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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134197
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B60N2/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033174
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 健介
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BB03
3B087BC04
3B087BC05
3B087BC07
(57)【要約】
【課題】シートスライド装置の構造を簡略化する。
【解決手段】シートスライド装置1は、ロアレール2と、アッパーレール3と、ロック部材4と、レバー5と、弾性部材6とを備える。レバー5は、操作部51と、操作部51に一体的に接続されたアーム部52と、を備える。弾性部材6は、レバー5の非操作時に、アーム部52よりも下方に間隔をあけて配置されるストッパ部64を有し、レバー5をアッパーレール3に保持する。レバー5は、操作部51側が下方に移動するキャンセル動作時に、アーム部52がストッパ部64に接触することで停止する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床に固定されるロアレールと、
シートに固定される共に、前記ロアレールに対してスライド可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとの相対移動を解除可能にロックするロック部材と、
操作部と、前記操作部に一体的に接続され、前記ロック部材上に配置されるアーム部とを有し、前記操作部を引き上げてロック解除操作を行った際に、前記アーム部によって前記ロック部材を押圧してロック解除を行うレバーと、
前記レバーの非操作時に前記アーム部よりも下方に間隔をあけて配置されるストッパ部を有し、前記レバーを前記アッパーレールに保持する弾性部材と、
を備え、
前記操作部側が下方へ移動する前記レバーのキャンセル動作時に、前記アーム部が前記ストッパ部に接触することで前記レバーは停止する、
シートスライド装置。
【請求項2】
前記アッパーレールは、対向する一対の側壁を備え、各側壁には被係止部が設けられており、
前記弾性部材は、前記被係止部にそれぞれ係止される係止部を備え、前記アッパーレールに両持ち状態で保持される、
請求項1に記載のシートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシートの前後位置を調節するためのシートスライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシートの前後位置を調節し、所定の位置でシートをロックできるシートスライド装置が知られている。図10(a)は、従来のシートスライド装置の一例を示す断面図である。図10(b)は、従来のシートスライド装置の分解斜視図である。なお、図10(b)では、一部の部品を省略している。
【0003】
従来のシートスライド装置100は、主として、ロアレール110と、アッパーレール120と、ロック装置130と、レバー機構140とを備える。シートスライド装置100は、一つのシートに対し左右一対(インナ側とアウタ側)設けられている(ただし、後述するレバー141は、左右一対のシートスライド装置100に共通の部品である)。ロアレール110とアッパーレール120とは、ロック装置130によるロック時には前後方向に相対移動不能であり、ロック解除時には前後方向に相対移動可能になる。ロック装置130は、レバー機構140によりロック解除される。
【0004】
レバー機構140は、レバー141と、レバーブラケット142と、バネブラケット143とを備える。レバー141の一部は、レバーブラケット142上に配置されている。レバーブラケット142の後方側には、ロック装置130を作動させる押圧部142aが設けられている。レバーブラケット142は、突起状の軸部142bを有している。バネブラケット143は、板バネから成り、貫通穴143aを有する。レバーブラケット142の軸部142bは、バネブラケットの貫通穴143aに挿入されると共に、アッパーレール120の側壁に設けられた貫通穴120aに軸支される。
【0005】
搭乗者がレバー141を持ち上げることにより、レバーブラケット142が軸部142bを中心として回転し、押圧部142a側が下がる。押圧部142aがロック装置130に力を及ぼすことにより、ロック装置130がロック解除される。
【0006】
ところで、特許文献1に記載のように、車両衝突時などには、例えばインナ側のアッパーレールに、アッパーレールの後端部を持ち上げようとする荷重が作用することがある。アッパーレールの後端部が持ち上げられると、ロック装置のロックが解除されるおそれがある。
【0007】
そこで、従来のシートスライド装置は、車両衝突時などに意図せずロックが解除されることを防止するために、左右一対のレールのうちの一方が持ち上がった場合、その持ち上がり現象を実質的に打ち消す(キャンセルする)ようにレバーが動作するよう構成されている(このレバーの動作を「キャンセル動作」と表記する)。
【0008】
図10(a)に示すシートスライド装置では、レバー141の前方部分及びレバーブラケット142の前方部分は、ロアレール110の底壁と間隔をあけて配置されている。したがって、レバー141及びレバーブラケット142には、その前方部分が下方に移動するように回転する余地がある。そのため、車両衝突時などに、アッパーレール120の後端部及びロック装置130が持ち上がり、ロック装置130がレバーブラケット142の押圧部142aに接触したとしても、レバーブラケット142の押圧部142aが上方に移動し、レバーブラケット142及びレバー141の前方部分が下方に移動するように、レバーブラケット142及びレバー141が回転することで、ロック装置130によるロック解除が防止できるようになっている。図10(a)に示すシートスライド装置では、キャンセル動作時、レバー141の下方への移動量は、レバーブラケット142のストッパ部142cによって規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015-116998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のシートスライド装置では、レバー機構は多数の部品から構成されているため、構造が複雑になっていた。
【0011】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、シートスライド装置の構造を簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は以下の特徴を有する。
(項目1)
車両の床に固定されるロアレールと、
シートに固定される共に、前記ロアレールに対してスライド可能なアッパーレールと、
前記ロアレールと前記アッパーレールとの相対移動を解除可能にロックするロック部材と、
操作部と、前記操作部に一体的に接続され、前記ロック部材上に配置されるアーム部とを有し、前記操作部を引き上げてロック解除操作を行った際に、前記アーム部によって前記ロック部材を押圧してロック解除を行うレバーと、
前記レバーの非操作時に前記アーム部よりも下方に間隔をあけて配置されるストッパ部を有し、前記レバーを前記アッパーレールに保持する弾性部材と、
を備え、
前記操作部側が下方へ移動する前記レバーのキャンセル動作時に、前記アーム部が前記ストッパ部に接触することで前記レバーは停止する、
シートスライド装置。
【0013】
(項目2)
前記アッパーレールは、対向する一対の側壁を備え、各側壁には被係止部が設けられており、
前記弾性部材は、前記被係止部にそれぞれ係止される係止部を備え、前記アッパーレールに両持ち状態で保持される、
項目1に記載のシートスライド装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシートスライド装置では、操作部とアーム部とが一体的に接続されたレバーによって直接ロック部材をロック解除位置に移動させることができると共に、レバーのキャンセル移動量を規制するストッパ部が弾性部材に設けられているため、従来のシートスライド装置で使用されているレバーブラケットが不要となり、部品数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】シート及びシートスライド装置の概略側面図である。
図2】シートスライド装置の分解斜視図である。
図3図2におけるIII-III線断面図である。
図4】シートスライド装置の組立後の斜視図である。
図5】(a)ロック部材の斜視図、(b)ロック部材の側面図である。
図6】弾性部材の斜視図である。
図7】(a)弾性部材を取り付けたアッパーレールの斜視図、(b)シートスライド装置における弾性部材の拡大底面図である。
図8】(a)レバーの非操作時の断面図、(b)レバーのロック解除操作時の断面図である。
図9】レバーのキャンセル動作時の断面図である。
図10】(a)従来のシートスライド装置の一例を示す断面図、(b)従来のシートスライド装置の一部の構成要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のシートスライド装置について図面を参照しながら説明する。以下で説明する実施形態は、本発明の好ましい一具体例を示すものである。本発明は以下の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。なお、明確性のため、図面において一部の構成要素、及び断面図におけるハッチングを省略することがある。
【0017】
<1 シートスライド装置の全体構造>
図1は、車両のシートS及びシートスライド装置1の概略側面図である。以下では、「車両上下方向」、「車両前後方向」、「車両左右方向(車幅方向)」をそれぞれ単に「上下方向」、「前後方向」、「左右方向」と表記する。
【0018】
シートスライド装置1は、ロアレール2と、アッパーレール3と、ロック部材4と、レバー5と、弾性部材6(図2参照)と、を備える。ロアレール2、アッパーレール3、ロック部材4及び弾性部材6は、一つのシートSに対し、左右一対(すなわち、インナ側とアウタ側に)設けられている。
【0019】
ロアレール2は、ブラケットBを介して車両のフロアに固定される。アッパーレール3は、シートSに固定されると共に、ロアレール2に組み付けられている。ロアレール2とアッパーレール3とは、ロック部材4によって解除可能にロックされている。ロック部材4がロック位置にあるとき、ロアレール2とアッパーレール3とは、前後方向に相対移動不能である。ロック部材4がロック解除位置にあるとき、ロアレール2とアッパーレール3とは、前後方向に相対移動可能である。ロック部材4のロック状態とロック解除状態は、レバー5によって切り替えられる。以下、各構成要素について詳述する。
【0020】
<1-1 ロアレール及びアッパーレール>
主に図2を参照して、ロアレール2について説明する。図2は、シートスライド装置1の分解斜視図である。
【0021】
ロアレール2は、底壁21と、側壁22と、上壁23と、フランジ部24と、を備えた、前後方向に延びる長尺な部材から成る。側壁22、上壁23及びフランジ部24はそれぞれ一対設けられている。ロアレール2は、例えば金属製であり、プレス加工によって一体成形される。
【0022】
底壁21は、前後方向に延びる略平板状である。側壁22は、底壁21の左右両端から、底壁21と略直角を成して上方に延びている。上壁23は、側壁22の上端から他方側の側壁22に向けて延びている。フランジ部24は、上壁23の端部から下方に、側壁22と略平行に延びている。
【0023】
フランジ部24には、複数の切欠き24aが前後方向に間隔をあけて形成されている。複数の切欠き24aを設けることによって、フランジ部24の下端には複数のロック歯24bが形成される。ロック部材4がロック位置に配置されているとき、ロック歯24bは、後述するロック部材4の貫通穴41a(図5(a)参照)内に配置される。
【0024】
次に、主に図2から図4を参照して、アッパーレール3について説明する。図3は、図2のIII-III線断面図である。図4はシートスライド装置1の組立後の斜視図である。なお、図4では内部構造を見やすくするため、一部の構成要素を部分的に省略している。
【0025】
図2に示すように、アッパーレール3は、上壁31と、側壁32と、底壁33と、フランジ部34と、を備えた、前後方向に延びる長尺な部材から成る。アッパーレール3は、例えば金属製であり、プレス加工によって一体成形される。
【0026】
側壁32、底壁33及びフランジ部34はそれぞれ一対設けられている。上壁31は、前後方向に延びる略平板状である。側壁32は、上壁31の左右両端から、上壁31と略直角を成して下方に延びている。底壁33は、側壁32から離れるように、側壁32から斜め上方に向けて延びている。フランジ部34は、側壁32に近づくように底壁33から斜め上方に向けて延びている。
【0027】
図2及び図3に示すように、上壁31には、貫通穴3aが設けられている。図4に示すように、貫通穴31a内には、ロック部材4をアッパーレール3に固定するための固定部材7が挿入される。また、貫通穴31aよりも後方には、下方に突出する突出部31bが設けられている。突出部31bは、例えば、上壁31の一部を切り起こすことにより形成される。レバー5の非操作時には、この突出部31bに、レバー5のアーム部52が接触している(図8(a)参照)。
【0028】
図2及び図3に示すように、各側壁32には、複数の切欠き32aが、前後方向に、ロアレール2の切欠き24aと同じ間隔で形成されている。複数の切欠き32aを設けることにより、各側壁32には、複数のロック歯32bが形成される。ロック部材4がロック位置に配置されているとき、ロック歯32bは、後述するロック部材4の貫通穴41a(図5(a)参照)内に配置される。各側壁32には、後述するロック部材4の凸部44b(図5(a)参照)を圧入するための、上下方向に延びる切欠き32cが設けられている。また、図3に示すように、各側壁32には、弾性部材6を取り付けるための第一被係止部32d及び第二被係止部32eが設けられている。第一被係止部32dは、対向する側壁32側に突出すると共に、前方に延びている。第一被係止部32dは、例えば、側壁32の一部を切り起こすことにより形成された突起である。後述するように、第一被係止部32dには、弾性部材6の第一係止部62が係止される(図7(a)参照)。第二被係止部32eは、側壁32の下部に設けられ、上方に延びる壁部を有する。第二被係止部32eは、例えば、側壁32の一部を切り欠くことにより形成される。後述するように、第二被係止部32eには、弾性部材6の第二係止部63が係止される(図7(a)参照)。
【0029】
ロアレール2とアッパーレール3とは、ロアレール2の一対のフランジ部24間にアッパーレール3の側壁32が配置され、ロアレール2の側壁22とフランジ部24との間に、アッパーレール3のフランジ部34が配置されるように組み立てられる。
【0030】
ロアレール2の底壁21と側壁22との間のコーナ部と、アッパーレール3の底壁33との間には、図2に示すボール等の転動手段8が配置されている。また、ロアレール2の側壁22の上端と、アッパーレール3のフランジ部34の上端との間にも、転動手段8が配置されている。この転動手段8により、ロアレール2とアッパーレール3とは、前後方向に円滑にスライドできるようになっている。
【0031】
<1-2 ロック部材>
主に図4及び図5を参照して、ロック部材4について説明する。図5(a)はロック部材4の斜視図、図5(b)はロック部材4の側面図である。
【0032】
ロック部材4は、バネ鋼などの弾性変形可能な一枚の板材を、例えばプレス加工することにより製造される。図5に示すように、ロック部材4は、ロック片41と、被押圧部42と、二つの延出部43と、二つの立ち上がり部44と、装着部45と、を備える。
【0033】
図5(a)に示すように、ロック片41には、複数の貫通穴41aが前後方向に間隔をあけて設けられている。ロック片41のうち、前後方向において複数の貫通穴41aに隣接する部分は、ロック歯41bとして機能する。ロック部材4がロック位置に配置されているとき、ロアレール2のロック歯24b及びアッパーレール3のロック歯32bは、貫通穴41a内に挿入され、ロック部材4のロック歯41bは、ロアレール2の切欠き24a及びアッパーレール3の切欠き32a内に挿入される。こうして、ロアレール2とアッパーレール3とは前後にスライド不能にロックされる。
【0034】
被押圧部42は、ロック片41の前方に設けられている。被押圧部42上にはレバー5の後端が配置される(図4及び図8(a)参照)。レバー5の操作部51を持ち上げた際(すなわち、ロック解除操作を行った際)に、被押圧部42はレバー5によって下方に押圧される(図8(b)参照)。
【0035】
二つの延出部43は、左右方向に離隔されていると共に、前後方向に延びている。立ち上がり部44は、二つの延出部43のそれぞれの前端から上方に立ち上がる部分である。図5(b)に示すように、立ち上がり部44は、やや後方に傾斜しながら上方に立ち上がっている。図5(a)に示すように、二つの立ち上がり部44は、それらの上部で接続されている。これにより、二つの立ち上がり部44の間には、上方が閉鎖された開口部44aが形成される。後述するように、開口部44aには、レバー5のアーム部52が挿入される(図4参照)。
【0036】
図5(a)に示すように、各立ち上がり部44は、外方に突出する凸部44bを備える。前記の通り、立ち上がり部44は後方に傾斜しながら立ち上がっているため、凸部44bも後方に傾斜している。凸部44bの前後方向における幅(すなわち、凸部44bの上部後端と下部前端との間の距離)は、アッパーレール3の切欠き32cの幅よりも大きくなっている。そのため、凸部44bを切欠き32cに挿入したとき、凸部44bは切欠き32c内に圧入されることになる。凸部44bが切欠き32cに圧入されると、凸部44bの上部後端は切欠き32cの後方側の内面に接触し、凸部44bの下部前端は切欠き32cの前方側の内面に接触する。そして、凸部44bは、切欠き32cの前方及び後方の内面に接触した時点で弾性変形し、前後方向に保持荷重を発生させる。凸部44bはこの保持荷重によって切欠き32c内で固定される。そのため、ロック部材4は負荷が入力されても、前後にガタつくことはない。
【0037】
装着部45は、ロック部材4を固定部材7によってアッパーレール3に固定するための部分である。図5(a)に示すように、装着部45は、固定部材7を挿入するための貫通穴45aを有している。固定部材7は、アッパーレール3の貫通穴31a及びロック部材4の貫通穴45aに挿入される。そして、固定部材7の下部は装着部45にカシメられ、固体部材7の上部はアッパーレール3にカシメられる(図4及び図8(a)参照)。こうして、ロック部材4は、アッパーレール3に固定される。
【0038】
<1-3 レバー及び弾性部材>
主に、図2図4図6図7及び図8(a)を参照してレバー5及び弾性部材6について説明する。図6は弾性部材6の斜視図である。図7(a)は弾性部材6が取り付けられたアッパーレール3の斜視図、図7(b)はシートスライド装置1における弾性部材6の底面図である。なお、図7(a)では、弾性部材6の取付状態を明確にするため、アッパーレール3及び弾性部材6以外の構成要素を省略している。また、図7(b)では、ロアレール2は省略されている。図8(a)はレバー5の非操作時のシートスライド装置1の断面図である。
【0039】
図2に示すように、レバー5は、操作部51と、左右一対のアーム部52と、を備える(図2では、左側のアーム部52を省略している)。一対のアーム部52は、操作部51を介して一体的に接続されている。レバー5は、例えば、一本のパイプをプレス加工することにより一体成形される。アーム部52の下面には、切欠き52aが設けられている。切欠き52aには、レバー5を上方に付勢するための弾性部材6が取り付けられる。
【0040】
弾性部材6は、例えば一本の線状バネを折り曲げることにより構成されている。図6に示すように、弾性部材6は、二つのアーム部61と、二つの第一係止部62と、二つの第二係止部63と、ストッパ部64と、第三係止部65と、を備える。二つのアーム部61は、左右に離隔されていると共に、それぞれ前後方向に延びている。各第一係止部62は、各アーム部61の前端から下方に延びる部分である。図7(a)に示すように、各第一係止部62は、各側壁32の第一被係止部32dに引っ掛けられるようにして係止される。各第二係止部63は、各側壁32に向けて突出する部分である。各第二係止部63は、各側壁32の第二被係止部32eに引っ掛けられるようにして係止される。第二係止部63が側壁32の第二被係止部32eに係止されたとき、弾性部材6は側壁32に両持ち状態で保持される。ストッパ部64は、左右方向に延びると共に、二つの第二係止部63を接続している。図8(a)に示すように、ストッパ部64は、レバー5の非操作時に、レバー5のアーム部52の下に、アーム部52と間隔をあけて配置されている。後述するように、ストッパ部64は、レバー5の操作部51側がキャンセル動作により下方に移動した際に、アーム部52と接触することにより、レバー5の下方への移動を規制する。第三係止部65は、左右方向に延びると共に、二つのアーム部61を接続しており、レバー5の切欠き52aに係止される。
【0041】
図4に示すように、レバー5のアーム部52は、弾性部材6の二つのアーム部61の間、及びロック部材4の開口部44aに挿入され、アーム部52の後端は、ロック部材4の被押圧部42上に配置される。
【0042】
レバー5に係止された弾性部材6はレバー5の重さ(下方荷重)を受け止めることになるが、この下方荷重よりも弾性部材6の上向きの付勢力の方が大きい。つまり、レバー5は、弾性部材6によって上方に付勢されている。したがって、図8(a)に示すように、レバー5の非操作時には、レバー5の前方部分は、ロアレール2の底壁21と間隔をあけて配置される。図8(a)に示すように、アーム部52は、レバー5の非操作時には、アッパーレール3の突出部31bに接触している。アーム部52は、レバー5の非操作時には、ストッパ部64と間隔をあけて配置されている。アーム部52は、レバー5の非操作時には、開口部44aの上縁と接触しているか、あるいは、開口部44aとの間にわずかな隙間を開けて配置されている。後述するように、レバー5は、操作部51を持ち上げた際に(すなわち、ロック解除動作を行った際に)、アーム部52と開口部44aの上縁との接触箇所P1を中心として回転する。
【0043】
<2 ロック解除動作>
主に図8を参照して、シートスライド装置1のロック解除動作について説明する。図8(b)はレバー5のロック解除操作時のシートスライド装置1の断面図である。
【0044】
図8(a)に示す状態から、搭乗者がレバー5の操作部51を持ち上げると、図8(b)に示すように、レバー5は、アーム部52とロック部材4の開口部44aの上縁との接触箇所P1を中心として回転する。つまり、レバー5は、接触箇所P1よりも前方部分が上方に移動し、接触箇所P1よりも後方部分が下方に移動するように回転する。
【0045】
レバー5の回転に伴い、アーム部52の後端が、ロック部材4の被押圧部42を下方に押圧する。これにより、主に延出部43が弾性変形により下方に撓み、その結果、ロック片41が下方に移動する。そして、ロック歯41bが、ロアレール2の切欠き24a内、及びアッパーレール3の切欠き32a内から離脱する。こうして、ロアレール2とアッパーレール3とのロックが解除され、ロアレール2とアッパーレール3とは互いに前後方向にスライド可能になる。
【0046】
レバー5の操作部51に印加された力を除荷すると、レバー5自体の自重、弾性部材6の復元力及びロック部材4の復元力によりレバー5の操作部51が下がり、アーム部52の後端は上昇する。その結果、ロック部材4はその弾性力により元の位置(すなわち、図8(a)の状態)に戻り、ロック歯41bは、切欠き24a及び切欠き32a内に挿入され、ロック歯24b及びロック歯32bは、貫通穴41a内に挿入される。こうして、ロアレール2とアッパーレール3とが前後方向にスライド不能となるようにロックされる。
【0047】
<3 レバーのキャンセル動作>
主に、図8(a)及び図9を参照して、レバー5のキャンセル動作について説明する。図9は、レバー5のキャンセル動作時の断面図である。
【0048】
図8(a)に示すように、レバー5の非操作時において、レバー5のアーム部52とロアレール2の底壁21との間、及び、レバー5のアーム部52とストッパ部64との間には、隙間が存在する。したがって、レバー5には、車両衝突時などに、その前方部分が下方に移動するようにキャンセル動作する余地がある。つまり、車両衝突時などにおいて、例えばインナ側のアッパーレール3の後端部及びロック部材4の後端部が持ち上がり、ロック部材4の被押圧部42がレバー5の後端に接触したとしても、図9に示すように、レバー5は、アーム部52と突出部31bとの接触箇所P2を中心として、レバー5のうち接触箇所P2よりも後方部分が上方に移動し、接触箇所P2よりも前方部分が下方に移動するように回転する。そして、レバー5は、ストッパ部64に接触して停止する。このレバー5のキャンセル動作により、ロック部材4のロック解除を防止でき、ロアレール2とアッパーレール3とのロック状態を維持できる。
【0049】
<4 特徴>
本発明のシートスライド装置1では、弾性部材6に、レバー5のキャンセル移動量を規制するストッパ部64が設けられているため、従来のようなレバーブラケットは不要になり、少ない部品数でシートスライド装置1を構成することができる。
【0050】
また、弾性部材6の二つの第二係止部63がそれぞれアッパーレール3の各側壁32の第二被係止部32eに係止されていることにより、弾性部材6がアッパーレール3に両持ち状態で保持されることになる。これにより、レバー5に乗員の足が当たるなどして、レバー5が押し下げられストッパ部64に荷重が掛かったとしても、ストッパ部64の保持強度を維持できると共に、ストッパ部64の撓みを抑制できる。
【0051】
本発明のシートスライド装置1では、操作部51とアーム部52とが一体的に接続されたレバー5によって直接ロック部材4をロック解除位置に移動させることができる。したがって、レバーの動作をレバーブラケットによってロック装置に伝達する従来の構造と比較して、少ない部品数でシートスライド装置1を構成することができる。
【0052】
また、レバー5は、ロック部材4の開口部44aの上縁(接触箇所P1)を中心として回転し、ロック部材4のロック解除を行う。つまり、レバー5の回転中心はロック部材4に設けられている。したがって、レイアウトを調整時には、ロック部材4のみを前後方向に移動させればレバー5の回転中心も同時に変更されることになるため、レイアウト性が向上する。
【0053】
<5 変形例>
上記実施形態は、シートスライド装置1の好ましい一実施形態を説明するものである。本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。以下では、シートスライド装置1の変形例について説明する。以下で説明する変形例は、適宜組み合わせ可能である。
【0054】
(1)弾性部材6は、線状以外の形状のバネであってもよい。
【0055】
(2)弾性部材6のアーム部61を例えばコイル状にして、レバー5に付勢力を与えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 シートスライド装置
2 ロアレール
3 アッパーレール
32 側壁
32e 第二被係止部(被係止部)
4 ロック部材
5 レバー
51 操作部
52 アーム部
6 弾性部材
63 第二係止部(係止部)
64 ストッパ部
S シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10