電型あるいは不純物を含まないノンドープのポリシリコンからなる矩形の抵抗領域1と抵抗領域1の両端にそれぞれ接して設けられた同じく矩形のポリシリコンからなる一組の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)を有している。一組の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)を結ぶ方向を第1の方向と称する。従って、抵抗領域1は、離間して向き合っている高濃度領域2(2A、2B)に両端を除いて接していない2辺を有し、これら2辺は第1の方向と平行になっている。
第1導電型をN型とすれば、第2導電型はP型となり、反対に、第1導電型をP型とすれば、第2導電型はN型となる。
【0014】
単位モニター素子100は、抵抗領域1と両端の一組の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)との間に、高濃度領域2(2A、2B)にそれぞれ接して、抵抗領域1の表面に互いに前記第1の方向に離間して形成された一組の第2導電型の不純物拡散領域8を有している。単位モニター素子100は、さらに、高濃度領域2(2A、2B)とコンタクト5(5A、5B)を介して接続された導電体からなる測定端子4(4A、4B)を高濃度領域2(2A、2B)の上方に有している。高濃度領域2(2A、2B)と測定端子4(4A、4B)の間には、通常、中間絶縁膜および層間絶縁膜等の複数の絶縁膜が積層されている。
単位モニター素子100は、不純物拡散領域8が抵抗領域1の両端にのみ形成されていて、不純物拡散領域8を形成する第2導電型の不純物のイオン注入が正常に行われた場合を示している。不純物拡散領域8は後に述べる第2導電型の不純物のイオン注入領域の一部として形成される。
抵抗領域1の両端に第2導電型の不純物拡散領域8が形成されるためには、抵抗領域1の不純物濃度を、イオン注入により形成される第2導電型の不純物拡散領域8の不純物濃度よりも低く設定するか、抵抗領域1が不純物を含まないノンドープのポリシリコンとすることが必要である。
【0015】
図1(b)は同じく単位モニター素子110を示しており、不純物拡散領域8を形成するイオン注入が正常に行われなかった場合を示している。単位モニター素子110は
図1(a)に示した単位モニター素子100に対し、一組の不純物拡散領域8を相互に接続している接続部9が抵抗領域1の第1方向の辺に沿って配置されている点で異なっている。接続部9は一組の不純物拡散領域8と同じく第2導電型の不純物がイオン注入されて形成された領域である。その他の構成要素は同一であるので、説明は省略する。
【0016】
図2は、
図1に示した単位モニター素子100、110にそれぞれ記載された切断線に沿った断面模式図である。
【0017】
図2(a)は、単位モニター素子100を切断線AAに沿って、切断した場合の断面模式図であり、評価対象のイオン注入領域が正常に形成された場合を示している。単位モニター素子100は、一般に、半導体基板20の上に設けられたフィールド酸化膜30の表面に配置される。フィールド酸化膜はLOCS酸化膜であっても良い。評価対象のイオン注入領域が正常に形成された場合、抵抗領域1の両端に第2導電型の不純物拡散領域8が相互に離間して形成される。第2導電型の不純物拡散領域8は必ずしも抵抗領域1の表面から裏面に亘る、深さ方向の全域にわたり形成されていない。なお、導電型の不純物拡散領域8を形成するためのイオン注入の条件により抵抗領域1の深さ方向の全域にわたり形成されても良い。
【0018】
以上のように、単位モニター素子100においては、第1導電型あるいは不純物を含まないノンドープのポリシリコンからなる抵抗領域1の両端に位置する第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)は、同じく第2導電型の不純物拡散領域8によって、相互に電気的に接続されていない。そのため単位モニター素子100の両端の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)の間に、測定端子4(4A、4B)から電圧を印加しても、ノンドープである、あるいは、異なる導電型を有する抵抗領域1を横切って電流が流れることはない。
【0019】
図2(b)は、単位モニター素子110を切断線BBに沿って、切断した場合の断面模式図であり、評価対象のイオン注入領域が正常に形成されなかった場合を示している。切断線BBは、接続部9に沿って描かれているので、
図2(b)の断面模式図において単位モニター素子110は、抵抗領域1の両端に位置する第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)は、抵抗領域1の表面から一定の深さまで形成された第2導電型の接続部9により、接続されている。高濃度領域2(2A、2B)と接続部9は、ともに第2導電型であるので、単位モニター素子110の両端の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)の間に、測定端子4(4A、4B)から電圧を印加すると、抵抗領域1を横切って電流が流れることになる。なお、接続部9は第2導電型の不純物拡散領域8を形成するためのイオン注入の条件により抵抗領域1の深さ方向の全域にわたり形成されても良い。
上記説明したように、単位モニター素子100は半導体装置内に設けられるポリシリコンからなる抵抗素子と同様の形状を有しており、測定端子4(4A、4B)の間に電圧を印加して電流が流れるか流れないかを択一的に判断することで、抵抗素子に影響を及ぼす可能性があるイオン注入工程において導入される不純物イオンによる実際の影響の有無を検知することができる。
【0020】
次に、
図3を用いて、評価対象となるイオン注入領域を形成するときの位置のずれによって、抵抗領域1の一辺に沿って接続部9が形成される理由を説明する。
図3は、
図1に示した単位モニター素子におけるポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域との位置関係を示す図である。(a)は評価対象のイオン注入領域が正常に配置された場合、(b)はイオン注入領域がずれて配置された場合を示す。
【0021】
図3(a)は、両端に第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)を有する抵抗領域1に対して、両端の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)の内側となる領域に、第2導電型の不純物拡散領域8を形成するためのイオン注入領域10(10A)が正常に配置された場合の単位モニター素子300を示している。イオン注入領域10(10A)は、抵抗領域1の表面に互いに離間して配置される一組の第2導電型の不純物拡散領域8を形成するためにイオンが注入される二つの領域と、これら二つの領域を互いに連結している連結領域11を有している。
【0022】
不純物拡散領域8を形成するためにイオンが注入される二つの領域は、形成しようとしている不純物拡散領域8の上だけに設けられるのではなく、第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)の一部を覆い、さらにフィールド酸化膜30の上にも拡がっている。連結領域11は、抵抗領域1との間に第1の方向に沿って、所定の大きさを有する間隙12が形成されるように設けられる。この状態では、連結領域11は、フィールド酸化膜30の上にのみ設けられている。単位モニター素子100の電気的特性に影響を及ぼすのはイオン注入領域10(10A)の中で抵抗領域1の上に設けられた部分だけである。高濃度領域2(2A、2B)の不純物濃度に比べイオン注入領域10(10A)の不純物イオンの濃度は低いので、イオン注入領域10(10A)は高濃度領域2(2A、2B)に影響を与えない。フィールド酸化膜30の上に設けられたイオン注入領域10(10A)はフィールド酸化膜30に影響を与えず、単位モニター素子300にも影響を与えることはない。
【0023】
ここで、イオン注入領域10(10A)が正常に配置された場合とは、イオン注入領域10(10A)が抵抗領域1との間に所定の大きさを備えた間隙12を有して形成された状態を指している。イオン注入領域10(10A)が正常に配置された場合、抵抗領域1には両端の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)の内側となる領域に、一組の第2導電型の不純物拡散領域8が離間して形成されるだけである。
【0024】
次に、
図3(b)を用いて、イオン注入領域10(10A)が正常ではなく、ずれて配置された場合について説明する。
図3(b)においては、イオン注入領域10(10A)は、抵抗領域1の上に重なって配置されている。図面上では、イオン注入領域10(10A)が右方向にずれて配置されたため、間隙12は形成されず、抵抗領域1の上にイオン注入領域10(10A)の連結領域11が重なっている。このため不純物イオンは抵抗領域1の第1の方向の一辺に沿って注入され、一組の不純物拡散領域8の間に接続部9を形成する。従って、本来電気的に離間されるはずの両端の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)が電気的に接続されることとなる。
なお、間隙12に設定される所定の大きさとは、不純物拡散領域8の連結領域11が抵抗領域1に向かって第1の方向と垂直な第2の方向に許容される最大量ずれたとしても、抵抗領域1上に接続部9が形成されない大きさのこととする。以下の記述においては、第2の方向を連結領域から抵抗領域に向かう方向とも言うことにする。
【0025】
以上のように、単位モニター素子100は、イオン注入領域10(10A)が抵抗領域1との間に形成する間隙12を狭めるように連結領域から抵抗領域に向かう方向にずれ、抵抗領域1と重なる状態となったことを、接続部9を形成することにより検知することができる。
図1および
図3に即していえば、単位モニター素子100は、イオン注入領域10(10A)の
図1および
図3の紙面における右方向のずれを検知することができる。
【0026】
次に、複数の単位モニター素子により構成される、イオン注入領域の4方向のずれを検知することができるアライメント評価用素子を有する半導体装置について説明する。
【0027】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る単位モニター素子を複数用いたアライメント評価用素子におけるポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域の位置関係を示す図である。
アライメント評価用素子400は、
図3において示した単位モニター素子300を、独立に4つ配置したものである。それぞれの単位モニター素子のイオン注入領域10(10A、10B、10C、10D)において連結領域11から抵抗領域1に向かう方向は異なっており、
図4を示した紙面と平行に上下左右4つの方向となるように配置してある。
【0028】
このような形態となるように配置すると、それぞれの単位モニター素子の両端となる高濃度領域2の間に電圧を印加し、電流が流れるかどうかを判断することにより、イオン注入領域10の4方向のいずれかにおける許容される最大値を超えるずれの有無を検出できることになる。高濃度領域2の間に電流が流れる単位モニター素子があった場合、その単位モニター素子の連結領域11から抵抗領域1に向かう方向のずれが発生していることが検知できる。
なお、
図4に示されたアライメント評価用素子400に含まれる単位モニター素子のうち、複数の単位モニター素子を並列に接続することにより、1度の電流測定により、並列に接続された単位モニター素子が検知できる方向のいずれかの方向の許容される最大値を超えるずれの有無を検知することができる。
【0029】
図5は、
図4に示されたアライメント評価用素子400に含まれる単位モニター素子の変形例を示す図である。
図5に示されたアライメント評価用素子500に含まれる単位モニター素子510、520は、それぞれ抵抗領域の両側に間隙12が形成されるようにイオン注入領域10が配置されている。即ち、並列に接続された2つの単位モニター素子300と同等の機能を有している。単位モニター素子510は
図5の紙面にそった左右のずれを検知することができ、単位モニター素子520は
図5の紙面にそった上下のずれを検知することができる。
【0030】
次に、イオン注入領域とイオン注入領域を決定するフォトレジスとの関係を
図6および
図7を用いて説明する。
【0031】
図6は、
図3に示した単位モニター素子300を形成するためのイオン注入領域10を決定するフォトレジストの形状を単位モニター素子の周囲のみ描いてある。パターニングされたフォトレジスト3は単位モニター素子300を構成する抵抗領域1の中央の部分を覆い、
図6においては左側となる抵抗領域1の一辺に沿って、わずかにはみ出している。このはみ出した部分が基本的に間隙12を形成する。抵抗領域1の両端部および高濃度領域2(2A、2B)の抵抗領域1に連なる部分はフォトレジスト3から露出しており、イオン注入される不純物により形成される不純物拡散領域8が高濃度領域2(2A、2B)と確実に接触するようにしてある。
【0032】
図7は、ポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域の間に設けられる間隙を説明するための図である。
図6における切断線CCに沿った切断面を示している。抵抗領域1はフィールド酸化膜30の表面に配置され、パターニングされたフォトレジスト3が抵抗領域1を覆っている。抵抗領域1の上面に配置されたフォトレジスト3の垂直方向の厚さをT1、抵抗領域1の側面に接しているフォトレジスト3の水平方向の厚さをXとする。
【0033】
図7は不純物イオンが注入方向7に沿って飛来する瞬間を示している。一般に、不純物イオンが飛来する注入方向7は、垂線に対して角度θ傾いている。これは、不純物イオンが結晶の隙間に沿って深くまで注入されてしまうチャネリングを防止するためである。また、イオン注入は、アライメント評価用素子を有する半導体装置が形成される半導体基板を回転させながら行うので、様々な方向から不純物イオンが飛来してくることになる。
【0034】
イオン注入領域10は、パターニングされたフォトレジスト3により形成される領域によって基本的に決定される。そのため、抵抗領域1とイオン注入領域10との間に形成される間隙12の大きさは、抵抗領域1の側面に接しているフォトレジスト3の水平方向の厚さXにより基本的に決定される。しかし、先に述べたように不純物イオンはある角度θ傾いて飛来するので、側面からフォトレジスト3に侵入する。その結果、不純物イオンが注入されないことにより形成される間隙12の大きさはフォトレジスト3の水平方向の厚さXよりも小さくなる。
フォトレジスト3の垂直方向の厚さT1は、不純物イオンがフォトレジスト3を通過して抵抗領域1の上面に到達しないように設定されるので、抵抗領域1の側面に接しているフォトレジスト3の厚さXがT1・tanθ程度あれば不純物イオンは侵入しないと考えられる。
【0035】
さらに、間隙12の大きさは、フォトレジストのずれによりばらつく可能性がある。ばらついても許容される範囲内にあれば、問題なくパターニングできるように、許容できる最大値が設定されているので、それを3σとすると、抵抗領域1の側面に接しているフォトレジスト3の厚さXを、例えば、3σ+T1・tanθと設定しておけば、フォトレジストのずれが許容される範囲内にあれば、不純物イオンは抵抗領域1に達しないので、一組の不純物拡散領域8の間に接続部9を形成することはない。一方、フォトレジスト3の厚さXを減らす方向のフォトレジストのずれが3σを超えると、不純物イオンは抵抗領域1に達し、一組の不純物拡散領域8の間に接続部9を形成することになる。
以上のように設定することで、単位モニター素子により、連結領域11から抵抗領域1に向かう方向の許容される最大値以上のずれを検知することが可能となる。
【0036】
上記のように、第1の実施形態においては、ポリシリコンに対し、評価対象となるイオン注入領域が正常に配置されて形成された場合には測定端子間に電流は流れず、正常に配置されず、大きなずれを伴って形成された場合には測定端子間に電流が流れる単位モニター素子の構成について説明した。次に、第2の実施形態として、ポリシリコンに対し、評価対象となるイオン注入領域が正常に配置されて形成された場合には測定端子間に電流が流れ、正常に配置されず、大きなずれを伴って形成された場合には測定端子間に電流が流れない構成を有する単位モニター素子ついて説明する。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置に含まれるアライメント評価用素子を構成する単位モニター素子の上面模式図である。(a)は評価対象のイオン注入領域が正常に形成された場合、(b)はイオン注入領域がずれて形成された場合を示している。
【0037】
図8(a)に示した単位モニター素子800は、
図1に示した単位モニター素子110と同じ構成を有している。単位モニター素子800は、第1導電型あるいは不純物を含まないノンドープのポリシリコンからなる矩形の抵抗領域1と抵抗領域1の両端にそれぞれ接して設けられた同じく矩形のポリシリコンからなる一組の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)を有している。一組の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)を結ぶ方向を第1の方向と称する。抵抗領域1は、離間して向き合っている高濃度領域2(2A、2B)に両端を除いて接していない2辺を有し、これら2辺は第1の方向と平行になっている。
第1導電型をN型とすれば、第2導電型はP型となり、反対に、第1導電型をP型とすれば、第2導電型はN型となる。
【0038】
単位モニター素子800は、抵抗領域1と両端の一組の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)との間に、高濃度領域2(2A、2B)にそれぞれ接して、抵抗領域1の表面に互いに前記第1の方向に離間して形成された一組の第2導電型の不純物拡散領域8を有している。さらに、一組の不純物拡散領域8を相互に接続している接続部9が抵抗領域1の第1方向の辺に沿って配置されている。そして、高濃度領域2(2A、2B)とコンタクト5(5A、5B)を介して接続された導電体からなる測定端子4(4A、4B)を有している。
単位モニター素子800は、不純物拡散領域8を形成する第2導電型の不純物のイオン注入が正常に行われた場合を示している。不純物拡散領域8は後に述べる第2導電型の不純物のイオン注入領域の一部として形成される。
抵抗領域1の両端の第2導電型の不純物拡散領域8および第2導電型の接続部9が形成されるためには、抵抗領域1の不純物濃度を、イオン注入により形成される第2導電型の不純物拡散領域8の不純物濃度よりも低く設定するか、抵抗領域1が不純物を含まないノンドープのポリシリコンとすることが必要である。
【0039】
図8(b)は同じく単位モニター素子810を示しており、不純物拡散領域8を形成するイオン注入が正常に行われなかった場合を示している。単位モニター素子810は
図8(a)に示した単位モニター素子700に対し、一組の不純物拡散領域8を相互に接続している接続部9が無い点で異なっている。その他の構成要素は同一であるので、説明は省略する。
【0040】
単位モニター素子が正常に形成された場合、単位モニター素子800の両端の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)の間に、測定端子4(4A、4B)から電圧を印加すると、抵抗領域1を横切って電流が流れ、正常に形成されなかった場合、単位モニター素子810の両端の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)の間に、測定端子4(4A、4B)から電圧を印加しても、抵抗領域1に電流は流れないことになる。
上記説明したように、単位モニター素子800は半導体装置内に設けられるポリシリコンからなる抵抗素子と同様の形状を有しており、測定端子4(4A、4B)の間に電圧を印加して電流が流れるか流れないかを択一的に判断することで、抵抗素子に影響を及ぼす可能性があるイオン注入工程において導入される不純物イオンによる実際の影響の有無を検知することができる。
【0041】
次に、
図9を用いて、評価対象となるイオン注入領域を形成するときの位置のずれによって、抵抗領域1の一辺に沿って接続部9が形成されなくなる理由を説明する。
図9は、
図8に示した単位モニター素子におけるポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域との位置関係を示す図である。(a)は評価対象のイオン注入領域が正常に配置された場合、(b)はイオン注入領域がずれて配置された場合を示す。
【0042】
図9(a)は、両端に第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)を有する抵抗領域1に対して、高濃度領域2(2A、2B)の内側となる領域に配置される第2導電型の不純物拡散領域8および離間して配置された不純物拡散領域8を接続している接続部9を形成するためのイオン注入領域10(10A)が正常に配置された場合の単位モニター素子900を示している。イオン注入領域10(10A)は、抵抗領域1の表面に互いに離間して配置される一組の第2導電型の不純物拡散領域8を形成するためにイオンが注入される二つの領域と、これら二つの領域を互いに連結している連結領域11を有している。
【0043】
正常な配置において連結領域11は抵抗領域1と第1の方向と垂直な第2の方向に所定の大きさだけ重なっているので、抵抗領域1の第1方向に平行な一辺に沿って、接続部9が形成される。以下の記述においては、第2の方向を抵抗領域から連結領域に向かう方向とも言うことにする。
ここで、所定の大きさとしては、許容できるずれの最大値を3σ、抵抗領域1の上面に配置されたフォトレジストの垂直方向の厚さをT1、不純物イオンが注入される方向の垂線からの傾きの角度をθとすると、例えば、3σ+T1・tanθと設定すれば、通常の製造工程においては接続部9が形成されることとなる。
【0044】
次に、
図9(b)を用いて、イオン注入領域10(10A)が正常ではなく、ずれて配置された場合について説明する。
図9(b)においては、イオン注入領域10(10A)は、抵抗領域1から離れて配置されている。図面上では、イオン注入領域10(10A)が図面上において左方向にずれて配置されたため、間隙12が形成されている。このため不純物イオンは抵抗領域1の第1の方向の一辺に沿って注入されることはないので、一組の不純物拡散領域8の間に接続部9は形成されない。従って、両端の第2導電型の高濃度領域2(2A、2B)は離間して形成されるので、電気的に接続されることはない。
【0045】
以上のように、単位モニター素子900は、イオン注入領域10(10A)が抵抗領域1との間に形成する接続部9を狭めるように抵抗領域から連結領域に向かう方向にずれ、抵抗領域1と間隙12を有する状態となったことを、測定端子4(4A、4B)から電圧を印加した場合に、抵抗領域1に電流が流れないことにより検知することができる。
図8および
図9に即していえば、単位モニター素子800は、イオン注入領域10(10A)の
図8および
図9の紙面における左方向のずれを検知することができる。
【0046】
次に、複数の単位モニター素子により構成される、イオン注入領域の4方向のずれを検知することができるアライメント評価用素子を有する半導体装置について説明する。
【0047】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る単位モニター素子を複数用いたアライメント評価用素子におけるポリシリコンの抵抗領域とイオン注入領域の位置関係を示す図である。
アライメント評価用素子1000は、
図9において示した単位モニター素子900を、独立に4つ配置したものである。それぞれの単位モニター素子において抵抗領域1からイオン注入領域10(10A、10B、10C、10D)の連結領域11に向かう方向は異なっており、
図10を示した紙面と平行に上下左右4つの方向となるように配置してある。
【0048】
このような形態となるように配置すると、それぞれの単位モニター素子の両端となる高濃度領域2の間に電圧を印加し、電流が流れるかどうかを判断することにより、イオン注入領域10の4方向のいずれかにおける許容される最大値を超えるずれの有無を検出できることになる。高濃度領域2の間に電流が流れない単位モニター素子があった場合、その単位モニター素子の抵抗領域1から連結領域11に向かう方向のずれが発生していることが検知できる。
なお、
図10に示されたアライメント評価用素子1000に含まれる単位モニター素子のうち、複数の単位モニター素子を直列に接続することにより、1度の電流測定により、直列に接続された単位モニター素子が検知できる方向のいずれかの方向の許容される最大値を超えるずれの有無を検知することができる。即ち、電流が流れない場合、いずれかの方向の許容される最大値を超えるずれがあることが検知できる。
【0049】
以上説明したように、本発明によれば、イオン注入領域の形成される位置により規定される不純物形成領域の位置ずれを高い精度で検出できる基本ミニター素子からなるアライメント評価用素子を有する半導体装置を提供することができる。そのため、品質ばらつきの少ない半導体装置とできる。
【符号の説明】
【0050】
1 ポリシリコンの抵抗領域
2、2A、2B ポリシリコンの高濃度領域
3 フォトレジスト
4、4A、4B 測定端子
5、5A、5B コンタクト
7 イオンの注入方向
8 ポリシリコン上の不純物拡散領域
9 接続部
10、10A、10B、10C、10D イオン注入領域
11 連結領域
12 間隙
20 フィールド酸化膜
X 設計上の設定値
T1 ポリシリコン上のフォトレジスト膜厚