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特開2022-134237ガスセンサ素子、ガスセンサ、及びガスセンサ素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134237
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】ガスセンサ素子、ガスセンサ、及びガスセンサ素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/419 20060101AFI20220908BHJP
   G01N 27/41 20060101ALI20220908BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
G01N27/419 327J
G01N27/41 325J
G01N27/409 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033237
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】京本 卓
(72)【発明者】
【氏名】大崎 薫
(72)【発明者】
【氏名】花木 悠希
(72)【発明者】
【氏名】上田 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】中川 將生
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BC02
2G004BD04
2G004BF01
2G004BF06
2G004BF08
2G004BF09
2G004ZA04
(57)【要約】
【課題】多孔質保護層の厚みの不均一を低減することができ、又、ディップ法等で簡便に形成できるガスセンサ素子、ガスセンサ、及びガスセンサ素子の製造方法を提供する。
【解決手段】軸線L方向に延び、板状をなすと共に先端側に検知部150を有する素子本体100aと、検知部を被覆する多孔質保護層20とを備えるガスセンサ素子100であって、多孔質保護層は、第1保護層21と第2保護層22aとを有し、第1保護層は検知部よりも先端側に自身の後端を有して素子本体の先端までの領域を覆い、第2保護層は検知部よりも後端側に自身の後端を有して検知部および第1保護層を覆うことを特徴とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延び、板状をなすと共に先端側に検知部を有する素子本体と、前記検知部を被覆する多孔質保護層とを備えるガスセンサ素子であって、
前記多孔質保護層は、第1保護層と第2保護層とを有し、前記第1保護層は前記検知部よりも先端側に自身の後端を有して前記素子本体の先端までの領域を覆い、前記第2保護層は前記検知部よりも後端側に自身の後端を有して前記検知部および前記第1保護層を覆うことを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項2】
軸線方向に延び、板状をなすと共に先端側に検知部を有する素子本体と、前記検知部を被覆する多孔質保護層とを備えるガスセンサ素子であって、
前記多孔質保護層は、第1保護層と第2保護層とを有し、前記第1保護層は前記検知部よりも後端側に自身の後端を有して前記素子本体の先端までの領域を覆い、前記第2保護層は前記検知部よりも先端側に自身の後端を有して前記第1保護層を覆うことを特徴とするガスセンサ素子。
【請求項3】
前記多孔質保護層と前記素子本体との間に、前記多孔質保護層と気孔率が異なる多孔質の内側保護層が介装されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ素子。
【請求項4】
前記第1保護層と前記第2保護層との境界に、ガス透過性を有しつつも前記多孔質保護層よりも緻密な境界層が設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のガスセンサ素子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のガスセンサ素子を有するガスセンサ。
【請求項6】
軸線方向に延び、板状をなすと共に先端側に検知部を有する素子本体に、多孔質保護層を被覆するガスセンサ素子の製造方法であって、
前記素子本体の前記検知部よりも先端側のみをスラリーに浸漬することで前記検知部よりも先端側に前記スラリーの第1塗膜を形成する第1浸漬工程と、
前記第1塗膜を乾燥して固化する第1塗膜乾燥工程と、
前記素子の前記検知部よりも後端側から前記素子本体の先端までの領域を前記スラリーに浸漬することで、前記スラリーの第2塗膜を形成する第2浸漬工程と、を備えるガスセンサ素子の製造方法。
【請求項7】
軸線方向に延び、板状をなすと共に先端側に検知部を有する素子本体に、多孔質保護層を被覆するガスセンサ素子の製造方法であって、
前記素子本体の前記検知部よりも後端側から前記素子本体の先端までの領域をスラリーに浸漬することで前記領域に前記スラリーの第1塗膜を形成する第1浸漬工程と、
前記第1塗膜を乾燥して固化する第1塗膜乾燥工程と、
前記素子の前記検知部よりも先端側のみを前記スラリーに浸漬することで、前記スラリーの第2塗膜を形成する第2浸漬工程と、を備えるガスセンサ素子の製造方法。
【請求項8】
前記ガスセンサ素子の表面に、前記多孔質保護層と気孔率が異なる多孔質の内側保護層を予め形成する内側保護層形成工程をさらに備え、
前記多孔質保護層を前記内側保護層の表面に形成することを特徴とする請求項6又は7に記載のガスセンサ素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1浸漬工程と前記第1塗膜乾燥工程との間に、前記第1塗膜を擦り切って前記第1塗膜の一部を除去する第1塗膜擦切工程をさらに備えることを特徴とする請求項6~8のいずれか一項に記載のガスセンサ素子の製造方法。
【請求項10】
前記第2浸漬工程にて前記第2塗膜を形成した後に、前記第2塗膜を擦切って前記第2塗膜の一部を除去する第2塗膜擦切工程をさらに備えることを特徴とする請求項6~9のいずれか一項に記載のガスセンサ素子の製造方法。
【請求項11】
前記第2浸漬工程と、前記第2塗膜擦切工程とを2回以上繰り返し、かつ前記第2塗膜擦切工程とその後の前記第2浸漬工程との間に、前記第2塗膜を乾燥して固化する第2塗膜乾燥工程をさらに備えることを特徴とする請求項6~10のいずれか一項に記載のガスセンサ素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば燃焼器や内燃機関等の燃焼ガスや排気ガス中に含まれる特定ガスのガス濃度を検出するのに好適に用いられるガスセンサ素子、ガスセンサ、及びガスセンサ素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガス中に含まれる特定成分(酸素等)の濃度を検出するためのガスセンサが知られている。この種のガスセンサは、その内部に、細長く延びた板状のガスセンサ素子を備えている。ガスセンサ素子の先端部には、特定成分を検知するための検知部が設けられている。検知部は、電極等で構成されており、そのような検知部が設けられたガスセンサ素子の先端部が、排気ガスに晒される。
【0003】
排気ガス中には、特定成分以外に、シリコンやリン等の被毒物質が含まれており、そのような被毒物質が、ガスセンサ素子の先端部(検知部等)に付着してしまうことがあった。また、排気ガス中には水分も含まれており、そのような水分や、排気管の凝縮水等の水分が、ガスセンサ素子の先端部に付着してしまうこともある。水分がガスセンサ素子に付着すると、ガスセンサ素子にクラック等の損傷が発生する虞がある。そのため、従来のガスセンサ素子の先端部には、被毒物質の付着や、水分(水滴)の接触を抑制するための多孔質保護層が形成されている。多孔質保護層は、ガスセンサ素子の先端部にある検知部を被覆するように形成されている。
【0004】
このような多孔質保護層をガスセンサ素子に形成する従来技術として、例えば、多孔質保護層用のスラリーに、ガスセンサ素子を浸漬させる方法(ディップ法)が知られている(特許文献1参照)。この種の方法では、ガスセンサ素子の先端部をスラリーに浸漬することで、その先端部にスラリーを付着させている。その後、付着させたスラリーを焼成することにより、ガスセンサ素子の先端部に多孔質保護層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-203716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような、ガスセンサ素子をスラリーに浸漬させる方法では、多孔質保護層の厚みを制御することが難しく、問題となっていた。例えば、ガスセンサ素子の角部は、その他の部分と比べてスラリーが付着し難い部分となっており、そのような角部における多孔質保護層の厚みを大きくしようとすると、ガスセンサ素子の角部以外の大部分の箇所に必要以上のスラリーが付着してしまう。このような状態のスラリーを焼成すると、結果的に、厚み(容積)の大きな多孔質保護層が形成されてしまう。この場合、多孔質保護層の熱容量が大きくなり過ぎて、加熱によるガスセンサ素子の活性化が遅延することとなる。
【0007】
そのため、上記従来技術では、多孔質保護層の厚みを小さくするために、焼成後、多孔質保護層の周りにある余剰部分をカッター等で切断する処理を行っていた。しかしながら、焼成後に切断を行うと、多孔質保護層は焼成によって硬質化しており、切断に要する力も大きくなるため、多孔質保護層が破損してしまう虞があった。
一方、多孔質保護層をスプレー法で形成することも可能であるが、均一な厚みの多孔質保護層を形成するために熟練を要することと、付着率が低くてコストアップになるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、多孔質保護層の厚みの不均一を低減することができ、又、ディップ法等で簡便に形成できるガスセンサ素子、ガスセンサ、及びガスセンサ素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点のガスセンサ素子は、軸線方向に延び、板状をなすと共に先端側に検知部を有する素子本体と、前記検知部を被覆する多孔質保護層とを備えるガスセンサ素子であって、前記多孔質保護層は、第1保護層と第2保護層とを有し、前記第1保護層は前記検知部よりも先端側に自身の後端を有して前記素子本体の先端までの領域を覆い、前記第2保護層は前記検知部よりも後端側に自身の後端を有して前記検知部および前記第1保護層を覆うことを特徴とする。
【0010】
このガスセンサ素子によれば、第1保護層が簡便なディップ法で形成されてスラリーの流動によって先端側の角部の厚みが他の部分より薄くなったとしても、素子本体の先端部に介在する第1保護層が第2保護層をディップ法で形成する際のスラリーの流動を抑制し、第2保護層先端側の角部の厚みを厚くすることができる。
さらに、第1保護層が検知部の先端より先端側のみ形成されていることで、多孔質保護層全体の側面(検知部を覆う第1保護層と第2保護層)の厚みが厚くなりすぎない。
【0011】
これにより、第1保護層と第2保護層を合わせた多孔質保護層全体の厚みの不均一を低減することができ、ひいては熱容量が過大になって活性化が遅延することも抑制できる。
又、第1保護層と第2保護層をディップ法等で簡便に形成できるので、スプレー法のように熟練を要さず、コストアップを抑制できる。
さらに、第1保護層と第2保護層をディップ法等で形成した際、後述する擦切りを行って厚みの不均一をさらに低減する場合であっても、擦切り前の多孔質保護層全体の厚みの不均一が抑制されるので、擦切りによる材料のロスが少なくコストダウンをすることができる。
【0012】
又、本発明の第2の観点のガスセンサ素子は、軸線方向に延び、板状をなすと共に先端側に検知部を有する素子本体と、前記検知部を被覆する多孔質保護層とを備えるガスセンサ素子であって、前記多孔質保護層は、第1保護層と第2保護層とを有し、前記第1保護層は前記検知部よりも後端側に自身の後端を有して前記素子本体の先端までの領域を覆い、前記第2保護層は前記検知部よりも先端側に自身の後端を有して前記第1保護層を覆うことを特徴とする。
【0013】
第2の観点のガスセンサ素子においても、第1保護層が簡便なディップ法で形成されて先端側の角部の厚みが他の部分より薄くなったとしても、素子本体の先端部に介在する第1保護層が第2保護層をディップ法で形成する際のスラリーの流動を抑制し、第2保護層先端側の角部の厚みを厚くすることができる。
さらに、第2保護層が検知部の先端より先端側のみ形成されていることで、多孔質保護層全体の側面(検知部を覆う第1保護層と第2保護層)の厚みが厚くなりすぎない。
【0014】
これにより、多孔質保護層全体の厚みの不均一を低減することができ、ひいては熱容量が過大になって活性化が遅延することも抑制できる。
又、第1保護層と第2保護層をディップ法等で簡便に形成できるので、スプレー法のように熟練を要さず、コストアップを抑制できる。
さらに、第1保護層と第2保護層をディップ法等で形成した際、後述する擦切りを行って厚みの不均一をさらに低減する場合であっても、擦切り前の多孔質保護層全体の厚みの不均一が抑制されるので、擦切りによる材料のロスが少なくコストダウンをすることができる。
【0015】
本発明のガスセンサ素子において、前記多孔質保護層と前記素子本体との間に、前記多孔質保護層と気孔率が異なる多孔質の内側保護層が介装されてなってもよい。
このガスセンサ素子によれば、内側保護層の気孔率が高い場合は断熱効果や耐被水性が向上し、内側保護層の気孔率が低い場合は被毒物質をより多くトラップすることができる。
【0016】
本発明のガスセンサ素子において、前記第1保護層と前記第2保護層との境界に、ガス透過性を有しつつも前記多孔質保護層よりも緻密な境界層が設けられてもよい。
境界層は、第1保護層をディップ法等で形成して乾燥させた後、第2保護層を第1保護層に重ねてディップ法等で形成させることにより、多孔質保護層よりも緻密になる。境界層BR1、BR2は、第1保護層や第2保護層の厚み(特に角部の厚み)を見積もるために有効な目印となる。
【0017】
本発明のガスセンサは、前記ガスセンサ素子を有する。
【0018】
本発明の第1の観点のガスセンサ素子の製造方法は、軸線方向に延び、板状をなすと共に先端側に検知部を有する素子本体に、多孔質保護層を被覆するガスセンサ素子の製造方法であって、前記素子本体の前記検知部よりも先端側のみをスラリーに浸漬することで前記検知部よりも先端側に前記スラリーの第1塗膜を形成する第1浸漬工程と、前記第1塗膜を乾燥して固化する第1塗膜乾燥工程と、前記素子の前記検知部よりも後端側から前記素子本体の先端までの領域を前記スラリーに浸漬することで、前記スラリーの第2塗膜を形成する第2浸漬工程と、を備える。
このガスセンサ素子の製造方法によれば、上述の第1の観点のガスセンサ素子を容易に製造できる。
【0019】
本発明の第2の観点のガスセンサ素子の製造方法は、軸線方向に延び、板状をなすと共に先端側に検知部を有する素子本体に、多孔質保護層を被覆するガスセンサ素子の製造方法であって、前記素子本体の前記検知部よりも後端側から前記素子本体の先端までの領域をスラリーに浸漬することで前記領域に前記スラリーの第1塗膜を形成する第1浸漬工程と、前記第1塗膜を乾燥して固化する第1塗膜乾燥工程と、前記素子の前記検知部よりも先端側のみを前記スラリーに浸漬することで、前記スラリーの第2塗膜を形成する第2浸漬工程と、を備える。
このガスセンサ素子の製造方法によれば、上述の第2の観点のガスセンサ素子を容易に製造できる。
【0020】
本発明の第1及び第2の観点のガスセンサ素子の製造方法は、前記ガスセンサ素子の表面に、前記多孔質保護層と気孔率が異なる多孔質の内側保護層を予め形成する内側保護層形成工程をさらに備え、
前記多孔質保護層を前記内側保護層の表面に形成してもよい。
このガスセンサ素子の製造方法によれば、上述の内側保護層を容易に製造できる。
【0021】
本発明の第1及び第2の観点のガスセンサ素子の製造方法は、前記第1浸漬工程と前記第1塗膜乾燥工程との間に、前記第1塗膜を擦り切って前記第1塗膜の一部を除去する第1塗膜擦切工程をさらに備えてもよい。
このガスセンサ素子の製造方法によれば、第1保護層となる第1塗膜をディップ法等で形成した際、擦切りを行って厚みの不均一をさらに低減することができる。
【0022】
本発明の第1及び第2の観点のガスセンサ素子の製造方法は、前記第2浸漬工程にて前記第2塗膜を形成した後に、前記第2塗膜を擦切って前記第2塗膜の一部を除去する第2塗膜擦切工程をさらに備えてもよい。
このガスセンサ素子の製造方法によれば、第2保護層となる第2塗膜をディップ法等で形成した際、擦切りを行って厚みの不均一をさらに低減することができる。
ることを特徴とする請求項6~9のいずれか一項に記載のガスセンサ素子の製造方法。
【0023】
本発明の第1及び第2の観点のガスセンサ素子の製造方法は、前記第2浸漬工程と、前記第2塗膜擦切工程とを2回以上繰り返し、かつ前記第2塗膜擦切工程とその後の前記第2浸漬工程との間に、前記第2塗膜を乾燥して固化する第2塗膜乾燥工程をさらに備えてもよい。
このガスセンサ素子の製造方法によれば、第2保護層となる第2塗膜を2層として厚くできる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、多孔質保護層の厚みの不均一を低減することができ、又、ディップ法等で簡便に形成できるガスセンサ素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の観点の実施形態に係るガスセンサの軸線方向に沿う断面図である。
図2】第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子を構成する素子本体を模式的に表した分解斜視図である。
図3】ガスセンサ素子の先端側の軸線方向に沿う断面図である。
図4】軸線方向に直交する方向で切断されたガスセンサ素子の先端側の構成を模式的に表した断面図である。
図5】素子本体を先端側から見た斜視図である。
図6】ガスセンサ素子の主面に垂直な方向から見たときの、多孔質保護層の形状を示す正面図である。
図7】内側保護層形成工程において、ガスセンサ素子本体が、ディッピング槽の上方で待機している状態を示す説明図である。
図8】内側保護層塗膜の形成、及び内側保護層塗膜を乾燥して固化し、未焼成内側保護層を形成する工程を示す図である。
図9】第1浸漬工程において、ガスセンサ素子本体が、ディッピング槽の上方で待機している状態を示す説明図である。
図10】第1浸漬工程において、待機位置から下降したガスセンサ素子本体の先端部が、ディッピング槽内のスラリーに浸漬している状態を示す説明図である。
図11】第1浸漬工程でスラリー中に浸漬した素子本体を、擦切型で擦切る直前まで引き上げた状態を示す図である。
図12】擦切型の平面図である。
図13】ガスセンサ素子を90度回転させ、さらに間隔を狭めた状態での擦切型の平面図である。
図14】擦切工程において、擦切型を利用して、ガスセンサ素子本体の先端部の周面に形成された周面塗膜の一部(余分な塗膜)が除去される様子を示す説明図である。
図15】擦切工程において、擦切型を利用して、ガスセンサ素子本体を90度回転させたときの周面に形成された周面塗膜の一部(余分な塗膜)が除去される様子を示す説明図である。
図16】擦切工程において、擦切刃を利用して、ガスセンサ素子本体の先端部の先端面に形成された先端塗膜の一部(余分な塗膜)が除去される様子を示す説明図である。
図17】擦切工程後、擦切刃が退避位置へ戻される様子を示す説明図である。
図18】第2浸漬工程でスラリー中に浸漬した素子本体を、擦切型で擦切る直前まで引き上げた状態を示す図である。
図19】第2塗膜擦切工程において、第2浸漬工程によるスラリーの第2塗膜を擦り切る位置を示す図である。
図20】第2塗膜擦切工程において、ガスセンサ素子を90度回転させ、第2浸漬工程によるスラリーの第2塗膜を擦り切る位置を示す図である。
図21】2回目の第2浸漬工程で形成した第2塗膜と、この第2塗膜を擦り切る位置を示す図である。
図22】本発明の第2の観点の実施形態に係るガスセンサ素子の先端側の軸線方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。
先ずは、本発明の第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子100を含むガスセンサ(酸素センサ)1の構成について説明する。図1は、軸線L方向に沿って切断されたガスセンサ1の断面図、図2は、ガスセンサ素子100を構成する素子本体100a(検出素子部300及びヒータ部200)を模式的に表した分解斜視図である。なお、本明細書では、図1に示されるガスセンサ1の下側を、「先端側」と称し、その反対側(図1の上側)を、「後端側」と称する。
【0027】
ガスセンサ1は、図1に示されるように、ガスセンサ素子100と、そのガスセンサ素子100等を内部に収容する形で保持する主体金具30と、その主体金具30の先端部に装着されるプロテクタ24を備えている。ガスセンサ素子100は、全体的には、細長く延びた板状をなしており、その長手方向が、軸線L方向に沿うように配置されている。
又、後述するように、ガスセンサ素子100は、検出素子部300及びヒータ部200の積層体からなる素子本体100aと、素子本体100aの先端側を覆う多孔質保護層20とを備えている。
【0028】
図2に示されるように、ヒータ部200は、全体的には、細長く延びた板状をなしており、アルミナを主体とする第1基体101及び第2基体103と、第1基体101と第2基体103とに挟まれ、白金を主体とする発熱体102とを有している。発熱体102は、先端側に位置する発熱部102aと、その発熱部102aから第1基体101の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる一対のヒータリード部102bとを有している。そして、ヒータリード部102bの末端は、第1基体101に設けられているヒータ側スルーホール101aに形成された導体を介してヒータ側パッド120と電気的に接続されている。
【0029】
検出素子部300は、ヒータ部200と同様、全体的には、細長く延びた板状をなしており、酸素濃度検出セル130と酸素ポンプセル140とを備えている。酸素濃度検出セル130は、第1固体電解質体105と、その第1固体電解質体105の両面に形成された第1電極104及び第2電極106とから構成されている。第1電極104は、第1電極部104aと、その第1電極部104aから第1固体電解質体105の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる第1リード部104bとから構成されている。第2電極106は、第2電極部106aと、その第2電極部106aから第1固体電解質体105の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる第2リード部106bとから構成されている。
【0030】
第1リード部104bの末端は、第1固体電解質体105に設けられる第1スルーホール105a、後述する絶縁層107に設けられる第2スルーホール107a、第2固体電解質体109に設けられる第4スルーホール109a及び保護層111に設けられる第6スルーホール111aのそれぞれに形成される導体を介して検出素子側パッド121と電気的に接続される。第2リード部106bの末端は、後述する絶縁層107に設けられる第3スルーホール107b、第2固体電解質体109に設けられる第5スルーホール109b及び保護層111に設けられる第7スルーホール111bのそれぞれに形成される導体を介して検出素子側パッド121と電気的に接続される。
【0031】
酸素ポンプセル140は、第2固体電解質体109と、その第2固体電解質体109の両面に形成された第3電極108及び第4電極110とから構成されている。第3電極108は、第3電極部108aと、この第3電極部108aから第2固体電解質体109の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる第3リード部108bとから構成されている。第4電極110は、第4電極部110aと、この第4電極部110aから第2固体電解質体109の長手方向(軸線L方向)に沿って延びる第4リード部110bとから構成されている。
【0032】
第3リード部108bの末端は、第2固体電解質体109に設けられる第5スルーホール109b及び保護層111に設けられる第7スルーホール111bのそれぞれに形成される導体を介して検出素子側パッド121と電気的に接続される。第4リード部110bの末端は、保護層111に設けられる第8スルーホール111cに形成される導体を介して検出素子側パッド121と電気的に接続される。なお、第2リード部106bと第3リード部108bは同電位となっている。
【0033】
第1固体電解質体105及び第2固体電解質体109は、ジルコニア(ZrO)に安定化剤としてイットリア(Y)又はカルシア(CaO)を添加してなる部分安定化ジルコニア焼結体から構成される。
発熱体102、第1電極104、第2電極106、第3電極108、第4電極110、ヒータ側パッド120及び検出素子側パッド121は、白金族元素で形成することができる。これらを形成する好適な白金族元素としては、Pt、Rh、Pd等が挙げられる。なお、これらの白金族元素は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
上記発熱体102等は、耐熱性及び耐酸化性の観点より、Ptを主体にして形成することが好ましい。また、上記発熱体102等は、主体となる白金族元素の他にセラミック成分を含有することが好ましい。このセラミック成分は、固着という観点より、積層される側の主体となる材料と同様の成分であることが好ましい。
【0035】
そして、上述した酸素ポンプセル140と酸素濃度検出セル130との間に、絶縁層107が形成されている。絶縁層107は、絶縁部114と拡散抵抗部115とからなる。この絶縁層107の絶縁部114には、第2電極部106a及び第3電極部108aに対応する位置に中空の測定室107cが形成されている。この測定室107cは、絶縁層107の幅方向で外部と連通しており、その連通した部分には、外部と測定室107cとの間のガス拡散を所定の律速条件下で実現する拡散抵抗部115が配置されている。
絶縁部114は、絶縁性を有するセラミック焼結体であれば限定されず、例えば、アルミナやムライト等の酸化物系セラミック等から構成される。
拡散抵抗部115は、アルミナからなる多孔質体であり、この多孔質体からなる拡散抵抗部115によって、検出ガスが測定室107cへ流入する際の速度が調整される。
【0036】
また、第2固体電解質体109の表面には、第4電極110を挟み込むようにして、保護層111が形成されている。この保護層111は、第4電極部110aを挟み込むようにして、第4電極部110aを被毒から防御するための多孔質の電極保護部113aと、第4リード部110bを挟み込むようにして、第2固体電解質体109を保護するための補強部112とからなる。なお、本実施形態のガスセンサ素子100は、酸素濃度検出セル130の電極間に生じる電圧(起電力)が所定の値(例えば、450mV)となるように、酸素ポンプセル140の電極間に流れる電流の方向及び大きさが調整され、酸素ポンプセル140に流れる電流に応じた被測定ガス中の酸素濃度をリニアに検出する酸素センサ素子となっている。
【0037】
ここで、軸線L方向に垂直なガスセンサ素子100の断面を見たとき、保護層111及び第1基体101からなる外縁が長辺をなして主面を構成し、積層方向に沿う2辺が短辺となる矩形状の断面をなす。
【0038】
図1に戻り、主体金具30は、SUS430製であり、ガスセンサ1を排気管に取り付けるための雄ねじ部31と、取り付け時に取り付け工具をあてがう六角部32とを備えている。また、主体金具30には、径方向内側に向かって突出する金具側段部33が設けられており、その金具側段部33はガスセンサ素子100を保持するための金属ホルダ34を支持している。そしてこの金属ホルダ34の内側にはセラミックホルダ35、滑石36が先端側から順に配置されている。
この滑石36は、金属ホルダ34内に配置される第1滑石37と、金属ホルダ34の後端に配置される第2滑石38とからなる。金属ホルダ34内で第1滑石37が圧縮充填されることによって、ガスセンサ素子100は金属ホルダ34に対して固定される。また、主体金具30内で第2滑石38が圧縮充填されることによって、ガスセンサ素子100の外面と主体金具30の内面との間のシール性が確保される。
【0039】
そして第2滑石38の後端側には、アルミナ製のスリーブ39が配置されている。このスリーブ39は多段の円筒状に形成されており、軸線Lに沿うように軸孔39aが設けられ、そのような軸孔39aを含むスリーブ39の内部にガスセンサ素子100が挿通される。そして、主体金具30の後端側にある加締め部30aが内側に折り曲げられており、そのような加締め部30aにより、スリーブ39がステンレス製のリング部材40を介して主体金具30の先端側に押圧されている。
【0040】
また、主体金具30の先端側外周には、金属製のプロテクタ24が溶接によって取り付けられている。プロテクタ24は、二重構造をなしており、外側には一様な外径を有する有底円筒状の外側プロテクタ41が配置され、内側には後端部42aの外径が先端部42bの外径よりも大きく形成された有底円筒状の内側プロテクタ42が配置されている。このようなプロテクタ24は、主体金具30の先端から突出するガスセンサ素子100の先端部を覆うと共に、複数のガス取り入れ孔24aを有する。
【0041】
主体金具30の後端側には、SUS430製の外筒25の先端側が挿入されている。外筒25は、先端側が拡径した先端部25aを備えており、その先端部25aが、主体金具30にレーザ溶接等で固定されている。外筒25の後端側の内部には、セパレータ50が配置されており、そのセパレータ50と外筒25との間で形成される隙間に、保持部材51が介在されている。保持部材51は、セパレータ50の周面から外側に盛り上がった突出部50aに係合しつつ、加締められた外筒25とセパレータ50との間で固定されている。
【0042】
また、セパレータ50には、検出素子部300用やヒータ部200用の各種のリード線11,12,13を挿入するための挿通孔50bが先端側から後端側に亘って貫通する形で設けられている。なお、図1には、説明の便宜上、3本のリード線11,12,13のみが示され、それら以外のリード線の図示は、省略した。挿通孔50b内には、上記リード線11等と、検出素子部300の検出素子側パッド121及びヒータ部200のヒータ側パッド120とを接続する接続端子16が収容されている。各リード線11等は、外部において、図示されないコネクタに接続可能な構成となっており、そのようなコネクタを介してECU等の外部機器と各リード線11等との間で、電気信号の入出力が行われる。
【0043】
更に、セパレータ50の後端側には、外筒25の後端側の開口部25bを閉塞するための略円柱状のゴムキャップ52が配置されている。このゴムキャップ52は、外筒25の後端内に収容された状態で、外筒25が径方向内側に向かって加締められることにより、外筒25に固着される。また、ゴムキャップ52にも、リード線11等をそれぞれ挿入するための挿通孔52aが先端側から後端側に亘って貫通する形で設けられている。
【0044】
次に、図3図6を参照し、多孔質保護層20について説明する。図3は、ガスセンサ素子100の先端側の軸線L方向に沿う断面図、図4は、軸線L方向に直交する方向で切断されたガスセンサ素子100の先端側の構成を模式的に表した断面図、図5は素子本体100aを先端側から見た斜視図、図6はガスセンサ素子100の主面(保護層111)に垂直な方向から見たときの、多孔質保護層20の形状を示す正面図である。
である。
【0045】
図3に示すように、素子本体100aの先端部100bには、排気ガス中に含まれる特定成分(酸素等)を検知するための検知部150が設けられている。検知部150は、主として、検出素子部300が有する各電極部(第1電極部104a、第2電極部106a、第3電極部108a、及び第4電極部110a)、及び測定室107cにより構成される。
具体的には、軸線L方向に素子本体100aに含まれるすべての電極104、106、108、110のうち、最先端と最後端との間の領域を検知部150とする。
【0046】
そのような検知部150の周りを被覆する形で、素子本体100aの先端部100bに多孔質保護層20が形成されている。多孔質保護層20には、ガス透過が可能なように三次元網目構造の気孔が形成されている。
多孔質保護層20は、第1保護層21と、第2保護層22a、22bとを有している。なお、本実施形態では第2保護層22a、22bが複数層(2層)からなるが、第2保護層は1層でもよく、3層以上でもよい。
さらに、本実施形態では、多孔質保護層20と素子本体100aとの間に、多孔質保護層20と気孔率が異なる多孔質の内側保護層23が介装されている。なお、本実施形態では、内側保護層23の厚みは、第1保護層21及び第2保護層22a、22bよりも薄い。
【0047】
多孔質保護層20を構成する第1保護層21と第2保護層22a、22b、及び内側保護層23は、例えば、チタニア、アルミナ、スピネル、ジルコニア、ムライト、ジルコン及びコージェライトからなる群より選ばれる1種以上のセラミック粒子を焼成等により結合して形成することができる。これらの粒子を含むスラリーを焼結することで、セラミック粒子間に気孔を形成することができる。なお、上記粒子を含むスラリーに、カーボン、樹脂製ビーズ、有機又は無機バインダ等からなる焼失性の造孔材が添加されてもよい。
本実施形態では第1保護層21と、第2保護層22a、22bとは組成が同一である。
又、スラリーに添加する焼失性の造孔材の割合を多くすれば層の気孔率が大きくなるので、造孔材の割合を調整することで、内側保護層23と多孔質保護層20の気孔率を変えることができる。
【0048】
ここで、第1保護層21は検知部150よりも先端側に自身の後端21eを有して素子本体100aの先端100e(図5の先端向き面100c)までの領域を覆っている。又、第2保護層22a、22bは検知部150よりも後端側にそれぞれ自身の後端22ae、22beを有して検知部150および第1保護層21を覆っている。
なお、図5に示すように、多孔質保護層20は、素子本体100aの先端部100bにおける先端面100c及び周面(主面及び側面)100dを覆う形で、素子本体100aの先端部100bに形成されている。
【0049】
詳細には、図3に示すように、内側保護層23は検知部150よりも後端側に自身の後端23eを有して素子本体100aの先端100eまでの領域を覆っている。そして、第1保護層21は内側保護層23のうち、先端100eから検知部150よりも先端側の領域を覆っている、つまり、第1保護層21は素子本体100aを間接的に覆っている。
又、第2保護層22aは、第1保護層21及び内側保護層23を覆い、さらに内側保護層23の後端23eよりも後端側で素子本体100aを覆っている。第2保護層22bは、第2保護層22aを覆い、さらに第2保護層22aの後端22aeよりも後端側で素子本体100aを覆っている。
【0050】
又、図6に示すように、本実施形態では、多孔質保護層20(第2保護層22b)の後端縁20fは、ガスセンサ素子100の幅方向の中央に向かって先端側に凹む形状である。これは、多孔質保護層20がディップ法で形成され、ガスセンサ素子100をスラリーに浸漬する際にガスセンサ素子100の表面とスラリーとの摩擦力によって、中央部が凹んだ形状のままスラリーが付着したことを示す。
【0051】
そして、第1保護層21は、先端側の角部21dの厚みがその他の部分より薄くなっている。これは、第1保護層21がディップ法で形成され、スラリーの流動によって先端側の角部21dの厚みが薄くなったことを示す。
一方、第2保護層22aは第1保護層21の外側に形成されている。このため、第1保護層21と第2保護層22aを製造が容易なディップ法で形成しても、素子本体100aの先端部100bに介在する第1保護層21が第2保護層22a用スラリーの流動を抑制し、第2保護層22a先端側の角部22d1の厚みを厚くすることができる。
【0052】
さらに、第1保護層21が検知部150の先端150aより先端側のみ形成されていることで、多孔質保護層20全体の側面(検知部150を覆う第1保護層21と第2保護層22a、22b)の厚みが厚くなりすぎない。
【0053】
これにより、第1保護層21と第2保護層22a、22bを合わせた多孔質保護層20全体の厚みの不均一を低減することができ、ひいては熱容量が過大になって活性化が遅延することも抑制できる。
又、第1保護層21と第2保護層22a、22bをディップ法等で簡便に形成できるので、スプレー法のように熟練を要さず、コストアップを抑制できる。
さらに、第1保護層21と第2保護層22a、22bをディップ法等で形成した際、後述する擦切りを行って厚みの不均一をさらに低減する場合であっても、擦切り前の多孔質保護層20全体の厚みの不均一が抑制されるので、擦切りによる材料のロスが少なくコストダウンをすることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、多孔質保護層20(の最外側)の先端面20tや側面20sは平坦面であり、側面20sがストレート形状になっている。これは、通常のディップ法であれば第1保護層21と同様、多孔質保護層20も軸線L方向に沿って厚みが最大になる領域があるはずであるところ、後述する製造方法によって厚い部分を修正して、表面を平坦で軸線L方向に略均一な厚みにしたことを示す。
このようにすると、多孔質保護層20の厚みの不均一をさらに低減できる。
【0055】
なお、本実施形態では、第1保護層21と第2保護層22aとの境界に、多孔質保護層20よりも気孔率が小さい(多孔質保護層20より緻密な)境界層BR1が設けられている。同様に、第2保護層22aと第2保護層22bとの境界に、多孔質保護層20よりも気孔率が小さい境界層BR2が設けられている。
境界層BR1は、第1保護層21をディップ法等で形成して乾燥させた後、第2保護層22aを第1保護層21に重ねてディップ法等で形成させることにより、多孔質保護層20よりも緻密になる。境界層BRも同様である。境界層BR1、BR2は、第1保護層21や第2保護層22aの厚み(特に角部の厚み)を見積もるために有効な目印となる。
【0056】
なお、「境界層BR1、BR2が多孔質保護層20よりも気孔率が小さい」とは、断面SEM上で第1保護層と第2保護層の間に、これらの層よりも明度が明るい白いスジ(=空隙が少ない)が観察された場合を「気孔率の小さい」とみなし、この白い領域を境界層と定める。
【0057】
又、内側保護層23の気孔率が多孔質保護層20の気孔率より大きく設定されていると、外部から被水した際に毛細管現象によって多孔質保護層20から第1保護層21への水の浸透を抑制することができ、耐被水性が向上するので好ましい。但し、第1保護層21の気孔率が多孔質保護層20の気孔率より大きいことは必須ではなく、他の目的のため、第1保護層21の気孔率が多孔質保護層20の気孔率より小さく設定されてもよい。
【0058】
又、内側保護層23が「多孔質保護層20と素子本体100aとの間に」介装されているとは、「多孔質保護層20と素子本体100aとのすべての空間」に介装されていることは必要でなく、上記空間の一部に介装されていればよい。
例えば、上述のように、本実施形態では、内側保護層23は検知部150よりも後端側まで素子本体100aを覆うが、内側保護層23の後端23eよりも後端側の素子本体100aは第2保護層22a、22bが直接覆っている。
なお、内側保護層23は、検知部150に至る水の滲透防止、検知部150周囲の断熱のために形成され、少なくとも検知部150の表面を覆うのが必要である。
又、内側保護層23の気孔率が高い場合は断熱効果や耐被水性が向上し、内側保護層23の気孔率が低い場合は被毒物質をよりトラップすることができる。
【0059】
以上のようなガスセンサ1に、ガスセンサ素子100が使用される。
【0060】
次いで、図7図21を参照し、本発明の第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子の製造方法について説明する。本実施形態のガスセンサ素子の製造方法は、内側保護層形成工程、第1浸漬工程、第1塗膜擦切工程、第1塗膜乾燥工程、第2浸漬工程、第2塗膜擦切工程を備えている。
又、本実施形態では、第2浸漬工程と第2塗膜擦切工程とを2回繰り返し、かつ1回目の第2塗膜擦切工程とその後の2回目の第2浸漬工程との間に、第2塗膜乾燥工程をさらに備える。さらに、2回目の第2塗膜擦切工程の後に、最終乾燥工程をさらに備える。
なお、本発明は、少なくとも第1浸漬工程、第1塗膜擦切工程、第1塗膜乾燥工程、第2浸漬工程を備えていればよく、第2浸漬工程は1回でもよく、3回以上繰り返してもよい。
【0061】
内側保護層形成工程は、素子本体100a(ガスセンサ素子100)の所定部位(本例では、検知部150よりも後端側から素子本体100aの先端側までの領域)を、内側保護層23形成用のスラリー(以下、単に「スラリー」と称する)S1に浸漬することで、素子本体100aにおける先端部100bの先端面100c及び周面100dに、スラリーS1の内側保護層塗膜700を形成する工程である。内側保護層塗膜700は、乾燥及び焼成後に内側保護層23となる。
なお、後述する第1浸漬工程及び第2浸漬工程で用いる、多孔質保護層20(第1保護層21と第2保護層22a、22b)形成用のスラリーを「スラリーS2」とする。
【0062】
スラリーS1、S2は、従来、この種の浸漬工程で使用されるものと同様、例えば、チタニア、アルミナ、スピネル、ジルコニア、ムライト、ジルコン及びコージェライトからなる群より選ばれる1種以上のセラミック粒子を含む溶液からなる。ただし、スラリーS1、S2は、従来、使用されるのと比べて、せん断速度が0.1s-1のときの粘度は高く設定されることが好ましく、せん断速度が10s-1のときの粘度は低く設定されることが好ましい。
スラリーS1、S2の粘度(mPa・s)は、例えば、室温(23℃)条件下において、せん断速度が0.1s-1のときは、43000mPa・s以上に設定されることが好ましく、せん断速度が10s-1のときは、2500mPa・s以下に設定されることが好ましい。
【0063】
なお、スラリーS1、S2の粘度については、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、室温(23℃)条件下において、せん断速度が0.1s-1のとき、65000mPa・sに設定され、せん断速度が10s-1のとき、2400mPa・sに設定される。スラリーS1、S2の粘度が、このように設定されると、後述する第1塗膜及び第2塗膜擦切工程において、素子本体100aに形成された、スラリーS2からなる塗膜750,800の厚みを調整し易くなる。なお、スラリーS1、S2の粘度は、スラリーS1、S2中に、例えば、合成樹脂、天然高分子等からなる有機バインダ、アルミナゾル、水等を添加することで、適宜、調整される。なお、スラリーS1、S2の粘度は粘度計(レオメータMCR102:Anton-Paar社製)を用いて計測した。
【0064】
ここで、スラリーS1、S2の調合例について説明する。チタニア粉末、スピネル粉末、アルミナゾル、有機バインダ(例えば、アクリル系共重合物)、分散剤(例えば、アニオン性高分子分散剤)、消泡剤(例えば、アマイドワックス系消泡剤)、及び水を、それぞれ所定の割合で配合し、それらを所定時間の間、混合することで、目的とするスラリーが得られる。
【0065】
図7は、内側保護層形成工程において、素子本体100aが、ディッピング槽400の上方で待機している状態を示す説明図である。図7には、内側保護層形成工程が開始される前の素子本体100a等の状態が示されている。図7には、スラリーS1を収容する上方に開口した容器状のディッピング槽400と、そのディッピング槽400の上方で静止した状態で待機する素子本体100aが示されている。
素子本体100aは、その長手方向が鉛直方向に沿い、かつその先端部100bが下側を向く形で、所定の冶具を利用して固定されている。素子本体100aの先端部100bは、ディッピング槽400に収容されたスラリーS1と対向した状態となっている。図7には、素子本体100aの表面のうち、電極保護部113a(本例では、検知部150と同一の領域)が形成されている側の表面(保護層111である主面)が、紙面手前側を向く形で、示されている。
なお、図7に示されるように、素子本体100aがディッピング槽400(又は後述するディッピング槽450)の上方で静止して待機している位置を、「待機位置」と称する。
【0066】
素子本体100aは、所定の冶具に固定された状態で、上下方向(鉛直方向)に沿いつつ、待機位置と、その下方にあるディッピング槽400の内側の位置(後述する浸漬位置)との間を、往復移動できるように構成されている。素子本体100aを往復移動させる機構としては、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、サーボモータ等を利用した公知の往復機構が適用される。
【0067】
内側保護層形成工程においては、待機位置から下降した素子本体100aの先端部100bが、ディッピング槽400内のスラリーに浸漬している状態となる。
スラリー中に浸漬する先端部100bの高さ位置は、スラリーS1が、検知部150よりも後端側から、先端部100bの先端面100c及び周面100dまで万遍なく付着するように設定される。
なお、素子本体100aの先端側の所定領域にスラリーが付着するように、スラリー中に浸漬されている素子本体100aの位置を、「浸漬位置」と称する(後述する図10参照)。素子本体100aは、必要に応じて、所定時間の間、浸漬位置で静止してもよいし、浸漬位置に到達した後、直ちに引き上げられてもよい。
【0068】
図8に示すように、内側保護層形成工程により、素子本体100aのうち検知部150よりも後端側から先端部100bまでの領域を、スラリーS1に浸漬することで、この領域に、スラリーS1の内側保護層塗膜700を形成することができる。なお、スラリー中に浸漬された素子本体100aの先端部100bは、その後、引き上げられ、次の内側保護層乾燥工程に付される。
【0069】
図8に示すように、内側保護層乾燥工程は、内側保護層塗膜700を乾燥して固化し、未焼成内側保護層23xを形成する工程である。内側保護層塗膜700を乾燥しないで、以下の第1浸漬工程を行うと、内側保護層塗膜700と、後述する第1塗膜750が混ざり合ったり、第1浸漬工程において第1塗膜750が流れ落ちる等の不具合が生じるからである。
【0070】
なお、「固化」とは、水分が0になるまで乾燥することが好ましいが、必ずしも水分が完全に0になるまでの必要はなく、第1浸漬工程において第1塗膜750が流れ落ちたり、内側保護層塗膜700と混ざり合わないよう(要は、焼成後に所望の内側保護層と第1保護層とがそれぞれ形成されるよう)、固まって形状を保っていればよい。
又、内側保護層形成工程では、乾燥前の内側保護層塗膜700の擦切工程を行わなくてよい。
なお、内側保護層23の厚みを確保するために、必要に応じて内側保護層形成工程と乾燥工程を複数回行ってもよい。
内側保護層乾燥工程の後、次の第1浸漬工程に付される。
【0071】
第1浸漬工程は、素子本体100a(ガスセンサ素子100)の検知部150よりも先端側を、多孔質保護層20形成用のスラリーS2に浸漬することで、素子本体100aにおける先端部100bの先端面100c及び周面100dに、スラリーS2の第1塗膜750を形成する工程である。
なお、第1塗膜750は、乾燥及び焼成後に第1保護層21となる。
【0072】
図9は、第1浸漬工程において、素子本体100aが、ディッピング槽450の上方で待機している状態を示す説明図である。図9には、第1浸漬工程が開始される前の素子本体100a等の状態が示されている。図9には、スラリーS2を収容する上方に開口した容器状のディッピング槽450と、そのディッピング槽450の上方で静止した「待機位置」で待機する素子本体100aが示されている。
「待機位置」における素子本体100aの配置状態は、図7の内側保護層形成工程と同様である。又、素子本体100aの先端部100bには、内側保護層形成工程及び内側保護層乾燥工程により、未焼成内側保護層23xが形成されている。
【0073】
なお、図9に示されるように、待機位置にある素子本体100aと、ディッピング槽450との間には、第1浸漬工程後に行われる第1塗膜擦切工程で使用される擦切型500及び擦切刃600が配置されている。
擦切型500は、水平方向に離間して並ぶ一対の可動刃501、502と、各可動刃501、502を移動させる移動機構(サーボモータと送りネジ等のアクチュエータ)とを備えている。
各可動刃501、502は略矩形状をなし、対向する辺E,E同士が平行に、かつ所定間隔D1で離間して開口(空隙)503を形成している。
待機位置において、素子本体100aの先端部100bは、平面視した際に、開口503の内側に収まるように配されている。
【0074】
図10は、第1浸漬工程において、待機位置から下降した素子本体100aの先端部100bが、ディッピング槽450内のスラリーS2に浸漬している状態を示す説明図である。待機位置で待機していた素子本体100a(図9参照)が、下方に向かって移動すると、先端部100bは、擦切型500の開口503を上側から下側へ通り抜ける。その際、先端部100bは、擦切型500と接触することなく、開口503を通過する。その後、素子本体100aは、更に、下方へ向かって移動し、先端部100bが、ディッピング槽450内に収容されているスラリーS2中に浸漬される。
【0075】
スラリーS2中に浸漬する先端部100bの高さ位置(浸漬位置)は、スラリーS2が、検知部150よりも先端側における先端部100bの先端面100c及び周面100dに万遍なく付着するように設定される。
図11は、スラリーS2中に浸漬した素子本体100aを、擦切型500で擦切る直前まで引き上げた状態を示す。検知部150よりも先端側にて、未焼成内側保護層23xを覆うように、先端部100bの先端面100c及び周面100dに、スラリーS2の第1塗膜750を形成する。
第1浸漬工程の後、第1塗膜擦切工程に付される。
【0076】
図12は、擦切型500の平面図である。
開口503の周縁を形成する一対の辺E,Eが擦切刃として機能し、図10の第1浸漬工程で付着したスラリーS2の第1塗膜750のうち、各辺E,Eよりも各可動刃501、502側にある余分な第1塗膜750は、開口503を通過する際に各辺E,Eで擦切られ、第1塗膜750の厚み(幅)が間隔D1に調整されるのである。
なお、図12の場合、保護層111(主面)に平行な方向の第1塗膜750の厚み(幅)が間隔D1に調整されるだけである。
そこで、詳しくは後述するが、図13に示すように、素子本体100a(および先端部100b)を90度回転(図13では反時計回り)させ、さらに間隔D2をさらに狭めることで、、保護層111(主面)に垂直な方向に延びる第1塗膜750の厚み(幅)を間隔D2に調整することができる。
なお、図13の先端部100bの主面側を図12よりも先に擦切っても良いし、図16で先端を擦切る順番を、図12図13よりも先にしてもよい。
【0077】
擦切刃600は、図9に示されるように、開口503と上下方向で重ならないように、開口503よりも外側の位置に退避しており、その位置を、擦切刃600の「退避位置」と称する。
なお、本実施形態の場合、擦切刃600は、擦切型500の上面500a側に配されている。擦切刃600は、擦切型500の上面500aとの間に隙間が形成されるような高さ位置に配置されている。
【0078】
第1擦切工程は、素子本体100aの先端部100bに付着した第1浸漬工程によるスラリーS2の第1塗膜750を擦り切って、第1塗膜750の一部を除去する工程である。上述した図11のように、第1浸漬工程の後、スラリーS2から素子本体100aの先端部100bが引き上げられると、その先端部100bには、スラリーの付着物からなる第1塗膜750が形成される。そして、第1浸漬工程後、先端部100bに形成されている第1塗膜750の厚みが、第1保護層21として必要な厚みを超えていると、その超えた分の塗膜が、第1擦切工程により除去される。
なお、本明細書において、第1保護層21として必要な塗膜750の厚みを、「必要厚み」と称する
【0079】
本明細書では、第1浸漬工程後に先端部100bに付着した第1塗膜750のうち、先端部100bの周面100dに形成された塗膜を、「周面塗膜751」(図14)と称し、また、先端部100bの先端面100cに形成された塗膜を、「先端塗膜752」(図16)と称する。本明細書では、軸方向(軸線L方向)において、先端部100bの先端面100cよりも先側にある塗膜を、先端塗膜752とする。
【0080】
本実施形態の第1擦切工程は、周面塗膜751の一部(余分な塗膜)751aを、擦切型500を利用して除去する工程(周面擦切工程)と、先端部100bの先端面100cに形成された先端塗膜752の一部(余分な塗膜)752aを、擦切刃600を利用して除去する工程(先端面擦切工程)とを備えている。
さらに、余分な塗膜751aのうち、図14に示したように保護層111(主面)に平行な方向に厚みを有する塗膜を塗膜751a1とし、図15に示したように保護層111(主面)に垂直な方向に厚みを有する塗膜を塗膜751a2とする。
なお、本実施形態では、先に周面擦切工程が行われ、その後、先端面擦切工程が行われる。但し、例えば重力の関係で、スラリーが垂れてくるのを考慮して周面擦切工程を先にし、先端面擦切工程を最後にしてもよい。
【0081】
図14は、周面擦切工程において、周面塗膜751の一部(余分な塗膜)751a1が除去される様子を示す説明図である。第1浸漬工程後、引き上げられた素子本体100aの先端部100bに、必要厚みを超えた周面塗膜751が付着していると、その超えた分の塗膜(余分な塗膜)751a1が、先端部100bが擦切型500の開口503(一対の辺E,E)を下側から上側へ通り抜ける際に、辺E,Eによって擦り切られる。このようにして、先端部100bが、辺E,Eを通過する際に、余分な塗膜751a1が、必要厚み分の周面塗膜751から分離される。
これにより、保護層111(主面)に平行な方向の第1塗膜750の厚み(幅)が間隔D1に調整される。
【0082】
なお、上記実施形態では素子本体100aを引き上げることで、擦切型500を先端面100cに向けて相対移動させつつ辺E,Eによって擦切る動作としていたが、反対に素子本体100aを引き下げたりすることで、擦切型500を素子本体100aの後端に向けて相対移動させつつ擦切ってもよい。しかし、上記実施形態の方が、分離された余分な塗膜751a1が素子本体100aに付着する可能性がないため、望ましい。
【0083】
なお、分離された余分な塗膜751a1の一部は、自重等により落下し、ディッピング槽450内へ戻される。擦切型500は、例えば、金属製の板材が所定形状に加工されたものからなる。擦切型500の開口503の大きさ(間隔D1)は、上述したように、素子本体100aが通過できると共に、多孔質保護層20を形成するために、必要な厚みの第1塗膜750(周面塗膜751)が、周面擦切工程後に先端部100bの周りに形成されるように設定されている。
スラリーの粘度が高い場合は、ディッピング槽450内に戻らず、擦切型500に付着することがあるため、適宜除去すると良い。
【0084】
図15は、周面擦切工程において、周面塗膜751の一部(余分な塗膜)751a2が除去される様子を示す説明図である。図15は、図14と同様であるが、図13と同様、素子本体100a(および先端部100b)を90度回転(図15では反時計回り)させ、間隔D2を間隔D1よりもさらに狭めた状態での擦切工程である。
具体的には、図14において余分な塗膜751a1を除去した後、先端部100bをもう一度第1浸漬工程から引き上げられた状態(つまり、図14の擦切りの後、先端部100bを間隔D1の開口503を通して下方に移動させた状態)から、移動機構を動作させて間隔D2に狭め、次いで先端部100bを間隔D2の開口503を通して引き上げる。
なお、先端部100bを間隔D1の開口503を通して下方に移動させる際に、先端部100bが再びディッピング槽450内に浸漬されないように高さを調節する方が望ましい。
【0085】
図15において、先端部100bに、必要厚みを超えた周面塗膜751が付着していると、その超えた分の塗膜(余分な塗膜)751a2が、先端部100bが擦切型500の開口503(一対の辺E,E)を下側から上側へ通り抜ける際に、辺E,Eによって擦り切られる。このようにして、先端部100bが、辺E,Eを通過する際に、余分な塗膜751a2が、必要厚み分の周面塗膜751から分離される。
これにより、保護層111(主面)に垂直な方向の第1塗膜750の厚み(幅)が間隔D2に調整される。
以上により、擦切型500にて第1塗膜750の厚み(幅)がそれぞれ間隔D1,D2に調整されるのである。
【0086】
なお、上記実施形態では素子本体100aを引き上げることで、擦切型500を先端面100cに向けて相対移動させつつ辺E,Eによって擦切る動作としていたが、反対に素子本体100aを引き下げたりすることで、擦切型500を素子本体100aの後端に向けて相対移動させつつ擦切ってもよい。しかし、上記実施形態の方が、分離された余分な塗膜751a2が素子本体100aに付着する可能性がないため、望ましい。
又、上記実施形態では、図14に示す保護層111(主面)に平行な方向の周面塗膜751を擦切る動作の後に、図15に示す保護層111(主面)に垂直な方向の周面塗膜751を擦切る動作を行っていたが、擦切る順番を逆にしても良い。
【0087】
図16は、先端面擦切工程において、先端塗膜752の一部(余分な塗膜)752aが除去される様子を示す説明図である。周面擦切工程後、擦切型500の開口503内を下側から上側へ通過した素子本体100aは、先端部100bの先端面100cの位置が、先端面擦切工程のために、予め定められた所定の高さ位置となるように上方へ移動する。
【0088】
先端面擦切工程のための先端面100cの所定の高さ位置は、先端面100cに形成される先端塗膜752の厚みが、先端面擦切工程後に、第1保護層21として必要な厚みとなるように設定される。
本実施形態の場合、先端面擦切工程が行われる際の先端面100cの高さ位置は、上述した待機位置で静止した素子本体100aの先端面100cの高さ位置と同じになるように設定されている。他の実施形態においては、先端面擦切工程が行われる際の先端面100cの高さ位置は、待機位置で静止した素子本体100aの先端面100cの高さ位置と異なってもよい。
【0089】
図16には、待機位置で静止した状態の素子本体100aが示されている。その状態の素子本体100aの先端部100bには、余分な塗膜751a1、751a2が除去されて厚みが調整された周面塗膜751を含む第1塗膜750が形成されている。このような第1塗膜750のうち、先端面100cに形成された先端塗膜752が、必要厚みを超えていると、その超えた分の塗膜(余分な塗膜752a)が、擦切刃600により擦り切られる。
【0090】
擦切刃600は、例えば、金属製の板材が所定形状に加工されたものからなる。擦切刃600は、その先端部601が水平方向に沿って往復移動できるように、公知の往復機構等を利用して構成されている。先端面擦切工程において、擦切刃600の先端部601の高さ位置、及び素子本体100aの先端部100bの高さ位置は、必要厚み分の先端塗膜752が、先端面100cに残されるように設定される。
なお、図9において、素子本体100aは、その長手方向が、鉛直方向(上下方向)に沿う形で配されている。そのような素子本体100aの軸方向(軸線L方向)は、鉛直方向に沿った状態となっている。そのため、擦切刃600は、素子本体100aの軸線方向に対して垂直に交わる方向に沿って移動すると言える。
【0091】
擦切刃600は、上述した第1浸漬工程の間、並びに周面擦切工程の間は、それぞれ図9等に示されるように、退避位置で静止している。素子本体100aが、周面擦切工程後、待機位置へ戻されて静止すると、擦切刃600は、先端塗膜752の余分な塗膜752aを擦り切るように、水平方向へ移動する。擦切刃600は、その先端部601が、退避位置から、素子本体100a側へ水平移動し、更に、開口503の上方において、開口503を長手方向に横切るように水平移動する。擦切刃600は、開口503を横切るように水平移動する際に、先端部601が、必要厚みを超えた余分な塗膜752aを、必要厚み分の先端塗膜752から削り取る形となる。このようにして、先端面100cに形成された先端塗膜752が、必要厚みを超えていると、その超えた分の塗膜(余分な塗膜752a)が、擦切刃600により擦り切られる。
【0092】
図17は、先端面擦切工程後、擦切刃600が退避位置へ戻される様子を示す説明図である。擦切刃600は、先端塗膜752の余分な塗膜752aを擦り切った後、再び、退避位置へ戻るように、擦り切り時とは逆向きに水平移動する。
【0093】
以上のような第1擦切工程(周面擦切工程、先端面擦切工程)を経ることで、素子本体100aの先端部100bに形成された第1塗膜750は、厚みが大きくなり過ぎないように調整される。
なお、第1擦切工程において、固化した未焼成内側保護層23xを擦切らないようにすることが好ましい。、固化した未焼成内側保護層23xを擦切ると、未焼成内側保護層23xが破損したり、可動刃501、502(辺E,E)が変形する恐れがあるからである。「固化した未焼成内側保護層23xを擦切らない」とは、具体的には、固化した未焼成内側保護層23xの厚みよりも、間隔D1,D2をそれぞれ大きくすればよい。又、例えば予め所定の浸漬時間やスラリーS1の粘度等による未焼成内側保護層23xの固化後の厚みを測定しておき、その測定値を基に間隔D1,D2を設定すればよい。
【0094】
このような第1擦切工程の後、第1塗膜乾燥工程に付される。
図11に戻り、第1塗膜乾燥工程は、第1塗膜750を乾燥して固化し、未焼成第1保護層21xを形成する工程である。第1塗膜750を乾燥しないで、以下の第2浸漬工程を行うと、第1塗膜750と、後述する第2塗膜800が混ざり合ったり、第2浸漬工程において第1塗膜750が流れ落ちる等の不具合が生じるからである。
なお、「固化」とは、水分が完全に0になるまでの必要はなく、第2浸漬工程において第1塗膜750が流れ落ちたり、第2塗膜800と混ざり合わないよう(要は、焼成後に所望の第1保護層と第2保護層とがそれぞれ形成されるよう)、固まって形状を保っていればよい。
なお、第1保護層21の厚みを確保するために、必要に応じて第1浸漬工程と第1乾燥工程を複数回行ってもよい。但し、第1保護層21を1回の浸漬で形成してもよい。
第1塗膜乾燥工程の後、次の第2浸漬工程に付される。
【0095】
第2浸漬工程は、未焼成内側保護層23x及び未焼成第1保護層21xが形成された素子本体100a(ガスセンサ素子100)の検知部150よりも後端側から先端までの領域を、スラリーS2に浸漬することで、素子本体100aにおける上記領域に、スラリーS2の第2塗膜800を形成する工程である。
なお、第2塗膜800は、乾燥及び焼成後に第2保護層22aとなる。
【0096】
第2浸漬工程は、第1浸漬工程と同様な工程であるので概略を説明する。まず、図9と同様に素子本体100aがディッピング槽450の上方の「待機位置」で待機した状態から、素子本体100aが下降し、先端部100bは、擦切型500の開口503を上側から下側へ通り抜ける。その際、先端部100bは、擦切型500と接触することなく、開口503を通過する。その後、素子本体100aは、更に下方へ向かって移動し、図10と同様にして、上記領域がディッピング槽450内に収容されているスラリーS2中に浸漬される。
なお、第2浸漬工程は、第1浸漬工程と完全に同一ではなく、図10(第1浸漬工程)では、先端部のみ浸漬していたが、第2浸漬工程では検知部よりも後端まで(内側保護層の全体)を浸漬する。
【0097】
図18は、第2浸漬工程にてスラリーS2中に浸漬した素子本体100aを、擦切型500で擦切る直前まで引き上げた状態を示し、図11に対応する。検知部150よりも後端側から先端に向かい、未焼成内側保護層23x及び未焼成第1保護層21xを覆うように、先端部100bの先端面100c及び周面100dに、スラリーS2の第2塗膜800を形成する。
第2浸漬工程の後、第2塗膜擦切工程に付される。
【0098】
第2塗膜擦切工程は、第1塗膜擦切工程と同様な工程であるので概略を説明する。
図19に示すように、第2塗膜擦切工程は、素子本体100aの先端部100bに付着した第2浸漬工程によるスラリーS2の第2塗膜800を擦り切って、第2塗膜800の一部を除去する工程である。上述した図18のように、第2浸漬工程の後、スラリーS2から素子本体100aの先端部100bが引き上げられると、その先端部100bには、スラリーの付着物からなる第2塗膜800が形成される。そして、第2浸漬工程後、先端部100bに形成されている第2塗膜800の厚みが、第2保護層22aとして必要な厚みを超えていると、その超えた分の塗膜が、第2塗膜擦切工程により除去される。
なお、本明細書において、第2保護層22aとして必要な塗膜800の厚みを、「必要厚み」と称する
【0099】
本明細書では、第2浸漬工程後に先端部100bに付着した第2塗膜800のうち、先端部100bの周面100dに形成された塗膜を、「周面塗膜801」と称し、また、先端部100bの先端面100cに形成された塗膜を、「先端塗膜802」と称する。本明細書では、軸方向(軸線L方向)において、先端部100bの先端面100cよりも先側にある塗膜を、先端塗膜802とする。
【0100】
本実施形態の第2塗膜擦切工程は、第1塗膜擦切工程と同様に、周面塗膜801の一部(余分な塗膜)801aを、擦切型500を利用して除去する工程(周面擦切工程)と、先端部100bの先端面100cに形成された先端塗膜802の一部(余分な塗膜)802aを、擦切刃600を利用して除去する工程(先端面擦切工程)とを備えている。
さらに、余分な塗膜801aのうち、図19に示したように保護層111(主面)に平行な方向に厚みを有する塗膜を塗膜801a1とし、図20に示したように保護層111(主面)に垂直な方向に厚みを有する塗膜を塗膜801a2とする。
なお、第2塗膜擦切工程でも、先に周面擦切工程が行われ、その後、先端面擦切工程が行われる。但し、例えば重力の関係で、スラリーが垂れてくるのを考慮して周面擦切工程を先にし、先端面擦切工程を最後にしてもよい。
【0101】
第2塗膜擦切工程における擦切型500(可動刃501,502、擦切刃600)の動作は、第1塗膜擦切工程と同様であるので、説明を省略する。
以上のような第2擦切工程(周面擦切工程、先端面擦切工程)を経ることで、素子本体100aの先端部100bに形成された第2塗膜800は、厚みが大きくなり過ぎないように調整される。
具体的には、図19図20に示すように、保護層111(主面)に平行な方向の第2塗膜800の厚み(幅)が間隔Dxに調整される。又、保護層111(主面)に垂直な方向に延びる第2塗膜800の厚み(幅)が間隔Dyに調整される。
【0102】
なお、第2擦切工程においても、固化した未焼成内側保護層23x及び未焼成第1保護層21xを擦切らないようにすることが好ましい。、固化した未焼成内側保護層23x及び未焼成第1保護層21xを擦切ると、未焼成内側保護層23x及び未焼成第1保護層21xが破損したり、可動刃501、502(辺E,E)が変形する恐れがあるからである。「固化した未焼成内側保護層23x及び未焼成第1保護層21xを擦切らない」とは、具体的には、固化した未焼成内側保護層23x及び未焼成第1保護層21xの厚みよりも、間隔Dx,Dyをそれぞれ大きくすればよい。又、例えば予め所定の浸漬時間やスラリーS1、S2の粘度等による未焼成内側保護層23x及び未焼成第1保護層21xの固化後の厚みを測定しておき、その測定値を基に間隔Dx,Dyを設定すればよい。
なお、Dx>D1,Dy>D2とする。
【0103】
本実施形態では、第2浸漬工程と、第2塗膜擦切工程とを2回繰り返す。そのため、上記した1回目の第2塗膜擦切工程の後、2回目の第2浸漬工程の前に、第2塗膜800を乾燥して固化する第2塗膜乾燥工程をさらに備える。
第2塗膜800を乾燥しないで、2回目の第2浸漬工程を行うと、第2塗膜800と、後述する2回目の第2塗膜810が混ざり合ったり、2回目の第2浸漬工程において第2塗膜810が流れ落ちる等の不具合が生じるからである。
なお、「固化」の定義は上述の第1塗膜乾燥工程と同様である。
第2塗膜乾燥工程の後、2回目の第2浸漬工程に付される。
【0104】
図21は、2回目の第2浸漬工程にてスラリーS2中に浸漬した素子本体100aを、擦切型500で擦切る直前まで引き上げた状態を示し、図18に対応する。検知部150よりも後端側から先端に向かい、未焼成第2保護層22xaを覆うように、先端部100bの先端面100c及び周面100dに、スラリーS2の第2塗膜810を形成する。
なお、未焼成第2保護層22xaは第2塗膜800が第2塗膜乾燥工程で乾燥したものである。又、第2塗膜810は、乾燥及び焼成後に第2保護層22bとなる。
【0105】
2回目の第2浸漬工程の後、2回目の第2塗膜擦切工程に付される。
図21に示すように、2回目の第2浸漬工程後に先端部100bに付着した第2塗膜810のうち、先端部100bの周面100dに形成された塗膜を、「周面塗膜811」と称し、また、先端部100bの先端面100cに形成された塗膜を、「先端塗膜812」と称する。
2回目の第2塗膜擦切工程では、1回目の第2塗膜擦切工程と同様に、周面塗膜811の一部(余分な塗膜)811aを、擦切型500を利用して除去する工程(周面擦切工程)と、先端部100bの先端面100cに形成された先端塗膜812の一部(余分な塗膜)812aを、擦切刃600を利用して除去する工程(先端面擦切工程)とを備えている。
さらに、余分な塗膜811aのうち、図21に示したように保護層111(主面)に平行な方向に厚みを有する塗膜を塗膜811a1とする。保護層111(主面)に垂直な方向に厚みを有する塗膜は図示しないが、図20の塗膜801a2の表面に形成されている。
【0106】
以上の全工程後、素子本体100aの先端部100bに、内側保護層23、多孔質保護層20を形成するための十分な厚みの塗膜700、750、800、810が形成されると、その素子本体100aは、必要に応じて焼成工程に付される。
【0107】
焼成工程は、擦切工程を経た後の塗膜700、750、800、810を焼成して、内側保護層23、多孔質保護層20を得る工程である。焼成工程における焼成温度、及び焼成時間等の諸条件は、各塗膜が焼結されて、内側保護層23、多孔質保護層20が得られるのであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜、設定される。焼成工程は、例えば、1000℃、3時間の条件で実施される。
【0108】
以上のように、本実施形態のガスセンサ素子の製造方法では、少なくとも第1浸漬工程、第1塗膜擦切工程、第1塗膜乾燥工程、第2浸漬工程を経ることで、ガスセンサ素子100(素子本体100a)の検知部150が配置された先端部100bに、多孔質保護層20を被覆することができ、上述したような多孔質保護層20を備えたガスセンサ素子100(図3図6参照)が得られる。このような本実施形態のガスセンサ素子の製造方法によれば、多孔質保護層20を構成するためのスラリーS1からなる塗膜800の厚みを、擦切工程により、所望の厚みに調整することができる。
【0109】
そのため、本実施形態のガスセンサ素子の製造方法によれば、多孔質保護層20(第1保護層21と第2保護層22a、22b)がディップ法で形成されているので、スプレー法のように熟練を要さず、コストアップを抑制して簡便に形成できる。又、多孔質保護層20の厚みの不均一を低減し、熱容量が過大になって活性化が遅延することも抑制できる。
又、第1塗膜擦切工程や第2塗膜擦切工程を行った場合、それぞれ第1保護層21と第2保護層22a、22bの厚みの不均一をさらに低減できる。
【0110】
なお、擦切刃600を、擦切型500の上面500a側に配置し、かつ上面500aから離した状態で、先端面擦切工程を行う方が、擦切刃600を、擦切型500の下面側に配置するよりは好ましい。何故ならば、除去した余分な塗膜752a等の硬化物の影響等により、擦切刃600の水平移動が妨げられ難いからである。
【0111】
次に、図22を参照し、本発明の第2の観点の実施形態に係るガスセンサ素子100mについて説明する。図22は、ガスセンサ素子100mの先端側の軸線L方向に沿う断面図である。
なお、本発明の第2の観点の実施形態に係るガスセンサ素子100mは、多孔質保護層20mにおける第1保護層21mと、第2保護層22maの構成が異なること以外は、第1の観点の実施形態に係るガスセンサ素子100と同一であるので、同一構成部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0112】
詳しくは後述するが、要は第2の観点の実施形態に係るガスセンサ素子100mは、第1保護層21mの後端21meと、第2保護層22maの後端22meの軸線L方向のそれぞれの位置が第1の観点の実施形態と逆になっている点が異なるだけである。そして、素子本体100maの先端部100mbの角部に第1保護層21mと第2保護層22maとを介在させて両者の合計厚みを確保しつつ、第2保護層22maが検知部150を覆わないことで、検知部150における合計厚みが厚くなり過ぎないようにするという技術思想、効果は同様である。
又、本発明の第2の観点の実施形態に係るガスセンサも、ガスセンサ素子100mの構成が異なること以外は、図1図2の第1の観点の実施形態に係るガスセンサと同一であるので説明を省略する。
【0113】
図22に示すように、素子本体100maの先端部100mbには検知部150が設けられている。検知部150の周りを被覆する形で、素子本体100maの先端部100mbに多孔質保護層20mが形成されている。
多孔質保護層20mは、第1保護層21mと、第2保護層22ma、22bとを有している。なお、本実施形態では第2保護層22ma、22bが複数層(2層)からなるが、第2保護層は1層でもよく、3層以上でもよい。
さらに、本実施形態では、多孔質保護層20mと素子本体100maとの間に、多孔質保護層20mと気孔率が異なる多孔質の内側保護層23が介装されている。なお、本実施形態では、内側保護層23の厚みは、第1保護層21及び第2保護層22ma、22bよりも薄い。
本実施形態では第1保護層21mと、第2保護層22ma、22bとは組成が同一である。
【0114】
ここで、第1保護層21mは検知部150よりも後端側に自身の後端21meを有して素子本体100maの先端100me(図5の先端向き面100cに相当)までの領域を覆っている。
一方、第2保護層22maは検知部150よりも先端側に自身の後端22meを有して第1保護層21mを覆っている。又、第2保護層22bは検知部150よりも後端側に自身の後端22beを有して検知部150、第1保護層21mおよび第2保護層22maを覆っている。
なお、図5と同様、多孔質保護層20mは、素子本体100maの先端部100mbにおける先端面及び周面(主面及び側面)を覆う形で、素子本体100maの先端部100mbに形成されている。
【0115】
詳細には、図22に示すように、第1保護層21mは内側保護層23を覆い、さらに内側保護層23の後端23eよりも後端側で素子本体100aを覆っている。つまり、第1保護層21mは素子本体100aを間接的に覆っている。
又、第2保護層22bは、第1保護層21m及び第2保護層22maを覆い、さらに第1保護層21mの後端21meよりも後端側で素子本体100maを覆っている。
【0116】
本実施形態においても、第1保護層21mは、先端側の角部21mdの厚みがその他の部分より薄くなっている。これは、第1保護層21mがディップ法で形成され、スラリーの流動によって先端側の角部21mdの厚みが薄くなったことを示す。
一方、第2保護層22maは第1保護層21mの外側に形成されている。このため、第1保護層21mと第2保護層22maを製造が容易なディップ法で形成しても、素子本体100maの先端部100mbに介在する第1保護層21mが第2保護層22ma用スラリーの流動を抑制し、第2保護層22ma先端側の角部22md1の厚みを厚くすることができる。
【0117】
さらに、第2保護層22maが検知部150の先端150aより先端側のみ形成されていることで、多孔質保護層20全体の側面(検知部150を覆う第1保護層21mと第2保護層22ma、22b)の厚みが厚くなりすぎない。
【0118】
以上のように、本発明の第2の観点の実施形態においても多孔質保護層20m全体の厚みの不均一を低減することができ、活性化が遅延することも抑制できる。
又、第1保護層21mと第2保護層22ma、22bをディップ法等で簡便に形成できるので、スプレー法のように熟練を要さず、コストアップを抑制できる。
さらに、多孔質保護層20mをディップ法等で形成した際、擦切りを行って厚みの不均一をさらに低減する場合であっても、擦切りによる材料のロスが少なくコストダウンをすることができる。
【0119】
本発明の第2の観点の実施形態に係るガスセンサ素子の製造方法は、
第1浸漬工程にて第1保護層21mとなる第1塗膜750の形成領域(具体的には、第1保護層21mの後端21meとなる浸漬位置)と、第2浸漬工程にて第2保護層22maとなる第2塗膜800の形成領域(具体的には、第2保護層22maの後端21maeとなる浸漬位置)とが異なること以外は、、第1の観点のガスセンサ素子の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0120】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【0121】
ガスセンサ素子100としては、酸素センサ素子の他、NOxセンサ素子等を用いることができる。
【0122】
上記実施形態では、擦切型500をディッピング槽450の直上に設置し、浸漬工程等の擦切工程以外の工程にて素子本体100aを移動させる際に、擦切型500に素子本体100aや塗膜750,800が接触しないように移動させていたが、この形態に限られない。
例えば、擦切型500をディッピング槽450の直上ではなく、異なる位置に配置してもよい。この場合、浸漬工程時に擦切型500に素子本体100aや塗膜750,800が接触しないように精度よく素子本体100aを移動させる必要はなく、ただスラリーを付着させたい領域に合わせて素子本体100aを上下動させるだけでよい。
そして、浸漬工程後に擦切型500と素子本体100aとが近接するように相対移動させ、擦切工程を行うとよい。
【0123】
また、上記実施形態では、擦切型500は一対の可動刃501,502を有し、可動刃501,502の間隔を調整することで塗膜750,800を擦切っていたが、これに限らず、所定の大きさの枠状の擦切型であってもよい。
開口503(辺E,E)の形状は上記に限られず、求められる多孔質保護層の形状に応じて、適宜、直線以外の形に設定されてもよい。
上記の製造方法で製造されたガスセンサ素子の多孔質保護層に対して、必要に応じて、レーザや刃物等による切削加工等を施し、多孔質保護層の形状を微調整してもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 ガスセンサ
20 多孔質保護層
21、21m 第1保護層
21e、21me 第1保護層の後端
22a、22ma、22b 第2保護層
22ae、22mae、22be 第2保護層の後端
23 内側保護層
100、100m ガスセンサ素子
100a、100ma 素子本体
150 検知部
700 内側保護層塗膜
750 第1塗膜
800 第2塗膜
L 軸線
BR1、BR2 境界層
S1、S2 スラリー
図1
図2
図3
図4
図5
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図22