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特開2022-134210引抜スラリー濃度制御装置及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134210
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】引抜スラリー濃度制御装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20220908BHJP
   B01D 21/06 20060101ALI20220908BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
B01D21/30 K
B01D21/06 A
B01D21/24 G
B01D21/24 H
B01D21/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033190
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】521091022
【氏名又は名称】株式会社伊藤プランテック
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信輔
(72)【発明者】
【氏名】水谷 正人
(57)【要約】
【課題】シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれる引抜スラリーの濃度を最適な範囲に安定化させ、確実に高濃度スラリーを得ることができる引抜スラリー濃度制御装置を提供する。
【解決手段】引抜スラリー濃度制御装置1は、引抜モータ負荷検知部4bで検知された負荷を取得する負荷情報取得部11と、負荷情報取得部11で取得された負荷に基づいて引抜ポンプ4の動作を判定する判定部12と、判定部12の判定に基づいて引抜モータ制御部4cを制御する制御部13と、を備える。この構成により、シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれる引抜スラリーの濃度を最適な範囲に安定化させ、確実に高濃度スラリーを得ることができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれるスラリーの濃度を制御する引抜スラリー濃度制御装置であって、
前記シックナー装置は、
スラリーの沈降分離処理を行うための沈降槽である前記シックナータンクと、
前記シックナータンクの底部に沈積したスラリーを前記シックナータンクの底部中央に集めるために回転する集泥羽根たるレーキと、
前記レーキを回転駆動させる駆動部と、
前記シックナータンクの底部中央に沈殿したスラリーを引抜口から取り出す引抜ポンプと、を備え、
前記引抜ポンプは、
引抜モータと、
当該引抜モータの負荷を検知する引抜モータ負荷検知部と、
前記引抜モータを制御する引抜モータ制御部と、を備え、
前記引抜スラリー濃度制御装置は、
前記引抜モータ負荷検知部で検知された負荷を取得する負荷情報取得部と、
前記負荷情報取得部で取得された負荷に基づいて前記引抜ポンプの動作を判定する判定部と、
前記判定部の判定に基づいて前記引抜モータ制御部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする引抜スラリー濃度制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値未満に達した状態が所定期間以上継続する場合に、前記引抜ポンプを予め定められた期間において待機させる長期待機モードに移行すると判定する一方、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値以上である場合又は当該閾値未満に達した状態が所定期間未満となる場合に、前記引抜ポンプの動作と停止とを繰り返す間欠動作を行うと判定する、ことを特徴とする請求項1記載の引抜スラリー濃度制御装置。
【請求項3】
前記駆動部は、
前記レーキを回転させるためのレーキ回転用モータと、
前記レーキ回転用モータの負荷を検知するレーキ回転用モータ負荷検知部と、
前記レーキ回転用モータを制御するレーキ回転用モータ制御部と、を備え、
前記判定部は、さらに、前記レーキ回転用モータ負荷検知部で検知された負荷が所定の許容値の範囲内の場合に前記引抜ポンプの駆動を許可する、ことを特徴とする請求項2記載の引抜スラリー濃度制御装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記レーキ回転用モータ負荷検知部で検知された負荷が警告アラートを発令する第一警告レベル又は前記レーキの回転を停止させる第二警告レベルとなるか否かの判定を行い、
前記制御部は、前記第二警告レベルと判定される場合には前記駆動部の動作を停止するように前記レーキ回転用モータを停止制御する、ことを特徴とする請求項3記載の引抜スラリー濃度制御装置。
【請求項5】
シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれるスラリーの濃度を制御する引抜スラリー濃度制御方法であって、
前記シックナー装置は、
スラリーの沈降分離処理を行うための沈降槽である前記シックナータンクと、
前記シックナータンクの底部に沈積したスラリーを前記シックナータンクの底部中央に集めるために回転する集泥羽根たるレーキと、
前記レーキを回転駆動させる駆動部と、
前記シックナータンクの底部中央に沈殿したスラリーを引抜口から取り出す引抜ポンプと、を備え、
前記引抜ポンプは、
引抜モータと、
当該引抜モータの負荷を検知する引抜モータ負荷検知部と、
前記引抜モータを制御する引抜モータ制御部と、を備え、
前記引抜スラリー濃度制御方法は、
前記引抜モータ負荷検知部で検知された負荷を取得する負荷情報取得ステップと、
前記負荷情報取得ステップで取得された負荷に基づいて前記引抜ポンプの動作を判定する判定ステップと、
前記判定ステップの判定に基づいて前記引抜モータ制御部を制御する制御ステップと、を含むことを特徴とする引抜スラリー濃度制御方法。
【請求項6】
前記判定ステップにおいては、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値未満に達した状態が所定期間以上継続する場合に、前記引抜ポンプを予め定められた期間において待機させる長期待機モードに移行すると判定する一方、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値以上である場合又は当該閾値未満に達した状態が所定期間未満となる場合に、前記引抜ポンプの動作と停止とを繰り返す間欠動作を行うと判定する、ことを特徴とする請求項5記載の引抜スラリー濃度制御方法。
【請求項7】
シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれるスラリーの濃度を制御する引抜スラリー濃度制御装置に用いるプログラムであって、
前記シックナー装置は、
スラリーの沈降分離処理を行うための沈降槽である前記シックナータンクと、
前記シックナータンクの底部に沈積したスラリーを前記シックナータンクの底部中央に集めるために回転する集泥羽根たるレーキと、
前記レーキを回転駆動させる駆動部と、
前記シックナータンクの底部中央に沈殿したスラリーを引抜口から取り出す引抜ポンプと、を備え、
前記引抜ポンプは、
引抜モータと、
当該引抜モータの負荷を検知する引抜モータ負荷検知部と、
前記引抜モータを制御する引抜モータ制御部と、を備え、
前記プログラムは、
前記引抜モータ負荷検知部で検知された負荷を取得する負荷情報取得ステップと、
前記負荷情報取得ステップで取得された負荷に基づいて前記引抜ポンプの動作を判定する判定ステップと、
前記判定ステップの判定に基づいて前記引抜モータ制御部を制御する制御ステップと、を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
前記判定ステップにおいては、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値未満に達した状態が所定期間以上継続する場合に、前記引抜ポンプを予め定められた期間において待機させる長期待機モードに移行すると判定する一方、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値以上である場合又は当該閾値未満に達した状態が所定期間未満となる場合に、前記引抜ポンプの動作と停止とを繰り返す間欠動作を行うと判定する、ことを特徴とする請求項7記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シックナー装置から引き抜かれるスラリー(泥漿)の濃度を安定化させる引抜スラリー濃度制御装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場排水中の懸濁体を比重差で分離する沈殿分離装置としてシックナー装置が広く用いられている。このシックナー装置の目的は排水中に含まれる粒子を凝集させて沈降させることにより、高濃度スラリーを得ることである。
【0003】
ここで、一般的なシックナー装置の全体の動作に関して図6を参照しながら説明する。最初に、砂利・砕石工事において発生した原水(濁水)や工場排水が集められて、溶解された凝集剤61と混合される。次に、混合液がシックナー装置6に備わるシックナータンク62(一般的に直径8~20m、高さ4.5~6m程度の大きさ)内に投入される。
【0004】
シックナータンク62では、投入された懸濁体(スラリー)が周辺に向かって流れていく間に固体粒子は沈降分離され、清澄になった液は上面よりオーバーフローして流れる。一方、底部に沈積したスラリーは回転するレーキ(集泥羽根)によって底部中央に集められ,引抜口からポンプ63などを用いて取り出される。その後、引き抜かれた高濃度スラリーは、中間スラリータンク64で貯留され、フィルタープレス装置65で濾過脱水により固液分離され、濾過された水分(ろ液)は返送配管66を介してシックナータンク62へ返送される。一方、濾過後の脱水ケーキ67は再利用又は廃棄物として廃棄される。
【0005】
シックナータンク62から高濃度スラリーを引き抜くための引抜口はシックナータンク62の底面中央部に配置され、沈降させた泥を集めるためにレーキが常時回転している。シックナー装置6には、一般的に中央部にレーキの回転手段として駆動部(減速機付き電動モーター)が配置されており、センター軸に取り付けられたレーキが回転する。そして、作業員の集泥作業のタイミングに合わせて、スラリー用の引抜ポンプの運転、停止を設定された時間繰り返して高濃度スラリーを引抜いている。
【0006】
シックナータンク62の底部から引き抜かれるスラリー濃度を所定範囲内にすることは後の固液分離処理において極めて重要である。そして、引抜スラリー濃度が適切な範囲内か否かを判定するため、従来より、ロードセル等機械的及び電流値検知等を用いて駆動部の負荷を電気的に検知する方法が知られている。一般的にこの駆動部の負荷の値に比例して、引き抜かれるスラリー濃度が高濃度になる傾向があるためである。
【0007】
また、引抜ポンプ63のモータ負荷電流値を見て、スラリーの濃度を判断する方法も知られている。そして、作業員は引抜始めてしばらくの間、引抜ポンプ63の電流値が低い場合は直ちにポンプの運転を停止し、電流値が高ければ設定された時間引抜続けるという判断を行う。その他、沈降濃縮スラリーの高さを直接検知する方法や、濃度測定のためのスラリー引抜ポンプを別に付けて常時引抜を行う方法なども知られている。
【0008】
ところで、湿式製錬方法において、固液分離工程のようなシックナーを含む工程で、シックナー底部から、スラリー濃度の高い濃縮スラリーを得ることのできるシックナー及びその管理方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6146503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の引抜スラリー濃度の検知する方法には依然として問題点がある。そのことを以下詳述する。
【0011】
第一の問題点として、上記のレーキの駆動部の負荷を検知する方法では、レーキの下に潜っている流動性の低いスラリーに対しては負荷が上がらないという傾向がある。このため、シックナータンク62の底部に沈殿し、且つレーキの下に潜っているスラリー濃度が非常に濃くなったとしても駆動部の負荷が上がらないという問題がある。
【0012】
第二の問題点として、上記の引抜ポンプ63の負荷を単に検知する方法では、スラリーが薄い状態で引抜を一旦停止したとしても、その後比較的に直ぐに引抜ポンプ63の運転、停止の制御を細かく繰り返している。このために、濃度の薄いスラリーが大量に引き抜かれることが度々生じて問題となっている。
【0013】
第三の問題として、薄いスラリーが引かれることを嫌い、作業者が生産の状況を見て、引抜ポンプ63の運転を一旦止めた場合、この停止期間に、例えば高濃度スラリーの生産量が増えている場合もある。この場合には、引き抜く必要があったにも関わらず長期間運転しなかったために必要以上にスラリー濃度が濃くなるという問題が生じる。そして、スラリー濃度が必要以上に濃くなり過ぎるとスラリーの流動性が落ち、この場合には逆に引抜ポンプ63の電流値は低く出てしまう。すなわち、この状態から自動運転を開始してしまうとスラリー濃度が必要以上に濃くなっていたにも関わらず引抜スラリーの濃度が薄いと判断して引抜を停止してしまう。そして、これらの誤りを繰り返すと最悪の場合、シックナー装置の停止、泥のあふれ出しの可能性があり、生産停止をせざるを得ない状況が起き得る。
【0014】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれる引抜スラリーの濃度を最適な範囲に安定化させ、確実に高濃度スラリーを得ることができる引抜スラリー濃度制御装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれるスラリーの濃度を制御する引抜スラリー濃度制御装置であって、前記シックナー装置は、スラリーの沈降分離処理を行うための沈降槽である前記シックナータンクと、前記シックナータンクの底部に沈積したスラリーを前記シックナータンクの底部中央に集めるために回転する集泥羽根たるレーキと、前記レーキを回転駆動させる駆動部と、前記シックナータンクの底部中央に沈殿したスラリーを引抜口から取り出す引抜ポンプと、を備え、前記引抜ポンプは、引抜モータと、当該引抜モータの負荷を検知する引抜モータ負荷検知部と、前記引抜モータを制御する引抜モータ制御部と、を備え、前記引抜スラリー濃度制御装置は、前記引抜モータ負荷検知部で検知された負荷を取得する負荷情報取得部と、前記負荷情報取得部で取得された負荷に基づいて前記引抜ポンプの動作を判定する判定部と、前記判定部の判定に基づいて前記引抜モータ制御部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、前記引抜スラリー濃度制御装置において前記判定部は、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値未満に達した状態が所定期間以上継続する場合に、前記引抜ポンプを予め定められた期間において待機させる長期待機モードに移行すると判定する一方、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値以上である場合又は当該閾値未満に達した状態が所定期間未満となる場合に、前記引抜ポンプの動作と停止とを繰り返す間欠動作を行うと判定することが好ましい。
【0017】
また、前記引抜スラリー濃度制御装置において前記駆動部は、前記レーキを回転させるためのレーキ回転用モータと、前記レーキ回転用モータの負荷を検知するレーキ回転用モータ負荷検知部と、前記レーキ回転用モータを制御するレーキ回転用モータ制御部と、を備え、前記判定部は、さらに、前記レーキ回転用モータ負荷検知部で検知された負荷が所定の許容値の範囲内の場合に前記引抜ポンプの駆動を許可することが好ましい。
【0018】
また、前記引抜スラリー濃度制御装置において前記判定部は、前記レーキ回転用モータ負荷検知部で検知された負荷が警告アラートを発令する第一警告レベル又は前記レーキの回転を停止させる第二警告レベルとなるか否かの判定を行い、前記制御部は、前記第二警告レベルと判定される場合には前記駆動部の動作を停止するように前記レーキ回転用モータを停止制御することが好ましい。
【0019】
上記目的を達成するために本発明は、シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれるスラリーの濃度を制御する引抜スラリー濃度制御方法であって、前記シックナー装置は、スラリーの沈降分離処理を行うための沈降槽である前記シックナータンクと、前記シックナータンクの底部に沈積したスラリーを前記シックナータンクの底部中央に集めるために回転する集泥羽根たるレーキと、前記レーキを回転駆動させる駆動部と、前記シックナータンクの底部中央に沈殿したスラリーを引抜口から取り出す引抜ポンプと、を備え、前記引抜ポンプは、引抜モータと、当該引抜モータの負荷を検知する引抜モータ負荷検知部と、前記引抜モータを制御する引抜モータ制御部と、を備え、前記引抜スラリー濃度制御方法は、前記引抜モータ負荷検知部で検知された負荷を取得する負荷情報取得ステップと、前記負荷情報取得ステップで取得された負荷に基づいて前記引抜ポンプの動作を判定する判定ステップと、前記判定ステップの判定に基づいて前記引抜モータ制御部を制御する制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0020】
また、前記引抜スラリー濃度制御方法の前記判定ステップにおいては、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値未満に達した状態が所定期間以上継続する場合に、前記引抜ポンプを予め定められた期間において待機させる長期待機モードに移行すると判定する一方、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値以上である場合又は当該閾値未満に達した状態が所定期間未満となる場合に、前記引抜ポンプの動作と停止とを繰り返す間欠動作を行うと判定することが好ましい。
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれるスラリーの濃度を制御する引抜スラリー濃度制御装置に用いるプログラムであって、前記シックナー装置は、スラリーの沈降分離処理を行うための沈降槽である前記シックナータンクと、前記シックナータンクの底部に沈積したスラリーを前記シックナータンクの底部中央に集めるために回転する集泥羽根たるレーキと、前記レーキを回転駆動させる駆動部と、前記シックナータンクの底部中央に沈殿したスラリーを引抜口から取り出す引抜ポンプと、を備え、前記引抜ポンプは、引抜モータと、当該引抜モータの負荷を検知する引抜モータ負荷検知部と、前記引抜モータを制御する引抜モータ制御部と、を備え、前記プログラムは、前記引抜モータ負荷検知部で検知された負荷を取得する負荷情報取得ステップと、前記負荷情報取得ステップで取得された負荷に基づいて前記引抜ポンプの動作を判定する判定ステップと、前記判定ステップの判定に基づいて前記引抜モータ制御部を制御する制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0022】
また、前記プログラムの前記判定ステップにおいては、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値未満に達した状態が所定期間以上継続する場合に、前記引抜ポンプを予め定められた期間において待機させる長期待機モードに移行すると判定する一方、或る期間において検知された前記引抜モータの負荷が閾値以上である場合又は当該閾値未満に達した状態が所定期間未満となる場合に、前記引抜ポンプの動作と停止とを繰り返す間欠動作を行うと判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る引抜スラリー濃度制御装置は、引抜モータ負荷検知部で検知された負荷を取得する負荷情報取得部と、負荷情報取得部で取得された負荷に基づいて引抜ポンプの動作を判定する判定部と、判定部の判定に基づいて引抜モータ制御部を制御する制御部と、を備える。この構成により、本発明に係る引抜スラリー濃度制御装置は、シックナー装置に備わるシックナータンクから引き抜かれる引抜スラリーの濃度を最適な範囲に安定化させ、確実に高濃度スラリーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)本発明の実施の形態に係る引抜スラリー濃度制御装置が接続されるシックナー装置の一部上面図、(b)同上引抜スラリー濃度制御装置の全体概要図を示す。
図2】同上引抜スラリー濃度制御装置、同上シックナー装置に備わる駆動部及び引抜ポンプの機能ブロック図である。
図3】同上引抜スラリー濃度制御装置の判定部の判定動作の説明図である。
図4】同上引抜スラリー濃度制御装置の引抜ポンプに対する動作手順を示すフローチャートである。
図5】同上引抜スラリー濃度制御装置の駆動部に対する動作手順を示すフローチャートである。
図6】従来のシックナー装置の全体フローの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る引抜スラリー濃度制御装置について図面を参照して説明する。図1に示すように、引抜スラリー濃度制御装置1は、シックナー装置2から引き抜かれるスラリーの濃度を安定的に制御するための装置であり、駆動部3及び引抜ポンプ4に電気配線などを介して接続される。このシックナー装置2は、工場排水などから得られた固体濃度の低いスラリー(泥漿)を沈殿濃縮した後に高濃度スラリーを引き抜くための装置であって、シックナータンク21、レーキ22、駆動部3及び引抜ポンプ4を備える。
【0026】
シックナータンク21は、スラリーの沈降分離処理を行うための沈降槽である。このシックナータンク21は、円筒状外枠21aと、底部中心に向かって傾斜した円錐状の底部21bとを備える。この円錐状の底部21bの中央近傍には高濃度のスラリーをシックナータンク21から排出して回収するためのスラリー引抜口21cが設けられている。
【0027】
レーキ22は、シックナータンク21の底部21bに沈積したスラリーを、シックナータンク21の底部中央に集めるために回転するかき取り羽根である。通常、レーキ22は、タンク21の円錐状の底部21bに沿って配置され、回転軸22aと、回転軸22aの先端部に設けられた複数枚のブレード22bとを備える。レーキ22は、図1の点線に示すように、レーキ上下手段25を用いて底部に沈積したスラリーに応じてブレード22b,ブレード22cのように上下して調整することにより、シックナータンク21内で安定して沈積スラリーを中心に集泥できる。
【0028】
駆動部3は、レーキ22を回転駆動させる。シックナー装置2では、最初に沈降濃縮処理の対象であるスラリーと、凝集剤等の添加剤とがタンク23内に投入されて混合され、このタンク23から樋24を介してシックナータンク21の上面中心部よりタンク21内に投入される。シックナータンク21の内部に設けられたレーキ22は、その回転軸22aに接続されている駆動部3の駆動でゆっくりと回転して一様な堆積状態を確保する。一方、固形分を含まないオーバーフロー液はシックナータンク21の上部周縁などに設けられた溝部からオーバーフローして回収される。
【0029】
駆動部3は、図2に示すように、レーキ22(回転軸22a)を回転させるためのレーキ回転用モータ3aと、レーキ回転用モータ3aの負荷を検知する例えばトルクインジケータなどのレーキ回転用モータ負荷検知部3bと、レーキ回転用モータ3aを制御するレーキ回転用モータ制御部3cと、を備える。
【0030】
引抜ポンプ4は、シックナータンク21の底部中央に集まったスラリーを引抜口21cから取り出すためのポンプ装置である。この引抜ポンプ4は、図2に示すように、引抜モータ4aと、引抜モータ4aの負荷を検知する例えばトルクインジケータなどの引抜モータ負荷検知部4bと、引抜モータ4aを制御する引抜モータ制御部4cと、を備える。
【0031】
次に、引抜スラリー濃度制御装置1の機能構成に関して図2を参照しながら説明する。引抜スラリー濃度制御装置1は、実際には制御盤であるECU(Electronic Control Unit)やパーソナルコンピュータであって、負荷情報取得部11、判定部12、制御部13、送受信部14、入力部15及びタイマー16を備える。
【0032】
負荷情報取得部11は、引抜モータ負荷検知部4bで検知された負荷を取得すると共に、レーキ回転用モータ負荷検知部3bで検知された負荷を取得する。
【0033】
判定部12は、負荷情報取得部11で取得された負荷に基づいて駆動部3及び引抜ポンプ4の動作を判定する。具体的には、判定部12は、例えばメモリ部12aに記憶されている所定プログラムに基づいて、或る期間において検知された引抜モータ4aの負荷が閾値(例えば20A)未満に達した状態が所定期間(例えば10秒)以上継続する場合に、引抜ポンプ4を予め定められた期間において待機させる長期待機モードに移行すると判定する。長期待機モードにおいては、例えばタイマー16を用いて60分間の引抜ポンプ4の停止の後に、引抜ポンプ4の動作を再開するか否かを判定する。
【0034】
一方、判定部12は、或る期間において検知された引抜モータ4aの負荷が閾値(例えば20A)以上である場合又は当該閾値(例えば20A)未満に達した状態が所定期間(例えば10秒)未満となる場合に、引抜ポンプ4の動作と停止とを繰り返す間欠動作を行うと判定する。ここでの間欠運転は、例えば1分間の引抜ポンプ4の作動、2分間の引抜ポンプ4の停止の繰り返し動作である。
【0035】
制御部13は、判定部12の判定に基づいて引抜モータ制御部4c及び/又はレーキ回転用モータ制御部3cを制御する。この制御は、送受信部14を介して制御部13から引抜モータ制御部4c及び/又はレーキ回転用モータ制御部3cに所定の制御信号を入力することにより行われる。
【0036】
送受信部14は、引抜ポンプ4及び/又は駆動部3からの信号を受信すると共に、モータの制御信号などを送信する。入力部15は、作業者が駆動部3及び引抜ポンプ4の動作を制御する際に用いるキーボードや物理的スイッチである。
【0037】
ここで、図3を参照しながら判定部12の判定方法の一例を説明する。判定部12は引抜モータ負荷検知部4bの値を負荷情報取得部11から取得する。最初の負荷の波形W1は引抜モータ4aの負荷が閾値(例えば20A)以上である場合を示す。次の波形W2は引抜モータ4aの負荷が閾値(例えば20A)未満に達した状態が所定期間(例えば10秒)未満となる場合を示す。この場合、判定部12は上述の間欠運転を継続するよう判定する。一方、波形W3は引抜モータ4aの負荷が閾値(例えば20A)未満に達した状態が所定期間(例えば10秒)以上継続する場合を示し、この場合、所定期間(例えば10秒)以上継続した時点で、引抜ポンプ4の動作を即座に停止して、予め定められた期間(60分)の長期待機モードに移行する。
【0038】
次に、引抜スラリー濃度制御装置1の引抜ポンプ4に対する動作手順に関して図4に示すフローチャートを参照して説明する。最初に、判定部12は、作業者から制御盤などに引抜ポンプ4の作動開始のトリガ―のが有るか否かを検知(例えば引抜モータ制御部4cへの制御信号などに基づいて)判定する(S41)。そして、判定部12は、作動開始のトリガ―を検知した場合(S41でYes)、負荷情報取得部11から取得されたレーキ回転用モータ負荷検知部3bの値を参照する(S42)。
【0039】
次に、判定部12は、検知された負荷が所定の許容値の範囲内の場合(S42でYes)、制御部13を介して引抜ポンプ4の駆動を許可して開始させる(S43)。一方、検知された負荷が所定の許容値未満の場合(S42でNo)、引抜ポンプ4の作動を開始させることは無い。
【0040】
そして、判定部12は、引抜ポンプ4の作動中には、引抜ポンプ負荷検知部4bからの負荷値を取得し、上記の制御を行う(S44)。すなわち、判定部12は、或る期間において検知された引抜ポンプ4の負荷が閾値未満に達した状態が所定期間以上継続した場合(S44でYes)、即時に引抜ポンプ4の動作を停止して、引抜ポンプ4を長期待機させる長期待機モードに移行する(S45)。一方、判定部12は、或る期間において検知された引抜ポンプ4の負荷が閾値未満である場合又は当該閾値以上に達した状態が所定期間未満となる場合(S44でNo)、引抜ポンプ4を間欠運転する(S46)。そして、以降は再度S41以下の処理を繰り替えす。
【0041】
次に、引抜スラリー濃度制御装置1の駆動部3に対する動作手順に関して図5に示すフローチャートを参照して説明する。本実施の形態において、引抜スラリー濃度制御装置1は、上記図4に示す引抜ポンプ4に対する制御と並列的に駆動部3に対する制御も行っている。
【0042】
最初に、判定部12は、負荷情報取得部11から取得されたレーキ回転用モータ負荷検知部3bの値を参照して検知された負荷が所定値未満か否かを判定する(S51)。そして、所定値未満の場合(S51でYes)、引抜ポンプ4を非稼働とするよう制御する(S52)。
【0043】
一方、所定値以上となる場合(S51でNo)、判定部12は、駆動部3の負荷が警告を要する第一警告レベルにまで達しているか否かの判定を行う(S53)。そして、第一警告レベル以上となる場合には(S53でYes)、警告アラートを発令する(S54)。この第一警告レベルでは作業者はレーキ22を上昇させるよう操作することで駆動部3の負荷を軽減させ、その結果、沈殿したスラリーをかき混ぜて再び浮遊させることなく安定してスラリーをシックナータンク21の底部中心に集泥できる。
【0044】
次に、負荷がレーキ22の回転を停止させる必要のある第二警告レベルにまで達しているか否かの判定を行う(S55)。そして、制御部13は、第二警告レベルとなる場合(S55でYes)には駆動部3の動作を停止制御する(S56)。一方、駆動部3の負荷が第二警告レベルとなっていない場合(S55でNo)、駆動部3の稼働を継続する。
【0045】
以上のように、本実施の形態に係る引抜スラリー濃度制御装置1のシックナー装置2は、スラリーの沈降分離処理を行うための沈降槽であるシックナータンク21と、シックナータンク21の底部に沈積したスラリーをシックナータンク21の底部中央に集めるために回転する集泥羽根たるレーキ22と、レーキ22を回転駆動させる駆動部3と、シックナータンク21の底部中央に沈殿したスラリーを引抜口21cから取り出す引抜ポンプ4と、を備える。引抜ポンプ4は、引抜モータ4aと、引抜モータ4aの負荷を検知する引抜モータ負荷検知部4bと、引抜モータ4aを制御する引抜モータ制御部4cと、を備える。引抜スラリー濃度制御装置1は、引抜モータ負荷検知部4bで検知された負荷を取得する負荷情報取得部11と、負荷情報取得部11で取得された負荷に基づいて引抜ポンプ4の動作を判定する判定部12と、判定部12の判定に基づいて引抜モータ制御部4cを制御する制御部13と、を備える。
【0046】
この構成により、引抜スラリー濃度制御装置1では、シックナー装置2に備わるシックナータンク21から引き抜かれる引抜スラリーの濃度を最適な範囲に安定化させ、確実に高濃度スラリーを得ることができる。すなわち、引抜スラリー濃度制御装置1では駆動部3の負荷と引抜ポンプ4の電流値(負荷)の両方を細かく検知し、判定部12でこの値に基づいて駆動部3及び引抜モータ4の駆動を逐次判定する。
【0047】
具体的には、引抜ポンプ4の制御を駆動部3の負荷値が所定値以上の場合のみ稼働することとし、且つ(1)引抜ポンプ4の負荷値が高い場合、設定した運転時間、待機時間の順を繰り返す引抜モード、(2)引抜ポンプ4の電流値が低い場合、設定された待機時間に亘って引抜ポンプ4の引抜は行わない待機モードに移行する。これと並列的に、判定部12は、駆動部3の負荷値から、注意アラートを出してレーキ上昇の合図となる第一警告レベル、破損防止のため停止させる第二警告レベルの判定・設定ができる。
【0048】
この結果、引抜スラリー濃度制御装置1では、引抜ポンプ4による電流値検知で、安定した濃度のスラリーを引抜ける。また従来のように運転・停止を繰り返し薄いものを引抜くのではなく、濃度が濃くなるまで待機させる待機モードを作ることで、前工程での生産に依らず安定的に自動化できる。これと並列させて、判定部12は駆動部3の負荷検知も行う。駆動部3の負荷(トルク)を検知することで、シックナータンク21の底部のスラリーの凝集度合いを検知する。すなわち、スラリーの引抜処理を開始してもよい凝集度合いか、スラリーの凝集度合いが非常に高くなる寸前の第一警告レベルや、スラリーの凝集度合いがレーキブレードの破損を生じさせるような第二警告レベル(停止状態)であるか否かも判定する。このことで、より安定的に、引抜ポンプ4の側で、高濃度スラリーを引き抜くことを可能とする。
【0049】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、引抜スラリー濃度制御装置1の判定部12は必ずしも並列的処理ではなく引抜ポンプ4の負荷のみで高濃度スラリーの判定をしても良い。また、第二警告レベルでは駆動部3のみでなく引抜ポンプ4をも停止してもよい。
【0050】
また、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。また、本発明の目的を達成するために、本発明は、引抜スラリー濃度制御装置に含まれる特徴的な構成手段をステップとする引抜スラリー濃度制御方法としたり、それらの特徴的なステップを含むプログラムとして実現することもできる。そして、そのプログラムは、ROM等に格納しておくだけでなく、USBメモリ等の記録媒体や通信ネットワークを介して流通させることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 引抜スラリー濃度制御装置
2 シックナー装置
3 駆動部
3a レーキ回転用モータ
3b レーキ回転用モータ負荷検知部
3c レーキ回転用モータ制御部
4 引抜ポンプ
4a 引抜モータ
4b 引抜モータ負荷検知部
4c 引抜モータ制御部
11 負荷情報取得部
12 判定部
13 制御部
14 送受信部
15 入力部
16 タイマー
21 シックナータンク
21c 引抜口
22 レーキ
図1
図2
図3
図4
図5
図6