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特開2022-134285情報送信方法、情報処理方法及び移動型受信端末
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134285
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】情報送信方法、情報処理方法及び移動型受信端末
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
G01W1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033328
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】野田 一善
(57)【要約】
【課題】放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定可能な情報を送信することができる情報送信方法等を提供する。
【解決手段】所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び電波の反射波を受信でき、かつ、ネットワークを介してサーバに接続できる移動型受信端末の情報送信方法であって、直達波及び反射波を受信したときの直達波及び反射波の時間差を示す遅延プロファイルを作成する作成ステップ(S10)と、作成した遅延プロファイルを、ネットワークを介してサーバへ送信するアップロードステップ(S11)と、を含む。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び前記電波の反射波を受信でき、かつ、ネットワークを介してサーバに接続できる移動型受信端末の情報送信方法であって、
前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記直達波及び前記反射波の時間差を示す遅延プロファイルを作成する作成ステップと、
前記遅延プロファイルを、前記ネットワークを介して前記サーバへ送信するアップロードステップと、を含む、
情報送信方法。
【請求項2】
前記遅延プロファイルは、前記サーバに用いられることで、前記時間差から、前記移動型受信端末と前記反射波を反射した反射物との距離が算出される、
請求項1に記載の情報送信方法。
【請求項3】
前記情報送信方法は、
前記アップロードステップを,所定の時間間隔毎に実行する、
請求項1または2に記載の情報送信方法。
【請求項4】
前記情報送信方法は、さらに、前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記移動型受信端末の位置を特定する位置特定ステップを含み、
前記アップロードステップでは、
特定された前記位置に関する情報と、前記直達波及び前記反射波を受信した時刻に関する情報とを、前記遅延プロファイルとともに前記サーバへ送信する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の情報送信方法。
【請求項5】
前記情報送信方法は、さらに、
前記サーバより、前記直達波及び前記反射波の受信エリアを含む指示情報を取得する取得ステップと、
前記位置特定ステップにおいて特定された前記位置が前記指示情報に含まれる前記受信エリアに含まれるか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて前記位置が前記受信エリアに含まれたと判定された場合、前記直達波及び前記反射波を受信する電波受信ステップとを含み、
前記作成ステップでは、前記電波受信ステップにおいて受信された前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記遅延プロファイルを作成する、
請求項4に記載の情報送信方法。
【請求項6】
前記情報送信方法は、さらに、
前記サーバより、前記直達波及び前記反射波の受信エリアを含む指示情報を取得する取得ステップと、
前記移動型受信端末の現在位置から所定時間内の位置である未来位置を推測する位置推測ステップを含み、
前記位置推測ステップにおいて推測された前記未来位置が前記指示情報に含まれる前記受信エリアに位置するか否かを判定する未来位置判定ステップと、
前記未来位置判定ステップにおいて前記未来位置が前記受信エリアに位置すると判定された場合、前記移動型受信端末の現在位置が前記受信エリアに含まれたときに前記直達波及び前記反射波を受信する電波受信ステップとを含み、
前記作成ステップでは、前記電波受信ステップにおいて受信された前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記遅延プロファイルを作成する、
請求項4に記載の情報送信方法。
【請求項7】
前記送信局は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式で前記同一の電波を送信する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の情報送信方法。
【請求項8】
所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び前記電波の反射波を受信できる複数の移動型受信端末とネットワークを介して接続できるサーバの情報処理方法であって、
前記複数の移動型受信端末のそれぞれから、当該移動型受信端末が前記直達波及び前記反射波を受信したときの当該移動型受信端末の現在位置に関する情報、及び、前記直達波及び前記反射波の到着時間差を示す遅延プロファイルを取得する情報取得ステップと、
取得したそれぞれの前記遅延プロファイル、及び、前記移動型受信端末の現在位置に関する情報から、前記反射波を反射した反射物がその上に存在し得る楕円曲線を導出し、複数の前記遅延プロファイルに関連して得られた複数の前記楕円曲線同士の交点を算出し、当該交点のうち、2以上の前記楕円曲線が当該交点でのみ交わる場合に、当該交点を反射物の位置として特定する位置特定ステップとを含む、
情報処理方法。
【請求項9】
前記情報取得ステップでは、
当該移動型受信端末が前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記現在位置における時刻に関する情報を、前記遅延プロファイルとともに取得する、
請求項8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
位置特定ステップでは、さらに、互いに異なる複数の前記反射物の位置を特定し、
前記情報処理方法では、さらに、
所定エリアごとに複数の前記反射物の位置がマッピングされたマップを作成するマップ作成ステップを含む、
請求項8または9に記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記情報処理方法では、さらに、
対象領域を決定する対象領域決定ステップと、
前記マップ作成ステップにおいて作成されたマップを用いて、前記対象領域を含む所定エリアのうちの一の反射物を選択する反射物選択ステップと、
前記一の反射物の位置と前記対象領域とを結ぶ直線を延伸したエリアを受信エリアとして決定する決定ステップと、
前記受信エリアに含まれる位置の1以上の移動型受信端末から、当該移動型受信端末が前記直達波及び前記反射波を受信したときの遅延プロファイルを取得するエリア情報取得ステップと、
前記エリア情報取得ステップにおいて取得した前記遅延プロファイルを用いて前記対象領域の水蒸気量を推定する推定ステップを含む、
請求項10に記載の情報処理方法。
【請求項12】
所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び前記電波の反射波を受信でき、かつ、ネットワークを介してサーバに接続できる移動型受信端末であって、
プロセッサと、
メモリと、を備え、
前記プロセッサは、前記メモリを用いて、
前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記直達波及び前記反射波の時間差を示す遅延プロファイルを作成し、
前記遅延プロファイルを、前記ネットワークを介して前記サーバへ送信する、
移動型受信端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報送信方法、情報処理方法及び移動型受信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタル放送波を用いて、電波の伝搬経路上の水蒸気量を推定する技術が提案されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
非特許文献1によれば、受信端末に、放送局から直接届く電波(直達波)と当該電波が例えば建造物で反射された反射波を受信させることで、反射波が通る経路の水蒸気量を、受信端末の直達波と反射波の受信情報から推定することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S. Kawamura, H. Ohta, H. Hanado, M. K. Yamamoto, N. Shiga, K. Kido, S. Yasuda, T. Goto,R. Ichikawa, J. Amagai, K. Imamura , M. Fujieda, H. Iwai,S. Sugitani, and T. Iguchi “Water vapor estimation using digital terrestrial broadcasting waves,”Radio Science,Volume52, Issue3 March 2017 Pages 367-377
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に開示される技術では、地上デジタル放送波を送信する放送局と受信端末と当該電波を反射する建造物(反射物)との位置が固定である必要がある。このため、水蒸気量を推定できる伝搬経路も制限され、結果として水蒸気量が測定できる領域が限定されてしまうという課題がある。
【0006】
一方、受信端末を例えば車両などに搭載して移動させるとすると、当該電波を反射する反射物の位置が固定的でなくなり、反射物と当該受信端末と放送局との位置関係が固定的でなくなってしまう。そして、非特許文献1に開示される技術では、反射物の位置を特定できないため、水蒸気量を推定できない。
【0007】
本開示は、上述の事情を鑑みてなされたもので、放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定可能な情報を送信することができる情報送信方法及び移動型受信端末を提供することを目的とする。さらに、移動型受信端末を用いた場合でも放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定することができ、水蒸気量を推定できる情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る情報送信方法は、所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び前記電波の反射波を受信でき、かつ、ネットワークを介してサーバに接続できる移動型受信端末の情報送信方法であって、前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記直達波及び前記反射波の時間差を示す遅延プロファイルを作成する作成ステップと、前記遅延プロファイルを、前記ネットワークを介して前記サーバへ送信するアップロードステップと、を含む。
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る移動型受信端末は、所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び前記電波の反射波を受信でき、かつ、ネットワークを介してサーバに接続できる移動型受信端末であって、プロセッサと、メモリと、を備え、前記プロセッサは、前記メモリを用いて、前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記直達波及び前記反射波の時間差を示す遅延プロファイルを作成し、前記遅延プロファイルを、前記ネットワークを介して前記サーバへ送信する。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る情報送信方法は、所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び前記電波の反射波を受信できる複数の移動型受信端末とネットワークを介して接続できるサーバの情報処理方法であって、前記複数の移動型受信端末のそれぞれから、当該移動型受信端末が前記直達波及び前記反射波を受信したときの当該移動型受信端末の現在位置に関する情報、及び、前記直達波及び前記反射波の到着時間差を示す遅延プロファイルを取得する情報取得ステップと、取得したそれぞれの前記遅延プロファイル、及び、前記移動型受信端末の現在位置に関する情報から、前記反射波を反射した反射物がその上に存在し得る楕円曲線を導出し、複数の前記遅延プロファイルに関連して得られた複数の前記楕円曲線同士の交点を算出し、当該交点のうち、2以上の前記楕円曲線が当該交点でのみ交わる場合に、当該交点を反射物の位置として特定する位置特定ステップとを含む。
【0011】
なお、これらの全般的または具体的な態様は、装置、システムまたは集積回路で実現されてもよく、システム、方法、集積回路及びコンピュータプログラムの任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示の情報送信方法等によれば、放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定可能な情報を送信することができる。さらに、本開示の情報処理方法によれば、移動型受信端末を用いた場合でも放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定することができ、水蒸気量を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施の形態に係る全体システムの一例を示す図である。
図2A図2Aは、図1に示す移動体の構成の一例を示すブロック図である。
図2B図2Bは、図1に示す移動体の別の例である。
図3図3は、実施の形態に係る受信端末の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、図3に示す演算処理部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態に係る遅延プロファイルの概念を説明するための図である。
図6図6は、マルチパスのイメージを説明するための図である。
図7図7は、図6に示すマルチパスを要因とする遅延プロファイルの一例を概念的に示す図である。
図8A図8Aは、地上デジタル放送に採用されるOFDMのサブキャリアを概念的に示す図である。
図8B図8Bは、地上デジタル放送の電波に挿入されるSP信号を概念的に示す図である。
図9図9は、実施の形態に係るサーバの構成の一例を示すブロック図である。
図10図10は、図9に示す演算処理部の機能構成の一例を示すブロック図である。
図11A図11Aは、実施の形態に係る複数の遅延プロファイルから反射物の位置を特定する方法を説明するための図である。
図11B図11Bは、実施の形態に係る複数の遅延プロファイルから反射物の位置を特定する方法を説明するための図である。
図12図12は、実施の形態に係る所定エリアにおける複数の反射物の位置がマッピングされたマップの一例を示す図である。
図13図13は、実施の形態に係る水蒸気量推定を行うための処理を概念的に説明するための図である。
図14図14は、実施の形態に係る水蒸気量推定を行うための遅延プロファイル取得処理を概念的に説明するための図である。
図15A図15Aは、1気圧20℃における相対湿度に対する電波の伝搬遅延の変化を示す図である。
図15B図15Bは、比較例に係る電波の伝搬遅延を測定するための構成を示す図である。
図16図16は、実施の形態に係る受信端末の動作例を示すフローチャートである。
図17図17は、実施の形態に係るサーバの動作例を示すフローチャートである。
図18図18は、図17のステップS22の詳細処理を示すフローチャートである。
図19図19は、実施の形態に係るサーバによる水蒸気量推定の動作例を示すフローチャートである。
図20図20は、実施の形態に係る水蒸気量推定が行われる際の受信端末の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の一形態に係る情報送信方法は、所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び前記電波の反射波を受信でき、かつ、ネットワークを介してサーバに接続できる移動型受信端末の情報送信方法であって、前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記直達波及び前記反射波の時間差を示す遅延プロファイルを作成する作成ステップと、前記遅延プロファイルを、前記ネットワークを介して前記サーバへ送信するアップロードステップと、を含む。
【0015】
これにより、放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定可能な情報を送信することができる。
【0016】
ここで、前記遅延プロファイルは、前記サーバに用いられることで、前記時間差から、前記移動型受信端末と前記反射波を反射した反射物との距離が算出される。
【0017】
また、前記情報送信方法は、前記アップロードステップを,所定の時間間隔毎に実行するとしてもよい。
【0018】
ここで、例えば、前記情報送信方法は、さらに、前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記移動型受信端末の位置を特定する位置特定ステップを含み、前記アップロードステップでは、特定された前記位置に関する情報と、前記直達波及び前記反射波を受信した時刻に関する情報とを、前記遅延プロファイルとともに前記サーバへ送信する。
【0019】
また、例えば、前記情報送信方法は、さらに、前記サーバより、前記直達波及び前記反射波の受信エリアを含む指示情報を取得する取得ステップと、前記位置特定ステップにおいて特定された前記位置が前記指示情報に含まれる前記受信エリアに含まれるか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて前記位置が前記受信エリアに含まれたと判定された場合、前記直達波及び前記反射波を受信する電波受信ステップとを含み、前記作成ステップでは、前記電波受信ステップにおいて受信された前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記遅延プロファイルを作成するとしてもよい。
【0020】
また、例えば、前記情報送信方法は、さらに、前記サーバより、前記直達波及び前記反射波の受信エリアを含む指示情報を取得する取得ステップと、前記移動型受信端末の現在位置から所定時間内の位置である未来位置を推測する位置推測ステップを含み、前記位置推測ステップにおいて推測された前記未来位置が前記指示情報に含まれる前記受信エリアに位置するか否かを判定する未来位置判定ステップと、前記未来位置判定ステップにおいて前記未来位置が前記受信エリアに位置すると判定された場合、前記移動型受信端末の現在位置が前記受信エリアに含まれたときに前記直達波及び前記反射波を受信する電波受信ステップとを含み、前記作成ステップでは、前記電波受信ステップにおいて受信された前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記遅延プロファイルを作成するとしてもよい。
【0021】
ここで、例えば、前記送信局は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式で前記同一の電波を送信する。
【0022】
本開示の一形態に係る情報処理方法は、所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び前記電波の反射波を受信できる複数の移動型受信端末とネットワークを介して接続できるサーバの情報処理方法であって、前記複数の移動型受信端末のそれぞれから、当該移動型受信端末が前記直達波及び前記反射波を受信したときの当該移動型受信端末の現在位置に関する情報、及び、前記直達波及び前記反射波の到着時間差を示す遅延プロファイルを取得する情報取得ステップと、取得したそれぞれの前記遅延プロファイル、及び、前記移動型受信端末の現在位置に関する情報から、前記反射波を反射した反射物がその上に存在し得る楕円曲線を導出し、複数の前記遅延プロファイルに関連して得られた複数の前記楕円曲線同士の交点を算出し、当該交点のうち、2以上の前記楕円曲線が当該交点でのみ交わる場合に、当該交点を反射物の位置として特定する位置特定ステップとを含む、情報処理方法。
【0023】
これにより、放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定することができる。
【0024】
ここで、例えば、前記情報取得ステップでは、当該移動型受信端末が前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記現在位置における時刻に関する情報を、前記遅延プロファイルとともに取得する。
【0025】
また、例えば、位置特定ステップでは、さらに、互いに異なる複数の前記反射物の位置を特定し、前記情報処理方法では、さらに、所定エリアごとに複数の前記反射物の位置がマッピングされたマップを作成するマップ作成ステップを含むとしてもよい。
【0026】
また、例えば、前記情報処理方法では、さらに、対象領域を決定する対象領域決定ステップと、前記マップ作成ステップにおいて作成されたマップを用いて、前記対象領域を含む所定エリアのうちの一の反射物を選択する反射物選択ステップと、前記一の反射物の位置と前記対象領域とを結ぶ直線を延伸したエリアを受信エリアとして決定する決定ステップと、前記受信エリアに含まれる位置の1以上の移動型受信端末から、当該移動型受信端末が前記直達波及び前記反射波を受信したときの遅延プロファイルを取得するエリア情報取得ステップと、前記エリア情報取得ステップにおいて取得した前記遅延プロファイルを用いて前記対象領域の水蒸気量を推定する推定ステップを含むとしてもよい。
【0027】
これにより、移動型受信端末を用いた場合でも放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定することができ、水蒸気量を推定できる。
【0028】
また、本開示の一形態に係る移動型受信端末は、所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局により送信される電波の直達波及び前記電波の反射波を受信でき、かつ、ネットワークを介してサーバに接続できる移動型受信端末であって、プロセッサと、メモリと、を備え、前記プロセッサは、前記メモリを用いて、前記直達波及び前記反射波を受信したときの前記直達波及び前記反射波の時間差を示す遅延プロファイルを作成し、前記遅延プロファイルを、前記ネットワークを介して前記サーバへ送信する。
【0029】
これにより、放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定可能な情報を送信することができる。
【0030】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態に係る構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0031】
(実施の形態)
以下では、図面を参照しながら、実施の形態について説明する。
【0032】
[1.全体システム]
図1は、本実施の形態に係る全体システムの一例を示す図である。
【0033】
本実施の形態では、全体システムは、図1に示すように、移動体10と、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する送信局20と、送信局20により送信される電波の直達波を反射する反射物30と、サーバ40とを備える。
【0034】
まず、移動体10について説明する。
【0035】
[1.1 移動体10]
図2Aは、図1に示す移動体10の構成の一例を示すブロック図である。図2Bは、図1に示す移動体10の別の例である。
【0036】
移動体10は、例えば自動車などの車両であり、例えば図2Aに示すように受信端末11と駆動部12とを備える。移動体10は、カーナビゲーションシステムに受信端末11の機能を組み込むなど、受信端末11を内部に搭載してもよい。また、移動体10は、例えば図2Bに示すように荷台などに載置するなど、受信端末11を外部に搭載してもよい。移動体10は、受信端末11が搭載された状態で移動可能であれば、受信端末11を搭載可能な台車でもよい。
【0037】
[1.1.1 駆動部12]
駆動部12は、移動体10が移動するための制御を行う機能部であり、移動体10が自動車であれば、自動車を動作させる制御全般を行う。
【0038】
[1.1.2 受信端末11]
受信端末11は、移動型受信端末の一例であり、移動体10に搭載される。受信端末11は、プロセッサ(マイクロプロセッサ)、メモリ、通信インタフェース等を備えるコンピュータ等で実現される。
【0039】
本実施の形態では、受信端末11は、例えばインターネットなどのネットワークにより、サーバ40と接続でき、サーバ40と通信可能である。また、受信端末11は、GPS(Global Positioning System)により位置情報を取得することができる。
【0040】
図3は、本実施の形態に係る受信端末11の構成の一例を示すブロック図である。
【0041】
受信端末11は、図3に示すように、通信部111と、電波受信部112と、演算処理部113と、メモリ114とを備え、送信局20により送信される電波の直達波及び当該電波の反射波を受信でき、かつ、ネットワークを介してサーバ40に接続できる。
【0042】
[1.1.2.1 通信部111]
通信部111は、ネットワークを介してサーバ40と通信する。
【0043】
本実施の形態では、通信部111は、例えば、後述する演算処理部113により作成された遅延プロファイルを、ネットワークを介してサーバ40へ少なくとも送信する。通信部111は、位置に関する情報と時刻に関する情報とともに遅延プロファイルをサーバ40へ送信してもよい。また、通信部111は、例えば、サーバ40から、後述する指示情報を取得する。
【0044】
[1.1.2.2 電波受信部112]
電波受信部112は、GPS衛星が発信する電波を受信する。また、電波受信部112は、送信局20により送信される電波の直達波及び当該電波の反射波を受信する。
【0045】
本実施の形態では、電波受信部112は、演算処理部113によって、電波すなわち送信局20により送信される電波の直達波及び当該電波の反射波を受信するタイミングが制御されてもよい。例えば、電波受信部112は、判定部1135の判定結果に示されたタイミングで電波を受信するよう制御されてもよい。また、電波受信部112は、所定の時間間隔毎に、電波を受信するよう制御されてもよい。
【0046】
なお、本実施の形態では、電波受信部112は、例えば地上デジタル放送の電波を受信するが、既知のパイロット信号が含まれる電波を受信することができれば地上デジタル放送でなくてもよい。
【0047】
[1.1.2.3 演算処理部113]
図4は、図3に示す演算処理部113の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0048】
演算処理部113は、CPU(不図示)とメモリ114とを用いて種々の処理を行う。本実施の形態では、演算処理部113は、図4に示すように、遅延プロファイル作成部1131と、アップロード部1132と、位置特定部1133と、指示情報取得部1134と、判定部1135とを備える。
【0049】
[1.1.2.3.1 遅延プロファイル作成部1131]
遅延プロファイル作成部1131は、電波受信部112が直達波及び反射波を受信したときの直達波及び反射波の時間差を示す遅延プロファイルを作成する。なお、複数の受信端末11で作成されたそれぞれの遅延プロファイルは、サーバ40に用いられて、それぞれの反射波を発生させる反射物の情報から共通の反射物を特定することで、反射物の位置を特定することに用いられる。なお、詳細は後述する。遅延プロファイル作成部1131は、電波受信部112が電波を受信したときには、遅延プロファイルを作成する。例えば、電波受信部112が所定の時間間隔毎に、電波を受信する場合には、遅延プロファイル作成部1131は、所定の時間間隔毎に遅延プロファイルを作成すればよい。また、電波受信部112が判定部1135の判定結果に示されたタイミングで電波を受信する場合には、遅延プロファイル作成部1131は、当該判定結果に従うタイミングで遅延プロファイルを作成してもよい。
【0050】
ここで、遅延プロファイルについて説明する。
【0051】
図5は、本実施の形態に係る遅延プロファイルの概念を説明するための図である。
【0052】
遅延プロファイルは、電波の伝搬路の遅延波特性を表すものであり、遅延時間対受信電力の関係を示す電力情報として示される。電波の伝搬において反射物があれば、それによる反射で、遅延プロファイルに示される電力が極大になる。図5には、電波の直達波と比較して遅延して受信される反射波が1つの場合の例が示されている。なお、受信される反射波が複数ある場合には、図5に示す反射波を示す山は複数出現することになる。図5に示されるように、遅延プロファイルから、直達波と反射波との時間差がわかるので、当該時間差から、受信端末11と反射物との距離dがわかる。
【0053】
図6は、マルチパスのイメージを説明するための図である。なお、図1と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。図7は、図6に示すマルチパスを要因とする遅延プロファイルの一例を概念的に示す図である。
【0054】
一般的な電波の伝搬では、地形または構造物により電波が反射して、複数の経路(マルチパス)を通過する現象が起きる。図6に示す例では、送信局20が送信する電波が、6つの反射物30により電波が反射され、マルチパスで移動体10に伝搬される様子が概念的に示されている。そして、この遅延プロファイルは、図7に示すように、1つの直達波と6つの反射波とを受信したことを、受信した電波の電力と時間という観点で示される。
【0055】
[1.1.2.3.2 アップロード部1132]
アップロード部1132は、遅延プロファイル作成部1131が作成した遅延プロファイルを、ネットワークを介してサーバ40へ送信する。より具体的には、アップロード部1132は、通信部111を制御して、遅延プロファイル作成部1131が作成した遅延プロファイルを、ネットワークを介してサーバ40へ送信する。
【0056】
アップロード部1132は、電波受信部112が電波を受信したときの受信端末11の位置と時刻とに関する情報を遅延プロファイルとともにサーバ40へ送信してもよい。
【0057】
アップロード部1132は、所定の時間間隔毎に、上述した送信動作を実行してもよい。なお、この所定の時間間隔は、毎秒でもよいし、数時間オーダでもよいし、数日に一回というオーダでもよい。また、アップロード部1132は、遅延プロファイル作成部1131が作成した遅延プロファイルに含まれる直達波に対する遅延波の位相の変動があった場合、所定の時間間隔を狭め、遅延波の位相の変動が落ち着いてきたら所定の時間間隔を広げて、上述した送信動作を実行してもよい。
【0058】
また、アップロード部1132は、判定部1135の判定結果に従い、上述した送信動作を実行してもよい。例えば、アップロード部1132は、受信端末11の現在位置が受信エリアに位置しているとの判定結果に従い、上述した送信動作を実行してもよい。この場合、アップロード部1132は、受信端末11の現在位置が受信エリアに位置していないときには、上述した送信動作を実行しなくてよい。
【0059】
[1.1.2.3.3 位置特定部1133]
位置特定部1133は、GPSを利用して、電波受信部112が電波を受信したときの受信端末11の位置を特定する。本実施の形態では、位置特定部1133は、GPSを利用して、電波受信部112が送信局20により送信される電波の直達波及び当該電波の反射波を受信したときの受信端末11の位置を特定する。また、位置特定部1133は、GPSを利用して、受信端末11の位置を特定した時の時刻すなわち電波受信部112が送信局20により送信される電波の直達波及び当該電波の反射波を受信したときの時刻を取得する。
【0060】
[1.1.2.3.4 指示情報取得部1134]
指示情報取得部1134は、通信部111を制御して、サーバ40より、指示情報を取得する。本実施の形態では、指示情報取得部1134は、サーバ40より、受信端末11が受信すべき直達波及び反射波の受信エリアを含む指示情報を取得する。
【0061】
[1.1.2.3.5 判定部1135]
判定部1135は、位置特定部1133により特定された受信端末11の位置が、指示情報取得部1134により取得された指示情報に含まれる受信エリアに含まれるか否かを判定する。なお、上述したように、判定部1135により、特定された受信端末11の位置が指示情報に含まれる受信エリアに含まれたと判定された場合、その判定結果に示されたタイミングで電波受信部112は制御されて電波の直達波及び反射波を受信する。
【0062】
また、判定部1135は、特定された受信端末11の現在位置から所定時間内の位置である未来位置を推測してもよい。この場合、判定部1135は、さらに、推測した未来位置が指示情報に含まれる受信エリアに位置するか否かを判定すればよい。このようにして判定部1135により、未来位置が受信エリアに位置すると判定され、特定された受信端末11の現在位置が受信エリアに含まれたと判定された場合、当該判定結果に示されたタイミングで電波受信部112は制御されて電波の直達波及び反射波を受信する。
【0063】
[1.1.2.4 メモリ114]
メモリ114は、通信部111、電波受信部112及び演算処理部113の機能を実現するためのプログラム、及び、これらの機能構成を利用したアプリケーションの少なくとも一方が、予め記憶されていてもよい。
【0064】
また、メモリ114は、上記のプログラムまたはアプリケーションの実行に際してデータ等の記憶に利用される。
【0065】
[1.2 送信局20]
送信局20は、所在位置が固定されており、かつ、常時もしくは定期的に同じ変調方式の電波を送信する。送信局20は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式で同一の電波を送信すればよい。例えば、送信局20は、例えば日本の地上デジタル放送方式の電波を送信する基地局であってもよい。
【0066】
図8Aは、地上デジタル放送に採用されるOFDMのサブキャリアを概念的に示す図である。図8Bは、地上デジタル放送の電波に挿入されるSP信号を概念的に示す図である。以下、日本の地上デジタル放送(ISDB-T)について説明する。
【0067】
日本の地上デジタル放送では、マルチパス伝搬路による遅延の影響を受け難いOFDMという方式が採用されている。OFDMは、直交する多数のサブキャリア(搬送波)にデータを乗せて、それを1つのデータの塊として送信する方式である。例えばOFDMの1フレームは、図8Aに示すような多数のサブキャリアを組み合わせたものである。また、サブキャリアは、図8Aに示すように、隣のサブキャリアと重なっていても、直交しているので、データを分離することができる。
【0068】
ところで、地上デジタル放送に限らず、基本的にはすべての無線通信で既知のパイロット信号が挿入されている。パイロット信号とは、信号中に含めて送受信される、目印となる信号である。地上デジタル放送では、パイロット信号として、SP(Scattered Pilot)信号が用いられている。このSP信号は、例えば図8Bに示すように、周波数方向、及び、時間方向で等間隔に挿入される既知の信号であって、送信側及び受信側で既知の信号である。
【0069】
なお、上述した演算処理部113(具体的には遅延プロファイル作成部1131)は、
SP信号の振幅及び位相を調べることで、既知の状態からの歪みを測定できるので、遅延プロファイルを作成することができる。
【0070】
[1.3 反射物30]
反射物30は、送信局20により送信される電波の直達波を反射する。反射物30は、例えば建物などの建造物であり、所在位置が固定されている。図1では、複数の反射物30のうち、送信局20により送信される電波の直達波を反射することで、受信端末11に反射波が到達する1つの反射物30が示されている。
【0071】
[1.4 サーバ40]
サーバ40は、例えば集約サーバまたはクラウドであり、プロセッサ(マイクロプロセッサ)、メモリ、通信インタフェース等を備えるコンピュータ等で実現される。
【0072】
図9は、本実施の形態に係るサーバ40の構成の一例を示すブロック図である。
【0073】
本実施の形態では、サーバ40は、図9に示すように、通信部401と、演算処理部402と、メモリ403とを備え、例えばインターネットなどのネットワークにより、受信端末11と接続でき、少なくとも1つの受信端末11から情報を取得することができる。
【0074】
[1.4.1 通信部401]
通信部401は、ネットワークを介して複数の受信端末11それぞれと通信することができる。
【0075】
本実施の形態では、通信部401は、例えば、後述する演算処理部402により決定した受信エリアを指示情報に含めて、ネットワークを介して受信端末11に送信する。また、通信部111は、例えば、受信端末11から、遅延プロファイルを取得する。このとき、通信部111は、受信端末11から、位置に関する情報と時刻に関する情報とともに遅延プロファイルを取得してもよい。
【0076】
[1.4.2 演算処理部402]
図10は、図9に示す演算処理部402の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0077】
演算処理部402は、CPU(不図示)とメモリ403とを用いて種々の処理を行う。本実施の形態では、演算処理部402は、図10に示すように、情報取得部4021と、反射物位置特定部4022と、マップ作成部4023と、対象領域決定部4024と、反射物選択部4025と、エリア決定部4026と、水蒸気量推定部4027とを備える。
【0078】
[1.4.2.1 情報取得部4021]
情報取得部4021は、3以上の受信端末11のそれぞれから、当該受信端末11が直達波及び反射波を受信したときの直達波及び反射波の時間差を示す遅延プロファイルを取得する。より具体的には、情報取得部4021は、通信部401を制御して、ネットワークを介して当該受信端末11から遅延プロファイルを取得する。
【0079】
なお、情報取得部4021は、当該受信端末11が直達波及び反射波を受信したときの当該受信端末11の現在位置に関する情報及び当該現在位置における時刻に関する情報を、遅延プロファイルとともに取得してもよい。遅延プロファイルを取得する時間間隔は、毎秒でもよいし、数時間オーダでもよいし、数日に一回というオーダでもよい。
【0080】
また、情報取得部4021は、後述するエリア決定部4026が決定したエリアに含まれる位置の1以上の受信端末11から、当該受信端末11が直達波及び反射波を受信したときの遅延プロファイルを取得してもよい。
【0081】
[1.4.2.2 反射物位置特定部4022]
反射物位置特定部4022は、情報取得部4021が取得した複数の遅延プロファイルから、受信端末11が受信した反射波を反射した反射物30の位置を特定する。
【0082】
図11A及び図11Bは、実施の形態に係る複数の遅延プロファイルから反射物30の位置を特定する方法を説明するための図である。
【0083】
まず、図11Aを用いて、一つの遅延プロファイルから得られる、反射物30が存在する場所(送信局20位置と受信端末11位置を焦点とする楕円曲線上)を説明する。
【0084】
図11Aに示すように、遅延プロファイルから,同時刻に送信された電波が直達波として受信端末11に到達する時間、及び、該電波が反射波として受信端末11に到達する時間の差から、反射波の経路距離(距離A+距離B)と直達波の経路距離(距離C)との距離差Dを求めることができる(電波の速度が既知であるため)。ここで、距離差D=(距離A+距離B-距離C)である。
【0085】
一方、受信端末11の位置はGPS情報より知ることができるため、既知である送信局20の位置とから距離Cを別途求めることができる。すなわち、(距離A+距離B)=(距離差D-距離C)=一定値となり、反射物30は送信局20位置と受信端末11位置を焦点とする楕円曲線上に存在することがわかる。
【0086】
次に、図11Bを用いて,図11Aの場合と同じ送信局20、同じ反射物30、異なる位置の受信端末11である場合に,遅延プロファイルによる直達波と反射波との時間差から得られる、反射物30が存在する場所を説明する。
【0087】
図11Bに示すように、図11Aのときと同様に、送信局20位置と受信端末11位置を焦点とするある楕円曲線を得ることができる。
【0088】
ここで,一つの焦点を共有する2つの楕円曲線では、交わらない、1~4点で交わるのいずれかとなる。図11Bには、4点で交わる場合が示されている。すなわち、この4点のいずれかが反射物30の位置となる。この交点は幾何学的に特定できる(反射物30の位置が特定できる)。なお、もし、交点がない場合は、その2つの楕円曲線に関連する2つの反射物30は異なる、ということを示すことになる。
【0089】
以上から,送信局20を固定して、複数位置の受信端末11からの遅延プロファイルを取得することで、反射物30がその上に存在する楕円曲線が複数得られ、それらの楕円曲線の交点が反射物30の候補位置となることがわかる。
【0090】
なお、送信局20と受信端末11の位置関係、また,反射物30が一つしかないとは限らないため、いくつの遅延プロファイルを集めれば一つの反射物30の位置が必ず特定できるとは言えない。しかしながら、サーバ40で多くの異なる位置での受信端末11からの遅延プロファイルを収集することで、楕円曲線の交点を求めることができる。このため、その中で多くの楕円曲線で共有される交点は、実質的に,ある反射物30を示していると言える。
【0091】
換言すると、反射物位置特定部4022は、さらに、情報取得部4021が取得した複数の遅延プロファイルを用いることで、互いに異なる複数の反射物30の位置を特定することができる。
【0092】
[1.4.2.3 マップ作成部4023]
マップ作成部4023は、所定エリアごとに複数の反射物30の位置がマッピングされたマップを作成する。本実施の形態では、マップ作成部4023は、反射物位置特定部4022により特定された互いに異なる複数の反射物30の位置を用いて、所定エリアごとに複数の反射物30の位置がマッピングされたマップを作成する。例えば、マップ作成部4023は、さらに、国土交通省が提供する土地利用3次メッシュデータなどから、受信端末11が存在する位置を含む土地に関するデータを取得してもよい。この場合、マップ作成部4023は、反射物位置特定部4022により特定された互いに異なる複数の反射物30の位置と、取得した当該土地に関するデータとを用いて、当該土地の所定エリアごとのマップを作成してもよい。
【0093】
図12は、本実施の形態に係る所定エリアにおける複数の反射物30の位置がマッピングされたマップの一例を示す図である。
【0094】
図12に示す例では、マップ作成部4023は、反射物位置特定部4022により特定された互いに異なる複数の反射物30の位置を用いて、所定エリアにおける5つの反射物30a~30eの位置がマッピングされたマップを作成している。なお、マップ作成部4023は、図12に示すように、複数の反射物30(5つの反射物30a~30e)の位置に加えて、所定エリアにおける送信局20を含むマップを作成してもよい。
【0095】
[1.4.2.4 対象領域決定部4024]
対象領域決定部4024は、水蒸気量推定を行う対象領域を決定する。対象領域決定部4024は、例えばマップ作成部4023が作成した当該土地の所定エリアごとのマップを用いて、水蒸気量推定を行う対象領域を決定する。
【0096】
図13は、本実施の形態に係る水蒸気量推定を行うための処理を概念的に説明するための図である。つまり、対象領域決定部4024は、例えばマップ作成部4023が作成した図9に示すマップを用いて、図13に示すような水蒸気量推定を行う対象領域70を決定すればよい。
【0097】
[1.4.2.5 反射物選択部4025]
反射物選択部4025は、マップ作成部4023において作成されたマップを用いて、対象領域決定部4024により決定された対象領域を含む所定エリアのうちの一の反射物30を選択する。
【0098】
本実施の形態では、反射物選択部4025は、例えばマップ作成部4023が作成した図12に示すマップを用いて、所定エリアに存在する複数の反射物30から一の反射物30を選択する。図13に示す例では、反射物選択部4025は、対象領域70から見て、5つの反射物30a~30eのうち、送信局20が送信する電波を反射することができそうな反射物30bを選択している。
【0099】
[1.4.2.6 エリア決定部4026]
エリア決定部4026は、反射物選択部4025により選択された一の反射物の位置と対象領域決定部4024により決定された対象領域とを結ぶ直線を延伸したエリアを受信エリアとして決定する。エリア決定部4026は、通信部401を制御してネットワークを介して、決定した受信エリアを(指示情報に含めて)、複数の受信端末11に送信する。
【0100】
図13に示す例では、エリア決定部4026は、反射物選択部4025により選択された反射物30bと対象領域70とを結ぶ直線を延伸した受信エリア81を決定する。なお、図13に示す例では、エリア決定部4026は、反射物30bと対象領域70の中心とを通る直線80から所定距離以内の範囲を受信エリア81として決定している。この受信エリア81は、受信端末11が受信すべき直達波及び反射波の受信エリアに該当する。
【0101】
[1.4.2.7 水蒸気量推定部4027]
水蒸気量推定部4027は、情報取得部4021が取得した遅延プロファイルを用いて対象領域の水蒸気量を推定する。
【0102】
図14は、本実施の形態に係る水蒸気量推定を行うための遅延プロファイル取得処理を概念的に説明するための図である。図13と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0103】
本実施の形態では、例えば図14に示すように、水蒸気量推定部4027は、エリア決定部4026が決定した受信エリア81に含まれる1以上の受信端末11(移動体10)から取得した遅延プロファイルを用いて対象領域70の水蒸気量を推定する。図14に示す例では、複数の移動体10a~10dが移動しており、エリア決定部4026が決定した受信エリア81に含まれる移動体10c(受信端末11)のみから取得した遅延プロファイルを対象領域70の水蒸気量推定を行うために用いる場合が示されている。
【0104】
なお、複数の受信端末11(移動体10)が常時、遅延プロファイル等をサーバ40に送信している場合がある。この場合、水蒸気量推定部4027は、取得した複数の遅延プロファイルのうちからエリア決定部4026が決定したエリアに含まれる1以上の受信端末11から取得した遅延プロファイルを抽出して用いればよい。
【0105】
そして、水蒸気量推定部4027は、遅延プロファイルから得られる電力情報から、直達波(主波)に対する遅延波の位相を計算する。水蒸気量推定部4027は、計算した遅延波の位相の変動から、電波が通過してきた空間(対象領域)での遅延量の変動を計算できる。そして、遅延量の変動は空間(対象領域)の水蒸気量の変動とみなせる。このため、水蒸気量推定部4027は、当該遅延波を受信した1以上の受信端末11から取得した複数の遅延プロファイルから、空間(対象領域)の水蒸気量の推定を行うことができる。
【0106】
ここで、水蒸気量が推定できる原理等について説明する。
【0107】
図15Aは、1気圧20℃における相対湿度に対する電波の伝搬遅延の変化を示す図である。図15Aに示すように、電波は空気中の水蒸気量により速度が変動するという特性がある。つまり、電波は真空中では光速で伝搬するが、空気中では水蒸気量により伝搬速度が変化する。例えば電波が5kmの距離を伝搬する場合、相対湿度が1%上昇すると、約17ps(長さ約5mm)の伝搬遅延が発生する。したがって、電波の伝搬速度を測定することにより、空気中の水蒸気量を測定することができることがわかる。
【0108】
図15Bは、比較例に係る電波の伝搬遅延を測定するための構成を示す図である。図15Bには、送信局及び受信点の間で直接受信する電波(直達波)と、送信局-反射物-受信点という反射された電波(反射波)の2つを用いることで水蒸気量を測定する方法(反射法と呼ばれる)の構成が示されている。
【0109】
直達波に対する遅延波の遅延時間は遅延プロファイルの各電波の位相の差から求めることができる。また、一般的な波動において位相θは、(式1)のように、周波数fと時間tで表現できる。そして、位相差から遅延時間がわかるので、伝搬速度に変換することで水蒸気量を求めることができる。
【0110】
θ=2πft(式1)
【0111】
図15Bにおいて、Radio towerと示される送信局は、搬送波と呼ばれる基準となる周波数の信号にデータを乗せて電波を送信する。この基準となる周波数を作るための発振器における発振は厳密に一定ではないので、位相ノイズ(Φ)が発生してしまう。
【0112】
Recieverと示される受信点は、搬送波と呼ばれる基準となる周波数の信号にデータが乗った電波を受信する。このため、受信点でも同様に基準となる周波数の信号を作り、送信された電波からデータを取り出すことになるため、発振器の位相ノイズ(Φ)が発生してしまう。
【0113】
つまり、反射法では、図15Bに示す直達波と反射波(遅延波)との位相変化には、水蒸気量変化成分以外の発信器の位相ノイズ(Φ)に乗ってくるが、それらの位相ノイズ(Φ)は全く同一となる。このため、差を取ることで、位相ノイズ(Φ)の影響をキャンセルし、反射波と直達波との位相差を得ることができる。
【0114】
このようにして、反射法を用いると、受信点と反射体との間の往復の伝搬遅延が精度よく計算できるので、受信点と反射体との間の対象エリアの水蒸気量の推定を精度よく行うことができる。
【0115】
[1.4.3 メモリ403]
メモリ403は、通信部401及び演算処理部402の機能を実現するためのプログラム、及び、これらの機能構成を利用したアプリケーションの少なくとも一方が、予め記憶されていてもよい。
【0116】
また、メモリ403は、上記のプログラムまたはアプリケーションの実行に際してデータ等の記憶に利用される。
【0117】
[2. 全体システムの動作]
上述のように構成された全体システムの動作について以下説明する。
【0118】
[2.1 実施の形態に係る受信端末11の動作]
まずは、上述のように構成された受信端末11の動作について以下説明する。
【0119】
図16は、本実施の形態に係る受信端末11の動作例を示すフローチャートである。
【0120】
まず、受信端末11は、送信局20の直達波及び反射波を受信したときの遅延プロファイルを作成する(S10)。より具体的には、移動体10に搭載されている受信端末11は、送信局20により送信される電波の直達波及び当該電波の反射波を受信すると、直達波及び反射波を受信したときの直達波及び反射波の時間差を示す遅延プロファイルを作成する。なお、当該遅延プロファイルを用いることにより、当該時間差から、受信端末11と当該反射波を反射した反射物との距離が算出できる。また、当該遅延プロファイルは、上述したように、反射波が通過した空間(対象領域)の水蒸気量の推定にも用いることができる。
【0121】
次に、受信端末11は、ステップS10において作成した遅延プロファイルを、ネットワークを介してサーバ40へ送信する(S11)。より具体的には、受信端末11は、電波を受信したときの受信端末11の位置と時刻とに関する情報を遅延プロファイルとともにサーバ40へ送信する。なお、受信端末11の位置と時刻とは、GPSを利用して、取得される。
【0122】
[2.2 サーバ40の動作]
続いて、上述のように構成されたサーバ40の動作について以下説明する。
【0123】
図17は、本実施の形態に係るサーバ40の動作例を示すフローチャートである。図17には、サーバ40が受信端末11から得た遅延プロファイルを用いて反射物30の位置を特定し、特定した反射物30の位置を用いてマップを作成する動作例が示されている。
【0124】
まず、サーバ40は、2以上の受信端末のそれぞれから遅延プロファイルを含むデータを取得する(S21)。より具体的には、サーバ40は、2以上の受信端末11のそれぞれから、遅延プロファイルとともに、当該受信端末11が直達波及び反射波を受信したときの当該受信端末11の現在位置に関する情報と当該現在位置における時刻に関する情報とを取得する。以下、説明を単純化するため、各受信端末11からサーバ40に送られる遅延プロファイルからは1つの遅延プロファイルにつき最大でも1つの反射波のみを考慮することとする(一般的には複数の反射波による影響が記録されている)。
【0125】
次に、サーバ40は、ステップS21において取得した2以上の遅延プロファイルから、送信局20が送信する電波の反射波を反射した反射物30がそれぞれ存在する楕円曲線を求め、さらにそこから幾何学的に楕円曲線の交点群を求める。なお、その交点群は反射物30の位置を示すものと、そうでないものとを含んでいる。複数の楕円曲線がただ一つの交点を共有している場合、その交点が反射物30の位置であるとして特定する(S22)。ここで,取得した遅延プロファイルに関し、ただ一つの反射物30しかない場合、すべての楕円曲線の間でただ一つの交点を共有することになる。また、二つの反射物30がある場合は、2つの楕円曲線群が存在し、それぞれの楕円曲線群で、ただ一つの交点を共有することになる。なお、詳細処理については図18を用いて後述する。
【0126】
次に、サーバ40は、所定エリアごとに複数の反射物30の位置がマッピングされたマップを作成する(S23)。より具体的には、サーバ40は、ステップS22において特定された互いに異なる複数の反射物30の位置を用いて、所定エリアごとに複数の反射物30の位置がマッピングされたマップを作成する。
【0127】
図18は、図17のステップS22の詳細処理を示すフローチャートである。図18には本実施の形態に係る反射物30の位置特定方法の一例が示されている。
【0128】
まず、サーバ40は、所定のエリア内で取得されたデータを1つずつ抽出する(S2201)。より具体的には、サーバ40は、所定のエリアに含まれる反射物30の位置を特定するために、所定のエリア内で取得された遅延プロファイルを含むデータを1つずつ取得する。
【0129】
次に、サーバ40は、ステップS2021において抽出したデータにおいて遅延波が含まれるかを判定する(S2202)。なお、サーバ40は、それぞれのデータに含まれる遅延プロファイルに直達波とその反射波(遅延波)が含まれるか否かにより、当該データにおいて遅延波が含まれるかを判定することができる。
【0130】
ステップS2202において、データにおいて遅延波が含まれないと判定された場合(S2202でNO)、サーバ40は、所定のエリアにある反射物の位置特定に使用しないデータとして当該データにフラグを設定する(S2203)。その後、あるいはステップS2202でYESの場合、サーバ40は、全てのデータについて遅延プロファイルに遅延波が含まれるかどうかの判定したかを判定し(S2204)、未判定のデータがある場合(S2204でNO)、サーバ40は、ステップS2201に戻って処理をやり直す。
【0131】
ステップS2204以降は、遅延プロファイルに遅延波が含まれているデータの実を対象とする。
【0132】
ステップS2205において、各データ(遅延プロファイル)毎に下記の1)~4)の処理を行う。
【0133】
1)直達波と遅延波との時間差を求め、その時間差と電波の伝達速度との積から遅延波が通る経路(距離)と、直達波が通る経路(距離)との差(距離)を算出
2)データから受信端末11の位置(例えばGPSデータにより知ることが可能)と、既知である送信局20の位置から直達波が通る経路(距離)を算出
3)上記結果を考慮し、遅延波の経路(距離)、すなわち、(送信局20から反射物30までの距離)+(反射物20から受信端末11までの距離)を算出
【0134】
ここで、反射物20の位置は特定できないが、反射物20から、送信局20までの距離と受信端末11までの距離との和がある値(一定値)となることがわかる。これは、送信局20の位置と受信端末11の位置を焦点とするある楕円曲線上に反射物20が存在することを示している。
【0135】
4)(座標系を設定し)幾何学的に楕円曲線の方程式を導出
【0136】
上記処理の後、各楕円曲線の交点を幾何学的に求める。この交点は,反射物30の位置を表すものと、そうでないものがある。
【0137】
次に、ステップS2206において、各交点毎に以下の処理を行う。
【0138】
すなわち、当該交点をもつ楕円曲線群が、当該交点のみで交わるかどうか判断する処理を行う。
【0139】
最後にステップS2207において、それぞれ、一点のみで交わる楕円曲線群を持つ交点を反射物30の位置として特定する。
【0140】
このように反射物30の位置特定方法を行うことで、所定エリアに含まれる複数の反射物の位置を特定できる。これにより、上述した図17のステップS23を実行することができる。
【0141】
[2.3 水蒸気量が推定される際の動作例]
続いて、全体システムにおいて水蒸気量が推定される際の動作例について説明する。
【0142】
図19は、本実施の形態に係るサーバ40による水蒸気量推定の動作例を示すフローチャートである。図19には、サーバ40が作成した複数の反射物30の位置を含むマップを用いて、受信エリアを決定し、受信エリアに位置する受信端末11から取得した遅延プロファイルを用いて水蒸気量を推定する動作例について示されている。以下、図13及び図14に示される例を具体例として挙げて説明する。
【0143】
まず、サーバ40は、図19に示すように、水蒸気量を推定する対象となる対象領域を決定する(S31)。図13に示される例では、サーバ40は、蒸気量推定を行う対象領域70を決定する。
【0144】
次に、サーバ40は、所定エリアごとの複数の反射物30の位置を含むマップを用いて、対象領域を含む所定エリアのうちの一の反射物30を選択する(S32)。図13に示される例では、サーバ40は、図12に示すマップを用いて、対象領域70から見て、5つの反射物30a~30eのうち、送信局20が送信する電波を反射することができそうな反射物30bを選択する。
【0145】
次に、サーバ40は、ステップS32において選択した一の反射物の位置とステップS31において決定した対象領域とを結ぶ直線を延伸したエリアを受信エリアとして決定する(S33)。図13に示される例では、サーバ40は、反射物30bと対象領域70の中心とを通る直線80から所定距離以内の範囲を受信エリア81として決定する。
【0146】
次に、サーバ40は、ステップS33において決定した受信エリアに含まれる位置の1以上の受信端末11から、当該受信端末11が直達波及び反射波を受信したときの遅延プロファイルを取得する(S34)。図14に示される例では、サーバ40は、受信エリア81に含まれる1以上の受信端末11(移動体10)から遅延プロファイルを取得する。より具体的には、サーバ40は、受信エリア81に含まれる1以上の受信端末11から、遅延プロファイルとともに、当該受信端末11が直達波及び反射波を受信したときの当該受信端末11の現在位置に関する情報と当該現在位置における時刻に関する情報とを取得する。
【0147】
図14に示される例では、受信エリア81に含まれた位置の複数の受信端末11のみが遅延プロファイル等をサーバ40に送信している。ここで、サーバ40は、決定した受信エリア81を含めた指示情報を複数の受信端末11に送信することで、受信エリア81に含まれた位置の複数の受信端末11のみに遅延プロファイル等をサーバ40に送信させることができる。これにより、サーバ40は、受信エリア81に含まれた位置の複数の受信端末11のみから遅延プロファイル等を取得できる。なお、複数の受信端末11がそれぞれ遅延プロファイル等を常時サーバ40に送信していてもよい。この場合、サーバ40は、取得した複数の遅延プロファイルのうちからステップS33において決定した受信エリア81に含まれる1以上の受信端末11から取得した遅延プロファイル等を抽出すればよい。
【0148】
次に、サーバ40は、ステップS34において取得した遅延プロファイルを用いて、ステップS31において決定した対象領域の水蒸気量を推定する(S35)。図14に示される例では、サーバ40は、受信エリア81に含まれる1以上の受信端末11から取得した遅延プロファイルを用いて、対象領域70の水蒸気量を推定する。
【0149】
図20は、本実施の形態に係る水蒸気量推定が行われる際の受信端末11の動作例を示すフローチャートである。図20には、サーバ40により決定された受信エリア内に受信端末11が位置する場合に遅延プロファイル等をサーバ40に送信する場合の動作例が示されている。
【0150】
まず、受信端末11は、サーバ40から、受信エリアを取得する(S331)。より具体的には、受信端末11は、サーバ40により決定された受信エリアを含む指示情報をサーバ40から取得する。
【0151】
次に、受信端末11は、ステップS331において取得した受信エリア内にいるか否かを判定する(S332)。より具体的には、受信端末11は、GPSを利用して、自身(受信端末11)の位置を特定でき、自身の位置が受信エリアに含まれたか否かを判定する。
【0152】
ステップS332において、受信エリア内にいると判定された場合(S332でYES)、受信端末11は、送信局20の直達波及び反射波を受信したときの遅延プロファイルを作成する(S333)。より具体的には、受信端末11は、自身の位置が受信エリアに含まれているとき、送信局20により送信される電波を受信したときの受信端末11の位置と時刻とに関する情報を遅延プロファイルとともにサーバ40へ送信する。なお、ステップS332において、受信エリア内にいないと判定された場合(S332でNO)、ステップS331に戻って処理をやり直す。
【0153】
次に、受信端末11は、ステップS333において作成した遅延プロファイル等を、ネットワークを介してサーバ40へ送信する(S334)。ステップS334の処理は、ステップS11の処理と同様のため説明を省略する。
【0154】
[3. 効果等]
以上のようにして、本実施の形態に係る移動可能な受信端末11によれば、所在位置が固定されており、かつ、定期的に同一の電波を送信する放送局などの送信局20により送信される電波の直達波及び電波の反射波を受信したときの遅延プロファイルをサーバ40に送信する。これにより、受信端末11が移動可能であっても受信端末11が送信する遅延プロファイルを用いることで反射物の位置が特定可能になる。換言すると、放送局などの送信局20の電波を反射する反射物の位置を特定可能な情報を送信することができる情報送信方法及び移動型受信端末を実現できる。
【0155】
さらに、本実施の形態に係るサーバ40によれば、移動体10に搭載され移動可能な受信端末11を用いた場合でも放送局などの送信局20の電波を反射する反射物30の位置を特定することができる。そして、本実施の形態に係るサーバ40によれば、特定した反射物30の位置を利用し、受信端末11から取得した遅延プロファイルを用いることで水蒸気量を推定することができる。換言すると、移動型受信端末を用いた場合でも放送局などの送信局の電波を反射する反射物の位置を特定することができ、水蒸気量を推定できる情報処理方法を実現できる。
【0156】
(他の実施態様の可能性)
以上、実施の形態において本開示の情報送信方法、情報処理方法及び移動型受信端末について説明したが、各処理が実施される主体や装置に関しては特に限定しない。情報処理方法においてはローカルに配置された特定の装置内に組み込まれたプロセッサなど(以下に説明)によって処理されてもよい。また情報処理方法においてはローカルの装置と異なる場所に配置されているクラウドサーバなどによって処理されてもよい。
【0157】
なお、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本開示の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本開示の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本開示に含まれる。
【0158】
また、本開示は、さらに、以下のような場合も含まれる。
【0159】
(1)上記の装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。前記RAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0160】
(2)上記の装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0161】
(3)上記の装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカードまたは前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカードまたは前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカードまたは前記モジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0162】
(4)また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本開示は、所望の対象領域における水蒸気量を推定するために用いられ、かつ、反射物の位置を特定することができる遅延プロファイルを送信する情報送信方法及び移動型受信端末、並びに、取得した遅延プロファイルを用いて反射物の位置を特定し、所望の対象領域における水蒸気量を推定することができる情報処理方法に利用できる。
【符号の説明】
【0164】
10、10a、10b、10c、10d 移動体
11 受信端末
12 駆動部
20 送信局
30、30a、30b、30c、30e、30d 反射物
40 サーバ
70 対象領域
80 直線
81 受信エリア
111、401 通信部
112 電波受信部
113、402 演算処理部
114、403 メモリ
1131 遅延プロファイル作成部
1132 アップロード部
1133 位置特定部
1134 指示情報取得部
1135 判定部
4021 情報取得部
4022 反射物位置特定部
4023 マップ作成部
4024 対象領域決定部
4025 反射物選択部
4026 エリア決定部
4027 水蒸気量推定部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20