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特開2022-134185メソゲン骨格を有するモノグリシジルエーテル及びその組成物
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  • 特開-メソゲン骨格を有するモノグリシジルエーテル及びその組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134185
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】メソゲン骨格を有するモノグリシジルエーテル及びその組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20220908BHJP
   C08G 59/06 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G59/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033159
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(71)【出願人】
【識別番号】390028897
【氏名又は名称】阪本薬品工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】原田 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】谷畑 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】寺田 恒彦
(72)【発明者】
【氏名】飯原 友
【テーマコード(参考)】
4J036
【Fターム(参考)】
4J036AC00
4J036AC06
4J036AC14
4J036AD08
4J036DA01
4J036DC03
4J036DC10
4J036HA12
4J036KA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】主剤として汎用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など芳香環を有する二官能のグリシジルエーテルに対して作業性を確保することができるとともに、より放熱性の優れた硬化物を与えることができる単官能のグリシジルエーテル及びそれを配合した組成物を提供する。
【解決手段】下記式:

(式中、窒素原子は芳香環のオルト位、メタ位又はパラ位のいずれかに結合しており、Xは、H、CN、F、Cl、Br、I、メトキシ基、エトキシ基から選ばれる1種である。)で表されるメソゲン骨格を有することを特徴とする、モノグリシジルエーテルによる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
(式中、窒素原子は芳香環のオルト位、メタ位又はパラ位のいずれかに結合しており、Xは、H、CN、F、Cl、Br、I、メトキシ基、エトキシ基から選ばれる1種である。)
で表されるメソゲン骨格を有することを特徴とするモノグリシジルエーテル。
【請求項2】
請求項1に記載されたモノグリシジルエーテルと、
【化2】
(Xはハロゲン原子またはC1~C5のアルキル基、aおよびbは置換基Xの個数であって0~4の整数、RはC1からC10のアルキレン基、アルキリデン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子又は原子団の存在しない直接結合を示す。)
で表される芳香環を有するジグリシジルエーテルとを有し、
前記モノグリシジルエーテルの配合割合が30重量%以上であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のエポキシ樹脂組成物と、
アミン類、酸無水物、フェノール類から選ばれる少なくとも1種の硬化剤とから硬化されたエポキシ樹脂硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、メソゲン骨格を有するモノグリシジルエーテルと、そのモノグリシジルエーテルが配合された組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気電子材料としてエポキシ樹脂組成物を設計する際に、基剤として汎用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が作業現場で取り扱いにくいほど粘度が高く又は固形であることから、硬化物に組み込まれる反応性の希釈剤として、単官能又は多官能のグリシジルエーテルが配合されることが知られている。また、そのような単官能のグリシジルエーテルのうち、電気電子材料として使用しうる放熱性を付与するために、芳香環を有するものも知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などの芳香環を有する二官能のグリシジルエーテルに配合する単官能のグリシジルエーテルのうち、芳香環を有するものとして、フェニルグリシジルエーテルなどを配合しうることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-75835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など芳香環を有する二官能のグリシジルエーテルに対して配合しうる単官能のグリシジルエーテルである反応性希釈剤として、芳香環を有するフェニルグリシジルエーテルなどが開示されているが、さらに放熱性の優れた単官能のグリシジルエーテルが求められている。
【0006】
そこで、本件発明では、主剤として汎用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など芳香環を有する二官能のグリシジルエーテルに対して作業現場にて作業性を確保することができるとともに、より放熱性の優れた硬化物を与えることができる単官能のグリシジルエーテル及びそれを配合した組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、
【化1】
(式中、窒素原子は芳香環のオルト位、メタ位又はパラ位のいずれかに結合しており、Xは、H、CN、F、Cl、Br、I、メトキシ基、エトキシ基から選ばれる1種である。)
で表されるメソゲン骨格を有することを特徴とするモノグリシジルエーテルである。
【0008】
〔2〕そして、
前記〔1〕に記載されたモノグリシジルエーテルと、
【化2】
(Xはハロゲン原子またはC1~C5のアルキル基、aおよびbは置換基Xの個数であって0~4の整数、RはC1からC10のアルキレン基、アルキリデン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子又は原子団の存在しない直接結合を示す。)
で表される芳香環を有するジグリシジルエーテルとを有し、前記モノグリシジルエーテルの配合割合が30重量%以上であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
【0009】
〔3〕そして、前記〔2〕に記載のエポキシ樹脂組成物と、アミン類、酸無水物、フェノール類から選ばれる少なくとも1種の硬化剤とから硬化されたエポキシ樹脂硬化物である。
【発明の効果】
【0010】
本件発明によれば、主剤として汎用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など芳香環を有する二官能のグリシジルエーテルに対して作業現場にて作業性を確保することができるとともに、より放熱性の優れた硬化物を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1及び比較例1の硬化物における偏光顕微鏡による写真
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本件発明のメソゲン骨格を有するモノグリシジルエーテル及びその組成物に関する実施形態について詳しく説明する。なお、説明中における範囲を示す表記のある場合は、上限と下限を含有するものである。
【0013】
本件発明において、液晶性を発現するような剛直な部位であるメソゲン骨格を有するモノグリシジルエーテルは、化1の化学式で表されるモノグリシジルエーテルである。化1の化学式で表されるモノグリシジルエーテルを用いることにより、主剤として汎用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など芳香環を有する二官能のグリシジルエーテルと配合したときに、主剤のエポキシ樹脂に含まれる芳香環と相互作用して積み重ねたような配置で安定化して放熱性の優れた硬化物を与えることができる。また、主剤のエポキシ樹脂がビフェニル型エポキシ樹脂であるときには、ビフェニル型エポキシ樹脂の融点が156℃程度と高いことから作業性が好ましくないが、化1の化学式で表される化合物がモノグリシジルエーテルであることから対称性の高いビフェニル型エポキシ樹脂に比べて融点がかなり低いことから、化1の化学式で表される化合物を数十重量%となるように配合することにより、エポキシ樹脂組成物としての融点を数十度程度下げることができるために、作業性を向上することができる。
【化1】
(式中、窒素原子は芳香環のオルト位、メタ位又はパラ位のいずれかに結合しており、Xは、H〔水素〕、CN〔シアノ基〕、F〔フッ素〕、Cl〔塩素〕、Br〔臭素〕、I〔ヨウ素〕、メトキシ基、エトキシ基から選ばれる1種である。)
【0014】
また、化1の化学式で表されるモノグリシジルエーテルにおいて、窒素原子は芳香環のオルト位、メタ位又はパラ位のいずれかに結合していると記載しているとおり、化1の化学式で表されるモノグリシジルエーテルは、窒素原子が芳香環のパラ位に結合している化3の化学式で表されるモノグリシジルエーテル、窒素原子が芳香環のメタ位に結合している化4の化学式で表されるモノグリシジルエーテル、窒素原子が芳香環のオルト位に結合している化5の化学式で表されるモノグリシジルエーテルを含んでいる。なお、化3、化4、化5の化学式で表されるモノグリシジルエーテルにおいて、Xについては化1と同様である。
【化3】
【化4】
【化5】
【0015】
化3において、具体的には、4-ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、4-4’-シアノベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、4-4’-フッ化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、4-4’-塩化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、4-4’-臭化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、4-4’-ヨウ化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、4-4’-メトキシベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、4-4’-エトキシベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテルが好ましい。
【0016】
化4において、具体的には、3-ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、3-4’-シアノベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、3-4’-フッ化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、3-4’-塩化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、3-4’-臭化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、3-4’-ヨウ化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、3-4’-メトキシベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、3-4’-エトキシベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテルが好ましい。
【0017】
化5において、具体的には、2-ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、2-4’-シアノベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、2-4’-フッ化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、2-4’-塩化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、2-4’-臭化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、2-4’-ヨウ化ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、2-4’-メトキシベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル、2-4’-エトキシベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテルが好ましい。
【0018】
化1に含まれる化3、化4、化5のモノグリシジルエーテルは単独又は複数組み合わせて用いることができる。また、化3、化4、化5のモノグリシジルエーテルに含まれる具体的な各化合物も単独又は複数組み合わせて用いることができる。例えば、化3における、4-ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテルと、4-4’-シアノベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテルを組み合わせて用いることもできる。
【0019】
化2の化学式で表されるジグリシジルエーテルは、主剤として汎用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など芳香環を有する二官能のグリシジルエーテルである。
【0020】
化2の化学式で表されるジグリシジルエーテルとして、具体的には、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、4,4’-ビフェニルジイルビス(グリシジルエーテル)<以下、4,4’-ビフェニルジグリシジルエーテルという>、3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジイルビス(グリシジルエーテル)などが好ましい。これらの中でも、放熱性の優れた硬化物を与えることができるため4,4’-ビフェニルジイルビス(グリシジルエーテル)がより好ましい。
【0021】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、化1の化学式で表されるモノグリシジルエーテルと、化2の化学式で表されるジグリシジルエーテルなどが配合された組成物である。化1の化学式で表されるモノグリシジルエーテルは、当該エポキシ樹脂組成物中に、30重量%以上配合されることが好ましく、35~65重量%配合されることがより好ましく、40~60重量%配合されることが最も好ましい。化1の化学式で表されるモノグリシジルエーテルの配合割合がこの範囲であると、作業現場にて作業性を確保させられるとともに、エポキシ樹脂組成物として液晶性を示す温度領域を有することで、より放熱性の優れた硬化物を与えることができる。
【0022】
そして、上述のエポキシ樹脂組成物に対する硬化剤として、アミン類、酸無水物、フェノール類から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。これら硬化剤は、エポキシ樹脂組成物と加熱状況下などにおいて化学反応を起こし、立体的網目構造を有する硬化物を形成する。
【0023】
硬化剤として使用することのできるアミン類として、具体的には、ジエチレントリアミン<DETA>、トリエチレンテトラミン<TETA>、テトラエチレンペンタミン<TEPA>、m- キシレンジアミン<MXDA>、トリメチルヘキサメチレンジアミン<TMD>、2-メチルペンタメチレンジアミン<2-MPMDA>、ジエチルアミノプロピルアミン<DEAPA>、イソフォロンジアミン<IPDA>、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン<1,3-BAC>、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン<PACM>、ノルボルネンジアミン<NBDA>、1,2-ジアミノシクロヘキサン<1,2-DCH>、4,4’-ジアミノジフェニルメタン<DDM>、メタフェニレンジアミン<MPDA>、ジアミノジフェニルスルフォン<DDS>、N-アミノエチルピペラジン<N-AEP>などが好ましい。これらの中でも、放熱性の優れた硬化物を与えることができるため4,4’-ジアミノジフェニルメタン<DDM>がより好ましい。
【0024】
硬化剤として使用することのできる酸無水物として、具体的には、無水フタル酸<PA>、ヘキサヒドロ無水フタル酸<HHPA>、テトラヒドロ無水フタル酸<THPA>、メチルテトラヒドロ無水フタル酸<Me-THPA>、無水マレイン酸、無水コハク酸<SA>、無水ドデシニルコハク酸<DDSA>、無水メチルナジック酸<NMA>、無水ピロメリット酸<PMDA>、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸<Me-HHPA>、無水トリメリット酸<TMA>などが好ましい。これらの中でも、放熱性の優れた硬化物を与えることができるためが無水フタル酸<PA>がより好ましい。
【0025】
硬化剤として使用することのできるフェノール類として、具体的には、ビスフェノールA<BPA>、ヒドロキノン<HQ>、レゾルシノール<RES>、ビスフェノールF<BPF>、ビフェノール<BIP>、テトラブロモビスフェノールA<TBBA>、ナフタレンジオール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂などが好ましい。
【0026】
上述の硬化剤は、1種単独でまたは2種以上のものを組み合わせて用いることができる。硬化物の配合割合は、化1の化学式で表されるモノグリシジルエーテルおよび化2の化学式で表されるジモノグリシジルエーテルを配合したエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して、0.3~1.2当量配合することが好ましい。さらに好ましくは0.5当量~1.1当量である。これにより、未硬化部分が生じにくく、適切な機械的強度を有する硬化物を得ることができる。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂硬化物には、硬化物の物性を損なわない範囲において、上記の成分以外にあらかじめ硬化促進剤を配合しておくことができる。この硬化促進剤を加えることにより、硬化速度を早くすることができ生産性の向上を図ることができる。
【0028】
硬化促進剤として使用することのできる化合物としては特に限定されないが、2-エチル-4-メチルイミダゾール<2E4MZ>、2-フェニルイミダゾール、1-(2- シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール<2E4MZ-CN>、2,4-ジアミノ-6-[2-メチルイミダゾリル-(1)]エチル-s-トリアジン<2MZ-A>、2-フェニルイミダゾリン<2PZL>2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール<TBZ>等のイミダゾール類、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール<DMP-30>、ベンジルジメチルアミン<BDMA>、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7<DBU>等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、三級アミン塩、四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、オクチル酸スズ等の金属塩等の公知の化合物が挙げられる。これら促進剤は硬化に要する時間やポットライフなど樹脂組成物に対する要求に対して適切に選択される。
【0029】
硬化促進剤にも必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、レベリング剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、樹脂粒子、濡れ性改良剤などをあらかじめエポキシ樹脂組成物又は硬化剤に添加しておくことができる。
【実施例0030】
以下、本発明の詳細を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はその要旨を越
えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0031】
<実施例1>
モノグリシジルエーテルとして、4-ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル(表1におけるA1成分)を8.90g(32mmol)、4-4’-シアノベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル(表1におけるA2成分)を4.05g(16mmol)用いて、ジグリシジルエーテルとして、4,4’-ビフェニルジグリシジルエーテルを15.51g(52mmol)用いて、それらをメノウ乳鉢で粉砕して均一に分散し、135℃のホットプレート上にて融解及び5分の脱気を行い、エポキシ樹脂組成物を得た。そして、そのエポキシ樹脂組成物に、4,4’-ジアミノジフェニルメタンを7.48g(エポキシ樹脂組成物のエポキシ当量の0.5倍のアミン当量数に相当)混合して、135℃のホットプレート上にて均一に混合した。その後、そのエポキシ樹脂組成物に、4,4’-ジアミノジフェニルメタンを配合した混合物を、加熱装置に入れ、70℃で2時間加熱し、80℃で2時間加熱し、90℃で2時間加熱し、100℃で2時間加熱し、110℃で2時間加熱することで、最終の硬化物を得た。
【0032】
<比較例1>
モノグリシジルエーテルとして、m-クレジルグリシジルエーテル及びp-クレジルグリシジルの混合物であるm,p-クレジルグリシジルエーテルを7.87g(48mmol)用いた以外は、実施例1と同様にして最終の硬化物を得た。
【0033】
これらの硬化物を用いて、硬化物の放熱性を調べるために、熱伝導率を測定した。熱伝導率は、物質内の熱の流れやすさを示す値であり、対象材料中に定常的な一方向の熱流を作り測定する定常法、または対象材料を非定常的に加熱して温度の時間変化を測定し得られた熱拡散率等の値から算出される非定常法により測定される。このうち、レーザーフラッシュ法などの種々の測定方法がある非定常法が好ましい。非定常法であるレーザーフラッシュ法を用いて、硬化物の熱拡散率、比熱容量、密度から熱伝導率を算出する熱伝導率測定装置(NETZSCH製、品番:LFA447NanoFlash)にて、熱伝導率(W/m・k)をそれぞれ2回測定し、平均の熱伝導率を算出した。この熱伝導率の値が高い方が、熱を伝えやすく放熱性に優れることを意味している。
【0034】
実施例1及び比較例1に関する配合組成及び性能について、表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
また、実施例1及び比較例1の硬化物について、偏光顕微鏡による写真を図1に示す。縮尺はそれぞれの写真に示されたとおりである。
【0037】
表1に示すように、モノグリシジルエーテルとして、4-ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル(表1におけるA1成分)、4-4’-シアノベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル(表1におけるA2成分)を用いることで、m,p-クレジルグリシジルエーテルを用いる系に比べて、エポキシ樹脂組成物の硬化物の熱伝導率が有意差をもって向上していることを確認し、放熱性により優れることが分かった。これは、モノグリシジルエーテルとして、4-ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル(表1におけるA1成分)、4-4’-シアノベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル(表1におけるA2成分)における芳香環が、モノグリシジルエーテルやアミン類の芳香環との相互作用を生じてそれぞれの芳香環が積み重なるようにしてより安定化しているためと考えられる。また、モノグリシジルエーテルであると熱が加えられている硬化の過程で動きやすくモノグリシジルエーテルやアミン類の芳香環と相互作用しやすくなっていることも大きな要因であると考えられる。これらのことは、図1の偏光顕微鏡による写真に示すように、実施例1の硬化物ではとりわけ部分的に結晶化された構造に起因する異方性が確認されることに対して、比較例1の硬化物では異方性が全く見られないことで支持されている。
【0038】
このように、4-ベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル(表1におけるA1成分)、4-4’-シアノベンジリデンアミノフェノールグリシジルエーテル(表1におけるA2成分)などの化合物を含む化1の化学式で表されるモノグリシジルエーテルを用いることにより、主剤として汎用されるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂など芳香環を有する二官能のグリシジルエーテルに対して作業現場にて作業性を確保することができるとともに、より放熱性の優れた硬化物を得られることが分かり、放熱性が求められる電気・電子材料などの分野で有用であることが分かった。
図1