(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134181
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】切削用インサート及び刃先交換式回転切削工具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/20 20060101AFI20220908BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20220908BHJP
B23C 5/10 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B23C5/20
B23B27/14 C
B23C5/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033148
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】390002521
【氏名又は名称】ダイジ▲ェ▼ット工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】田原 裕規
【テーマコード(参考)】
3C022
3C046
【Fターム(参考)】
3C022KK12
3C022KK25
3C022LL01
3C046CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】切削用インサートを用いた刃先交換式回転切削工具において、金属部品・金型加工等の被削材に対する切削加工能率を向上させると共に、加工面精度を向上させる。
【解決手段】中心軸Yを中心にして回転する工具本体10の先端部に、切削用インサート20を装着させた刃先交換式回転切削工具1において、切削用インサート20として、被削材の切削を行う切れ刃に、先端側の中心部に凸円弧状になった円弧状底切れ刃21と、円弧状底切れ刃21の端部と正接するようにして円弧状底切れ刃21よりも曲率半径の大きな凸円弧状になった円弧状外周切れ刃22と、円弧状外周切れ刃22の端部と正接するようにして工具本体の中心軸を中心にして回転している状態で中心軸Yに平行な直線状になる直線状外周切れ刃23とを設けた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心にして回転する工具本体の先端部に着脱可能に装着される切削用インサートにおいて、被削材の切削を行う切れ刃として、先端側の中心部に凸円弧状の円弧状底切れ刃と、前記の円弧状底切れ刃の端部と正接するようにして円弧状底切れ刃よりも曲率半径の大きな凸円弧状になった円弧状外周切れ刃と、前記の円弧状外周切れ刃の端部と正接するようにして直線状外周切れ刃とが設けられ、前記の直線状外周切れ刃が、工具本体の中心軸を中心にして回転している状態で中心軸に平行な直線状になることを特徴とする切削用インサート。
【請求項2】
請求項1に記載の切削用インサートにおいて、前記の円弧状底切れ刃の曲率半径R1に対する円弧状外周切れ刃の曲率半径R2の比(R2/R1)が3.75~10の範囲であることを特徴とする切削用インサート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の切削用インサートにおいて、工具本体の中心軸と前記の円弧状底切れ刃と円弧状外周切れ刃とが正接する接点における接線との角度θが8°以上37°以下であることを特徴とする切削用インサート。
【請求項4】
請求項1~請求項3に記載の切削用インサートにおいて、工具本体の中心軸を中心にして回転する直線状外周切れ刃の回転直径Dxに対する円弧状底切れ刃の曲率半径R1の比(R1/Dx)が0.25~0.4、円弧状外周切れ刃の曲率半径R2の比(R2/Dx)が1.5~2.5であることを特徴とする切削用インサート。
【請求項5】
中心軸を中心にして回転する工具本体の先端部に、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の切削用インサートを着脱可能に装着させたことを特徴とする刃先交換式回転切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の切削加工に使用される切削用インサート及び切削用インサートを用いた刃先交換式回転切削工具に関するものである。特に、金属部品や金型等の様々な被削材に対して様々な加工を行うにあたり、切削加工能率を向上させると共に、加工面精度を向上させることができ、例えば、被削材に幅の狭い溝の立壁面等を効率よく切削して、加工面精度のよい切削加工が行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属部品・金型等の被削材に切削加工を行うにあたり、回転する工具本体の先端部に各種の切削用インサートを着脱可能に装着させた刃先交換式回転切削工具が使用されている。
【0003】
そして、このような刃先交換式回転切削工具としては、例えば、特許文献1等に示される刃先交換式ボールエンドミル等が広く利用されている。
【0004】
しかし、従来の刃先交換式ボールエンドミルの場合、被削材を切削させて立壁面加工や底面加工等を行う際に、加工面精度を維持しながら切削加工能率を向上させることが困難であった。
【0005】
すなわち、従来の刃先交換式ボールエンドミルの場合、工具径に対して使用される刃先曲率半径は(工具径/2)となることが基本であり、通常、ピッチに対するカスプハイトが大きくなり、カスプハイトを小さくするには、ピッチを小さく設定する必要があり切削加工能率が悪く、また被削材の底面と立壁面の接続部に形成される凹状の隅部の加工を行う際には、前記の刃先交換式ボールエンドミルを、工具径が小さく曲率半径以下の小径の刃先交換式ボールエンドミルに交換して加工を行う必要があり、加工面精度を維持するためには、切削加工能率が大幅に低下した。
【0006】
また、従来においては、特許文献2に示されるように、中心軸回りに回転させられる工具本体の先端部に板状の切削用インサートを着脱可能に装着させる刃先交換式回転切削工具において、前記の切削用インサートの切れ刃として、前記の中心軸方向の先端に位置して凸円弧状をなす底切れ刃と、前記の底切れ刃の径方向外端に連なり、底切れ刃よりも曲率半径の大きな凸円弧状をなす外周切れ刃とを有し、前記の底切れ刃と前記の外周切れ刃との境界点における接線と、前記中心軸との間に形成される角度が45度未満であり、前記底切れ刃の曲率半径R1が0.3~10mmであり、前記外周切れ刃の曲率半径R2の前記底切れ刃の曲率半径R1に対する比(R2/R1)が3.6~333になった切削用インサート、また前記の外周切れ刃と連なるようにして外周切れ刃よりも曲率半径の小さな凸円弧状をなす接続刃を介して、中心軸に平行に延びる直線刃を設けた切削用インサートを用いるようにしたものが提案されている。
【0007】
しかし、特許文献2に示されるような切削用インサートを工具本体に装着させた刃先交換式回転切削工具を用いて、例えば、被削材における幅の狭い溝の立壁面を切削加工するにあたり、
図1(A)に示すように、前記の曲率半径の大きな凸円弧状になった外周切れ刃を用いて前記の溝の立壁面を切削する場合、切削用インサートにおける前記の外周切れ刃が立壁面に沿うように、この刃先交換式回転切削工具における工具本体の中心軸を立壁面に対して大きく傾けて切削加工を行うことが必要になり、切削している立壁面と反対側における被削材の角部分に工具本体があたってしまい、幅の狭い溝の立壁面を深い位置まで切削加工することができないという問題があった。
【0008】
また、
図1(B)に示すように、前記の工具本体の中心軸を垂直にして前記の溝の立壁面を切削する場合、切削用インサートにおける前記の外周切れ刃等が立壁面と接触する部分が短く、この刃先交換式回転切削工具を垂直方向に送る送りピッチを大きくして切削することができず、幅の狭い溝の立壁面を短時間で効率よく切削加工することができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10-315031号公報
【特許文献2】特許第6278170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、各種の切削加工に使用される切削用インサート及び切削用インサートを用いた刃先交換式回転切削工具における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0011】
すなわち、本発明は、前記のような切削用インサート及び切削用インサートを用いた刃先交換式回転切削工具において、金属部品や金型等の様々な被削材に対して様々な加工を行うにあたり、切削加工能率を向上させると共に、加工面精度を向上させることができ、例えば、被削材に幅の狭い溝の立壁面等を効率よく切削して、加工面精度のよい切削加工が行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明における切削用インサートにおいては、前記のような課題を解決するため、中心軸を中心にして回転する工具本体の先端部に着脱可能に装着される切削用インサートにおいて、被削材の切削を行う切れ刃として、先端側の中心部に凸円弧状の円弧状底切れ刃と、前記の円弧状底切れ刃の端部と正接するようにして円弧状底切れ刃よりも曲率半径の大きな凸円弧状になった円弧状外周切れ刃と、前記の円弧状外周切れ刃の端部と正接するようにして直線状外周切れ刃とが設けられ、前記の直線状外周切れ刃が、工具本体の中心軸を中心にして回転している状態で中心軸に平行な直線状になるようにした。
【0013】
本発明の切削用インサートのように、被削材の切削を行う切れ刃として、先端側の中心部に凸円弧状の円弧状底切れ刃と、前記の円弧状底切れ刃の端部と正接するようにして円弧状底切れ刃よりも曲率半径の大きな凸円弧状になった円弧状外周切れ刃と、前記の円弧状外周切れ刃の端部と正接するようにして直線状外周切れ刃とを設け、前記の直線状外周切れ刃が、工具本体の中心軸を中心にして回転している状態で中心軸に平行な直線状になるようにすると、この切削用インサートを装着させた刃先交換式回転切削工具を用いて、前記のように被削材における幅の狭い溝の立壁面を切削加工するにあたり、前記の直線状外周切れ刃と正接する曲率半径の大きな凸円弧状になった円弧状外周切れ刃を溝の立壁面に沿わせるようにした場合に、前記の工具本体の中心軸を立壁面に対して傾ける角度を小さくすることができ、立壁面を切削している反対側における被削材の角部分に工具本体があたるのが防止され、幅の狭い溝の立壁面を深い位置まで切削加工することができるようになる。
【0014】
また、この刃先交換式回転切削工具における工具本体の中心軸を垂直にして、前記の溝の立壁面を切削する場合には、直線状外周切れ刃とこの直線状外周切れ刃に正接する曲率半径の大きな円弧状外周切れ刃とによって溝の立壁面が切削されるようになり、この刃先交換式回転切削工具を垂直方向に送る送りピッチを大きくしても、加工面精度が低下するのが防止されるようになる。
【0015】
ここで、本発明の切削用インサートにおいては、前記の円弧状底切れ刃の曲率半径R1に対する円弧状外周切れ刃の曲率半径R2の比(R2/R1)が3.75~10の範囲にすることが好ましい。これは、前記の(R2/R1)が3.75未満になると、この切削用インサートを取り付けた刃先交換式回転切削工具がボールエンドミルに近づいて、立壁面等を切削させる際にカスプハイトが生じやすくなる一方、(R2/R1)が10を超えると、切削用インサートの長さが長くなりすぎて刃先交換式回転切削工具の製造や使用が困難になるためである。
【0016】
また、本発明の切削用インサートにおいては、前記の工具本体の中心軸と前記の円弧状底切れ刃と円弧状外周切れ刃とが正接する接点における接線との角度θを8°以上37°以下にすることが好ましい。これは、前記の角度θが37°を超えると、この切削用インサートを取り付けた刃先交換式回転切削工具がボールエンドミルに近づいて、立壁面等を切削させる際にカスプハイトが生じやすくなる一方、前記の角度θが8°未満になると、切削用インサートの長さが長くなりすぎて刃先交換式回転切削工具の製造や使用が困難になるためである。なお、切削用インサートがより適切に長さになるように調整するためには、前記の角度θを17°以上にすることがより好ましい。
【0017】
また、本発明の切削用インサートにおいては、前記の工具本体の中心軸を中心にして回転する直線状外周切れ刃の回転直径Dxに対する円弧状底切れ刃の曲率半径R1の比(R1/Dx)が0.25~0.4、円弧状外周切れ刃の曲率半径R2の比(R2/Dx)が1.5~2.5になるようにすることが好ましい。これは、前記の(R1/Dx)が0.4を超え、また(R2/Dx)が1.5未満になると、この切削用インサートを取り付けた刃先交換式回転切削工具がボールエンドミルに近づいて、立壁面等を切削させる際にカスプハイトが生じやすくなる一方、前記の(R1/Dx)が0.25未満、また(R2/Dx)が2.5を超えるようになると、切削用インサートの長さが長くなりすぎて刃先交換式回転切削工具の製造や使用が困難になるためである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、中心軸を中心にして回転する工具本体の先端部に着脱可能に装着される切削用インサートにおいて、被削材の切削を行う切れ刃として、先端側の中心部に凸円弧状の円弧状底切れ刃と、前記の円弧状底切れ刃の端部と正接するようにして円弧状底切れ刃よりも曲率半径の大きな凸円弧状になった円弧状外周切れ刃と、前記の円弧状外周切れ刃の端部と正接するようにして直線状外周切れ刃とを設け、前記の直線状外周切れ刃が、工具本体の中心軸を中心にして回転している状態で中心軸に平行な直線状になるようにしたため、被削材における幅の狭い溝の立壁面を切削加工するにあたり、前記の直線状外周切れ刃と正接する曲率半径の大きな凸円弧状になった円弧状外周切れ刃を溝の立壁面に沿わせるようにした場合、刃先交換式回転切削工具における工具本体の中心軸を立壁面に対して傾ける角度を小さくでき、立壁面を切削している反対側の部分に工具本体があたるのを防止して、幅の狭い溝の立壁面を深い位置まで切削加工することができるようになる。
【0019】
また、この刃先交換式回転切削工具における工具本体の中心軸を垂直にして前記の溝の立壁面を切削加工する場合には、直線状外周切れ刃とこの直線状外周切れ刃に正接する曲率半径の大きな円弧状外周切れ刃とによって溝の立壁面が切削されるようになり、刃先交換式回転切削工具を垂直方向に送る送りピッチを大きくしても加工面精度が低下するのを防止されるようになる。
【0020】
この結果、本発明における切削用インサートを用いた刃先交換式回転切削工具においては、金属部品や金型等の様々な被削材に対して様々な加工を行うにあたり、切削加工能率を向上させると共に、加工面精度を向上させることができるようになり、例えば、被削材に幅の狭い溝の立壁面等を効率よく切削して、加工面精度のよい切削加工が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来の切削用インサートを工具本体の先端部に取り付けた刃先交換式回転切削工具を使用して被削材における幅の狭い溝の立壁面を切削加工する状態を示し、(A)は曲率半径の大きな凸円弧状をなす外周切れ刃を用いて前記の溝の立壁面を切削する状態を示した概略説明図、(B)は回転切削工具の中心軸を垂直に近い状態にして前記の溝の立壁面を切削する状態を示した概略説明図である。
【
図2】本発明の実施形態における刃先交換式回転切削工具において、工具本体の先端部に、切削用インサートを取り付けた状態を示した概略正面図である。
【
図3】前記の実施形態における刃先交換式回転切削工具において、工具本体の先端部に取り付ける切削用インサートを示した概略正面図である。
【
図4】前記の実施形態における刃先交換式回転切削工具において、前記の切削用インサートを工具本体の中心軸を中心にして回転させた場合における切削用インサートの切れ刃の状態を示した概略説明図である。
【
図5】前記の実施形態に係る刃先交換式回転切削工具において、被削材における幅の狭い溝の立壁面を切削加工するにあたり、切削用インサートにおける曲率半径が大きな円弧状外周切れ刃を前記の溝の立壁面に沿わせて切削加工する状態を示した概略説明図である。
【
図6】前記の実施形態に係る刃先交換式回転切削工具において、被削材における幅の狭い溝の立壁面を切削加工するにあたり、工具本体の中心軸を垂直にして、切削用インサートにおける直線状外周切れ刃とこの直線状外周切れ刃に正接する曲率半径が大きな円弧状外周切れ刃とにより、前記の溝の立壁面を切削加工する状態を示した概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る切削用インサート及び切削用インサートを用いた刃先交換式回転切削工具を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明における切削用インサート及び刃先交換式回転切削工具は、特に下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0023】
この実施形態における刃先交換式回転切削工具1においては、
図2に示すように、中心軸Yを中心にして回転する工具本体10の先端部の取付部11に切削用インサート20を着脱可能に取り付けるようにしている。
【0024】
ここで、前記の切削用インサート20においては、被削材Wの切削を行う切れ刃として、
図3に示すように、前記の工具本体10の中心軸Yの先端側の中心部から両側にそれぞれ、凸円弧状になった円弧状底切れ刃21と、前記の円弧状底切れ刃21の端部と正接するようにして円弧状底切れ刃21よりも曲率半径の大きな凸円弧状になった円弧状外周切れ刃22と、前記の円弧状外周切れ刃22の端部と正接するようにして直線状外周切れ刃23とを設け、またこの切削用インサート20の平坦になった中央部に、この切削用インサート20を前記の工具本体10先端部の取付部11に取り付けるための取付穴24を設けている。
【0025】
そして、この実施形態における刃先交換式回転切削工具1においては、
図2に示すように、前記の切削用インサート20を、中心軸Yを中心にして回転する工具本体10の先端部における取付部11に挟み込むように装着させ、前記の取付部11から取付ネジ12を切削用インサート20に設けた取付穴24に挿入させるようにして、切削用インサート20を工具本体10の先端部における取付部11に挟み込むように固定させている。
【0026】
ここで、前記のように切削用インサート20を工具本体10の先端部に取り付けた状態で、工具本体10の中心軸Yを中心にして刃先交換式回転切削工具1を回転させた場合には、
図4に示すように、切削用インサート20における前記の直線状外周切れ刃23は工具本体10の中心軸Yに平行な直線状になっている。なお、
図3に示す切削用インサート20においては、前記の直線状外周切れ刃23が、工具本体10の中心軸Yに対して平行な直線から僅かに傾斜しているように見えるが、これは切削用インサート20における円弧状底切れ刃21と円弧状外周切れ刃22と直線状外周切れ刃23とが、切削用インサート20の平面に対して傾斜して捩じれるように形成されているためである。
【0027】
また、この実施形態においては、前記の円弧状底切れ刃21の曲率半径R1に対する円弧状外周切れ刃22の曲率半径R2の比(R2/R1)が3.75~10の範囲になるようにしている。これは、前記のように(R2/R1)が3.75未満になると、この切削用インサート20を取り付けた刃先交換式回転切削工具1がボールエンドミルに近づいて、立壁面等を切削させる際にカスプハイトが生じやすくなる一方、(R2/R1)が10を超えると、切削用インサート20の長さが長くなりすぎて刃先交換式回転切削工具1の製造や使用が困難になるためである。
【0028】
また、この実施形態においては、前記の工具本体10の中心軸Yと前記の円弧状底切れ刃21と円弧状外周切れ刃22とが正接する接点Pにおける接線Lとの角度θが8°以上37°以下になるようにしている。これは、前記のようにこの角度θが37°を超えると、この切削用インサート20を取り付けた刃先交換式回転切削工具1がボールエンドミルに近づいて、立壁面等を切削させる際にカスプハイトが生じやすくなる一方、角度θが8°未満になると、切削用インサート20の長さが長くなりすぎて刃先交換式回転切削工具1の製造や使用が困難になるためである。
【0029】
また、この実施形態においては、前記の工具本体10の中心軸Yを中心にして回転する切削用インサート20における直線状外周切れ刃23の回転直径Dxに対する円弧状底切れ刃21の曲率半径R1の比(R1/Dx)が0.25~0.4、円弧状外周切れ刃の曲率半径R2の比(R2/Dx)が1.5~2.5になるようにしている。これは、前記のように(R1/Dx)が0.4を超え、また(R2/Dx)が1.5未満になると、この切削用インサート20を取り付けた刃先交換式回転切削工具1がボールエンドミルに近づいて、立壁面等を切削させる際にカスプハイトが生じやすくなる一方、前記の(R1/Dx)が0.25未満、また(R2/Dx)が2.5を超えると、切削用インサート20の長さが長くなりすぎて刃先交換式回転切削工具1の製造や使用が困難になるためである。
【0030】
そして、このように工具本体10の先端部に前記の切削用インサート20を取り付けた刃先交換式回転切削工具1を用い、金属部品・金型等の被削材Wにおける幅の狭い溝Wxの立壁面Waを切削加工するにあたって、
図5に示すように、前記の切削用インサート20における直線状外周切れ刃23と正接する曲率半径R2の大きい円弧状外周切れ刃22を前記の立壁面Waに沿わせるようにした場合、工具本体10の中心軸Yを垂直方向に対して傾斜させる角度を小さくすることができ、立壁面Waを切削している反対側の被削材Wの部分に工具本体10が衝突しないようにして、幅の狭い溝Wxの立壁面Waを深い位置まで切削加工することができるようになる。
【0031】
また、このように工具本体10の先端部に前記の切削用インサート20を取り付けた刃先交換式回転切削工具1を用い、金属部品・金型等の被削材Wにおける幅の狭い溝Wxの立壁面Waを切削加工するにあたって、
図6に示すように、この刃先交換式回転切削工具1における工具本体10の中心軸Yを垂直にして前記の溝Wxの立壁面Waを切削加工する場合には、切削用インサート20における前記の直線状外周切れ刃23とこの直線状外周切れ刃23に正接する曲率半径R2が大きな円弧状外周切れ刃22とによって溝Wxの立壁面Waが切削されるようになり、刃先交換式回転切削工具1を垂直方向に送る送りピッチを大きくしても、溝Wxの立壁面Waの加工面精度が低下するのを防止できるようになる。
【符号の説明】
【0032】
1 :刃先交換式回転切削工具
10 :工具本体
11 :取付部
12 :取付ネジ
20 :切削用インサート
21 :円弧状底切れ刃
22 :円弧状外周切れ刃
23 :直線状外周切れ刃
24 :取付穴
Dx :直線状外周切れ刃の回転直径
L :接点Pの接線
P :円弧状底切れ刃と円弧状外周切れ刃との接点
R1 :円弧状底切れ刃の曲率半径
R2 :円弧状外周切れ刃の曲率半径
W :被削材
Wa :立壁面
Wx :溝
Y :工具本体の中心軸
θ :中心軸Yと接線Lとの角度