(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134249
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】後部旋回干渉監視装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
B66C23/88 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033264
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100201352
【弁理士】
【氏名又は名称】豊田 朝子
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(72)【発明者】
【氏名】神田 真輔
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205AA05
3F205CA03
3F205HA03
3F205HC08
(57)【要約】
【課題】移動式クレーンを設置するときに、上部旋回体の後部が旋回によって周辺にある物体と干渉するのを検知し、干渉物が移動できるか否かを表示する。
【解決手段】後部旋回干渉監視装置10は、移動式クレーンの上部旋回体の旋回によって上部旋回体の後部が掃引する範囲を含む画像を取得する画像取得部11と、上部旋回体の旋回によって後部が干渉しうる干渉物を検知する干渉検知部12と、干渉検知部12が干渉物を検知した場合に、画像から干渉物が移動できるか否かを判定する可搬判定部14と、干渉物の有無および干渉物が移動できるか否かを表示する表示部15と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式クレーンの上部旋回体の旋回によって前記上部旋回体の後部が掃引する範囲を含む画像を取得する画像取得部と、
前記上部旋回体の旋回によって前記後部が干渉しうる干渉物を検知する干渉検知部と、
前記干渉検知部が前記干渉物を検知した場合に、前記画像から前記干渉物が移動できるか否かを判定する可搬判定部と、
前記干渉物の有無および前記干渉物が移動できるか否かを表示する表示部と、
を備える後部旋回干渉監視装置。
【請求項2】
前記可搬判定部は、前記画像中の前記干渉物の領域から、前記干渉物が移動できる場合と移動できない場合とに分類するニューラルネットワークの学習済モデルを含む、請求項1に記載の後部旋回干渉監視装置。
【請求項3】
前記可搬判定部は、前記画像中の前記干渉物の領域から前記干渉物の種類を分類する、ニューラルネットワークの学習済モデルを含む、請求項1または2に記載の後部旋回干渉監視装置。
【請求項4】
前記干渉検知部は、画像認識装置、レーダ、レーザスキャナおよび超音波検出器の少なくとも1つから得た前記移動式クレーンの周囲の物体の位置と大きさの情報から前記干渉物を検知する、請求項1から3のいずれか1項に記載の後部旋回干渉監視装置。
【請求項5】
前記干渉物が移動できないと前記可搬判定部が判定した場合に、前記移動式クレーンのクレーン作業を始める前に前記移動式クレーンが移動されたか否かの情報を取得する移動情報取得部と、
前記可搬判定部の判定結果、および、クレーン作業を始める前に前記移動式クレーンが移動されたか否かの情報を関連づけて記憶する記憶部と、
を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の後部旋回干渉監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
移動式クレーンの上部旋回体の後部が旋回によって他の物体と干渉することを監視する後部旋回干渉監視に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の後進または駐車する場合に他の物体と干渉することを警告する運転支援技術が実用化されている。例えば、特許文献1には、所望の駐車方法に応じた駐車を行うことができるようにする技術が記載されている。特許文献1の情報処理装置は、自動で車両を駐車させる自動駐車の駐車方法に応じたモードごとに、自動駐車が完了するまでの所要時間を算出し、モードに応じた所要時間の表示を制御することで、自動駐車が完了するまでの所要時間に応じて所望の駐車を行うことができるようにする。特許文献1の技術は、例えば、自動運転を行うことが可能な車両が備える自動運転システムの一部として組み込まれる自動駐車システムに適用することができると謳われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転支援技術を移動式クレーンに応用する場合、クレーンを移動して設置するときの干渉だけでなく、クレーン作業において上部旋回体の旋回による後部の干渉を監視する目的でも適用することが考えられる。しかし、運転支援技術では車両に干渉するものがどのような物体であるかがわからない。車両運転技術を移動式クレーンに応用する場合、干渉する物体が撤去可能かどうかをオペレータが判断して、クレーンを設置する必要がある。
【0005】
本発明では、移動式クレーンを設置するときに、上部旋回体の後部が旋回によって周辺にある物体と干渉するのを検知し、干渉物が移動できるか否かを表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の観点に係る後部旋回干渉監視装置は、
移動式クレーンの上部旋回体の旋回によって前記上部旋回体の後部が掃引する範囲を含む画像を取得する画像取得部と、
前記上部旋回体の旋回によって前記後部が干渉しうる干渉物を検知する干渉検知部と、
前記干渉検知部が前記干渉物を検知した場合に、前記画像から前記干渉物が移動できるか否かを判定する可搬判定部と、
前記干渉物の有無および前記干渉物が移動できるか否かを表示する表示部と、
を備える。
【0007】
好ましくは、前記可搬判定部は、前記画像中の前記干渉物の領域から、前記干渉物が移動できる場合と移動できない場合とに分類するニューラルネットワークの学習済モデルを含む。
【0008】
好ましくは、前記可搬判定部は、前記画像中の前記干渉物の領域から前記干渉物の種類を分類する、ニューラルネットワークの学習済モデルを含む。
【0009】
好ましくは、前記干渉検知部は、画像認識装置、レーダ、レーザスキャナおよび超音波検出器の少なくとも1つから得た前記移動式クレーンの周囲の物体の位置と大きさの情報から前記干渉物を検知する。
【0010】
好ましくは、前記干渉物が移動できないと前記可搬判定部が判定した場合に、前記移動式クレーンのクレーン作業を始める前に前記移動式クレーンが移動されたか否かの情報を取得する移動情報取得部と、
前記可搬判定部の判定結果、および、クレーン作業を始める前に前記移動式クレーンが移動されたか否かの情報を関連づけて記憶する記憶部と、
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明の後部旋回干渉監視装置によれば、移動式クレーンの設置位置を決めるときに、上部旋回体の後部が干渉する物体が移動できるか否かを確認できる。移動不可能な干渉物がある場合には、移動式クレーンを作業姿勢にする前に移動式クレーンの設置位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る後部旋回干渉監視装置を備える移動式クレーンの一例を示す外観図
【
図2】本発明の実施の形態1に係る後部旋回干渉監視装置の機能ブロック図
【
図4】実施の形態1に係るニューラルネットワークの例を示す図
【
図5】干渉物の種類を分類するニューラルネットワークの他の例を示す図
【
図6】実施の形態1に係る後部旋回干渉監視の動作の一例を示すフローチャート
【
図7】実施の形態2に係る後部旋回干渉監視装置の機能ブロック図
【
図8】実施の形態2に係る後部旋回干渉監視の動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお図中、同一または同等の部分には同一の符号を付す。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態に係る後部旋回干渉監視装置を備える移動式クレーンの一例を示す外観図である。
図1に示すクレーン100は、ラフテレーンクレーンである。クレーン100の下部走行体20は、下部フレーム24の後部に配置されたエンジンルーム23に収容されるエンジンを備える。下部走行体20は、操舵可能な車輪27、およびエンジンで駆動可能な車輪28を備え、地上を走行することができる。下部走行体20は、下部フレーム24の前後それぞれにアウトリガ25,26を備えている。アウトリガ25,26を下部走行体20の左右に張り出し、下に伸ばして接地し、下部フレーム24をアウトリガ25,26で支えることができる。
【0015】
下部フレーム24の中央部に、旋回ベアリング29を介して上部旋回体30が旋回自在に搭載されている。上部旋回体30は、旋回フレーム31、伸縮ブーム32、起伏シリンダ33、巻き上げ装置34、フック35、および、ワイヤロープ36を備える。
【0016】
旋回フレーム31には伸縮ブーム32の基端部38が、支点ピン39を中心に起伏自在に支持されている。旋回フレーム31と伸縮ブーム32との間に介装された起伏シリンダ33は、伸縮ブーム32を起伏駆動する。
図1は、アウトリガ25,26がたたみ込まれ、伸縮ブーム32が縮められて伏せられた状態を示す。クレーン100には、伸縮ブーム32の右側で旋回フレーム31の上に、走行およびクレーン操作兼用の運転室22が配置されている。
【0017】
クレーン100は、荷を吊り下げ可能なフック35を備える。
図1では、フック35が下部フレーム24に納められた状態を示す。伸縮ブーム32を起立して伸ばし、フック35を下部フレーム24からはずして、伸縮ブーム32のブーム先端に取り付けられたトップシーブにワイヤロープ36で吊り下げると、フック35で荷を吊り下げることができる。荷を吊り下げる状態では、トップシーブはフック35の上方に位置する。
【0018】
旋回フレーム31の後方に、ワイヤロープ36を巻き取る巻き上げ装置34が備えられている。フック35を吊持するワイヤロープ36は、トップシーブに掛け回され、基端部38の後方に配置されたスライドシーブに掛け回されて、巻き上げ装置34に巻き取られる。
【0019】
作業時のクレーン100の安定を保つために、旋回フレーム31の後部37にカウンタウエイトが取付けられている。旋回フレーム31が旋回ベアリング29の中心軸の周りに旋回すると、カウンタウェイトを含む旋回フレーム31の後部37は、下部走行体20の範囲から外に振れて回る。下部走行体20の横の旋回フレーム31の旋回する範囲に物体があると、上部旋回体30が旋回するときに後部37が物体に干渉する。クレーン100は、後部37が旋回するときに他の物体に干渉するのを監視する後部旋回干渉監視装置を備える。
【0020】
図2は、本発明の実施の形態1に係る後部旋回干渉監視装置の機能ブロック図である。後部旋回干渉監視装置10(以下、監視装置10ということがある)には、クレーン100の周囲の物体を検知する物体検知センサ18、および、上部旋回体30の周囲を撮影するカメラ19が接続されている。物体検知センサ18およびカメラ19はそれぞれ、例えば、上部旋回体30の左右に1台ずつ配置されている。物体検知センサ18は、上部旋回体30の右側と左側の空間にある物体を検知する。カメラ19は、上部旋回体30の右側と左側の、上部旋回体30の旋回によって後部37が掃引する範囲を含む空間を撮影する。
【0021】
監視装置10は、画像取得部11、干渉検知部12、認識範囲設定部13、可搬判定部14、および、表示部15を備える。画像取得部11は、カメラ19から上部旋回体30の旋回によって後部37が掃引する範囲を含む画像を取得する。干渉検知部12は、物体検知センサ18からクレーン100の周囲の物体の位置と大きさを示す情報を取得する。
【0022】
物体検知センサ18は、例えば、画像認識装置、レーダ、レーザスキャナまたは超音波検出器である。干渉検知部12は、クレーン100の周囲の物体のクレーン100に対する位置と大きさを示す情報から、上部旋回体30の旋回によって後部37が掃引する範囲にある物体を、干渉物として検知する。物体検知センサ18が画像認識装置の場合、例えばカメラ19をステレオカメラとして、カメラ19の画像から周囲の物体を検知してもよい。その場合、監視装置10に物体検知センサ18を含めることができる。
【0023】
干渉検知部12で干渉物を検知した場合、認識範囲設定部13は、画像取得部11で取得した画像の中の干渉物を含む範囲として認識範囲を設定する。カメラ19の位置と撮像範囲は、後部37が掃引する範囲を含む空間を撮影するように設定されているので、カメラ19の画像には干渉物の像が含まれている。認識範囲設定部13は、干渉物の像が含まれるように認識範囲を設定する。
【0024】
干渉物がある場合、可搬判定部14は、画像取得部11で取得した画像の認識範囲から、干渉物が移動できるか否かを判定する。可搬判定部14は、干渉物が、例えば、はしごもしくは脚立、仮置きフェンス、車両、または、仮設トイレ等の場合は、移動できると判定する。可搬判定部14は、地面に固定された構造物、例えば、固定フェンス、塀もしくは壁、埋め込まれた柱、または、立木等の場合は、移動できないと判定する。
【0025】
表示部15は、干渉検知部12で検知した干渉物の有無、および、可搬判定部14で判定した干渉物が移動できるか否かの判定結果を表示する。干渉物があることを表示するには、例えば、ブザーを鳴動させたり、スピーカから警告音を発生させたりする。また、ランプを点灯させたり、オペレータが監視する画面に警告のアイコンや画像を表示させたりする。警告には、音響表示と視覚表示を併用することができる。干渉物が移動可能か否かの判定結果は、例えば、オペレータが監視する画面に干渉物の画像とともに、文字またはアイコン等で表示する。表示部15は、干渉物が移動可能か否かを、文字列もしくはアイコンの種類、色、点滅または輝度、あるいは、それらの組み合わせで区別して表示することができる。
【0026】
図3は、実施の形態1に係る可搬判定部のブロック図である。実施の形態1では、可搬判定部14はニューラルネットワークの学習済モデル41と、移動可能性演算部42を備える。学習済モデル41は、画像の認識範囲から、例えば、干渉物が移動できる場合と移動できない場合の2状態に分類するニューラルネットワークを含む。
【0027】
図4は、実施の形態1に係るニューラルネットワークの例を示す図である。ニューラルネットワーク43は、人工ニューロンから構成されるノードを含む入力層、中間層および出力層、ならびに、互いに隣接する層の間でノードを相互に接続するエッジから構成される。中間層は、1層以上のn層を含む。入力層の各ノードi(i=1...k)には、画像の認識範囲のそれぞれの画素値xiが入力される。中間層では、それぞれ前の層の出力が結合され活性化関数で演算された結果が後の層に伝達されて、最終的に出力層に出力される。中間層で、畳み込み層とプーリング層を繰り返すことにより、認識範囲の画像データを干渉物が移動できる場合と移動できない場合に分類する。出力層は、移動できる場合と移動できない場合のノードを有し、ノードj(j=1、2)はそれぞれ、画像データが状態jに分類される確率pjを出力する。
【0028】
ニューラルネットワーク43には、干渉物が移動できる場合と移動できない場合に分類されている複数の画像データを入力し、画像データが分類されている状態と、ニューラルネットワーク43の出力との差をバックプロパゲーションして各パラメータを調整することで、機械学習させておく。機械学習させる画像データは、少なくとも、干渉物が移動できる場合の画像データと干渉物が移動できない場合の画像データを含む。
【0029】
図3の移動可能性演算部42は、ニューラルネットワーク43の出力である干渉物が移動できる場合と移動できない場合の確率から、干渉物が移動できるか否かを演算する。例えば、干渉物が移動できる場合の確率から移動できない場合の確率を減じた差が定められた閾値より大きければ、移動できると演算し、閾値以下の場合は移動できないと演算する。可搬判定部14は、移動可能性演算部42の演算結果を移動できるか否かの判定結果として表示部15に出力する。
【0030】
後部旋回干渉監視装置10は、I/Oインターフェース、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)を備える。CPUは、例えばマイクロプロセッサ等であって、様々な処理や演算を実行する中央演算処理部である。監視装置10は、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出して、RAMをワークメモリとして用いながら、CPUで制御プログラムを実行させることによって、画像取得部11、干渉検知部12、認識範囲設定部13、可搬判定部14、および、表示部15の動作を行う。監視装置10は、図示しないクレーン制御装置に組み込まれていてもよい。また、監視装置10がクレーン制御装置の機能として、実現されていてもよい。
【0031】
図5は、干渉物の種類を分類するニューラルネットワークの他の例を示す図である。
図5のニューラルネットワーク44は、
図3の学習済モデル41の異なる例を示す。
図5のニューラルネットワーク44は、
図4のニューラルネットワーク43と類似の構造を有する。干渉物の種類を分類するニューラルネットワーク44は、分類する種類の数のノードp1、p2、p3、...pMから出力層が構成されている。
【0032】
ニューラルネットワーク44は、認識範囲に含まれる画像データから干渉物の種類を、例えば、はしごもしくは脚立、仮置きフェンス、車両、仮設トイレ、固定フェンス、塀もしくは壁、埋め込まれた柱、および、立木等に分類する。
【0033】
ニューラルネットワーク44には、干渉物の種類に分類されている複数の画像データを入力し、画像データが分類されている干渉物の種類と、ニューラルネットワーク44の出力との差をバックプロパゲーションして各パラメータを調整することで、機械学習させておく。
【0034】
学習済モデル41が
図5のニューラルネットワーク44の場合、
図3の移動可能性演算部42は、ニューラルネットワーク44の出力である干渉物の種類それぞれの確率から、干渉物が移動できるか否かを演算する。移動可能性演算部42は、例えば、ニューラルネットワーク44の出力である確率が最も大きいノード、すなわち最も確からしい干渉物の種類が移動できるか否かに従って、干渉物が移動できるか否かを演算する。あるいは例えば、ニューラルネットワーク44の出力ノードの種類を、移動できる種類と移動できない種類に分け、それぞれの種類の確率の合計値の大きい方を採用して、干渉物が移動できるか否かを演算する。
【0035】
図5のニューラルネットワーク44は、
図4のニューラルネットワーク43の一部であってもよい。すなわち、
図5のニューラルネットワーク44の出力層に続けて、干渉物の種類から干渉物が移動できる場合と移動できない場合とに分類して出力する層が接続されて、
図4のニューラルネットワーク43が構成されてもよい。
【0036】
図6は、実施の形態1に係る後部旋回干渉監視の動作の一例を示すフローチャートである。後部旋回干渉監視は、クレーン100のオペレータの操作によって起動される。例えば、アウトリガ25,26の張出の動作が指令されたときに、後部旋回干渉監視が起動される。または、上部旋回体の旋回ロックが解除されたとき、もしくは、ブームの収納位置への固定ロックが解除されたときに、後部旋回干渉監視が起動される。
【0037】
狭い作業現場においては、資材が置いてあったりして、走行姿勢のままでは現場内を通れない状況があり得る。そのような場合、アウトリガ25,26を張り出さずに、ブームを起立させ、さらに上部旋回体を旋回させて、現場内を移動することがある。そのようなときにも後部旋回干渉監視を行う必要がある。また、アウトリガを備えないクローラクレーンでは、上部旋回体の旋回ロックが解除されたとき、もしくは、ブームの収納位置への固定ロックが解除されたときに、後部旋回干渉監視を起動する。
【0038】
後部旋回干渉監視装置10の画像取得部11は、カメラ19から上部旋回体30の旋回によって後部37が掃引する範囲を含む画像を取得する(ステップS10)。干渉検知部12は、物体検知センサ18からクレーン100の周囲の物体の位置と大き示す情報を取得し、上部旋回体30の旋回によって後部37が掃引する範囲にある物体を、干渉物として検知する(ステップS11)。上部旋回体30の旋回によって後部37が干渉する干渉物がない場合は(ステップS12;N)、干渉監視動作を終了する。
【0039】
干渉物がある場合は(ステップS12;Y)、表示部15は、干渉物があることを警告する表示を行う(ステップS13)。続いて認識範囲設定部13は、画像取得部11で取得した画像の中の干渉物を含む範囲として認識範囲を設定し、可搬判定部14は、設定された認識範囲の画像データから、干渉物が移動できるか否かを判定する(ステップS14)。
【0040】
干渉物が移動できると判定された場合(ステップS15;Y)、表示部15は、干渉物が移動できることを表示する(ステップS16)。干渉物が移動できないと判定された場合(ステップS15;N)、表示部15は、干渉物が移動できないことを表示する(ステップS17)。干渉物が移動できるか否かを表示したのち、干渉監視動作を終了する。
【0041】
実施の形態1の後部旋回干渉監視装置10によれば、上部旋回体30の旋回によって後部37が掃引する範囲にある物体を干渉物として検知し、さらに、干渉物が移動できるか否かを判定して表示するので、クレーン100の設置位置を決めるときに、上部旋回体30の後部37が干渉する物体が移動できるか否かを確認できる。
【0042】
実施の形態1の監視装置10は、ラフテレーンクレーン以外に、トラッククレーン、オールテレーンクレーン、クローラクレーン、鉄道クレーン等の移動式クレーンに適用できる。
【0043】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係る後部旋回干渉監視装置の機能ブロック図である。実施の形態2の後部旋回干渉監視装置10は、移動情報取得部16および記憶部17をさらに備える。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0044】
移動情報取得部16は、干渉物が移動できるか否かを可搬判定部14が判定したのち、クレーン100のクレーン作業を始める前にクレーン100が移動されたか否かの情報を取得する。例えば、監視装置10は図示しないクレーン制御装置から、クレーン100の移動とクレーン作業の状態の情報を得ることができる。
【0045】
クレーン100が移動したことは、画像取得部11でカメラ19から取得した画像が変化したことで認識してもよい。クレーン作業が開始されたことは、例えば、アウトリガ25,26の張出、伸縮ブーム32の起伏もしくは伸縮、上部旋回体30の旋回、または、巻き上げ装置34の作動などによって知ることができる。
【0046】
記憶部17は、可搬判定部14の判定結果、および、クレーン作業を始める前にクレーン100が移動されたか否かの情報を関連づけて記憶する。クレーン100の設置場所を変えなければならなかった理由を記録することができ、クレーンの作業計画に役立つデータを収集することができる。
【0047】
記憶部17が記憶する情報には、(1)干渉物が移動できる;クレーン非移動、(2)干渉物が移動できる;クレーン移動、(3)干渉物が移動できない;クレーン非移動、(4)干渉物が移動できない;クレーン移動、の4通りがあり得る。記憶部17はさらに、可搬判定部14の判定結果と実際が異なるか否かをオペレータに入力させて、入力された情報を判定結果に対応づけて記憶してもよい。それらのデータと画像データとを、可搬判定部14の学習データとしてフィードバックすることができる。
【0048】
図8は、実施の形態2に係る後部旋回干渉監視の動作の一例を示すフローチャートである。
図8のフローチャートでステップS10からステップS17までは、
図6のステップS10からステップS17と同じである。干渉物が移動できないと判定された場合(ステップS15;N)、表示部15は、干渉物が移動できないことを表示し(ステップS17)、移動情報取得部16は、クレーン作業を始める前にクレーン100が移動されたか否かの情報を取得する(ステップS18)。
【0049】
干渉物が移動できることを表示した(ステップS16)のち、および、クレーン100が移動されたか否かの情報を取得した(ステップS18)のち、記憶部17は、干渉物が移動できるか否かの判定結果と、クレーン作業を始める前にクレーン100が移動されたか否かの情報とを対応づけて記憶して(ステップS19)、干渉監視動作を終了する。
【0050】
図8では、干渉物が移動できないと判定された場合(ステップS15;N、ステップS17)に、クレーン100が移動されたか否かの情報を取得(ステップS18)しているが、干渉物が移動できると判定された場合(ステップS15;Y、ステップS16)にも、クレーン作業を始める前にクレーン100が移動されたか否かの情報を取得してもよい。
【0051】
実施の形態2の後部旋回干渉監視装置10によれば、クレーン100の設置場所を変えなければならなかった理由を記録することができ、クレーンの作業計画に役立つデータを収集することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 後部旋回干渉監視装置
11 画像取得部
12 干渉検知部
13 認識範囲設定部
14 可搬判定部
15 表示部
16 移動情報取得部
17 記憶部
18 物体検知センサ
19 カメラ
20 下部走行体
22 運転室
23 エンジンルーム
24 下部フレーム
25,26 アウトリガ
27,28 車輪
29 旋回ベアリング
30 上部旋回体
31 旋回フレーム
32 伸縮ブーム
33 起伏シリンダ
34 巻き上げ装置
35 フック
36 ワイヤロープ
37 後部
38 基端部
39 支点ピン
41 学習済モデル
42 移動可能性演算部
43,44 ニューラルネットワーク
100 クレーン