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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134288
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20220908BHJP
   H01R 13/648 20060101ALI20220908BHJP
   H01R 13/639 20060101ALI20220908BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R13/648
H01R13/639 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033332
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【弁理士】
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛士
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB02
5E021FC08
5E021FC20
5E021FC38
5E021HA07
5E021HC07
5E021JA05
5E021KA05
5E021LA11
5E021LA15
(57)【要約】
【課題】相手コネクタの誤挿入を防止するとともに、シェルの変形を抑制することのできる電気コネクタを提供する。
【解決手段】電気コネクタ1は、板状体21を有するハウジング2と、板状体21に保持された複数の端子3と、板状体21及び端子3の周囲を取り囲む筒形状を有する金属製のシェル4と、を備えた電気コネクタであって、シェル4は、相手コネクタが嵌合される嵌合口40と、相手コネクタの嵌合方向に沿うように設けられた二以上の側壁41と、二以上の側壁41のうち、隣接する側壁41を連結する連結部42と、連結部42よりも嵌合口40側に設けられ、隣接する側壁41のうちの一方の側壁41aから嵌合方向に沿う軸J周りに折り曲げられ、隣接する側壁41のうちの他方の側壁41bに向けて延びてなり、連結部42の反対側のエッジEが嵌合口40の一部を構成する第1の分岐帯状片43と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体を有するハウジングと、
前記板状体に保持された複数の端子と、
前記板状体及び端子の周囲を取り囲む筒形状を有する金属製のシェルと、
を備えた電気コネクタであって、
前記シェルは、
相手コネクタが嵌合される嵌合口と、
前記相手コネクタの嵌合方向に沿うように設けられた二以上の側壁と、
前記二以上の側壁のうち、隣接する側壁を連結する連結部と、
前記連結部よりも前記嵌合口側に設けられ、前記隣接する側壁のうちの一方の側壁から前記嵌合方向に沿う軸周りに折り曲げられ、前記隣接する側壁のうちの他方の側壁に向けて延びてなり、前記連結部の反対側のエッジが前記嵌合口の一部を構成する第1の分岐帯状片と、
を有する、電気コネクタ。
【請求項2】
前記第1の分岐帯状片は、前記嵌合方向の長さである前記第1の分岐帯状片の幅が、前記一方の側壁から前記他方の側壁に延びる長さ以上である、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項3】
前記第1の分岐帯状片は、前記嵌合方向の長さである前記第1の分岐帯状片の幅が、前記第1の分岐帯状片の厚みよりも大きい、
請求項1又は2に記載の電気コネクタ。
【請求項4】
前記シェルは、
前記連結部よりも前記嵌合口側に設けられ、前記隣接する側壁のうちの前記他方の側壁から前記嵌合方向に沿う軸周りに折り曲げられ、前記隣接する側壁のうちの前記一方の側壁に向けて延びてなり、前記連結部の反対側のエッジが前記嵌合口の一部を構成する第2の分岐帯状片を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項5】
前記第1の分岐帯状片の先端と前記第2の分岐帯状片の先端との間の隙間が、前記第1の分岐帯状片又は前記第2の分岐帯状片の厚み以下である、
請求項4に記載の電気コネクタ。
【請求項6】
前記シェルは、前記嵌合口を構成する前記側壁の上縁に前記嵌合口よりも外側に拡がるように立設されたガイド片を有し、
前記第1の分岐帯状片は、前記ガイド片よりも前記連結部側に設けられている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項7】
前記シェルは、
前記側壁において前記連結部よりも前記嵌合口側に設けられ、前記第1の分岐帯状片を前記側壁から分岐させる切欠き部と、
前記一方の側壁又は前記他方の側壁に設けられた前記相手コネクタを係止するロック孔と、
を有し、
前記切欠き部は、前記ロック孔よりも前記嵌合口側に設けられている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項8】
前記切欠き部は、
前記一方の側壁と前記他方の側壁に跨って前記嵌合方向と直交する方向に延びる第1の切欠きと、
前記第1の切欠きから前記嵌合口までの前記嵌合方向と同方向に延びる第2の切欠きと、
を有する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の電気コネクタ。
【請求項9】
前記第1の分岐帯状片は、その先端が前記他方の側壁に当接可能となるまで延びて構成されている、
請求項1に記載の電気コネクタ。
【請求項10】
前記第1の分岐帯状片の先端は、前記他方の側壁に沿うように傾斜している、
請求項9に記載の電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子の周囲を囲うシェルを有する電気コネクタに関し、特に、相手コネクタの誤挿入を防止するシェルを有する電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタへの相手コネクタの誤挿入を防止する観点から、各コネクタが嵌合する嵌合口の形状に特徴を持たせることが知られている(例えば、特許文献1)。このように嵌合口の形状に特徴を持たせることで、互いの嵌合口の形状が合わないと各コネクタを嵌合することができないため、無理矢理挿入しようとした際に発生し得るコネクタ端子の損傷又は破損を防止することができる。
【0003】
この嵌合口の形状に特徴を持たせる方法として、コネクタが有するシェルの嵌合口の縁に屈曲片を設け、この屈曲片により嵌合口の形状を非対称な形状にする技術が知られている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-246114号公報
【特許文献2】特開2017-152310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の屈曲片は、嵌合口を構成するシェルの縁にコネクタの嵌合方向に立設され、その先端部分が当該嵌合方向と直交するように折り曲げられて構成されており、相手コネクタの嵌合口の形状又は向きが合わない場合には、当該先端部分を成す面で相手コネクタの嵌合を阻止し、誤挿入を防止することができる。
【0006】
しかし、上記のような屈曲片では、相手コネクタを先端部分において面で受け止めるため、屈曲片自体が変形し、また屈曲片に加わる力によってシェルも変形しやすいという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、相手コネクタの誤挿入を防止するとともに、シェルの変形を抑制することのできる電気コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気コネクタは、板状体を有するハウジングと、前記板状体に保持された複数の端子と、前記板状体及び端子の周囲を取り囲む筒形状を有する金属製のシェルと、
を備えた電気コネクタであって、前記シェルは、相手コネクタが嵌合される嵌合口と、前記相手コネクタの嵌合方向に沿うように設けられた二以上の側壁と、前記二以上の側壁のうち、隣接する側壁を連結する連結部と、前記連結部よりも前記嵌合口側に設けられ、前記隣接する側壁のうちの一方の側壁から前記嵌合方向に沿う軸周りに折り曲げられ、前記隣接する側壁のうちの他方の側壁に向けて延びてなり、前記連結部の反対側のエッジEが前記嵌合口の一部を構成する第1の分岐帯状片と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、相手コネクタの誤挿入を防止するとともに、シェルの変形を抑制することのできる電気コネクタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電気コネクタの正面側斜視図である。
図2】実施形態に係る電気コネクタの背面側斜視図である。
図3】実施形態に係る電気コネクタの上面図である。
図4】第1及び第2の分岐帯状片が設けられたシェルの1つの角部の部分拡大図であって、シェルの外側から見た図である。
図5】第1及び第2の分岐帯状片が設けられたシェルの1つの角部の部分拡大図であって、シェルの内側から見た図である。
図6】実施形態の変形例1に係るシェルの上面図である。
図7】実施形態の変形例2に係るシェルの上面図である。
図8】実施形態の変形例3に係るシェルの上面図である。
図9】分岐帯状片の変形例に係るシェルの角部の部分拡大図であって、シェルの内側から見た図である。
図10】分岐帯状片の変形例に係るシェルの角部の部分拡大図であって、シェルの外側から見た図である。
図11】分岐帯状片の変形例に係るシェルの角部の部分拡大上面図である。
【0011】
[実施形態]
[構成]
図1は、本実施形態に係る電気コネクタの正面側斜視図である。図2は、本実施形態に係る電気コネクタの背面側斜視図である。図3は、本実施形態に係る電気コネクタの上面図である。
【0012】
以下の実施の形態において、説明の便宜上、電気コネクタ1の長手方向(端子の配列方向)をX(X1X2)方向とし、短手方向(端子の対向方向)をY(Y1Y2)方向とし、高さ方向(嵌合・抜去方向)をZ(Z1Z2)方向とする。Z2方向が嵌合方向であり、Z1方向が抜去方向である。なお、各方向は、電気コネクタを構成する部位の相対的な位置関係を説明するためのものであり、絶対的な方向を示すものではない。高さ方向のうち、相対的にZ1側を上方又は上側、上、相対的にZ2側を下方、下側、下又は底側と称する場合がある。
【0013】
電気コネクタ1は、ここでは、不図示の基板に実装されるレセプタクルコネクタである。電気コネクタ1は、ハウジング2、複数の端子3、金属製のシェル4を備えている。電気コネクタ1は、シェル4の嵌合口40を介してシェル4内の内部に不図示の相手コネクタが嵌合され、当該内部において、ハウジング2により保持された複数の端子3と相手コネクタの端子とが接触することで、両コネクタが電気的に接続される。なお、本実施形態の電気コネクタ1は、嵌合方向が基板に対して垂直となるように構成されているが、基板に対して水平となるようにしても良い。
【0014】
ハウジング2は、例えば樹脂製であり、基台20と、板状体21とを有する。基台20は、基板上に載置される偏平略直方体形状を有する台である。ここでは、基台20は、上下方向において段状に形成されている。板状体21は、板状であり、その面をY方向と直交するようにした状態で、基台20上から上方(Z1方向)に延出するように立設されている。板状体21の両面には、複数の端子3が配列されている。ここでは、板状体21の一方の片面に5つの端子3が配列され、他方の片面に5つの端子3が配列されている。
【0015】
端子3は、相手コネクタの端子と接触して電気的に接続されるとともに、基板上の回路と電気的に接続される導電体である。端子3は、ハウジング2に保持されている。例えば、端子3は、概略L字状を有し、L字の一辺が板状体21に保持され、他の辺が基台20の下部から露出してX方向に延び、基板上の回路と電気的に接続される。すなわち、L字の一辺が相手コネクタの端子と接触する接触部であり、L字の他の辺が基板に実装される実装部である。端子3は、例えば、板状体21に設けられた穴に圧入等により板状体21に取り付けられて板状体21に保持されても良いし、インサート成形等により一部が埋設されて板状体21に保持されても良い。複数の端子3がX方向に配列されて第1及び第2の端子列を構成する。Y2方向側の第1の端子列と、Y1方向側の第2の端子列とが、板状体21を挟んでY方向に対向している。但し、本実施形態では、クロストーク防止の観点から、複数の端子3は、各端子列における端子3間に他方の端子列の端子3が位置するように千鳥状に配置されている。
【0016】
シェル4は、板状体21及び端子3の周囲を取り囲む筒形状を有する金属部材である。シェル4は、嵌合口40、二以上の側壁41、連結部42、第1の分岐帯状片43、第2の分岐帯状片44、切欠き部45、ロック孔46、ツメ部47、ガイド片48を有する。
【0017】
嵌合口40は、相手コネクタが嵌合される開口であり、相手コネクタが嵌合される際にはシェル4の内部への入口となり、相手コネクタが抜去される際にはシェル4の外部への出口となる。すなわち、嵌合口40は、電気コネクタ1の上部に位置し、具体的には、板状体21の上縁よりも上部に位置している。本実施形態の嵌合口40は、矩形状の1つの角を切り欠いて形成された五角形状を有しており、X方向及びY方向に非対称な形状である。
【0018】
二以上の側壁41は、ここでは4つの側壁41であり、角筒状に板状体21の周囲を取り囲む。各側壁41は、嵌合方向であるZ2方向に沿うように板状体21の周囲を取り囲む。具体的には、ZX平面と平行な一対の側壁41aと、側壁41aの端部間を繋ぐ、ZY平面と平行な一対の側壁41bとにより板状体21の周囲を取り囲む。すなわち、Y2方向側の側壁41aは、X1方向側でX1側の側壁41bと隣接し、X2方向側でX2側の側壁41bと隣接する。Y1方向側の側壁41aは、X1方向側でX1側の側壁41bと隣接し、X2方向側でX2側の側壁41bと隣接する。4つの側壁41と板状体21との間の内部空間に相手コネクタのシェルが嵌合する。なお、「嵌合方向に沿う」とは、嵌合方向と平行であるか略平行であることをいう。嵌合方向と略平行とは、1つの例では、嵌合方向に対して-5°~5°の範囲の方向をいう。
【0019】
側壁41bの下端には、下方に延びる一対の固定片41cが設けられており、基台20の一対の穴20aに圧入することでシェル4が基台20上に固定して立設される。また、固定片41cの下端は基台20から露出しており、基板上の回路と電気的に接続可能である。
【0020】
連結部42は、二以上の側壁41のうち、隣接する側壁41a、41bを連結する部位である。ここでは、連結部42は、シェル4の4つの角部に設けられている。連結部42は、シェル4の少なくとも1つ以上の角部において、例えば、側壁41の中央の高さより下方で、隣接する側壁41a、41bを連結し、残りの角部において上下方向にわたって隣接する側壁41a、41bを連結する。
【0021】
図4は、分岐帯状片43、44が設けられたシェル4の1つの角部の部分拡大図であって、シェル4の外側から見た図である。図5は、分岐帯状片43、44が設けられたシェル4の1つの角部の部分拡大図であって、シェル4の内側から見た図である。
【0022】
図1図2図4及び図5に示すように、第1の分岐帯状片43及び第2の分岐帯状片44は、連結部42よりも嵌合口40側に設けられ、側壁41から分岐してなる帯状体である。第1の分岐帯状片43は、隣接する側壁41a、41bのうち、一方の側壁41aから嵌合方向に沿う軸J周りに折り曲げられ、隣接する側壁41a、41bのうちの他方の側壁41bに向けて延びている。軸Jは、嵌合方向と平行又は略平行である。第2の分岐帯状片44は、隣接する側壁41a、41bのうちの他方の側壁41bから嵌合方向に沿う軸J周りに折り曲げられ、隣接する側壁41a、41bのうちの一方の側壁41aに向けて延びている。第1の分岐帯状片43、第2の分岐帯状片44は、連結部42の反対側のエッジEが嵌合口40の一部を構成している。すなわち、各分岐帯状片43、44は、嵌合口40の非対称形状を構成する。第1の分岐帯状片43の先端と第2の分岐帯状片44の先端との間の隙間は、第1の分岐帯状片43又は第2の分岐帯状片44の厚み以下である。
【0023】
第1の分岐帯状片43は、嵌合方向の長さである第1の分岐帯状片43の幅W1が、一方の側壁41aから他方の側壁41bに延びる長さL1以上である(W1/L1≧1)。第1の分岐帯状片43は、嵌合方向の長さである第1の分岐帯状片43の幅W1が、第1の分岐帯状片43の厚みよりも大きい。なお、厚みの方向は、W1の幅方向とL1の長さ方向と直交する方向であり、厚みは側壁41aと等しいか概略等しい。
【0024】
第2の分岐帯状片44は、嵌合方向の長さである第2の分岐帯状片44の幅W2が、他方の側壁41bから一方の側壁41aに延びる長さL2以上である(W2/L2≧1)。第2の分岐帯状片44は、嵌合方向の長さである第2の分岐帯状片44の幅W2が、第2の分岐帯状片44の厚みよりも大きい。なお、厚みの方向は、W2の幅方向とL2の長さ方向と直交する方向であり、厚みは側壁41bと等しいか概略等しい。また、第1の分岐帯状片43又は第2の分岐帯状片44の変形が抑制できれば、長さL1(L2)に対する幅W1(W2)は特に限定されないが、1≦W1(W1)/L1(L2)≦3が好ましく、1≦W1(W1)/L1(L2)≦2がより好ましい。また、第1の分岐帯状片43及び/又は第2の分岐帯状片44は、従来技術と比較して、Z1方向の力に対する変形抑制効果だけでなく、X方向及び/又はY方向の力に対する変形抑制効果を有する。
【0025】
切欠き部45は、側壁41において連結部42よりも嵌合口40側に設けられ、第1の分岐帯状片43、第2の分岐帯状片44を側壁41から分岐させる。切欠き部45は、一方の側壁41aと他方の側壁41bに跨って嵌合方向と直交する方向に延びる第1の切欠き451と、第1の切欠き451から嵌合口40までの嵌合方向と同方向に延びる第2の切欠き452とを有する。第1の切欠き451と第2の切欠き452とが連通することで、各分岐帯状片43、44を各側壁41a、41bから分岐させることができる。本実施形態では、第1の切欠き451は、シェル4の角部において、隣接する側壁41a、41bにわたって設けられ、第2の切欠き452は、分岐帯状片43、44が設けられるシェル4の角部に設けられている。切欠き部45は、ロック孔46よりも嵌合口40側に設けられている。すなわち、切欠き部45は、ロック孔46が設けられている高さの位置よりも高い位置(Z1側)に設けられている。
【0026】
ロック孔46は、側壁41に設けられた、相手コネクタを係止するための孔である。相手コネクタが嵌合した際に、相手コネクタのツメがロック孔46に嵌まることで係合することができる。ここでは、ロック孔46は、一対の側壁41bの中央部分に設けられている。
【0027】
ツメ部47は、側壁41に設けられており、相手コネクタのシェルと接触する。本実施形態では、一対の側壁41aの中央部分に設けられた開口47aと、当該開口47aの縁の下端から上方に延び、且つ先端が外側に膨出するツメ47bとを有する。相手コネクタと電気コネクタ1とが嵌合した際に、ツメ47bが相手コネクタのシェルと接触することで、相手コネクタを例えばグランドに接続することができる。
【0028】
ガイド片48は、嵌合口40を構成する側壁41の上縁の少なくとも一部に立設されている。ガイド片48は、嵌合口40よりも外側に拡がるように設けられており、相手コネクタをガイドし、相手コネクタとの嵌合を容易にする。
【0029】
本実施形態においては、一枚の長帯金属板を複数回折り曲げ加工して角筒形状のシェル4を作製することができる。また、この折り曲げ加工前に、切断装置により切欠き部45を形成し、折り曲げ加工後に各分岐帯状片43、44を軸J周りに折り曲げ加工を行うことにより、嵌合口40の形状を矩形の1つの角を切り欠いた五角形状とする。一枚の長帯金属板の一端部には、先端側がZ方向に膨出した凸部49aが設けられ、他端部には、凸部49aと同形状の凹部49bが設けられており、凸部49aと凹部49bをはめ合わせてシェル4を構成することができる。
【0030】
[作用・効果]
(1)本実施形態の電気コネクタ1は、板状体21を有するハウジング2と、板状体21に保持された複数の端子3と、板状体21及び端子3の周囲を取り囲む筒形状を有する金属製のシェル4と、を備えた電気コネクタであって、シェル4は、相手コネクタが嵌合される嵌合口40と、相手コネクタの嵌合方向に沿うように設けられた二以上の側壁41と、二以上の側壁41のうち、隣接する側壁41を連結する連結部42と、連結部42よりも嵌合口40側に設けられ、隣接する側壁41のうちの一方の側壁41aから嵌合方向に沿う軸J周りに折り曲げられ、隣接する側壁41のうちの他方の側壁41bに向けて延びてなり、連結部42の反対側のエッジEが嵌合口40の一部を構成する第1の分岐帯状片43と、を有するようにした。
【0031】
これにより、相手コネクタの誤挿入を防止するとともに、シェル4の変形を抑制することができる。すなわち、第1の分岐帯状片43のエッジEが嵌合口40の一部を構成しているので、嵌合口40の形状と合わない相手コネクタや嵌合口40の向きが異なる相手コネクタが誤挿入されようとしても、第1の分岐帯状片43の面ではなくエッジEで相手コネクタをブロックすることができる。そのため、相手コネクタの誤挿入による端子3の損傷又は破損を防止することができる。また、シェル4の嵌合口40に嵌合方向に立設され、且つその先端部分が嵌合方向と直交するように折り曲げられた屈曲片を有する従来の電気コネクタでは、先端部分を成す屈曲片の面で誤挿入された相手コネクタを受け止めることになるため、屈曲片に変形が生じやすくなる。これに対し、本実施形態では、第1の分岐帯状片43が相手コネクタの嵌合方向に沿う軸周りに折り曲げられているので、嵌合方向に加わる力を第1の分岐帯状片43のエッジEで受けることになり、第1の分岐帯状片43又はシェル4全体の剛性を高めることができ、シェル4の変形を抑制することができる。
【0032】
(2)第1の分岐帯状片43は、嵌合方向の長さである第1の分岐帯状片43の幅が、一方の側壁41aから他方の側壁41bに延びる長さ以上とした。これにより、第1の分岐帯状片43又はシェル4全体の剛性を高めることができ、シェル4の変形を抑制することができる。
【0033】
(3)第1の分岐帯状片43は、嵌合方向の長さである第1の分岐帯状片43の幅が、第1の分岐帯状片43の厚みよりも大きくした。これにより、第1の分岐帯状片43又はシェル4全体の剛性を高めることができ、シェル4の変形を抑制することができる。
【0034】
(4)シェル4は、連結部42よりも嵌合口40側に設けられ、隣接する側壁41のうちの他方の側壁41bから嵌合方向に沿う軸J周りに折り曲げられ、隣接する側壁41のうちの一方の側壁41aに向けて延びてなり、連結部42の反対側のエッジEが嵌合口40の一部を構成する第2の分岐帯状片44を有するようにした。
【0035】
これにより、1つ当たりの分岐帯状片の長さを短くすることができ、相手コネクタの誤挿入防止の実効性を向上させることができる。すなわち、1つの分岐帯状片のいずれかの面から先端までの長さを短くすることができるので、相手コネクタを無理矢理嵌合させようとした際の分岐帯状片に加わる嵌合方向の力のモーメントを小さくすることができ、シェル4の変形を抑制することができる。
【0036】
(5)第1の分岐帯状片43の先端と第2の分岐帯状片44の先端との間の隙間が、第1の分岐帯状片43又は第2の分岐帯状片44の厚み以下とした。これにより、第1の分岐帯状片43又は第2の分岐帯状片44のエッジEに過大な力が加わって第1の分岐帯状片43及び第2の分岐帯状片44の何れかが変形しても他方の分岐帯状片に当接するので、それ以上の変形を抑制することができる。
【0037】
(6)シェル4は、嵌合口40を構成する側壁41の上縁に嵌合口40よりも外側に拡がるように立設されたガイド片48を有し、第1の分岐帯状片43は、ガイド片48よりも連結部42側に設けるようにした。これにより、相手コネクタを嵌合口40に誘導することができる。
【0038】
(7)シェル4は、側壁41において連結部42よりも嵌合口40側に設けられ、第1の分岐帯状片43を側壁41から分岐させる切欠き部45と、一方の側壁41a又は他方の側壁41bに設けられた相手コネクタを係止するロック孔46と、を有し、切欠き部45は、ロック孔46よりも嵌合口40側に設けるようにした。これにより、シェル4の剛性を保つことができ、シェル4の変形を抑制することができる。
【0039】
(8)切欠き部45は、一方の側壁41aと他方の側壁41bに跨って嵌合方向と直交する方向に延びる第1の切欠き451と、第1の切欠き451から嵌合口40までの嵌合方向と同方向に延びる第2の切欠き452と、を有するようにした。これにより、第1の分岐帯状片を形成することができる。また、第2の切欠きをシェルの角部に設けることで、第1の分岐帯状片と第2の分岐帯状片を形成することができる。
【0040】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含する。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0041】
例えば、上記実施形態では、第1の分岐帯状片43、第2の分岐帯状片44、切欠き部45、連結部42の組をシェル4の1つの角部に設けるようにしたが、図6に示すように、シェル4の対角の角部に当該組を設けるようにしても良い。また、図7に示すように、側壁41aの両端に位置する角部に当該組を設けるようにしても良いし、図8に示すように、側壁41bの両端に位置する角部に当該組を設けるようにしても良い。このように、当該組の数、及び/又は、当該組を設ける場所は、任意である。
【0042】
また、上記実施形態では、2つの分岐帯状片43、44を設けたが、1つの分岐帯状片50としても良い。図9は、分岐帯状片の変形例に係るシェル4の角部の部分拡大図であって、シェル4の内側から見た図である。図10は、分岐帯状片の変形例に係るシェル4の角部の部分拡大図であって、シェル4の外側から見た図である。図11は、分岐帯状片の変形例に係るシェル4の角部の部分拡大上面図である。分岐帯状片50と切欠き部45の上記実施形態と異なる構成について説明し、同じ構成の説明は省略する。
【0043】
図9図11に示すように、分岐帯状片50は、1つであり、その先端が側壁41aから隣接する他方の側壁41bに当接可能となるまで延びて構成されている。このように構成しても相手コネクタの誤挿入を防止することができるとともに、シェル4の変形を抑制することができる。また、相手コネクタがこじるように無理矢理挿入されようとしても、分岐帯状片50の先端が側壁41bの内面に当接するので当該内面以上の変形を防止することができる。分岐帯状片50の延び方向の長さは、分岐帯状片50の幅以上であっても良いし、分岐帯状片50の幅未満であっても良い。分岐帯状片50の先端は、側壁41bに沿うように傾斜している。これにより、相手コネクタがこじるように無理矢理挿入されようとしても、分岐帯状片50の先端が側壁41bの内面に面接触するので、誤挿入の際に分岐帯状片50に加わる応力を、分岐帯状片50よりも剛性の高い側壁41bに分散させることができ、シェル4の変形を抑制することができる。なお、この傾斜は、プレス等により形成することができる。
【0044】
切欠き部45は、第2の切欠き452が設けられる位置が上記実施形態と異なる。すなわち、上記実施形態では、第2の切欠き452は、シェル4の角に沿って上下に設けられていたのに対し、本変形例の第2の切欠き452は、側壁41bに上下に設けられている。そのため、切欠き部45は、L字状となり、分岐帯状片50を側壁41から分岐させる。
【0045】
また、上記実施形態では、電気コネクタ1はレセプタクルコネクタであるとしたが、電気コネクタ1は、プラグコネクタであっても良い。
【符号の説明】
【0046】
1 電気コネクタ
2 ハウジング
20 基台
21 板状体
3 端子
4 シェル
40 嵌合口
41 側壁
41a 一方の側壁
41b 他方の側壁
42 連結部
43 第1の分岐帯状片
44 第2の分岐帯状片
45 切欠き部
451 第1の切欠き
452 第2の切欠き
46 ロック孔
47 ツメ部
47a 開口
47b ツメ
48 ガイド片
49a 凸部
49b 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11