(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134206
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】偏心揺動型減速装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033185
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】石田 悠朗
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027FA36
3J027FA37
3J027FA50
3J027FC07
3J027GB03
3J027GC03
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE21
3J027GE25
(57)【要約】
【課題】放熱性に優れる偏心揺動型減速装置を提供する。
【解決手段】偏心揺動する偏心体10Aと、偏心体に配置された偏心体軸受43,44と、偏心体軸受の外周に配置された外歯歯車13a,13bとを備えた偏心揺動型減速装置1において、偏心体の回転軸O1の軸方向から見て偏心体の反偏心側に重心を有するカウンタウエイト18を備え、カウンタウエイトは、偏心体軸受の内輪431,441よりも熱伝導率が高い熱伝導部を含み、熱伝導部は、偏心体軸受の内輪に当接する当接面を有する構成としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心揺動する偏心体と、前記偏心体に配置された偏心体軸受と、前記偏心体軸受の外周に配置された外歯歯車とを備えた偏心揺動型減速装置において、
前記偏心体の反偏心側に重心を有するカウンタウエイトを備え、
前記カウンタウエイトは、前記偏心体軸受の内輪よりも熱伝導率が高い熱伝導部を含み、
前記熱伝導部は、前記偏心体軸受の内輪に当接する当接面を有する
偏心揺動型減速装置。
【請求項2】
前記カウンタウエイトは、前記偏心体軸受の内輪よりも密度が大きい
請求項1に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項3】
前記熱伝導部は、銅系材料である
請求項1又は2に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項4】
前記当接面は、反最大偏心方向において、前記偏心体軸受の内輪の前記カウンタウエイト側の軸方向端面と径方向全域で当接する
請求項1から3のいずれか一項に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項5】
前記当接面を含む前記カウンタウエイトの側面は、反最大偏心方向において、前記偏心体軸受の外輪の前記カウンタウエイト側の軸方向端面と当接しない
請求項4に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項6】
前記カウンタウエイトは、軸方向について前記偏心体軸受の外輪の前記カウンタウエイト側の軸方向端面から離隔し、前記カウンタウエイトの側面よりも径方向外側に延出された延出部を有する
請求項4又は5に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項7】
前記延出部は、前記偏心体軸受の外輪の前記カウンタウエイト側の軸方向端面の径方向内縁部よりも径方向外側に延出されている
請求項6に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項8】
前記偏心体軸受及び前記外歯歯車を複数備え、
前記カウンタウエイトは、二つの前記偏心体軸受の間に配置される
請求項1から7のいずれか一項に記載の偏心揺動型減速装置。
【請求項9】
前記外歯歯車は、第1外歯歯車と、前記第1外歯歯車と一体的に回転可能な第2外歯歯車と、を含み
前記第1外歯歯車と噛合う第1内歯歯車と、
前記第2外歯歯車と噛合う第2内歯歯車と、を備え、
前記第1内歯歯車が固定側に連結され、前記第2内歯歯車が出力側に連結され、
前記第1内歯歯車および前記第2内歯歯車の内歯は、回転可能に支持された回転体である
請求項1から8のいずれか一項に記載の偏心揺動型減速装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏心揺動型減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力軸に設けられた偏心体と、当該偏心体により偏心揺動を行う外歯歯車と、偏心体と外歯歯車の間に設けられた軸受と、外歯歯車に噛み合う内歯歯車とを備えた偏心揺動型減速装置が従来より知られている。この偏心揺動型減速装置は、反偏心側に重心を持つカウンタウエイトを入力軸に装備し、偏心体による重心の偏りを調整し、偏心体の影響を抑制していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の偏心揺動型減速装置は、軸受等において回転時の摩擦損失から熱が発生する場合があり、放熱について改善の余地があった。
【0005】
本発明は、放熱性に優れる偏心揺動型減速装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
偏心揺動する偏心体と、前記偏心体に配置された偏心体軸受と、前記偏心体軸受の外周に配置された外歯歯車とを備えた偏心揺動型減速装置において、
前記偏心体の反偏心側に重心を有するカウンタウエイトを備え、
前記カウンタウエイトは、前記偏心体軸受の内輪よりも熱伝導率が高い熱伝導部を含み、
前記熱伝導部は、前記偏心体軸受の内輪に当接する当接面を有する偏心揺動型減速装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、放熱性に優れる偏心揺動型減速装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る遊星歯車装置を示す断面図である。
【
図2】実施形態の遊星歯車装置を軸方向から見た図である。
【
図3】
図1の遊星歯車装置のB-B線断面図である。
【
図4】
図1の遊星歯車装置のC-C線断面図である。
【
図5】
図1の遊星歯車装置のD-D線断面図である。
【
図6】第1外歯歯車、第1内歯歯車の回転体、第2外歯歯車及び第2内歯歯車の回転体が組み合った構成を示す斜視図である。
【
図7】
図1のカウンタウエイトの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書では、回転軸O1に沿った方向を軸方向、回転軸O1から垂直な方向を径方向、回転軸O1を中心とする回転方向を周方向と呼ぶ。
【0010】
[遊星歯車装置の概略]
図1は、本発明の偏心揺動型減速装置の実施形態に係る遊星歯車装置を示す断面図である。
図1は、
図2のA-A線断面を示す。
図2は、
図1の遊星歯車装置1を軸方向から見た図である。
図3は、
図1の遊星歯車装置のB-B線断面図である。
図4は、
図1の遊星歯車装置のC-C線断面図である。
図5は、
図1の遊星歯車装置のD-D線断面図である。
図6は、第1外歯歯車、第1内歯歯車の回転体、第2外歯歯車及び第2内歯歯車の回転体が組み合った構成を示す斜視図である。
図6は、各歯車の歯数を少なく簡略化した構成を示す。
【0011】
遊星歯車装置1は、図示しないモータ等から入力軸10に入力された回転運動を減速して出力部材52から出力する装置である。遊星歯車装置1は、偏心体10Aを有する入力軸10と、第1外歯歯車13a及び第2外歯歯車13bが設けられた外歯歯車部材13と、カウンタウエイト18と、第1内歯歯車20と、第2内歯歯車30とを備える。さらに、遊星歯車装置1は、第1内歯歯車20と連結された固定部材51、第2内歯歯車30と連結された出力部材52、ケーシング53、主軸受46、第1入力軸受41、第2入力軸受42、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44を備える。
【0012】
[入力軸及び偏心体]
入力軸10は、回転軸O1を中心とする軸部10B、10Cと、回転軸O1から偏心した偏心体10Aとを有する。偏心体10Aは、
図3に示すように、偏心軸O2を中心とする断面が円形の外周面を有する。軸部10B、10Cは、偏心体10Aの軸方向の一方と他方とに位置する。入力軸10は、回転軸O1を中心に回転する。
【0013】
[第1外歯歯車及び第2外歯歯車]
第1外歯歯車13aは、
図5に示すように、回転軸O1に直交する断面の外形がエピトロコイド平行曲線を有する複数の外歯を備える。第1外歯歯車13aの歯丈は、偏心体10Aの偏心量のほぼ二倍かあるいはそれより若干大きく設定されている。
【0014】
第2外歯歯車13bは、
図3に示すように、同様に回転軸O1に直交する断面の外形がエピトロコイド平行曲線を有する複数の外歯を備える。第2外歯歯車13bの歯丈は、偏心体10Aの偏心量のほぼ二倍かあるいはそれより若干大きく設定されている。
【0015】
第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとは、軸方向に間隔を開けて並び、単一の部材により一体的に設けられている。すなわち、単一の部材である外歯歯車部材13の軸方向における一方と他方とに第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとが設けられている。外歯歯車部材13の第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとの間には、これらのピッチ円よりも径の小さい中間部13cが設けられている。なお、第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bと中間部13cとは、別部材で構成され、互いに連結されていてもよい。
【0016】
第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとの歯数は異なり、第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとは一体的に回転する。なお、第1外歯歯車13aと第2外歯歯車13bとの歯数は同数であってもよい。
【0017】
外歯歯車部材13は、軸方向に貫通する貫通孔を有し、貫通孔の内側に第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44が嵌合されている。第1偏心体軸受43は、第1外歯歯車13aの径方向の内方に位置し、第2偏心体軸受44は、第2外歯歯車13bの径方向の内方に位置する。第1偏心体軸受43の内側及び第2偏心体軸受44の内側には、それぞれ、入力軸10の偏心体10Aが嵌合されている。偏心軸O2と第1外歯歯車13aの中心軸と第2外歯歯車13bの中心軸とは同一軸上となる。
【0018】
[第1内歯歯車]
第1内歯歯車20は、第1外歯歯車13aと噛み合う。第1内歯歯車20は、複数の支持ピン21と、複数の回転体22と、複数の支持ピン21を支持する第1支持部51a及び第2支持部51bとを有する。第1支持部51a及び第2支持部51bは、固定部材51の一部であり、単一の部材により一体的に構成されている。なお、第1支持部51aと第2支持部51bとは別体に設けられ、互いに連結されていてもよく、第1支持部51aは第1支持部材と呼んでもよく、第2支持部51bは第2支持部材と呼んでもよい。第1支持部51a、第2支持部51b及び複数の支持ピン21は、第1内歯歯車20において複数の回転体22を支持する支持体に相当する。
【0019】
複数の支持ピン21及び複数の回転体22は、複数の内歯を構成する。回転体22は円筒形状である。複数の回転体22は、それぞれ複数の支持ピン21に軸受(例えばニードル軸受)を介して回転自在に外嵌され、第1外歯歯車13aの外歯と接触する(噛合う)。
【0020】
第1支持部51aは、径方向内方に貫通孔を有する環状(リング状)の形態を有し、貫通孔に第1入力軸受41を介して入力軸10の軸部10Bが内嵌される。第1支持部51aは、複数の支持ピン21を、同一の円周上でかつ周方向に例えば等間隔に並んだ配置で支持する。具体的には、第1支持部51aは、複数の支持ピン21をそれぞれ通す複数のピン孔を有し、複数の支持ピン21の軸方向の一端側がピン孔に締まり嵌めされる。遊星歯車装置1が装置に組み込まれる場合、第1支持部51aは固定部材51と一体的に装置内のベース部材等に固定される(固定側に連結される)。
【0021】
第2支持部51bは、径方向内方に貫通孔を有する環状の形態を有し、貫通孔の内側に外歯歯車部材13の中間部13c及び入力軸10が配置される。第2支持部51bは、第1支持部51aと同様に、複数の支持ピン21を同一の円周上でかつ周方向に例えば等間隔に並んだ配置で支持する。具体的には、第2支持部51bは、複数の支持ピン21をそれぞれ通す複数のピン孔を有し、複数の支持ピン21の軸方向の他端側がピン孔に締まり嵌めされる。第2支持部51bは、
図5に示すように、第1外歯歯車13aを通過可能に山谷が設けられた貫通孔H51を有する。具体的には、貫通孔H51の山部内径は、第1外歯歯車13aの歯先径より小さく、歯底径より大きい。貫通孔H51の谷部(凹部)内径は、第1外歯歯車13aの歯先径より大きい。これにより、装置の径方向寸法の増大を抑制しつつ、第1外歯歯車13aの歯先を谷部に位置させ、歯底を山部に位置させた状態で、第1外歯歯車13aを軸方向に移動させ第1内歯歯車20の内側に容易に組み込むことができる。遊星歯車装置1が装置に組み込まれる場合、第2支持部51bは固定部材51と一体的に装置内のベース部材等に固定される。
【0022】
複数の支持ピン21の軸方向の一端部(反出力側)には、各支持ピン21の径方向に張り出した鍔部21aが設けられ、複数の支持ピン21の軸方向の他端部(出力側)には、止め輪(Eリング、Cリング等)21bが取り付けられている。「出力側」とは、軸方向において出力部材52が配置される側を意味し、「反出力側」とは、軸方向において出力側の反対側を意味する。鍔部21a及び止め輪21bは、支持ピン21が第1支持部51aのピン孔及び第2支持部51bのピン孔から抜けるのを抑止する「抜け止め機構」として機能する。
【0023】
第1支持部51aと各回転体22との間には、滑り部材24が設けられている。同様に、第2支持部51bと各回転体22との間には、滑り部材25が設けられている。滑り部材24、25は、ワッシャ状であり、支持ピン21が通されて位置が規制される。滑り部材24、25は、表面の摩擦係数が回転体22よりも小さく、回転体22と第1支持部51a又は第2支持部51bとが直接擦れ合うことを防止し、これらの部材の摩耗を抑制する。
【0024】
[第2内歯歯車]
第2内歯歯車30は、第2外歯歯車13bと噛み合う。第2内歯歯車30は、複数の支持ピン31と、複数の回転体32と、複数の支持ピン31を支持する第1支持部材34及び第2支持部材35と、複数の補助ピン39とを有する。第1支持部材34、第2支持部材35、複数の支持ピン31及び複数の補助ピン39は、第2内歯歯車30において複数の回転体32を支持する支持体に相当する。
【0025】
複数の支持ピン31及び複数の回転体32は、複数の内歯を構成する。回転体32は、円筒形状である。複数の回転体32は、それぞれ複数の支持ピン31に軸受(例えばニードル軸受)を介して回転自在に外嵌され、第2外歯歯車13bの外歯と接触する(噛合う)。
【0026】
第1支持部材34は、径方向内方に入力軸10及び第2入力軸受42が配置される貫通孔を有する環状の形態を有する。第1支持部材34は、複数の支持ピン31を、同一円周上でかつ周方向に例えば等間隔に並んだ配置で支持する。具体的には、第1支持部材34は、複数の支持ピン31を通す複数のピン孔を有し、複数の支持ピン31の軸方向の一端側がピン孔に締まり嵌めされる。第1支持部材34は、出力部材52(出力側)と連結され、固定部材51及びケーシング53に回転自在に支持される。
【0027】
第2支持部材35は、径方向内方に入力軸10及び外歯歯車部材13の中間部13cが配置される貫通孔を有する環状で、かつ円盤状の形態を有する。第2支持部材35は、第1支持部材34と同様に、複数の支持ピン31を周方向に例えば等間隔に並んだ配置で支持する。具体的には、第2支持部材35は、複数の支持ピン31を通す複数のピン孔を有し、複数の支持ピン31の軸方向の他端側(第1支持部材34の逆側)がピン孔に締まり嵌めされる。第2支持部材35は、
図4に示すように、第2外歯歯車13bを通過可能に山谷が設けられた中央の貫通孔H35を有する。具体的には、貫通孔H35の山部内径は、第2外歯歯車13bの歯先径より小さく、歯底径より大きい。貫通孔H35の谷部(凹部)内径は、第2外歯歯車13bの歯先径より大きい。これにより、装置の径方向寸法の増大を抑制しつつ、第2外歯歯車13bの歯先を谷部に位置させ、歯底を山部に位置させた状態で、第2外歯歯車13bを軸方向に移動させ第2内歯歯車30の内側に容易に組み込むことができる。第2支持部材35は、外歯歯車部材13の中間部13cとケーシング53との間に、これらと間隔をあけて配置される。
【0028】
各支持ピン31の軸方向の一端部(反出力側)には、支持ピン31の径方向に張り出す鍔部31bが設けられ、各支持ピン31の軸方向の他端部(出力側)には、止め輪(Eリング、Cリング等)31aが取り付けられている。鍔部31b及び止め輪31aは、支持ピン31が第1支持部材34のピン孔及び第2支持部材35のピン孔から抜けるのを抑止する「抜け止め機構」として機能する。
【0029】
第1支持部材34と各回転体32との間には、滑り部材36が設けられている。第2支持部材35と各回転体32との間には、滑り部材37が設けられている。滑り部材36、37は、ワッシャ状であり、各支持ピン31が通されて位置が規制される。滑り部材36、37は、表面の摩擦係数が回転体32よりも小さく、回転体32と第1支持部材34又は第2支持部材35とが直接擦れ合うことを防止し、これらの部材の摩耗を抑制する。
【0030】
複数の補助ピン39は、複数の支持ピン31とは周方向に異なる位置に設けられる。具体的には、補助ピン39は、周方向において、支持ピン31と支持ピン31の間に設けられる。また、各補助ピン39は、同一の円周上に配置され、当該円周の径は、各支持ピン31が配置されている円周の径よりも大きい。第1支持部材34と第2支持部材35とは、複数の補助ピン39の一端部と他端部とを通す複数のピン孔を有する。複数の補助ピン39は、第1支持部材34のピン孔と第2支持部材35のピン孔とに、例えば締まり嵌め等により連結される。複数の補助ピン39の連結により、第2支持部材35と第1支持部材34はより強固に連結される。なお、補助ピン39は、内歯として機能しない(内歯を構成しない)。
【0031】
[ケーシング等]
固定部材51は、径方向内方に第1入力軸受41と入力軸10とが配置される貫通孔を有する環状の形態を有し、遊星歯車装置1の反出力側に配置される。固定部材51は、第1内歯歯車20の径方向の外方を覆う。固定部材51は、例えば遊星歯車装置1が組み込まれる装置において、装置内のベース部材等に連結される。これにより、遊星歯車装置1がベース部材に支持される。
【0032】
ケーシング53は、筒状であり、固定部材51に連結され、第2内歯歯車30の径方向の外方を覆う。
【0033】
出力部材52は、径方向内方に入力軸10が通される貫通孔を有する環状の形態を有し、遊星歯車装置1の出力側に配置される。出力部材52には、第2内歯歯車30の第1支持部材34が連結される。さらに、出力部材52は、例えば遊星歯車装置1が組み込まれるシステムにおいて被駆動部材に連結される。
【0034】
[軸受等]
第1偏心体軸受43は、第1外歯歯車13aと偏心体10Aとの間に配置される。第2偏心体軸受44は、第2外歯歯車13bと偏心体10Aとの間に配置される。外歯歯車部材13は、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44を介して偏心軸O2を中心に回転自在な状態で偏心体10Aに支持される。
【0035】
第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44とは、アンギュラ軸受(具体的にはアンギュラ玉軸受)であり、背面合わせで配置されている。第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44は、それぞれ、内輪431,441、外輪432,442及び転動体433,443を有する(
図7参照)。
第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44は、アンギュラ玉軸受に限られず、アンギュラ軸受であればよい。アンギュラ軸受とは、転動体が転走する転走面(軌道面とも言う)が、ラジアル方向から傾斜した方向を向いた軸受を意味し、テーパコロ軸受が含まれる。アンギュラ軸受は、軸受の作用線が軸方向及び径方向に対して傾斜している軸受と表現することもできる。第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44とは、外輪が互いに離れる方向へかつ内輪が互いに近づく方向へ、予圧が付加されている。
【0036】
なお、本明細書中において、軸受の作用線とは、転動体と内輪および外輪との接触部に働く力の合成力が作用する線である。例えば、玉軸受の作用線は、転動体と外輪とが接触する点と転動体と内輪とが接触する点とを通る直線となり、コロ軸受の作用線は、転動体と外輪(又は内輪)とが接触する面(線)の軸方向の中間部で当該面(線)に対して垂直な(直交する)直線となる。
【0037】
第2入力軸受42は、入力軸10の軸部10Cと第2内歯歯車30の第1支持部材34との間に配置される。第1入力軸受41は、入力軸10の軸部10Bと固定部材51との間に配置される。入力軸10は、第1入力軸受41と第2入力軸受42とを介して、固定部材51及び第1支持部材34に回転自在に支持される。
【0038】
第1入力軸受41と第2入力軸受42とは、アンギュラ軸受(具体的にはアンギュラ玉軸受)であり、正面合わせで配置されている。第1入力軸受41と第2入力軸受42とは、アンギュラ玉軸受に限られず、アンギュラ軸受であればよい。第1入力軸受41と第2入力軸受42とは、外輪が互いに近づく方向へかつ内輪が互いに離れる方向へ、予圧が付加されている。なお、第1入力軸受41及び第2入力軸受42は、アンギュラ軸受に限定されるものではなく、各種軸受を使用可能であり、例えば通常の玉軸受でもよい。
【0039】
上記のように、アンギュラ軸受からなる第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44を背面合わせで配置することで、これらの荷重作用線は、軸受から軸受中心軸に向かって広がり、軸受の作用点間距離を大きくできる。これにより、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44を小型化しても許容ラジアル荷重及び許容モーメント荷重を大きくできる。さらに、アンギュラ軸受を背面合わせとすることで、両方向のアキシャル荷重を受けることができ、加えて、予圧が付加されることで、軸受部分の剛性を高めることができる。
さらに、上記のように、正面合わせで配置されたアンギュラ軸受である第1入力軸受41と第2入力軸受42との間に、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44を配置している。これにより、遊星歯車装置1の許容モーメント荷重をより高めることができる。
【0040】
主軸受46は、固定部材51に連結されたケーシング53と、出力部材52に連結された第1支持部材34との間に配置される。出力部材52及び第2内歯歯車30は、主軸受46を介して、固定部材51及びケーシング53に回転自在に支持される。主軸受46は、軸方向から見たときに第1内歯歯車20及び第2内歯歯車30の支持ピン21、31と重なる配置で、かつ、径方向から見たときに第2入力軸受42の中心よりも出力側に配置されている。
【0041】
[カウンタウエイト]
図7はカウンタウエイト18の拡大断面図である。
図1、
図4及び
図7に示すように、カウンタウエイト18は、入力軸10の周囲における、偏心体10Aの偏心側とは逆側(反偏心側)の範囲において、複数のボルト181によって入力軸10の外周に固定される。
なお、遊星歯車装置1において、回転軸O1と偏心軸O2の双方に直交する直線上の一方(回転軸O1に対する偏心軸O2側)を偏心側又は偏心方向とし、他方(偏心軸O2に対する回転軸O1側)を反偏心側又は反偏心方向(反最大偏心方向)とする。なお、「最大偏心方向」とは、回転軸O1を中心とする半径方向であって最も偏心が大きくなる方向(回転軸O1と偏心軸O2に直交し、回転軸O1から偏心軸O2に向かう方向)をいい、「最大偏心方向」とは、最大偏心方向の逆方向(回転軸O1と偏心軸O2に直交し、偏心軸O2から回転軸O1に向かう方向)をいう。
【0042】
カウンタウエイト18は、回転軸O1から偏心して回転運動する偏心体10A、第1偏心体軸受43、第2偏心体軸受44及び外歯歯車部材13と、平衡を図るための重りである。カウンタウエイト18は、軸方向について、第1偏心体軸受43と第2偏心体軸受44との間に配置され、径方向について、外歯歯車部材13の中間部13cと入力軸10との間に配置される。カウンタウエイト18は、回転軸O1回りで回転を行う全体構成の重心位置を回転軸O1上又は回転軸O1に接近させて、偏心した部材が回転運動することで生じる振動等を抑制する。
さらに、カウンタウエイト18は、上記重りとしての機能に加えて、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の排熱機能を有する。
【0043】
カウンタウエイト18は、軸方向から見た形状が、
図4に示すように、回転軸O1を中心とする角度範囲において、反偏心方向を中心に径方向に±90度の範囲を占める略半円筒状の部材である。
【0044】
また、
図7に示すように、カウンタウエイト18の軸方向端面となる第1偏心体軸受43側の側面182は、第1偏心体軸受43の内輪431のカウンタウエイト18側端面との当接面を含む平坦面である。
そして、当該側面182の径方向外縁部(
図7における下端部)の回転軸O1の軸中心からの距離lsは、第1偏心体軸受43の内輪431のカウンタウエイト18側端面の径方向外縁部(
図7における下端部)の軸中心からの距離li以上(ls≧li)とすることが好ましく、本実施形態では、距離lsは距離liよりも大きい場合を例示する。
さらに、当該側面182の径方向外縁部の距離lsは、第1偏心体軸受43の外輪432のカウンタウエイト18側端面の径方向内縁部(
図7における上端部)の軸中心からの距離loよりも小さい(lo>ls)。
従って、カウンタウエイト18の側面182における当接面は、反最大偏心方向において、第1偏心体軸受43の内輪431のカウンタウエイト18側端面と径方向全域で当接する。また、カウンタウエイトの側面182は、反最大偏心方向において、第1偏心体軸受43の外輪432のカウンタウエイト18側端面と当接しない。
【0045】
また、第2偏心体軸受44のカウンタウエイト18側端面における各部の寸法は、第1偏心体軸受43のカウンタウエイト18側端面における各部の寸法と等しい。
そして、カウンタウエイト18の軸方向における第2偏心体軸受44側の側面182と第2偏心体軸受44のカウンタウエイト18側端面における各部の寸法との関係は、第1偏心体軸受43のカウンタウエイト18側端面における各部の寸法の関係と等しくなっている。
【0046】
さらに、カウンタウエイト18は、軸方向について第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44のそれぞれの外輪432,442におけるカウンタウエイト18側端面から離隔し、両側の側面182よりも径方向外側に延出された延出部183を有する。
延出部183は、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の外輪432,442のカウンタウエイト18側端面の径方向内縁部よりも径方向外側に延出されている。
つまり、延出部183の径方向外側先端部(
図7における下端部)の回転軸O1の軸中心からの距離ltは、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の外輪432,442のカウンタウエイト18側端面の径方向内縁部の軸中心からの距離loよりも大きい(lt>lo)。
なお、延出部183の径方向外側先端部は、外歯歯車部材13の中間部13cの径方向内側面に接近しつつも接触しない範囲まで延出されている。
【0047】
また、上述したカウンタウエイト18の両側の側面182と第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の各部の寸法との関係は、回転軸O1を中心とする角度範囲における反偏心方向を中心とした径方向±90度の全範囲(カウンタウエイト18の周方向全体)について同様のことがいえる。
また、上述した延出部183と第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の外輪並びに外歯歯車部材13の中間部13cの各部の寸法との関係は、回転軸O1を中心とする角度範囲における反偏心方向を中心とした径方向±90度の全範囲(カウンタウエイト18の周方向全体)について同様のことがいえる。
【0048】
上記構造からなるカウンタウエイト18は、重りとしての機能と第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44から熱を逃がす機能について性能向上のために、全体的に銅を母材とする銅合金等の銅系材料から構成されている。
一方、偏心体10A、外歯歯車部材13、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44は、いずれも鉄又は鉄を母材とする鉄合金等の鉄系材料から構成されている。
【0049】
鉄の密度は7.4[g/cm3]、熱伝導率は約80[W/m・K]、銅の密度は8.8[g/cm3]、熱伝導率は約400[W/m・K]である。
カウンタウエイト18は、銅系材料から構成されることにより、少なくとも、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の内輪431,441よりも、熱伝導率が高く且つ密度が大きくなっている。
より好ましくは、カウンタウエイト18は、偏心体10A、外歯歯車部材13、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44のいずれよりも熱伝導率が高く、密度が大きくなっている。
【0050】
カウンタウエイト18を鉄系材料と銅系材料とでそれぞれ形成し、各カウンタウエイト18の軸方向幅を等しいものとすると、各カウンタウエイト18の重心位置と回転軸O1からの距離とそれぞれの重量とにより、次式(1)の関係が導かれる。
なお、符号rはカウンタウエイト18の内半径、符号Rは外半径、符号aは密度、添え字fは鉄系材料、添え字cは銅系材料であることを示すものとする。
【0051】
(Rf3-r3)*af=(Rc3-r3)*ac …(1)
【0052】
上式(1)において、鉄系材料の密度afと銅系材料の密度acとは、af<acなので、カウンタウエイト18を銅系材料とした場合の外半径Rcとカウンタウエイト18を鉄系材料とした場合の外半径Rfは、必ず、Rc<Rfとなる。従って、同一の重量であれば、カウンタウエイト18を銅系材料で構成することにより、カウンタウエイト18の外半径を小さくすることができ、小型化を図ることが可能である。
【0053】
また、カウンタウエイト18は、軸方向の両側の側面182の一部が、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の内輪431,441のカウンタウエイト18側端面の反偏心側の半分の範囲と接触する配置となっている。この内輪431,441のカウンタウエイト18側端面の反偏心側の半分の範囲の面積は、内輪431,441の内周面の面積のおよそ20%に相当する。カウンタウエイト18は、当該広面積の当接面を有し、銅系材料による高い熱伝導率を有するので、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44から発生する熱が効率良くカウンタウエイト18に伝わり、良好な排熱を図ることができる。
また、カウンタウエイト18は、その内周面が入力軸10の外周面に接触しているので、カウンタウエイト18は、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44から伝わる熱を効率的に入力軸10側に伝えることができ、さらに良好な排熱を図ることができる。
【0054】
[動作説明]
図6に示すように、第1外歯歯車13a及び第2外歯歯車13bは、偏心された側において、第1内歯歯車20の回転体22(内歯)及び第2内歯歯車30の回転体32(内歯)と噛み合う。すなわち、偏心された側において、外歯の谷間に回転体22、32が位置する。図示しないモータ等から入力軸10に回転運動が入力されると、入力軸10の1回転につき、第1外歯歯車13aと第1内歯歯車20との歯数差分、第1外歯歯車13aが回転(自転)する。このとき、入力軸10の回転に対する第1外歯歯車13aの回転の減速比Aは、{(第1外歯歯車13aの歯数-第1内歯歯車20の歯数)/第1外歯歯車13aの歯数}となる。ここでは、入力軸10の回転方向を正の数で表わしている。
【0055】
さらに、第1外歯歯車13aの回転に対する第2内歯歯車30の回転の減速比Bは、1-{N×(第2内歯歯車30の歯数-第2外歯歯車13bの歯数)/第2内歯歯車30の歯数}となる。
但し、Nは、第1外歯歯車13aが回転軸O1を中心として1回転する間に、第2外歯歯車13bの任意の歯が最も偏心する回数(第1外歯歯車13aを1回転させる入力軸10の回転数+その間の第2外歯歯車13bの回転数(入力軸10の回転方向を負とした回転数))である。
従って、遊星歯車装置1により、トータルの減速比=減速比A×減速比Bの運動が得られる。すなわち、入力軸10の回転運動が、減速比A×減速比Bで減速されて、出力部材52に出力される。トータルの減速比は、例えば、第1外歯歯車13a、第1内歯歯車20、第2外歯歯車13b、第2内歯歯車30の各歯数が{9、10、6、7}であれば1/21となり、各歯数が{11、12、8、9}であれば1/33となる。また、トータルの減速比は、各歯数が{13、14、11、12}であれば1/78となり、各歯数が上述した例のように{13、14、12、13}であれば1/169となる。このように、各歯数の組み合わせにより減速比を大きく変えることができる。また、各歯数の組み合わせにより、細かい幅で減速比を設定することができる。
【0056】
[発明の実施形態の技術的効果]
以上のように、実施形態の遊星歯車装置1によれば、第1内歯歯車20及び第2内歯歯車30は、複数の支持ピン21、31にそれぞれ回転自在に支持された複数の回転体22、32を有する。そして、第1内歯歯車20と第1外歯歯車13aとが噛み合う際、複数の回転体22が第1外歯歯車13aの外周面上を転がる。同様に、第2内歯歯車30と第2外歯歯車13bとが噛み合う際、複数の回転体32は第2外歯歯車13bの外周面上を転がる。したがって、外歯と内歯との滑りのない噛合いにより、高い効率で回転運動を減速し、減速された回転運動を出力することができる。
【0057】
さらに、遊星歯車装置1は、入力軸10の反偏心側に重心を有するカウンタウエイト18が、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の内輪431,441よりも熱伝導率が高い熱伝導部であり、カウンタウエイト18は、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の各内輪431,441に当接する当接面を有する。
このため、遊星歯車装置1の入力軸10の回転時に第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44から生じる熱を効果的にカウンタウエイト18に伝えて、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の排熱を効果的に行うことができる。これにより、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の温度上昇を抑制し、装置の長寿命化を実現することが可能となる。
【0058】
また、カウンタウエイト18は、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の内輪431,441よりも密度が大きいので、カウンタウエイト18と偏心体10Aと内輪431,441の全体的な重心を回転軸O1上とする又は重心を回転軸O1に接近させる重りとしての機能を維持しつつ、カウンタウエイト18の小型化を図ることが可能となる。これにより、遊星歯車装置1の小型化を図ることが可能となる。また、カウンタウエイト18の形状や配置の自由度を向上させることができる。
特に、カウンタウエイト18を銅系材料で構成することで、熱伝導率を高めつつ、密度も大きくすることが可能となる。
これに伴い、カウンタウエイト18が第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44に対する接触面積を縮小することができ、カウンタウエイト18の形状や配置の自由度をさらに向上させることができ、遊星歯車装置1全体の設計の自由度を向上させることが可能となる。
【0059】
また、カウンタウエイト18の側面182の径方向外縁部の回転軸O1からの距離lsを、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の内輪431,441のカウンタウエイト18側端面の径方向外縁部の回転軸O1からの距離li以上としているので、カウンタウエイト18の軸方向に沿った断面積を大きく確保することができ、径方向に小型化を図りつつも必要な重量を確保することができる。
このため、カウンタウエイト18をさらに小型化し、遊星歯車装置1のさらなる小型化を図ることが可能となる。
また、これにより、カウンタウエイト18の側面182に含まれる当接面が、反最大偏心方向において、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の内輪431,441のカウンタウエイト18側の軸方向端面における周方向の半分の範囲(±90°の範囲)と径方向全域で当接する。このため、入力軸10の回転時に第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44から生じる熱を効果的にカウンタウエイト18に伝えて、効率良く放熱を行うことが可能である。
【0060】
また、カウンタウエイト18の側面182の径方向外縁部の回転軸O1からの距離lsを、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の外輪432,442のカウンタウエイト18側端面の径方向内縁部の回転軸O1からの距離loより小さくしている。このため、カウンタウエイト18の側面182は、最大偏心方向において、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の外輪432,442のカウンタウエイト18側の軸方向端面と当接しないので、当接しない分摺動摩擦熱の発生を回避することができる。さらに、カウンタウエイト18の側面182は、最大偏心方向において、第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の外輪432,442のカウンタウエイト18側の軸方向端面と周方向全域において当接しないので、カウンタウエイト18と外輪432,442との接触を回避しつつ、カウンタウエイト18の軸方向に沿った断面積を大きく確保することが可能である。また、当接しないことによる摩擦熱の発生を回避することが可能となる。
【0061】
また、カウンタウエイト18は、軸方向について第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の外輪432,442から離隔し、両側の側面182よりも径方向外側に延出された延出部183を有している。
この延出部183により、カウンタウエイト18の重心を径方向外側に寄せることができるので、カウンタウエイト18の重量を軽減し、小型化を図ることができる。特に、延出部183を第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の外輪432,442の径方向内縁部よりも径方向外側に延出することで、さらなるカウンタウエイト18の小型化を図ることができる。
これらにより、カウンタウエイト18の小型化による遊星歯車装置1のさらなる小型化を図ることが可能となる。
【0062】
また、遊星歯車装置1は、カウンタウエイト18を第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の間に配置しているので、二つの偏心体10Aの間で全体の重心位置を効果的に調整することができ、偏心による振動等をより効果的に抑制することができる。
また、カウンタウエイト18が第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の排熱を行うことが可能となる。
【0063】
また、遊星歯車装置1は、外歯歯車として、第1外歯歯車13aと、当該第1外歯歯車13aと一体的に回転可能な第2外歯歯車13bとを有し、第1外歯歯車13aと噛合う第1内歯歯車20と、第2外歯歯車13bと噛合う第2内歯歯車30とを備え、第1内歯歯車20が固定側に連結され、第2内歯歯車30が出力側に連結されている。
このような遊星歯車装置1は、第1内歯歯車20と第1外歯歯車13aの歯数比、第2内歯歯車30と第2外歯歯車13bの歯数比の組み合わせに応じて、多種の減速比を実現することが可能となる。
さらに、第1内歯歯車20および第2内歯歯車30の内歯は、回転可能に支持された回転体22,32で構成されている。
このため、回転体22,32の回転により歯面の摺動を抑えて摩擦損失を低減し、高効率の動力伝達を実現することが可能となる。
【0064】
[その他]
以上、本発明の各実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られるものではない。例えば、実施形態において、単一の部材により一体的に形成された構成要素は、複数の部材に分割されて互いに連結又は固着された構成要素に置換してもよい。また、複数の部材が連結されて構成された構成要素は、単一の部材により一体的に形成された構成要素に置換してもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
また、上記実施形態では、カウンタウエイト18全体が、熱伝導率が高い材料(銅系材料)で構成され、カウンタウエイト18全体が熱伝導部である場合を例示した。しかし、これに限らず、カウンタウエイト18の一部分を熱伝導率が高い材料で構成し、当該一部分を熱伝導部としても良い。
その場合、少なくとも、カウンタウエイト18の両側の側面182における第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の内輪431,441との当接面を熱伝導率が高い材料で構成した熱伝導部とすることが好ましい。
さらに、カウンタウエイト18と入力軸10との当接面も熱伝導率が高い材料で構成した熱伝導部とすることがより好ましい。さらにこの場合、カウンタウエイト18の両側の側面182における第1偏心体軸受43及び第2偏心体軸受44の内輪431,441との当接面からカウンタウエイト18と入力軸10との当接面との間の熱伝導経路も熱伝導率が高い材料で構成した熱伝導部とすることがさらに好ましい。
【0066】
また、上記実施形態では、偏心揺動型減速装置からなる遊星歯車装置1を例示したが、偏心揺動型減速装置は、上記に限らず、カウンタウエイトを搭載するあらゆる偏心揺動型減速装置について、カウンタウエイト18の特徴的構成を適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 遊星歯車装置(偏心揺動型減速装置)
10 入力軸
10A 偏心体
10B、10C 軸部
13 外歯歯車部材
13a 第1外歯歯車(外歯歯車)
13b 第2外歯歯車(外歯歯車)
13c 中間部
18 カウンタウエイト
20 第1内歯歯車(内歯歯車)
21、31 支持ピン
22、32 回転体(内歯)
24、25 滑り部材
30 第2内歯歯車(内歯歯車)
43 第1偏心体軸受
431,441 内輪
432,442 外輪
433,443 転動体
44 第2偏心体軸受
46 主軸受
51 固定部材
52 出力部材
53 ケーシング
182 側面
183 延出部
ac,af 密度
li,lo,ls,lt 距離
O1 回転軸
O2 偏心軸