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特開2022-134216加水分解卵殻膜成分と卵白成分を含む育毛促進用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134216
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】加水分解卵殻膜成分と卵白成分を含む育毛促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20220908BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220908BHJP
   A61K 35/57 20150101ALI20220908BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220908BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220908BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20220908BHJP
【FI】
A23L33/10
A61Q7/00
A61K8/64
A61K35/57
A61P17/14
A23L2/00 F
A23L2/38 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033205
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】501303046
【氏名又は名称】株式会社 アルマード
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100206689
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 由紀夫
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE05
4B018MD20
4B018MD46
4B018MD72
4B018ME14
4B117LC04
4B117LK06
4B117LK15
4B117LK19
4B117LP06
4B117LP20
4C083AD411
4C083CC37
4C083EE22
4C087AA01
4C087BB61
4C087MA16
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA41
4C087MA52
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
【課題】育毛促進効果が高く、飲食品、サプリメント、医薬部外品として利用することのできる安全な経口用または経皮用の育毛促進用組成物を提供する。
【解決手段】加水分解卵殻膜成分および卵白成分を含有する本発明の経口用または経皮用の育毛促進用組成物は、人体や皮膚に対する安全性が高く、卵殻膜成分と卵白成分とが相乗的に機能して優れた育毛促進効果を発揮する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加水分解卵殻膜成分および卵白成分を含有することを特徴とする、育毛促進用組成物。
【請求項2】
前記加水分解卵殻膜成分が、アルカリ加水分解卵殻膜成分および/または酵素加水分解卵殻膜成分である、請求項1に記載の育毛促進用組成物。
【請求項3】
前記卵白成分が、卵白粉末および/または卵白ペプチドである、請求項1または2に記載の育毛促進用組成物。
【請求項4】
前記加水分解卵殻膜成分および卵白成分をそれぞれ乾物換算で、1~50重量%および0.1~5重量%含有する、請求項1ないし3のいずれかに記載の育毛促進用組成物。
【請求項5】
卵黄粉末および/または卵黄レシチンを含む、請求項1ないし4のいずれかに記載の育毛促進用組成物。
【請求項6】
経口用または経皮用である、請求項1ないし5のいずれかに記載の育毛促進用組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の育毛促進用組成物を含む、飲食品、サプリメント、または医薬部外品。
【請求項8】
顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、またはドリンク剤である、請求項7に記載の飲食品またはサプリメント。
【請求項9】
皮膚外用剤である、請求項7に記載の医薬部外品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育毛・発毛を促し脱毛を防ぐ、育毛促進のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の質や量には個人差があり、生まれつき、または若いときから、毛髪の本数が少ない、毛髪が細いなどの理由で外見上髪が薄い場合がある。また、加齢とともに、毛髪が細くなったり、早期に抜け易くなったりして、年齢が上がると髪が薄くなる場合がある。さらに、ストレスや薬剤の副作用などの医学的な原因により、頭髪全体又は一部の髪が抜けたり、細くなったり、発毛が低減したりすることもある。
【0003】
この問題を解するために、育毛および脱毛抑制果を有するペプチドを有効成分とする育毛剤(特許文献1、2)や、血行促進作用、免疫抑制作用などを有する各種の植物エキスを有効成分とするもの等、様々な育毛、発毛促進剤が開発されているが、安定して十分な効果が得られるものは数少なく、また、人によっては発赤、かゆみ、かぶれなどの症状を生じる場合もある。
【0004】
卵殻膜は、鶏卵などの鳥類の卵の卵殻の内側にある膜で、内外2枚からなり、外卵殻膜は卵殻内面に密着し、内卵殻膜は卵白を包んでおり、抗菌性を有し、発生中の胚を感染から保護している。卵殻膜は、I型、V型およびX型コラーゲン、グルコサミン、デスモシンおよびヒアルロン酸を主成分とした強靭な繊維性のタンパク質等からなる網目状の構造を有し、これらのタンパク質はシスチンを含むものが多く、酸、アルカリ、プロテアーゼに対して比較的安定で、水に不溶性である。皮膚の再生を促進する効果が知られており、化粧品や栄養剤として実用化されている。
【0005】
この不溶性の卵殻膜を水に可溶性にして卵殻膜成分の消化吸収効率を高めるために、タンパク質を酸またはアルカリ水溶液中で加水分解したり、タンパク質分解酵素で加水分解すること(特許文献3)により、可溶性の加水分解卵殻膜成分が製造され、サプリメントや化粧品の原料として使用されている。
【0006】
一方、卵白は低脂肪、高タンパク質という理想的な栄養価の食物であり、含まれる卵白タンパク質は、他の植物性、動物性タンパク質に比べて栄養価が高い優れたタンパク質である。卵白ペプチドは、卵白タンパク質を酵素で低分子化したもので、卵白タンパク質のアミノ酸バランスはそのまま保持しながら耐熱性を有する。卵白タンパク質に比べ消化、吸収スピードが高められ、たとえば、コラコーゲンペプチドと卵白ペプチドを含有すると、タンパク質の体内利用が向上すること(特許文献4)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-57328号公報
【特許文献2】特許第6393772号公報
【特許文献3】特公平7-110210号公報
【特許文献4】特開2014-47147号公報
【特許文献5】特開2019-137619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、育毛促進効果が高く安全で、飲食品、サプリメント、医薬部外品として利用することのできる経口用または経皮用の育毛促進用組成物を提供することを課題とする。
本発明は、毛髪にハリおよびコシを与え、毛髪自体の成長を促進し健康な毛髪の数を増やすことのできる、優れた育毛、発毛促進効果を発揮する経口用、経皮用の育毛促進用組成物剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
産卵後21日間温められることにより、鶏卵からひよこが誕生するが、その間栄養分の補給はない。ひよこは生まれた瞬間に羽毛100%で誕生するから、鶏卵には発毛に必要な全ての成分が含まれている。そこでは、優良なタンパク質である卵白タンパク質が毛髪の原料となり、シスチンの豊富な卵殻膜がこれらの発毛制御にかかわっており、これら成分を含むことにより育毛がより促進されると考え、その優れた育毛促進機能を確認することで本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、以下(1)~(6)の育毛促進用組成物に関するものである。
(1)加水分解卵殻膜成分および卵白成分を含有することを特徴とする、育毛促進用組成物。
(2)前記加水分解卵殻膜成分が、アルカリ加水分解卵殻膜成分および/または酵素加水分解卵殻膜成分である、上記(1)に記載の育毛促進用組成物。
(3)前記卵白成分が、卵白粉末および/または卵白ペプチドである、上記(1)または(2)に記載の育毛促進用組成物。
(4)前記加水分解卵殻膜成分および卵白成分をそれぞれ乾物換算で、1~50重量%および0.1~5重量%含有する、上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の育毛促進用組成物。
(5)卵黄粉末および/または卵黄レシチンを含む、上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の育毛促進用組成物。
(6)経口用または経皮用である、上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の育毛促進用組成物。
【0011】
また、本発明は、以下(7)~(9)の飲食品、サプリメント、または医薬部外品に関する。
(7)上記(6)に記載の育毛促進用組成物を含む、飲食品、サプリメント、または医薬部外品。
(8)顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、またはドリンク剤である、上記(7)に記載の飲食品またはサプリメント。
(9)皮膚外用剤である、上記(7)に記載の医薬部外品。
【発明の効果】
【0012】
卵殻膜成分の育毛促進効果、特に、酵素分解による加水分解卵殻膜成分の育毛促進効果が高いことは、特許文献5にも記載されている。加水分解卵殻膜成分には、シスチン含量が卵殻膜成分の20倍以上に高められたものもあり、この加水分解卵殻膜成分にさらに、含硫アミノ酸であるシスチンやシステイン含量の高い卵白タンパク質を含む卵白成分を併用することで、毛髪に必要なシスチン含量がより高められる。さらに卵黄粉末や卵黄レシチンなどの卵黄成分を併用すれば、鶏卵の全ての成分とエネルギー源を含むものとなる。
このように、本発明の育毛促進用組成物によれば、加水分解卵殻膜成分と卵白成分とが相乗的に機能することで、育毛促進効果が顕著に向上する。
【0013】
本発明の組成物は、日常的に簡単に摂取できる経口用組成物として、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、またはドリンク剤の形態の飲食品、サプリメントとして摂取できる。経口摂取可能であることも、本発明の有利な点の一つであり、また、安全な経皮用組成物として皮膚外用剤としても使用できる。
本発明の経口用または経皮用の育毛促進用組成物は、卵殻膜と卵白という天然物由来の人体や皮膚に対する安全性の高いものを使用しているので、飲食品、サプリメント、または医薬部外品の製造時に多量に配合しても健康に悪影響がなく、また頭皮および頭髪にかぶれ等の症状を引き起こすことがない。刺激性がなく様々な形態で各種育毛、発毛成分と併用できるので、より高い育毛効果を発揮できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の育毛促進用組成物は、加水分解卵殻膜成分と卵白成分を含むことを特徴とする。
本明細書において「育毛」、「育毛促進」という場合、結果として毛髪の量(本数、太さなど)を増大させる養毛作用や、伸長速度の増大や毛髪の健全化をもたらす作用であり、たとえば、毛髪の成長促進もしくは発毛促進、または脱毛の低減もしくは予防などのいずれか一つ以上の作用を指す。本発明の育毛促進とは、発毛促進、養毛、抗脱毛を含む作用である。
【0015】
本発明で使用される卵殻膜は、陸生の卵生動物すべての卵、特に鳥類の卵の卵殻の内側にある膜であればいずれも使用できる。特に鶏卵の卵殻膜が入手の容易性、コストの点から好ましい。
本発明の加水分解卵殻膜成分は、卵殻膜あるいは卵殻膜含有粉末を、酸水溶液、アルカリ水溶液、アルカリ性有機溶媒溶液、またはタンパク質分解酵素含有液などのタンパク質の分解作用を有する液中で加水分解することによって得られる。本発明で使用される加水分解卵殻膜成分は,いずれの方法によって製造された加水分解卵殻膜成分を用いることができるが、アルカリ加水分解および/または酵素加水分解のものが好ましい。水溶液、エキスとしても使用できるが、取扱性や保存安定性のため、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段により得られる粉末形態のものが好ましい。
【0016】
本発明の卵白成分としては、卵白液、卵白粉末、卵白タンパク質、卵白ペプチド等を用いることができる。卵白に含まれる卵白タンパク質は、低脂肪の高タンパク質であり、含硫アミノ酸であるシスチン、システイン、メチオニンや、分岐鎖アミノ酸の含有量が高い。また、消化~吸収~体内利用において、他の乳タンパク質などの動物性タンパク質および大豆タンパク質などの植物性タンパク質に比べて栄養価に優れている。
卵白ペプチドは、卵白タンパク質を酵素で低分子化したもので、卵白タンパク質のアミノ酸バランスをそのまま保持しながら、卵白タンパク質に比べ消化、吸収スピードが高められている。卵白特有の硫黄臭が低減されている平均分子量が200~1500、特に600~1000のものが好ましい。
【0017】
本発明では卵黄成分である卵黄液、卵黄粉末、卵黄レシチン等を配合することができ、取扱性や保存安定性の観点から、噴霧乾燥、凍結乾燥等の乾燥手段により得られる粉末形態のものが好ましい。
卵白成分、卵黄成分の原料である卵白と卵黄は、陸生の卵生動物すべての卵、特に鳥類の卵のものであればいずれも使用できる。特に鶏卵の卵が入手の容易性、コストの点から好ましい。
【0018】
本発明の育毛促進用組成物において、加水分解卵殻膜成分、卵白成分それぞれの含有量は特に限定されるものではない。加水分解卵殻膜成分は乾物換算で1~50重量%、卵白成分は乾物換算で0.1~5重量%含むことが好ましい。
また、本発明の育毛促進用組成物を経口用として使用する場合、さらに卵殻膜含有粉末を配合することが好ましく、加水分解卵殻膜成分に対して卵殻膜含有粉末を同量以下で含有することが好ましい。
【0019】
本発明の育毛促進用組成物は、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、ドリンク剤などの経口用組成物とすることができる。刺激性がないために剤型に特に制限はなく、種々の剤型の経口用組成物を製造するための各種成分および製造法は、サプリメント、医薬品等の製造分野で公知な成分から適宜選択することができる。保存、流通に適し、服用時に変形、崩壊が生じず、経口で簡単に服用できる観点から、錠剤に用いることが好ましい。
【0020】
本実施形態の顆粒剤、カプセル剤、または錠剤には、顆粒剤、カプセル剤、または錠剤を形成するための各種の公知の添加剤を添加することができ、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、その他の栄養素等を添加することができる。
賦形剤としては、公知の賦形剤が適宜使用できるが、化工澱粉および乳糖の少なくとも1種を、賦形性の観点から卵殻膜成分の重量に対して0.3~3倍用いることが好ましく、1~2.5倍であることがより好ましい。化工澱粉としては、焙焼デキストリンなどのデキストリン、酸化澱粉、低粘性変性澱粉などの1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
結合剤としては、公知の結合剤が適宜使用できるが、たとえば、デンプン糊、アラビアゴム糊、ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
崩壊剤としては、公知の崩壊剤が適宜使用できるが、たとえば、セルロース類などを用いることができる。
滑沢剤としては、公知の滑沢剤が適宜使用できるが、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ワックス類、タルク、ビタミンCなどが挙げられる。
【0022】
また、錠剤には、錠剤の硬度を高くして変形や傷つきを防止し、取扱性を向上させるため、硬度向上剤として卵殻カルシウムを含有することができる。卵殻カルシウムは、鶏卵などの鳥類の卵の殻を粉砕・乾燥した微粉末である。また、錠剤中に含まれる成分の変質や分解を防止し、かつ、錠剤表面の耐傷つき性を向上させるため、コーティング皮膜で覆うことが好ましい。
本実施形態の錠剤の大きさは特に制限されないが、一般には直径が約7~10mm程度の円形や楕円形とするのが、取扱性、服用のし易さから好ましい。錠剤の1個の重さは、350~600mg程度であり、有効成分が好ましくは10~240mg、より好ましは20~150mg含まれるようにする。
【0023】
本発明の経口用の液剤(水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、ドリンク剤は、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノール又はそれらの混液等)に溶解、懸濁又は乳化して製造される。さらにこの液剤は、乳化剤、懸濁化剤、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等を含有していてもよい。
【0024】
本発明の経皮用組成物としては、たとえば皮膚外用剤が挙げられる。皮膚外用剤は、液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、エアゾール剤等に適用できる。皮膚外用剤には、水、低級アルコール、溶解補助剤、界面活性剤、乳化安定剤、ゲル化剤、粘着剤、その他通常使用される基剤成分を配合でき、必要に応じて副腎皮質ホルモン、血管拡張剤、保湿剤、殺菌剤、清涼化剤、ビタミン類、香料色素等を適宜量で配合することができる。
【0025】
さらに、本発明の経口用組成物は、菓子類、飲料、健康食品、保存食品、加工食品などの食品添加剤とすることができる。ここで、「飲食品」「サプリメント」「医薬部外品」の対象はヒトに限定されるのもではなく、ペットや家畜のような哺乳動物用の飼料も包含する。また、「飲食品」「サプリメント」の概念には、通常の飲食品の他、経腸栄養食品、栄養機能食品、機能性表示食品、特定保健用食品などが包含される。
【0026】
以下に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。