(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134254
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20220908BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H04R1/00 310Z
H04R1/02 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033271
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨーホームエンターテイメント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小西 悟
(72)【発明者】
【氏名】中村 晋介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智尚
(72)【発明者】
【氏名】宮城 謙二
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AA20
(57)【要約】
【課題】出力を下げることなく、小型化を可能とする手段を提供すること。
【解決手段】充電ケース1は、バッテリー5と、バッテリー5の充電を制御し、充電ケース1を構成する各部に電源電圧を供給し、イヤホン101を充電するための充電IC15と、他の機器から送信される音声信号に基づいて、対象物を加振する加振器3と、を備える。充電ケース1は、略直方体状の筐体2と、筐体2の長手方向の両側に配置された2つの加振器3と、をさらに備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーと、
前記バッテリーの充電を制御し、自機器を構成する各部に電源電圧を供給し、イヤホンを充電するための充電回路と、
他の機器から送信される音声信号に基づいて、対象物を加振する加振器と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
2つの前記加振器を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記イヤホンを収容するための収容部が設けられた筐体をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記筐体は、本体と、蓋体と、を備え、
前記収容部は、
前記本体に設けられた、前記イヤホンを載置するための第1収容部と、
前記蓋体に設けられた、前記第1収容部に載置された前記イヤホンを覆う第2収容部と、を有することを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記加振器は、前記収容部よりも設置面側に設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の電子機器。
【請求項6】
略直方体状の筐体と、
前記筐体の長手方向の両側に配置された2つの前記加振器と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記バッテリーは、前記2つの加振器の間に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の電子機器。
【請求項8】
前記2つの加振器の間に配置された基板をさらに備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の電子機器。
【請求項9】
無線通信を行うための無線モジュールをさらに備え、
前記無線モジュールは、前記他の機器から無線送信される音声信号を受信し、
前記加振器は、前記他の機器から無線送信される音声信号に基づいて、対象物を加振することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項10】
前記基板に配置された、無線通信を行うための無線モジュールをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の電子機器。
【請求項11】
前記加振器は、圧縮コイルバネとして、コイルウェーブドスプリングを備えることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の加振装置。
【請求項12】
前記筐体の設置面に設けられた粘着シートをさらに備えることを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項13】
前記イヤホンをさらに備えることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電機能を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
Bluetooth(登録商標)規格等に基づいて、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)、スマートフォン等と無線通信し、DAP等から送信される音声信号に基づいて、音声を出力するワイヤレスイヤホンがある。ワイヤレスイヤホンの中でも、近年、左耳用のイヤホン本体と、右耳用のイヤホン本体とが、コードで接続されていない、完全ワイヤレスイヤホン(Ture Wireless Stereo)(以下、「TWS」という。)と呼ばれるものが登場している。TWSは、DAP等のみならず、左右のイヤホン本体がコードで接続されていないため、コードのわずらわしさがないことから、普及が進んでいる。
【0003】
TWSは、バッテリーを搭載しており、一般的に、電源に接続されたケースに収容されることで、ケースからの電源電圧の供給を受けて、バッテリーが充電されるようになっている。特許文献1には、充電機能を有するケースにスピーカーユニットを設けることで、音声を出力するスピーカーとして機能させる例が開示されている。
【0004】
音声を出力するスピーカーにおいては、スピーカーが備える筐体の容積が、スピーカーの出力を決定するため、ある程度の出力を確保しようとすると、小型化することが困難である。すなわち、スピーカーを小型化すると、出力が小さくなるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、TWSを充電するケースに、スピーカーとしての機能を付加する従来技術が存在するが、充電機能、及び、スピーカー機能を備えるケースを小型化しようとすると、スピーカーとしての出力が小さくなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、出力を下げることなく、小型化を可能とする手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明の電子機器は、バッテリーと、前記バッテリーの充電を制御し、自機器を構成する各部に電源電圧を供給し、イヤホンを充電するための充電回路と、他の機器から送信される音声信号に基づいて、対象物を加振する加振器と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、加振器は、他の機器から送信される音声信号に基づいて、対象物を加振する。これにより、対象物が振動することで、音声が出力されるため、スピーカー筐体の容積の影響がなくなり、出力を下げることなく、小型化が可能となる。
【0010】
第2の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、2つの前記加振器を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明では、2つの加振器が備えられている。これにより、例えば、ステレオの音声信号のうち、一方の音声信号を、一方の加振器に供給し、他方の音声信号を、他方の加振器に供給することで、ステレオ音声を出力することができる。
【0012】
第3の発明の電子機器は、第1又は第2の発明の電子機器において、前記イヤホンを収容するための収容部が設けられた筐体をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
第4の発明の電子機器は、第3の発明の電子機器において、前記筐体は、本体と、蓋体と、を備え、前記収容部は、前記本体に設けられた、前記イヤホンを載置するための第1収容部と、前記蓋体に設けられた、前記第1収容部に載置された前記イヤホンを覆う第2収容部と、を有することを特徴とする。
【0014】
第5の発明の電子機器は、第3又は第4の発明の電子機器において、前記加振器は、前記収容部よりも設置面側に設けられていることを特徴とする。
【0015】
第6の発明の電子機器は、第1の発明の電子機器において、略直方体状の筐体と、前記筐体の長手方向の両側に配置された2つの前記加振器と、をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
第7の発明の電子機器は、第6の発明の電子機器において、前記バッテリーは、前記2つの加振器の間に配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明では、バッテリーは、2つの加振器の間に配置されている。バッテリーを2つの加振器の間にできるスペースに配置することで、機器を小型化することができる。
【0018】
第8の発明の電子機器は、第6又は第7の発明の電子機器において、前記2つの加振器の間に配置された基板をさらに備えることを特徴とする。
【0019】
本発明では、基板は、2つの加振器の間に配置されている。基板を2つの加振器の間にできるスペースに設置することで、機器を小型化することができる。
【0020】
第9の発明の電子機器は、第1~第8のいずれかの発明の電子機器において、無線通信を行うための無線モジュールをさらに備え、前記無線モジュールは、前記他の機器から無線送信される音声信号を受信し、前記加振器は、前記他の機器から無線送信される音声信号に基づいて、対象物を加振することを特徴とする。
【0021】
本発明では、他の機器から無線送信される音声信号に基づいて、加振器により、対象物から音声が出力されるため、他の機器と有線接続することなく、音声を出力することができる。
【0022】
第10の発明の電子機器は、第8の発明の電子機器において、前記基板に配置された、無線通信を行うための無線モジュールをさらに備えることを特徴とする。
【0023】
第11の発明の電子機器は、第1~第10のいずれかの発明の電子機器において、前記加振器は、圧縮コイルバネとして、コイルウェーブドスプリングを備えることを特徴とする。
【0024】
本発明では、加振器は、圧縮コイルバネとして、コイルウェーブドスプリングを備える。これにより、加振器を、小型で、高出力、且つ、耐久性に優れた加振器とすることができる。また、加振器を、小型、且つ、薄型とすることができるため、電子機器を、小型、且つ、薄型とすることできる。
【0025】
第12の発明の電子機器は、第3~第8のいずれかの発明の電子機器において、前記筐体の設置面に設けられた粘着シートをさらに備えることを特徴とする。
【0026】
本発明では、粘着シートは、筐体の設置面に設けられている。これにより、電子機器が加振器による加振によって振動しても、電子機器が動くことが防止される。
【0027】
第13の発明の電子機器は、第1~第12のいずれかの発明の電子機器において、前記イヤホンをさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、出力を下げることなく、小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施形態に係る充電ケースの斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る充電ケースの分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る充電ケースの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る加振器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る充電ケース1の斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係る充電ケース1の分解斜視図である。
図1において、充電ケース1の内部に、イヤホン101が収納されている。充電ケース1と、イヤホン101とによって、ワイヤレスイヤホンシステム201(電子機器)が構成される。
【0031】
イヤホン101は、
図1及び
図2に示すように、2つのイヤホン本体102、103を備える。イヤホン101は、例えば、Bluetooth(登録商標)規格に従って、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)、スマートフォン等の他の機器と無線通信し、他の機器から送信される音声信号に基づいて、音声を出力する。イヤホン101は、例えば、他の機器からステレオ音声信号を受信する。一方のイヤホン本体102は、Lch(左チャンネル)の音声信号に基づいて、Lchの音声を出力する。他方のイヤホン103は、Rch(右チャンネル)の音声信号に基づいて、Rchの音声を出力する。イヤホン101は、他の機器と無線により通信を行うことで、他の機器と有線接続されておらず、また、2つのイヤホン本体102、103は、有線接続されていない、いわゆる、完全ワイヤレスイヤホン(TWS:True Wireless Stereo)である。
【0032】
充電ケース1は、イヤホン101を充電する充電機能、及び、音声を出力する音声出力機能を有する。充電ケース1は、
図1及び
図2に示すように、筐体2、加振器3、基板4、バッテリー5、粘着シート6等を備える。
【0033】
筐体2は、略直方体形状である。筐体2は、例えば、樹脂製である。筐体2(具体的には、後述する本体21)の内部に、加振器3、基板4、バッテリー5等が収容されている。筐体2は、本体21と、蓋体22と、を備える。蓋体22は、本体21に対して、開閉可能となっている。本体21は、さらに、上ケース21aと、下ケース21bと、中ケース21cと、を備える。筐体2には、イヤホン101を収容するための収容部23が設けられている。収容部23は、本体21(上ケース21a)に設けられた、イヤホン101を載置するための第1収容部と、蓋体22に設けられた、第1収容部に載置されたイヤホン101を覆う第2収容部と、を有する。第1収容部は、イヤホン101のイヤーピースを含む側(
図2では、下側)の外形に対応した、凹形状となっている。第2収容部は、イヤホン101のイヤーピースを含まない側(
図2では、上側)の外形に対応した、凹形状となっている。従って、第1収容部と第2収容部とが組み合わされ、収容部23が形成された状態で、収容部23は、イヤホン101の外形に対応した凹形状となる。
【0034】
ユーザーは、イヤホン101を充電する場合、イヤホン101を第1収容部に載置し、本体21に対して蓋体22を閉じ、イヤホン101を収容部23に収容して、イヤホン101を充電する。また、ユーザーは、イヤホン101を収容部23に収容し、イヤホン101を充電ケース1内に入れて、持ち運ぶことも可能である。なお、第1収容部から、イヤホン101を充電するための電極が突出しており、イヤホン101には、第1収容部から突出した電極に対応した位置に電極が設けられている。
【0035】
下ケース21bは、上面が開放した、内部が中空の略直方体形状である。下ケース21bの開放上面に、上ケース21aが組み合わされることで、本体21が形成される。本体21の内部には、加振器3、基板4、バッテリー5等が収容されている。また、中ケース21cは、上ケース21aと下ケース21bとによって形成される空間内に配置されており、上述したイヤホン101を充電するための電極が載置される基板等を支持する。
【0036】
2つの加振器3は、筐体2(本体21)の内部であって、筐体2(本体21)の長手方向の両側に配置されている。2つの加振器3は、収容部23よりも、充電ケース1の設置面側(
図2においては、下側)に設けられている。より具体的には、2つの加振器3は、下ケース21b(本体21)の底面に対向して設けられている。加振器3の構成の詳細については、後述する。
【0037】
基板4は、2つの加振器3の間に配置されている。基板4には、後述するBluetooth(登録商標)モジュール(以下、「BTモジュール」という。)12等が搭載されている。バッテリー5は、2つの加振器3の間に配置されている。バッテリー5は、基板4の下方に配置されている。粘着シート6は、筐体2(本体21、下ケース21b)の設置面(底面)に設けられている。
【0038】
図3は、本発明の実施形態に係る充電ケース1の構成を示すブロック図である。充電ケース1は、
図3に示すように、マイクロコンピューター11、BTモジュール12、D/Aコンバーター(以下、「DAC」という。)13、増幅部14、加振器3、バッテリー5、充電IC15等を備える。マイクロコンピューター11は、充電ケース1を構成する各部を制御する制御部として機能する。
【0039】
BTモジュール12(無線モジュール)は、Bluetooth(登録商標)規格に従って、他の機器と無線通信を行うためのモジュールである。マイクロコンピューター11は、BTモジュール12によって、デジタルオーディオプレーヤー(DAP)、スマートフォン等の他の機器と無線通信を行う。マイクロコンピューター11は、BTモジュール12によって、他の機器から音声信号を受信する。DAC13は、デジタル音声信号をアナログ音声信号にD/A変換する。BTモジュール12によって受信されたデジタル音声信号は、DAC13に出力され、DAC13は、デジタル音声信号をアナログ音声信号にD/A変換する。
【0040】
増幅部14は、アナログ音声信号を増幅する。DAC13によってD/A変換されたアナログ音声信号は、増幅部14に出力され、増幅部14は、アナログ音声信号を増幅する。加振器3は、アナログ音声信号に基づいて、対象物を加振する。加振器3は、上述のとおり、下ケース21b(本体21)の底面に対向して設けられており、対象物として、充電ケース1(筐体2)の設置面が接触する、例えば、テーブル等を加振する。加振器3が対象物を加振することにより、対象物から、音声が出力される。
【0041】
充電ケース1が他の機器から受信する音声信号が、ステレオ音声信号である場合、2つの加振器3の一方には、増幅器14によって増幅されたステレオ音声信号のうち、一方の音声信号(例えば、左(L)音声信号)が供給される。また、2つの加振器3の他方には、増幅器14によって増幅されたステレオ音声信号のうち、他方の音声信号(例えば、右(R)音声信号)が供給される。なお、2つの加振器3の両方に、モノラル音声信号が供給されてもよい。
【0042】
充電IC(充電回路)15は、バッテリー5の充電を制御するためのICである。充電ケース1は、図示しない、例えば、USBコネクターを備えている。USBコネクターは、USBケーブルにより、例えば、電力供給源となるパーソナルコンピューター、家庭用コンセント等に接続される。USBコネクターを介して供給される電力により、充電IC15は、バッテリー5を充電する。また、充電IC15は、バッテリー5から供給される電源電圧を、充電ケース1を構成する各部に供給する。なお、充電ケース1には、有線による給電に限られず、Qi(チー)規格等に従って、ワイヤレス給電されるようになっていてもよい。バッテリー5は、加振器3を含めた充電ケース1を構成する各部に電源電圧を供給するバッテリーとして、また、イヤホン101を充電するためのバッテリーとして、供用されている。
【0043】
図4は、本発明の実施形態に係る加振器3を示す図である。本発明の実施形態に係る加振器3は、出願人による特願2018-193029(特開2019-209315号公報)の実施例3に係る加振器と比較すると、本実施形態では磁性流体が設けられている点が相違し、その他の点は、一致している。そのため、加振器3の詳細構成については、特開2019-209315号公報を参照されたい。
【0044】
図4に示すように、加振器3は、磁気回路31、軸部材32、軸受33、コイルドウェーブスプリング34、磁性流体35等を備える。この他、加振器1は、特開2019-209315号公報に記載されているように、加振器1の全体形状を規定するフランジ部、及び、フレームを備える。フランジ部、及び、フレームにより、加振器3のハウジング(筐体、ケーシング)が構成されている。
【0045】
加振器3は、ハウジングによって規定される内部空間内に、内磁型の磁気回路31を備える動電型の加振器である。加振器3は、軸方向に沿って、交流的に変化する駆動力を発生させることで、加振器3が載置される板材等(対象物)を振動させる。軸部材32は、ハウジングの内部空間に配置されている。軸部材32の両端は、ハウジングに支持されている。具体的には、軸部材32の一端(上端)は、ハウジングを構成するフランジ部に支持され、軸部材32の他端(下端)は、ハウジングを構成するフレームに支持されている。軸部材32は、例えば、磁性の金属材料(磁性体)で形成される軸状の部材である。軸部材32は、例えば、所定の直径の丸棒のステンレス鋼である。軸部材32は、磁気回路31を軸方向に貫通している。
【0046】
内磁型の磁気回路31は、ヨークと、磁石であるマグネットと、プレートと、から構成されている。磁気回路31は、入力される電気音声信号を振動に変換するために、ボイスコイルが配置される磁気空隙を有する。円環状の磁気空隙は、円盤状のプレートの外周端面と、凹状のヨークの内周端面と、の間に規定され、マグネットからの磁力により、強い直流磁界が発生する。
【0047】
軸受33は、軸部材32に対応し、軸部材32に対して摺動する。軸受33は、略円筒形状の基体の中央に貫通孔が設けられ、軸部材32が摺動するように貫通する。軸受33は、例えば、非磁性の金属材料(非磁性体)で形成されている。ヨークと、マグネットと、プレートとは、それぞれ、軸部材32が貫通する貫通孔を有している。本実施形態では、ヨークに設けられる貫通孔に軸受33が固定されている。磁気回路31は、軸部材32、及び、軸受33により、中心保持され、軸方向にのみ振動可能である。
【0048】
加振器3は、磁気回路31とハウジングとを、弾性を有して、振動可能に連結する2つのコイルドウェーブスプリング34(圧縮コイルバネ、ばね部材)を備える。2つのコイルドウェーブスプリング34のうち、一方のコイルドウェーブスプリング34は、磁気回路31の上側であって、フランジ部側に配置される。また、他方のコイルドウェーブスプリング34は、磁気回路31の下側であって、フレーム側に配置される。加振器3において、フレーム、及び、ボイスコイルが、板材等に対して、動かないように固定されるため、磁気回路31の磁気空隙に配置されるコイルで発生する駆動力は、相対的に磁気回路31を変位させるように振動させる。
【0049】
すなわち、軸部材32、及び、軸受33により、中心保持され、軸方向に摺動可能な磁気回路31は、2つのコイルドウェーブスプリング34に対して、弾性的に、支持・連結されるため、磁気回路31は、軸方向に振動可能になる。磁気回路31は、磁性材であるヨーク及びプレートと、磁石であるマグネットと、から構成されているため、比較的に重量が重くなる。従って、磁気回路31が振動するのにつれて、駆動力に対する反作用の力が作用し、板材等が振動する。
【0050】
コイルドウェーブスプリング34は、所定厚さ、所定幅のバネ用ステンレス鋼を材料とする板状鋼線を、軸方向に所定直径の螺旋状に多重に所定周余り巻回した圧縮コイルバネである。
【0051】
磁気回路31には、外径を規定する外径側面に軸方向と直交する周方向に沿って形成される溝が設けられており、溝に嵌合して固定される止め輪部材36にコイルドウェーブスプリング34が固定されている。具体的には、磁気回路31を構成するヨークの外径側面に、切削加工などにより形成することが容易な溝が設けられている。溝の幅及び深さは、嵌合して固定される止め輪部材36に応じて設定することができる。ヨークの製造後、ヨークには切削加工などにより溝を形成することができるため、ヨークの製造が容易になり、低コストにすることができる。
【0052】
止め輪部材36は、コイルドウェーブスプリング34を構成するのと同様の板状鋼線を用いて形成できる。例えば、本実施例の止め輪部材36は、コイルドウェーブスプリング34の弾性変形部の内径寸法よりも若干小さい内径寸法を有し、切れ目が1カ所設けられた略環状の部材として形成することができる。止め輪部材36を外側に広げるようにして磁気回路31を内部に挿入すれば、容易に溝に止め輪部材36を嵌合して固定させることができる。
【0053】
磁性流体35は、軸部材32と軸受33との間に設けられている。磁性流体35の粘性によって、最適な機械抵抗が得られる。軸部材32と軸受33とのわずかな隙間を満たす量の磁性流体35により、所望の機械抵抗が得られるため、費用対効果が高い。すなわち、コストパフォーマンスに優れる。
【0054】
例えば、軸部材と軸受とによる摺動部への潤滑材(グリス等)の付加は、普遍的な処置・技術である。しかしながら、長期的な観点では、潤滑材の消耗(飛散・偏り等)というリスクが避けられない。潤滑材の消耗は、加振器の性能の逓減を意味するため、時間経過とともに、製品の魅力が損なわれていくこととなる。一方、磁性流体であれば、必要な機械抵抗の付与はもちろんのこと、磁束による保持が可能となるため、磁性流体を保持しておきたい箇所のみに留めておくことができる(
図4参照。)。
【0055】
磁性流体の保持には、漏れ磁束を用いる。漏れ磁束とは、磁気回路において本来あるべき空間に留めることができずに、有効ではない領域にあふれ出た磁束のことを示す。組み合わされる部品(軸部材、軸受)の磁性を最適化することで、漏れ磁束を保持用の磁束として有効活用することができる。これにより、部品、重量の増加を伴うことなく、目的が達成されるわけである。結果的に、普通の潤滑材の利用では実現できなかった長期安定性を、構造の複雑化を伴わずに獲得することができるわけである。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、加振器3は、他の機器から送信される音声信号に基づいて、対象物を加振する。これにより、対象物が振動することで、音声が出力されるため、スピーカー筐体の容積の影響がなくなり、出力を下げることなく、小型化が可能となる。
【0057】
また、充電ケース1を小型化することができるため、持ち運び可能となり、様々な場所で音を楽しむことができる。
【0058】
また、本実施形態では、2つの加振器3が備えられている。これにより、例えば、ステレオの音声信号のうち、一方の音声信号を、一方の加振器3に供給し、他方の音声信号を、他方の加振器3に供給することで、ステレオ音声を出力することができる。
【0059】
また、本実施形態では、バッテリー5は、2つの加振器3の間に配置されている。バッテリー5を2つの加振器3の間にできるスペースに配置することで、充電ケース1を小型化することができる。
【0060】
また、本実施形態では、基板4は、2つの加振器3の間に配置されている。基板4を2つの加振器3の間にできるスペースに設置することで、充電ケース1を小型化することができる。
【0061】
また、本実施形態では、他の機器から無線送信される音声信号に基づいて、加振器3により、対象物から音声が出力されるため、他の機器と有線接続することなく、音声を出力することができる。
【0062】
また、本実施形態では、加振器3は、圧縮コイルバネとして、コイルウェーブドスプリングを備える。これにより、加振器3を、小型で、高出力、且つ、耐久性に優れた加振器とすることができる。また、加振器3を、小型、且つ、薄型とすることができるため、充電ケース1を、小型、且つ、薄型とすることできる。
【0063】
また、本実施形態では、粘着シート6は、筐体2の設置面に設けられている。これにより、充電ケース1が加振器3による加振によって振動しても、充電ケース1が動くことが防止される。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、充電機能を備える電子機器に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0066】
1 充電ケース
2 筐体
21 本体
22 蓋体
23 収容部
3 加振器
34 コイルドウェーブスプリング(圧縮コイルバネ)
4 基板
5 バッテリー
6 粘着シート
15 充電IC(充電回路)
101 イヤホン
201 ワイヤレスイヤホンシステム(電子機器)