IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社奥村組の特許一覧

<>
  • 特開-掘削機 図1
  • 特開-掘削機 図2
  • 特開-掘削機 図3
  • 特開-掘削機 図4
  • 特開-掘削機 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022134305
(43)【公開日】2022-09-15
(54)【発明の名称】掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20220908BHJP
【FI】
E21D9/06 311Z
E21D9/06 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021033354
(22)【出願日】2021-03-03
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仁井 俊次
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】松本 清志
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 英介
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC18
2D054AD07
2D054AD27
2D054AD32
2D054BA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】矩形パイプの地中への推進埋設にあたり、人力による苦渋作業の解消と掘削の高効率化を図る掘削機を提供する。
【解決手段】掘削機100は、矩形パイプ40の前部の内側に隙間を有して設けられた内円筒体10と、内円筒体10の隔壁14,15に支持され、地盤Bを掘削する主カッター体20と、内円筒体10の前部の外周面に固定されるとともに、矩形パイプ40の前端部の内周面に着脱自在に固定され、主カッター体20の周囲を取り囲む前側板体31を有する矩形枠状体30と、前側板体31に支持され、矩形パイプ40の四隅の地盤Bを掘削する4個の副カッター体50とを備える。カッターヘッド51の形状はカッターヘッド51の回転中心に対して偏心しており、カッターヘッド51の最大通過領域は矩形パイプ40の外縁を超えた領域を部分的に含むとともに、前面視における各カッターヘッド51の形状全体が矩形パイプ40の外縁内に位置し得る。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に矩形パイプを推進する際に、前記矩形パイプの前方に位置する地盤を掘削する掘削機であって、
前記矩形パイプの前部の内側に前記矩形パイプの内周面との間に隙間を有して設けられた円筒状の内円筒体と、
前記内円筒体の隔壁に支持され、前記矩形パイプの中央部の前方に位置する前記地盤を回転するカッターヘッドにより掘削する主カッター体と、
前記内円筒体の前部の外周面に固定されるとともに、前記矩形パイプの前端部の内周面に着脱自在に固定され、前記主カッター体の周囲を取り囲む取り囲み部材を有する矩形枠状体と、
前記矩形枠状体の取り囲み部材に支持され、前記矩形パイプの四隅の隅角部の前方に位置する前記地盤を回転するカッターヘッドにより掘削する4個の副カッター体とを備え、
前記副カッター体のカッターヘッドの前面視の形状は当該カッターヘッドの回転中心に対して偏心しており、前面視における前記副カッター体のカッターヘッドの最大通過領域は前記矩形パイプの外縁を超えた領域を部分的に含むとともに、前面視における各前記副カッター体のカッターヘッドの形状全体が前記矩形パイプの外縁内に位置し得ることを特徴とする掘削機。
【請求項2】
前記内円筒体と前記矩形パイプとが、連結機構を介して着脱自在に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の掘削機。
【請求項3】
前記連結機構は、
前記内円筒体の後部に着脱自在に設けられた円筒状の伝達リングと、
前記伝達リングの後面と当接した状態で前記矩形パイプの内周面に対して着脱自在に設けられた反力受止部材とから構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の掘削機。
【請求項4】
前記矩形パイプは、矩形パイプ本体と、前記矩形パイプ本体の前端に設けられて外周縁の形状が前記矩形パイプ本体の外周縁の形状と略同一である外矩形筒体とからなり、前記外矩形筒体が前記矩形パイプの前端部を形成していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機、特に、地中に矩形パイプを推進させながら、矩形パイプの前方に位置する地盤を掘削する掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、既存の鉄道、道路などの下方の地盤に、これらを横断するトンネルを構築するアンダーパストンネル工事が行われている。この際、上層の地盤を支持して既存の鉄道や道路の沈下を防止するために、トンネル本体の構築に先がけて、地中の水平方向に矩形パイプを複数個に並べて配置し、ルーフ状の支持体であるパイプルーフを形成することが行われている。このパイプルーフの形成に際しては、各矩形パイプの前端に設けた掘削機のカッターヘッドにより、矩形パイプの前方に位置する地盤を回転掘削しながら矩形パイプを推進させる、いわゆる機械掘削による推進埋設方法が用いられる場合がある。
【0003】
このような機械掘削による推進埋設方法によれば、人力に拠らないため、苦渋作業をなくし、高効率で掘削を行うことができる。しかし、掘削機を回収して次の矩形パイプの掘削に用いるための矩形パイプ到達側の空間が未整備である場合や、掘削地盤中に礫などの障害物があった場合、掘削機を矩形パイプ内から後方の発進側に回収することができないことから、広く普及するには至っていない。
【0004】
一方、円形トンネルを構築する際には、掘削機を円形トンネル内から後方の発進側に回収することが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3892412号公報
【特許文献2】特許第4693799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示されている技術においては、矩形断面のトンネルを掘削する場合、カッターヘッドが回転掘削した中央部以外に未掘削部分が残り、この残部の地盤を、作業員が手持ちの掘削機などを用いて人力により掘削する必要があり、上記した苦渋作業の解消や掘削の高効率化といった機械掘削のメリットを発揮させることができないという課題があった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであり、矩形パイプの地中への推進埋設にあたり、人力による苦渋作業の解消と掘削の高効率化を図ることが可能な掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の掘削機は、地中に矩形パイプを推進する際に、前記矩形パイプの前方に位置する地盤を掘削する掘削機であって、前記矩形パイプの前部の内側に前記矩形パイプの内周面との間に隙間を有して設けられた円筒状の内円筒体と、前記内円筒体の隔壁に支持され、前記矩形パイプの中央部の前方に位置する前記地盤を回転するカッターヘッドにより掘削する主カッター体と、前記内円筒体の前部の外周面に固定されるとともに、前記矩形パイプの前端部の内周面に着脱自在に固定され、前記主カッター体の周囲を取り囲む取り囲み部材を有する矩形枠状体と、前記矩形枠状体の取り囲み部材に支持され、前記矩形パイプの四隅の隅角部の前方に位置する前記地盤を回転するカッターヘッドにより掘削する4個の副カッター体とを備え、前記副カッター体のカッターヘッドの前面視の形状は当該カッターヘッドの回転中心に対して偏心しており、前面視における前記副カッター体のカッターヘッドの最大通過領域は前記矩形パイプの外縁を超えた領域を部分的に含むとともに、前面視における各前記副カッター体のカッターヘッドの形状全体が前記矩形パイプの外縁内に位置し得ることを特徴とする。
【0009】
本発明の掘削機によれば、主カッター体のカッターヘッドにより矩形パイプの中央部の前方に位置する地盤を回転掘削するほかに、4個の副カッター体のカッターヘッドにより矩形パイプの四隅の隅角部の前方に位置する地盤を回転掘削する。これにより、作業員が手持ちの掘削機などを用いて掘削すべき地盤の部分が削減されるので、矩形パイプの地中への推進埋設にあたり、人力による苦渋作業の解消と掘削の高効率化を図ることが可能となる。また、矩形枠状体は矩形パイプに対して着脱自在であるので、矩形枠状体及びこれと一体化した内円筒体、主カッター体、副カッター体を矩形パイプと切り離して後方に回収することが可能となる。
【0010】
また、前面視における副カッター体のカッターヘッドの最大通過領域は矩形パイプの外縁を超えた領域を部分的に含むので、前面視における副カッター体のカッターヘッドの最大通過領域が矩形パイプの外縁を超えない場合と比較して、掘り残しが少なく、矩形パイプを円滑に推進させることができ、当該推進に要する推力を低減させることが可能となる。
【0011】
さらに、前面視における各記副カッター体のカッターヘッドの形状全体が矩形パイプの外縁内に位置し得るので、このような位置に各副カッター体のカッターヘッドを位置させた状態とすることにより、副カッター体を矩形枠状体と共に、矩形パイプ内を通過させて後方に移動させることが可能となり得る。
【0012】
本発明の掘削機において、前記内円筒体と前記矩形パイプとが、連結機構を介して着脱自在に連結されていることが好ましい。
【0013】
この場合、主カッター体、副カッター体、内円筒体及び矩形枠状体を、矩形パイプ内を通過させて後方に移動させることが可能となる。さらに、連結機構は、主カッター体及び副カッター体のカッターヘッドにより地盤を回転掘削に作用する反力を矩形パイプに伝達する反力伝達機構としても機能する。
【0014】
また、本発明の掘削機において、前記連結機構は、前記内円筒体の後部に着脱自在に設けられた円筒状の伝達リングと、前記伝達リングの後面と当接した状態で前記矩形パイプの内周面に対して着脱自在に設けられた反力受止部材とから構成されていることが好ましい。
【0015】
この場合、主カッター体、副カッター体、内円筒体及び矩形枠状体を後方に引き出す際に損傷が生じ易い部材が伝達リングとなるので、内円筒体が損傷することの抑制を図ることが可能になる。
【0016】
また、本発明の掘削機において、前記矩形パイプは、矩形パイプ本体と、前記矩形パイプ本体の前端に設けられて外周縁の形状が前記矩形パイプ本体の外周縁の形状と略同一である外矩形筒体とからなり、前記外矩形筒体が前記矩形パイプの前端部を形成していることが好ましい。
【0017】
この場合、矩形パイプ本体として、後方から順次継ぎ足される従来から使用されている矩形パイプを用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る掘削機の模式前面視図。
図2図1におけるI I-I I線断面模式矢視図。
図3図2におけるC部模式拡大図。
図4図2におけるD模式拡大図。
図5図4に示す部分のV-V線断面模式矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態に係る掘削機100について図1及び図2を参照して説明する。掘削機100は、例えば、既存の鉄道、道路などの下方の地盤にこれらを横断するトンネルを構築するアンダーパス工事において、水平方向に複数個に並べて配置される矩形パイプ40を推進させる推進工法を行う際に、各矩形パイプ40の前方に位置する地盤Bを掘削するものである。
【0020】
なお、掘削機100は、水平方向に複数個に並べて配置される各矩形パイプ40に対応して、複数台が並置されて使用される場合があるが、ここでは、1台の掘削機100を例に挙げて説明する。
【0021】
また、以下の説明では、掘削方向(矩形パイプ40の推進方向)を前方向(図1における左方向、図2における紙面手前向き方向)、掘削方向と直交するトンネル断面の水平方向を横方向(図1中における紙面に直交する方向、図2における左右方向)とする。なお、全ての図面は本実施形態を模式的に説明するための図であり、各構成部材は模式化され、寸法もデフォルメされている。
【0022】
掘削機100は、矩形パイプ40の前方に位置する地盤Bを掘削する。矩形パイプ40の本体である矩形パイプ本体40aはエレメントとも称され、例えば、縦横800mm程度の略正方形の断面形状を有する鉄鋼製の中空パイプ部材である。矩形パイプ本体40aは、図示しないが、後方から順次継ぎ足されることによって、推進方向に向かって推進される。
【0023】
掘削機100は、内円筒体10、主カッター体20、矩形枠状体30、矩形パイプ40、4個の副カッター体50などを備えている。
【0024】
内円筒体10は、矩形パイプ本体40aの前端部の内側に設けられており、鉄鋼などからなっている。内円筒体10は、円筒状からなり、前側に位置する前側円筒体11、円筒状からなり、後側に位置する後側円筒体12、前側円筒体11と後側円筒体12とを屈折自在に接続する接続体13とを有している。接続体13は、詳細は図示しないが、シール材を備え、前側円筒体11と後側円筒体12とがその間のシール材と摺接するように構成されている。
【0025】
さらに、前側円筒体11と後側円筒体12には、それぞれ中折れジャッキ61のピストンの端部とシリンダの端部がそれぞれ固定されている。この中折れジャッキ61のピストンの伸縮により、前側円筒体11と後側円筒体12との間の折れ角度、ひいては掘削機100の掘進方向を変更することができる。
【0026】
さらに、前側円筒体11の前側部分の内周面には、外形が円板状の前側隔壁14の外周面が溶接などによって固定されている。また、前側円筒体11の中央部分の内周面には、外形が円板状の後側隔壁15の外周面が溶接などによって固定されている。そして、これら隔壁14,15の中央には開口が形成されており、これら開口を挿通して状態で、主カッター体20を回転駆動するためのモータ21が内円筒体10に支持されている。主カッター体20は、そのカッターヘッド22をモータ21によって回転させることにより、矩形パイプ40の前方に位置する地盤Bの中央部分を掘削する。
【0027】
また、前側隔壁14及び後側隔壁15は下部にも開口が形成されており、これら開口を挿通して状態で、主カッター体20及び副カッター体50などで掘削した土砂などを後方に排出するための排土機構62が内円筒体10に支持されている。
【0028】
一方、前側円筒体11の前端部の外周面には、4個の副カッター体50を支持する矩形枠状体30が溶接などによって固定されている。この矩形枠状体30は、それぞれが鋼板などからなる前側に位置する前側板体31と、後側に位置する後側板体32と、これら前側板体31と後側板体32を連結する連結板体33とが、溶接などによって固定されることによって構成されている。
【0029】
前側板体31には、中央部に主カッター体20が挿通する大きな円形状の開口が形成され、その周囲の四隅角部にそれぞれ副カッター体50が挿通する円形状の小さな開口が形成されている。このように、前側板体31は主カッター体20の周囲を取り囲むものであり、本願発明の取り囲み部材に相当する。後側板体32は、4個の副カッター体50に対応して、四隅角部に設けられており、それぞれに副カッター体50が挿通す円形状の小さな開口が形成されている。
【0030】
矩形パイプ40は、矩形パイプ本体40aと外矩形筒体(刃口)40bとからなっている。外矩形筒体40bは、例えば鉄鋼などからなり、矩形パイプ本体40aの前端に設けられ、矩形パイプ本体40aと前面視における外周縁の形状が略同一となっている。この外矩形筒体40bは、後述する構成により、矩形枠状体30に固定されている。これにより、外矩形筒体40bは、矩形枠状体30を介して、内円筒体10の前端部の外周面に固定されている。なお、外矩形筒体40bは、図示しないが、隣接する掘削機100の外矩形筒体40bと固定、係合するためなどの部材を有していてもよい。
【0031】
外矩形筒体40bと矩形枠状体30とはその間に隙間が生じないようにして、着脱可能に係合されている。具体的には、図3に示すように、矩形枠状体30の連結板体33の四隅角部に位置する箇所の外面にそれぞれ、後方に向かって突出するように傾斜する傾斜部34が形成されている。一方、外矩形筒体40bの中央部の内周面に、傾斜部34と対応する位置に、それぞれ、前方に向かって突出するように傾斜する傾斜部41が形成されている。
【0032】
これら傾斜部34,41が係合することにより、外矩形筒体40bと矩形枠状体30とが係合し、これらの間に隙間が生じることが防止されている。さらに、これら係合する傾斜部34,41の前方には、外矩形筒体40bと矩形枠状体30との間には隙間が存在するが、この隙間には止水板63が設けられている。
【0033】
さらに、外矩形筒体40bの前部の内周面に、係止部材42、ここでは側面視で直角三角形の断面を有するストッパが溶接などによって固定されている。この係止部材42に矩形枠状体30の前側板体31の周縁部が当接することにより、矩形枠状体30の前方への移動が規制されている。そして、この係止部材42による係止に加えて、傾斜部34,41の係合によって、矩形枠状体30の外矩形筒体40bに対する位置決めがなされたうえで固定されている。
【0034】
副カッター体50は、それぞれ、前端にカッターヘッド51を備え、このカッターヘッド51を回転駆動する図示しないモータを内蔵している。前面視において、各カッターヘッド51の形状はその回転中心に対して偏心している。具体的には、カッターヘッド51は、前面視で略卵形状であり、回転中心に対して非回転対称となっている。そして、副カッター体50のカッターヘッド51は、主カッター体20のカッターヘッド22より前方に位置している。
【0035】
4個の副カッター体50は、そのカッターヘッド51を回転駆動させることにより、矩形パイプ40の前方に位置する地盤Bの主カッター体20のカッターヘッド22が掘削した中央部分の周囲に位置し、矩形パイプ40の四隅角部の前方に位置する部分の地盤Bを掘削する。
【0036】
なお、副カッター体50のカッターヘッド51が回転したときの最大領域は、前面視において、矩形枠状体40b、ひいては矩形パイプ40の外縁よりも外方に部分的に突出している。この最大領域の外縁は、矩形パイプ40の隅部の外縁上又はこれよりも外方に位置することが好ましい。副カッター体50のカッターヘッド51は主カッター体20のカッターヘッド22よりも前方に位置するので、これらカッターヘッド22,51が干渉することはない。一方、外矩形筒体40bの前端部のカッターヘッド51の最大領域に含まれる部分は、干渉を避けるために切り欠きが形成されている。
【0037】
さらに、副カッター体50は、図示しないが近接センサを中央側の外面に備えている。これにより、カッターヘッド51の回転中心から先端までの距離が最も長い長尺部分が中央側に位置した状態にあるか否かを検出することが可能である。そして、この検出結果を用いて、カッターヘッド51の長尺部分を中央側に位置した状態を維持すれば、副カッター体50が矩形パイプ本体40aと干渉せずに、内円筒体10及びこれと一体化した矩形枠状体30、主カッター体20、副カッター体50を後方に引き出すことが可能となる。
【0038】
さらに、図3を参照して、前側円筒体11及び後側円筒体12のそれぞれの外周面の下部に、ローラ、コロなどを備えた搬出機構64が取り付けられている。このような搬出機構64として、例えば、エンドレスコロを備えたチルタンクが好ましい。これにより、内円筒体10及びこれと一体化した構成を後方への引き出す際の移動が容易となる。
【0039】
さらに、図4及び図5を参照して、後側円筒体12、ひいては内円筒体10と矩形パイプ本体40aとは、連結機構70を介して、着脱自在に設けられている。連結機構70は、ここでは、後側円筒体12の後端部に、図示しないボルトなどを用いて固定された略短円筒状の伝達リング71と、矩形パイプ本体40aの内周面に溶接などによって固定された固定部材72との間に、これらに着脱自在に設けられた反力受止部材73などから構成されている。
【0040】
反力受止部材73は、固定部材72の前端の隅部に対応する切り欠き73aを有しており、この切欠き73aが固定部材72の前端の隅部に係合した状態で、伝達リング71と固定される。反力受止部材73は、さらに、伝達リング71に形成されたコの字状の切欠き71aに対応する突出部73bを有しており、この突出部が伝達リング71の切欠きに係合した状態で、3方向から押し付ける3本の押しボルト74によって固定されている。
【0041】
なお、連結機構70は、主カッター体20及び副カッター体50のカッターヘッド22,51により地盤Bを回転掘削に作用する反力を矩形パイプ40に伝達する反力伝達機構としても機能する。
【0042】
また、後側円筒体12の後端部には、略短円筒状の伝達リング71が、内円筒体10及びこれと一体化した構成の後方への引き出しが容易となるように、伝達リング71の左右後部には、シャックルなどの係止具65がそれぞれ固定されている。この係止具65に図示しないが、フックなどの引っ掛け具を引っ掛けて、引っ掛け具を一端部に有するロープなどを作業者が後方に向けて引っ張ることにより、内円筒体10及びこれと一体化した構成を後方に引き出すことがさらに容易となる。
【0043】
なお、ここでは、後側円筒体12と伝達リング71とを別部材として、これらを着脱自在に構成している。これにより、掘削機100を後方に引き出す際に損傷が生じ易い部材が伝達リング71となり、後側円筒体12が損傷することの抑制を図ることが可能となる。ただし、後側円筒体12と伝達リング71とを一体化してもよい。
【0044】
以上説明した掘削機100によれば、主カッター体20のカッターヘッド22が回転掘削する矩形パイプ40の前方に位置する地盤Bの中央部分だけでなく、4個の副カッター体50のカッターヘッド51が回転掘削する矩形パイプ40の四隅の隅角部の前方に位置する地盤Bの部分も掘削することができる。よって、作業者が掘削する地盤Bの部分が削減されるので、矩形パイプ40の地中への推進埋設にあたり、人力による苦渋作業の解消と掘削の高効率化を図ることが可能となる。
【0045】
また、3本の押しボルト74による伝達リング71と反力受止部材73との連結を解除することにより、内円筒体10は矩形パイプ40から切り離される。この状態において、内円筒体10及びこれと一体化した矩形枠状体30、主カッター体20、副カッター体50を矩形パイプ40内を通過して後方に移動させることが可能となる。これにより、掘削機100の前方に玉石などの障害物がある場合や到達立坑が存在しない場合などの場合に、内円筒体10及びこれと一体化した構成を後方に引き出すことが可能となる。そして、この際、副カッター体50のカッターヘッド51が矩形パイプ40と干渉しない位置にしておくことにより、引き出しに支障が生じない。
【0046】
なお、本発明は、上述した掘削機100に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、掘削機100において、各部10~50の具体的な構成は説明したもの、あるいは図示したものに限定されない。
【符号の説明】
【0047】
10…内円筒体、 11…前側円筒体、 12…後側円筒体、 13…接続体、 14…前側隔壁(隔壁)、 15…後側隔壁(隔壁)、 20…主カッター体、 21…モータ、 22…カッターヘッド、 30…矩形枠状体、 31…前側板体(取り囲み部材)、 32…後側板体、 33…連結板体、 34…傾斜部、 40…矩形パイプ、 40a…矩形パイプ本体、 40b…外矩形筒体、 41…傾斜部、 42…係止部材、 51…カッターヘッド、 50…副カッター体、 61…中折れジャッキ、 62…排土機構、 63…止水板、 64…搬出機構、 65…係止具、 70…連結機構、 71…伝達リング、 71a…切欠き、 72…固定部材、 73…反力受止部材、 73a…切り欠き、 73b…突出部、 74…押しボルト、 100…掘削機、 B…地盤。
図1
図2
図3
図4
図5